22話 魔女とゴスロリ
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【待ち望んだ永遠】~ごすろりん~《アリサview》
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とりあえずエプロンから着替えよう、いつもの魔女服……いや、これから結界を張ると言う大事を控えてるんだ。いつの間にか妹達が用意した聖女服にしておこうか。
なんでもこの聖女服は、魔法の行使を一段階強めてくれると言うトンデモ効果付きなのだそうな。対する魔女服は魔法の行使を円滑にしてくれるっていう効果ね。わかりやすく言うなら聖女服は火力重視で、魔女服は連射重視ってとこかな。
最近習得した早着替えを使って一瞬で着替える。前世でやってた動物達との無人島生活を楽しむゲームで、自分のアバターがちょちょいのちょいで着替えてたのをイメージしたら出来たんだよね。
さて、この聖女服だけど……ズバリ言うとティリアの服とおなじである。白……いや、物凄い白。純白、眩しいくらいの白いワンピースに要所要所フリルがついていて結構可愛いんだけど、これでカレーうどん食べたらエライ事になりそう……なんて言ったら、絶対汚れないように魔法をかけてあるんだって! いずれカレーもうどんも作りたいね。
髪には白メインでうっすらピンクのグラデーションロータスの髪飾り。ちょいとセクシィな、でも清楚さが溢れる白いガーターベルト付きオーバーニー。両足首に水色のリボンにビット付きローファーを履いて完成するアリサさんの聖女バージョンだ。決してティリアの2Pカラーではない。
「あぁ、アリサ様……なんて可憐な。とても良くお似合いです……」
お披露目したら直ぐにアイギスが褒めてくれたよ。ふふっ、なんか恥ずかしくて照れちゃうな。少し顔が熱いや。だけど悪い気はしないね。
「あ、ありがとアイギス♪ まぁ、可憐って柄じゃないけどね……」
下手くそな照れ隠しで言葉を濁しちゃう。思わず苦笑い。
「素敵……まるで聖女のようです」
「最初の衣装も、さっきのエプロンも良く似合ってましたけど、その衣装も似合ってるわアリサ様!」
おぉ、サーサとレイリーアの女性陣も褒めてくれたぞ! 同性に褒められるとなんか自信がつくね。
「……相当な逸品ですな、ただならぬ力を感じますわい」
「聖衣……じゃないですか? 本物見るのは初めてだ」
ドガとゼルワは鋭くこの聖女服の性能に気付いたみたい、結構鑑定眼も持ってるのかね? 後、聖衣って言うな。流星拳出しちゃうぞ?
「さて、無事に妖精さん達の協力も得られた事だし、早速今日の会議を始めるよ。でも、その前に大事な事があります……」
屋敷を背に私は集まったみんなに向けて宣言する。みんなの視線を受けて私は頷くと妹達に目をやり、準備はいいかと確認すると皆首肯した。ティリアは主神のためその力を行使しての干渉はできないので、今回も見届け人になってもらう。
「昨日話した結界を張ります。これにはみんなの『聖域』を思う心……願いとか祈り、思いとかを束ねて、『聖霊』として具現化させるから……力を貸してほしいの」
具体的には私の『聖域の魔女』としての権能、『聖霊召喚』と、『聖域の聖女』の権能、『祈り』を組み合わせて使うのだ。集った神獣、聖獣、妖精そして女神達、果てはこの『聖域』に住む皆の同胞達の思いとか、祈りとか、願いと言った心からの感情を束ねて、この『聖域』の守護を担うハイブリッドな『聖霊』を召喚するってこと。
アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネの三人が立ち上がり、静かにその身に神気を纏わせると、場が厳かな空気に包まれる。そう、今から行われるのは神事なのだ。
「……かつて私達が不甲斐ないばかりに、多くの悲劇と苦しみを生んでしまいました」
「世界の調和は崩れ、混沌の時代が訪れた……」
「多くの命が失われ、世界も終焉に進んでいた」
妹達の思いが私に流れ込んでくる。深く、深く。心に刻み込まれるように。
「ユニちゃんを守れなんだあの時の無念、その思いを忘れた事などありはせなんだ」
「悔しかったのぅ……あの時ほど己の無力さを嘆いた事はなかったのじゃ……」
