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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
201/211

162話 『白銀』解散?

────────────────────────────

【結橋】~繋がる世界~

────────────────────────────


 さて、『第二のユーニサリア』を管理する新たな三神と、その彼等を支え、見守る『世界樹(ユグドラシル)』こと、私の新しい『聖霊』ユイのお披露目と紹介も済んだところで、今度はアルティレーネ達の『ユーニサリア』との道を繋ぐ橋をかけなければいけない。


「そのためには私の『無限円環(メビウス)』を中継して、ユイとユニ。貴女達二人の『世界樹(ユグドラシル)』の力が必要になるの」

「はい。お任せ下さい。アリサおねぇちゃん」

「うん! ユニもユイおねーちゃんと一緒に頑張る!」


 うむ! 二人ともいいお返事でアリサさん、大変満足です♪

 イメージとしては、三つの島を橋で繋ぐって思ってもらえばわかりやすいかな? この二つの世界の移動も、私が許可を出した者に限り、『無限円環(メビウス)』を通って自由に……は駄目だけど、一言「通るよ~?」って、私に声をかけてさえくれれば往来出来るようにするつもりだ。


「僕達ってさ、今とんでもない瞬間を目撃してるよね、これ……?」

「スゴすぎだよね~? 女神様達と出会えたってだけで奇跡的なのに……」

「まさか、その神々すらも平伏する『神々神(デウス・イクシード)』様に……」

「新しい世界の創造の瞬間とか、新しい神様の誕生とか……」

「もう、モモも目が回りそうですよ!?」


 あっはっは! なんだねレジーナ? あんた達『猫兎(キャットラビット)』の普段の威勢の良さはどこに行ったのかね?

 私の指示を受けて、ユイとユニが大きな神気をシンクロさせて世界を結ぶ橋を架ける作業に入ったのを見て、『猫兎(キャットラビット)』の面々、レジーナ、ミミ、ネネ、ニャモ、モモの五人が、彼女達らしくもなく畏縮してる様子を見せる。


「そんなに大した事してないでしょ? ちょいと湖に浮かぶ小島と小島を結んでるってだけじゃん?」

「湖と小島のスケールが違い過ぎんだろ、アリサの嬢ちゃんよぉ……」

「ははは……もう、僕達の尺度ではアリサ様を測るなんてできそうにありませんね?」


 私がそんな感じでわかりやすく話してやってると言うのに、このゼオンのおっさんめ! 何をため息ついとるか? んまぁ、ラグナースが言うように尺度ってのは確かに違う……というか、変わったんだよねぇ……主に見え方がなんだけど……ふむぅ、ちょいとティリア達にその辺訊いてみるか。


「規格外にも程がある。っていうのが全員一致の見解よ姉さん?」


 ……訊いてみた答えがこれである。


「私がアリサ姉さんを選ぶ。その事をミーナは……

 えっと、ホント今まで通りの接し方でいいのよね?」

─にゃぁん♪─

「うん、ありがとミーナちゃん♪

 で、それを読んでいて……いえ、違うわね、最初から知っていたのよ。だから、姉さんの側にずっといたってことよね」

「長いわよティリア……その上何を言ってるかよくわからないわ」


 あはは♪ ティリアってばちょいと前にもいつも通りの接し方で大丈夫って言ったのに、改めてミーナに確認とってるよ♪ ミーナも大丈夫とばかりに一鳴き。

 で、ティリアが言いたいのは、『神々神(デウス・イクシード)』だったミーナははじめから今の画が見えていたって事を言いたいんだと思うよシェラザード?


「わっちとTOSHIはんがあの『禁書庫』で観測したこの星に実際立てるなんて、思いもしまへんでんしたなぁ~……ロアの百八十三の世界の統合……それは、わっち等がいくら人数揃えても、恐ろしく時間のかかる作業になりますえ」

「それを片手間でやってのけるんだから……本当に「凄い」なんて言葉じゃとても言い表せないわよ」


 どうやらイクシオンと、ヴィクトリアの話を聞くに、世界の統合だのは何柱もの神が集まって力を尽くし、途方もない時間をかけて行われるそうだ。それでなお、上手くいくかはわからないし、統合できても精々が二つくらいで失敗することの方が多いらしい。


「ま、凄いのはミーナであって。私はちょいとその力を間借りしてるってだけだから。あんましあんた達と変わらないんじゃないかしらね~?」

「お母さん……いえ、いいです。お母さんはそのままでいてくだされば♪」

「そうなのです! どんなに凄くなってもママはポコ達のママなのです♪」


 あれま? なんだべなんだべ~♪ 私のかわゆい娘っ子のアルナとポコが抱き付いてきたぞ?

