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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
32/211

32話 魔女と鰻と召喚魔法

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【魔女さんまた恥を晒す】~試練?試験?~

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 はぁ~いいお湯だった~♪ ふふふ、そうだお風呂あがりにイチゴ牛乳を飲もう! マジックポーションを作ってる時に一緒に作っておいたんだ~楽しみ♪

 アイギスとの訓練の後、柔軟体操を教えてあげたんだけどね。なんでかアイギスってば凄い遠慮するし、目そらすしで挙動不審だったんだよね……あれは一体なんだったのやら? まぁ、それはいいや、他の冒険者達も訓練でぶっ倒れてたので今日の探索はお休みしたよ。妖精さん達の様子も気になったので丁度良いって言えば丁度良かったのかな?

 屋敷に戻ると周辺をティリアがドッカンドッカン整地してポンポンポーンってあっという間に家を建ててまわってたのにはちょっとびっくりした。今じゃ妖精さん達の家が、屋敷の南側にズラーって並んでる。居住区にするらしいね。どうせならこの屋敷も世界樹近くに移設しようって言ってたから、近々引っ越すかもしれない。

 レウィリリーネとフォレアルーネは区画に柵立てて、ノッカーくんとブラウニーちゃんをはじめとする妖精さん達のアドバイスを聞きながら、何処に何を植えるか、放牧するかとかを決めてたみたいだね、その時にペガサスのカインもお友達連れてきて賑やかにしてたよ。サンクチュアリースとかモモモモンガーとか可愛い子がいっぱいで私も大満足したね!

 アルティレーネはユニ、水菜、ティターニア、妖精さん達とハンバーグ作りに挑戦してた。結果はまぁ、生焼けだったり、表面が焦げてたり、ぼろぼろに崩れちゃったり、肉汁が出すぎちゃって味気なかったりと……様々な失敗が多かったね。うん、これは私のミス。のっけからハンバーグは敷居が高かったわ。


「わかりました! 微力を尽くします!」


 ん? なんぞ? なんかみんなリビングに集まって話してると思ったら、アイギスが立ち上がり妹達に向かってしゃべってるね。

 お風呂の途中ミーナが逃げ出したから、捕まえて入り直していたので、一緒に入ってたみんなはとっくにあがってて、私が最後だったんだよね。


「お願いしますね。あら、アリサお姉さまお帰りなさい」

「ただいまアルティ、お風呂空いたわよ~あ、みんなイチゴ牛乳飲む? お風呂上がりにサイコーだよ?」


 わーい♪ ってイチゴ牛乳に喜ぶみんな。早速ゴクゴクと頂くとやっぱり女の子達から喜びの声があがった。


「朝に飲んだマジックポーションより美味しいです!」

「美味しいですわぁ~♪ イチゴと牛乳ってこんなに合いますのね!?」


 まずはサーサとティターニアの二人。サーサは朝にマジックポーションを試飲してその味をだいぶ気に入ってくれていたのできっと喜ぶって思ってたよ。

 ティターニアは今日はお泊まりってことで夕飯もお風呂も一緒に楽しんだ。イチゴと牛乳を合わせた美味しさを知らなかったのが意外だね。まぁ、他の妖精さん達に聞いた話だとそれほど凝った料理はしないそうだから、私の作り方も珍しいのだそうだ。


「まろやかぁ~そしてなんて優しい甘さ……うっとりしちゃうわね♪」

「ユニこれ大好き~♥️ 甘くて凄く美味しい♪」


 そしてレイリーアとユニ。ユニはともかくレイリーアはいかにも大人の女性って感じだから、イメージ的に子供っぽい飲み物になっちゃうかなって思ったけど、そもそもこの世界の食文化だと普通にご馳走みたいで普通に喜んでる。