「『神狼』、『女神の懐刀』などと称えられておきながら魔神相手に不様を晒した……なんと情けないことか……」
「もうあんなのイヤだぞー! 凄く悔しくて悲しかったぞー!」
懐刀達も続く。魔神にいいようにされてしまった無念さが痛いほど伝わってくる。
「願うのは優しい世界。もう悲しみも苦しみも十分よ……」
「あぁ、今度こそ『聖域』を守るぜ!」
「父上。どうか見守って下さい……私達のこれからを……」
「散っていった仲間達の願いも含め、思いと祈りを捧げよう……」
そして四神達。そうだね、もういい加減平和で優しい世界がほしいよね、守ろうね。私達の『聖域』……失った仲間達の願いと一緒に。
「見えるか同胞達よ? ……皆の願いは今成就する……命を賭して戦い散っていった朋友よ、その思いと祈りを今、アリサ殿に……」
「ただ静かに平和に暮らしていた僕の同胞達、無惨に奪われたその命が今報われます。受け取って下さい、アリサ様、僕達の思いを!」
(数多くいたわたしの同胞も今やこれだけです……お願いです。どうかわたし達の『聖域』を踏みにじらないで……)
「ぷー……」
セインちゃん、ペガサス、エスペルとモコプー達が、儚く散っていった同胞達への悼みと祈りを捧げてくる。
《ようやく取り戻した『聖域』の空だ。二度と穢させぬ! この決意を思いに変え魔女殿へ託す!》
《応よ!》《受け取ってくれご主人!》《俺等の熱い思い!》《ご主人にふぉーりんらぶだぜ-っ!》《飛べねぇのはもう御免だぜ!》
《ガルーダに同じく……『聖域』を脅かさんとする者あらば、即座に馳せ参じ全霊をもって戦いましょう!》
《わたくし達が望むのは穏やかな平穏。どうかお守り下さい》
ガルーダ、グリフォン軍団、フェニックス、八咫烏が平和を願いつつ、取り戻した空に馳せる思いを熱烈に伝えてくれる。
「私達妖精も、もっと平和に暮らしたいのですわ!」
「のんびり土いじりしたいな、ぼく」
「日溜まりのなかで動物達と遊びたいよ!」
「応! 俺様も祈るぜぇ! 工事は安全第一だかんな!」
ティターニアが、ノッカーくんが、ブラウニーちゃんが、ヘルメットさんがそれぞれに祈りを、思いを届けてくる。そして……
「我等『聖域の魔女』たるアリサ様に仕えし聖魔霊也!」
「我等『聖域』守護せし騎士也!」
「主望む安寧のため我等、剣となりて盾とならん!」
「あの日誓いしこの心! 今こそ光となりて主へと届けん!」
バルガス一家の思いも届いてくる。いや、なにそのセリフ? かっちょえぇな! 練習でもしたんかーい?
「ユニは……いつもみんなに護られてばかり、とっても大事にしてくれたのにユニは……ユニが呪われちゃったせいで……うぅ、もう、あんなのヤダよ! 大好きなみんながユニのせいで倒れていく姿なんてもう、絶対見たくない! アリサおねぇちゃん! お願い!!」
「にゃぁ~」
今までの苦しかった思いを吐露するユニをミーナが心配そうに慰めてくれている。うん。任せてユニ! もう傷つけさせたりしないから! ミーナもありがとね。
「……私達は感謝の思いをこめよう、『魔神戦争』が史実なのはもう疑いようもない。今の私達がこうしていられるのは『聖域』に住まう方々のお陰なのだから!」
「そうじゃな! 精一杯の感謝と、『聖域』の安寧を願おうぞ!」
「はい、『聖域』の素晴らしい景観が荒らされる事がないように!」
「記憶がねぇから、実感もねぇけど。前世の俺達が繋いだっていう『聖域』だ……ろくでなしに荒らされたくはねぇな!」
「えぇ! ここまで良くしてもらったんだもの。アタシ達は『聖域』を他の奴等から守らなきゃ!」
冒険者のみんなまで思いを届けてくれる。本当に良い人達だね! 彼等のような人柄の人物なら歓迎するよ。
私はみんなの気持ちをしっかり受け止めて、願いを乗せた翼達を発動する。みんなの気持ちを背負った二対四翼は美しく煌めき、私を中空へと運んでいく。
「うん。受け取ったよ……みんなの『願い』を、『思い』を、『祈り』を……」
感じるよ凄く切実な気持ち……さぁ、お願い! この『思い』と『祈り』と『願い』に応えて! 私はみんなから受け取った気持ちと、自分の万感の思いををこめてイメージを具現化させる! 今まで辛く苦しい、悲しみに満ちた世界に終わりを告げる祝福の音色!
