166話 魔女さん幸せ~♪
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【あっち向いてほい!】~何を企む?~
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ティターニアとルォンくん。ガウスとセレナ。ムラーヴェとリィレネ。この三組のカップルの合同結婚式が行われ、『聖域』は今日も今日とて歓声が鳴り響き、あちらこちらから乾杯の音頭が聞こえ、お酒が、料理がどんどこみんなのお腹に収まって行く。
はい。そんなわけでみなさんこにゃにゃちわ~♪ 魔女のアリサさんがそんなやかましい『聖域』の状況をレポートしますよ♪
と言っても、式も済んで今までと大して変わらない宴会風景でしかないんだけどね?
ああ、そうそう。勿論ウェディングケーキを食べた後、ブーケトスもやりました♪ いやぁ~三人の花嫁さん……つまりティターニアとセレナとリィレネがみんなして、私に投げてきたのはちょっとびっくりしたのと同時、めっちゃ嬉しくなってしまった。
「素敵で素晴らしい式をご用意下さったアリサ様に!」
「私達が感じているこの幸福をアリサ様にも!」
「私達花嫁から贈るせめてものお返しですわぁぁーっ!」
──ってな感じでさ♪ とっても嬉しかったのでその時受け取った三つのブーケは一つにまとめて状態保存の魔法をかけて、自分の部屋に飾っておいた。
むふふ……このめっちゃご利益ありそうなブーケがあれば、私も愛しのアイギスと結ばれる夢が叶うかもしれないのだ! って、うぅむ……やはりあのきらびやかな結婚式を間近で見たせいか、どうしても考えが恋愛脳になる……ぶっちゃけ、めっちゃアイギスとくっつきたい。はぁ~イチャイチャしてぇわぁ~! アイギスどこ行ったーっ!?
「お母さ~ん♪」「ママ~♪」
「お、おぉ~私の可愛い娘達よ! 丁度いい、パパを見なかったかね?」
そんな風に一人悶々としつつ、宴に騒ぐ連中に出す料理を作っているところに、可愛い娘達二人……アルナとポコが駆けつけてきたのでアイギスが今、何処にいるのか訊いてみる。
んまあ、探す気になればすぐにわかるんだけど、ここは娘達とのコミュニケーションを大事にだね……
「お母さんに果たし状が届いています!」
大事に……なんだって?
「拝啓。敬愛するアリサ様。
大きな問題が片付いた今。貴女より授かりし『剣聖剣技』の習熟の程を確かめたく候
ついては『神殿』玄武の塔屋上にて。貴女との果たし合いを願い奉る。
『白銀』─アイギス─」
……いや、待てい。これどう見たって偽装文書でしょ? アイギスがこんな私の前世に出てくる時代劇めいた文章書けるわけないじゃん?
「なーにーをー企んでるのかなぁ~!? アルナ! ポコ!?」
「はわわっ!? ち、違うのです違うのですママ!」
「あはは、やっぱり直ぐにバレちゃいましたね♪ この怪文書を書いたのはイクシオンですけど、お父さんが待っているのは本当ですよ、お母さん?」
なんだってーの? ワケわからん……それならそうで普通に呼んでくれればいいじゃん? あの丸知ちゃんは一体何がしたいのよ?
「単なる暇潰し。じゃあないですかね♪ ホラホラ、お母さん行きましょう行きましょう!」
「あーはいはい。まったく、アイギスまで巻き込んで暇潰しとはしょうがないわね~どれ、ひとつ文句でも言ってやりますかね」
ホント暇をもて余した神ってのは性質悪い。当たり前のように人を巻き込むんだから。私はアルナとポコにちょっとだけ待ってもらい、作ってた料理……あの『無限円環』で大好評だったカレーの火を止めてアイギスの待つ水菜の塔の最上階へと移動する。
「じゃーん! ここを通りたくばユニ達を倒すのだーっ!」
「のだーですわ。うふふ♪ ごきげんようアリサおねぇちゃん達。残念ですがここは行き止まりですよ?」
今度はユニとユイの姉妹か。なんなのよ? まあ、わーいって両の手ブンブン振って楽しそうなユニは可愛いし、おすましスマイル浮かべるユイも可愛いから全然いいけど。
「はいはい♪ なにして遊んでほしいの二人とも? アイギスを待たせてるから手短にね~?」
「はーい! あっち向いてホイでユニ達に五回づつ勝ったら通してあげます!」
「あらら、大変です。うふふ♪ ユイは強いのですよ? おねぇちゃん勝てますか?」
え~? いや、ホントなんなの? アイギス待たせてるから手短にって言ったのに! なんでこんなときに構ってちゃん発動させてんのこの子達は?