 ユニは満面の笑みでイチゴ牛乳を美味しそうに飲んでいる、じっくり味わっては嬉しそうにニコニコだね♪ ふふっ可愛い~♥️


「お風呂上がりに最高……なるほど確かに!」

「マスターこれは本当に、ホントに! おいっすぃ~でっすよぉぉ~!」

「朝に頂いたマジックポーションにあった、少し薬っぽい味がしない分より美味しいですわね」


 フェリア、アリス、ネヴュラにも好評だ。マジックポーションのように「少しでも飲みやすくしたお薬」とは違い、単純に美味しい飲み物だからその違いはあるね。


「んで、なんかアイギスが張り切ってるみたいだけど。なんかあったん?」

「はい、女神の皆様から、しれっ……試験的にクエストを受注致しました」


 ん……? 気のせいかな今『試練』って言おうとしてなかったかね? 単に言い間違えただけかな? でも妹達、どんなクエスト出したんだろ? 気になるね。


「アイギスさん達『白銀』のみなさんには私達からそれぞれクエストを依頼させてもらいました」

「どんな依頼なの? 気になるんだけど」

「昨日チラっと話したフォレストくん達の子孫の捜索だよ」

「ん……もし、今にまで受け継がれているなら会いたい」


 おぉ~なるほど! 妹達がかつて保護したって言う三国家。その子孫達の捜索か~! 確かに世界中を飛び回る冒険者に依頼するのは正解だね♪


「なんにせよ、『セリアベール』の問題……『悲涙の洞窟』のスタンピートを解決してから。と、なりますが……」

「うむ、そうじゃな。定期的に起こるせいでそう遠出出来んかったが」

「それさえ解決しちまえば、冒険者の皆も各地に移れる!」


 サーサ、ドガ、ゼルワもやる気満々だ。うん、そう言う事なら私も頑張ってスタンピートの解決に協力しようじゃないの、可愛い妹達のお願いだもん! かなえてあげたい。


「じゃあ、その捜索私も手伝うよ、人は多い方がいいでしょ?」

「アリサ姉さんはやること沢山あるじゃない?」

「そうですよ、アリサお姉さま? 『聖域』の開拓も始まったばかりですし……」

「ん~アリサお姉さんはいてほしい……」


 あらら、レウィリリーネが離さぬ~とばかりにぎゅって抱きついてきちゃったよ。ついでにユニとアリスも……お風呂あがりだからちょっと熱い。


「あはは、まぁうち等はそんなに急いでる訳じゃないからアリサ姉はたまにサポートしてあげるくらいで良いと思うよ~?」

「うふふ、無期限の依頼って事だし、そうそう気負うこともないの」


 あぁ~うん……そうだね。一応私が『聖域』の総括指揮者ってことになってるんだった。ティリアとアルティレーネが言うようにやることは多い、そうそう離れてばかりもいられないか。フォレアルーネの言う通りサポートに徹しよう、レイリーアの話じゃ「いつまで」って期限ないみたいだし。


「では私達もお風呂を頂いて参ります」

「ほいほーい、いってら~♪」


 アイギス達男衆が連れ立ってお風呂に向かって行った。気のせいかアイギスの顔が赤かったような……なんか今も私と目を合わせようとしないし……むぅ~ちょっと傷付くんですけど?


「……さて、アリサ姉さん。ちょっとお話いいかしら?」

「アリサお姉さまが戻られるまでに、話し合っていたのですけれど……」

「にしし♪ だいぶアイギっちにサービスしたんだってアリサ姉~?」


 うん? ティリアとアルティレーネが改まって話があるって言ってきたけど、フォレアルーネのそのいやらしい笑顔はなんぞ?


「はい、ジャン!!」

「ぶふっ!?」


 ティリアが「じゃーん!」って私に見せてきたその動画は、丁度私がアイギスに柔軟体操を教えているときの物だ。しかもアイギスの視点で私が映ってる。そう、アイギスと向き合って地面に座り、魔女服のミニスカートでパッカーンと脚を広げて開脚前屈運動してる私だ!


「ああああ……なにしてんの!? ねぇ! この人なにしてんの!?」

「なにしてんのもなにも……アリサ様ですわ! 何を仰ってますの?」

「……アリサ様、なんて大胆な。ギリギリ見えてはいなかったようですけど」


 うわあああぁーっ!? 完全に無意識だった! アイギスが顔そむける訳だよ!!

 フェリアが指摘した通り、私のパンツが見えるか見えないかっていうギリギリのタイミングで動画の視点がぐりんって上空に向けられた。あの時急に顔そむけたアイギスに、どうしたのって思ったけど……こういう事かぁ!?


「はい、もうひとつドーン!」

「今度はなに……おわああぁぁーっ!!?」


 続けて映し出されたのは同じく私がアイギスに柔軟体操を教えてる場面。アイギスの前屈運動の補助を努めてる場面だ。第三者が私達を横から見ている視点で流れるその動画で、私がアイギスの背後から彼の手首を掴み、その背に体を押し付けている!


