169話
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【浮遊大陸】~お姫様?~《ミストview》
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「ミスト姫のおなぁぁ~りぃぃ~♪ ミスト姫のおなぁぁ~りぃぃ~♪」
「うわわ! ちょっと朱美さん止めて下さいよぉぉ~!」
「ふははは! まあまあ、よかろうよかろう? 其方もこういう扱われ方に馴れねばならんのだからな!」
「ブレイドも久し振りねぇ~? ちょっと随分背が伸びたんじゃないの?」
「うっす! お久し~朱美姉ちゃん、爽矢さん!」
はぁぁ~もう! 私がお姫様だなんて柄じゃないよぉ~!
あ、みなさんこんにちは♪ ミストです。今日はいつもお世話になっているアリサ様とアイギスさんの結婚式が行われるので、浮遊大陸からヒャッハーさんに乗って、この『聖域』にすっ飛んで来ました!
……え? 一体なんのことだって? ああ、そうでした。魔王問題が解決してもう何年か経ちますものね。
はい。じゃあ簡単にお話します。
魔王問題を解決して、アリサ様とアイギスさんがめでたくくっついて、『三神国』が復興されて行く中。アリサ様はかねてより、ゆかりさんと約束していた浮遊大陸へカインさんと、後何人かでパーティーを組んで行ってみようと言い出したんです。
そのパーティーメンバー選びには『三神国』復興に関わっている人以外が、もう~わーっ! っていっぱい集まって来て、あまりの人数の多さに急遽くじ引きになりました。もちろん、私もアリサ様と一緒にいたかったので参加したんです!
そうしたら見事にくじが当たって、メンバー入り出来ました♪ しかも、「ミストちゃんとブレイドくんはセットでしょ?」って、アリサ様の計らいでブレイドも一緒に、です。
そうして、メンバーはアリサ様、アイギスさん。ゆかりさん、カインさん、私にブレイドの六人パーティーになったんです。
そうして浮遊大陸へ飛び立った私達。ふふ、その時の、アリアちゃんに座るアリサ様とアイギスさんったら、とっても幸せそうでしたねぇ~♪ 私はゆかりさんの背中に、ブレイドはカインさんに跨がって行く空の旅は素敵でしたよ~? 因みにメンバー入り出来なかったみなさんの悔しがる顔も忘れられません♪
ですが……到着した浮遊大陸は、酷い有り様でした……大地は荒れ果て、木々は枯れ、水は腐り、魔物が蔓延り……そして、かつては文明が栄えていたんでしょう、その証の朽ち果てた遺構の数々……まるで再生される前の『聖域』みたいだ……とはカインさんの言葉でした。
アリサ様が仰るには……かつての魔神戦争から逃れるべく、何らかの手段で大陸を空中に浮かべたんだそうです。『神々神』の権能で過去を読んだアリサ様の言葉ですから間違いないでしょう。そして、その手段と言うのが『迷宮』の存在でした……
『迷宮』とは、創世の三女神……つまり、アルティレーネ様、レウィリリーネ様、フォレアルーネ様がこの世界を創造された際、魔力溜まりの大きい場所に設置した、私達冒険者で言うところのダンジョンです。なんでも『迷宮核』の有無でそれぞれ、『洞窟』だったり、『ダンジョン』だったり、『迷宮』だったりと分類されているとか。
その括りで言うとこの浮遊大陸に存在するのは『迷宮』なんだそうです。
そして、私達はその『迷宮』へと調査の足を伸ばしたのです、入り口となっていたのは、かつてはお城だったんでしょう……その廃墟の中……地下へと続く階段の先にありました。
『古代語』と呼ばれる文字で書かれた石板がありまして……その先に『迷宮』の入り口であろう大扉。
ゆかりさんとカインさんにアイギスさんはそれを読むことができませんでした。ゆかりさんはその文字が『古代語』だとは知っていたみたいですけど……
読めたのはアリサ様……それと何故か、私とブレイドも……そして、その石板に書かれた内容は……
『同朋の血によってのみこの扉開かれん』
と言ったものでした。アリサ様が私とブレイドにこの扉に触れるよう言います。そのお言葉に従って、私とブレイドは頷き合って、揃い扉に手を触れました。するとどうでしょう、驚くことに、いとも簡単に開いたではありませんか!