まあ、ずっと料理ばっかりしてて全然遊んであげられなかったっていう、申し訳なさもあるし、仕方ない。遊んであげようか。
「──じゃんけんぽん! あっち向いてホイ! じゃんけんぽん! あっち向いてホイ!」
ぐぬぬっ! なかなかやりおるではないかこのちびっこ共め! 特に自分で言うだけあってかユイが強い! ユニは結構簡単にフェイントに引っ掛かったりするので、五勝できたけど、ユイにはそういった小細工が一切通用せず、ガチンコ勝負になった。
「ユイちゃん頑張れ頑張れ~♪ おねぇちゃんに負けるなぁ~!」
「うむむ!? ユニちゃんや、おねぇちゃんの応援はしてくれんのかね!?」
今はユイちゃんの味方だからだーめ! って、もう~! ユニってばまったく私の事を応援してくれないんだけど?
「うっふっふ! 互いに四勝四敗ですよおねぇちゃん? ですが既に気持ちでお負けになっているご様子♪ この勝負、ユイちゃんの大勝利で終わらせていただきましょう! そしてアリサおねぇちゃんをユイ達が独占するのです!」
な、なんだってーっ!? この勝負にはそんな意図が隠されていたのか!? こりゃいかん。ちょっとこの子達をほったらかしにしすぎたか? 捕まったらしばらく離してくれなさそう。
「アイギスの用事聞いたらいっぱい遊ぶからさ、それじゃダメなの?」
「「だーめ!」」「です」「なのです!」
えー? なんでよ~? ユニユイだけじゃなくてアルナにポコまで声揃えて、なんなんだべ!?
「だーって、パパのとこ行くとママはしばーらくパパのことしか考えられなくなっちゃうのです!」
「あ、ちょっとポコ! そこは内緒にしておかないと駄目です!」
んん~? なんぞそれ~?
「もう! めっちゃ気になること言って! いいわ、勝負よユイ! 私は絶対に勝ってアイギスんとこに行くんだから!」
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【アリアのお悩み】~そんなことない~
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「あらぁ~? うふ、負けてしまいました」
「よーし! さあ、通してもらいましょうか!」
初めてだ。あっち向いてホイをここまで全霊で遊んだのは……ふぅ、やれやれ。なんとも手強い相手だったことか……って、なんか負けた筈のユイってば笑顔でニコニコと……見ればユニもアルナもポコも「あ~」とか言いつつもニコニコ笑顔。
「ホントに何を企んでるのよ? 教えてくれないと~あんた達の大好きなプリン! もう作ってあげないわよ~? いいのかなぁ~?」
はわぁーっ!! そんなのだめーっ! お母さん後生です! それだけはご勘弁を!
ワハハ♪ 面白いように狼狽え始めおったぞこのちびっこ共め! さあさあ、プリン抜きが嫌なら企みを白状なさいな?
「そ、それは言えないんだよぉ~! ごめんねおねぇちゃん!」
「うふぅん♪ 決して悪いことではありませんからご安心下さいね?」
「はい。後でのお楽しみ♪ というやつですから!」「なのです!」
ほむ、そういうならまぁ……大丈夫なんだべね。優しい子達だし、妹達のような突拍子もないイタズラではなさそう。
私は今後はもう少しこの子達との時間も増やすことを決めて、可愛く手を振る彼女達に、同じく手を軽くフリフリして応え、屋上に続く階段を登り出す。
「あるじ様。待ってた」
「アリア? あんたも姿見ないと思ったらこんなとこで何やってんの?」
どどーん! と、似つかわしくない擬音を背負い、階段の上で仁王立ちするアリアである。この子もユニ達の企みに手を貸している一人なのかしら?