「『福音』」
ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン
『聖域』に満ちる大鐘楼の鐘と共に、八つの巨大な聖印が温かな光を伴い、八芒星を描き『聖域』を島ごと包むと美しいオーロラが空に現れる。
ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン
八回の大鐘楼の鐘の音が止むと、私の眼前に積層型の魔方陣が出現し、上下に光りながら消えて行くと、そこには一人の女の子の姿があった。ゴシックロリィタファッションで統一されたその姿はなんともゴージャス感が溢れている。
「『聖域結界・待ち望んだ永遠』構築。無事完了致しました……マスター」
貴族令嬢の礼節で優雅にお辞儀する女の子、そう。この子がみんなの気持ちを汲んで召喚された『聖霊』だ。黒を基調に白いレースやフリルにリボンをふんだんに付けたゴスロリドレスにヘッドドレス。右と左で長さの違うモノクロのソックス、足首の裏側にリボンがくる厚底のパンプス。ふむ、傘もほしいね。小さくて可愛いの。そうすれば完璧だろう! まぁ、今は挨拶だね。
「うん。ありがとう、初めまして。私は『聖域の魔女』アリサ。よろしくね♪」
「……はい、よろしくお願いいたします。マイマスター……はぁ、なんて神々しくも美しいのでしょう……」
うん? なんかやたら熱のこもった視線送ってくる子だねぇ。とりあえず、名前を考えてあげようかな。ゴスロリっ子だからなぁ~うーん……
「よし、貴女をアリスって名付けようって思うけど、どうかな?」
「畏まりました、慎んで拝命致します。改めて……私はアリス。『聖域の魔女』アリサ様の『聖霊』アリスです。貴女様の忠実なる僕に御座います」
うん、良い子そうだね。全身黒ずくめにお腹くらいまで伸びた黒髪は艶やかで綺麗なストレート、瞳は灰色に近い銀色で私より少し低い背丈は百五十センチくらいかな? 早速さっき思った傘をプレゼントしてあげよう。
「はい、これあげる! アリスのファッションに似合うと思うよ」
「傘……とても可愛らしいですね! 有り難く頂戴致します」
アリスにあげた傘は三段フリルに豪華な刺繍が施されたゴシックロリィタな日傘だ。私の神気で具現させたのでちょっとやそっとじゃ壊れないし、使いようによっては魔法使う時の補助する杖にも、刺突攻撃も出来る。
「あぁ、なんて素晴らしい……マスターの愛をひしひしと感じます。これはもう私達相思相愛では?」
うん……なんかよくわかんないこと言い出してるけど、みんなにも紹介してあげよう。なんか恍惚としてるアリスを引っ張って私達は屋敷に降りていく。
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【アリスちゃん凄い】~駄虎介~《ユニview》
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アリサおねぇちゃんが背中に四枚の翼を広げて空に昇って行く。凄い綺麗! ユニ達は揃ってアリサおねぇちゃんの姿を見上げてる、女神様のようなユニの自慢のおねぇちゃんを!
「うん。受け取ったよ……みんなの『願い』を、『思い』を、『祈り』を……」
ユニ達『聖域』のみんなの気持ちを受け止めて、アリサおねぇちゃんが叶えようとしてくれるんだ。嬉しい……みんな今まで凄く大変だったから、ようやく安心して暮らせる事に喜びを隠せない!
「『福音』」
ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン
「うおぉ!? スゲェ! とんでもねぇ神気だぜ!」
「こ、これが『聖霊召喚』なんですか!?」
「なんて心に響く鐘の音じゃ……まるで祝福を受けているかのようじゃの」
「ねぇ! アタシ達って今凄い事態を目撃してるんじゃないかしら!?」
「あぁ、間違いない……今の私達は、歴史の立会人だ!」
『聖域』中に大きな鐘の音色が響き渡ってユニ達みんなを包んで行くよ。冒険者のお兄ちゃん達はアリサおねぇちゃんを見上げてとっても驚いてる。ふふっ! 凄いでしょ? ユニのおねぇちゃんなんだよ!?
