158話 恐るべき邪竜
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【負けられん!】~やるぞ!~《バルドview》
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「行くぞセラ! デュアード! あの邪竜をここで食い止める!!」
「応よ!」「了解っ!」
俺の号令に勇ましく応えてくれるセラとデュアード。
突如次元を飛び越え、この『聖域』に姿を現した巨大な邪竜! その名を『世界樹喰らう邪竜』!!
俺達はこの邪竜から『聖域』を、特に『世界樹』を守らなくてはならない!
どうやらこの邪竜は『竜神』がロアを疎ましく思って、差し向けた刺客なんだそうだ。ただ、その名の通り世界の要である『世界樹』を補食してしまう習性があるため、『竜神』も庇護下に置いているものの、その扱いに困っていたらしく、ロアのやらかしは正に、この厄介者を、文字通り、厄介払いできる案件であったらしい。
「それだけ聞くなら、ロアがやり過ぎただけよね~って、他人事でいられたんだけどね!
出来る限りの防御魔法を重ね掛けするわ! それでも、斬り込む際には気を付けるのよ!?」
「かなり厳しい戦いとなるでしょうが、ユニ様を守るため私達は退く訳には参りません!」
臨戦態勢を整える俺達に数々の補助魔法を重ね掛けしてくるシェリーとネヴュラさん。
「おっかねぇ相手だぜぇ~ミスト、無茶すんじゃねぇぞ? やべぇって思ったらシェリー姉ちゃんとかミュンルーカの奴を盾にして逃げるんだぜ~?」
「も~なんてこと言うのブレイド!? 私そんなことしないよ!」
「まーったく! このおっぱい大好き少年めぇーっ! ワタシを盾にですってぇーっ!?」
その後ろでぎゃいぎゃい騒ぐのはブレイドとミストにミュンルーカの三人だ。なんだか互いに蹴落とす気満々の会話だが、あれは単なる軽口。緊張を解すためのじゃれあいに過ぎないので微笑ましく見守る事にする。
「あなた。ここが私達の正念場のようね?」
「うむ。我等は全霊を賭し、ユニ様をお守りせねばならぬ。覚悟はよいなネヴュラ?」
そして互いに覚悟を示す『聖魔霊』の夫婦。
ここで死ぬつもりなど毛頭ないが、その覚悟は俺達も完了している。
《ゼーロ! 各小隊配置についたぜ!》
《了解した! 報告ご苦労、翼!》
《おおぉ……『世界樹喰らう邪竜』がわたくし達を睨んでいますね》
(うひぃぃ~怖いですねぇーっ!)
「レイヴン殿、エスペル! 恐れる必要はない! 我等が一丸となれば貫けぬ相手など皆無!」
『世界樹』を護るように、神殿の前に陣取る『ガルーダナンバーズ』達。
『偵察部隊』の翼殿達に、ゼーロ殿、レイヴン殿、エスペル、ユナイト殿にレイミーア殿。そして多くのグリフォン達が、怒りを顕に相対して佇む『世界樹喰らう邪竜』と睨み合っている。
「俺達は彼等の陣形の空きを埋めて、神殿と『世界樹』を守る防壁を完成させる! 覚悟はいいな!? 『黒狼』出撃ーっ!!」
「「「応よ!」」」「「「了解!!」」」
ドドドドシュゥゥーッ!!
俺の号令に続く『黒狼』メンバー六人! 皆『飛行魔法』にて飛び上がり、ゼーロ殿達と合流!
「やいやいやーいっ!! そこな邪竜さん! あーた! 一体だぁれに断ってこの『聖域』に現れちゃったりしてくれやがってんでっすぅぅーっ!?」
「ガルアァァァーッッ!!!」
ズゴォォォーッッ!!
あ、危ない! いつの間にかあの邪竜の目の前にいたアリス殿が、指をビシィッ! と、指して邪竜に向かい文句を並べ立てた矢先! 邪竜はまるで聞く耳もたんと言わんばかりのブレス攻撃を放った!
「ふんぬっ!!」
ズバァァァーンッッ!!