 う~ん、このかわいこちゃん達めぇ~♥️ お~ヨシヨシ♪ いい子いい子。


「あ、そう言えば……ティリアお姉様。アルナとポコがアリサお姉様の娘とは一体どういう経緯なのですか?」

「ちょーっと私も初耳ですねぇ~『神界』じゃあんなにピリピリしてたアルナちゃんが、こんなにニッコニコな笑顔なのは喜ばしいですけど」

「あ~そういやフィーナとセルフィにはまだ話してなかったっけ? 実は、かれこれ、こーいうわけで~」


 おや、フィーナとセルフィは事情を聞かされてなかったのか? まぁ、アルナ達が来た後、『無限円環(メビウス)』でバカやったり、直ぐ様作戦を起こしたりと、色々動いたからティリアも失念したんだろう。


「あっ! そうです! お母さん! フィーナが、ちょっと私が話しかけたら、凄く怖い顔で睨み付けて来たんですよ!?」

「……ほほぅ? フィーナちゃんや、どういうことかね?」

「あっ!! い、いえ……その、それは、ですね……少々深い事情がありまして、そのぅ……」


 あぁん? ウチのめんこい娘にガン飛ばしただとぅ? ハッと思い出したかのように私の背後に隠れたアルナがフィーナを「むーっ!」って感じで睨んでは私に告げ口をしてきたので、私はちょいとフィーナに軽い威圧をかける。するとどうだ? フィーナは「あ、ヤベっ!」って顔をした後、しどろもどろになっているではないか?


「うんうん。時間はたーくさんあるから、その深い事情とやらをkwsk聞こうじゃないの♪」

「は、はわわ……ティリアお姉様! 助けて下さいよ!?」

「だいじょーぶよ? ちゃんと事情を話せばアリサ姉さんは許してくれるって! 頑張りなさいフィーナ」


 そーいうこと、そーいうこと♪ さあ、お話ししましょうね~?


「あ~」


 ズルズル~って、私は恨めしそうにティリアに手を伸ばすフィーナの襟首掴んで引っ張るのでした。


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【さあ、帰ろう!】~凱旋~

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「アリサおねぇちゃ~ん♪ 上手に結べたよぉ~!」

「頑張りました♪ 褒めて下さいおねぇちゃん?」

「お~よくできました! どれどれ~? ふむ……ほうほう……おっと、ここがちょいと甘いかな? 私の方で補強しておこうね。後は……うん。大丈夫ね!」


 フィーナとじっくりこってりお話をして、アルナはもうティリアと和解してるから大丈夫だって事を伝え、フィーナの情報を最新のものに更新。

 どうにもこの子ってばティリアの事が大好きなようで、一時的にティリアを冷めた目で見ていた事のある、アルナに対して警戒を強めていたのだそうな。

 その辺をきっちり説明してもらい、私も納得。ただ、一言アルナにごめんなさいしようねって言って、フィーナは素直にアルナに対して頭を下げ、アルナも「私こそ」って、フィーナにごめんなさいしたので、これにて一件落着である。

 そんなことしてる間に、ユイとユニの作業が終了したらしく、嬉しそうに私に声をかけてきた。

 私は二人の仕事っぷりをしっかりと検収。一部分に綻びが見られたため、軽く指摘しつつ、補修を施して完成。


「あぅ。途中でちょっと集中力が切れちゃったところだぁ~ごめんなさいアリサおねぇちゃん」

「ユイもユニもまだおねぇちゃんから送られてくるこの大きな力に振り回されている状況ですからね……とはいえ、ミスはミス。誠に申し訳御座いません。アリサおねぇちゃん……」


 もぉぉ~♪ 二人とも本当に素直でいい子ね!


「立派だぜ……そうやってちゃんと自分の失敗を認められるってのはよぉ?」

「……私には耳の痛い言葉だ」

「なんじゃぁ~ガッシュ殿は気にしぃじゃの? 『ディード教団』の連中は皆、あのヴァンパイアによる洗脳を受けておったのだと聞いておるぞ?」

「……その、通りだ……あまり、自分を責めるな……ガッシュ」


 ねー? 獅子王くんもジドランドの王ちゃまもそう思うでしょ? あの拗らせボッチ神のロアとは大違いよ!

