157話 みんなの力を結集して!
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【私も】~進化する!~《ゆかりview》
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はぁ~? 『世界樹喰らう邪竜』だとぉーっ!? あの知性の欠片もない、同じ『竜種』とは思えないほどの『狂竜』がこの世界の『世界樹』を喰らいにやってきただって!?
その昔、『竜神』の庇護下にいるのがイヤになって、シェラザードに取っ捕まる迄の間、風の噂であの『狂竜』の奴が悪さした神を始末するために差し向けられたとか聞いた覚えがあるけど……
(その神ってのがロアだったってことか! まったく……当時はその神も馬鹿だなぁ。なんて他人事のように感じていたが。まさか、回り回って自分達のところに来るなんて思いもよらなかった)
しかし厄介だぞコイツは。私は今タイミング悪く進化してる最中だし、『無限円環』で鍛えた女神はみんな出払っている。
幸い、『天熊』から『熊神』へと進化を果たしたジュンを中心に、カイン、『黒狼』、『猫兎』、『ガルーダナンバーズ』、そして、あのガウスとムラーヴェに『聖魔霊』のバルガス、ネヴュラ、パルモー。更にアリスと。戦力は揃ってはいるが……
(カイン、聞こえるかカイン!?)
「ゆかりさん! はい、聞こえています!」
とりあえず、私が懸念している点を伝えようと、私を側で守ってくれているカインに思念を飛ばす。うん。ちゃんと届いているみたいだな、よかった!
(気を付けろ! そいつは名の通り『世界樹』を喰う事でどんどん力を増していくっていう化け物だ!)
「だとしたらユニちゃんが危ないね! なんとしても倒そう!」
(ああ! だけど、そいつは多分ロアの世界の『世界樹』を既にいくつか喰ってるはず! 恐らく想像を絶する強さになってるぞ! 注意して戦ってくれ!)
私の思念をレジーナも聞いたようで、警戒を顕に、油断なく武器を構え中空に浮く『世界樹喰らう邪竜』を睨み付ける。そうだ。アイツはロアを狙うという大義名分をいいことに、多くの『世界樹』を喰って来たんだろう。その証拠に昔に比べ、物凄い神気を身に付けている!
「ははっ多分もうロアを付け狙うのはオマケ程度に成り下がってるんでしょうね……」
「そのようです? あの竜さっきから『世界樹』に視線が釘付けですもんね」
「冗談じゃないよ! あたし達の天使を食べようなんて、絶対にさせない!」
「厳しい戦いになるでしょうけど……『格上喰い』は冒険者の醍醐味ですからね!」
ニャモ、モモ、ミミ、ネネ……頼もしいぞ! 相手が格上だろうと臆せず、怯まず挑もうとするその姿勢! 私達竜に負けずとも劣らない!
「僕も死力を尽くします! ようやく見えてきた平和がすぐそこにあるんです! 絶対に負けない!」
(ああ! よく言ったカイン! 私も進化が済み次第参戦するぞ! だから、死ぬんじゃないぞ!?)
そうだな! 私はシェラザードに異空間に閉じ込められていたから当事者ではないが……カイン達から当時の魔神戦争での甚大な被害は聞いている。
勇者達の活躍と、深い爪痕。長い時を経て、アリサ様の顕現によりようやく癒え始めた世界。
それを再び破壊させてなるものか!? カインの言う見えてきた平和! そのなかに私だって行きたい! その平和を勝ち取るためにも進化を終わらせないとな!