「そしてその扉の先には、誰もいない小さな町があったんでしょう?」
「そうなんですよ朱美さん。その町も調査したら……更に地下に続く階段があって。その先に……うぅ~今思い出してもちょっと身震いしちゃう! あの怖さと言うか、不気味さが~!」
「おいおい、ミスト。そんな反応したら、眠ってただけの『古代種』達もがっかりしちまうぜ? 俺は素直にスゲーって思ったけどなぁ?」
そうなんです。廃城の地下にあった大扉。その先の小さな無人の町。更にその地下にあった……大広間……中央に座する大きな『迷宮核』そして、大量に並べられた……不思議な材質の透明な……う~ん、棺桶なのかな?
その中に眠っていた沢山の人達がいたんです! 私はその眠る人達を見て、すっごくびっくりしちゃって、大声で悲鳴挙げちゃいました……
「しかしそれは『魔神戦争』の難を逃れるための封印だったのであろう?」
「はい。その人達は死んでいたわけじゃなくて、『迷宮核』の魔力で護られたその大広間でずぅぅっと眠り続けていただけで、普通に生きていました」
「つってもよ。もう少し発見が遅れてたら『迷宮核』の魔力も尽きて、大陸ごと落っこちて来て、お陀仏~だったらしいぜ?」
爽矢さんの確認に私は当時を思い出しながらお話します。そうなんですよ。確かにそこの人達は眠っているだけで、全員ちゃんと生きてはいたんですけど、ブレイドが言ったように、もう数年発見が遅れていたら、その人達を保護していた『迷宮核』の魔力も底をついて、助からなかっただろうって話です。
その事を看破したアリサ様のご指示で、私達は外の魔物を一掃して、アルティレーネ様達にも連絡して、実際に来てもらって見てもらって~ホイホイホーイって、トントン拍子で事が進みました。
『迷宮核』にアリサ様が一瞬で魔力をフルチャージさせて、朽ち果てた大陸そのものを、これまた一瞬で『聖域』並みに清浄な大地に再生させた時の、女神様達の驚いた顔とか面白かったんですけど♪
でも、重要なのはここからで……その眠っていた人達が起きてきたんですよね……そして、私はちょっと怖かったのでブレイドとアリサ様の後ろに隠れるようにして、その人達の話を伺いました。
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【俺達】~『古代種』?~《ブレイドview》
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「`|:\/`}*\?\_}:}*[\$\?^}/?」
「いや、宇宙人かあんた等? それじゃあ私達はわかってもアイギスとカインがわかんないわよ?」
「ん。お任せ♪ こんなこともあろうかと『お通じ大事くん』持ってきた」
「なんだそれレウィリリーネ? 便秘に効く魔装具なのか?」
「またアリサ姉は魔装具に変な名前付けるんだから~?」
「ゆかりが思い切り誤解してるじゃないですか」
わはは♪ ホントなんでそんな名前付けんだよアリサ姉ちゃんは?
この浮遊大陸のなんか城? ぶっ壊れて随分長い時間が経ってるみてぇで、遺跡? ってーの?
そん中になんかみょーちくりんなでっけぇ扉と、石板があってさ、なんでか知らんけど、俺とミストがその扉に触れたら勝手に開きやがんのよ? 「なんだこりゃ?」なんて思いつつ、その扉を潜ると、これまたでっけぇホールみてぇなとこに出てさ。そこにこいつらがずらぁーって棺桶に入ってたんだ。
そのホールの中央にデカイけど、にぶーく、ゆっくり点滅繰り返してるクリスタルがあったんだわ。なんでもそれはアイギスさんが言うに、「これは『悲涙の洞窟』の最深部に安置されていた物と同じか?」とか言うんだ。んで、それに答えたのがアリサ姉ちゃん。「こっちのが断然大きいけど、『迷宮核』で間違いないわね」ってことらしい。後、「私がやってもいいけど、妹達に見てもらいましょう」って言って、映像通信で女神様達に連絡して、転移して来てもらったんだ。
んで、女神様達がその『迷宮核』と寝てる奴等の事を調べてる間、俺達は外に出て、魔物達と戦ってた。やっぱ、場所が場所だけに飛んでるのが多かったなぁ~? へへ! 俺はカインに乗って、ミストはゆかり姉ちゃんに、アイギスさんはアリサ姉ちゃんのアリアに乗ってって、派手に魔法だの剣技だのでバッタバッタと薙ぎ倒したぜ!
