30話 魔女とお出掛け準備
──────────────────────────────
【試作ポーションと朝ごはん】~号泣アリス~
──────────────────────────────
朝からぶっ倒れてた冒険者達が意識を取り戻したので、試作ポーションを試飲してもらい、その効能と味、販売するにあたってその時の改善点を聞いてみた。
「これ美味い! マジにポーションなんですかこれ!?」
「ほんのり甘いのに爽やか……いくらでも飲めちゃうわね!」
ゼルワとレイリーアが試作ポーションを飲んで感動してるね。二人が飲んでいるのは体力を回復させ傷を治す普通のポーション。魔力は回復しないやつ、前世のスポーツドリンクみたいな味に仕上げてみたんだ。
「今までの物とは雲泥の差じゃな、しかも効能も凄まじい。一口で傷が塞がったわい!」
「もう少し希釈するか、容器を小さい物にするか……売るならそのどちらかが良いでしょうね」
「素早く飲める工夫があれば尚良いかもしれませんね、例えば口を片手でも開けやすくするとか……」
あれま、大分効能を抑えて創ったつもりなんだけどまだ強いのか。ドガとサーサの意見を参考に考えると容器を小さい物にする方が良いかな? これ以上希釈して薄めると味が損なわれると思うし。アイギスの意見も貴重だね、緊急で飲まなきゃいけないっていう場面も冒険者にはあることだろう。メモしておいてしっかり考えるとしようか。
「オッケー! 参考にさせてもらうね。ありがと♪ じゃあサーサ、こっち、マジックポーションも試してみて?」
「はい、いただきます」
今度は試作のマジックポーション。これは結構美味しくできたと思う、なんせイチゴミルク味だからね! 普通のポーションが爽やかなスポーツドリンクなのに対し、まろやかな優しい味だよ!
「美味しい~♪ 今までのは一体何だったのでしょう!?」
「「じぃ~……」」
ん? なんかアリスとユニが興味深そうに見てるね……もしかして飲んでみたいのかな?
「二人も飲んでみる?」
「いいのアリサおねぇちゃん!?」「いいんですかマスター!?」
おうおう、聞いた途端目を輝かせおってからに。勿論構わないので二人にもマジックポーションの小瓶を渡す。
「ありがとーアリサおねぇちゃん!」
「感謝しまっすマスターぁ~♪」
いただきま~す♪ って飲み始める二人は一瞬驚きに目を開き、ぐびぐびと一気に飲みほした。
「美味しい~♪ 美味しいよアリサおねぇちゃん!」
「すんげぇ( ゜Д゜)ウマー! マスター! もう一本もう一本くらさぁぃ!?」
駄目だっての、これはあくまでもお薬なんです!
「そんなに美味しいのなら私達もちょっと飲んでみたいわね……」
「ん、ティリア姉さんに同意」
「アリサ姉、うちらもちょーだい♪」
ティリア、レウィリリーネ、フォレアルーネまで欲しがっちゃったよ。見ればアルティレーネにバルガス達もなんかソワソワしてるじゃんか。あぁ~もうしょうがないなぁ。
味をもっと薬っぽくしないと駄目と、改善点をメモしておく。その理由が今のこれだ、ユニとアリスだけじゃなく、結局全員が欲しがってお代わりまで求めるっていう現状。小さいお子様のいる家庭では、お子様が薬と知らずに飲んじゃうかもしれないね。売りに出すならその辺も考えないと。
「「「いただきまーす!!!」」」
はいよ、召し上がれ~ってわけでみんなで朝ごはん。
ポーションの試飲も済んで、冒険者達の怪我も治ったしお腹も空いただろうからね。
やっぱりと言うか、何て言うか……予想通りに食べまくる冒険者達。ガッツガッツ! と、むさぼるように食べる食べる。見てて気持ちのいい食べっぷりだねぇ。
「あのぉ~マスターぁ? アリスもその唐揚げいただきたいなぁ~って思うんですけどもぉ~?」
「は? 駄目よ。あんたティリアをいぢめてくれたじゃない? そのお仕置きだもん」
朝にティリアの歌がへたっぴって笑いやがった罰ですよ? 私ああいうの凄く嫌なのだ、前世の苦い記憶にもろヒットするのです! まぁ、その辺は空気悪くなりそうなので、この場では口に出さず、後でアリス個人に話すつもりだ。
「はっ? ティリア様をいぢめたって、命知らずですねアリスさんは……」
「怖いもの知らずとはこのことじゃのう~」
パンを「んぐんぐ」と、食べながらサーサとドガがアリスに驚く。まぁ、どんなに気さくでもティリアは主神だからね。恐れ多いって思うのが普通だろう。
「……あ、うぅ。今後気をつけまっす! ごめんなさい!」
お仕置きの重さを感じ取ったのかしおしお~って感じで大人しくなるアリス。召喚した手前、あまり図に乗ってもらっても困るからね、ここらでちゃんと釘刺しておかないといけない。う~ん、でも唐揚げ食べちゃ駄目ってだけじゃ甘いだろうか?
