155話 ティリアとロアとルヴィアス達
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【開戦】~ディードバウアー~《アルティレーネview》
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赤光して、その光を疾らせる鋭い眼光。
黒い毛並みは層が厚いようで、纏う闇のオーラと合わせて、実に攻撃が通りにくそう。
大地に立つその力強さから、四肢の筋力も相当強い。
ピンっと立った耳は恐らくどんな些細な異音すら見逃さないだろう。
長い尾は体躯の巨大さから左右に振られるだけで脅威の武器だ。
そして、今も「ぐるる」と唸り、剥き出しにされたその犬歯は鋭く、何者をも噛み砕かんとする意志すら感じる。
鋭さなら爪もそうだろう。ディードバウアーがその歩を進ませる度、地面には規則正しく並ぶ大穴が空く。前肢の爪によるものだ。
「グルルルゥゥ……」
私達はアイギスさんの指揮の下、遂にディードバウアーとの決戦を向かえました。
三体の『守護者』達よりも一回り大きいその黒い毛並みの犬。『獣魔王』や『破壊神』等と呼び称されるその正体はかつて『魂喰神』の成れの果て……らしいのです。
「行くぞゼオン! 奴の敵愾心を私達に向けさせる!!」
「っしゃぁ! 派手にかますぜ!!」『我が国の『想い』の結集! ここに放たん!』
ディードバウアーが復活し、その顕現を果たすまでに、布陣を完了させた私達。
一番槍をアイギスさんとゼオン、ユグライアのセリアルティレーヴェが担う!
「「『剣聖剣技秘奥! 『断絶』ーっ!!!』」」
ギィィィィィィィィーンッッッ!!!
二人と一体による放たれる剣聖剣技秘奥『断絶』! 『剣神』であるRYO兄様の編み出した『緋神真刀流』がこの『ユーニサリア』創造の際に投げ込まれ、代々の剣聖達によって解読され、連面と受け継がれて来たそれは今、『剣聖剣技』と名を変えて、私達の大きな助力となっています!
ありとあらゆるものを「絶対に断つ」その剣技がディードバウアーに!
バギィィィィーンッッ!!
「なんだと!?」「マジか!?」『むぅ!』
弾かれた!? そんなっ!!
「いいえ! しっかりと断たれています。ディードバウアーを覆う障壁が!? 来ますよ!!」
「ガルアァァァーッッ!!」
『ぬぅんっ! 『神の護り手』展開! やらせはせんぞ!?』
三つの『断絶』による剣閃がディードバウアーに届く前に、耳をつんざくような大きな音を立てて霧散しました! それを目にした私達は「まさか!?」と、誰もが目を疑いましたが、フィーナ姉様はしっかりと見定め、大声で私達に教えてくれました。確かにディードバウアーを覆っていた幾枚かの障壁が断たれているみたい!
その事に危機感を感じたのか? ディードバウアーは猛然と『盾役』の三人目掛け突進! ユグライアの駆るセリアルティレーヴェがその大盾を構え、『神の護り手』を展開させました!
ガギィィッバギィィッ!! ガンガンガンッッ!! ドゴォォーンッ!!
「ぐぅっ! なんと言う猛攻! 耐えろよゼオン!?」「わかってらぁな! しかしっコイツは!?」
『そう長くは耐えられん! 皆! 攻撃を!!』
あの巨体から繰り出されるラッシュの威力とその速度にセリアルティレーヴェが張った『神の護り手』もたちまち悲鳴をあげます!
「うおーっほっほい!! 背ががら空きじゃぞ犬公がぁーっ!」
「毛皮が固いってなら一点集中!! 貫いて! 『ホーリーレイ』!!」
『随分と強化されやがって! その機動力奪わせてもらうぜ!』
『盾役』の三人がディードバウアーを引き付けてくれているその隙を、ドガさんが背後から斬りかかり、リールさんの聖属性魔法『ホーリーレイ』が横腹を穿ち、ルーネフォレスターを駆るフォレストの双剣が疾り、右後ろ脚を斬りつける!