「あらぁ~♪ アリサ様ってば大胆ね!」

「思いっきり胸を押し付けていますね……私も後でゼルワに……」

「あはは! アリサおねぇちゃんとアイギスおにぃちゃん仲良しさんだぁ♪」


 ち、違うのよ!? 最初は手で押してたんだよ? でもアイギスの体が思った以上に固くて、非力な私じゃ動かせないから全身の体重で、って思って……だからレイリーアもサーサもそんなニヤニヤした顔向けないで~!


「……あのむっつり、やはり処すべきでっすねぇ!!」

「あらあら、アリス様。今回彼に非はありませんわよ? どうか落ち着いて下さいませ」

「私達がなに言いたいかわかってもらえたかしら、アリサ姉さん?」


 待って! ねぇ、アリスもネヴュラもティリアもさ! これはアレよ、元男だったことによる弊害ってヤツだってば! 完全に無意識だったんだよー!?


「ええ、大丈夫ですアリサお姉さま。無自覚、無意識の行動だったというのは、今のアリサお姉さまの反応でよくわかりましたから」

「ん、だからアルティ姉さん達が淑女教育するって言ってる」

「今のまま街に出たらアリサ姉、余計な恥をかくかもしれないよ~?」


 おわわっ!? 恥かくのは嫌だ! でも教育って言ったってそんなに時間取れないじゃないの? 最後の手段として複製・貼り付け(コピー&ペースト)使ってアルティレーネあたりから模倣するって手もあるけど、出来れば使いたくない。


「大丈夫よ、アリサ姉さんにしか出来ない事以外、私達みんなで分担して時間を作るから」

「はい、私達も一緒ですから頑張りましょうアリサお姉さま!」

「うっふふ~♪ 何やら楽しそうですわ! (わたくし)も協力させて頂きますわねアリサ様!」

「それでしたら私もお力になれるかと存じます。どうぞ頼って下さいませ、アリサ様」


 おおお……ありがたやありがたや……ティリアとアルティレーネだけじゃなく、ティターニアとネヴュラも力になってくれるなんて……よーし、やってやろうじゃないの!


「ありがとみんな! 流石にこんな赤っ恥を二度もかくのは嫌だし、よろしくお願いします!」


 こうして、私のやることリストに淑女になるための教育ってのが追加されましたとさ。あぁ~なかなか忙しいアリサさんですよ……たまにはだらけたいなぁ~。


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【鰻を求めて】~あの時のヘドロ沼~

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 翌日。以前の鰻の様子を見に、ヘドロ沼……今は神々の雫(ソーマ)の泉に、ティリアとヘルメットさん率いる『建築班』と、私、アリス、『白銀』メンバー、ユニを加えた『探索班』にペガサスのカインも連れて空を行く。


「どう? カイン、キツくない?」

「はい! 大丈夫ですアリサ様、もう少し締め付けても平気ですよ?」


 なんだか久し振りな気がする箒アリアに腰掛けて、空を飛ぶ私の隣を並走するカインは、その後ろに大きな幌馬車を曳いているのだった。この馬車はティリアが用意してくれたよ。ホント何でも出来る妹だ、凄いね♪

 この馬車はアイギス達冒険者を乗せるのが目的、街に向かうにあたっての移動手段だ。これで空を飛んで『聖域』を出て、先ず『セリアルティ王城跡地』まで移動する。

 その後は、陸路で街に向かい、北門付近でカインを『聖域』に『帰還』させるって手筈になってるんだ。


映像通信(ライブモニター)転移陣(ワープポータル)、それに召喚魔法の組み合わせ……考えましたねぇ~マスター♪ さっすがぁ~★」

映像通信(ライブモニター)は私が操作するけど、召喚魔法はアリスにも覚えてもらうからね? 勿論やれるよね?」


 おっまかせぇでっす! って力強くガッツポーズにウインクバチコーン★ って決める傘に腰掛けて隣を飛ぶアリスには、私とアルティレーネが『悲涙の洞窟』に潜ってる間、街の防衛についてもらう事になる。これにはバルガスとネヴュラも同行だ。そして、いざというときの為にアリスには『聖域』メンバーを召喚魔法で呼び出して万全をきすのだ。

 今回、その召喚と帰還のテストを行う予定。

 『召喚』については召喚主を起点として、その範囲に呼び出せばいいのだが、『帰還』については明確な目印のような物が必要になる。それが『転移陣(ワープポータル)』になるのだ。