「勿論ですゆかりさん! 一緒に未来を歩きましょう!」
「やれやれ。いちゃつくのは終わってからにしてほしいな?」
「ゆかりさん、今の無防備状態は流石に危ないよね?」
おぉ! これもいちゃつくと言われるのか? ははは! 面白いな! レジーナが苦笑いを見せて言う言葉に少し驚く。そして、続いたミミの問いに、その通りだと思念を返す。
「よし! それなら僕達『猫兎』とカインくんはゆかりさんの護衛だ! 指揮をとるだろうバルドくんにそう伝えよう! ゆかりさんは安心して進化を果たす事に集中してくれ!」
おぉ! 済まんなレジーナ、恩に着る! よし、それならばとバルド達と連絡を取り合う彼女達を見てから、私は目を瞑り自己の内側に意識を集中させる。
……私は幼い頃から『竜神』の加護を受け、その庇護の下、日々を怠惰に過ごしていた。まぁ、竜種ならではの小さないさかい。と言うか、小さな喧嘩は度々あったりもしたけど、概ね平和に過ごせていたと思う。
しかし、何時からだったかその生活が堪らなく退屈に感じ始め、嫌気がさしてきて……私は加護を返上して、外の世界へと飛び出していた。
竜種が住まう『竜神界』の外は目に映る総てが新鮮で楽しく、色々旅をした。ああ、珠実やシドウ達と出会ったのもその頃だなぁ。そいつ等とつるんで騒いでたりもしたぞ?
そんなある日、私はシェラザードに捕まった。当時は何が何だかわからなかったけど、この時既にシェラザードは呪いを受けてたんだな。それで私は異空間に閉じ込められて今に至るんだけど。
今はとても楽しいんだ。アリサ様に救ってもらって、旧友とも再会できて、あの時以上のばか騒ぎ……
そんな楽しい日々を壊そうとするアイツを許すわけにはいかない! 今を守るための力が欲しい!
(さあ! 見せてくれ! 私の可能性を!)
仲間のみんなと『無限円環』で訓練を続けたおかげで、私はその力を手にする資格を得た。望むのはみんなを、この楽しい日々を守り通す大きな力だ。
あんな邪悪な竜なんかに、いや! あの私達を縛り付けて自分の世界に閉じ込めている『竜神』さえも超える、誰にも負けない力だ!
そう心に強く想い、自己の内に潜る私の前に一条の光が差し込む。
(見えた! おお、あれが私の進化先か!? 期待を裏切らないでくれよ!?)
見えてきたその光に手を伸ばし、内容を確認する。私の望む進化だと嬉しいが、ハズレの時もあるからな! しっかり確認しなくては!
待ってろみんな! 私はめちゃくちゃ強くなって、この大好きな『ユーニサリア』を守ってやるからな!
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【なんかポイ捨てしたら】~変な邪竜だった~《アリサview》
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あっちゃぁ~こりゃ私のせいだ!
私がロアの世界全部統合させて、なくしちゃったから、あの『世界樹喰らう邪竜』は「ロアの気配がする『世界樹』のある世界」へと転移をしたんだろう。それが『ユーニサリア』だ。
私が最初この世界……実験場だった世界に飛ばされて、発見したときの『世界樹』はまだかろうじて生きていた。
それを『世界樹喰らう邪竜』はちまちまと食べていたんだろう。美食をじっくり味わうようにして。けれど、そこに私が介入し、他のロアの世界と統合した際、『世界樹喰らう邪竜』は不要分子として他次元へとパージされたのだ。
「くっ付ける時になーんぞ変なのいるなぁ~って、「ぺいっ!」てしたのがあの邪竜ちゃんか~やっぱりポイ捨てはいかんね。ちゃんと処理しとくべきだったよ」
─あの邪竜も今まで『世界樹』沢山食べて結構な力を身に付けているにゃ? ユニすけが危ないぞしもべ?─
うむ。これは一大事である。あの邪竜ちゃんの目には、すくすくと育ち、私の力も受けとる『ユーニサリア』の『世界樹』はさぞかしとっても美味しそうな御馳走に映っていることだろう。