「穿て! 『ティレーネ』!! せぇいっ!!」
続けて私も『神槍ティレーネ』をディードバウアーの頭部目掛けて投擲!
「ギャオォォォォーンッッ!!」
「やった! 全部まともに入ったよ!」「アルティレーネ様の槍で頭を貫かれた!」
私達『攻撃役』四人による攻撃をまともに受け、かなりのダメージを負わせたと、リールさんとフォーネさんが喜びあいます。
「油断しないで! ディードバウアーはそんな簡単にやられるヤツじゃないよみんな!!」
「ガアァァァァァァーッ!!!」
ズドォォォォォーンッ!!!
「うおぉぉぉーっ!?」「きゃあぁぁぁーっ!!?」
くぅっ!! なんて威力の神気爆散!? 誰のものとも知れない悲鳴が木霊して皆が吹き飛びました!
「まったく……呆れた超回復ですね……ロアも余計な事をしてくれたものです」
なんということでしょう……先程の爆散で私達を吹き飛ばすと同時、与えた傷が一瞬のうちに塞がっているではありませんか!? これがフィーナ姉様が仰る『黒水晶』による強化なのですね?
「……流石に、骨が折れそうですね!」
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【魔神装甲】~こんな筈では~《ロアview》
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「うごぉぉぉーっ!? おのれっ! おのれぇぇーっ!」
はぁはぁ……おのれ! 何故に吾輩がこうもあっさりと吹き飛ばされるのだ!?
あの者共の『魔装巨人』の一体に、吾輩はディードバウアーの元より彼方へと吹き飛ばされた! あり得ぬ……吾輩がこんな無様を晒すなど、絶対にあり得ぬ! どこだ? どこで吾輩の計算が狂ったのだ!?
それともまさかあの『魔装巨人』はこの吾輩すら凌ぐ力を有しているというのか?
「否! それこそ否である! 吾輩の『魔装戦士』を超える『魔装巨人』など存在せぬ!」
そうだ……吾輩の『魔装戦士』は最高傑作である。『機械仕掛けの神』の世界に存在した『アバター』と言われる『仮想存在』の概念を流用し、『無限錬成』を可能にした、この『技工神ロア』の傑作!
「今も尚『魔装戦士』が各国を襲撃し、この世界の戦力を分散させ、殲滅しているはず……しかし、あの者共はディードバウアーを討つためあの場にやって来た……」
何故だ? 国を捨て世界を取るという判断なのか? それとも単純に戦力を分けたのか?
……いや、それよりも。なによりも!
「力が……力が戻らぬ!? 馬鹿な、そんな訳があるまい!」
今、最も重要な異常! 消費した吾輩の力が回復せぬという異常事態! この事態こそあり得ぬ!
ブゥゥンッ……
「わざわざ黒幕のあんたから出向いて来るとはね……嬉しいわ。
ロア……私に消し飛ばされる覚悟ができたってことでいいのね~?」
なっ!? 捕捉された、だと!? この吾輩が!? こんな未熟な者に!!
吾輩の眼前に転移してきた主神の『遍在存在』に対し、驚愕を隠せぬ自分がいる!
同時に屈辱である。『無限魔力』しか取り柄のないこんな小娘などに吾輩の居場所を捕捉されるとは!!
「……汝か? 汝の仕業か主神!?」
「……」
「汝の仕業かと聞いているのだ!?」
おのれ! そのあからさまに吾輩を下に見る目付きを止めよ! 非常に不快である! そして吾輩の問いに答えよ!!
「……さあ、なんのことかしら? わからないわね、ロア」
「貴様!!」
やはりこの者の仕業か! おのれ! 見え透いた芝居など打って吾輩を愚弄するとは!!
「許せぬ! 吾輩の邪魔をしたこと、後悔するがいい!」
「あんたに何ができるって? 承認欲求の塊で、技術しか取り柄のないあんたが?
この主神様に楯突いてくるなんて……随分な思い上がりじゃないかしら!?」
ゴォォォーッ!!
