165話 合同結婚式
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【劇的ビフォーアフター】~イクシオン~
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「あらぁーっ!? 貴女、イクシオンよね!」
「うわっ! すんごい変わりましたね!?」
「驚きです。普段からもそのようにしていた方がよいのでは?」
さて。戦勝祝いの祝宴も一夜が明けて二日目に突入でごぜーます♪
はい。みなさんこんにちは! いつもお世話になってます、魔女アリサさんですよぉ~♪
初日とはうって変わって、静かな空気の『聖域』です。夕べは夜遅く。人によっては夜通し騒いでいたりもしたけれど、今はみんな静か。
というのも、今日はティターニアとルォンくんこと、『妖精王』オベロンの結婚式だからだ!
更に二組。ガウスとアルセイデスにムラーヴェとアルセイデスとの合同結婚式なのだから、みんなその準備に正装したり、会場をセッティングしたり、進行プログラムの確認をしたり、料理を準備したりと大まじめに動いているのだ。
「ヴィクトリアはん、セルフィーヌはん、フィーナはん……わっち、わっちは~あーっ! おかしくなってまうでんすーっ!! なんでんの!? このおべべ! ヒラッヒラじゃーねーのんでまんしょぉぉーっ!? しかも、一人じゃ着れないって、どーいうことでんす!?」
あーいたわ。騒がしいの。『知識神』イクシオン。
彼女はあまりにもズボラな格好をしていたために、妹達に命じて強制連行させたのだが、うむ。なんとも劇的なビフォーアフターである。
まず、毛玉状態のその髪は美しく整えられ、腰まで伸びるストレートヘアとなり、キューティクルがキラッキラしててとても美しい。
そして残念すぎたヨレヨレの丸知ティーシャツは淡い桃色の見事なドレス。ワンポイントのチョーカーもフリルがついて、美しさの中に可愛らしさも備えている。ドレスの丈が長くよく見えないが、足もおしゃれにニーソーか? 白いヒールがまた大人っぽい。
「うぐぐ……眼鏡も外されて、歩きにくいし……あいでんててーがぁぁ……」
「いいじゃないの。あんたは昔から身嗜みに無頓着過ぎたんだから」
「これを期に改めていきましょうイクシオン?」
うにゃぁぁーっ! って叫ぶイクシオンに呆れた顔するシェラザードと、あははって苦笑するアルナ。彼女達も勿論おめかし済みで、冒頭のヴィクトリア、セルフィーヌ、フィーナの三人も合わせ実に花やかである。
「やっぱ神に昇格するにはルックスも必要なのかね?」
「どうなのかしらね? 多分あんまり関係ないんじゃないかしら?」
「イクシオンは普段あんなにズボラなのよ?」
「あいでんててー! ズボラいわはんといておくんなさいまし!?」
あーはいはい。ドレス着たレディがそんなにぎゃんぎゃん騒がないの。素敵なおべべ着てるんだからおしとやかになさいな?
私がそんな花々しいレディ達にアホな質問するとシェラザードとヴィクトリアが律儀に応えてくれるんだけど、ここでまーたイクシオンが騒ぎ出したので、ちょいアリサさん、彼女に「メッ!」ってしてやった。
「着替えさせる時も、髪を直す時もイクシオンったらキャンキャン騒ぐんですもの……」
「ん……ここまで仕上げるの苦労した」
「だねぇ~まったく。素材はめっちゃいいのにおしゃれしないとか。うち等は見逃せんよ~イクしゃん?」
次いでやってくる妹達。アルティレーネにレウィリリーネ、フォレアルーネの三人は集まったレディ達に負けぬくらい素敵なドレス姿で登場だ。うむ、我が妹ながら誇らしいではないか。しっかし、まーた疲れた顔してるねぇ~? 話からイクシオンが駄々こねたせいらしいけど。
「あんた達~祝福を授ける側の私達がそんな「うへぇ~」なんて顔してちゃ駄目よ? もうすぐ式が始まるんだからシャキっとなさいね?」
「俺等男神は武運長久を、お前等女神は幸福をそれぞれ授けんだぞ? しっかりな!」
お待たせ~って行って私達の側にやってくるティリアとTOSHI。その後ろにはRYO、ルヴィアスにリドグリフ、ポコの姿もあるね。これでこの世界の神々が出揃ったかな?