「……アイギスと話をしてた」
「あら、ホントに屋上にアイギスがいるのは間違いじゃないのね?」
なんか珍しい。この子が自分からアイギスに話をしに行くなんて、今までなかったべよ? それだけに、どんな話をしたかが気になってしまう。
「んぅ。その前にあるじ様に、問う……もう、武器は要らない?」
「む? そうね。全く必要がなくなるってことはないだろうけど、使用する頻度は減るでしょうね?」
なんか真面目な話っぽいので、私もしっかり応えることにした。事実、魔王との激しい戦いがなくなった事で、私達が武器を手に取るってことはそうそうないだろうけど、全くなくなるわけじゃない。実際、『聖域』には魔物も存在しているんだし。
「んぅ……アリアはそれが不安。魔装具は使われてなんぼ。飾り物じゃない」
「あくまでもアリアは魔装具であり、使われることが本懐だって言いたいわけね? 心配ないわよ♪ 箒になったアリアに乗るの好きだし、みんなと一緒に冒険に出たりするからアリアには沢山出番あるわよ?」
たとえ『人化の術』で人の姿を取ることができるようになったとしても、やはり自分は私を乗せる箒であり、魔法を補助する杖であり、そして敵を斬り払う剣であることこそが存在意義なのだと……大きな戦いが終わり、もう私がアリアを魔装具として使わなくなるのではないかと、危惧していたアリア。
勿論、そんなことはないと。これからも私はアリアにお世話になる気満々だったので、ちょっとびっくりしたけど、笑顔で安心していいよって言ってあげた。
「そう……よかった、アイギスが言った通りだった」
「ん~なんぞアリア? アイギスと話してたってのは今の話だったん?」
どうやらそうらしい。不安でちょっと落ち込んで、この塔の屋上に続く階段でポツンと座っていた所に、アイギスが通り掛かり、話を聞いてもらったらしい。そっか……アリアはそんな不安を抱えていたんだね? 気付いてあげられなかった己の未熟さを痛感し、アリアにごめんねって謝っておいた。
「ん。もう、大丈夫……です。あるじ様、これからもアリアをいっぱい使ってね?」
「うん! 勿論よ♪ 改めてよろしくねアリア!
さて、じゃあアイギスにもお礼言わなきゃだわね? アリアも来る?」
アリアの気持ちも聞けたところで、改めて今後ともよろしくってして、私はアイギスが待つであろう階段の先を見上げる。私が気付けなかったアリアの不安を聞いてくれた事に、ありがとうって言いたいからね。
「……うぅん。アリアはユニ達と遊ぶのです。あるじ様とアイギスのイチャイチャを邪魔しない。です♪」
はぁ!? ちょいっ! 何を言い出すんだべこの子ってば! そそ、そんなこと言われたら必要以上に意識しちまうべよ!?
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【なんのこっちゃ?】~魔女さんはとても鈍い~
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「来ましたね? お待ちしておりました、アリサ様」
「あ、えーっと! そのぅ~ご、ごきげんよう~? アイギス!」
ガチャコと屋上に続く扉を開けて見回せば、中央にアイギスがいた。剣の素振りでもしていたのか、うっすら汗を浮かべているみたい。う~ん、ストイックだねぇ♪ んでも、なんぞ緊張しているようにも見えるんだけど、どうしたんだべ? もしかしたら私みたいに二人きりで会うことに緊張しているのか!? そんなこと……私までさらにドギマギしちゃうじゃーん?
「えっと、えっと……そう! アリアのお悩み聞いてくれたみたいでありがとね♪」
「いえ、私はアリア殿の悩みは杞憂であると言っただけに過ぎません。お気になさらず。
……さっそく始めますか、アリサ様? 私はいつでも構いません!」
ん? んん~!? いやいや、ちょっと待てい! チャキッ! ってなんで私に剣を構えるんだこのイケメン騎士は!?
「ちょ!? なになに! なんなのよアイギス!? 私はあんたとチャンバラしに気たわけじゃないのよん!?」
「お戯れを……私の『剣聖剣技』が免許皆伝に至っているかを見定めたい。その書状を送ったのは冗談ではありますまい?」
は? いや待て……なんのこっちゃそりゃ?
意味わかんないアイギスの言葉に一瞬ポカーンってなったけど、直ぐに思い当たるふしがあった。そう、イクシオンが書いたっていうあの怪文書だ。
「はは~ん。んじゃさアイギスくんや、この果たし状に覚えはあるのかね?」
「え? 果たし状……? なんですかそれは?」
やっぱり身に覚えがないわよね? ほれって私は、私と同じように「なんのこっちゃ?」って顔するアイギスに、件の怪文書を見せてあげる。
「まったく存じ上げません……はっ! それでは私に届いたこれも!?」
落ち着きを取り戻したアイギスはその怪文書を読んで、まったく知らないって困惑し、自分に届いたっていう手紙を私に見せてくれた。それにはさっきアイギスが言ったように、私がアイギスの『剣聖剣技』について、どれほどの技量に至ったのか。また、それによっては免許皆伝もありだって内容が記されている。
「私もこんな手紙を書いた覚えなんんてまったくないわよ?」
「では、これらはイクシオン様が?」
どーにもこーにも、イクシオンだけじゃなくて、なーんかユニやアルナ達もグルっぽいのよね?