「どうせだし、屋敷も近くに移設しちゃいましょ? 集会場を世界樹(ユグドラシル)にするなら近い方が良いわ」

「応よ! 俺様達に任せときなぁ~主神様よぅ!」


 二対四翼を広げて、ヘルメットさんをかぶったティリアが言う。どうせなら、今の屋敷を神殿の入り口にしようって事になったんだ。そうすれば、私達が認めた者だけが世界樹(ユグドラシル)に近づく事を許されるってなるので、許可云々の問題も解決となる。


「う~、ユニがヘルメットさんかぶりたかったのにぃ~!」

「まぁまぁ~ユニちゃんだって後でかぶらせてくれるわよ?」

「あら? ユニかぶってみたいの? いいわよ~私がヘルメットかぶると自慢のアホ毛がつぶれちゃうし」


 馬車の中には『白銀』のみんなとユニが車窓から私達を見ている。ユニのぼやきと、それを宥めるレイリーアの会話を聞き取ったティリアが、ヘルメットを脱ぎ、ユニにカポってかぶせた。


「わーい♪ ありがと~ティリアさま♪」

「おうおう! ユニの嬢ちゃんはえらく俺様を気に入ってくれたみてぇだなぁ? 嬉しいぜ!」

《ユニの嬢ちゃんも『建築班』に入れたらいいんじゃね? 御主人?》


 ヘルメットさんをかぶってご機嫌のユニ、それを喜ぶヘルメットさん。ふふ、可愛いね♪

 そして『建築班』の妖精さん達を背に乗せて飛ぶグリフォンの一頭が提言してくる、確かにそれもありだ。神殿を建てる目的は世界樹(ユグドラシル)の防備を固める事だし、(コア)であるユニの意見は多いに参考になるだろう。でも……


「ユニにはのんびり気ままに過ごしてもらいたいんだ、だから時々意見聞く程度にしてあげてほしいな」


 ってのが私の気持ち。ユニのように幼い子は自由にのびのびと過ごしてほしい。勿論危険な事とかしそうになったらちゃんと注意してあげないといけないだろうけどね。


「ははっ! 了解だアリサ嬢ちゃん、まあ儂等ノームがそら立派な神殿にしてやるからな! 安心してくれや!」

「何を言うか! 俺達ドワーフもやるぞ! 忘れてもらっちゃ困る!」

「ふん! 無骨な貴様等が作ると美意識に欠けていかん! 指揮は我々エルフが取ろう、良いですよねアリサ様?」


 ぎゃいぎゃいと喚き出す『建築班』メンバー。やる気に満ちているのはいいけど、大丈夫かね? めっちゃ仲悪そうなんだけども?


「おいおい、指揮者はティリア様だろうが……ったく、何処のエルフも自意識過剰なのは同じだなぁ?」

「あはは~……私達の里の同胞もこんな感じですものね……」

「ふはは、なんぞサーサ達と出会った頃を思い出すわい!」

「はぁ、いきなり喧嘩腰だったものなお前達、デールが間に入ってくれたからよかったが」


 エルフとドワーフってやっぱり仲悪いんだねぇ~ドガとサーサ達は初対面でいきなり喧嘩になりそうだったけど、クエストを通じてお互い認め合い意気投合したんだって話だ。この子達も建築って仕事を通じて仲良くなってくれるといいね。


《お前等背中で騒ぐんじゃねぇ!》《振り落とされてぇかバカ野郎!?》《あいでっ! こら! 羽根むしるんじゃねぇ!》


 ……あ~もうやかましいことやかましいこと、ほら、もう到着するよ? って、ミニマップに黄色マーク!?


「なんかいる! グリフォン達高度上げて!」


ザパアーッッ!!


 私がグリフォン達に声をあげるとほぼ同時、泉から巨大な何かが姿を表した!


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【召喚魔法】~魔女さんがっかり~

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《神より賜りしこの聖なる泉に何用だ? 返答いかんではただでは帰さぬぞ?》


 泉から出てきたのはでっかい水蛇だ、通信魔法が普通に使えるみたいでゼーロやレイミーア達のように意志疎通が出来る。でも、コイツいつの間にここに住み着いたのよ?