「この唐揚げ美味しい~♪ ねぇ~アリスアリスぅ~、食べたい? ねぇ~食べたいぃ~?」
「うぐぐ……い、いただけるんですかぁ~ティリア様ぁ?」
「イヤでーす! あむっ! ん~っ美味しい! 肉汁がじゅわぁ~って!」
「あわわわっ!?」って、目の前で本当に美味しそうに唐揚げを食べるところをティリアに見せつけられて思わず涙目アリス。
ふぅ、しょうがない二三個だけ食べさせてあげるか。私もほとほと甘いなぁ~。
「うわあぁぁーん! まずだぁぁ~ごべんなざぃぃ~もうじませんがらゆるぢでぇ~ぇぇん!」
うぅわっ!!? マジかこいつ!? ガン泣きだわぁ~!
「びっくりしたぁ~、もう~だからダメって言ったのにアリスちゃんってば~それに謝るならティリアさまにだよぉ?」
「ぢぃりあざまぁ~ごべんなざぃ~アリスもがらあげだべだいですぅ~!」
あ~あ、もうしょうがない子だねぇ。ユニの方が余程しっかりしてるじゃないの。
「ほら、アリスちゃんユニの分わけてあげるから、ね?」
「アリス殿、どうぞ。私の分も差し上げます」
うぇうぇって泣きじゃくるアリスを見かねたユニとアイギスが唐揚げをわけてあげている。ふふっ優しいね。
「ユニちゃん先輩……むっつりナイトさん……」
「俺からも」「儂も」「アタシも~」「私も、はい」
冒険者のみんながそれぞれアリスに唐揚げを差し出している。なんていい奴等なんだろう!
「み、皆さんまで……うぅ、ありがとうぅございます……」
アイギス達からもらえるなんて思ってもみなかったのか、アリスは冒険者達の行動に驚きつつもちゃんとお礼をしてる。うんうん、よかったねよかったねぇ~♪
「よかったですねアリスさん、はい。私からもおひとつどうぞ」
「あたしからもひとつあげる」
「うちも! このおっきいのをあげよう~♪」
「まったく……しょうがないわねぇ~許してあげるわよ♪ はい、私からもひとつあげる!」
ニコニコして妹達もアリスに唐揚げをわけてあげている、ティリアもそんなに怒ってはいなかったみたいだね。便乗するようにバルガス達も分け与えて、アリスのお皿には沢山の唐揚げが盛られる事になったよ。
(わたし達もお分けしましょうかね~♪ アリスさん如何です~?)
「うぅ、みなざんありがどぉぉ~うれじぃでずぅ~ぞじでごべんなざぃぃ~!」
「ふふっ、ほら泣き止んでアリス? 腕によりをかけて作ったんだからしっかり味わって食べてね」
エスペルもその一口大の小さな唐揚げをクチバシで器用に持ってきたけど、もう沢山盛られてるので大丈夫と、アリスは遠慮した。ちなみに、エスペルとモコプー達、ミーナには食べやすいように小さめにして揚げたので、食べにくいって事もなく嬉しそうにみんなで食べている。
私達の味覚に合わせて作ったからこの子達にはちょっと濃い味付けかなって心配してたけど大丈夫みたいだね。ミーナにも不変があるからネギ食べさせても平気だし。
──────────────────────────────
【女神の課した訓練】~食い意地が勝る~
──────────────────────────────
「私達の相手は自分自身でした」
「自分自身? どういうこと?」
アリスも泣き止んで落ち着いたところで、冒険者達に妹達が課したっていう訓練とはどんなものだったのか聞いてみたらアイギスからそんな答えが返ってきた。
「スゲェ変な気分でしたよ、自分とまるっきり同じくせしてやたら強ぇし、それに……」
それに……なんぞゼルワ?
