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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
23/211

23話 魔女と二度目の会議

──────────────────────────────

【拗ねる珠実】~座ってろ~

──────────────────────────────


 はい、皆さんこんにちは。アリサです。まず、アリスと『聖域』の面子とのバトルを楽しみにしていた方、ごめんなさい。始まって数分足らずで私が介入して終わらせちゃいました。

 と、言うのも、珠実が怪我するところを見ちゃったからなんだよね……


「うぅ、マスターはちっちゃい子に甘過ぎませんかぁ~?」

「だまらっしゃい。訓練とはいってもノリノリで小さい子に魔法撃つような事しでかすあんたは、書記よ! ちゃんと議事録作るように」


 少し回想するとこんな感じ。


《先手必勝だ! 食らうがよい熱光線(プロミネンス・レイ)!》

「馬鹿の一つ覚えって言葉、知ってますかぁ?」


 先ずはガルーダが得意の熱光線(プロミネンス・レイ)を仕掛けるものの、アリスはどこ吹く風で微動だにしなかった。その理由が……


《うおぉ!》《危ねぇ!》《ガルーダ兄貴なにやってんだよ!》

《なんと! これは魔神の!!》


 熱光線(プロミネンス・レイ)がアリスに近付いたと思ったら、なんと、跳ね返ってガルーダ含めグリフォン軍団に襲い掛かった。


「はい~よく覚えていましたねぇ~? そうですよ、魔神が常時張り巡らせていた反射(リフレクション)領域(フィールド)ですねぇ! そして~」


 アリスが傘をくるくる回し、前方に突きつけて自身もくるんと一回転。するとアリスを中心に円環状に衝撃波が疾る。


《グワーッ!!?》《ギャース》《うげぇっ!》《おわぁっ!》


 アリスの衝撃波(ショックウェーブ)の直撃を受けたグリフォン軍団はこれで脱落。落ちてくる彼等を浮遊(フロート)で保護して続き。


「舐めやがって、さっきの借りは返すぜ!」

「びゃっくん、無闇に突っ込んじゃ駄目! 反射されちゃうよ!?」

「なに、魔法でなければよいのだ! 白虎よ我も行くぞ!」

「そのキレイな顔、歪めてあげるわ!」


 今度は人型から本来の姿に戻った四神達のコンビネーションアタックだ、ふぅん、あの反射(リフレクション)領域(フィールド)って物理は通すのか。


「あら、嫌だ……やっば~んですよぉ?」

「はっ! 今更ヤベェとか思っても遅ぇんだよ!」


ドガッ! バキッ! ゴッ! ドゴッ!


「ぐあっ!?」「嘘っ!?」「痛い……」「マジかっ!?」

「はぁ、『野蛮』って言ったんです~何勘違いしてるんでしょうねぇ?」


 四神達の攻撃を総てカウンターの一撃で沈めて、四神脱落。うん、剣聖奥義・神旋程じゃないにしろ結構な威力のカウンターだったね。


「ジュン、お主のそのタフネスで時間を稼ぐのじゃ! 妾があの厄介な領域を消すまでな!」

「任せるんだぞーっ!」

「ふっ、余は死角から攻撃を加える。シドウ、自慢のブレスをお見舞いしてやれ!」

「はぁ~なんで儂まで……仕方ないのぅ」


 懐刀はジュンが盾役みたいだね、リンはその素早さを活かして撹乱するのかな? 珠実がサポート役でシドウが火力を担う感じ? あれ、結構バランス良く纏まってるんだね。因みに、リンとジュンは小さいは可愛い(ミニムーラブリー)を解除していないままだ。小さくなっても別に能力は変わらないからね。小回り利く方がいいんだろう。


「あなた方のようないわゆる「定番」の組み合わせにはですねぇ……」


 アリスが傘を珠実に向けて、火槍(ファイアランス)氷弾(アイスショット)土刺(ロックニードル)風刃(ウィンドカッター)聖光弾(ライトバレット)闇弾(ダークショット)と各属性の基本的な魔法を乱射する。