「……はぁぁぁ~そう、だったのですね? 私はてっきり、アリサ様と本気で剣を交えるのだと、先程まで気を高めていたのですが、ハハハ、一気に気が抜けましたよ」
「私の書く字と確かに筆跡似てるけど、よく見るとちょいと違うわよこの手紙……まあ、そこまで細かくは普通わかんないか」
大きく脱力して、剣を鞘に納めて、ため息をつくアイギスは苦笑いを浮かべて私にそう話しかけてくる。私はそれがなんだか可笑しくて、思わずぷって吹き出してしまう。
「そんなに緊張するようなことかね~? 大体私だって『剣聖剣技』は試行錯誤してる段階なんだし、偉そうに免許皆伝なんて判断できないよ?」
あははって笑ってアイギスを見ると、彼はちょっと目をパチクリと瞬かせたあと、私と同じように笑い出した。
「ははは、それもそうですね……剣の道はそうそう簡単に極められるものではありませんよね?」
そうそう、剣の道ってのはめっちゃ長くて深い道だとは思う。『剣聖剣技』に至っては、確かに私はアイギスより一日の長があるものの、正直まだまだだと思う。きっと開祖のRYOにはとても及ばないだろう。
「私よりRYOに師事してもらう方が上達するかもしれないね」
「いいえ、アリサ様。私は……貴女以外の方から教わるつもりはありません」
おろ? そうなん? てっきり強くなるために~とか言って飛び付くと思ったんだけど?
「アリサ様。どうかこれからもずっと、貴女のお側で剣技のみならず、色々なことをご指導下さいますか?」
「ほえ? 別にいいよ?」
「……はぁ」
…………いや、待てアイギスくんや。なんでそんな「全然わかってねぇなこの女」って顔すんのよ? そんな残念な人見るように盛大にため息つきおってからに!
「やはり……皆が言った通り、遠回しな言い方は駄目だな……」
「なになに!? もー! よくわかんないんだけど、なんなの一体?」
ひとりで納得してないで、私にもわかるように説明してほしいんだけど!? そう、眉間に皺寄せて文句言ってやると、アイギスは「わかりました」と一言言った後……
ぎゅっ!
って抱きしめられて。
「貴女が好きです、アリサ様……今後、私の生涯総てをもって貴女を愛させて下さい」
告白されました。
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【結ばれた二人】~なんか今更って感じ~
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ほわああああぁぁぁぁぁーっっっ!!!
「はあ、そう。やっとくっついたの?」「随分今更って感じよね?」
「ありがとうございます。ティリア様、シェラザード様」
ほ、ほ、ほ……
「なんにしてもめでたいよ~♪ アイギっち~これからもアリサ姉のことよろしくね!」
「ん。貴方のことだから何も問題ないだろうけど……大切にしてあげてね?」
「勿論です! フォレアルーネ様、レウィリリーネ様! このアイギス。総てを賭して、アリサを幸せにします」
ほわぁぁぁぁぁーっ!!??
「……それで? さっきからアリサお姉さまは、何をそんなにほえほえと吠えているんです?」
「ママってば可笑しいのですーっ! ほわぁ~♪」
「ああ、ほら! もう、ポコが真似し始めちゃったじゃない! アリサさん、ちょっと落ち着いてちょうだい!」
ほわぁーっ!? ほっほっほ……ほわわーっ!
「アリサ。落ち着いて下さい……私もいくばか夢見心地ではありますが。大丈夫です、これは夢ではありませんよ?」
ぎゃわーんっ!! お、お、お……お手手をあ、アイギスに、にぎっ! 握られてぇぇーっ!?
……はっ!? いかんいかん、あまりの展開に脳みそバグったわぁ~いやぁ、びっくらこいた!