「ひっじょーに腹立たしい相手でして……」
「むぅ、お主等も同じじゃったか……」
「散々馬鹿にされたのよぉ~! 悔しい!」
冒険者のみんなが悔しそうにそれぞれ訓練相手にご立腹でござる。どうやら、自分とまるっきり同じ姿した相手は大分格上で、その夢の中でボッコボコにされた挙げ句、ボロクソ言われたらしいね。わー……やだなぁ~「私もやる」とか言わなくてよかったぁ~。
「ふふふ……きっついでしょう? その夢の中の相手はあんた達の理想の姿よ?」
「貴殿方が将来至れるであろう境地。その「可能性」総てを夢と言う形で反映させた訓練です」
「その夢の中では何度死んでも平気……夢だから」
「あ~でもね……心が死ぬともう戻れないから注意してねぇ~?」
妹達が言うには、その夢の中の理想の自分は相手の心をへし折りに来るんだそうな。心の内をボロクソ言って心をへし折り、その理想の力でもって身体を叩きのめすっていうえげつない訓練。それに挫折して心が死ぬともう現実には帰って来ることはできず寝たきりになっちゃうんだって!
「むぅ……なんとも凄まじい訓練ですな」
「そこまで無理をなさらなくとも……良いのでは?」
「母上の仰る通りだ、戻ってこれなくなっては意味があるまい?」
「止めるなら今の内だぜ? あんちゃん達?」
確かに……バルガス達の言うことも最もだと思う。街には私達も同行するんだし、そんな危険な橋を渡ってまで強くなるほど焦らなくても良いんじゃないかな?
「昨夜あんな啖呵切った分、引きづらいかもしれないけど……どうする? 今回は素直にアリサ姉さん達に助けてもらって自分達のペースで強くなって行くっていうのも間違いじゃないのよ?」
「……私の心は決まっているが、みんなはどうする? ドガとレイリーア、二人には無理をしてほしくないが……」
どうしてドガとレイリーアを名指ししたのか? アイギスに聞けば、二人には帰りを待つ奥さんと恋人がいるからだと言う。それを聞いた以上私も心配になる、大切な人を悲しませちゃいけない。
「ファムも儂が冒険者稼業をしておる以上覚悟はしとる……」
「ラグナースだって同じよ?」
「いや、だからってこんな危険な訓練続けなくても良いんじゃないの?」
ドガの奥さん、ファムさんっていうのか……も、レイリーアの恋人ラグナースさんも覚悟はできてるって言うけど。さっきも言ったように私達がついてるんだし、頼れば良いのではないのん?
「アリサ様、儂等にも矜持と言うものがあるんじゃ……」
「そうよ、大切な人がいる街が襲われるっていうのに、第三者に「お願いします」なんて恥さらしもいいところだわ!」
私達の街は自分達の手で護る! そっか……うん、みんなとっても大事なんだね『セリアベール』が、そこまで言うなら応援しようじゃないの!