おおっ! 咄嗟に割って入ったバルガス殿の痛烈な一閃! 邪竜のブレスを真っ二つに切り裂いて空の彼方へと消してしまったではないか!
「イヤですね。竜種はとても知性が高いと聞き及んでいたのですけれど?」
「でっすねぇ~? ろくに言葉も解せない。ただ力ばっか強い魔物でっすねぇーっ!?」
アリス殿を中心に並び立つ三人。バルガス殿とネヴュラ殿のなんと頼もしいことか! あの邪竜はかつてのゆかり殿のように何者かの手によって狂戦士化しているわけではないようで、どうやら知性そのものが乏しく、本能に忠実な魔物と差異はなさそうだ。
その事にネヴュラ殿は嫌そうに顔をしかめ、アリス殿は嘲笑する。
《なんだぁ? あんま頭よくねぇのかアイツ?》
《あーら♪ それでしたらやりようはいくらでもありますわ!》
《ああ、だが油断するな? 力だけならゆうに神に迫るぞ!》
力は強いが、理性的でないとなれば類似する魔物は多くいる。あの邪竜も同じなのだと、この時に俺達は認識し、気持ち萎縮していた心が奮い立つ。ウノ、ルロイヤ、ドゥエの言葉を皮切りに俺達は心に闘志を宿すのだった。
「じょぉぉーとぉぉーっ!! アリス達が今までどれだけその神様相手にドガスカやって来たのか! みなさん! それをあの不届き者にたぁぁーっぷり教えてやろーじゃねぇでっすかぁぁーっ!! 行きまっしょい! 『聖なる祝福』!!」
ゴゴゴォォォォーッッ!!
おおぉーっ! この身体が燃え上がるような感覚! 『セリアベール』の防衛戦以来か!? 流石はアリス殿だ。いつの間にかアリサ殿の魔法を使えるようになっていたとはな!
「グギャアァァオオォォーッ!!」
「よしっ!! やるぞ皆! こいつを討ち倒し、『聖域』と『世界樹』を守る!
ふっ、ついでに『竜滅者』の称号も頂戴するとしようか!!」
おおおぉぉぉーっ!!!
吼える邪竜。吼える俺達! 『聖域』で『世界樹』と未来を賭けた戦いが今始まった!
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【怖いよぅ!】~世界の光~《ユニview》
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「あわわ!? とんでもないのが出て来ちゃった! 助けてアリサおねぇちゃーん!!」
うきゃああぁぁぁーんっ!! こわいよこわいよぉぉぉーぅ!
あれはダメ! あれだけはダメなのぉぉぉーっ!
なに~? って! あの竜だよ! 『世界樹喰らう邪竜』!! ユニ達『世界樹』の天敵!
昔昔にシドウじいちゃんから、「用済みになった『世界樹』は『世界樹喰らう邪竜』にガブッ! って食べられてしまうんじゃぞ~?」なんて脅かされた事があって以来、ユニのトラウマ!
それがまさか現実にやって来ちゃうなんてぇぇーっ!
「うわぁぁーんっ! 怖いよぉぉーっ! 助けてアリサおねぇちゃーん!!」
「ユニちゃん! 落ち着いて!」「大丈夫! 大丈夫だから! なっ!?」
突然具現した恐怖の権化を目の当たりにしたユニは、もう~頭の中がたくさんの「こわい」で埋め尽くされちゃって、みっともなく取り乱しては泣き叫んじゃった。
サーサお姉ちゃんとゼルワお兄ちゃんがあわててユニを宥めてくれるんだけど……うぅ、ダメ……どうしても恐怖が勝っちゃう!
《まさかこの目で『世界樹喰らう邪竜』を見ることがあるとはな……》
《なんて禍々しい……あの魔神をゆうに凌ぐ力を感じますよ!》
《ユニが怯えるのも無理ねぇな……》
アーグラスのお兄ちゃんとサーニャお姉ちゃん、ラインハルトお兄ちゃんもユニの側にやって来て、ユニを慰めてくれるけど、三人もあの『世界樹喰らう邪竜』の姿に「こわい」って感じてるみたい。うぅ、ユニ……食べられたくないよぉ~!