「やはりのぅ! 真っ先に妾を狙うと思っておったぞ、この生まれたての木っ端聖霊が!」

「サポート役を真っ先に潰す。鉄板ですよねぇ♪」


 しかしそれは珠実も承知の上だったようで、バリアを張って難を逃れた……ように見えたんだけど……


《このまま黙って見ている訳にはいきません。ガルーダ、八咫烏!》

《無論だ!》

《ジュン殿とリン殿に続きましょう!》

「油断大敵雨あられ~ラララ~♪」


 ジュンとリンの攻撃をひらひらとかわし、フェニックス、ガルーダ、八咫烏の三羽時間差攻撃も意に介さず、ノリノリで歌い出すこのゴスロリっ子。


「ふざけおって、見ておれ! その忌々しい領域を消し去ってくれる!」


 と言ってバリアを解除した直後だ。


ドガガッ!!!


「うわあぁっ!!?」

「アハッ♪ こーんな静謐隠蔽魔法も見抜けないんですかぁ~? やだぁ~もぅよっわぁぃ!」


 そう、アリスの初手に打ち出した各属性魔法の中に静かに隠して撃っていた無属性の魔力弾(エナジーショット)も混ざってたんだよね。アリスはその魔力弾(エナジーショット)だけを待機させて、珠実が油断した瞬間に当てたんだ。


「珠実! 大丈夫か!?」「コイツホントに強いんだぞー!」

《珠実殿!?》《おのれっ!》《まるでわたくし達の動きが読まれているように当たりませんね》

「うぐぐ……小賢しい真似を!」


 で、ここで珠実が怪我しちゃったので、私が飛び出ちゃったんだよね。


「珠実! 大丈夫? 直ぐ治すよ!」

「あれ!? ちょっとマスター、これ訓練でっすよぉ~?」

「『無効(ヴォイド)』、―動かないで―」


 アリスの反射(リフレクション)領域(フィールド)無効(ヴォイド)でかき消して、言霊で動きを封じる。


「はわぁ!?」

「訓練なのはわかるけどね、少しやり過ぎよ! 珠実のもふもふが損なわれたらあんた大事なんだからね!? はい! 訓練は中止! アリスの強さはみんなもよくわかったでしょ!?」

「えぇ~……アリスの強さというより、マスターの規格外さが伝わってると思うんですけどぉ~?」


 そんなん知らんがな。回想終わり。


「むぅー! 妾はまだまだやれたのじゃ! アリサ様は過保護じゃ!」


 珠実は今、アイギスの膝の上で不貞腐れている最中だ。確かに過保護かもしれない、見た目で判断しちゃってるとも思うよ。でもね、絵面的に無理なのよ! 見た目十歳くらいの女の子が虐められて怪我してるのを見て、放って置けるわけないじゃん!? 見た目大事!


ごつん。ごつん。ごつん。ごつん。


「あの、珠実殿、私の、顎に、頭が……」


 背のアイギスの顎に後頭部をごつんごつんして、不機嫌さを見せる珠実。そんな怒んないでよ~!


「えぇい! うるさいぞアイの字! 男ならば黙って受け止めよ!」

「そ、そう言われましても……」

「じゃあ、珠実ちゃんアタシのところはどうかしら? そんな骨張った男より柔らかいわよ♪」

「そうしようかの!」


 どうやらアイギスはお気に召さなかった模様。まぁ、アイギスは鎧着込んで見るからに固そうだもんね。


「レイリーア狡いです、私も珠実さんを抱っこしたいのに!」

「うふふ♪ サーサじゃあ、ちょーっと柔らかさが足りないかな?」


 おうおう、煽りよる。自分の胸を指差して挑戦的な目をサーサに向けているぞレイリーア。サーサは明らかにむぅーってなって悔しがってるね。うーん、そんなに大きさ大事かねぇ?


「ほうほう……これはなかなかのモノじゃ! だが、なにか足りんのぅ~」

「あらら、そうなの? うーん、何が足りないのかしら?」


 珠実がレイリーアに取られちゃったから私はユニを抱っこしようかな。ユニ~? って呼んで「はーい」って元気な返事してはトコトコ近寄るユニをゲット。椅子に座る私のお膝に乗せて後ろからぎゅー♪


「あはは~アリサおねぇちゃんのぎゅー嬉しいな~♪」

「むぅー! アリサ様! ユニばっかり狡いのじゃ! 妾も妾も!」

「あぁん!? うぅ、アリサ様にはかなわないのねぇ~ヨヨヨ」


 そうしてると珠実が寄ってきたよ。レイリーアの抱っこはもういいのかな?