「あ、どうやら落ち着いたみたいですよヴィクトリア。さっきまでバウわんみたいにお目目をまんまるにして吠えていたお母さんが人に戻ったようです」
「おんや! まことでおまんすなぁ~♪ むっほぉっほぉ! 流石はアイギスはんの愛のお力でんす~♪」
「ワンワンっ! アゥーン……ハッハッハ!」
「……いや、人に戻ったってアルナ、あんたねぇ~? イクシオンもそんなやんやしないでよ?」
私は正気に戻った! って、してみればなんだいみんなして!?
ちょっと反応が淡白すぎやしませんかね!? ようやっとアイギスとカップルになれたんだぞ~? もっと、こう~盛大に祝ってよ?
「ハイハイ。そうね、おめでとうアリサ姉さん♪ 漸く(仮)が取れたわね?」
「うふふ♪ おめでとうございますアリサおねぇちゃん、アイギスおにぃちゃん」
「わーい♪ ユニ達の作戦大成功だねぇ~! おめでとーっ!」
うんうん! ありがとうありがとう! ティリア、ユイ、ユニ!
そう、そうなのだ! 私が吠えていたのは、遂に念願のアイギスとの恋仲になるって願いが叶ったからなのだ! ただ、あまりに唐突であり、不意討ちのごとく告白されたため、脳の処理が追い付かずあの変な叫びを挙げてしまっていたのだよ!!
「なに言ってやがる? あそこまでお膳立てしてもらっといて、どこが唐突だよ?」
「アリアなんてあからさまに気を遣っているじゃないか?」
ええい! やかましいわこの義弟達めが! だが、許そう! 今の私はこの上なく幸せいっぱいなのだから♪
「っていうか! イクシオンが書いたあの怪文書がなければ私だってねぇーっ!」
「おほぉ!? わっちとしてはアリサ様が気負うことなく~との気遣いだったんでんすけんど……」
へいへい、そりゃどーも。とか手のひらをヒラヒラさせるTOSHIに、苦笑い浮かべるRYOはまあ、この際置いておくとして、イクシオンだ。ドレス脱いでまた丸知ティーシャツを羽織るこのぐるぐる眼鏡め!
「ええい! だまらっしゃい! あんたは罰として眼鏡没収!」
「ああっ!? わっちのあいでんててー!」
『引き寄せ』で丸知ちゃんのぐるぐる眼鏡を没収してやると、「返しておくんなさいましーっ!」とか言って慌て出すイクシオンだ。
「アリサ。意地悪がすぎますよ」「だってアイギス~!」
「うはは♪ おもろいでっすねぇ~! ときにむっつりんさん。告白はどっちからでっした~? アリス気になりまっする~♪」
「なのです! それにパパ、ママのこと呼び捨てにしてるのです!」
「んぅ~♪ アリアも聞きたい。です♪ お膳立てした以上、聞く権利があるのですよ?」
やーい! って、イクシオンの手の届かないように眼鏡を高く持ち上げてやると、アイギスに怒られちったわ。ちょいと意地悪だったかしらん? しかし、返してやろうとするその直前、アリスとポコ、アリアが詰め寄ってきて私達の事を問い詰めてきたではないか?
「私から、です。最初回りくどく遠回しに言ったのですが、まるで通じておらず」
キャーキャー!? 待って! 待ってよ!? 言っちゃうのかーい!? やだぁぁ~恥ずかしい!
「あはは♪ でしょーね、姉さんそういうことに疎いからさ」
「こうなれば、と。実力行使で抱きしめて「好きだ。愛している」と直球を投げつけました」
うっきゃぁぁぁーっ!! そこまで言わんでもいいべぇぇーっ!?
「おぉぉーっ! 流石アイギっち! やるときゃやるねぇ~♪」
「ん! それでそれで!?」
「えぇっと……暫くアリサは固まってしまったのですが、「もう、様なんていらないからもう一回言って」と……その……はは、流石に恥ずかしいですね♪」
ヒューヒュー♪ とか騒ぐんじゃないよあんた達ぃぃーっ!!
うぎゃあぁぁーっ! ちょー恥ずかしいぃぃーっ!
……はぁはぁ。あーもぅ! まったく聞かれたこと全部答えんでいいってばアイギス! ちょいとここらでアイギスの口を塞がないと、余計なことまで話し出しそうだ!
「なるほどね、そのまま嬉し涙を流すアリサ様と熱い口付けをかわした、と。言うわけだね? おめでとう、アイギスくん」
「なんでバレたし!?」
はっ!!
しまった! 自らルヴィアスの言葉に反応して墓穴を掘ってしまった!!