《なぁに! 案ずるでないユニよ! お主にはホレ! あんなに頼もしい仲間が揃っておるんじゃぞ!?》
《そうよ~♪ 私達なんか遥かに飛び越えて更に更に強く成長した仲間!》
怖がってばかりいないで、しっかり目を開けて前を見据えて見るんじゃ! って、ジドルのおじいちゃんが言って、ナーゼのお姉ちゃんが「そうよ~♪」って笑いかけてくれる。ユニはおっかなびっくりな感じで目を開けて外の様子を見てみることにしたの。
《オラアァァーッ!! 舐めんじゃねぇぞこの邪竜がよぉぉーっ!?》
「グギャアオオォォーッ!!」
そこには『聖域』の神殿前で『世界樹喰らう邪竜』を相手に、必死で戦うみんなの姿があった! グリフォンの一頭が素早い動きで邪竜に爪を突き立てて、即離脱。
「ギャーギャーとうるせぇ奴だな! 少し黙っとけ!! 剣聖剣技『昇華』!!」
「図体が大きい分魔法を外す事なく撃てるわね! 『ピンポイントフレア』!」
ブレイドくんが小さな体で果敢に斬りかかって、シェリーお姉ちゃんがその、ブレイドくんが斬りつけた箇所に追撃とばかりに魔法を放つ!
凄い! みんな……みんなだって怖い筈なのに! ユニみたいに泣きじゃくって何も出来なくなったりしてない! むしろこんな恐怖なんて振り払ってやるぞって気迫と勇気をいっぱい感じ取れる!
《むおっ!? いかん! 避けろバルド殿》
グリフォンに続いてブレイドくんが邪竜の下腹部から剣を斬り上げて、首付近で回転斬りし、その遠心力で距離を取る! 同時にシェリーお姉ちゃんの魔法が邪竜の翼を狙い撃ち! 連続で爆発する片翼に、グギャアァァーッ!! って叫ぶ邪竜は苛ついたかのようにブレスを放った! その先にいるのはバルドお兄ちゃんだ! ゼーロちゃんが避けるように声をかけるけど!
「そんな苦し紛れの攻撃が俺に効くと思ったか!? セイッ!!」
ズッバァァァーンッッ!!
わあぁぁっ! すごーい!! あの邪竜のブレスを剣でたたっ斬っちゃった!
《おお! やりおるのぅ、あの青年! 先程の『聖魔霊』の剣士と同じことをやりおったぞ!》
《……俺の兄弟子に似ている気がする》
「流石バルドだぜ! 俺だったら素直に避けてんなぁ」
うんうん! ホントに凄い! あの邪竜を相手にみんな立ち向かってる。そんな姿を見たらユニも怖いなんて言ってられないよ! よーし! ユニも頑張る! いつも護ってもらってばかりじゃないんだから!
「んむむぅ~! 『ルーネ・フォレスト』以外からの『龍脈の源泉』から魔力収集! 神気に昇華させて~!」
「おぉぉ? ユニちゃんなんか凄いの撃とうとしてますね! よく狙いましょう!」
《あら! それじゃあ私からアドバイスよぉ~♪ しっかり相手を見据えて! 大丈夫。怖くなんてないわ!》
うん! ありがとうサーサお姉ちゃん、ナーゼお姉ちゃん! 絶対当ててみせるんだから!
《……っ! 今だ! てぇぇぇーっ!!》
「やあぁぁぁーっ!! 『世界の光』発射ぁぁーっ!!」
ズギャアァァァァァァァーンッッ!!!
「ギャオオォォォォォォーッッ!?」
ウオオォォォーッ!!!
『世界樹』から幾層もの積層型魔方陣が展開されて放たれる極光! この『ユーニサリア』の力を結集した大魔法、『世界の光』だよ! 『世界樹喰らう邪竜』はその極光の直撃を受けて消し飛んだ!