「たまちゃ~ん♪」

「ユニ~♪」

「珠実~さっきはごめんねぇ~許して~?」


 ユニとぎゅーする珠実にごめんねぇってするんだけど、珠実は不満なのかなかなか笑顔になってくれない。


「むぅ、アリサ様。妾を抱っこするのじゃ! しからば妾の機嫌もなおるやも知れぬぞ!」

「ふふっお安い御用だよ♪ 機嫌なおして。ちゅっ★」

「わぁーっ! やったのじゃ~アリサ様からほっぺにちゅうしてもらったのじゃ~♪」

「「!!!???」」


ガタガタッ!!


「……おめぇじゃねぇから。座ってろ、アイギス」

「アリスさん、座って下さい」

「「……」」


ストン……


「いいないいなぁ~! アリサおねぇちゃん、ユニにもユニにも~!」

「うん! 勿論だよ。ふふっユニだーいすき。ちゅ★」

「わぁ~い! ユニもアリサおねぇちゃんだぁいすき~♪」


 うへへ、可愛いのぅ可愛いのぅ♪ 二人に挟まれてにやける頬が止められないね!


「たまちゃんたまちゃん! アリサおねぇちゃんにお返しのちゅーしよう?」

「うむ、そうじゃな♪ ではユニ、せーのでゆくぞ~?」


 せーの、ちゅっちゅっ♪


ガタタッッ!!!


「だから座ってろって! おめぇじゃねぇんだよ!?」

「座ってなさいってばアリス! 興奮しないの!」


 やった! ユニと珠実からお返しのほっぺにちゅうもらっちゃったぁ~♪ って、なんかやかましいね。なんなの一体? 私達のイチャイチャタイム邪魔しないで。

 何はともあれ、珠実の機嫌もなおった事だし、早速会議を始めるとしましょうかね。


「さて、お待たせみんな! 会議を始めるよ。はい、みんな注目してね! 今日の議題はこちら!」


 一、命名式

 二、各班分け

 三、冒険者達


 わぁーっ!! ってみんなから嬉しそうな声があがる。主に命名式についてだね、四神達とまだ名付けされていない聖獣達がとっても嬉しそうだよ♪ そう、まずはみんなに私から名前をプレゼントするところから。

 二番目の班分けは、主に農業、酪農、建築の三グループで分けてこれからの活動を効率的に進めたいって事が狙い。そして三番目が……


「私達の事も議題にされているようだぞみんな!」

「ありがてぇ! 相談にのってもらおうぜ!」

「ふふっ、なんだか私達も『聖域』の一員と認められてるようで嬉しいですね♪」

「ほっほっほ、『聖域』の皆様方の知恵を借りられるのであれば百人力じゃのぉ!」

「えぇ! これなら次のスタンピートは楽勝ね!」


 五人の冒険者。『白銀』の話を聞くことだ、スタンピートとか言うなんかよくわかんない現象? に悩まされているみたいだし、相談にのってあげようと思う。街にも興味あるし、出来ればお出掛けしたいもん。


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【命名式】~凄く揺れる~

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「皆さん、お静かに。これよりアリサお姉さまによる命名式を始めますからね?」


 司会進行を務めるアルティレーネの声に庭が静まる。さあ、いよいよ会議スタートだ。

 まずは命名式、今日の朝アーグラスの変な夢に起こされた後、ぷんすかしつつもみんなの名前を考えていたんだよね。


「それでは、呼ばれた者は前に出るように。アリサお姉さまお願いします」


 私は椅子から立ち上がるとみんなの前に出て一声かける。別に厳粛な会議って訳じゃないし気楽に行こう。


「みんな、改めておはよー♪ 集まってくれてありがとね! 約束通りみんなの名前を考えてみたから、発表していくよ。私の主観で決めたから、ちょっとやだなとかあったら遠慮なく言ってちょうだい」