「そういやアルティ、今日妖精さん達が食材持って来るんだよね?」
「はい、プリンが大好評でして。皆声を揃えて食材持って行きまーすと、嬉しそうにされていましたよ♪」
私の問いにアルティレーネは満面笑顔で楽しそうに応える。うんうん、それだったら色々期待できそうだし、冒険者達のために私も一肌脱ぎましょうかね。
「よし! それじゃあ皆がちゃんと帰って来れるようにすんげぇ美味い物作るとするよ!」
「マジっすか!?」
「さ、更に美味しい物!?」
「ちょっ、滅茶苦茶楽しみなんですけど!!?」
ふはは! そうだろうそうだろう!? 楽しみがあれば心を折ってる暇なんてないんだ! ホレホレ~ゼルワ~サーサ~レイリーア~楽しみでしょう~♪
「おぉそう言えば、爽矢殿の東で作られておる物とは別に朱美殿に大地殿、水菜殿もそれぞれに酒を作っていると聞くぞ?」
「!!? バルガス殿よ、それはまことか!?」
「うわぁ~ドガのじいちゃん、ボクとの模擬戦よりマジな顔付きしてんじゃん?」
「うふふ、頼めばお土産として頂けるかもしれませんね。奥様や、ご友人のギドさんも喜ぶのではなくて?」
あはは! ドガにはやっぱりお酒だねぇ~♪ 凄い真剣な顔でバルガスの話を聞いてるよ。
「ふっ……心など折ってる場合ではないな? 訓練を乗り越えた先には素晴らしい報酬が待っているのだから」
「ふぉっほっほ! いやはやまったくですわい! 儂はみなぎってきおったぞ!」
「あぁ! 俺もだぜ! 美味い飯に美味い酒が待ってるってくりゃあ負ける気がしねぇ!」
「あぁぁ……アリサ様の言う美味しい料理!」
「ふふふ……勝ったわ! そんな報酬が待ってるってわかれば負ける道理が無いもの!」
よしよし! フェリアの一言に奮起するみんなを見て安心だ。
「決まりだな。ティリア様、どうか訓練を続けて頂きたい! 私達は必ずや乗り越えて御覧にいれます!」
「あー……うん。良いんだけど……あんた達どんだけ食い意地張ってんのよ……?」
アイギスが代表してそれはもう力強く宣言するんだけど、結局は食べ物とお酒に釣られてるだけだ。これには流石の主神様も苦笑い、明るい笑い声が朝の屋敷を包む一幕だったよ♪
──────────────────────────────
【集う妖精さん達】~魔女さんのお料理教室~
──────────────────────────────
「こらーっ! ケットシー達遊んでないでちゃんと働いて!?」
「ウニャーっ! 痛いニャーつねるんじゃないニャー!」
つねられて悲鳴をあげるのは二足歩行する猫妖精ケットシー。集ったみんなが料理を頑張ってる横でエスペル達モコプーとミーナと一緒においかけっこしたりまるまって談笑したりと、まぁ~好き勝手遊んでる。それを咎めるのが背に羽根を持つ小さな妖精のピクシー達だ。
賑やかな朝食の後、ティターニアと、連れ立って来た妖精さん達が合流した。早速各班毎にわかれてもらって作業を~って思ったけど、先ずはおもてなししなくてはと料理をふるまったのだ。
「あのイタズラ好きのピクシー達が凄い真剣だよぉ~♪」
「あら、それは違いましてよユニさん。ピクシー達はいつだって真剣なのですわ! イタズラするのも全力でイタズラするんですの、だから怠け者には容赦ないんですのよ?」
「あはは、世界樹に落書きするのも真剣だったと言う事ですね」
ティターニアの説明にうーっ! って唸るユニ。アルティレーネは少しあきれて苦笑いだ。
私のふるまった料理を食べた妖精さん達は、その味をお気に召したようで自分達も作りたいと言ってきた。互いに親睦を深めるのに良い機会だと思ったので、今は料理教室の真似事みたいな事をしているところなんだよね。
「アリサ様、こんな感じで如何でしょうか?」
「うん、どれどれ~?」
メレンゲを作っていた森妖精、アルセイデスの女の子が私にお伺いをたててくるので確認してみる。
「うん、もうちょっとだね。お砂糖は加えたよね? じゃあシルフに手伝ってもらってもうちょっと泡立てようか?」
「はーい♪ シルフちゃーん! お願~い」
「フェイのみんなも手伝ってあげてくれるかな? この泡立て器に魔力をそそいで……このくらいの速度で回転させてあげるの。どう? できそう?」