「あんたこそ何よ!? 私はここにいた鰻に用があんのよ!」

《むっ、貴様……いや!!? おおぉっ!! 貴女様は!?》


 アリアを操作してスウゥーって地面に降りて、いきなり出てきた水蛇に近付く。ティリア含む他のみんなも後に続いて降りてきたよ。で、なんかこの水蛇ってば私を見るなり目を丸くして驚いてるように見える。


《御拝謁に賜り恐悦至極に御座います、我らが神よ……》

「はぁ~? ちょっと会った側から何言い出すのよ? 神様はこっち、ほら主神様だよ?」


 ぐいーってティリアの背中を押して水蛇の前に出てもらう。ティリアはちょっと水蛇を見ては合点が言ったとばかりにポンって手を叩いた。


「そっか! そういうことね? アリサ姉さん、コイツがあの鰻よ! 神々の雫(ソーマ)漬になってるうちに進化したんだわ!」

《はっ! 主神様の仰る通り今や我は聖域の(サンクチュアリ)水蛇(サーペント)に進化を果たしまして御座います!》


 なっ……なによそれぇ~!? えぇ……ウソでしょう? どうやったら鰻が蛇になんのよ!? いや、そんなことより……もう鰻いないの? そんなぁ~!? ショックのあまりフラつく、あぁ……私の蒲焼きがぁ~トホホ……


《今や神に授かりしこの力にて、この聖なる泉の守護を担わせて頂いております!》

「あら、頼もしいじゃない。これからもしっかり護りなさい? それと、私達この付近に屋敷持ってきて、世界樹(ユグドラシル)を護る神殿建てるから、少し騒がしくなるわ。承知してね?」


 ガクーって項垂れる私の横でティリアが水蛇に色々説明してるけど……はぁ~ガッカリだなぁ、鰻食べたかった……


「ほら、アリサ姉さんも何かしら声かけてあげてよ!」

「何かって言われても……」

《…………》


 うっ!? そんなキラキラした瞳を向けないで~! 言えるわけないじゃん! まさか「蒲焼きにして食べるつもりだった」なんて……


「そ、そうだね! ちょっと驚いたけど、神々の雫(ソーマ)はとっても大事な物だから、今後もしっかり護ってちょうだいね?」

《ははっ! お任せ下さいませ! 我が神よ!》


 なんとか上手く取り繕ってそれらしい事を言えば、水蛇は恭しく私に頭を垂れる。神殿建設にあたって泉を少し拡張したりするかもしれない旨を伝え、納得してもらいティリアに任せた。

 ティリア達『建築班』が作業を開始した横で私は映像通信(ライブモニター)を使い、屋敷にいるアルティレーネと連絡を取る。


「アルティ、そろそろテスト始めるよ? 準備いいかな?」

「はい、アリサお姉さま! いつでもどうぞ!」


 今屋敷には懐刀達を待機させている。妹達に次いで強い力を持つ彼等を呼び出す事が出来れば、大抵の者は召喚可能だろうってのが妹達の見解。


「じゃあ行くよ、先ずはジュン! おいでませ~!」


 泉とカイン達馬車を背に、私の前方、二~三メートル手前に召喚陣を展開。陣が光を放ちそこからジュンがニョキニョキって生えて来た。なんかモグラみたいだ、陣を地面に設置したからかな?


「天熊ジュン参上だぞ~♪」

「おぉ~さっすがマスタぁ~♪ 一発で成功でっすねぇ!」


 うんうん、上手く行ったね! じゃあ次は同時召喚を試そう! ジュンを後ろに下がらせ今度は中空に陣を二つ展開。呼び出すのはリンとシドウだ。


「今度は空に陣を敷くよ! リン、シドウ気を付けてね!」

「了解だアリサ様!」「うむ、いつでも良いぞ!」


 空に描いた二つの召喚陣が同時に光り、垂直に敷いた陣からリンがジャンプして飛び出し、水平に敷いた陣からはシドウが龍の姿で頭から降りてきた。よし、同時召喚も成功だね!