 あくまで私が、この子はこうだろうって漠然としたイメージで決めただけだから、本人が気に入るとは限らない。まぁ、その時は相談して決めていこう。

 最初はセインちゃんだ、出会った順番で呼んでいこう。


「じゃあ、セインちゃん! 私の前に来てくれる?」

「承知した」


 因みに、セインちゃんはジェスチャーで意志疎通するんだけど、通じない人もいるので私が通信魔法の応用で翻訳しつつ肉声を出せるようにしてある。

 セインちゃんは体が小さいので、テーブルの上にちょこんとお座りしては私を見上げる様を取っている。いや、小さいって言ってもミーナくらいのサイズなので、虫としてはかなり大きいか。


「セインちゃん、今まで世界樹(ユグドラシル)を……ユニを守ってくれてありがとう。その誇り高い精神に敬意を表してこの名前を贈ります」


 出会った時に感じたセインちゃんのイメージ、それは世界樹(ユグドラシル)を守る騎士(ナイト)だ。だからセインちゃんにはこの名前を贈りたい。


世界樹の守護騎士(ユナイト)


わあぁーっ!!


 見守るみんなから歓声があがる。どうだろう、我ながら結構カッコいい名前だと思うんだけど?


「有り難く……有り難く拝命致します! アリサ殿! このユナイト、これからも世界樹(ユグドラシル)を守護せし騎士として心命を賭す事を誓おう!」

「うん。お願いね、ユニを守ってね」

「……おめでとうユナイトちゃん。ユニね、いっぱい、いっぱいありがとうって伝えたいよ?」

「おめでとうユナイト! 同じ騎士として、共に死合った仲として祝福させてほしい!」


 ユニが、バルガスが守られた者と、闘った者としてそれぞれの言葉をユナイトにかける。うん、いいねこう言うの。喜びを分かち合えるって素敵だよね!


「私からも祝辞を述べさせて頂きたい。ユナイト殿、おめでとうございます。同じ騎士として心命を賭けて守ろうとする心意気、学ばせて頂きたく思います」

「勇者殿……いや、今はアイギス殿であったな。我こそ感謝したい。今の貴公に言っても栓無き事かもしれぬが、敢えて。貴公の魂に礼を述べたい」


 なんでも、ユナイトに騎士道? みたいな事を叩き込んだのは何を隠そう、かの勇者、アーグラスだったのだそうな。まぁ、アイツの事だからどうせ「魂燃やして熱く吼えろ!」とか言ってそうだけども。


「私が守りたいと思う方は、私などよりも遥か高見におられるもので……」

「騎士が守るのはその方の御身だけではあるまい。真に守らねばならぬのはその心だ」

「っ! 心……」


 ふふっ同じ騎士ってことでユナイトとバルガス、アイギスは色々と通じるとこがあるみたいだね。仲良くおしゃべりしてる、三人が私を見たのでにこって笑顔で返事した。


「感謝します。ユナイト殿、バルガス殿……私は騎士としての本懐を思い出せた」

「「うむ」」


 まとまったかな? 三人はお互いに頷き合い席に戻っていく。じゃあ、続けて行こうか。

 次に出会ったのはモコプーだけど、既にエスペルって名付けてあるので、ペガサスの番だ。


「ペガサス、来てくれるかな?」

「はい! アリサ様!」


 ペガサスで印象的だったのが、妹達に再会した場面だ。女神達と再会した喜びに涙したペガサスの姿を私は絶対に忘れない。


「ありがとねペガサス、妹達を案じてくれて。そして同胞のためにと戦ったあなたの優しさを私も倣いたいわ……だからこの名前を受け取ってほしい」


 顕現した女神の気配を感じて単身空を駆けた天馬。同胞達の為にと勇敢に魔神の残滓と戦った優しい子。


「カイン」


パチパチパチパチ。


 みんなから祝福の拍手が鳴り響く。『優しさ』を意味する英語からの命名だけど、ペガサスにピッタリではないだろうか?