 で、ガッシュくんは未だに『教団』に与していたことを引き摺っているみたいね? まぁ、ジドル王やデュアードくんが声かけてくれてるし、他のみんなも気にかけているみたいだから、時間はかかるだろうけど、きっとガッシュくんは持ち直すだろう。


「さて、んじゃこれでやること終わったし……『ユーニサリア』に帰ろうかーっ!」


おおぉぉーっ!!


 新たな世界を管理する三神と、『世界樹(ユグドラシル)』の復活に、世界を結ぶ橋も架けた。これでやることは全部やったので、ホームグラウンドである『ユーニサリア』にみんなで帰ろう。そして、戦勝祝いってことで、でっかいお祭りして大いに騒ごうじゃないの♪

 私がそう言うとほら、みんなして嬉しそうに大喜びだ。よーし、美味しい料理沢山作って、みんなを労おうじゃないの!


「あの、アリサ様! 私達もお邪魔していいですか?」

「皆様の『ユーニサリア』を私達もこの目で見たいと思うのです」

「こっちの『第二のユーニサリア』も暫くは何もなさそうだしな……」


 お、アマテラス達も来たいのかね? いいよいいよ~♪ 確かにこっちの『第二のユーニサリア』に生命が生まれてくるのは相当先の話になるだろうし、あんた達だけじゃ退屈しちゃうだろうしね。勉強もかねて遊びにおいで~♪


「おっしゃぁぁーっ! 戦後の諸々ってな処理はあんだろうが、今は飯と酒だぁぁーっ!

 期待していいんだろぉぉ~? アリサ様よ!?」

『アリサ様の作る料理はどれも美味と聞き及んでおる。余もゼオンを通し、味がわかる故、是非食べさせてくだされ!』

《うっひょぉぉーっ! 楽しみだぜぇ~♪ 俺っち達もこれでもかってくらいケーキ作ろうぜぇ~?》

《いいですわね! このルロイヤ、腕によりをかけますわぁーっ!》


わーわー! やんややんや♪


 ふふ♪ めっちゃ賑やかになってきたね! 『ゲキテウス』の王様である獅子王くんとは初対面だけど、お互いに話は聞いているからね。特にお魚使った料理が好きらしいし、期待を裏切らないよう腕を振るいましょう。

 でもってゼオンに憑依中のユグライア王も、また、私の料理を楽しみにしてくれている一人だ。憑依元のゼオンを通して、しっかり味がわかるらしい。そういや、彼等『三神国』の王達にも『疑似体(アバター)』を作るって約束してたんだった。今なら妹達から出汁とった残り湯使った秘薬を使わなくてもいけるから、後でパパーっと用意してあげよう。

 うん。やっぱりバトルとかなんかより、こうしてみんなでわいわい楽しく過ごせる方が全然いいや。すっかりお菓子作りが大好きになった翼やルロイヤ、ウノにドゥエ達『偵察部隊』も嬉しそうに騒いでる♪


「おー、俺もアリサの姉貴の飯食えるんだな! でもよ、暫くは何もねぇからって管理者が不在ってな大丈夫かよ?」

「あんたって見た目と裏腹に結構細かい事に気が回るのねぇ~?」

「ねぇ? 意外でしょう、私の旦那? でも、私も気になるわ姉さん。流石にほったらかしはヤバくない?」


 なんだかTOSHIはブレイドくんを大人にしたみたいな印象受けるわね。豪快でいながらにして、ちゃんと気遣いができるっていう頼り甲斐のあるお兄さん? きっとティリアもそんなとこに惚れたんだろう。うんうん、よきかなよきかな♪


「安心してちょうだい。戦乙女を留守番に置いておくから。因みに『無限円環(メビウス)』には聖女を置いて、『ユーニサリア』には私。魔女さんが常駐するからね?」


 みんな同じ私の遍在存在だから共有が可能だし、何かあれば即座に対応可能だ。


「なるほど、ティリア姉さんと同じ遍在存在が用意できるなら安心だね」


 そういうこと♪ RYOの言う通り、これはティリアの話を聞いて真似させてもらった。だから、気にしなくて大丈夫よ~♪ さぁ、みんなで凱旋と行きましょうーっ!