「見て! あんな巨大な聖印見たことないわ!」
「八つ!? 八つの聖印を使う結界なんて間違いなく大魔法じゃないですか!?」
「頼むぜ姐御! 俺達の『聖域』を護る結界、見せてくれ!」
「おぉっ! 聖印が八芒星を描いて行く!」
同じように驚いてるのは四神のみんな。四神達が言うように、アリサおねぇちゃんの周りに光の聖印が次々と現れて『聖域』の四方八方に飛んで行く。
島の各方角から天まで届く光の柱が立ち上がって、上空に八芒星を描きあげた。なんて綺麗であったかい光だろう……まるでアリサおねぇちゃんとベットで寝てる時みたいなあったかさ、安らぎを感じるよ♪
ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン、ゴォォーン
八回の大きな鐘の音が鳴り響いて、『聖域』の空に幻想的なオーロラが出現する。そのオーロラはお日さまの光に揺らめいて、様々な色合いをユニ達に見せて楽しませてくれる。
「なんと美しいのじゃ……」
空を見上げるたまちゃんがユニ達みんなの心を代弁するように呟いた。そして……
「あの女の子が『聖霊』なのかしら? お姫様みたいね!」
「見よ、二人が降りてくるぞい!」
レイリーアのお姉さんとドガおじいちゃんがアリサおねぇちゃんと、召喚されたふわふわな服の黒い女の子を指差して興奮してる。あの女の子もユニとミーナちゃんと同じ、アリサおねぇちゃんの『聖霊』さんだ! えへへ、仲良く出来るといいな♪
「みんな、お待たせ! 無事に結界が張れたよ。で、この子がみんなの『聖域』を思う心から生まれた『聖霊』アリスね! アリス、みんなにも挨拶しよ?」
アリサおねぇちゃんと一緒にお屋敷に降りてきたアリスちゃん。間近で見るととってもキレイ! フリフリの可愛いドレスに傘いいなぁ~♪ ユニもほしいな。
アリサおねぇちゃんに促されたアリスちゃんは、みんなに向かって優雅にお辞儀すると……
「ちょりーっす! アリスちゃんでーす♪ マスターの愛しい愛しい~シ・モ・ベ★ みなさぁん、よろピコ~♪」
ものすごい変な挨拶受けました。
「え……? あ、アリスさん? どいうこと? さっきと全然キャラ違うじゃん!?」
「あぁ~ん! マスターはこういうのお嫌いですかぁ? 慇懃なアリスの方がお好きです~?」
えっと……? アリスちゃんの行動に絶句して状況が理解できないよぅ~さっきまで凄く優雅に、それこそアルティレーネさまみたいに淑やかな女の子してたのに。傘を持った右手の人差し指を頬にあてて、左手をユニ達の前に伸ばし広げて、右足つま先立ち左足をくの字にしてウインクばちこーん♪ して決めた挨拶。目が点になるってこういうこと~?
「あ、いや……まぁ、それもあんたの個性だろうしいいけど……そんなに抱き付かない」
「きゃーん♪ ユニちゃんは沢山抱きついてるじゃないですかぁ~? マスター、アリスもくっつきたいです!」
「いや、そうだけど……もぅ、話が進まないでしょう? ちゃんとみんなに説明しようよ?」
しょうのない子ね~って、くっついたアリスちゃんを引き剥がすアリサおねぇちゃん。ふふっ! アリスちゃんもアリサおねぇちゃんが大好きなんだね!
「あぁん、はーい了解しましたマスター!」
「って訳で、この子が張った結界、『聖域結界・待ち望んだ永遠』は昨日話してた……端的に悪い奴を弾くって効果と、そういった心を改心させる効果、更に……」
「外部からの攻撃を跳ね返すって効果を持った、アリスちゃん特製のスーパーな結界でっす!」
オオーッ!! って成り行きを見守ってたみんなから嬉しそうな歓声が上がる。わぁ~凄い凄い! みんなの『聖域』を守りたいって気持ちがそのまま形になったみたい! これでみんな安心して暮らせるね♪
「あぁ、それから……」
「こんな小せえのにスゲェんだなアリス! 俺は四神の白虎だ、よろしくな!」
アリサおねぇちゃんが何か言いかけてたんだけど、びゃっくんがアリスちゃんの頭をなでなでして挨拶始めちゃった。もう~しょうがないなぁ~嬉しいのはわかるけどまだお話の途中だよ~?
ドゴオォッ!!!!