『あわわ!? とんでもないのが出て来ちゃった! 助けてアリサおねぇちゃーん!!』
「ユニ! あるじ様、大変です! ユニが危ない、です!」
聞こえてくるユニの声に私も少し焦る。アリアの慌てる姿も更にその焦りを助長させるんだけど。
─まだあの三人を待つのかにゃ? まぁ、それなりに戦力は整っているようだし、アホ毛もいるから、抑え込めるとは思うけどにゃ。結構被害も出るんじゃないかにゃ?─
ミーナの言う三人というのは、ステラ、ノース、ヨミの三姉弟のことで、この『第二のユーニサリア』を管理してもらうため、現在諸々を再構築中なのだ。その途中に私が席を離れちゃうと上手く構築ができずに、彼等の存在が霧散し消滅してしまう。
「そうなんだよね、みんなが力を合わせればあの邪竜ちゃんも、ワンワンもやっつけることは出来るだろうけど……少なからず被害出ちゃうよね? う~ん、私ってば過保護なのかな?」
もういっそのこと、私の遍在存在を送り込んで一気に解決してやりたいっても思う。実際、ディードバウアーとの戦いで、ゼオンが片足を失うっていう大怪我してるし、『懐刀』達の進化が終わるのを待っているのにも、限界があるだろう。
「ミーにゃん大先輩の意見はどうなのよ? もしあんたが「これもみんなが成長するために必要なことだ」って言うなら、私も見守ることにするけど?」
過ぎた力ってのは厄介なもんだ。こんなみんなの危機すらも、何処か他人事のように客観視してしまうところが出てきちゃう。「みんなの力を信じて~」とか言えば聞こえはいいが、以前の私でなら直ぐにでもみんなを助けるために行動を起こしたはずなのに。
勿論、この過ぎた力で解決することで、みんなの成長を阻害してしまう可能性があることも否定できない。「何かあればアリサに頼ればいいや」なんて甘ったれた考えがみんなの心の奥底に芽生えてしまっては困るのだ。
─判断をみ~に任せてはいけないにゃ? しもべが自分で考えて、自分で行動を起こすのにゃ─
考えてますーっ! もう、めっちゃ考えてますとも! そんでもって動けずにいるんじゃんよ?
─だったら心の赴くままに動けばいいにゃ? しもべの仲間達はちょーっと助けてあげただけで、しもべに依存しちゃうような弱い奴等なのかにゃ?─
「そんなわけないじゃん。なんだかんだ言っても、みんな心が強いもん!」
─それなら悩む必要なんてないのにゃ。そういうことも含めて「みんなを信じる」といいんだにゃ~♪─
……おぅ。そっか、そうだぞね?
私の仲間達は、私がちょいと手を出したくらいで楽を覚えるような人達じゃない! そう信じてるし、信じるよ! ……大丈夫よね? なんか一部だらけたがりな面々の顔が浮かぶけども。
「……そのなかにはあるじ様も含まれてません、か? あるじ様、普段からよく「だらだらしたーい」って言ってますし?」
「これっ! 何を言うんだねアリアちゃんや!? 私は普段めっちゃ働いてるからいいんですぅー!」
えへへ、ごめんなさい♪ って可愛く謝るアリアちゃん。もう~可愛い子ちゃんめ!
さて、そうと決まれば早速私の遍在存在を呼び出そうか。以前は『鏡映す私・私映す鏡』で呼べたのは一人だけで、『魔女』と『聖女』で呼び分けていたけど、今回は二人呼び出す事にするので、少し考えようか。
─そんなの『魔女』と『聖女』に『戦乙女』でいいんじゃないかにゃ?─
……はい。そうですねミーにゃん。ってーっ! あっさり決めないでよ!?
いや、いいけどさ~? なんかこう~あのお花の騎士達みたいに、『通常』、『進化』、『開花』みたいな感じで、色々と豪華になって~とか、やってみたかったのにーっ!
─にゃぁ~似たようなもんだにゃ。ウダウダ言ってないでさっさとやるのにゃ?─
はぁい。まぁ、みんながピンチの時にお前は何やってんだ? なんて文句言われちゃいそうだし? ちゃちゃーっとやりますか。
「じゃあ、ほいほい!」
シュンシュンッ!