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【ロアの処遇】~星の不滅化~

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 さて、ここでひとつ、明るく楽しい宴の様子を見る前に、ロアがどうなったのかについて触れておこうと思う。

 途中でティリアには、『存在消滅』なんて優しい……というか、勿体ない処罰は控えてほしいと伝えておいたのだが、やはりティリアとしても『神界』を治める主神として譲れないところがあるのだそうで、ちょいと話をすることになったのだ。

 私としては折角の『不滅』持ちの存在。それを強引に消滅させるのはちょっと勿体ないって思ったのよね。何かと利用価値がありそうだって踏んでいるわけだ。

 一方、ティリアとしては、今回における全ての騒ぎの元凶であり、また、その計画性から見ても情状酌量の余地など皆無。他の神への戒めとしても厳粛に処罰する必要があるのだと言っているのだが……


「待って姉さん。前にも言ったけど、『存在消滅』ほど重い罰はそうそうないわよ? それを「優しい」って、どういうこと?」

「うん。だからさ、それって結局「死刑」って事じゃん? 私の前世でもそうだけど確かに重罰だとは思うわ。でもね、ある意味では「死」って「救い」にもなるじゃない?」


 そう、私が言いたいのはこれだ。私も前世で毎日辛い思い抱えて生きてきて、正直、何もかもが嫌になっていたわけで、「死」の先に今がある。まあ、私みたいな例は極端だろうし、そうそうないだろうけど。


「消えてしまいたい。そう思ったこともあった……だから『存在消滅』なんて、優しいなぁって思ったのよ」

「……そんな考えもあるのね。じゃあ、姉さんならどうするの? なんか『永久機関』がどうのと言ってたような気がするけど?」


 うむ。それだよティリアちゃんや。ロアには『ユーニサリア』を回す『永久機関』の歯車にでもなってもらえばいいんだよ。


「詳しく聞かせてもらえる?」

「あいよ。んじゃ簡単に……ミーナと私で新生させた『第二のユーニサリア』は私達『神々神(デウス・イクシード)』の力で永久不滅の星になったんだけど、『ユーニサリア』には星の寿命ってのがどうしてもあるわよね?」


 ぶっちゃけ言えば『第二のユーニサリア』は私とミーナと連動してるっていうか、体の一部? みたいな? そんな感じで創ってあるので、何が起きても失われる事はないんだけど、アルティレーネ達が創造した『ユーニサリア』はそうじゃない。普通の惑星の一つに過ぎないのだ。

 そして、『無限円環(メビウス)』を中継し、二つの世界を結んだ今、片方が寿命を迎えて消滅ってのはちょいと嫌だ。


「なるほど、それでロアを利用するってわけか。そうね……この事は黙っておこうと思っていたけど……

 正直、度重なる騒動で『ユーニサリア』の寿命は著しく減ったのよね。と、言ってもまだ数億年は大丈夫なんだけど……」


 いや、そこは別に言わんでもええがな。大抵の者はそんな途方もない先の話をされても実感湧かないだろうし、理解もできないよ? ただ、私達は違う。そんな億年だろうと生き続ける。生き続けなきゃいけなくなってしまった。


「まあ、その時になってからさ……「あの時こうしてれば~」とか後悔したくないのよ。

 ロアによる星の不滅化は後付けだからさ、ちゃんと寿命迎えさせて、休ませたいってなったら、その時はロアごと無に還してあげればいいさね」

「……普通はそんなポンポン便利に取り付けたり、外したりできない筈なんだけどなぁ~『不滅』って。もう、どれだけ規格外になっちゃったのよ、アリサ姉さん?」


 うむ。その点は私もようわからんがな。ミーナが言うには「出来ない事は何一つ無い」らしいけどね? 「出来てもやらない」って選択肢が増えまくりで、ちょいと戸惑うわよねぇ~?


「はぁ、結局はなんでもアリサ姉さんがその気になるかどうか次第って事ね? それ考えると『神界』から切り離すのは正解だわ……あんな連中と一緒にいたら世界がいくつあっても足りないくらいにアリサ姉さんブチ切れそうだし」


 やれやれだ。そんなに酷いのかね? 『神界』の神達ってば。その気になれば、ここ『ユーニサリア』からでも他の神連中の世界だのなんだの、隅々まで知ることも可能だけど止めておいた方が良さそうだね。


「う~ん……正直あんな奴の自我が残ってる状態で『ユーニサリア』の『永久機関』にするってさ、あんまり気持ちのいい話じゃないわ。必要なのは『不滅』なのよね、姉さん?」


 どうもティリアは嫌な相手は徹底的に排除したいタイプみたい。まぁ、主神なんてやってると、何かと敵も多いのだろう。リスクを一つでも減らしたいって考えが真っ先にくるようだ。