あらかた魔物を一掃して、またあの城に戻って来たらさ、あの眠ってた奴等を起こすには『迷宮核』に魔力を補充してやらなきゃいけねぇんだと? 放っておいて見殺しにすんのも気分悪ぃし、それなら~って事で、アリサ姉ちゃんの出番。
指先で、ちょん☆ って触れただけで、「はい。フル充電♪」とかわけわかんねぇ。女神様達の話じゃ三人で三日間くらいかけてやっとって話なのに、アリサ姉ちゃんすげぇよなぁ~?
それで、「ついでに~」って、気楽にこの浮遊大陸の大地を綺麗にしちまうんだぜ? 俺達揃って開いた口が塞がんなくてポカーンってしちまったよ!
「ポカーン……」「おぉぉ……すごい。本当に緑が蘇っている!」
「あぁ! こんなにも澄んだ空気を吸えるのはいつ以来か!?」
そうそう、この眠ってた連中みたいになってたなぁ~ははは!
「お久し振りで御座います、女神様方……我等『迷宮核』に護られるばかりで、この大陸を維持できず……誠に申し訳なく……」
「いやぁ~いいんだよそんなの! ぶっちゃけうち等、キミ達『古代種』達が今日まで生きてるなんて夢にも思わなかったし?」
「更に言うと、ん。ごめん、本気で存在忘れてた」
「申し開きもできませんね……私達も顕現できなくなったり、魔王達との決着を着けたりしていて、貴方達を完全に後回しにしてしまいました。ごめんなさい」
その寝てた奴等のなんか代表みてぇなオッサンが女神様達のとこまでやって来てそう謝罪すると、いやいや、フォレアルーネ様とレウィリリーネ様ってばぶっちゃけすぎじゃね? この代表を始めにコイツ等みんな苦笑いしてんじゃん? まあ、アルティレーネ様のマジな「ごめん」に改まって向こうも頭下げてるんだけどな?
「言葉がわかるようになりました! これが『お通じ大事くん』の効果ですね?」
「それならそうと、普通に翻訳機でいいじゃないですか……アリサ、その『お通じ~』と言うのは絶対ウケ狙いですよね?」
「にょほほ♪ 翻訳必要な場面って結構緊張したりすんじゃん? これはそんな緊張を笑い飛ばせる名前なのだよ? カイン、アイギス?」
うっそだぁ~! 姉ちゃん絶対笑いとろうとしてお遊び全力じゃん!?
って~それは別にいいんだよ! ちょっと疑問なんだけどなんで俺とミストは言葉が通じて、文字も読めてるんだ? そこんとこわかんねぇからアリサ姉ちゃん説明してくれよ?
「あぁ~ん? このやんちゃ坊主め、言うようになりおってからに!
って、あ~うん。ぶっちゃけるとミストちゃんもブレイドくんも『古代種』ってこったわよ♪」
「なんと!? お待ちください、貴女様は今、「ミスト」と仰られたか!?」
へぇ~俺とミストってこのオッサン達と同じ『古代種』って種族だったんか? 見た目は普通の『人間』と全然変わんねぇからわかんねぇな?
確かに俺とミストは物心ついた時には既に『セリアベール』にいたんだよな。んで、俺の両親は知らんけど、ミストには母ちゃんがいたんだよ。まぁ……当時の『氾濫』で、魔物にやられちまったけどさ……で、身寄りを無くした俺とミストは、そんときに駆け付けてくれた『黒狼』に保護されてたってわけ。
おおぉぉーっ!! 逃げおおせた姫様に御子が!! ではその少年は近衛隊長の子か!?
ざわざわ!! その話を聞いてたこの『古代種』達が騒がしくなった。ミストを見て、「おお、姫様の面影がある……」とか、俺を見て、「ああ、キミは間違いなく近衛隊長の子……」だの……待て待て! お前らだけで納得してねぇで、俺達にもわかるように説明しろって!
「いいわね。それじゃあ~みんなで過去を映像で観て確認しましょうか♪」
「アリサの権能ですね? 確かに、ここは過去に何があったのかハッキリさせておいた方が、互いに誤解をうまずに済むだろうな……ミスト、ブレイド。君達はどうだ?」
おおぉ? コイツ等と俺達の過去かぁ~ああ、興味あるぜ! だけど、ミストはどうだろうな? やっぱ母ちゃんのこと思い出したりすんの、キツイかな?
「ミストさん……大丈夫ですか? 無理しなくてもいいんですよ?」
「顔が青いな? 少し休むか? いいんだぞ?」
「ありがとうカインさん、ゆかりさん……ちょっと考えさせて下さい……あまりにも話が急すぎて……」
あ~そりゃそうだよな? たまたまくじで当たったアリサ姉ちゃん達とのパーティー同行券。ちょっとした冒険気分でやって来た場所がなんか、自分の過去に直結する場所でした~だの。実は俺達『人間』じゃなくて『古代種』でした~なんてよぉ? いきなりそんなに言われても困っちまうよな?