「ぐっへぇっ!?」
「『さん』をつけやがれなさい! この駄虎介がっ! 後、見た目で判断すんじゃねぇですよ!?」
うわわわっ!? アリスちゃんがびゃっくんのお腹にぱんちしたぁ!? 痛烈な左ブローだよ! びゃっくんたまらずだうーん!!
「ったく! ついでに女性に気安く触れるんじゃねぇですよ?」
「……私より強いこの子にみんなの訓練担当になってもらおうって、言おうとしたんだけどねぇ~」
アリス、やり過ぎよ。ってアリサおねぇちゃんがアリスちゃんを諫めてるけど……えぇ~アリスちゃんってアリサおねぇちゃんより強いの!?
「白虎大丈夫? って、アリサそれホントなの!? 貴女よりこの子の方が強いって……ウソでしょう?」
「そうですよ、『聖霊』は謂わば使い魔の上位存在。主より強ければ従える事など出来ません」
朱雀お姉さんとげんちゃんがダウンしたびゃっくんを介抱しながらアリサおねぇちゃんに聞いてる。うん、そうだよね……アリサおねぇちゃんより強いなんて信じられないよ。
「イヤですね~もぅ! アリスがマスターに敵うわけないじゃないですかぁ♪ 今のは、マスターのご謙遜ですよ♪」
「いや……私の力は妹達からの借り物みたいな物だからね? それがなきゃ私一般人だよ?」
えぇ~? そんなことないよ!? 確か加護って与えられても、ちゃんと認識してその効果を引き出せるようになるまで凄く大変だった筈なんだよ?
「ふむ、謙遜であるな……加護を授けられただけではそこまでの強さは得られぬ。その加護をしかと認識し理解せねば意味が無いに等しいのだ。女神達よアリサ様に説明せんのか?」
「あー……加護について説明したのって昨夜だったね、内容だけ、だけど」
「ん、アリサお姉さんは初めから、あまりにも自然に力を使っていたから……」
「普通は認識するにも一苦労するのでしたね。ふふっ、でもその謙虚さこそアリサお姉さまの美徳だと思いますので」
リンちゃんも気付いたみたいで女神さま達に聞いてるね。でも……うん。そっか、確かにアリサおねぇちゃんの控え目なところとか大好きかも! 凄いことをしても全然威張ったりしないもん。寧ろ「みんなのおかげだよ」って言ってくれるもんね!
「あっれぇ~? 女神様達に~よく見れば主神様もいらっしゃるじゃないですか~! 丁度よかった、アリスぅ~お聞きしたかった事があるんですけどぉ~? いいですかぁ?」
アリスちゃんも女神様達に顔を向けて気付いたみたい。うーん、なんか変なしゃべり方だね~。
「……えぇ、なんでしょうか?」
「どうして『魔神』を事前に止められなかったのですか?」
ゾクッ!!
一瞬、そう……一瞬の内に周囲の空気が急激に冷えたのを感じる。え……? アリスちゃん、怒ってる……?
「そ、それは……」
「ねぇ? 主神ティリア様、魔神の様子がおかしくなっているってわかっていたんですよねぇ?」
「……っ」
ユニ達はアリスちゃんと女神さま達のやり取りをハラハラした思いで見守る。アルティレーネさまが答えを言い淀み、ティリアさまは歯を食いしばって俯いてしまう。フォレアルーネさまは悲しそうに目を逸らして、レウィリリーネさまは目を閉じて泣き出しそう。やだ……やめてよ! こんな悲しそうな女神さま達見たくないよ?
「アリスは先程マスターが仰られたように、『聖域』の意思です。今のアリスの言葉はつまり『聖域』の言葉……さぁ、教えて下さいよ。何故止められなかったのかを」
や、やめてよぅ……どうして今更そんなこと聞くの? 折角楽しく過ごせるようになったのに、アリサおねぇちゃん、アリスちゃんを止めて!
ユニがそうアリサおねぇちゃんに声をかけようとして、見ればアリサおねぇちゃんは優しく微笑んでる。まるで「大丈夫だよ」って言ってるみたいに。
「え?」
って思ってみんなを見れば、緊張で表情を強張らせているんだけど。アリサおねぇちゃんはさっきも言ったように優しく微笑んでいて、シドウおじいちゃんは苦笑いをしている。シドウおじいちゃんも何か知ってるの?