 そして、結局ロアからは、『不滅』を剥奪。後はティリアの望み通り『存在消滅』ってことで決着した。


「そいつはスッキリしたというものだ。ようやく総ての問題が解決しましたね、アリサ殿」

「まーったくなぁ? これでアタイ達も普通の冒険者生活に戻れるぜ!」


 ……と言う話を聞いていた『黒狼』の面々。『聖域』で開催される戦勝祝いの宴の準備をお手伝いしながら明るく笑うバルドくんとセラちゃんだ。


「私としては、あの『迅雷』とか言うクズ達みたいにアメーバとかに変えてやって、世界に貢献させてやろうか~なんて考えてたけどね。まぁ、いいでしょ?」

「あ~あの『迅雷』の連中、そんなことになっていたんですね?」

「いいんじゃないでしょうか~? 処罰はしっかり下されたんですからね~やっぱり悪いことしたらダメってことで♪」


 社会復帰~なんて話じゃないけれど、まあ、終わった事をとやかく言うのはもう止めておこう。

 シェリーは『迅雷』のその後を知って苦笑い、ミュンルーカはうんうんと頷きながらも、結構あっけらかんとした反応だ。


「……なんにせよ、皆……無事で、本当によかった、な?」

「ですねデュアードさん! あの神殿をロアにぶっ飛ばされた時は俺も死ぬかと思いました」

「私、ガッシュさんがいなかったら今頃お魚さんのごはんになってたかも! うぅ~今になって怖くなってきちゃった!」


 一通り話も済んで、デュアードくんがふぅ~って大きなため息。ホントそれね? ブレイドくんとミストちゃんが言ってるあの『神殿』ドッカァーン! でみんなが無事だったのは本当によかった。


「あの時アリサ様の声が聞こえました! 励ましてくれて嬉しかったです♪」

「あはは、ちゃんと声届いたようでよかったよ。ごめんねぇ~すぐ助けにいけなくて」


 大丈夫です! こうして今無事にいますからって、いい笑顔してくれるミストちゃんだ。この子も本当にいい子ちゃんだわね♪ アリサさん嬉しい! ミストちゃんが私の一日占有券を使うときが来たら、その時はこれでもかってくらいに甘やかしてあげよう♪


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【祝宴!】~『白銀』解散?~

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「各国のみんな~♪ 今回の妹達の戦いに協力してくれて~本当にありがとぉぉーっ!

 おかげさまで問題はぜーんぶ解決! お礼と言っちゃなんだけど、今夜はみんな身分も立場も関係なしにバカ騒ぎしようぜぇぇぇーっ!!」


イィィヤッホォォォォーッ!! お疲れぇぇーっ!!


 さぁ、始まったぞ~♪ みんなが大集合しての『聖域』! 戦勝祝いの大祝宴だ!!

 女神の神殿前の大広場にズラリ、所狭しと並べられた沢山のテーブルに『ユーニサリア』の各国代表や、今回の戦いに協力してくれたみんなと連絡をとって、『転移陣(ワープポータル)』をホホイのホイって設置して集まってもらったそうそうたる顔ぶれが、全員起立して私の音頭に歓声を挙げる!

 やっぱほら、ラスボスやっつけてさ、協力してくれた仲間達と宴席で会話~とか、かの有名なRPGでも定番じゃない? 是非ともそれを味わってみたくてアリサさんてばまーたお料理頑張っちゃいましたYO!

 しっかしまぁ~こうしてみると凄い人数が揃ったもんだと、改めて思う。


「アリサ様。宴の音頭取り、お疲れ様です。皆の席を回られるのでしたら、是非私も同行させて下さい」

「あらぁん♪ アイギスからのデートのお誘い~? ふふっ、喜んでお願いするね♥️」


 みんなの喜びに満ちた歓声を聞き、心からの笑顔を見て、にっこりしていると、愛しのアイギスが側に来てくれた。そして、これまた優しいイケメンスマイルで、みんなに挨拶しに行くなら、一緒にって嬉しい申し出してくれるじゃないの♪ 私は勿論二つ返事でオッケー!


ぎゅむっ。


「あ、アリサ様!?」「な、なによぅ? イヤ、なの?」


 なんだか嬉しくなって色々と昂った気持ちが抑えられずにアイギスの腕に抱き付いちゃった! そんな私の行動にびっくりしたアイギスはちょっと狼狽えた様子で私の名前を呼ぶ。流石にやりすぎたかなって、不安になった私は、どもりつつ訪ねる。