「ウソだろ!?」「そんな! あの極光に耐えた!?」
えぇぇーっ!? そんなぁーっ! 間違いなくユニの『世界の光』はあの邪竜を直撃したのに! ブレイドくんとミストちゃんも信じられないって顔して驚いてる……
《あやつ、咄嗟に翼を畳んで自身をガードしたようですね?》
《にしたって、あの魔法に耐えやがるかよ……あ、見ろ! 奴の鱗が剥がれ落ちていくぜ!》
「……鎧を剥いだ。という訳か。皆! 気を引き締めませい! ここからが本番のようですぞ!!」
レイミーアちゃんと翼くんの言葉に邪竜を見ると確かにガードしたであろう翼を中心にボロボロと鱗が剥がれ落ちていっている。そして覗かせる怒りに満ちた眼光にユニ達は、バルガスさんの言う通り、これからが本番だって悟るのでした。
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【重奏魔法】~発動ですわ!~《ティターニアview》
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「なぁぁーんですのぉぉぉーっ!? この禍々しい気配はぁぁぁーっ!?」
「ただ事ではなさそうだなティターニア! 当初の予定では『ルーネ・フォレスト』に向かうところだが、我等はこのまま『聖域』へと帰還すべきだ!」
なんてことですの!? 私と爽矢様は『ルーネ・フォレスト』に復活した魔王ディードバウアーと戦闘中のみなさんの応援に向かうべく、『エルハダージャ』から飛び立った矢先、『聖域』からとんでもなく禍々しい気配が出現したのを感じとりましたの! 思わず急ブレーキですわぁぁーっ!
「モタモタしてはいられませんわね! 同朋達も心配ですし急ぎましょう!?」
「あいや待てぇい! 事態は急変し一刻を争う事態じゃ! 妾が送ってやろうぞ」
えっ!?
突然の背後からの声に私と爽矢様は驚いてババッって振り向きましたわ! するとそこには、なんと進化を果たした? らしき珠実様のお姿があるではないですの!
「た、珠実様……ですの!? あの傾国の美女たらんとしたお姿はどうされましたの?」
「進化……して、またそのような幼子の姿になったのか?」
どうして疑問系なのかと仰いますとですね、珠実様のお姿がまた幼子のそれに戻っているからですのよ?
あ、でも……よく見れば尾が三本に減って、黄金色でしたその毛並みもなんと真っ白になっておられますわ!
「うむ。まあ、詳しい話は後じゃ! 『エルハダージャ』はヒヒイロの奴に任せて来た故な。今は『聖域』へと急ぐぞ! ホレ、妾の手を取るがよい!」
「あ、ああ!」「わかりましたわ!」
そ、そうですわね! 今は『聖域』に現れた気配が気になりますわ! 私と爽矢様は珠実様に促されるまま、彼女の手を取りました。
「では行くぞ! それっ!」
シュンッ!!
「ギャオオォォォォォォーッッ!!!」
ふわっ!? ななな! なんですのぉぉぉーっ!? た、多分、珠実様のお力で転移したのですわね? 見馴れた『聖域』の風景ですわ。でも、そこには似つかわしくない巨大な竜が大声で吼えていますの!
「なんだ!? あの禍々しい竜は!?」
「あやつが気配の主じゃな! どうやら間に合ったようじゃ、皆無事じゃぞ!?」
「おぉ! たまみん! 爽矢! ティターニア! 来てくれたんでっすねぇ!? 助かりまっする!
コイツは『世界樹喰らう邪竜』って言って、不届きにもユニちゃん先輩をぱっくんちょしやがろうとしてやがるんでっすよぉぉーっ!!」
転移してきた私達に気付いたアリスさんが、この竜について教えてくれましたわ! なんてことですの! よりによって『世界樹』を食べようだなんて!?
「これもロアの差し金か!? ユニを喰らおうだなどと……我等も加勢する!」
「とても野放しには出来んのぅ! どれ! 進化した妾の力を試させてもらうついで、滅してくれようぞ!」
「アリスさん! 同朋達は無事ですの!?」
やる気満々の爽矢様に珠実様。いえ、勿論私だって同じ思いですわ! ですがそれよりもまず、同朋達の気配が感じられませんの! それが気になって仕方ありませんわ!