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【人類の祖】~保護対象~《アリサview》
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「ま、それでもちゃんと向き合って、過去を受け入れたミストちゃんはえらいよ♪」
「アリサ様!」「アリサ姉ちゃん! おひさ~♪」
おうおう。この元気っ子共め! うむ。壮健なようでなによりだぞい♪
「元気そうだな二人とも。今日は忙しいところ、わざわざ来てくれてありがとう」
「アイギスさん! えへへ♪ お二人の結婚式ならどんなに忙しくても絶対来ますよ~♪」
「改めて。おめでとうございますアイギスさん! アリサ姉ちゃん!」
あらぁ~♪ ありがとう~二人とも! アリサさんめっちゃ嬉しいわ! だいぶ成長して、今や二人は前世で言うとこの高校生くらいか? 私達に向けるそのニコーって笑顔はまだまだあどけなさが残るけれど、うん。大きくなって~感慨深いじゃないの。
「朱美、爽矢。二人の出迎えありがとうね?」
「なに、構わぬさ。我も久々にこの二人に会えて嬉しい故な」
「そうそう♪ 麗しのミスト姫様がどんだけ成長したか見たかったからね♪」
ヒャッハーくんの放送を聞いて、朱美と爽矢が一足先にお出迎えしてくれたことに、感謝。話がチラっと聞こえたので口を挟んでみたけど、どうも初めて浮遊大陸に行った時の思い出話をしてたみたいだ。
詳細は割愛するが、浮遊大陸はかつて『龍脈の源泉』のひとつだった。そう、今の海底火山がある場所。魔神達が攻めてきた当時、ここは暴れるポコと魔装戦士の襲撃に遭い、その激しい戦闘で大陸の大部分が海の底に沈み、そこにあった王国『ミストレイク』は二つの決断をした。
ひとつは、『迷宮核』の力を使い、大陸を空高く浮上させ、生き残った民達と共に厳重な封印の下、長い眠りにつくこと。
ひとつは、その封印を解くために王家の血筋を世に放つこと。この王家の血筋こそが、ミストちゃんのお母さんであり、当時の姫だ。ブレイドくんはその姫の護衛を務めた騎士の息子だったというわけだ。
そして『古代種』についても触れておこう。『ミストレイク』はアルティレーネ達、創世の女神達から『迷宮核』の管理を任されていた特殊な人種、『古代種』と呼ばれる者達の国だった。
『古代種』は云わば始まりの種であり、気が遠くなるほどの長い時間を経て、あらゆる環境に適応すべく、様々な種族へと進化していく。それは妖精であったり、精霊であったり、亜人、人間。果ては悪魔にも。
「途方もない話です……私達の祖。その原種が当時のまま現在に現れたのですから」
「あはは♪ 私達は知ってたけど、まさか現代にまで封印が生きてたとはねぇ~?」
「世界中大騒ぎとなったな……アリサ様が保護対称であると報じなければ、今頃……」
「爽矢さん! 怖いこと言わないで下さいよぉぉーっ!」
うむ。アイギスの言う通り、「全人類の祖。発見される!」なんてニュースになって、一時期世界が騒然となったのだけど、そこは妹達が懇切丁寧に世界に向けて説明をして、最後に私が「無闇に手ぇ出したら、わかってんでしょーね?」とか、ちょーっと神気乗せて言ったらみーんな「イエス! マムッ!」ってビシッと姿勢を正したので問題なかろう?