「カイン! 僕はペガサスのカイン! ありがとうございますアリサ様! すごくカッコいいです!」

「おめでとうカイン。いつも私達を思ってくれてありがとう」

「ん、カインのような優しい子を生めたことはあたし達の誇り」

「あはは! またその背中に乗せてね~?」


 アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネの三人が嬉しそうにカインに駆け寄って微笑みあってる。うんうん。えがったえがった♪


「さぁ、どんどん行こう! ガルちゃんかもーん♪」

《うむ! よろしく頼む魔女殿、あぁ、これを期に我もアリサ殿とお呼びしよう》


 ガルーダに会ったのは黄龍こと、シドウが魔神の呪いを受けていたって発覚したときだ。いやいや、あの時は焦ったよねぇ。


「ガルちゃんはねぇ~めっちゃ悩んだのよ? なかなかかっちょえぇ名前が出てこなくてさ」

《いや、別に格好よさとかは求めておらぬが……》

「そこで! 少しアプローチ変えて見たのよ! ガルちゃんってグリフォン軍団を率いてるじゃない?」

《うむ、まだまだ未熟者ばかりだが。大切な眷属達だ》


 そう、ガルーダはあのグリフォン軍団をまとめるボスなのだ。その「軍団」で思ったのが「番号」なのよ、前世の世界には様々な言語があり、数字の読み方もそれぞれ違ってたりするのだ。そこから引っ張れないかと考えたのが……


「ゼーロ、これがガルちゃんの名前! 軍を率いる始まりのゼロ! どうよ?」

《ほう、よいではないか! では我は、ガルーダのゼーロだ。有り難く頂戴するアリサ殿!》


 ゆくゆくは『ガルーダナンバーズ』とか組織して運用させたいね!


「『聖域』の空の守りはゼーロにかかっておるな! 頼むぞ!」

「おー! 頼むんだぞーゼーロ!!」


 リンとジュンが早速ゼーロに声をかけてる。確かに機動力で言うならゼーロがピカイチだろうし、戦闘も任せて安心だろう。心強い仲間のフェニックスと八咫烏も着いているし。というわけで、お次はその二羽にしようかな、順番だと四神達なんだけど、ゼーロのお友達だし良いよね


「フェニックス、八咫烏。二羽とも前に出てちょうだい」

《《はっ! 直ちに!》》


 この二羽は魔神の残滓との戦いに急遽駆け付けてくれた戦士達だ。お陰で随分助かったよ!


「世界の命運を分ける戦いに、臆する事なく駆け付けてくれた勇敢な戦士に感謝をこめて贈るよ。フェニックスには『レイミーア』の名を、八咫烏には『レイヴン』の名前を!」

《『レイミーア』……なんと美しい名でしょうか。心より感謝致します、アリサ様!》

《わたくしは『レイヴン』……なんと勇ましくも凛々しい名でしょうか、慎んで拝命致しますアリサ様》


 フェニックスは不死鳥と言うこともあり、すんなりイメージがわいたよ。不死鳥と言えばやっぱり前世で大ヒットした国民的RPGの三作目に登場したあの鳥だ。同シリーズの八作目では名前を変えて登場していたあの鳥から拝借したのです!

 八咫烏には単純にカラスの英語読み。「クロウ」じゃないのは八咫烏が大きいからだ、両翼広げれば二メートル超えるんじゃないかな? そんなでっかいカラスの事を「レイヴン」って呼ぶんだって記憶がある。


「さぁ、四神のみんなの番だよ~おいでませ!」

「うむ……」「はぁぃ」「うん……」「あぁ……」


 ん? どったの? なんか元気ないけども。四人ともしょぼーんってしてる。


「情けない……このよき日になんたる醜態を……」

「うぅ、せっかくアリサ様にいいとこ見せるチャンスだったのに」

「ホントにね……今回は辞退すべきかしらって思うわ」

「まさか一撃で落とされちまうなんてよぉ~」


 んん~? もしかしてアリスにやられてへこんでるのかな? もう、しょうがないなぁ~……


「ねぇ、何でアリスがあんなに強いかわかるかな? それはね、あなた達の『聖域』を思う心に比例してるからだよ? 過去から今までの『聖域』の歴史を知るみんなの思いの結集。それがアリス。強い筈だよね?」