主神の神気が溢れ出す! ふん! ほざくがいい! 吾輩が汝に対抗する策を用意しておらぬとでも思ったか!?
「汝こそ『無限魔力』だけが取り柄の若輩者であろう!? 来い『魔神装甲』!!
吾輩を護る鎧となり、敵を討つ剣となれ!!」
カッッ!! ドシュゥゥゥーンッ!!
フフフ、フハハハハっ! 見よ! これが『魔神装甲』である! 吾輩の呼び掛けひとつでこの最高傑作の中の更に至高の『魔装戦士』!! 『魔神装甲』が呼び出せる!!
「……随分不細工ね。それで? 今までのあんたのオモチャと何が違うのかしら?」
「くふふ……この『魔神装甲』は吾輩を守る鎧であり、汝を滅ぼす剣である!」
見せてやろう。汝が虚仮にした吾輩の技術! その技術の前に汝は膝を折ることになるということを!
ブゥゥンッと吾輩は『魔神装甲』のコックピットに転移し、主神を見下ろす!
さあ、受けるがいい! 吾輩の怒りの一撃を!
「『フレアカノン』!!」
カァッ!! ズドォォォォォーンッ!!!
ふはははっ!! 直撃である! 『魔神装甲』の左腕から放たれるチャージ無用の究極砲撃『フレアカノン』をまともに受けた主神は大きなダメージを負ったことだろう!
当然である、この『フレアカノン』は吾輩にとって無用となった実験場を手軽に消し飛ばすために開発した古今無双の兵器!
「……なるほど? 本当に今まで好き放題やってたってワケね、あんた?」
「ば、馬鹿な……っ!? 無傷だと!?」
もうもうと立ち込める爆煙が風に流され、主神の姿が見え始めた。信じられぬ事に『フレアカノン』の直撃を至近距離で浴びた筈が、なんと、無傷! その衣服にすら綻びも見られぬ! あ、あり得ん! 吾輩の究極の一が通じぬなど!!
「あの一瞬に何をしたのだ!? 汝ごときが防げる攻撃ではないぞ!?」
「別に? 何もしてないわよ、普通に受けたけど?」
馬鹿な馬鹿な馬鹿な! あり得ぬあり得ぬぞそんなこと!? 吾輩の兵器は完璧である! 如何にこの小娘が『無限魔力』を有していようと、それすら貫ける威力を計算して叩き出したのだ!
「だったらその計算ってのが間違ってんじゃないの?
……あんたさ、自己中も大概にしなさいよ? そうやって自分勝手ばっかやってるからっ!」
ブンッ! ドゴォォォォーッ!!
「ぐがぁぁぁーっ!?」
う、腕が! 吾輩の『魔神装甲』の左腕がぁぁーっ!
主神は今何をしたのだ!? 一瞬奴が腕を振るったと思ったら左腕が吹き飛ばされ、爆散した!
「人の成長にも気付けないのよ?」
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【無事だった】~ゼルワ達の同胞~《大地view》
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ズドォォォォォーンッ!! ゴォォォォーンッ!!!
ビリビリビリビリィィーッッ!!
うおぉ? すげぇ大気が鳴動してやがるぜ!
「ぐぅぅっ!? 凄まじいぜこりゃ!? おぉい! 『白虎』様にウォーラル! 一体今何が起きてやがるんだ!?」
「ええい! 王がみっともなく狼狽えるんじゃあないよ!」
「応。そのババアの言う通りだ、慌てんじゃねぇ獅子王」
んなこと言ってもだな!? って~? うるせぇ野郎だな?
ここは『ゲキテウス王国』の王都。その王城だ。群がる『魔装戦士』共をひたすら蹴散らしてた俺とヒャッハーなんだが、どうしたことか突然その『魔装戦士』共が一斉に姿を消しやがった。
何が起きたかさっぱりわからねぇんで、どうしたもんかと途方に暮れてたんだがよ。どうやら主神達の話じゃアリサの姐御がやってくれたらしいんだわ! ひゅー♪ 流石姐御だぜ! 異界に飛ばされたって聞いた時にゃ焦ったが、こうして手を打ってくるんだからよ! マジ尊敬しちまうな!