「結婚式かぁ~生きてた頃には無縁だったねぇ~?」
「それを言うなら昨夜のあんな楽しい宴会なんかも無縁だったわよステラ~じゃない、アマテラス?」
「俺はあの美味いメシに感動しっぱなしだな……今日も食えるんだろう? 楽しみだ!」
更に『第二のユーニサリア』からも三神が同席する。夕べはこの子達ひたすら料理を食べてばっかりいてね……それでいて一つ一つの料理に対してえらい感動するもんだから、『ランバード使用人部隊』にめっちゃ気に入られてたわ。
「感覚でわかると思うが、お前達祝福を使うのも初めてであろう?」
「俺達でよければ手ほどきするけど、どうだい?」
わぁー! ありがとうございます! って、思わぬ提案に喜ぶアマテラス達だけど。おやおや、RYOはともかく、リドグリフってば意外と面倒見いいのね? まさかアマテラスとツクヨミ、スサノオ達に対して自分から率先して手助けしてあげようだなんて……
「リドりんは根はいいヤツでんすよぉ~? たんだまぁ、脳ミソ筋肉なだけで」
「そうだったの? やっぱ旧神同士わかってんだなぁ?」
ほほぉ~ただのバトルマニアってわけでもないのか。しかし「リドりん」ねぇ。イクシオンとリドグリフってルヴィアスが感心してるように、旧神同士でわかりあってんのかね?
「しかし、あの妖精の女王は今まで、本当に辛かっただろうな……何百年も婚約者が行方不明で……」
「だねぇ~それが今こうして再会できたんだもん。嬉しいだろうね♪」
「会えずにいた長い時間を埋めてあまりあるほど幸せになってほしいですね……」
そうだね。スサノオ、アマテラス、ツクヨミ……その想いを形に変えてあげるのが私達の祝福だよ。
「みーんなでお祝いしてあげるのです! ポコもいっぱいいっぱい「おめでとう」って言うのですよ!」
「んふふ♥️ それでしたらユイとユニからも沢山の祝福を届けましょう」
「うん! 二つの『世界樹』からもいっぱいの「おめでとう」をお届けだよぉ~♪」
「アンアンッ! ハッハッハ……クゥーンクゥーン、ワウンッ!」
あらぁん♪ ポコの後からまた可愛い子ちゃんが二人やって来たぞ! ユイもユニも可愛らしいドレスに身を包んでとっても素敵♪ そんな彼女達の足元で嬉しそうにはしゃぐバウわんの姿も相まって、美少女と小動物の実に尊い一枚画を完成させてくれている。
「あ! ちょっとバウわん!? じゃれつかないで! 毛が毛がくっつくじゃないですか!?」
「キャンキャン♪」
あはは。フィーナはその髪に合わせた空色のドレスだから、バウわんの白い毛がついちゃうとちょっと目立っちゃうね? はいはい、じゃちょいと魔法かけといてあげるからね。
「ありがとうございますアリサお姉様。助かります……」
「んふふ、とっても元気な子。嬉しい気持ちを分かち合えているようで、ユイも嬉しくなってしまいますね」
「本当にユイは大人びてるわね、アルナのように背伸びしてる感じでもないし~?」
「ぶー! どうせ私は強がってましたよーだ!」
私に魔法をかけられたことで、バウわんのじゃれつきによる汚れが気にならなくなったフィーナが、バウわんを撫でつつお礼を言ってくる。うむ、私もミーナを相手するときよく使う魔法だから安心だよ!
ユイはそんなフィーナにじゃれるバウわんを見ては、とても優しげな微笑みを浮かべ嬉しそう。間近でその微笑みを見ていたヴィクトリアが隣のアルナと見比べては、ちょっと意地悪そうにからかった。
ふふ♪ そんなアルナはほっぺをプクーってしてちょいと怒ったような顔をヴィクトリアに向けるんだけど、ポコが楽しそうに笑顔でアルナの膨らんだほっぺをツンツンってしてるのがまた可愛いね!
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【会場のセッティングは】~ヘルメットさん達が頑張った~
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さあ、それじゃあ、結婚式会場の様子も確認してみよう。
会場は最早お馴染みともなった女神の神殿で行われる。この『ユーニサリア』での一般的な結婚式とは、前世で言うところの洋風で、新たに生まれた夫婦の間に、健やかな子が儲かりますように。家族間の関係が円満でありますように。命尽きるまで共にあれますように。と、それぞれ『生誕』のアルティレーネ、『調和』のレウィリリーネ、『終焉』のフォレアルーネに祈り、また、そうあれるよう夫婦で努力していきますと、誓いを立てるのだそうだ。
「勿論、国や種族の細かい違いはあるんだけど、大体はそんな感じだよ?