 まぁ、だからこそアリスはみんなの弱点や癖等も知り尽くしているのだ。ユニが先程アリスはみんなを知ってるみたいと聞いていたが、それは当然。懐刀と四神が敵わないのもまた当然。私は召喚主だから勝てるってだけで、それがなければ多分無理。ガチでやるなら妹達に頼るしかないだろうね。


「ほらっ! しっかりしなさいよ! あんた達はもっと強くなって『聖域』を守るんでしょう!? 悔しくてへこんでるなら、それをバネにしてみょみょーんって立ち上がりなさいよぅ!」


「……みょみょーん、なんだそれは? ふっ……ふはは!」

「あははっ! アリサ様可笑しいです!」

「みょみょーん! みょみょーん! あはははっ! おっかしぃ~!」

「ガハハッ!! 姐御はホント面白ぇなぁ!」


 みょみょーんがそんなにツボかねチミ達? 大袈裟に座ってからの万歳ジャンプをして見せた私に大笑いする四神達、まぁ、元気取り戻したみたいだしいいか。


「見たかアイギス? スゲェ揺れたな?」

「馬鹿者……口に出すんじゃない、それとアリサ様を不埒な目で見るな」

「ゼルワ~?」


 ゼルワがサーサにほっぺたつねられて、アイギスに小突かれてるけどなんだべ?


「よし! 元気になったところで名付けを始めるよ! 青龍!」

「うむ!」


 気を取り直して四神達の名付けを始める。この四人は見た目と司る属性に因んで名前を考えたよ! 最初は青龍だね。


「青龍には『爽矢』の名前を贈るよ。颯爽と現れるその姿は風を切る矢の如しってね!」

「慎んで拝命するアリサ殿! その名に恥じぬ働きを心掛けよう!」


 爽矢は人になるととってもダンディなおじ様だから、いつか執事服着せてみたい……なんて内心思ってるのはナイショだけどね!


「朱雀には『朱美』! 朱色の姿がとっても美しいって意味で考えたの、どうかな?」

「あはは、ありがとうアリサ! 実は結構自慢だったから、嬉しいわ!」


 うんうん、初めて見たとき凄く綺麗って思ったからね。変に捻らず素直に表現してみたんだ。


「げんちゃーん、げんちゃんには『水菜』って名前を贈るよ~! 水面に生える綺麗な草花のような、控え目だけど美しくってイメージかな?」

「なんて素敵な名前でしょう……うぅ、嬉しいけど私名前負けしてませんか?」


 そんなことナイナイ! ほらみんなも似合ってるって言ってるよ?


「あ、ありがとうございますアリサ様! とっても嬉しいです!」


 よかった、喜んでくれたね! さぁ、ラストは白虎。


「びゃっくんは『大地』! この『聖域』の大地を踏み荒らす不届き者はその爪と牙で蹴散らしてやりなさい! この地を守るのはあんたの役目よ!」

「応! その名前、有り難く頂戴するぜ姐御! 大地の守りは俺に任せろ!」


 ほーら、大地は熱血バカだからこう言う熱いノリにすぐ乗ってくる。きっとアーグラスともウマが合ったんだろうねぇ~。

 何はともあれ、これで名付けは終わりかな? じゃあ、次の議題に移ろうか。


──────────────────────────────

【各班分け】~魔除けの指輪~

──────────────────────────────


「みんなーっ! 美味いもん喰いたいかーっ!!?」


おおぉーっ!!!


「はい、そんなわけで司会をアルティレーネ様から変更してこの! ア・リ・スちゃんが~お送りしまっす! いぇ~ぃ! マスター後でアリスにもプリン下さい!」


 いや、いいんだけどね……なんなんだろうアリスのこの意味不明なノリは。プリンはまぁ、もう少しくらいなら作ってもいいんだけど。手作りシチューを作るつもりだから牛乳は残しておきたいんだよ。