「コイツは二ヶ所でおっ始まってやがんな……ひとつは『ルーネ・フォレスト』でディードバウアーと……」
「ああ、もうひとつはそこからやや東に行った所で、主神様と……ふん、こりゃロアとか言うヤツかい?」
さっきから喚く獅子王にこのビリビリ震える大気の原因を教えてやる。ウォーラルとか言うババアも感じたようだが、デケェ神気のぶつかり合いが『ルーネ・フォレスト』と『聖域』寄りの北東の海上で起きてやがる。
「……かぁ~どっちも俺等が出向いたところで力になんざなれそうにねぇな……」
「はい、陛下……これはもう神々のぶつかり合い。我等が行っては邪魔になるだけかと……」
まあ、そうなるわな。獅子王も大臣の言うこと聞いて「仕方ねぇ」って面してるが、悔しそうだな?
「そう悲観すんじゃねぇ? オメェ等はこれから流れて来る避難者達をしっかり受け入れやがれ。それは俺達にはできねぇ事なんだからよ?」
白虎様……はい! 我等『ゲキテウス』の誇りにかけて!!
応。いい返事だぜ! そんなに多くはねぇようだが、やっぱ戦闘の起きた近くに居を構えてた奴等ってのはいるみてぇで、既にいくつかの街や村、小せぇ集落とかから流れて来てるのもいるからな。そいつらをしっかりと保護してやんのも国として大事なこったろうぜ。
ヒャッハーの奴も今はそんな要救助者を探して飛び回ってやがる最中だ。そろそろ連絡が来るか?
「おい、ヒャッハー? そっちはどうよ? 救助が必要な連中はいたか?」
《コチラヒャッハー! ナイスタイミングダゼ大地~! 『ルーネ・フォレスト』ノ近クデ、エルフノ連中ガ腰抜ヌカシテタノヲ発見。今保護シテルトコダ! 俺様ダケジャ乗セ切レネェカラ手ヲ貸シテクレヤ》
あぁん? 『ルーネ・フォレスト』近くにエルフの連中? なんかどっかで聞いた話だな?
「あ! もしかして私の故郷のみんなかも!? 白虎様はゼルワとサーサはご存知なんですよね!? 多分そのエルフ達って、彼等と私の故郷の者達だと思います!」
「おー! そういやあの二人が手紙をどうだこうだ翼達に頼んでたな? んじゃ、ちょっくらひとっ走り行ってくっか!」
「ありがとうございます! お願いしまーす!!」
あの女エルフは『ゲキテウス』の魔導師団長とか言ったな? へぇ~ゼルワ達の同郷かよ? だからって訳じゃねぇけど、俺も一肌脱いで助けに行ってやろうじゃねぇか。
「おおぉ……ありがとうございます! ありがとうございます! 里の者を全員助けて頂けるとは……里の長として厚くお礼申し上げます!」
──で、連れて来た。エルフの老若男女。いやいや、結構な人数だったぜ。んで、その長老とか言う奴がさっきから何度も礼を言ってるんだが……まぁ、魔物に襲われてヤベェところだったからな。
「ヒャッハー様に乗せて頂いている無防備なところで……本当に感謝致します!」
「ゼルワとサーサの手紙は本当だったのだな……彼等には、謝罪せねば!」
「みんな~久し振り! 無事で良かったよ!」
アレイシア! 君はこの国にいたのか!? わぁー! 久し振り~♪
やれやれだぜ。魔導師団長のエルフとの再会に喜ぶ連中を見て、俺とヒャッハーは思わずため息だ。
さて、後のことは獅子王達に任せるとすっか。
「おい、獅子王にババア。それと大臣に貴族共?」
「応!」「はいよ」「「「「は、はい!」」」」
《コノ国ハ世界デ一番住ミヤスイ国ダッテ聞イテルゼ?》
「俺もゼオンからそう聞いてる。だからコイツ等のこともちゃんと受け入れてやるんだぞ?」
心配はいらねぇだろうが、またクソ下らねぇ差別なんぞでコイツ等の居心地が悪くなるような事にはすんなよって、一応釘刺しておこうと思う。
「ああ、任せといてくれよ。二度とあんな吸血鬼野郎のような輩が出ねぇように取り計らうさ」
「あんた方はこっちの心配いらんさね……往くんだろう? 仲間のとこに?」
獅子王とウォーラルのババアが俺達の言いたい事を察して答えると、ほかの大臣に貴族共に兵士達も力強く頷く。へっ! どうやら無用な心配だったみてぇだな。
「うっし! んじゃ俺等も行くかヒャッハー? 世紀の大決戦に不在でしたじゃ締まらねぇからな!!」
《応ヨー!! ディードバウアーダカナンダカ知ラネェガヨォォ~? コノ俺様ガブッ飛バシテ、ヒャッハーシテヤンゼェェーッッ!!》
わぁぁーっ!! 御武運を白虎様! ヒャッハー様ぁーっ! どうぞご無事でーっ!!