私達の『ファムナ村』はレウィリリーネ様の肖像画の前でやってたんだ~♪」
「つい最近までは形骸化してたんだけどな。こうして女神様方が顕現したんだから結婚の儀式ってのも、本格的なもんに戻って行くべきかもしれねぇなぁ?」
「その辺りは、やっぱり予算が物を言うんじゃないゼオンさん?」
今回の会場は元々妹達、女神の神殿ってことで、これ以上ないほどに相応しい場所ではあるんだけど、今のリールとゼオン、フォーネの話からすると、妹達が顕現出来ずにいた間にそんな祈りも形だけのものに成り下がってしまっていたりしたらしい。それに裕福な家ならともかく、めでたい事とはいえ、やはりおぜぜがかかるのが問題で、近しい身内のみでささやかに行われる事の方が多いそうな。
「結婚の誓いなんて、要は当人達のお気持ち次第ですよ?」
「派手に披露宴とか開けばそりゃあ、いい思い出にはなんだろうけどさ~それで借金こさえて火の車~じゃしょうがないもんねぇ?」
「ん。あたし達も全部を祝福なんて無理。だけど、今回は特別」
まあ、前世でも式は身内だけで披露宴はやらない~なんてのもザラだったっし。妹達が言ったようにそれでお金に困って~なんてガッカリもいいとこだ。
「その辺りも今後は変わるといいわね? まあ、彼等ならより豊かな社会を築いていくでしょうけれど」
「今日のこの式がいいきっかけになればいいわよね♪」
「それにしても……素晴らしい会場になりましたね~? 凄くきらびやかですよぉ~♪」
シェラザードとヴィクトリアが入場してきた各国の代表者達に目を向けて、微笑みあっている。うむ、魔王の脅威に世界の自壊の怖れも払拭された今、魔物は存在するものの、ルヴィアスや、ゼオン、獅子王に珠実達ならきっと今よりずっと暮らしやすい世界を作って行くだろう。
そしてセルフィーヌが感心してるけれど、この神殿の一室は昨夜から夜通しセッティングが行われ、今や何もなかったその部屋も立派な式場に様変わりしている。
「ヘルメットさんがめっちゃ張り切ってたからね~?」
「あたぼうよ! こんなめでてぇ話はそうそうねぇからな! 俺様達『建築班』も気合い入ったぜ!」
ウゥーッスッ!!
いやはや、本当にありがとうだわ。そしてマジにお疲れ!
会場の隅で綺麗に整列する『建築班』のみんなが、ヘルメットさんの言葉に一斉に応えた。中には目の下にクマ作ってる者もいたりして、マジに頑張ってくれたのだとわからせてくれる。だけど、やっぱり嬉しいんだろう。みんないい笑顔で満足気な顔をしているよ♪
『コホン……間もなく合同結婚式が執り行われます。皆様。会場にお入りになってお待ちください』
おっと、そろそろみたいだね?
司会を務めるのはあのはぐれエルフ。ピシッとした正装に身を包み、丁寧な口調でこの『聖域』に放送を流している。それを聞いたみんなも談笑をやめて、それぞれが静かに席に座るのだった。
「そう言えばお母さん? あのアルセイデス二人の名前は無事に決まったのでしょうか?」
「うん。ガウスとムラーヴェも散々悩んでたけど、中々素敵な名前に決まったよ」
小声でアルナが私に訊ねてくるので、発表されるまでのお楽しみだけど、結構いい名前に決定したとだけ教えておく。
ティターニアのところのアルセイデス二人。今回の花嫁さんなのだけど、昨日ガウスとムラーヴェがルォンくんこと、『妖精王』オベロンの御前で一生涯かけてお嫁さんを幸せにする~って誓いを立てたんだけど、私の口利きでアルセイデス達も相応の誓いを立てるべき。と、相成ったわけよ。
んで、その誓いってのが、旦那が付けた名前を一生背負うってものだ。
元々人間だった私には名前があるのが当たり前だったので、個人名のない社会が不可思議であったのだけど、彼等は別に不便を感じていないので、まあ、そういうもんなんだろうねぇ?
「素敵な名前なのです? それは楽しみなのです!」
「ふふ、そうだね~ポコちゃん。私達も素敵な名前をアリサ様にもらえたし、あのアルセイデスの二人もきっと喜ぶよね!」
「そうですね、アリサ様がお認めになったお名前なら……」
「おっと、ほら。アマテラス、ツクヨミ。そろそろ始まるみたいだぞ?」
うむぅ、ポコもアマテラスもツクヨミも……間違いなく素敵な名前のはずだと信じてやまないようだけど……なんか途端に自信がなくなってきたぞ? 感じ方は人それぞれだからなぁ~まあ、今更なしにはできないので成り行きを見守るしかあるまい。
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【一組目】~ティターニアとオベロン~
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「──それでは、新婦の入場です」
ワアァァァーッッ!!