「……ごめんなさい。魔神を止められなかったのは確かに私の落ち度よ、そのせいであなた達にはとてつもない迷惑をかけてしまったわ」
「今、『神界』では二度とこのような事態を起こさないように徹底的に対策が講じられています……だからといってこの世界が被った被害が帳消しになどなりませんが」
「うちらさ、世界を創るって事に浮かれて、魔神への警戒が疎かになっちゃったのも事実だね……」
「ん……まさか掟を破る訳がない。なんて、楽観してた……」
女神さま達は申し訳なさそうに、ユニ達『聖域』のみんなに向かって、深々と頭を下げた。
「「「「本当にごめんなさい!」」」」
びっくりした。アルティレーネさま、レウィリリーネさま、フォレアルーネさまの三人だけじゃなくてティリアさままでユニ達に「ごめんなさい」したの!!
「はぁい♪ ちゃぁんと『ごめんなさい』いただきましたでっす! ウンウン。いいですねぇ~やっぱり上下左右風通しは良くしておきませんとねぇ~マスター♪」
「ふぅむ……つまり『女神だから』、『格上だから』等と変に気を遣って上辺だけ取り繕った薄っぺらい関係ではいかんと言いたいのじゃな?」
表情を一変させたアリスちゃんの言葉にシドウおじいちゃんが髭を撫でながら聞き返した。あっ……うぅ、そうだったんだ……だからアリサおねぇちゃんは止めなかったんだ。アリスちゃんはさっきまでの怖い雰囲気がウソみたいににぱーって笑顔。ハラハラしてたみんなもホッとしてる。
「そう、ですね……えぇ! その通りです。『聖域』に住まう皆さん、アリスさんとシドウが言うように、どうか遠慮しないで下さい」
「……神、なんて所詮一つの種族でしかないから」
「そだね! うちらなんて結局小娘だかんね~いっぱい間違えるし失敗もしちゃうよ」
「……はぁ、主神なんて言っても、私はまだまだだわ。色々学ばないといけないわね」
『神様は偉い』って思ってた。ううん、実際に偉いんだろう。なんせこの世界を創造したんだから。世界は神様の所有物なんだ。そこに『住まわせてもらっている』以上は感謝して敬うのが当然だろうし、文句なんて言っちゃ駄目って思ってたのに……
「あー、うん。あんまり偉そうなこと言いたくないけど。アリスちゃんや、『親しき仲にも礼儀あり』って言葉もあんのよ? だからそんなにくっつかないの!!」
「あぁん! これはアリスなりの礼儀ですぅ~! ハグは最高の礼儀でっす!」
アハハ! アリスちゃんってばアリサおねぇちゃんに抱きついて、両手で押し返されてるよ!
「んもぅ~マスターってば照れ屋さんですね! 仕方ありません、続きは二人きりの時に。ということで! まぁ、何て言うんですかね? こういう仲間意識ってアリス達よりもそこの冒険者さん達の方が強いし詳しいって思うんですけどぉ~どうです~そこなムッツリスケベさん?」
「わ、私はムッツリではありません!」
ぐいーってアリサおねぇちゃんに押し返されたアリスちゃん。むぅ~アリスちゃんばっかりズルい! 今度はユニがくっつくもん。まぁ、それはともかくムッツリスケベってなんだろう?
「アイギスはムッツリだろ?」
「オホン、どなたかに対して悶々とされているようですし?」
「もしかして隠せてるとでも思ってたのかしら~?」
「バレバレじゃぞ、アイギスよ?」
ぬわぁぁーって変な叫びをあげるアイギスのおにぃちゃんを見て、みんな大笑いしてる~うー、楽しそうなのはいいけどさっぱりわかんないよ!
「アリサおねぇちゃん、アイギスおにぃちゃんはなんでもんどりうってるの?」
「うーん、私もさっぱりだよ。笑いどころがわかんないなぁ~アイギスくらいの歳の男なんてみんなスケベなのは普通だし」
アリサおねぇちゃんもわかんないみたい。なんなんだろう?
「アリサ姉さん……鈍感すぎでしょ」
「しっ! ティリア姉さまお静かに。気付かれないならそれにこしたことありません」
「そうそう、例えアーグラっちの生まれ変わりでもそう簡単にアリサ姉を取られる訳にはいかないっしょ?」
「ん、アリサお姉さんは渡さない」
ん? なんだろう~女神様達がナイショ話ししてる~。後で聞いてみよっと!