ビシィッ!! ははは、『ゲキテウス』の連中が揃い揃って敬礼して、俺達を激励してくれてんゼ! ありがとよオメェ等! その『想い』確かに受け取ったぜ!!
っしゃぁ! 待ってろ皆、俺とヒャッハーも直ぐに参戦すっからな! 目指すは『ルーネ・フォレスト』! ロアの野郎は主神に任せときゃ問題ねぇ!
「飛ばすぜヒャッハー!?」
《応! オ前コソ遅レンナーッ!?》
『ゲキテウス』上空に舞い上がり、進路を今も尚、暗雲渦巻いてる『ルーネ・フォレスト』に向けて、俺達は空を駆け出した!
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【決戦の地へ】~拠点ごとw~《ルヴィアスview》
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「さてと! じゃあ後は任せていいよなルォン!?」
『ええ! お任せ下さい義父さん! 『魔装戦士』が消えたのであればもう脅威はありません』
この『ユーニサリア』の空を埋め尽くすかのようなロアの『魔装戦士』の大軍勢が一斉にその姿を消した。その目の前で起こった事実に俺達は何が起きたのかまったく理解できず、困惑しつつ、警戒していたんだけどね。ティリアから、アリサ様の手によるものだから安心しろってさ!
そういうことなら! って、意気込む俺達。だけど、アリサ様って異界……ロアの実験場に飛ばされたって聞いたんだけど?
「ええ? まだ戻って来てない? んじゃ何? アリサ様ってばロアの実験場からこうして支援してくれてんの?」
「もしくは……飛ばされた実験場で『魔装戦士』の何かしら秘密を暴いて、無力化させたんじゃないでしょうか?」
帝国の守備を養子のルォン達に任せて、俺と水菜、シェラザード。そして『ルクレツィア』内にいるバロード、カレン達、近衛隊。オルファ達、魔法師団と少し話し合う。
「あのロアがわざわざ『魔装戦士』を生み出している場所にアリサを飛ばすかしら?
とにかく、ルヴィアス、水菜。私達も『ルーネ・フォレスト』に急ぎましょう! とても禍々しい神気を感じるわ、戦力は多い方がいいわよ?」
どうだろうな……ティリア達の加護を封じたアリサ様ならきっと無力だろうって、あの自信過剰なロアなら思うんじゃないかね~? なんて、シェラザードの言葉に思ったりしたけど、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
「よし! 聞いたな皆!? 我々はこれより『ルーネ・フォレスト』にてかの魔王『ディードバウアー』との決戦に臨む!」
はっ!!