んで、ミストちゃんのご両親。もう言うまでもないかもだけど、彼等こそが世に放たれた『ミストレイク』の王族ね? しかも長寿であった『古代種』だけあって、なんとあのユグライアの代から『セリアベール』にいたそうだ。これは、実を言うとゼオンも知ってたらしい。
「俺の家系の中でもマジに極秘扱いだったんだぜ?」
とは、ゼオンの談だが。残念なことに、お父さんもお母さんも『氾濫』による襲撃で命を落としてしまったそうだ。かわいそうに……お母さんなんて、凄く長い時間を経てようやくつかんだ旦那様だったらしいのに……
「過去を見たけどさ……ミストちゃんのお母さん。ホントについ最近に結婚して、ミストちゃんを産んで幸せそうだったのにね……ブレイドくんのご両親もおんなじだけどさ……」
ブレイドくんのご両親も、ミストちゃんのお母さんが結婚した翌年に結婚してブレイドくんを産んでいるのだ。なので少しだけミストちゃんの方がお姉ちゃんになるんだけど、そこは別にいいか。
「忌々しいわねぇ~! 今更ながらあのロアの事ぶん殴ってやりたくなったわ!」
「朱美さん、私達はもうあんまり気にしていませんから……その、怒ってくれるのは嬉しいですけど」
「そうだぜ~? 俺も父ちゃん母ちゃんのことほとんど覚えてねぇし、それにあんま言うとシェラザード様が気にしちまうからな~?」
うむうむ。ほんにこの子達は立派になっちまってぇ~! アリサさん嬉しいやらさみしいやらでちょいと複雑なんだげんちも? そうだよそうだよ。確かにあの引きこもりのボッチ神はマジに腹立つけど、もういないんだし、嫌な過去ばっかり見てても気が滅入るだけだからね。
「そうであるな。今は未来に目を向ける時だ。『ミストレイク』はこのまま浮遊大陸の王国としてやっていくのだろう?」
「あ、はい……アリサ様のせいでなんでか私が姫だ~なんてなっちゃって!」
「いいじゃーん? お姫様なミストちゃん可愛いし~♪」
爽矢の言葉に俯きかけた顔をあげて、私をむーって感じで恨めしそうに見てくるミストちゃん。むひょ♪ むくれ面もめんこいぞい?
そう、先の話でミストちゃんは間違いなく『ミストレイク王国』の王族、しかも直系の子孫であることが判明し、そのままお姫様としてかつぎ上げられた! そうです。私がやりました。
浮遊大陸で眠っていた『古代種』達も満場一致でそれに賛成し、それなら~と、お城を特別に当時の立派な物に直してあげて、民である『古代種』達の衣食住をお世話してやったりした。
「まだ、城内で生活している者もいるようだが……概ね街も出来上がってきたそうじゃないか?」
「もう~アリサ様ったら……あ、はい。アイギスさん。『聖域』や各国から応援に来てくださった、様々な職人さん達のおかげで素敵な街になりそうです!」
「へへ♪ 新婚旅行で寄ってくれよな! お二人さん♪」
あれま! いっちょめーに宣伝までしてきおってからに!? こりゃあ絶対に行かねばなるまい! うんうん、楽しみだね♪ 私はアイギスと笑い合い必ず行くって約束しておいた。
因みに、今や観光国となった『ミストレイク』へのアクセスは、いくつかある。
ひとつはヒャッハー便。これはさっきヒャッハーくんがこの二人を乗せてここに来たように、ミストちゃんとブレイドくんの専用便である。
もうひとつはモコプー便。年月が経ち、平和の象徴であるモコプー達もどんどご増えている。リーダーのエスペルが、(もうワタシの役目も終わりですね~)とか言って、毎日毎日ぐーたらしぃなので、仕事を与えたのだ。(ぐえぇ~! 一気に多忙になりましたよぉ~!? 同朋達も鍛えないと!)とか言って、今や日々精進に励む働き者となってめでたしめでたしだね♪
んで、モコプー便が一般的なんだけど、もうひとつ。それがグリフォン便。ちょっとお値段お高目なんだけど、その分速い。そして安全性がモコプー便に比べより高い。なんせゼーロやレイヴン、レイミーアが交代で直掩につくからね。
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【一つの区切り】~新たな始まり~《アイギスview》
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「しかし……『ミストレイク』は観光地として名が高いが、『古代種』達の深い知見も注目されているのだろう? 各国が学舎の講師として招きたい、と揃って口にしていたぞ?」
「あ、はい。私もその話を聞いて、つい最近ですけどその講師になりたい、なってみたい。そういう人達を募り始めました」