「あ~。それでさっきまでアリサさんが奇声を発していたわけね?」
「あははは!! アリサお姉さまって面白いですねぇ~♪」
あぎゃぎゃぎゃ! やっちまったぁーっ! く、くそぅ……ヴィクトリアの言う通り、初キスが大好きなアイギスとで、それで、夢にまでみた告白されて、めっちゃ嬉しくてちょっと発狂しちゃったんだべよ!?
そんなにみんなして笑わないでぇぇーっ!
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【アイギス】~『聖霊』になる~
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──それから……無事に合同結婚式も済んで、いつもの……だけど、少し賑やかになった日常が帰ってきて、数日が経過したある日のことだ。
私はアイギスの前で土下座していたのだった。
「その、なんと言いましょうか……ホントにごめん!!」
「あ、アリサ……大丈夫! 大丈夫ですから! 頭を上げて下さい」
はぁぁぁ~やっちまった。やらかしちゃいましたよアリサさんってば……アイギスは優しく「大丈夫」と言ってくれるけど……はぁ~もう、私ってばなんちゅう自己中な事を仕出かしてしまったのか……
「あの、実際なにに対して謝っているのですかアリサ? それを説明して頂かないと、話が……」
「ちょっと~? 二人とも、朝からなに騒いでるの~ご飯まだ~?」
アイギスが私に一体何を謝っいるのか訊ねて来る途中、コンコン、と部屋の扉をノックする音と、ティリアの声が聞こえてくる。私が大声で「ごめんなさい」したもんだから、聞き付けてきたのね?
「あ、ティリア様。どうぞ」
「お邪魔するわ。一体何騒いでんのって、あらぁ~アリサ姉さん。お手本のような土下座ね♪」
「や、そのですね……この度はアイギスにとんでもない迷惑を……」
私はティリアのからかう声にも居たたまれなくなり、土下座を続行。とてもじゃないが、申し訳なさで顔をあげられません。
「アイギスに? って、はは~ん……なるほど、そういうこと♪」
「ティリア様……あの、何かわかったのですか? よろしければ教えて下さい。アリサに聞いても「ごめんなさい」の一点張りで……」
うぅーっ! ごめん、いやマジにそれしか浮かばないのよ。
「はぁ、まあいいけど……あんた。アリサ姉さんと、ぇっちしたでしょ?」
「ぶっふぅぅーっ!!? ゲッホ! ゲホゲホっ! と、突然、何を言い出すんですかティリア様!?」
「ああ、それは別にいいのよ? 愛し合う恋人同士なんだし、普通のことよ? 変に意識しないで聞きなさいな?」
そう。私とアイギスは順調に交際を重ねていき、昨夜。とってもろまんてっくで、すうぃーとで、それでいて情熱的な一夜を過ごした。ティリアの言う通りそれは別に恋人同士なら普通のことだろう。しかしながら、そこで私がやらかしてしまったのだ……
「アイギス。あんた……アリサ姉さんの『聖霊』になってるわよ?」
「……は?」
あうぅーっ! そうなのだ、私がやらかしてしまったこと……それは、アイギスを『聖霊』化させてしまったことなのだ。
「ご、ごめん! その、アイギスに抱かれて……あまりにもその、幸せすぎて……ずっと一緒にいたい~って思ったら……その、やっちゃいました」
「あはは♪ 愛されてるわねアイギス! これであんたは『人間』からランクアップよ?」
「そ、それは……つまり。私もアリス殿やユニ殿達と同じように……」
「そ、寿命も何もなくなったわ。生きるも死ぬもぜーんぶ姉さん次第ってことね?」
うあぁぁーっ! なんというエゴ! 私ってば……私ってば! もう、自己嫌悪で申し訳なさすぎる!
「それでアリサはこう謝っているのですね? 気にせずとも構いませんよ?
私は正直、とても嬉しいのです。貴女への告白を躊躇っていたのも。その生きる時間の違いを憂いてのものでしたから……悠久の時を生きる貴女を苦しめることになるのではないかと……」
おぉぉ……マジか? 私の恋人は、一向に構わんと申すか!?
「ふふふ、よかったじゃない姉さん。許してもらえて♪ まあ、私も気にしすぎ~っては思ってたけどね?」
うおぉぉん! ありがとーっ! ありがとねアイギス! うぅーっ! こんな情けない彼女でごめんだよ……もっともっといい女になるからね!?