ビシィッ! ってな擬音が聞こえてきそうな我が国の兵士達の敬礼。いいね、誰も怖じ気づいてなんていない。
レウィリリーネやフォレアルーネ達が既にディードバウアーと戦い始めているんだろう。この『ルヴィアス魔導帝国』からも、西から激しい神気のぶつかり合いによる余波が届いてくる。
「激しく厳しい戦いとなるだろう! 諸君等は戦い、傷付いた戦士達を保護し、治療する任にあたってもらいたい!」
「了解! ふふ、さしずめ僕達の『ルクレツィア』は前線基地ってことだね」
「私達もいざと言う時には出る! 覚悟を決めておけカレン」
「無論よ! 『無限円環』での訓練の成果を見せてあげるわ!」
俺達はこの『ルクレツィア』ごと『ルーネ・フォレスト』に赴いて、集う戦士達と一緒にディードバウアーと戦うんだけど……流石にあの『無限円環』で訓練受けてない兵士達じゃ力不足だ。バロード、カレン、オルファの三人ならともかく、他の兵士達じゃ危ないからね、彼等は出さず、ディードバウアーとの戦いで傷付いた戦士達の治療とかサポートに回ってもらうことにする。
「でしたら『ルクレツィア』は私が守りましょう。この『真・玄武』と進化した守護の力。存分に奮います!」
「あの子達も直ぐ近くにこんな拠点があったら安心して戦えるでしょうね。大きい分ディードバウアーにも狙われ易いでしょうから、水菜頑張るのよ?」
はいっ! ってな水菜ちゃんの元気な返事に俺とシェラザードは満足して頷き合う。そうなんだよね、『ルクレツィア』ってデカイからさ、持っていったら格好の的になるかなって迷ったりもしたんだけど、そこは『真・玄武』に進化した彼女の力をあてにできるって事で持っていくことにしたよ。
シェラザードも言ってるように、いざって時に体制を立て直せる拠点が近くにあるなら、彼等も思い切り戦えるだろうからね。
「待って、ルヴィアス。あれは……」
「お? あれって……ロアとティリアじゃねぇの!?」
んなわけで、『ルーネ・フォレスト』へと移動を開始した俺達。アリサ様とかティリアにアルティレーネみたいに転移が使えたらよかったんだけど、生憎俺もシェラザードも使えないからなぁ~よしんば使えても、『ルクレツィア』ほどのデカイ建造物含めての転移は神気食い過ぎなんで、ディードバウアーとの戦いを控えてる以上使わない方が賢明なのよ。
それで『飛行魔法』でビューンって飛んでると、前方にドンパチやってる光が見えてきた。一体なんだ? って思って先頭を飛ぶ俺とシェラザードは目を凝らして見てみると、そこには、ロアをぶん殴っているティリアの姿!
「あらあら? ご自慢のなんちゃら装甲とやらも大したことないわね。粉々じゃないロア?
あら、ルヴィアスにシェラザード達じゃない? 『ルーネ・フォレスト』に行くのね?」
「ええ……そっちは、任せてもよさそうね?」
向こうも俺達に気付いたようで、挨拶してくる。うん……キレてんな、ティリアの奴。コイツのこんなマジ切れ顔久し振りだわ。
「はぁ、一つ忠告しとくぜティリア? 怒りに任せて完全消滅~なんてするなよ?
ソイツも多分……いや、十中八九『擬似体』だろうからな。アリサ様みたいにちゃんと本体見つけ出さないとまた逃げられるぜ?」
「ルヴィアス!! 貴様ぁぁぁーっ!?」
ゴォォォォーッ!!
んん~? なんだぁ~? ティリアに吹っ飛ばされて海に叩き付けられたロアが俺に魔法撃ってきた。
ベシンッ! って、その魔法を弾いてそっくりそのままロアに返してやったぜ! そしたらアイツさ~
「ぐぁぁーっ!?」
ボガァァーンッ!! まともに食らってやがんの! 情けねぇ~ティリアにだいぶしてやられて弱ってやがるな?