「あ、いえ……すみません。少し驚いてしまっただけで、嫌ではありません。その……むしろ、嬉しい……です。エスコート、させていただきます」

「むは~よかった! 流石にはしたないかなって、やった後で思っちゃった。じゃあじゃあ誰のとこから廻ろうか?」


 いや~私もちょっと舞い上がってるみたい。アイギスの「嬉しい」って言葉ににやける頬が止まらんわい! ぶっちゃけ言うとずぅっとこの「当ててんのよ」状態でいたい気もするんだけど、みんなの手前そこはダンスにエスコートしてもらう時のような腕組みで我慢だ。 


「よろしければ私達『白銀』のところへ。治療していただいたサーサがお礼を言いたいと」

「ん、オッケー。まったく、並列意思ももってないのに私の真似するとか……ホントに無茶したわねぇ~?」

「ふふ、サーサにも意地や矜持があった。そういうことなのでしょう」


 サーサはリドグリフとの戦いで、妹達の創造した『神器』を私のオプションのように使いアイギス達の戦いを支えたという。正直かなり危険な賭けに出たなぁって思う。オプションを制御するってのは、複数のプログラムを同時に素早くこなさなきゃいけないのであって、それを自分の頭でやんないといけないのだ。

 まあ、そこまでしてでも「勝ちたい」って、思ったんだろうけど。『神域』でゼルワや、ユニ、アーグラス達と一緒にいたサーサを見てびっくりしたよ。


「ホントに危なかったのよ? あと少し無理してたらサーサは物言わぬ廃人になってたかもしれないんだから……」

「そう、だったのですね……彼女にそんな無茶をさせてしまった己の未熟さを恥じます……更に精進せねば!」


 うむ、私も同じ立場だったらきっと自分を責めるだろうからなぁ……今後も自分の力を検証しつつ、時々だらけつつ~を繰り返してゆっくり『神々神(デウス・イクシード)』の力を把握して行こう。


「お、来たぜ! おーい! アイギス、アリサ様!」

「あらぁ~♪ 二人仲良く腕なんて組んじゃって~よかったわねアイギス!」


 そうしてやって来た『白銀』達が座るテーブル席だ。ゼルワとレイリーアが私達の姿を見つけて手を振ってくるので、私とアイギスも軽く手をフリフリして応える。


「アリサ様! 私の治療。本当にありがとうございました!」

「ホンにのぅ~すっかり元通りの性悪エルフじゃて! ま、それでこそじゃがなぁ! わっはっは♪」


 ええいっ! やかましいですよ呑んだくれドワーフ! なんて、いつもの調子でギャイギャイ騒ぐサーサとドガの二人。ふふ、治療後の経過を診るつもりでもいたけど、この分なら心配要らなさそうだね。


「はい……もう、すっかり。と言うより、以前より断然今の方が! なんて言いましょうか? 凄く頭がクリアになっているというか♪」

「それならよかったよ。思考がクリアになってるのはサーサの思考速度が上がったって事じゃん?

 多分、九死に一生を経てレベルアップしたんだよ♪」


 脳神経が全部焼けて廃人になる手前まで行って、『神々の雫(ソーマ)』を処方され、『神域』による療養。そして、私の完全回復を受けたことで、サーサは更なるレベルアップを果たしたんだろう。調子が良いのはそのためだ。


「ふむん。ここまで踏み込んで来た魔法使いもそうそういないんじゃない? 鍛えていけば少し前の私くらいになるかも知れないね?」

「その事、と言うか儂等『白銀』の今後のことなんじゃがのぅアリサ様……」


 わーい♪ って喜ぶサーサを見て、この子は育てれば凄く強くなりそうだなぁ~なんて考える。実に将来が楽しみだね! なんて思ってると、おもむろにドガが話し出した。


「実は、パーティーを解散して、各々の道に進もうかと話していたんですよ」


 え、マジで?


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【それぞれの道】~今という奇跡~

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「言い出しっぺはアタシなのよアリサ様。ほら、魔王問題が解決して、いよいよ『セリアルティ王国』の復興が始まるわけでしょう?」


 ああ、うん。確かにそうだね。

 私は『白銀』のみんなの顔をポカーンとした表情で見ていたんだけど。話し出したレイリーアの声に、我にかえった。

 いや、正直めっちゃびっくりしたわ。『白銀』は拠点をこの『聖域』に移し、今後も冒険者としてやっていくのだとばかり思っていたから、正に寝耳に水だった。


「その事でダーリンがとっても忙しくなっちゃうのよん。ダーリンも『無限円環(メビウス)』での訓練で半端なく強くなったけど、やっぱり心配でね? 側で支えてあげたいなって思うの」

「儂も冒険は好きなんじゃが……そろそろ趣味の酒作りに専念したいと思うんじゃよ。

 ほっほっほ♪ ファムの夢でもある酒場を開くという前準備みたいなもんかのぅ?」


 ははーん。なるほど~いやいや納得ですよ。

 確かにラグナースはゼオンやディンベルのおっちゃんと繋がりあるし、信頼も厚い。その上、今回の戦いでも大活躍して一躍有名にもなった。そんな彼が『セリアルティ王国』復興に尽力するともなれば、多くの人が彼の下に集うだろうね。

 そんな彼の支えになってあげたいって気持ちは、アイギスに恋をしている私にはものすごーくわかる!