「シチュー!!? 名前聞くだけで美味しそうですねぇ♪ みなさんはプリンと言う美味しいの食べましたねぇ? うらやまですよぉ? えぇぃ! うらやまうらやまーっ!」

「アリス、話が進まない……その美味しいものの為にやってる重要な会議」


 レウィリリーネが騒ぐアリスに注意。いやはや、一体誰よアリスに司会やらせたの? ……私でした。さっきまで司会やってたアルティレーネも今回の班分けに組み込むつもりだから、アリスに代わってもらったんだよね。


「そうね、しっかりやってくれたらアリスにもプリン作ってあげるから」

「マジっすか!? えぇ、オホン! それでは皆様、静粛に。これより次の議題に入りたいと思います。司会はアルティレーネ様から代わりまして、アリスが務めさせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします」


 ……ちょろ~ぃ! 百八十度ひっくり返したかのように慇懃アリスになって、テキパキと司会を務めてる。この子は食べ物で釣れば良いのね。


「それでは、マスターからご挨拶を頂きます。皆様、傾聴なさいませ」

「いや、そこまで畏まんなくてもいいんだけど……じゃあ、説明するね」


 ノッカーくん、ブラウニーちゃん、ヘルメットさんの協力が得られた今。彼等をアドバイザーとして、『農業班』、『酪農班』、『建築班』の大きな三つのグループにメンバーを分けて活動したいってことをみんなに説明した。


「うち農業班に入りたいなーっ! 粉モノってこっちっしょ~? それにこう見えて草花に詳しいからね♪」


 え、マジ? フォレアルーネが草花に詳しいなんて正直意外なんだけど!?


「あたしは絶対に酪農班。プリンに魅了された」


 レウィリリーネ、プリンは砂糖も使うから酪農だけじゃダメなんだぞ~? ってその辺りも説明しておくか。


「そうなんだ……どっちかだけじゃ足りない、ん、覚えた」

「私は建築班でしょうか? どうしましょう?」

「アルティは政治担当でしょう? 建築班には私が入るわ!」


 悩むアルティレーネにティリアが申し出るけど、いやいや、あんた主神でしょう? 関わって大丈夫なの?


「えー? お家の模様替えくらいいいじゃんーっ! 仲間外れはイヤよ!?」


 どうやらティリアにとって『聖域』は自分の家みたいな感覚らしいね。まぁ、主神のこの子が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。任せてみようか。そんなわけでざっと各班のリーダーが決まる。


「『農業班』リーダー、フォレアルーネ様。アドバイザーにノッカーくん。『酪農班』リーダー、レウィリリーネ様。アドバイザーにブラウニーちゃん。『建築班』リーダー、ティリア様。アドバイザーにヘルメットさんですね」


 この三班が『聖域』での活動のメインになる。他にはアルティレーネが代表者となって政治的な活動を担う事になるね、今は妖精国との外交くらいだけど、ゆくゆくはアイギス達の住む街にも赴いて挨拶したりするだろう。

 そしてもう一つが探索班だ。この班には私が入る事になる。昨日の会議でみんなで食べた聖域リンゴのように『聖域』に実る作物の収集が目的だね。勿論『聖域』の外に出てアイギス達の街にも行ってみたい、その時はアルティレーネと一緒かな?


「ボクは建築班に入ろうかな~? 土魔法で手伝うって言ったし!」

「私は神殿の案を出した手前、建築班以外ないな!」


 パルモーとフェリアが早速入る班を決めたようだ。確かに神殿建設の案を出したのはフェリアだし、パルモーも土魔法で手伝うと言ってたのを覚えてる。


「ふむ、ネヴュラ。たまにはお前が決めてみよ、我は着いてゆくぞ」

「まぁ、うふふ。そうやって私を立てて下さるところ、好きですよあなた♪」


 ほう……なるほど、ああやってさりげなく男性に好きって言えちゃうのが如何にもカップルって感じで素敵だね。サーサとゼルワもそんな感じなのかな?


「では私達はアルティレーネ様の護衛を務めましょう?」

「うむ、異論はない」


 どうやら二人はアルティレーネのSPになることを選んだみたいだね。私達の大事な妹だからしっかり守ってほしいな。


「マスターは探索班、かつ総括指揮者と言う立場になりますねぇ。どうでしょう? いっそのこと探索班は聖霊ーズで組みませんかぁ~?」


 アリスは探索班を私の聖霊達で組んではどうかと聞いてくるけど、そうなるとミーナ、ユニ、アリスに私の三人と一匹になるのか、ユニとミーナは戦えないから魔物に襲われたら守ってあげないといけないね。どうしようか?