「ああ、あんたもやっぱりそう思う? そうなのよねぇ~私もヴェーラの一件以来、その可能性はあるかもって思ってたの……でね? 一応アリサ姉さんに『無限円環』で色々教わってたのよ。
流石に『存在固定』とまではいかなかったけど、逃亡を防止する事はできるようになったのよ」
ヴェーラの一件で「もしかして」って思ったティリアはティリアなりに努力してたんだな? で、あの『パソコン』とか言うモンから出てきたロアのレポートの内容を知って、俺と同じようにこの『ユーニサリア』にいるロアは『擬似体』だろうって、確信したらしい。
「お、おのれ……っ!」
ははっ、悔しそうなロアのマヌケ面に思わず笑っちまうよ。馬鹿が。いつまでも思い通りになると思ったら大間違いだぜ? 暫く主神様に殴られてろ。
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【アリサさんは】~応援に徹します~《アリサview》
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『馬鹿な……吾輩のレポートだと? この世界の端末は全てパスワードによるロックをかけていたはず! 汝等にそれを解読できるわけがない! いや、そもそも見付けられるわけがない!』
う~ん……コイツって思ってた以上におマヌケさんなのではないだろうか?
飛ばされた異界、ロアの実験場でミーナのおかげで新たな力に覚醒した私は、現在の『ユーニサリア』の状況を把握すべく覗き見している最中だ。
状況は大きく分けて二つ。一つはティリアとロアが戦っていて、もう一つはディードバウアーと戦う私の仲間達。
こっちの世界……ロアの実験場の方では、ロアの創造した他の世界を全部一つに統合して、大きく美しい世界へと生まれ変わらせたところだ。私達はこの世界を仮に『第二のユーニサリア』と呼称し、ヨミ、ステラ、ノースの三人に管理をお任せした。
彼等はその提案に驚き、戸惑いつつもこの『第二のユーニサリア』の管理を承諾。今は世界を管理するために必要な力を私に与えられ、その変化の最中だ。
「あるじ様と大違い、です! どこまでも自分以外を見下して、馬鹿にして……長い時間研究とか実験とかに没頭してた障害です?」
「いや、マジにそれね。自意識過剰っていうのか……自分以外はみんな馬鹿だ~とか、思ってるヤツの典型的な例だわ」
さっきからティリアにボコされては「そんな馬鹿なーっ!」とか喚いているロアは多分、自分が創造した百八十三の世界からの魔力供給が途絶えた理由にすら気が付いていないんだろう。
また、その場から『逃亡』する事も出来ない理由も察する事ができず、混乱の渦中にいるってところだろうか?
─とことん間抜けな奴だにゃ~? 時にしもべよ、コイツの本体の居場所はしっかり把握してるにゃ?─
「勿論だよミーにゃん。今頃あわてふためいてるだろうね」
ロアが『擬似体』だろうってのはティリアの特訓に付き合っているときに共有した情報で、あの『パソコン』のレポートを読んで確信していた。んで、『神々神』となった今、その本体の居場所を突き止める事も可能となったので、即座に見付けて悟られないようにロックしておいた。
「もうロアについては置いておこう。最後にしっかり断罪して幕引きにしてやればいいよ。
それより、ディードバウアーの方が危ないかな? 大量の穢れを内包した『黒水晶』を取り込んだせいで、とんでもない事になってるし」
「で、でも……あの『守護者』も三体揃いましたし、ティリア様の義姉妹のフィーナ様とセルフィーヌ様も協力に駆け付けてくれてます! それに『懐刀』のみんなも進化を果たしたら……」
正直、今私とミーナが気にしているのはディードバウアーの方だ。復活を果たした事で弱体化のペナルティが解除され、本来の力を取り戻した上に、あの巨大な『黒水晶』を取り込んだのだ。
「……ステラ達は、もう少しかかりそうね。みんな……耐えてよ?」