「天狼リン、召喚に応じ参上したぞ!」

「黄龍シドウ、同じくじゃ。ふむ、魔女ならば引き寄せ(アポート)の方が早いかのぅ?」

「お疲れ三人とも! 確かに私なら引き寄せ(アポート)のが早いけどね、アリスは使えないからさ」


 以前メルドレードとの戦いの際に使った私の引き寄せ(アポート)の魔法は、私のイメージ魔法に分類されるので他の子には使えないんだよね。さて、残るは珠実だ。この子はアリスに召喚してもらう。


「じゃあたまみん、いっきまっすよぉぉ!? さあ~さあ~おいでませおいでませ! ホホイ!!」

「九尾珠実さんじょ、うわあぁ!?」


 あ、珠実が陣から出るときに少し躓いたぞ? おっとっとってバランス取って何とか転ばずに出てきた。


「ありゃ……ちょいと魔力足りなかったでっす?」

「いや、妾が出るときにもたついたせいじゃ。うむ、一気にこう~バーって出た方がよさそうじゃのぅ」


 うん? 呼び出される方はそれで色々コツみたいなのがあるのかもしれないね。なんにせよ召喚は成功。


「アリス、魔力は平気?」

「はい、マスター。たまみんの召喚で、懐刀を召喚するのに必要なおおよその魔力量を把握出来ました。結構な消費ですけど……帰還はマスターにお任せでいいのであれば、アリス自身にも余力がありまっすよぉ~?」


 うん、それでいい。最悪自分の足で帰ってもらうのもありだし。

 さて、じゃあ次は『帰還』のテストだ。ここで気を付けなきゃいけないのが、設置した転移陣(ワープポータル)の魔力と場所をしっかり把握しておくこと。今回はわかりやすく屋敷の庭……みんなで会議したあの庭の真ん中に設置した。


「アルティ、今度は戻すよ。いい? ちゃんと見ててね~?」

「アリサお姉さま、シドウは人の姿で戻すようにお願いしますね! 龍のままですと下手すれば屋敷を押し潰すかもしれませんから!」

「ですってよ? シドウのおじじ?」


 そんなヘマせんわい! アリスの言葉に返事を返すシドウはやや不満顔だ、まぁ、人の姿で戻れば確かに安心なのでそうしてもらおう。

 その後……何度かテストを行い、概ね良好。アリスは懐刀と四神達の同時召喚も可能になった、ただ、お試しでやったユニとミーナの召喚は出来なかったんだよね……私がやると召喚出来たのでおそらく、同じ聖霊同士だからなのか、それとも、なんかしら序列みたいのがあるのかな?

 泉のニンフ、ナイアデス。アザラシの妖精セルキー。樹木の妖精ドリュアスとかまぁ~神々の雫(ソーマ)の泉に興味津々の妖精さん達も召喚してあげて、アイギス達冒険者のみんなも混じってちょっとしたピクニックみたいになったね♪ ついでにお昼はバーベキューで盛り上がったよ。


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【ダンスレッスン】~少女漫画のヒロインには程遠い~

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「はい、いちっにぃさんっ! いちっにぃさんっ! アリサ様、腰が引けてますわ!」

「そ、そんなこと言われても……こ、こう?」

「良いですよアリサ様、あぁ、腕はもっとシャンと真っ直ぐに!」


 いちにぃさんっ! いちっにぃさんっ! と、私は一生懸命踊る踊る。ティターニアとネヴュラの厳しくも的確な指導を受けてめきめき上達するダンス技術。

 神々の雫(ソーマ)の泉でのバーベキューの後、屋敷にて。淑女の嗜み~とかで早速色々勉強中のアリサさん。今は社交ダンスのレッスンだ。正直こんなの必要なの? って思うんだけど、出来るようになっておけば困ることはないっていうんで、頑張って覚えてる。


「うぎぎ……普段使わない筋肉使ってるから……つ、つりそう!」

「アリサお姉さま……「うぎぎ」なんて言っちゃ駄目ですよ?」


 そんなこと言ったって~ダンスなんて前世でも経験ないんだよ? それに見知らぬ男性と踊る可能性があるってだけでやる気も萎える……正直嫌だ。


「ふぅ~あまり集中できていませんね……」

「ご、ごめん……三人共真剣に教えてくれてるのに……」


 私のそんな気持ちが出てしまったのだろう、アルティレーネもティターニアもネヴュラも困り顔だ。申し訳ないとは思うんだけど、こればっかりはどうしようもない。


「……やむを得ませんね、ダンスレッスンはここまでにして……? はい、どうぞ」


 はぁってため息をついて、ダンスレッスンを中止しようとするアルティレーネだが、扉をノックする音に言葉を止めた。誰か来たみたいだね、誰だろ?