 ドガもドガで、奥さんのファムさんを想っての決断みたいだし、引き止める理由がないわ。


「じゃあ、ゼルワとサーサは?」

「俺達は一度里の連中に会いに『ゲキテウス』に行こうって思ってますよ?」

「さっきレオナード王が私達のところに来てくれて教えてくれたんです。なんでも長老を始め、皆反省しているとかで、一度謝罪させてほしいとか? 何を今更って感じなんですけどね♪」


 ほほん。以前に翼達『偵察部隊』に預けた手紙が功を奏したのかね? サーサ達の故郷のエルフ達は頭でっかち連中って話だったけども。

 話を聞くに、『魔装戦士』やら『ディードバウアー』やらが出てきて、あわくって逃げたんだそうな。んで、その逃走中に魔物に襲われたそうで、そこをヒャッハーと大地に助けられて、今は『ゲキテウス王国』にいるそうだ。


「で、その里の連中まとめて、リールとフォレアルーネ様と一緒に『ルーネ・フォレスト』の復興を手伝おうって思ってます」

「ま、里の連中も自分達で家だのなんだの作った方が、借りてるよりずっと気が楽になるでしょうからね」


 なるほどね~『ゲキテウス王国』に逃げたはいいけど、住まいやら食事だなんだのと世話になりっぱなしじゃ居たたまれなくなるもんだからね。それなら、自分達の棲処は自分達で作る方が気が楽か。


「まぁ、アリサ様がこの『聖域』と各国を繋ぐ『転移陣(ワープポータル)』置いてくれるっていうし、会おうと思えばいつでも会えますよね?」

「そーそー♪ だから~アリサ様?」


 まーそうね? 実は珠実が『エルハダージャ』の女王になった事で、『転移陣(ワープポータル)』を『エルハダージャ王国』とも繋げようねって話を、『ゲキテウス王国』の獅子王と『ジドランド王国』のジドル王に知られてしまったのだ。

 ズルイズルイ! 俺の儂の国とも繋げて!! って迫られてね……仕方なく設置することになった。まぁ、色々と迷惑かけちゃったし、今後とも長い付き合いになるだろうし、お礼とお詫びもかねてってことでいっか! って、妹達とも話し合って決定となりました。


「なんか少し寂しい気もするわねぇ……んで、なんぞレイリーア?」

「むっふっふぅん♥️ アタシ達のいない間ぁ~アイギスとしぃぃっぽりぃ♪ お楽しんじゃってちょうだいねぇん?」

「ぶるぅえぇぇっ!?」

「アイギスもアリサ様のことしっかり捕まえておくんだぜ?」

「アリサ様は結構なやきもち妬きさんですからね? 絶対浮気なんてしちゃダメですよ!?」

「ぶっふっ!?」


 あああ!? あびゃべべぼっ!? ななな、何を言い出すんだべこやつ等ってば! ああ、アイギスとしっぽりぃ~だとぉぉーっ!? お前ーっ! アイギス本人いる前でなんて事言い出すんだぁーっ!? こっ恥ずかしいべよぉぉっ!?


「うおっほっほ♪ 初々しくて見とるこちらも若返りそうじゃわい!

 じゃがのぅ、儂等がこうして、今を笑いあえておるのもまた奇跡のようなものじゃて……

 以前にティリア様が見せて下さった沢山の可能性の別の時間軸……その中にはこの仲間の内、誰かが失われてしもうた世界もあるやも知れんのじゃ」


 火照る頬を両手で押さえつけながら、うらめしそうにレイリーアを睨む私と、ゼルワとサーサに同じようにからかわれたアイギスがめっちゃ慌てて「私は浮気など絶対にしない!」とか騒いでると、ドガが楽しそうに笑い声をあげた。と、思ったら、ふぅ~と大きくため息をついて、少し寂しげな表情で、私達の別の時間軸の話をし出したではないか。