「……んぅ、あるじ様。ディードバウアーはそんなに危険、です? みんな『無限円環』でとっても強くなった、です。のに、「勝って」じゃなくて、「耐えて」です?」
この『第二のユーニサリア』を管理してもらうため、現地人の三人は今、私が施した変化を受け入れてもらっている最中。それが完了するまで私は離れる訳にはいかない。今離れちゃうと失敗になって、三人が消失しちゃうからね。
不安そうに疑問を口にするアリアを優しく撫でて、落ち着かせてあげる。
確かにみんな『無限円環』での一年間に及ぶ訓練で、凄く強くなったとは思う。だけど、あのディードバウアーから感じる力は、それを上回るのだ。
─正直、一年間じゃ足りなかったかもしれないのにゃ。み~が行ってもいいけど、しもべみたいに器用じゃないからにゃ~? あの犬ごと世界を消失させる事になっちゃうのにゃ~─
流石にそれはマズイ。なのでちょいと焦る。
「それは、困るのです」
「まぁ、やりようはいくらでもあるんだけどさ……も一つ正直な気持ちを言うと、みんなを信じて任せてみたいってのがあるんだよね。今まで必死になって繋いできた『ユーニサリア』なんだし、みんながみんな一丸になってこの難局を乗り越えてほしいなって……」
私の力を受け取っている『聖霊』のユニとアリスを応援に向かわせるのもいいし、私の『遍在存在』を送り込んでもいいだろう。ディードバウアーをなんとかするだけでいいのであれば、それなりに手は打てる。だけど、そんな風に私が解決しちゃうのはなんか違うんじゃないかって気がしてきたんだ。
─うにゃん。いいんじゃないかにゃ? み~みたいに見守る立場に落ち着くのも─
「うん。正直強すぎる力で一方的に片付けちゃうと、みんなが頑張ってきた今まではなんだったの? ってなっちゃうだろうしさ。だから私は表に立たず、裏でコソコソと手助けしようって思うの」
ま、勿論。みんながピンチの時にはそんなの関係なく駆け付けるつもりだ。
それまでは、ここで応援しながら見守ろう。頑張ってねみんな!
ユニ「えっ!?Σ(*゜Д゜*) ユニも!?(´□`; 三 ;´□`) あわわ!(゜Д゜;) できるかな~?( ̄~ ̄;)」
サーサ「ユニちゃんどうしたんですか?(´・ω・`) 突然慌て出したりして?(*≧ω≦)」
ユニ「はうぅぅん!(*≧д≦) 今アリサおねぇちゃんの声が聞こえて……ひょっとしたら、ユニもこのわんわんとの戦いに出るのかも~って!((゜□゜;))」
ゼルワ「えぇ~?(;´Д`) 流石にそれはしないんじゃねぇかな……(_ _)」
ミーナ(まぁ、例えばの話だにゃん( ´ー`) しもべがユニを戦場に出すことはまずないのにゃ(=゜ω゜=))
ユニ「そ、そっかぁ~(´・ω・`; ) ちょいとゆにびっくりしちゃった……はぅ(〃´o`)=3」
ミーナ(ああ、でもあのアリスは別だにゃ(ФωФ) アイツもしもべの力を受け取ってるし、荒事にも馴れてるのにゃ(°▽°))
ユニ「そっか!ヽ( ・∀・)ノ アリスちゃんならユニよりずっと上手に戦えるね!(^ー^)」
アリス『……ユニちゃん先輩?(・о・) アリスを呼びましたでっしゃろい?(^∇^)』
ユニ「あ、うん!(´・∀・`) 今ね~アリサおねぇちゃんの声が聞こえてね……ヽ( `・ω・)ノ」
アリス『ほむーん(゜〇゜) それはいいんでっすけど、『聖域』じゃ今、ゆかりんが進化の眠りについちゃってまっしてね(ーー;)』
ゼルワ「おお!( ・∇・) マジか!?ヽ(*´∀`)ノ」
アーグラス「心強い限りじゃないか(*´▽`*)」
アリス『まあ、ジュンにカイン、『黒狼』や『猫兎』達もいますし(゜ー゜*) 防衛戦力はじゅうぶん揃ってるんで、ご用命とあらば!( ・`ω・´)』
ユニ「うん!o(*⌒―⌒*)o いつでも出れるようにしておこうね♪ヽ(*´∀`*)ノ ユニも頑張るよ!(ノ≧▽≦)ノ」
ミーナ(……頼もしいのにゃ( ´ー`) しもべが見守りたいって言うのもわかるにゃ( ゜ー゜))