「お安いご用だよアリサ様♪」「俺に任せてくれ!」「こう見えて結構器用なんだ!」
あの有名な四属性の精霊で風を司るシルフ。そして、魔法が得意なフェイ達がメレンゲ作りに精を出す。
「むむむ……私も棲処に帰らずお屋敷にお邪魔しておけばよかったです! こんな美味しいのを食べていたなんてずるいですよアルティレーネ様、ユニちゃん!?」
「あっはっは! 玄武ちゃん、あぁ、いや、水菜ちゃん! そう言いなさんなって」
一緒に合流していた玄武こと、水菜がホットケーキに惚れ込んだらしく、昨日食べられなかった事にプンスカしてる。それを宥めるのは穀物の妖精コルンムーメ達だ。皆、恰幅良く、人間の女性と同じくらいの身長であるその姿はぶっちゃけ近所のおばさん達である。
「そうですよ水菜。今こうしてアリサお姉さまが直々にお教えしているでしょう?」
「あはは♪ 水菜ちゃんの気持ちはわかるけどね! 凄く美味しかったもんね?」
「私も感動致しましたわ! ふわっふわで甘くて、口に入れれば溶けるように……あぁ! アリサ様にお仕えして本当に良かったですわぁ~♪」
そうですけどぉ~ってちょっとむくれる水菜が可愛い。妖精さん達と一緒におもてなしで食べたホットケーキは私のミーにゃんポーチに入っていた物なので、作りたてそのものだ。ティターニアも喜んで食べていたね。
「ほらっ! そこのボンクラ女王! くっちゃべってばっかりいないで働きな!」
「そうだよこのポンコツ女王! さっきからぼけーって見てばっかで!」
「なぁっ!? なんてこと言いますのあなた達!? あ、痛い! こらっピクシー! つねってはいけませんわ!」
コルンムーメ達とピクシー達に文句を言われ、更につねられるティターニアは涙目である。いやはや、妖精国は本当に賑やかだこと~最初ティターニアを見てホントに女王か? って思ったけど……遠慮なく接する妖精達を見てるとある意味理想的なのかもしれない。
「一度あんた達の会議の場ってのを覗いてみたいもんね。滅茶苦茶紛糾してそうだわ」
「ワン! 実際その通りですワン!」
「ワゥン……ノッカーとブラウニー、ヘルメットを先行させる時もみんながギャンギャン好き放題言ってたワン!」
私が勝手に妖精達の会合というか、話し合いの場面を想像して口に出せば側にいた犬妖精クーシー達がワンワン騒ぎ出す。様々な犬種が揃っておりたまらなく可愛い!
「昨日も凄い大騒ぎでしたよね……」
アルティレーネが苦笑いしつつ、昨日妖精国へ外交に出向いた時の様子を語ってくれた。何でもプチ外交みたいな感じで「ちょっとだけご挨拶を~」と思い、まぁ、日帰りだったしね。気持ち観光感覚だったそうだ。
「事前に話を聞いていたとはいえ、女神様直々に来られたのですよ?」
「そりゃあオメェ大騒ぎってモンよ! がっはっは!」
私達がアルティレーネの話を聞いていると、全身に水を纏う四属性の水精霊ウンディーネと、同じく土精霊のノームが乗っかって来たよ。一応ティターニアは「近々お見えになるでしょう」みたいなニュアンスで話はしていたそうだけどね。
「アポなしだったのは反省ですね、気をつけます。でもあのお祭り騒ぎは楽しかったですよ♪」
「うぅ……私も軽卒でしたわ、収拾つけるのにあんなに苦労することになるなんて……」
あはは、お疲れ様二人とも。
それから、火精霊のサラマンダーとかに協力してもらってみんなでホットケーキを焼いて食べた。メレンゲ作りに失敗したり、火力が強すぎて焦がしたりとまぁ、失敗作も結構出たけどみんなでワイワイしながら終始楽しい雰囲気だったし、仲良くもなれたので万々歳だろう!
しかしながら……残念な事に醤油や味噌と言った発酵食品については妖精さん達も知らないそうで、「カビを食べるの!?」って驚かれたくらいだ。
「カビじゃないけどその仲間って言うか……説明が難しいな、この分だとチーズも厳しいね。どうしたものか……?」
流石に麹菌を一から作る~なんて知識は持ち合わせていないからねぇ、この世界だと名前も違うっていう可能性もあるし……うーん、他の面子にも色々聞いて回ってみるかな?