《大丈夫だティターニア! 妖精達や保護した『亜人』達、それに非戦闘員の皆は『無限円環』に避難している!》
《そこは安心なさいへっぽこ女王! 今はこの邪竜との戦いに集中を!》
へへ、へっぽこではありませんわよぉぉーっ!? まったく相も変わらずあのカラス! ですが、そうですか、ゼーロさんが教えて下さった言葉に安心ですわぁ!
「ギャオォォォーッ!! ガアァァッ!!」
「言われた側から油断するなティターニア!!」「うひぃーっ!? なんですのぉぉぉーっ!?」
ガッギィィーンッ!! ギリギリギリッ……びっくりしましたわ! 私がホッと安堵のため息をついた直後にあの邪竜の咆哮が聞こえたと思ったら、まさか目の前にいて私をその大きな爪で裂こうとしていたのですもの!
「むぅ!? コヤツなんと言うスピードじゃ!? 爽矢! そのまま耐えておれ! 妾が魔法で吹き飛ばしてくれる!」
「ぐぐぐっ……! い、急げ珠実! この邪竜……強い!!」
な、なんてことですの!? 私を咄嗟に庇って下さった爽矢様ですけれど、ギリギリギリと力比べであの邪竜に押されているではありませんか!! こうしてはおれませんわ! 直ぐに支援の補助魔法でサポートしなくては!
「爽矢様! これを! 『ライズパワー』!!」「おぉ! 済まん! 舐めるなこの邪竜がぁぁーっ!」
「ティターニア! アリスとユニゾンしまっしょい!!」
ぐおぉぉぉーっ! って叫び、邪竜を押し返す爽矢様ですわ! よかった、私の補助魔法。『ライズパワー』が効きましたわね! ですがそれでも互角! もー! この邪竜どんだけ強いんですの!?
そんな風に叫びたくなったところで、アリスさんからお声がかかりましたわ!
ここでアリスさんが言う『ユニゾン』とは『重奏魔法』の事ですわ! 神に類する魔王達に対抗するべく、シェラザード様とルヴィアスさんの監修の下、私達魔法を主体に戦う面々が編み出した技術ですの!
「かしこまりましたわ! 全員に強化魔法を施すんですのね!?」
「でっす! あの邪竜! とんでもねぇ力でっすから、まずは同じ敷居に皆さんを持ち上げませんと!」
あの『魔装戦士』相手には正直必要ありませんでしたが、この邪竜を相手にするなら必要ですわね!
「行きますよ! 『重奏魔法』!!」
「参りますわ! 『重奏魔法』!!」
私とアリスさんは互いに頷き合い、ひとつの魔法を重ね合います!
望むのは迫り来る脅威に立ち向かう勇気と力!
「「『ブレイブ・ブレイズ』!!」」
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【なんとか】~封じ込めるのじゃ!~《珠実view》
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「ぬぅぅりゃぁぁーっ!!」「どっせぇぇぇーいっ!!」
「喰らえ邪竜! 流星・改!」「俺の黒狼剣に剣聖剣技を合わせた新技だ! 持っていけ!」
ザシュゥゥーッ! ズバアァァーンッ! ドシュゥゥーッ! ズドォォーンッ!!
「グギャオォォーッ!!」
「今じゃ爽矢! 吹き飛ばせっ!」「応! 喰らえ邪竜!」
ズゴォォォーッ!!
よし! よいぞ! アリスとティターニアの『重奏魔法』による超強化を受けたバルガスとセラにデュアード、バルドの猛攻をその背に受けて一瞬怯んだ邪竜に爽矢の零距離からの強烈な電磁ブレスが炸裂じゃ! それをを浴びた邪竜は、堪らず取っ組み合っておった爽矢から離れた!
「この機を逃す妾ではないぞ! 二度と悪事を働けぬよう制裁してくれる!!」
絶好の間合い! この瞬間逃す手はない! 『三千世界空天狐神』と進化した妾の力とくと見せてくれようぞ!
「刺獄・封呪殺! 死の蕀に抱かれ朽ち果てよ!!」
妾の神気で編まれた蔦蕀が邪竜に次々と巻き付き、締めあげる! 邪竜はグギャオォッ! と、喚き必死の抵抗を見せるが、当然この程度で終わるほど甘くはない!