おー、いやはや……めっちゃスムーズに呼べたわ。『神々神』になる前は、これイメージするの結構苦労したんだけどなぁ……
「ま、有り難く使わせてもらいましょう?」
「そうね。んじゃ、私はワンワンのとこ行くね?」
あいあい。同じ私だけあって理解が早くて助かります。
取り敢えず、この『第二のユーニサリア』に残る私を『魔女』として、あのワンワンこと、ディードバウアーに『聖女』が向かい、邪竜ちゃんこと、『世界樹喰らう邪竜』には『戦乙女』が向かう事になった。
「さあ、長い戦いに終止符を打ちましょうか! 進化の途中の『懐刀』のみんなには悪いけど決着を付けさせてもらうね!」
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【終わったか?】~脚だけになっても!?~《大地view》
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「ガアァァァァーッ!!」
ドゴォォーンッ!! ズドォォーンッ!!
「ぐああぁぁーっ! おのれぃこの犬っころがぁ! いい加減倒れんかぁーっ!」
「ドガ! 無茶をするな! 一度『ルクレツィア』に下がれ!!」
激戦。
俺とヒャッハーがこの『ルーネ・フォレスト』に駆け付けた時には既に、水菜とルヴィアスとシェラザードが参戦しててよ、『ルヴィアス魔導帝国』の城? 宮殿? をまるごと魔装具にして持って来たとかで、拠点にしてやがる始末だった。これには俺もヒャッハーも「マジかよ!?」って目んたままるくしたもんだが、中々どうして、上手いこと機能してやがる。まぁ、そんだけあの犬っころの攻撃が激しくてよ、今も結構な人数が入れ代わりしながらなんとか戦線を維持出来てるって状況だ。
「アイギスの言う通り引くのだドガよ! 皆もよいか!? 誰一人として欠ける事は許されんぞ!」
おおぉーっ!!
ドゴォ!! ザシュゥッ!! 超スピードからのぶちかましから、次元の壁すら引き裂きそうな強烈な爪撃を繰り出し、ディードバウアーに肉薄するのは、進化を果たしたリン様だな! すげぇ強くなってるぜ! コイツブッ倒したら是非とも手合わせしてもらいてぇもんだ!
「グルアァァーッ!!」
しかし、そんな強烈な攻撃をまともに喰らってもこの犬っころはあっという間に傷を再生しやがる!
「くそっ! ロアの馬鹿野郎はなんてことしてくれたんだ!」
ルヴィアスがその超再生能力に毒づく、その瞬間!
「ガオオォォーッ!!」
「危ない! 『ルクレツィア』に粒子砲! 防ぎなさい玄武!!」
「任せて下さいフィーナ様! 守りに関してなら私は誰にも負けません! ジャデークさんとネハグラさんの兄弟にもぉぉーっ!!」
バキィィィーンッッ!!
おおっ! 流石水菜だぜ! 主神様の義姉妹だって言う、弓抱えた空色の髪のしたフィーナって女神の指示に咄嗟に反応して、ディードバウアーがあの宮殿『ルクレツィア』に向けてぶっぱなした強烈な粒子砲をいとも簡単に弾き返した!
《アナラーイズ!! ドーヤラアノ犬ッコロ、シドウノ放ツ気配二反応シタヨウダゼ!?》
「黄龍の放つ気配ですかヒャッハーさん? それってつまり……」
「無事に進化が完了したのかしら? って、ほら! ヒャッハー! セルフィ! 攻撃の手を休めない!」
突然『目の前で戦ってる俺達をそっちのけにして、『ルクレツィア』に攻撃を向けたから、おかしいっては思ったんだが……ははは! そうかよ、リン様に続いてあのジジイも進化したんだな!? 思わずディードバウアーを攻撃する手が緩んで、シェラザードに怒鳴られるヒャッハーとセルフィーヌっていう、何でかメイド服着た女神。主神様のもう一人の義姉妹が慌てて攻撃を再開させた。
『確かに! 『ルクレツィア』から大きな神気が練り上がっていくのを感じるぜ!』
「リン様に続いてシドウ様も進化を果たしたんだね!?」
そう言って『ルクレツィア』を見上げる『守護者ルーネフォレスター』を駆るフォレストと、その肩に乗るリールが希望を見付けたかのように破顔する。
「ぐわーっはっはっは! 待たせたのぅ皆の衆!! 『黄龍』改め『龍神』シドウ! ここに参戦じゃーっ!!」
うおおおぉぉぉぉーっ!!