料理教室っていう親睦会も済んで、集まった妖精さん達は今、各班にわかれて作業に着手した。
バルガスとネヴュラはリンとジュンを相手に訓練、フェリアとパルモーはティリアとヘルメットさんと一緒に建築班で活動してる。あぁ、ユナイトとその連れも一緒にいるはずだね。
アリスと珠実は二人がかりでサーサを見ている、なんでも今日中に無詠唱で魔法を使えるようにしてやるんだ~と息巻いていたね、頑張れサーサ。
アイギス、ドガ、ゼルワ、レイリーアは四神……水菜は今ここにいるから他の三人に相手をしてもらって訓練に励んでいる。
グリフォン軍団は一部が妖精さん達の護衛で各班に配置され、残ったのはゼーロの指揮で訓練している。護衛は交替交替で入れ替わり行うんだってさ。
今屋敷に残ってるのは私、アルティレーネ、ユニ、水菜、エスペル達にミーナ。妖精さん達はティターニアに、ニンフのアルセイデス、ネレイデス、ナイアデス。屋敷の外で日向ぼっこしてるドリュアス達に、川で遊んでるセルキーとまぁ、結構いるね。フェイとコルンムーメも何人か残ってるのでハンバーグのレシピを渡して挑戦してもらおうかな?
「「「やってみます!」」」
水菜も含めて元気な返事をもらえたので、アルティレーネとユニに監督してもらって私は席を外すことにする。昨日思った連絡網の構築を黄龍のシドウに相談しておきたいし、アイギスに剣聖の剣技を師事しなくてはいけなかったり、創薬で薬、他にも役立つ魔装具とかも作ったり……忙しいアリサさんなのだよ。
──────────────────────────────
【出した手紙】~体の固いアイギス~
──────────────────────────────
「そう言えばアリサ様」
「ん? どしたんアイギス?」
アイギス達に合流した私は、早速剣聖剣技を伝授するために、アイギスと木剣で軽く打ち合った。どんな風に教えればいいか私も試行錯誤していかないといけないからね。今のアイギスがどんな動きをするかとか知るためにもこの打ち合い……乱取り? まぁ、稽古でいいか。は重要になる。
今は一通り打ち合いが終わって小休止の最中だ、少し離れたところではゼルワ、ドガ、レイリーアが人の形をとった大地、朱美、爽矢とマンツーマンで訓練に励んでいる。
「ギルマスに渡す手紙を見て、アルティレーネ様がなにやら呟いて手紙に何かを施したようなのですが……なんだかわかりますか?」
「あぁ~なんでも『神聖文字』で一言追記しておいたって言ってたよ?」
朝食を食べ終えた後だ、昨夜に書いた冒険者ギルドマスター宛の手紙をアイギスはアルティレーネに渡して読んでもらい、不備がないかを確認してもらっていたのだ。その時に、アルティレーネが手紙に手を沿えて共通語とは違う不思議な文字、『神聖文字』でとある一文を追記したのだ。
そうしてその手紙はサーサの使い魔である白い鳩に預けられ、その護衛に私が召喚したオプション……今回はちびレイミーアだ。が一緒に飛び立っていった。鳩の速度に合わせるので少し届くまで時間が掛かるかもしれないね。
「なるほど……アルティレーネ様には何かお考えがあるのですね……」
「まぁ、そう言うことだね。それよりアイギスさぁ……」
「え? なんでしょうか?」
軽くだけど打ち合ってみてわかった。
「あんた身体固くない? そのまま足を真っ直ぐ伸ばして、膝曲げずに足の爪先触れる?」
やってみそ。って、地面に腰をおろしているアイギスに指示を出して前屈させてみる。
「うおぉ……こ、これ以上は膝が痛くて無理ですっ!」
「うわぁ……マジか、予想以上に固いね? それだと怪我しやすくなるぞい」
足首掴むのが精一杯のアイギス。うーん、打ち合いの最中、動きを見ててもしかしたらとは思っていたけど、ここまで固いとは思わなかった。
「盾役って事で柔軟性よりも堅牢性に重点置かれてる感じだね、どっしりとした安定感あるように見えるけど……ほれ、立ってみそ?」
「はい!」
休憩終わりとばかりに再びアイギスと剣を打ち合う。ただ、さっきとは違い敢えてアイギスの死角を執拗に狙い、彼を動かせる。