「氷獄・凍結牢! 永久凍土の氷槍にその身を刺し貫かれるがよいわ!」
続けて蕀に巻き付かれ、身動き取れずにもがく邪竜を絶対零度の氷獄結界に閉じ込め、幾つもの氷槍で刺し貫く!!
ギャオオォォーッッ……結界の外にまで響いていた邪竜の叫びが徐々に聞こえなくなり、やがて静かになっていく。
「ヒューッ! 流石珠実様だぜ! ゆかりの進化待たずに決着じゃねぇか!」
「凄まじい御力でした、珠実様!」「よかった……一時はどうなるかと……」
感じる邪竜の気配もどんどん小さくなっていく中、決着と見たのじゃろう、セラにシェリー、ミストが妾を称賛し、安堵のため息をつく。妾も油断なく邪竜を閉じ込めた結界を注視する……ふむ、気配が消えぬが、随分小さくなっておる。息も絶え絶え、結界を破る力は残っておらぬか?
(まだだぞ珠実! 竜は、その邪竜はそのくらいじゃ消えない! 気配が小さいのは今、形態が変化してるからだ!)
「なんじゃと!? 今のはゆかり! お主か!?」
突然頭に響いてきた声に妾は咄嗟に進化の眠りの最中におるゆかりに目をやる。
(アリス達と協力して更に結界で奴を覆え! 形態変化が完了すると爆発的な力が吹き荒ぶぞ!)
なんたることじゃ!? この邪竜、一体どうやったら倒せるんじゃ!?
「了解でっすよゆかりん! たまみん! ティターニア! 後、魔法使いのみなさん! あの邪竜を更に押さえ付ける結界を構築しまっす! 協力してくだぁさい!」
「わかりましたわ!」「「了解です!」」
アリスもゆかりの声を聞いたようじゃな! ええい、妾も考えている暇はなさそうじゃ! 魔法使い達と協力して多重結界を張る! そして少しでも時間を稼いで、ゆかりの進化完了を待ち、攻勢に出ねばなるまい!
《くそっ! 魔法はあんま得意じゃねぇけど俺っち達もやるぜ!?》
《了解ですわ!》《ああ! やれるだけやってやるぜ!》《微力を尽くそう!》
この事態に集う戦士達もまた協力を惜しまぬ。『偵察部隊』の翼達。
「僕達も行くぞ!」「はい! 魔力を神気に昇華させて封印結界に!」
「ゆかりさんの進化と!」「アリサ様が戻るまでぇーっ!」
「私達で!」「なんとしてもこの『聖域』を守り抜く!」
ゆかりを守っていた『猫兎』達とカインも動きだし……
「うおぉぉーん! オイラ進化してもまだまだ足りなかった! もっと頑張るんだぞーっ!」
《ジュン殿、我等も同じ思いよ!》《ええ、まったく……更に精進しなくては!》
(悔しいですねぇ悔しいですねぇ~)「これが終わったならばまた鍛練せねば!」
《皆さん! 悔しがるのは後にして今は封印結界に!》
そしてジュン、ゼーロ、レイミーア、エスペル、ユナイト、レイヴンと『ガルーダナンバーズ』もその神気を結界の構築に注ぎ始めたのじゃ!
しかし、ほんに悔しいのぅ! 妾とてこれ以上ないくらいに、進化によって想像を絶する力を手にしたと思うておったが、『世界樹』を喰ろうた邪竜に及ばぬとはな……
「その気持ちは我もよくわかる! だが、今は嘆いている暇はなさそうだぞ!?」
ゴゴゴゴゴ……
むぅ! 爽矢の言うた通り考える暇もなく邪竜の気配が増大しおった! おのれ! なんとしてもここで食い止めねば、ユニが喰われてしまう! 気張らねば!!
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【さて】~じゃあやりますか!~《聖女view》
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んん~? なんぞ変だなや?
『ユーニサリア』に戻って来たんだけど……なんか時間ズレてないこれ?