ヒューッ! やるじゃねぇかジジイ! まさか長らく空席だったっていう『龍神』に進化するとは思いもよらなかったぜ! 黄金だったジジイの体躯は眩しいくらいの白光に包まれ、二本だった角が三本に増えてやがるし、鬣も生えたうえに一回りくらいデカくなりやがった!
いや、そんな外見の特徴なんかよりも、もっとこう……
「手始めに目覚めの一撃じゃ! 食らうがよいディードバウアー!!」
カッ!! ズゴォォォォーッ!!!
「ギャンッ!!?」
すげぇっ!! そう、ジジイの奴まるで若返ったんじゃねぇか? ってくらい、覇気に満ちていやがるんだ! 挨拶代わりだ! とでも言わんばかりの強烈なブレスをディードバウアーにぶっぱなし、その威力たるや、奴の脚四本残して消し飛ばしやがった!!
「やったぁぁぁーっ!」『これは流石に決まったであろう!』
「やっと決着か!」「見事だったぞシドウ!」
やんややんや! 沸き立つ俺等。ははっ! ディードバウアーがどんだけすげぇ再生能力持ってようが、脚だけになっちまったら流石にもう終わりだろうぜ!
「よっしゃあぁぁーっ! 皆、凱旋と行こうぜぇーっ!」
おおぉーっ!!
ゼオンの挙げる勝鬨に俺達は皆叫ぶ! っはぁぁー……ようやく終わったぜ、長ぇ戦いだった……帰って酒飲んで寝てぇなぁ♪
「待って! 待ちなさい! 様子がおかしいです!」
「消えて……ない! ディードバウアーの反応はまだ消えていませんよ皆さん!?」
なんだってぇーっ!? んな馬鹿なことあるかよ!?
フィーナとセルフィーヌの焦る声に、俺達は残ったディードバウアーの脚に目を向けた。
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【最早打つ手は……】~リール達の作戦~《アイギスview》
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「あぶねぇぇぇぇーっ!! 避けろアイギス!!」
大地殿の大声に私は無我夢中で『飛行魔法』を使い、全力でその場から退避する!!
刹那。ズドォォォォーッ!! という轟音が鳴り、つい先程まで私がいた地面がごっそり抉り取られた!
「か、感謝します大地殿! 本当に危なかった……」
気付けなかった。大地殿が叫んでくれたおかげで危機を回避できた。
「いいって事よ……しかし、ヤベェな。進化したジジイのあのブレスで脚だけになったってぇのに……」
『嘘でしょぉーっ!? あんなのどうやったら倒せんの!?』
ズゴゴゴゴ……『龍神』に進化したシドウ殿の強烈無比なるブレスの直撃を受け、脚四本だけ残して消し飛んだ筈のディードバウアーだが……その残された脚から紫煙が巻き上がり、徐々にディードバウアーの形を作り上げて行くではないか!
それを見た全員が息を飲み、信じられないといった表情を見せる。リュール様のように私も叫びたいくらいだ。一体どれだけ理不尽なのだこの魔王は!?
「……いけませんね。先程の攻撃……大地がかろうじて反応できましたけど、正直、次やってこられたら」
「ごめん、うちじゃ反応できずに飲まれると思う」
「ん……悔しいけど、あたしも……」
非常に緊迫した空気が流れる……そう、今アルティレーネ様とフォレアルーネ様、レウィリリーネ様が仰った事は他の皆も同様のこと。薄々感じてはいたが、ディードバウアーは再生する度にその力を増しているらしい。
「さっきまでは拮抗してたんだけどね……まさかここまでひっくり返してくるなんてな……」
『ため息ついてる場合ではないぞルヴィアス。このままでは!』
「しかし、どーするよ? 中途半端な攻撃じゃ直ぐ再生されて意味ねぇ上に、脚だけからでも再生してきやがる化け物っぷりだぜ!?」
ルヴィアス陛下とユグライア王にゼオンも焦り始めている、余裕のない返答だ。しかし、それもそのはず……どうしてもあのディードバウアーを討てる術が見付からないのだ……
「……みんな聞いて! 私達が思うにあのディードバウアーって魔王……」
「多分毛の一本でも残りさえすれば再生してくるんだと思います!」
リールとフォーネが意を決したように、集った仲間達に呼び掛け始めた。何か策があるのか?