「俺等はどうするよ? どれも面白そうだよな!」

「うむ、この際だ、色々やってみたいものだな!」

「農業か酪農かなぁ~アリサ様みたいに美味しい料理作りたいな」

「建築も楽しそうね、うーん決めらんないわぁー!」


 四神のみんなはなかなか決められないみたい。


《俺達は妖精の護衛だったよな?》《おう、でもまだ二人と一体? だけだぜ?》

《今日は様子見って言ってたな》《んじゃこれから増えんのか?》《その辺どうなんでぃへっぽこ女王?》


 グリフォン軍団の言葉を通訳してティターニアに伝えてあげる、勿論へっぽこの部分は伝えずにだ。そこまで伝えてヘソ曲げられても困るからね。


「実を言いますと、皆怖れてしまって尻込みしてしまっていましたの……」


 あれま、なんでも『聖域』の魔物が妖精達にとってかなり脅威なのだそうだ。協力してくれって言われても魔物が怖くて来るのを嫌がってしまっているのだそうな。ノッカーくんにブラウニーちゃん、そしてヘルメットさんはなかなか肝が据わっているのかもしれない。


「ん、大丈夫。ユニの髪を編み込んだ魔物避けを沢山作ったから。自分から魔物に近付いたりしなきゃ絶対大丈夫」


 おぉ! 流石レウィリリーネだね、仕事が早いよ! レウィリリーネが取り出したのは指輪かな?


「い、頂いて良いんですか?」

「ユニちゃんの髪の毛がこの指輪の中に入ってるんですか?」


 指輪を受け取ったノッカーくんとブラウニーちゃんが、それぞれにレウィリリーネに訪ねてるね。以前から思ってたけど、レウィリリーネはこういった物創るの得意みたい。


「そう、リングの部分に入ってる。これを身に付けていれば魔物の方から避けて行くから」

「感謝しますわぁ~レウィリリーネ様! これがあれば他の妖精も安心して協力出来ますわ! 数点頂いても構いませんの?」

「勿論、ヘルメットは顎紐に通せばいい?」

「応よ! ありがとよ、感謝するぜぇ女神様よ!」


 うん、これで妖精達も人数増えるだろうね! ティターニアに魔除けの指輪を沢山持たせて、班分けの内容を持ち帰ってもらって協力してくれる妖精を募ってもらおう。


「他のみんなも、じっくり考えてくれていいからね? やっぱり別の班に入りたいなって思った時も一声かけてくれればちゃんと考えるから!」


 はーい! と、みんなからいい返事をもらったので、今日のところはこれで良しとする。各班のリーダーが決まっただけでも十分だ。次回までにみんなじっくり考えて来てくれるだろう。


「では『各班分け』についてはこれで〆と致します。皆様、次回までにどの班に入るかを決めておいて下さいませね? それでは次の議題に移ります」


 再び慇懃アリスに戻ったアリスが会議を進行させる。さぁ、次はアイギス達の事情を詳しく聞こう。

アリス「うぐぐっ! アリスもマスターにちゅぅ♥️ されたいぃ~っ! マスターぁマスタあぁぷりぃずちっすみぃぃ~(≧口≦)」

アリサ「アリスちーっす! はい、これでいいよね(´・∀・`)」

アリス「ちがっ……違いますぅぅ~挨拶じゃなくてぇぇっ。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」

珠実「ふはは! 残念じゃったのうアリスよ、妾の勝ちじゃな(* ̄∇ ̄*)」

ユニ「えへへ♪ ユニとたまちゃんの勝利~ヽ(*´∀`*)ノ」

アリス「うーっ悔しい! いつかアリスもマスターからあっつぅいちゅちゅぅ♥️ を頂いてみせますからねぇ~(`へ´*)ノ」

アイギス(お、落ち着け私……じょ、女性同士のふれあいだ。焦ることはない(´・ω・`; ))

ゼルワ「……座ってろアイギス(ーωー)」


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