「そうみたい。なんかこっちはもう珠実もゆかりも進化果たして、あの『世界樹喰らう邪竜』の第三形態と戦ってるし」
「こっちはこっちで、みんなの力を結集したミナ○インでディードバウアーを吹っ飛ばしたとこだね」
ううむ、どうやらちょいと次元越える際に気持ち時間軸がズレたようだ。予定より気持ち遅めの到着になってしまった。それは『聖域』に転移した戦乙女の方も同様のようで、そちらもなんぞラスボスみたいな邪竜ちゃんとみんなが戦ってるところに出たと言う。
「しかしティリアは何やってんのあの子? あの邪竜ちゃん、ティリアが動けば倒せてたんじゃないのん?」
「あー、ティリアはロアを抑えてるみたいね。あの子『存在固定』使えないから、ああやって見張ってないと逃げられそうで動けないんだわ」
まったく、だから『無限円環』での秘密特訓であれほど細かい事出来るようになっておきなさいって言ったのに……ま、ここでブツクサ文句たれても仕方ないか。
「そうね。んじゃみんなに被害出る前に終わらせようか!」
「オッケー! サクッと終わらせて、ダラダラしようじゃないの♪」
んだんだ! 私は別にこんなバトルなんて望んでないんだよね。毎日平和にぼけぼけ~って暮らせればそれで満足なのよ。と、言うわけで~いい加減あのワンワンと邪竜ちゃんにはご退場願うとしましょう。
「──そ、そんな……私達全員の力を合わせても倒せないの!?」
「なんということじゃ……」
「こうなれば女神達よ、定命の者達を退避させ、すこしでも希望を繋ぐのだ」
ゴォォォォォ……
おうおう。私とレウィリリーネで造った『守護者』の三体からぶっぱなされた~なんて言うんだべ? みんなの力を結集した攻撃で、狙い通り毛の一本も残さないほど跡形もなく吹き飛ばしたディードバウアー。そのワンワンが紫煙を伴い、再び現出しようとしているのを見て、ガクーリしちゃってる我が『聖域軍』である。
「そんな馬鹿な! いくら魔王だからといってこんな……跡形もなく消し去った後からの再生なんて可能なのですか!?」
「むぅ! 普通ならば不可能よ……だがあやつは『魂喰神』。我も詳しくはわからぬが、そこに秘密があるのやも知れぬ!」
「冗談じゃないぜ! おい、リドグリフ! なんかいい手はないのかよ!?」
「そうよそうよ! 先輩風吹かしまくりの『旧神』さん! なんかいい策をサクッと出してちょうだい!」
ほっほーぅ? なんぞよく見りゃあの武神くんとアイギス、ルヴィアスにシェラザードと、まぁ~かつては敵だった面子が仲良くワイワイやってるじゃない。実に楽しそうで何より何より♪
「うぅむ、『魂喰神』……かつては多くの魂の穢れを浄化し、輪廻の環に純然たる魂として還しておったという重要な役割を持たされた神じゃ」
「その重要な役割とやらを担うがために、よもやあのような超再生能力を身に付けたとでも言うのか?」
そして、こっちは進化したシドウとリンだね? うんうん。二体ともかっちょよくなったんでないの~シドウはなんぞ若くなった? リンは更に凛々しさが増した大きな白狼、『白野威』になったんだね。うむ、かっちょいい!
「あれ? っていうかさ。みんなして私に気付いてなくない?」
「こっちもよ。なんかユニとアリスはキョロキョロしてるから、私の存在を感じてはいるようだけど、見えてないっぽい?」
─相変わらずのアホんだらなのにゃこのしもべは……『神々神』はこの世界とは位階の違う高次元存在なのにゃ。だからそのままだと認識されないにゃ~?─
ちょい! ミーナちゃんや、そう言う事は先に言っといてちょうだい!
あー、なんだね? つまりはチャンネルが合ってないみたいなもんかね? んじゃ、これをこうして、ガチャガチャと古いダイヤルテレビのチャンネル回すようなイメージで……今の若い子に「チャンネル回して」って言っても通じないかしら? 昔のテレビのチャンネルはダイヤル式でガチャガチャ回すもんだったのよ?