「だから、やるなら一撃必殺!」
「私達全員の力を結集して特大の一発を放ちましょう!」
なるほど、そういうことか。確かに私達全員の力を重ね合わせれば、あのディードバウアーの超再生能力をも上回ることができるかもしれない。しかし……
「誰が砲撃手を担うのです? 私達の力を結集する。それはいいですが、相当な力となりますよ?」
「そこは安心してくれフィーナ様!」『余達が担おう!』
「まずは三体の『守護者』に!」『そっからは俺達の仕事だ!』
「チャージ組と防御組に分かれて!」『どっちも大変な役目だけど!』
フィーナ様の懸念事項に答えるのは今と過去の三神国の王族達。
作戦の概要は至ってシンプルで、『守護者』に力をチャージする組と、その間ディードバウアーからの攻撃を防ぐ防御組に分かれるというもの。
「いいでしょう! ならばこの『真・玄武』水菜。全霊を賭して皆さんを護ります!」
「俺達兄弟も! 今までの訓練は今日、この日のために!」
「ああ! 未来を掴むために! 全力で今を凌ぎきりましょう!?」
当然とばかりに守りのエキスパートである水菜殿とジャデーク、ネハグラ兄弟が防御組に名乗りを挙げた。私もリール達の作戦に異論はない。故に皆に続こう!
「『白銀』がリーダー、アイギス! 私も皆を護る盾となろう!」
「えぇ~? ちょっともう~仕方ないですねぇみなさんってば、揃いも揃って熱血さん達なんですから……せめてディードバウアーの気を逸らしませんと集中攻撃を浴びちゃいますよぉ?」
私達防御組の名乗りにやや焦ったような声を挙げるのはセルフィ様。確かに、誰かがディードバウアーを相手にして気を逸らしてもらえるなら有難いが。
「ならば儂の出番じゃな! 『龍神』へと至ったこの力、存分に奮わせてもらうぞい!」
「ふっ、シドウよ其方にばかりいい格好はさせんぞ? 余も参ろう。『白野威』の御業、とくと見せてやろう!」
「私も参ります! このフェリア。見学に来たわけでは御座いませんので!」
ディードバウアーを引き付けるという危険な役目に名乗りを挙げたシドウ殿、リン殿、フェリア殿の三名がなんと頼もしいことか。その勇気に敬意を表します!
「ふむ。どうせですし……アルティレーネ。ちょっと転移でリドグリフを連れて来なさい」
「ええっ!? フィーナ姉様! いいんですか!?」
「マジ!? マジなのフィーナ姉!?」「ん……大丈夫? ちょっと不安……」
驚いた事にフィーナ様がアルティレーネ様にあの『武神』リドグリフを連れて来るようにと言い出した! これには三人の女神様方も直ぐには頷けず、難色を示す。
「俺はいいと思う。アイツは単細胞だからね。強い奴と戦えるって聞けば喜んで飛んで来ると思うよ?」
「ほっほっほ♪ ルヴィアス殿の言う通りじゃて。かの御仁は己に純粋なだけで悪ではあるまい」
ルヴィアス陛下は神界nいいらした時からリドグリフをご存知だった、更に魔神戦争のおりにも彼は強者との戦いに焦がれていただけなのだとご説明下さる。確かに、彼と矛を交えた私達も、あのヴェーラや、このディードバウアーのような悪意や邪気を感じなかったのを覚えている。ドガの言うように、リドグリフは純粋に闘争を望んでいるだけなのだろう。
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【武神も合流】~やってやるぞい!~《シドウview》
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シュオォォォォォー……
紫煙が集まり、徐々にディードバウアーの形を成して行く。
「急ぎなさいアルティレーネ! ディードバウアーが再び姿を取り戻しますよ!」
「わ、わかりました!」
シュンッ!!