始めは勿論、ティターニアとルォンくんだ。白いタキシードに身を包み、胸には雪月花……この美しい花はティターニアが好きな花で、ルォンくんが行方不明ともなった原因だったりする。
ルォンくんはその昔、ティターニアの誕生日にこの雪月花をプレゼントしようとして、『ルヴィアス魔導帝国』の『勇者の山脈』に単身赴いたのだという。
しかし、雪山を甘くみてあえなく遭難。絶体絶命のところを、ルヴィアスに発見され一命をとりとめた……のだが、記憶が失われてしまい、ルヴィアスの養子として帝国の皇子になった。
──ってのが、記憶を司る妖精テュッティによって、全てを思い出したルォンくんが語った話の内容だ。
そのルォンくんは先に会場入りしており、妹達三人の女神の前でひざまづいた後、花嫁のティターニアの入場を待っていた。
綺麗ーっ! 女王様ーっ! 素敵ぃーっ! 妖精さん達可愛いぃーっ!
キャーキャー♪ 女の子達の歓声が響きチャペルの扉が開くと、いよいよ花嫁の登場だ。
バージンロードを歩くティターニアをエスコートするのは、様々な妖精達。ピクシー達が飛び交い、ドリュアスやセイレーン達が歌い、ノッカーくんとブラウニーちゃんがトレーンベアラーを務め、如何にも賑やかなティターニア達らしい入場で、私達も笑顔にならずにはいられない。
「綺麗……」
妖精達と一緒に、参列者達に笑顔を見せるティターニアは、そのウェディングドレスも似合っていて、すんげぇ綺麗に見える。ああ、これは世の女の子達が憧れるわけだよ♪
「──妖精王オベロン。貴方はティターニアを妻とし、いついかなる時も愛することを誓いますか?」
「はい。このオベロン、妖精王としてティターニアを永遠に愛することを神々に誓います」
ああ、素敵……祭壇の前で並び立つルォンくんとティターニアに、アルティレーネが問う。
それに迷うことなくはっきりと誓いを立てるルォンくん。嬉しいだろうなぁ~ティターニア……
「妖精女王ティターニア。貴女はオベロンを夫とし、どのような状況においても、彼を愛することを誓いますか?」
「ぐすっ……誓いますわぁぁーっ! もう、何が起ころうと、オベロンと生涯を添い遂げますわぁぁーっ!」
あらら。ティターニアってば嬉しさのあまり泣いちゃったぞ? まあ、無理もない。何百年も行方知れずだった婚約者がこうして無事に帰って来て、不安要素だった魔王問題も解決して、明るい未來が目に見えているんだもんね。
「よかった、本当によかったです女王陛下……このリリカも感無量でございます!」
「よかったなぁ~ルォン……いやぁ~マジでさ……ぐすっ……」
見ればリリカさんもルヴィアスも……ううん。他にももらい泣きしちゃってる人がチラホラと……うん、勿論私も嬉しい。本当によかったね二人とも!
「では、互い誓いの口付けを……♪」
「はい」「はい、ですわぁ」
ワアァァァーッッ!! パチパチパチパチィィーッ!!
そして二人の誓いのキス。と、同時に巻き起こる大歓声に拍手喝采。
お幸せにぃぃーっ!! 幸せになれよぉぉーっ!!
わーわー♪ 鳴り止まない歓声に手を振って応えるルォンくんとティターニア。ホント、うん! おめでとうおめでとう! 絶対に幸せになってねぇーっ!
「……本当に、今まで待っていてくれてありがとうティターニア。そして、待たせてしまって済まなかった……」
「いいのですわ! こうして貴方は戻って来てくれた……こうして、約束を果たしてくださいましたわ。私はそれだけで……う、うわあぁぁーん! オベロォォーン!!」
おうおう? いやはや、ここでティターニアの感情が爆発だ。まるで子供のように泣きじゃくり、ルォンくんに抱きついて……ルォンくんもそんなティターニアをしっかりと抱き締めては優しく彼女の頭を撫でて涙ぐんでいる。
「おめでとうございます二人とも」「ん。お幸せにね?」
「うおぉぉん! よかったねぇよかったねティタっちーっ! 幸せになるんだよぉぉーっ!?」
アルティレーネとレウィリリーネ、フォレアルーネにも祝福されてここに妖精王オベロンと、妖精女王ティターニアの婚姻が結ばれたのでした♪
本当、おめでとう! 幸せになってね♪
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【二組目】~ガウスとセレナ~
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さて、ルォンくんとティターニアの婚姻の儀での興奮冷めやまぬ中、次いでガウスとアルセイデスのカップルの登場だ。
「まさか、いつも『セリアベール』で門衛してたあの二人がなぁ……」
「そうじゃなぁ~よもやここまで共に過ごすこととなろうとは思いもせなんだ……」
ガウスのタキシード姿を見つめては感慨深そうにため息を漏らすゼルワとドガ。うむ、私もまさか街の門番さんがここまで深く話に関わってくるなんてまったく予想できなかったよ。
ぶっちゃけあの二人はモブだとばっかり思ってたんだけど、あれよあれよとメキメキ成長して、『魔装戦士』が『聖域』を襲撃してきた際にも獅子奮迅たる活躍を見せ、ピンチに陥ったアルセイデス二人を救ったり、なにかと大きく貢献してくれたのは間違いない。
「キャーッ! ガウスちゃーん結婚しちゃいやぁーん!」
「おめでとぉぉーっ! ガウス! ムラーヴェと一緒にまた飲もうや~♪」
「ははは! 感謝する妖精の皆ーっ! これからもよろしく頼もう!!」
まぁぁーったく! 浮かれおってからに! 入場したガウスに妖精さん達が大きな歓声を贈っているけど、なんだかガウスとムラーヴェってやたら妖精さん達に人気あんのよね。なんでだべ?