「聖女は誰にその説明してんの? 歳バレんでしょ~?」
「何を今更……いいじゃん別に。私がおばちゃん通り越しておばあちゃんの域にいるのは。よっし! これでよがんべ! どーよ!?」
あ、あああ!! アリサ様!? アリサーっ! 魔女ぉぉーっ!!
よしよし! ちゃんと認識されたね。よかったよかった!
「アリサ様! よくぞご無事で! このアイギス、貴女に会えるのを一日千秋の想いでお待ちしておりました!」
「アリサちゃーん!! 助けてぇぇぇーっ!」「どう頑張ってもディードバウアーを倒せない!!」
おうおうおう。突然姿を表した私にみんながびっくらこいた後、アイギスにリールとフォーネがわぁーっ! て駆け寄って来た。ううむ、どうにも締まらない登場の仕方になってしまった。
もっとかっこよく登場して、ドヤァ~ってしたかったな。
「ええい! 遅いんじゃこの性悪魔女め! 儂等はもう万策尽きとるんじゃぞ! 早うあやつをなんとかせい!」
「アリサお姉様! お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
「アリサお姉様~♪」「「「アリサ様!」」」「姐御頼むぜ!」
あ~はいはいはい! わーったわかったからみんなして詰め寄んないで~!
「貴様が噂の魔女か、よし! 我と死合おうぞ!」
「んなの後にしろよリドグリフ!」『アリサ様! ディードバウアーがまた!!』
ほいな。ちょっと落ち着きたまへよ? リドグリフくんとは終わったら少し遊んであげるからね? 今は慌ててるルヴィアスとリュールの言う通り、再び姿を形取ろうとしているディードバウアーを止めないといけないからね。
「アリサお姉さま! 微力ながら私達姉妹も!」
「ん! 頑張る!」「アリサ姉に頼ってばっかでごめん! うちも頑張る!」
うむ。妹達も手伝おうとしてくれているね。嬉しい限りだ。だけど……
「大丈夫よ。みんなは回復に努めててちょうだい。ゼオンの足も後で治してあげるからね。もうちょい辛抱してなさいな」
「はぁ!? おい、嬢ちゃん、まさか一人でやるってのか!?」
「無茶です! 私も参りますアリサ様!」
大丈夫だぁーいじょーぶ! 心配しないでゼオン、アイギス。まあ、見ててちょうだいな!
ギャオォォォーッッ!!
みんなの心配をよそに、私はディードバウアーと対峙するのであった。
聖女「あのワンワンはともかくさ……(_ _)」
戦乙女「邪竜は駄目ね!( ゜皿゜)」
魔女「うむ!( ・`ω・´) 絶対許さん!L(゜皿゜メ)」」
ミーナ─何をそんなにいきり立っているんにゃ?(=゜ω゜=)─
アリア「どうして、ディードバウアーはよくてニーズヘッグは駄目……なんです?(゜A゜;)」
魔女「決まってるじゃない!ヽ(゜Д゜)ノ」
聖女「あの邪竜は私の可愛いユニを怖がらせて、泣かせたのよ!ι(`ロ´)ノ」
戦乙女「許すまじ……( `ー´) ギッタンギッタンにして、こらしめてやるーっ!((ヾ(≧皿≦メ)ノ))」
ミーナ─にゃん(ФωФ) ユニすけにとってあの邪竜は天敵とも呼べる存在だからにゃ~ヽ(;´ω`)ノ─
アリア「なんと言っても『世界樹喰う邪竜』ですもんね(>_<")」
魔女「私の可愛い妹を食べるとか……Σ(ノ`Д´)ノ」
聖女「万死に値するわ!o(`Д´*)o」
戦乙女「もはや微塵も慈悲はない!ヾ(*`⌒´*)ノ」
アリサ達「天誅じゃーっ!ヽ(#゜Д゜)ノ うおぉぉーっ!(*`Д´*)」
ミーナ─あ~あの邪竜……死んだにゃん(´・ω・`; )─
アリア「ああなったあるじ様はもう、止まらないのです( ̄▽ ̄;)」