やれやれじゃ……こいつはちと厳しいかもしれんのう?
土壇場で進化を遂げ、『龍神』と相成った儂じゃが、正直な話、あのディードバウアーには勝てる気がせなんだ。起きがけに一撃、特大のブレスを見舞わせ、四肢以外全部を吹き飛ばしたにも関わらず、驚くべき事にその状態から目にも止まらぬ反撃を繰り出し、あまつさえその超再生能力で再び……いや、何度目じゃ? またも復活してきおる。
リールとフォーネの作戦で、全員の力を結集して毛の一本も残さず吹き飛ばす事になったが……どうにも不安じゃ。最終手段を用いる以上、これにて決着。となればよいのじゃが。
作戦の成功を高めるため、長女が『弓神』の指示で『武神』を呼びに転移しおったが、はてさて? 上手くいくかの?
「シドウ。不安なのはわかる。余も同じよ……だが、それを皆に悟られるな?」
「わかっとるわいリンよ! 儂等は皆の希望とならねばならんのじゃ。でなければ命懸けで進化中に守ってくれたフェリア達に申し訳が立たんからの」
「シドウ様、リン様。勿体ないお言葉。痛み入ります! この戦、なんとしても勝ちましょうね!」
三体の『守護者』に皆の力をチャージする間、ディードバウアーを引き付ける役目に名乗りを挙げたフェリアも側にやってくる。ふむ……こやつも立派に成長したものよ。
「おーいジジイ! リン様! フェリア! 俺もまぜろよ!?」
「大地か、貴様もあの犬とじゃれあいたいか?」
「相変わらず血気盛んな虎じゃのぅお主は」
「大地殿! 心強いです! よろしくお願いします!」
次いで、大地も儂等の隣にやってきおった。大地はディードバウアーの目にも止まらぬあの攻撃を見切ったほどの者。頼りになるじゃろう。
「ここに来て俺の野生の勘が冴え渡ってやがんのよ! フェリアみてぇに確実ってわけじゃねぇが、あんな犬っころにいいようにやられて黙ってなんていらんねぇぜ!」
「そ、そんな。私などまだまだですよ大地殿……もっと精進しなくては!」
うむうむ。大地はその野生故に『直感』が鋭く、『未来予知』にも似た能力を得るに至り、フェリアは目立ちこそせぬが、そのたゆまぬ努力をひたすらに続けた結果、動体視力が神憑り、『超回避』に目覚めておる!
「既にチャージは始まっています! 頼みましたよ~出来る限りディードバウアーを引き付けて下さいね!」
了解じゃ! あのメイド服の女神の呼び掛けに儂等は首肯をもって応える。見れば、皆が順に神気を高め、『守護者』に注ぎ込むように手を添えておる。
「あちらも、準備が整った様子ですね……」
「ああ! 来るぜリン様だ! 避けろ!」「承知!!」
カッ! ズドォォンッ!!
むおっ!! やはり目では追えぬか! ガオォォォーッ!! と吼えるディードバウアーの奴め! なるほど、意趣返しの挨拶代わりというわけじゃな!?
「嘗めてくれるなよ! ディードバウアー!!」
「ギャオオォォーッ!!」
大地のアドバイスによって攻撃を回避したリンが直ぐ様反撃の爪撃を繰り出し、ディードバウアーに迫る! ディードバウアーも負けじとそれを回避し、反撃のラッシュ!
「取っ組み合いだ! 俺も続くぜ! フェリアは隙を見て一撃食らわせろ!」
「よく観るんじゃぞ大地! 小さいが僅かに予備動作があった! それを見極めるのじゃ!」
「「了解ぃーっ!!」」
ドゴォォォーッ!! ズガンズガァンッ!!