「物珍しいってのもあんだろうけどな~♪」
「アイツ等の短絡さ……いや、明るさには俺達も何度か救われたりしたものですよ。アリサ殿?」
中々言うねセラちゃん、バルドくん。でも、なんかそれわかる気がする。あの二人はあんまり気落ちしたり、悩んだりしないで、兎に角行動あるのみ! っていう、よくわからん勢いがあるんだよね。私としてはいっつも「うおおぉぉーっ!」とか叫んでるイメージあるんだけどさ、なんてーの? 「下手な考え休むに似たり」で頭より先に体動くタイプ?
「はいはい。盛り上がってんねぇ~? それじゃこの勢いに乗って、誓いの方もやっちゃおーっ!
あい! ガウガウ! あんたはこの『セレナ』ちゃんを、その短い人生かけて全力で愛して幸せにするってうち等に誓えるかーい!?」
「然り! 俺の残りの生は愛する『セレナ』の為に! 全霊をもって誓おう!」
わあぁぁぁぁーっっ!! いいぞガウスーっ! かっけぇぇーっ!
いや、ちょっとフォレアルーネってば悪ノリしすぎじゃないの? こういったバカみたいに高いテンションで騒ぐのは実に私達らしいっちゃ、らしいけども……一応これ、大事な結婚式なんだけど? まあ、周り全員大盛り上がりしてるからいいか。
「あら、素敵な名前を考えたじゃない? あのアルセイデスのイメージに合ってるんじゃない?」
「そうなのか? 俺にはそのイメージがよくわかんねぇんだけど……なかなかしゃれた名前だわな♪」
そう、ガウスのお嫁さんになるアルセイデスの名前は『セレナ』だ。ティリアの感想にTOSHIが首を傾げているけど、あのアルセイデスは喋ればとっても明るくて楽しい陽気な子なんだけど、黙って座ってればまるで深窓の令嬢のごとき儚げな美少女……実際には「少女」と呼べる年齢ではないとのことだが……なので、その点を私とガウスと彼女で話し合って、最終的にガウスがそれっぽい『セレナ』と決めた……どこがそれっぽいのかはよくわかりましぇん。
「オッケェェイッ! 素晴らしい覚悟だガウガウ! んじゃセレナちゃんや!!
ガウガウが贈る『セレナ』って名前をこれから長い生涯名乗り続けて、更にガウガウとのラヴを貫くって誓えるぅぅーっ!?」
「はい♪ 勿論誓います! 私は今後ガウスの妻、セレナであり続け、いついかなる時も夫たるガウスに寄り添うと!」
わぁーっ! って、更に歓声が大きくなった。やれやれ、ずっとこんなテンションで行くの? フォレアルーネが牧師約なので仕方ないと言えばそれまでだけど。
何はともあれ、ガウスとセレナも誓いの口付けを交わし、無事にプログラムが進行していく。
最後はムラーヴェともう一人のアルセイデスのカップルだ。
「ん。さっきは実に騒がしかった……オホン。気を取り直してあたしが二人の誓いの立会人。準備いい?」
「「はい!」」
そうして、最後の牧師役はレウィリリーネ。折角三組のカップルが式を挙げるんだから、牧師役も交代でやりたいと言い出した我が妹達である。この『ユーニサリア』創世の三女神が自ら誓いを見届けてくれるとあって、三組のカップルは大いに喜んだのだ。
「普通なら小さな石像や木像の女神像を作って、会場もこんなに立派じゃないし~ですからねぇ?」
「本当に素敵だと思うわ! アリサ様。もしよろしければ、その……私とデュアードがもし、その~結婚式を挙げるときは是非こんな風に……」
ミュンルーカとシェリーから少し話を聞くと、やはり女神へ結婚の誓いは女神像の前で行うものだそうで、こうしてマジな女神に聞いてもらえるなんて普通はあり得ない話って、そりゃそうだ。『魔神戦争』よりも以前ならともかく、妹達は最近になってようやく顕現できたのだから。
「うん。そうね、その時が来たら是非教えてちょうだい? 『聖域』のみんなも見ての通り、お祭り好きだから歓迎してくれるよ♪」
「やったぁ! 私、頑張りますね! 幸いデュアードとは良好な関係が続いていますし、そう遠くない内には……うふふ♪」