「切り返しがちょっと遅いね、ほら?」
ずでーん! 私の動きに翻弄されたアイギスは持ち前の安定性を欠いて、バランスを崩したところをポンって背中を押してやればあっさりと地面に倒れこむ。
「うわあっ!?」
「立ち上がるのが遅いよ?」
ピタッって受け身を取った姿勢のアイギスの首に木剣を沿える。
「ま、参りました……」
「身体固いと咄嗟に回避行動取る時も遅れるし、怪我もしやすくなるんだよね。今日からお風呂入った後毎日柔軟体操しようか?」
「じゅうなん……なるほど、わかりました! ご指導のほどよろしくお願いしますアリサ様!」
一朝一夕で効果が出る訳じゃない、ちゃんと継続して毎日やるんだよって伝えたとこで……
「おぉ~い魔女や~探したぞ?」
空からシドウに声をかけられた。私を探してたって何かあったのかな? まぁ、私もシドウに相談あったからちょうどいいかな。
「屋敷に手土産を持っていったんじゃが、ヌシがおらんでな。女神とユニちゃんに聞いて来たんじゃ、なんぞ相談があるそうじゃな?」
「おぉ~わざわざありがとうね! アルティ達の様子はどうだった?」
「ふはは! なんぞ玄武……いや、水菜じゃったな。妖精共も一緒になってたまねぎに涙しておったわ! 「たまねぎ痛いですーっ!」とな! わはは!」
「はははっ! 私も昨夜に経験しましたよシドウ殿」
アハハ♪ 頑張ってみじん切りにしてるんだね。
空から降りて人の姿になったシドウと、私、アイギスの三人で軽く談笑。お酒とか食材とか色々持ってきてくれたそうだ、帰ったら確認しよう。
「それで、相談なんだけど……」
私が『聖域』を留守にする間の連絡手段や、緊急事態が発生した時の態勢なんかを色々話して相談してみたよ。
「ふむ、それじゃったら、こう言うのはどうじゃ?」
「……しかし、それですと『聖域』が手薄になるのではありませんか?」
「いやいや、こんな感じにするのはどうかな?」
そうして暫く三人で話し合って、ある程度納得の行く案が出来た。後はこの案をみんなにも知らせて、改善点があれば都度変えて行こう。
「よし、二人とも相談に乗ってくれてありがとね!」
「なんのなんの、お安いご用じゃて」
「お礼を言うのは私の方ですよアリサ様!」
シドウをギャラリーに加え、再びアイギスの訓練を開始する。
売りに出すお薬。魔装具。スタンピートに備えての訓練、『聖域』を留守にする時の対応……着々と街に、『セリアベール』に向かうための準備が整いつつあった。
この世界に転生して初めての街だ。多少の不安もあるけど、やっぱり楽しみだね!
アリサ「ケットシー達もクーシー達もみんなもふもふで可愛いねぇ~(σ≧▽≦)σ」
ケットシー「お褒め頂き光栄ですにゃー(*≧ω≦)」
クーシー「アリサ様は撫でるのがお上手ですワン♪ あぁぁたまりませんワーン(*゜∀゜*)」
アイギス「うむむ……アリサ様にあのように撫で回されて、なんて羨ましい(≧口≦)ノ」
ユニ「え、羨ましいんだアイギスのおにぃちゃん。じゃあおにぃちゃんもこれ着る~(´・ω・`)?」
アイギス「ユニ殿、これは一体(; ゜ ロ゜)?」
ユニ「レウィリリーネ様が作ったミーにゃんスーツだよ~モコモコで可愛いの(*´∇`)サイズが自動で着る人に合わさる魔装具なんだって( ・∇・)スゴーイ」
アイギス「な、なんと言う無駄な高性能っぷり……レウィリリーネ様、何をやってるんですか(;^o^)」
ユニ「アリサおねぇちゃーん♪ ユニも撫でて撫でて~ヽ(*>∇<)ノ」
アリサ「あら! なんて可愛いユニミーにゃん! いーっぱい撫でてあげるね~ヽ(〃´∀`〃)ノ」
アイギス「おぉっ! こうしてはいられん! 私もヽ(゜Д゜)ノ」
ゼルワ「いや、落ち着けよアイギス……( ̄ー ̄)」
ドガ「オヌシのその姿、アリサ様ドン引きするぞい(-_-;)」
アイギス「そんなことはない! 私は行くぞ! うおぉ~! アリサ様ぁ~(≧□≦)」
アリサ「うわぁ! キモイ! なにやってんのアイギスΣ(Д゜;/)/」
ゼルワとドガ「言わんこっちゃない……合掌(-人-;)」