「これがなかなか集まらなくてなぁ~やっぱみんなさ、今は自分の生活の基盤を作るのに精一杯みたいで……今日はその辺も説明できればいいなって思ってますよ」
朱雀の塔の屋上から私とアリサ。爽矢殿と朱美殿。そしてブレイドとミストは談笑を交わしつつ、皆が待つ階下……神殿の大広間へと続く階段をゆるり、降りているところだ。
私の質問にミストとブレイドが応える。あの浮遊大陸発見からまだ、そう年月は経っていない。目覚めた『古代種』達も全員が目覚めたわけでもなく、時間差で起きてくる者もまだいるとか……
そういった者達も含め、衣食住は勿論、ずっと眠りについていたものだから、満足に体を動かすにも一苦労したりするらしい。
そんな中他国へ講師として渡れと言われても、ああ。確かに難しいだろうな。
「なるほどな。しかしその相談する相手はしっかり見定めねばならぬぞ?」
「あはは~勿論ですよぉ。変に恩着せがましい人とか、そう言う人ってアリサ様のおかげでだいぶわかるようになってきましたから」
「もう、爽矢は心配性ね? この『聖域』にそんな邪な考え持ったやつ来れるわけないでしょ?」
まあ、確かに『ミストレイク』を訪れ、『古代種』達の生活を支援する代わり、講師として自国に招き入れたい。等という外交をする国もあるらしい。爽矢殿はその辺りを心配しておいでだが、この『聖域』にはそのような小賢しい真似をする者は、そもそも入って来れないからな。朱美殿の言うように安心していいだろう。
「私と珠実で鍛えた甲斐があったわね~感情を色で見れるってだけでもだいぶ役にたつでしょ?」
「はい。おかげさまで不利益を被ることもなくなりました」
「常駐してくれる『ガルーダナンバーズ』も抑止力になってくれてるから、めっちゃ助かってるぜ!」
流石にアリサや珠実殿のようにとはいかないものの、ミストも相手の感情を色で読み取るという特技を覚え、それは外交で非常に大きな成果を挙げているとか。
そして、ゼーロ殿達『ガルーダナンバーズ』の面々も『聖域』と『ミストレイク』を交代で護っていることも他国に隙を与えない。
「はいはい♪ 小難しい話はこの辺にしましょ? ミストちゃんもブレイドくんも久し振りにみんなに会って、私達の結婚式……っていうお祭りを楽しんで行ってちょーだい!」
「ははは! もう既に宴会の様相を見せているが。バルド達も来てくれているからな。旧交を深めて行ってくれ」
うむ。アリサの言う通り、政治的な話ばかりしてもつまらない。折角数年振りに仲間達に会えるのだから、今日から数日の間、二人にはめいっぱい楽しんで行ってもらわなければなるまい。
私とアリサがそう二人に話すと、嬉しそうに笑うのだった。
「これはこれはミスト姫。騎士ブレイド殿。いつ久しく。ご機嫌麗しゅうございますな?」
「こんにちは二人とも。元気そうだな? あ、いや。ですね?」
「ディンベルさん! もう、ゲンさんみたいに普通に挨拶してください!」
「ウーッス。おっちゃんまーた髪薄くなったんじゃねぇの? んな小難しい挨拶すっからだぜ~?」
「うるせぇこの小僧が!」「ディンベルさん、まあまあ?」
ざわざわ、ガヤガヤ。大広間に向かう途中の来賓待機室。そこには懐かしい面々が軽食に談笑を、と。思い思いに過ごし、式の開催を待っていた。『ミストレイク』の代表として挨拶していこうと言い出すミストに続き、私達も待機室に入ると、『セリアルティ王国』の財務大臣となったディンベルと、『セリアベール』の『セリアロッド学園』の副学園長に就任したゲンがミストとブレイドの姿を見つけ、話しかけてきたのだった。
改まった口調と仕草で大袈裟とも取れる挨拶をするディンベルと、いつも通りに振る舞おうとして、それでいいのか少し悩むゲンに、ミストは少しだけ怒ったように、ブレイドは軽口で返す。
「はぁ~いミスト姫、ブレイドちゃぁん♪ お久し振りねぇん? アタシのこと、覚えてる?」
「オネェさん! お久し振りです! ふふ、相変わらずそうで安心しました」
「うっす! どうよオネェさん? レグスさんとは上手く行ってる?」
もちろんよぉぉ~♪ そう言って嬉しそうに笑う『エルハダージャ』の冒険者ギルドマスターのオネェさん。彼もディンベルとゲンに続いて気さくにミスト達に声をかけてくる。
「オネェさんはやっぱギルマスやってるだけあって、今ミストちゃんが求めてる、気楽な感じってのをわかってるわよね?」