嬉しそうねシェリー? やっぱり決まった相手がいて、身近の仲間がこうして立派な式を挙げてるのを見ると、羨ましくもなり、いずれ自分もって願望が顕になってくるものなのだろう。
「それに~ワタシ達って行き遅れ気味でもあるんで、ちょーっと焦りもあるんですよねぇ~?」
「私はまだいいけれど、ミュンはもうちょっと焦りましょうよ?」
ああ、そう言えばこの世界じゃ結構早い年齢のうちから許嫁や、婚約者がどうのって話を子供に話したりするって言ってたっけ? デュアードくんっていう恋人がいるシェリーはともかくとして、ミュンルーカは確かに決まったお相手がいないのでもっと焦った方がいいと言われてるけど……
「う~ん……なんだかそんな気になれないんですよねぇ~この結婚式見て「いいなぁ~」とは思うんですけどぉぉ……」
ふぅーん。ま、結婚がすべてってわけでもなし。いいんじゃないかねそれで? それに、多分ミュンルーカはまだ、友達以上恋人未満だったあのハーフドワーフのエイブン氏のことを吹っ切れていないようにも思える。おそらくそれはシェリーも感じているだろう。
「『リーネ・リュール王国』の復興でもしかしたらいい人と出会えるかもしれないわね」
「う~ん……確かに焦って変な男に捕まったらガッカリよね。ミュンのペースでいいのかも」
ミュンルーカは確かまだ二十歳になってないらしいし、私の前世でならまだまだ焦る年齢じゃない。彼女に今後いい出会いがあるように祈っておくとしましょうかね。
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【三組目】~ムラーヴェとリィレネ~
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「ん。それじゃあムラーヴェ? 貴方は伴侶となる『リィレネ』を生涯かけて愛し、幸せにすると誓える?」
「はっ! このムラーヴェ生涯を……いえ! たとえ命尽きようと彼女の守護者となり寄り添うと創世の女神に誓いましょう!」
いやぁ~えらい惚れこみようだねぇガウスといい、ムラーヴェといい……今ムラーヴェが立てた誓いは、言葉通り、死んでも『三神国』の王達みたいに輪廻の環に還らず、お嫁さんであるアルセイデス……『リィレネ』の側で彼女を守るってことだから、相当だ。
「私は彼等の気持ちがわかる気がします。ひとつの街のしがないギルド職員が森妖精であるアルセイデスと出会い、恋仲になれることなどそうそうあるものではないですからね……」
「そー言うもん? まあ、でも言われるとそうかな。アイドルと一般人みたいなもんだろうし」
アイドルって何ですか? とか、アイギスが訊いてくるけど、まあ、その辺は簡単に駆け出し冒険者がSランクに憧れるみたいな~とか説明しておいた。
「ああ、うん。そういうことなぁ~? わかりやすいじゃねぇの。確かに『セリアベール』でずっと門衛してたらこんな出会いなかったろうしな。
でよ嬢ちゃん? あの『リィレネ』って名前はムラーヴェが考えたのか?」
「ムラーヴェとリィレネの案だねぇ~ほら、私とアルティに出会ったのが、ムラーヴェ達がここまできた、そもそものきっかけになったわけじゃん?」
ほぉぉ~とか感心してるゼオンも口を挟んできたので、答えてあげると、あの『リィレネ』という名前はムラーヴェとリィレネが色々と話し合った結果だったりする。
「なるほど、確かにアリサ様とアルティレーネ様に会うことがなければ、今頃二人は門衛を続けていたでしょうね? では、アリサ様とアルティレーネ様のお名前から少し拝借して。と言ったところでしょうか?」
「そうらしいよ? 私の『リ』とアルティの『レネ』だね。ほら、最初アルティは『レーネ』って名乗ってたでしょ?」
まったく、「大恩あるお二人から少しお名前をいただいて」とか言っちゃってさぁ~? なんだかむず痒くなっちまうでねーの! まあ、うれしいけどさぁ~? いやぁ~困っちまうぞない!?