 その言葉に、私は恥ずかしいって思ってた気持ちが消えていき、なんだかとても、アイギスのことが好きだって事が尊いものであるように感じた。


「そうだぜ? 今だから話すけどよ……『魔の大地』に初めて向かうって決めたとき、俺とサーサは死を覚悟してた。最悪俺は死んでもサーサだけは生き延びてもらえればいいなってもな? まぁ、サーサにその事話したら泣かれちまったけどよ」

「そうですよ。アイギス? 貴方だってリドグリフやディードバウアーとの戦いで、一歩間違えていれば……わかるでしょう?」

「アタシもついからかうような口調で話しちゃったけどね、誰かを愛して愛されるって、とっても素敵なことよ?」


 神妙な面持ちになった私とアイギスに対して、ゼルワが、サーサが、レイリーアがとても真剣に、だけどとても優しい顔で私達の背中を押してくれる。

 そうだ、今こうしてみんな無事で笑顔を見せあって笑いあえているのは、本当に奇跡みたいなものなんだ……私はともかく、アイギスは危ない場面が沢山あった筈だ……


─にゃん……事実、アイギスを喪ってしもべが狂った世界も存在してるのにゃ。まぁ、その世界のしもべはみ~が押さえ込んで大人しくさせてるから、こちらには影響にゃいけどにゃぁ~? そいつ等が言うことはもっともだと思うのにゃ─


 私の肩に乗ったミーナがそんな補足を入れてきた。やっぱりそんな世界線もあるんだね……だったら、私。私は……


「へへ。まぁ、俺等が言いてえのはそんなとこだ。アイギスは『人間(ヒューマン)』で寿命も短ぇんだから精々後悔しねぇようにな~?」

「うふふ♪ それじゃあ私達も他の皆に挨拶して来ますね~?」

「アタシはダーリンのとこに行ってくるわ~ゼオンとエミルと一緒に『セリアルティ王国』復興についてつめていく~って話だしね!」

「うむ。儂等の言葉が少しでも二人のアドバイスとなれば幸いじゃ。どれ、儂もファムとギドの所に行ってくるぞい」


 そう言ってゼルワ、サーサ、レイリーアとドガが席を立った。そんな四人の背中を見て、それぞれ新しい道に行くんだなぁ~なんて、ちょっぴり寂しい気持ちになったアリサさんですよ。


「……なかなか考えさせてくれるな。アリサ様、突然で驚かれたかと思いますが、どうか悪く思わないで下さい」

「あ、あ~うん。大丈夫よ。ホントに心から私達のこと考えてくれてるんだなって、しっかり伝わってるから」


 うん……マジに考えさせられる話だった。私もアイギスもお互いにその考えをまとめる時間が必要みたい……そのためにも、他のみんなのところも廻って見て、色々話を聞いてみようか。

サーサ「うっふっふ♪(*´艸`*) うまくいくといいですねぇ~あの二人!(*´∇`)」

ゼルワ「だな!(°▽°) お互いに想いあってんだから、大丈夫だとは思うんだがよ(_ _)」

レイリーア「なにゼルワ?(´・ω・`) なんか不安そうじゃないの?(;゜0゜)」

ゼルワ「いや~(´ε`;)ゞ ちょっと余計なこと言っちまったかな?(-_-;) って、今更ながらに気付いてよぉ~(;´д`)」

ドガ「なんじゃ~?(・・;) アイギスの寿命が~って事かの?(´・∀・`)」

サーサ「それは仕方ないんじゃありません?( ´~`) アリサ様もアイギスもわかっていることでしょう?σ(´・ε・`*)」

レイリーア「そうねぇ~アタシのダーリンも人間だし、どうしたってその問題はつきまとうわ(´∀`;)」

ゼルワ「レイリーアとラグナースはその辺しっかり話し合って、お互いに納得した上で付き合ってんだっけ?(・_・)」

レイリーア「そーよ♪(´∀`*)」

ドガ「わかっておってもアイギスの奴は、その辺り気にしそうじゃのぅ(´ヘ`;)」

サーサ「いいじゃないですか?(*^-^) そんな理由で「やーめた!(ノ゜ー゜)ノ」なんてなるなら、所詮その程度の想いでしかなかったって事ですからね♪(*`艸´)」

ゼルワ「それもそうだな(*´▽`*) そんな理由で身を引くような奴はアリサ様に似合わねぇや!(*゜∀゜)」

ドガ「ホッホッホ♪(^∀^) アヤツの事じゃ、「残されるアリサ様の事を思うと~」とか、如何にももっともらしい理由を考えて悩むじゃろうが……はてさて、どうなることやら?ヽ(・ω・)ノ」

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