激しくぶつかり合う儂等とディードバウアー。リンの爪撃が奴の肩を抉り、大地の頭突きが脚を砕き、儂のブレスが下半身を吹き飛ばし、フェリアの技が背を穿っても尚、当然の如く再生再生再生!
そして息をつく暇もないほどの猛攻! 砕かれた筈の脚で大地を殴り飛ばし、その勢いのまま回転! ぶん回された尾によってリンが地に叩き付けられ、儂に向けて『咆哮』! これには儂もブレスで対抗し相殺! しかし、奴は既にフェリアに飛びかかっておった!
「私なら与し易いとでも思いましたか!? 返り討ちに「邪魔をするぞ」えっ!?」
「憤っ!!」
ドッゴォォォォーンッッ!!!
「ギャワワーンッッ!!」
おぉっ!? フェリアに飛び掛かったディードバウアーが派手に吹き飛びおったぞ! 見事なカウンターじゃ! って、あやつは!
「呼ばれて来てみれば……実に楽しそうな宴ではないか? この『武神』! 血が滾りおるわ!」
おお!? 本当にきおったのか『武神』リドグリフ! では先程ディードバウアーを吹き飛ばしたのはあやつか!
「済まぬな娘。其方なりに先の攻撃をいなす術があったのだろうが……くくく、昂る血が抑えられなんだわ!」
「はぁ、人の見せ場を奪ったのですから、相応の活躍を期待させて頂きますよ? 『武神』殿?」
「ふははは!! 承知した! さあ、我と死合えぃっ! ディードバウアー!!」
ゴオォォォーッ!! ドゴォォォーンッ!! 嬉々としてディードバウアーに突っ込んで行き、殴り合いを始めるリドグリフじゃ。やれやれ、本当に脳筋な奴じゃのう?
じゃが、今は頼もしい味方よ! どれ、儂等も負けてられんぞい! 皆、リドグリフに続けぇーぃ!!
アリサ「ん~?( -_・) あんれぇ~ちょいとミーにゃんやヾ(・ω・`。)」
ミーナ─なんぞや?(ФωФ) しもべよ( ´ー`)─
アリサ「あのディードバウアんちゃんについてなんだげんちもね……(*・ω・)ノ」
ミーナ─にゃん?(・о・) あの犬公がどうしたにゃん?(´ω` )─
アリサ「ちょーっと調べてみたら~洗濯機の元になってた子らしいじゃない?(;´A`)」
ミーナ─そうだにゃ~あのアホ毛共はそんなことも知らんで、「便利便利♪」って、使ってるにゃ(ーωー)─
アリサ「なんぞその微妙に含みとトゲある言い方は?(。・`з・)ノ」
ミーナ─別に他意はないにゃ~( *´艸`) 「知らぬが仏」とか思ってにゃーし?(=゜ω゜=) 仕組みをちゃんと知らないのによく使えるにゃ~とか思ってにゃ~よ?(  ̄- ̄)─
アリサ「……( ´Д`) あの子達もちゃんと理解せずに使ってたのか(-_-;)
となると、こりゃ無理じゃない?(´ヘ`;) みんな倒す気満々だけどさ……」
ミーナ─無理だにゃ(_ _) アイツ等は毛すら残さないほど消し飛ばせばいいとか言ってるけどにゃ~(*`ω´*) だから、しもべが行かなきゃいけないのにゃ(*゜ω゜)ノ─
アリサ「りょーかいだわミーにゃん!(*`・ω・)ゞ 私めっちゃ理解した!( ̄^ ̄) こりゃ確かにあの子達には荷が重いわ!(;`・ω・)」
ミーナ─そうだにゃ(=^ェ^=) 理解したなら早く行ってやるのにゃ(´・ω・)っ みんなしもべの帰りを待ってるんだからにゃ~♪ヽ(*≧ω≦)ノ─
アリサ「ほーいo(*≧∇≦)ノ アリサいっきまぁ~すっ!!ε=(ノ・∀・)ツ」