「なーにが困ってしまうだよ? そんなに顔にやけさせといてよぉ~? あんま変な顔すっとアイギスの奴も熱冷めちまうかも知れねぇぞ?」
「バカなことを言ってるんじゃないゼオン。しかしムラーヴェの奴、見事な覚悟だが……リィレネはどう受け止めているのか? 流石に死してなお。というのは重すぎないか?」
うおぉっと!? そりゃいかん! アイギスに「こんな変顔する女嫌だ」なんて思われたら私は立ち直れないダメージを負ってしまう。気を引き締めておかねばなるまい。キリッ!
って、アイギスもムラーヴェの誓いを「重すぎ」って感じるのか? 私の前世ならともかく、この魔物の脅威が存在する『ユーニサリア』では、命が軽い分、恋愛だのなんだのは深いもんだって思ってたんだけど?
「ん。確かにその誓い、受け取った。それじゃあリィレネ」
「はい!」
「貴方は彼の誓いに、そのリィレネの名を背負い。彼を夫として、その身朽ちるまでムラーヴェの魂と共に過ごす覚悟はある?」
「誓います! 魂にまでリィレネの名を刻み、夫ムラーヴェと永遠を添い遂げましょう!」
あらぁーっ!? こりゃアルセイデス二人の方もかなりの入れ込みようだわ。アイギスの不安も吹っ飛ばし、めっちゃ熱い愛を貫く覚悟ができてる!
「ん♪ 二人とも素晴らしい覚悟……さあ、それじゃあ婚姻の口付けを交わして?」
「リィレネ、愛しています。これからもよろしく」
「ムラちゃん♪ 素敵な名前ありがとう。こちらこそよろしくね」
わあぁぁぁーっ!!
「あたし達創世の女神と主神に、多くの神。そして……『神々神』のアリサお姉さんが祝福を授ける」
「さあ、三組の新たな夫婦達。祭壇の前へ!」
さて、いよいよ最後のプログラムだ。めでたく婚姻が結ばれた三組のカップルに私達神々が祝福を……と言っても神の人数多いしほんのちょっとだけだ。それも、家庭円満とか無病息災とか、武運長久とかありきたりでささやかなもんに限る。
「こやつらだけ我等の祝福を集中させるのもな」
「えこひいきが過ぎるのです! そもそもポコ達は魔王のままなのですからね~?」
「だから本当に特別よ、今回は?」
「うぅーん、俺としては息子夫婦をめっちゃ贔屓したいんだけど……しょうがないか~」
はい。そんなわけで魔王ーズもそれぞれ集合。リドグリフ、ポコ、シェラザード、ルヴィアス。この四人は敵だったり、封印されてたり、呪われてたり、帝王だったりとなんやかんやあったものの、今こうして私達と共にある。
「あんま手伝えなかったからな。せめてちょっとくれぇ力くれてやるぜ?」
「俺もだな……今更ながら分け身くらいは使えるようになっておくべきだったと反省しているよ」
次いで並ぶのはTOSHIとRYOの兄弟。確かにこの二人に手伝ってもらえればもっと楽に解決できたかもしれないけどね。なんとかなったんだし、終わりよければすべてよしだよ。
「わっちも、もちょっと早うに協力すればよかったでんすなぁ~? お詫びにちょいとだけでんすけんど、賢くなれるおまーじないするでおましょぉ~♪」
「それじゃあ、みんな揃ったところで、いくわよ~♪」
そしてイクシオンが、ユニがユイが……ヴィクトリアにアルナ、バウわんも、ツクヨミ、アマテラス、スサノオも祭壇に登り……
今日結ばれたこの三組の夫婦達に幸多からんことを!!
バッ! っと、揃い踏みしたみんなが手を掲げ三組の夫婦に祝福を授けた。
祝福の綺麗な柔らかい光が三組の夫婦達を照らし、ほのかな温もりを残してゆっくりと消えて行く。
祭壇の前でひざまづいていた三組の夫婦は、一度顔を上げ、感謝を伝えた後、もう一度深くその頭を下げたのだった。
「さあ、じゃあ最後に私から! じゃーん! 結婚式と言ったらやっぱこれよね♪ ウェディングケーキぃぃーっ!」
うおおぉぉーっ!? すげぇぇーっ! バカデケェの出てきたぁぁーっ!!
わっはっは! 驚いておるな皆の衆! そう、私が贈る祝福はこれ! 超巨大なウェディングケーキだ!