「ええ。彼がミストに出会ったのは、彼女が姫となってからでしたが……ミストが改まった口調が苦手で不慣れであることも即座に察し、なにかとフォローしてくれましたからね。流石ですよ」
「あらヤダ! んもぅ~駄目よアイギスくぅん? お嫁さんの前で他の子を褒めちぎるなんて~うふふ! とにかく、おめでとうね!」
「おう、アイギス! アリサ嬢ちゃん! おめでとう! お招きに感謝する!」
「アリサ様。アイギスさん。俺なんかまで声かけてくれて本当にありがとう。おめでとうございます。式、楽しみにしています!」
彼等の様子をアリサと二人で伺っていると、オネェさん達が私達に気付き満面の笑みで祝福の言葉をかけてくれる。そんな彼等の気持ちが嬉しくて私達も笑顔でありがとうと返す。今宵は皆、大いに楽しんでもらいたいものだ。
「よぉ~ミスト~ブレイド~♪ 久し振りじゃねぇか! でっかくなったなぁ?」
「おお、懐かしい……随分凛々しくなったじゃないか二人とも!」
階下の大広間には、ヒャッハー殿のアナウンスを聞いて、『黒狼』と『セリアベール』の面々が集まっていた。その少し離れた場所に各国のグループが集まり、ミスト達のことを興味深げに観察している。どうやら、間を見て話かけたい~といった様子だな。
「セラさん♪ バルドさん♪ お久し振りでーす!」
「ははは! セラの姉ちゃんは変わんねぇなぁ~? バルドさんは~ちっと老けました?」
はっはっは! コイツめ、言うようになったじゃないか!? とか、肩を抱き合うバルドとブレイドに、見上げるくらいにデカくなりやがって~など、セラに肩をポンポンとされるミスト。
「立派に育って……二人とも、私は姉代わりとして嬉しいわ」
「……なかなか、覇気に満ちている……鍛練は、怠っては……いないようだな?」
久し振り会う成長した二人の姿にシェリーが涙ぐみ、デュアードはそんな二人の内に秘める神気を感じ取りニヤリと笑う。うむ、ひとつの国を背負う二人だが、どうやら暇を見付けては訓練を続けているようだな。
「うっふっふぅ~♪ 二人とはながぁ~い付き合いになりそうだし、今後もよろしくね♪」
「ミュンさんもお久し振りです。あはは……すっかり様変わりしましたね?」
「フフン♪ なんか僕に言い寄って来たからね? 色々と握らせてもらったよ」
「おっす! パルもお久~♪ 確か命共有したんだっけ?」
続いてミュンルーカも二人に声をかける。彼女はパルモー殿に恋をして、パルモー殿もそれを受け入れたのだが、『聖魔霊』とはいえ、元悪魔であるパルモー殿と添い遂げるには『人間』のままではその寿命の違いが浮き彫りになってしまう。
そこで本人の同意を得て、パルモー殿が彼女を『悪魔司祭』にクラスチェンジさせたのだ。
「そうなの~ワタシ~もう、パルくんと一蓮托生だからね♪」
「ふふふ、彼女の角は僕の物だっていう証さ。もう、逃がさないからねミュンルーカ?」
「う~む、まさかパルモーが束縛系男子だったとはねぇ……アリサさんもビックリだわ。まあ、ミュンルーカも幸せそうだし問題ないんだろうけどね」
アリサも人のこと言えない……オホンっ! いいえ、なんでもありませんよ?
クラスチェンジしたミュンルーカはその特徴として、頭から二本の少し捻れた角が生え、白く淡いクリーム色の髪は、やや紫色がかかった。
「肌の色まで悪魔っぽくならなくてよかったじゃねぇーでっすか? むひょぉ~♪ なんにしてもまぁた、みゅんみゅんとわっしょいできるのは、アリスちゃんもめちゃんこうれしぃでっすよぉ~!」
「あはは♪ アリスさんはミュンルーカと仲良しですもんね?」
おっと、アリス殿にサーサが会場の方からやって来ては話に参加しだした。
「ははは、話が盛り上がってるとこだろうけどよ」
「うむ、会場の準備が整ったぞい?」
続いてゼルワとドガもやって来る。そう、元『白銀』のメンバーと、アリサの『聖霊』達は式場の準備を進めてくれていたのだが、どうやら準備が整ったらしい。
「お待たせアリサ様♪ ユニちゃんとユイちゃんはもう準備できてるから、アリサ様も着替えちゃいましょう♪」
「アイギスはこちらだ」「ふふ、皆様もどうぞ会場にお入りになってお待ちくださいね」
次いでレイリーアがアリサを、父上が私を呼び、母上がこの大広間に集まった皆に声をかけてまわる。
私とアリサは互いに顔を見合せ、頷くとそれぞれの準備のために割り当てられた部屋へ入って行く。
さあ、いよいよ私達の式が始まる……『白銀』のアイギスの一区切り。そして『聖霊』アイギスとして、『神々神』アリサの夫として永い時の始まり……さあ! 気持ち新たに踏み出そう!