「はいはい。ごちそうさま。それよりほら~朝ごはん食べましょうよ? それに今日はお客が来るんでしょう?」
「ああ、そうでしたね。『ゲキテウス王国』から魔女ウォーラル殿と、『エルハダージャ王国』から国務大臣ヒヒイロ殿がお見えになられると……アリサ。立てますか?」
嬉しい恋人の言葉にむせび泣いて抱き付くと、ティリアがやれやれしては苦笑い。しょーがないじゃん? めっちゃ嬉しかったんだもん!
でもって、そう。今日はあの二人……魔女ウォーラルと賢者ヒヒイロがこの『聖域』に訪れる予定の日である。おそらく私達への別れを告げに来るんだろう。あの二人はとある事情で一時的にこの世界に留まっていただけだから……ま、一時的と言っても、えらい長い間留まっていたようだけれど。
「うん……あ、うん。まだちょっと違和感ある」
「……もーやだぁ~姉さんったら、なんか生々しいわよ?」
うおぉぉい!? 妹よ! そこは聞き流せ!
詳細は話せないが……話したら成人向けになってしまうので。まぁ、なにかと初めてだったからしょうがないのだよ? 幸いアイギスがとても丁寧だったおかげで、痛みはそんなでもないんだけど……
「おほん! わかったわかった。ほら、彼等が来るまでにちゃんと出迎えの準備しましょう?」
はーい。んじゃ、ご飯食べて身なりを整えましょうかね。
ティリア「よかったわね姉さん(*´∇`) 素敵な初体験だったみたいで♪( *´艸`)」
アリサ「やぁだぁ~(*/□\*) 恥ずかしいってばよティリア~!(*≧д≦)」
ティリア「わざわざ調整して生理まで体験するなんて思わなかったわよ?(;´д`)」
アリサ「あ~それね~( ̄▽ ̄;) いや、だってさ~生理の辛さも知らないで、何が女かって思ってね(_ _)」
ティリア「姉さん、もしかしてMっ気あるんじゃない?(((*≧艸≦) アイギス今度試して見なさいよ?ヘ(≧▽≦ヘ)♪」
アイギス「ちょ、ティリア様Σ(゜Д゜ υ)」
アリサ「え、Mぅ!?Σ(O_O;) うぅーん……どうなのかしら?(;´A`)」
アイギス「と言うか、女神様方もそういう話をなさるのですね?(´・ω・`; )」
ティリア「あら、意外?(´・ω・`) 別に女神だからって、全員が清廉潔白、純真無垢なんかじゃないわよ?( ´ー`)」
アリサ「シェラザードなんて私並みに俗物だしね♪(*`艸´)」
アイギス「確かに、ヴェーラのような悪い奴もいましたね( ・`ω・´)」
ティリア「そういうこと(・-・ ) それにね、こう言う赤裸々なトークができる女子達の集まりがあるから、今度姉さんも参加してよ?(*´▽`*)」
アリサ「赤裸々トーク……めっちゃ興味あるわぁ(*ov.v)o 因みにメンバーは?(゜ー゜*)」
ティリア「基本的に既婚者や恋人もちの子達ね(*・ω・)ノ ほら、ネヴュラとかセレスティーナ、ファネルリアにナターシャとか(´・∀・`)」
アイギス「それじゃあレイリーアやサーサとかもメンバーに入っているのですか?(^_^;)」
ティリア「そそ♪(*゜∀゜) レイリーアとかネヴュラの話はためになること多いわよ~?( ・∇・)」
アリサ「うは~( ; ゜Д゜) ユニ達には絶対聞かせられない会合かぁ( ゜Å゜;) ちょっと気後れしちゃうけど、参考になるなら参加したいかな?(*´□`)ノ」
ティリア「あはは♪(´▽`*) 大丈夫よ、最初からそんな凄い話なんてしないから♪。:+((*´艸`))+:。」
アイギス「いつの間にかそんな会合ができていたのですね?(;´∀`)」
アリサ「ね、私も全然気付かなかったよ(´ε`;)ゞ うん、折角だし参加するわo(*⌒―⌒*)o」
ティリア「はーい♪(* ̄∇ ̄)ノ 歓迎するわアリサ姉さん(°▽°) これから色々話しましょうね♪ヽ( ゜∀゜)ノ」
アイギス「う~んσ(´・ε・`*) 男子の部もないだろうか……バルガス殿あたり誘ってみようかな?(´・ω・`; )」