しかも三組分だぞぉ~♪ 背丈の高いリドグリフでさえその頂を見上げねばならんほどのケーキが三つも登場したことで、会場は大いに盛り上がった。
それぞれのカップルに入刀してもらい、拍手が巻き起こり、そして全員に切り分けて……なんとも笑顔が溢れる最高の結婚式になったのでした。
「ふふ、新しいカップルさん達、お幸せにね♪」
ガウス「これは凄い!ヽ( ゜∀゜)ノ ありがたくいただこうセレナ(*´∇`*)」
セレナ「はーい♪(*≧∀≦) ホラホラ、ガウくんあーんしたげる♥️(*´∀`)」
リィレネ「驚いたねムラちゃん♪(о^∇^о) こーんな凄いケーキが出てくるなんて!∩(´∀`)∩」
ムラーヴェ「だなぁ~本当にアリサ様には感謝だな!o(*⌒―⌒*)o」
ティターニア「美味しいですわぁぁ~♪ヾ(o≧∀≦o)ノ゛ オベロンもお食べになって!( *´艸`)」
オベロン「ふふ(^ー^) 慌てないでティターニア、頬にクリームがついていますよ?(*´・∀・)ノ はい、取れました、あむ♪( ´ー`) うん、とても美味しいですね( ´∀`)」
ティターニア「あらやだもう~オベロンったら!( 〃▽〃) 恥ずかしいですわ!(〃艸〃)」
ミュンルーカ「( ̄▽ ̄;) いや、わかってましたけどねぇ~(-_-;) 新婚さん三組ですし?( ´Д`) 甘さも三倍ですよねぇ~?(  ̄- ̄)」
アリス「あっはっは!(゜∀゜ ) 嘆きなさんな、みゅんみゅん♪(((*≧艸≦)」
ニャモ「そうそう(^-^) 貴女結構な器量よしなんだし、きっといい相手が見つかるわよ?( ・-・)」
ミュンルーカ「じゃあ連れて来て下さいよぉ~?( 。゜Д゜。)」
ネネ「あらら(;゜0゜) 途端の無茶振り、困りましたね(´∀`*)」
フェリア「なんだ騒がしい( ・`ω・´) 何~? いい男がいないかだって?(*゜∀゜)=3 ホラ、こいつで我慢しろミュンルーカ!(*´□`)ノ」
パルモー「ちょっと姉ちゃん何いきなり!?(;´゜д゜)ゞ 襟首掴まないでよ!(`Δ´)」
ミュンルーカ「パルモーくん!?Σ(゜ロ゜;) まさか実の弟を差し出してくるとは!?( ̄0 ̄;)」
ゼルワ「お、いいんじゃね?(* ̄ー ̄) パルモーはこう見えてミュンルーカよか年上だし、パルマーに変身すりゃ背丈も釣り合うだろ?(_ _)」
サーサ「そうですねそうですね♪(≧▽≦) ほら、パルモーくん変身です変身!ヽ( ・∀・)ノ」
パルモー「なんなのさ~さっぱりわかんないけどパルマーになればいいの?(;´д`) んじゃ、ホイ! ふぅ、これで良いのか?┐( ̄ヘ ̄)┌」
ミュンルーカ「むっはぁぁぁーっ!?Σ(*゜Д゜*) アリ! これはアリですよぉぉーっ!!♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪」
ユイ「ふふ、どこも盛り上がっていますね♪(´▽`) とても楽しいです( ´ー`) ケーキ美味しいですし( ・∇・)」
ユニ「だねぇ~♪(≧▽≦) いーっぱい笑顔でユニも嬉しいよ!ヽ(*>∇<)ノ」
アルナ「お姉ちゃん達!o(*`ω´*)o 喜んでばかりもいられませんよ!(`Δ´)」
ポコ「なのです!(*´▽`*) 今度はパパとママをくっつけて、ポコ達の本当のパパとママになってもらうのですよ!ヽ(*´∀`*)ノ」
アリア「んぅ(*´∇`) アリアも協力する( ・`ω・´) です!(*ノ▽ノ*)」
ユイ「あら(・o・) それはなんて素敵な企みでしょう♪(*`艸´)」
ユニ「おー!ヽ(*´∀`)ノ アリサおねぇちゃんとアイギスおにぃちゃんをくっつけちゃおう作戦?(*≧ω≦)」
ティリア「あら~ちびっこ達~楽しそうなこと考えてるじゃなーい?(°▽°)」
TOSHI「放っておいても勝手にくっつくと思うけどな……(¬_¬)」
イクシオン「そこはわっちらがチャチャ入れてなんぼでござましょぉぉ~?Ψ(`∀´)Ψ うっしっし♪(*>∀<*) シンプルでんすけんど、こーいうのはどーでござましょ?( ´ノω`)」
ユイ「ふんふん……(゜-゜)(。_。) なるほど、確かにシンプルですけど効果はありそうですね♪(゜ー゜*)」
ティリア「いいわね!(o^-')b それで行ってみましょ♪( *´艸`)」
ユニ「むっふぅ~ん♪(*´ω`*) 楽しみーっ!ヽ( ̄▽ ̄)ノ」