「失礼します、あっ……まだレッスン中でしたか?」

「アイギス……ってことはもう訓練の時間か~」


 どうやら結構時間経ってたみたい、アイギスとの剣聖剣技の訓練の時間だ。


「あら、丁度良いのではありませんこと? ダンスパートナーをアイギスさんに努めていただきましょう?」

「ティターニア様、良いお考えですわ。ダンスは楽しまなくてはいけませんもの♪」

「むぅ……仕方ないですね。アイギスさん、アリサお姉さまの練習をお手伝いしてくれますか?」


 おぉ、アイギスが手伝ってくれるのは助かるかな。


「ダンス、ですか……多少は嗜んでおりますが、それほど上手くはありませんよ?」

「問題御座いませんわ、アリサ様も始めたばかりですもの気兼ねなく楽しんで下さいませ」


 ふぅん、アイギスは元貴族ってだけあってダンスも出来るんだ。素直に感心しちゃう。

 わかりましたと、一言の後、私に近付いたアイギスは軽く一礼して……


「アリサ様、どうか私と一曲踊って頂けますか?」


 前屈みで私の顔を覗き、私が「はい」って返事をすると、右手の掌を上に向けて差し出す。


「はい、アリサ様アイギスさんのお手を取って下さいませ。……良いですよ」


 ネヴュラのアドバイスに従ってアイギスが差し出す手に、私の手を重ねる。

 これで私がアイギスをダンスのパートナーとして了承したことになるらしいね。何だか少女漫画のヒロインみたいで少しテレるね。

 次はホールへのエスコート。アイギスが右腕を差し出してくるので、私は彼のその腕に左腕を組ませる。ちょっと緊張でドキドキするなぁ~上手く踊れるかな?


「大丈夫ですよアリサ様。上手く踊る必要などありませんから」

「う、また顔に出てた?」


 はいって微笑むアイギスを見るとなんか緊張も解けてくる。不思議だね、なんか安心するんだよ。

 それから、散々アイギスの足を踏みまくったりしたものの。段々馴れてきて結構楽しく踊ることができたよ。気心許した相手と踊ることがこんなに楽しいなんて思わなかったね。


「あ~その……足、大丈夫? ごめんねホント、何回も踏んじゃって」

「ははは、問題ありませんよアリサ様」

「うふふ、本当に。これでアリサお姉さまがヒールを履いていたらアイギスさん今頃立てなくなっていましたよ?」


 ぐっふぅ……いや、そんなに酷かったかねアルティレーネさんや? 確かにいっぱい踏んだとは思うけども……って、そっか。今後もしかしたら、ヒールの高い靴履いたりすることもあるか。爪先、足首と痛くなるだろうけど見た目カッコいいんだよねぇ~。


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【冒険者の提案】~冒険者ってアホで馬鹿ばっからしい~

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「一つ提案があるのですけれど……」


 一通り予定が済んだ夕飯時。

 サーサがみんなの前でそう言ってきた。なんだろう? って、私達はサーサを見やり次の言葉を待つ。


「アルティレーネ様にアリサ様、アリスさんにバルガスさんとネヴュラさん。この五人が街に来られると言うことで間違いありませんか?」


 うん? どうやら街に行く面子の再確認かな? いや、それなら提案とは言わないよね?


「ええ、それであっていますよサーサさん。何か問題でもありますでしょうか?」

「あ~、バルガスさんとネヴュラさんは夫婦なんでそんなに問題ねぇと思うんですけど……」

「アルティレーネ様にアリサ様、アリスちゃんってほらフリーじゃない?」

「見目麗しいお三方じゃ……街の連中が色めき立ちそうで心配でのぅ……」


 えぇ~ちょいと大袈裟じゃない? 確かにアルティレーネもアリスも美少女だと思うけど……そんな大騒ぎするもんじゃないでしょ~漫画じゃあるまいし。


「ウザい連中が寄ってきたらぶっころがせばいいんです。ちょぉぉと力の差っての見せてやれば大人しくなりまっしょいでしょお?」

「確かに言い寄られても困りますけれど……大袈裟ではありませんか?」


 ほらほら、アルティレーネもそう言ってるじゃん? 物騒なアリスは……うん、何とか説得して抑えてもらおう。『聖域』の連中は血の気が多い~って思われたくないし。


「甘い……甘いですよ!? 冒険者の男共って馬鹿ばっかなんですよ!? 力の差見せ付けたら余計に慕って寄って来ますよ! そしてウザいくらいパーティーに勧誘されますから!!」


 ゼルワがもう、わーっ! って勢いで捲し立てる。そんなに凄いのか……?