「アリスさんの言われるように私達は仲間と信頼しあっています。助け合い、励まし合い……」
「ホッホッ時に喧嘩もしたりの!」
「そうね、一緒に泣いて笑って騒いで……」
「ははっ! 照れ臭いけど俺は『白銀』こそ家族だって思ってますよ」
「それこそが『パーティー』なんです」
冒険者のみんなが仲間について教えてくれる、アイギスのおにぃちゃんも、のたうちまわってたのから立ち直って力強く頷いてる。パーティー……素敵だね! ユニもアリサおねぇちゃんの家族だよ♪
「我等四神同士の絆のようなものだな……うむ、かつての勇者達も強い絆で結ばれていたな」
「おぉ~痛ぇ~効いたぜぇ……って、話し聞けばあれか? 女神達にも姐御みてぇに接すりゃいいってこったろ?」
青龍が話を聞いて納得したみたい、復活したびゃっくんもなるほどな~って言ってる。
「そっかそうなんだ、家族に遠慮なんていらないんだ。いっぱいお話しして、笑い合ったり時に喧嘩したり。悲しんだり、悩んだり、でもちゃんとごめんなさいして、仲直りして……そんな家族になれたらいいなって事なんだね!」
どうだ~! ユニもわかっちゃったよ!? ユニは得意気にみんなに向かってしゃべったの。そしたらね、アリサおねぇちゃんが凄く嬉しそうにユニをぎゅってしてくれたよ♪
「そうだよ~ユニ! 偉いね、ちゃんと理解できたね♪ なでなでしちゃうよ~!」
「さっすがユニちゃんでっす♪ それでこそアリスの先輩ですよぉ! アリスもなでなでさせて下さい!」
「その通りですユニ殿。それでこそ本当の仲間と言えましょう」
アリスちゃんもユニのことなでなでしてくれた、嬉しい~♪ アイギスおにぃちゃん達、冒険者達のみんなも嬉しそうに喜んでくれてる!
「にゃあーん」
「はっ!? いやいや、忘れてなどいませんミーナ大先輩! 抱っこさせてくだぁさい! おなしゃっす!」
突然足元に来たミーナちゃんにびっくりするアリスちゃん。そう言えば、アリスちゃんって……
「アリスちゃん、なんだかもうみんなのこと知ってるみたい」
「はい~アリスは『聖域』そのものって言っても過言じゃないんでぇ、全部知ってるのでっす! どぅです~結構スゴくないですかぁ~?」
わぁ、そうなんだ! 凄い!
「でぇすので~懐刀のヘタレっぷりも、四神の情けない姿も、そこの鳥共の泣きっ面も……知ってんだぞこんにゃろーども!?」
アリスちゃんが鍛え直してやんよ、有り難く思いやがれですよぉ? って、みんなに叫ぶアリスちゃん。うーん、コロコロ態度が変わって馴れると面白いかもしれないなぁ~。
「おのれ言わせておけば~妾達をヘタレ呼ばわりするか!」
「私を白虎と同じと思わない事ね!」
《泣きっ面とは聞き捨てならんな!》
《当時のわたくし達と同じと思わぬことです!》
《ぐわーっ!》《ぐわぐわーっ!》
あわわっ!? 大変だよ! 今にもみんなアリスちゃんに飛びかかりそう!
「あ、アリサおねぇちゃん! 止めなくていいの!?」
「良いんじゃない? 実際にアリスの強さ知れば納得もするだろうし」
えぇ~? 大丈夫かなぁ?
「まだ議題残ってるんだからね~? 十分で終わらせるように! 後、空でやってね!」
「おっ任せでっすマスター! 五分で済ませますぅ~♪」
上等だ!! ってみんな空に飛び上がっちゃったよ、あわわ……アリスちゃん一人でみんなを相手にするなんて無茶なんじゃないかなぁ~?
アリス「あぁぁ~♪ ミーナ大先輩ぃぃ~さいっこうのもふもふでっす(ノ≧∀≦)ノ」
ミーナ「うなぁぁ~ん(´・ω・`)?」
ユニ「アリスちゃんもミーナちゃんにメロメロだねぇ♪(*´∇`*)」
アリス「あぅん♥️ なんてぷにぷにな肉球ですかぁ~!? もぅもぅ~アリスはたまりません(゜∀゜)ノ」
アリサ「また一人ミーにゃんの虜に……( ̄ー+ ̄)」