各国代表A「おぉ、見よ(°▽°) 麗しい姫君と、勇猛なる騎士の来訪だ( ・∇・)」
各国代表B「うむ( ゜ー゜) お若いながらもその身に纏う王者たる風格!(゜A゜;)」
各国代表C「流石、あの魔王達と渡り合った英雄よね♪(*´∇`*)」
各国代表D「なるほど……(_ _) 利用しようと企む国々が出るわけよね( ・`ω・´)」
リール「そうそう(^ー^) だからアリサちゃんが睨み利かせてるんだよ~?(*´艸`*)」
フォーネ「この『聖域』に集まった皆さんの中にはそんな方はいないでしょうけど、お付き合いは慎重に、ですよ?(*`艸´)」
各国代表A「おお!(゜▽゜*) これはリール陛下にフォーネ陛下!(*´▽`*)」
各国代表C「ご機嫌麗しゅうございますわ♪(^-^)」
各国代表B「お声掛け頂き光栄に存じますm(_ _)m」
各国代表D「『リーネ・リュール王国』と『ルーネ・フォレスト王国』の両国も最近は発展著しく、いやいや( ´ー`) 我が国もあやかりたいものですな(´・∀・`)」
リール「ふふ(*´∇`) ありがとう♪( ´∀`)」
フォーネ「アリサちゃんからも色々な国と国交を結ぶといいよ~って言われてるし、沢山お話しましょうね♪ヽ(´▽`)/」
各国代表達「是非とも♪(ノ≧▽≦)ノ」
パーシヴァル「師匠~♪(ノ゜∀゜)ノ 儂もミュンルーカ殿のようになれませぬかのぅ~?(^∇^)」
パルモー「あ~お爺ちゃんは相変わらず元気いっぱいだねぇ~?( ̄▽ ̄;)」
ミュンルーカ「あはは(´∀`*) お久し振りですパーシヴァル翁(´・∀・`)」
パーシヴァル「うむ!("⌒∇⌒") 儂はまだまだ元気じゃぞ!(  ̄▽ ̄) しかし、寄る年波には勝てぬ故なぁ~( ;´・ω・`) そこで師匠に請い願いたいのじゃ!(゜∀゜ )」
パルモー「はいはい(^_^;) ちょっと待ってよ、母ちゃんに相談してみるから(*゜∀゜)=3」
アリス「にしたって……むひょ♪( *´艸`) 「もう逃がさない」とか~パルモーもやりやがりまっするよぉ~♪( 〃▽〃)」
バルガス「うむぅ……(´ヘ`;) あやつは間違いなくネヴュラの血を色濃く継いでおるなぁ~(;´д`)」
ティターニア「うふふ♪(*≧ω≦) 確か本当はバルガスさんを惚れさせてこっぴどくフってやるおつもりだった~と言うお話でしたわね?(*´∇`*)」
ミュンルーカ「わ、ワタシフられちゃうんですか~!?o(T◇T o)」
シェリー「大丈夫でしょう、そこは(;-ω-)ノ」
オベロン「パルモー殿もアリサ様のご友人を蔑ろにはしないでしょうからね( ´ー`)」
アリサ「あっはっは♪(´▽`*) みんなめっちゃ楽しそうだねアイギス?( *´艸`)」
アイギス「ええ、そうですね(^-^) やはり皆が集うと賑やかです(*゜∀゜)」
アリサ「普段の静かな『聖域』でアイギスとイチャイチャするのも好きだけど(u_u*) こうやってたまに集まってばか騒ぎするのも楽しいo(*⌒―⌒*)o 天に還っていったアーグラス達も見てるといいなぁ(*´艸`*)」
アイギス(アーグラス)「見てるぞアリサ(^ー^) 俺も仲間達もみんな見てるさ♪(*`▽´*)」
アリサ「お、おぉぅ……(ノ゜Д゜)ノ」
アイギス「ふふ( ̄▽ ̄) どうですか、似ていたでしょう?(*≧∀≦)」
アリサ「うん、びっくりしたわぁ~(;´∀`) マジにアイギスとアーグラスがダブって見えたわよ?(*´□`)ノ」
アイギス「ならば本当に見てくれているのかもしれませんね……(_ _) アリサ。幸せにしますね( ´ー`)」
アリサ「うん……よろしくお願いしますo(;д;o)」