「あ~強いうえに美人ってくればそうなるかもしれないね~人間……いや、この場合冒険者か。確かにアホだもん」

「え~そんなになの? で、サーサの言う提案って言うのは何かしら?」


 パルモーがうんうんと頷いている、どうやら本当にそんならしいね。元男として考えてみると、理解できなくもない。強くて可愛い女の子と一緒のパーティーって嬉しいだろうし、お話しもしたい、あわよくば親密になれるかもって下心もあるだろう。


「騒動を少しでも減らす為に、皆さんを『白銀』の新規メンバーと言う事にしたいのです。ギルドで冒険者登録をして頂いて、『白銀』に加入するのだと公言すれば大抵の者は諦めますから」


 ティリアの確認にアイギスが答える。成る程ね、『白銀』は街では有名なパーティーとして知られているって事だから、そのネームバリューを利用すれば面倒事を避けられるってわけだ。


「お~♪ アリサ姉もアルティ姉も冒険者登録するんだ! うわ~何か楽しそう! うちも行きたいなぁ~♪」

「ユニもユニも~アイギスおにぃちゃん達見てるとスゴく楽しそうだもん!」


 留守番組のフォレアルーネにユニがやんややんやと騒ぎ出したね、ふふっいつか落ち着いたら私達姉妹で世界を冒険してまわるのも楽しそうだね。


「待てアイギス、冒険者には義務とかがあったりしないのか?」

「そうですわね……私と夫はあくまでもアルティレーネ様の護衛ですわ、拘束されるのは困りますよ?」

「あら? 確か冒険者とはどの国にも属さない方達と聞き及んでおりますわ。そこに義務等発生しますの?」


 フェリアが思い出したように冒険者の義務について確認を取っているね……確かに気になる。今回私達はあくまでも助っ人だし、街が危機に陥る度に召集されるのは困るね。ティターニアの言う通りなら可能性は低そうだけど。


「義務はありゃあしませんぞい。ただその時に滞在しとる街や村の力になれっちゅうくらいかの?」

「そうね、冒険者はどこまでも自由であれってのが共通の理念だからね。まぁ、勿論悪いことすれば即座に手配されて、全国のギルドに知れ渡るから好き勝手する奴もそうそういないわ」


 へぇ~正直国の危機には強制召集でもかかったりするのかと思ったけど、そんな事もないのか。


「それなら安心……でも、一応そのギルドのマスターにもちゃんと話を通しておいてほしい」

(女神様と魔女様達はあくまでもお手伝いですよ~って理解してもらうのが大事ですねぇ~)


 レウィリリーネとエスペルの言うようにそこはしっかり伝えてもらう方が、後々誤解がなくて良いだろうね。


「はい、勿論その点はしっかりと。如何でしょう? この提案を飲んで頂けますか?」


 私達助っ人組は、問題無さそうだと判断。サーサの提案を受け入れる事にした。正直ちょっとワクワクしてる自分もいたりするのだよ♪

 街に着いてからの細かい段取り等を話し合って、その日の夜は更けるのでした。

アリス「マスター、あのヘビをこの庭に召喚したらどうなりますかね(・_・?)」

アリサ「えっ? う~ん……どうなるんだろ(゜゜;)?」

ティリア「釣り上げた魚みたいにびっちびち跳ね回るんじゃない( *´艸`)プフー」

アリス「マジでっすか(ノ≧∀≦)ノ見たい! チョー見たい└(゜∀゜└) (┘゜∀゜)┘!!」

アリサ「ちょっΣ(゜ロ゜;)止めなさいって、可哀想でしょう(>д<)ノ」

アリス「さーこーい! 聖域水蛇~(゜∀゜*)(*゜∀゜)」

ティリア「ワクワク~o(*゜∀゜*)o」

聖域水蛇「御呼びになられましたか、我が神よ(´・ω・`)?」

アリス「……え~(゜A゜;)普通に浮くんかーいΣヽ(゜∀゜;)」

ティリア「つまらーん(≧□≦)! 減点よ減点(。・`з・)ノ出直してこーい!」

聖域水蛇「ええぇ~(゜д゜)凄い理不尽に怒られた( ;∀;)」

アリサ「ごめんねぇ~(;>_<;)気にしなくていいからね? 召喚出来るかってテストしてただけだから(^_^;)」

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