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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
192/211

153話 魔女と異界と猫

────────────────────────────

【どんなに凄い力もらっても】~私とミーナは変わらず~

────────────────────────────


 うっひょぉぉーっ!? いんや、なんぞこれー! すんげぇんでねぇの!?


─どうだしもべよ? 開花した新たな力は?─

「いやいや、すんげぇわよ……これがずっとあんたが見ていた世界ってこと、ミーにゃんや?」


 あい。みなさんこんにちは♪ 異界『ロアの実験場』に飛ばされて、ブイブイ言ってるアリサです! な~んかこの挨拶も久し振りだげんちも。まだまだブイブイ言わせてもらうつもりなんでよろしくね!


─そうだぞ~? しもべ達がわたわた動いてるのを眺めてあくびしてたのにゃん─


 さて、あの拗らせわがままボッチ神ことロアに、この実験場に飛ばされた私なんだけど。なんとまぁ、困った事に妹達からの加護が全部封印されちゃっていたんだよね。虎の子の『イメージ魔法』まで使えなくなっちゃってて、ちょいと焦りましたよ、このアリサさんも?

 だけどもそこは前世で蓄えてきた色んな知識と、これまでに培ってきた経験活かして。後は『ユーニサリア』のみんなの『想い』だの『祈り』なんかを『聖域の魔女』『聖域の聖女』としての権能で拾ったりして、漸くこの世界からの脱出口でもある『世界樹(ユグドラシル)』にまでたどり着いたのだ。

 『ユーニサリア』では今も仲間達がロアの『魔装戦士』達と戦ってるはず。急いで戻らなきゃって、その時。仲間達の『想い』と『祈り』と一緒に、私の愛猫ミーナがなんか知らんけど喋り出した上に、私のパワーアップまでしてくれたじゃないの!? これにはアリサさんびっくりですわ!


「はぁ、『開花』って……私は何処ぞのお花の騎士かってーの?」


 その場合団長はアイギス? いやいや! あの団長はなにかにつけて、ぇっちだから駄目だわ!

 って、そんなアホな事は置いといて……

 ふぅむ……なるほどなるほど。うんうん。納得だわ……

 思い返してみれば、ミーナはいつだって、どんなときだってマイペースにあくびしてはごろんって寝っ転がって「うにゃぁ~ん」って能天気にしてた。

 『聖域』のお屋敷から再生の為に『世界樹(ユニ)』の下へと飛び立った時も、ティリアが降臨した時も、魔神の残滓達、あのメルドレードの影と戦った時も……

 それもそのはず。今私の目に見えてる世界がミーナのそれだ、ってなら。至極納得がいく。

 なんせ全部……総てが『小さい』のだ。

 そして、総てが『視える』のだ。


「なんか……ずぅっとモニターを展開させてるような? でも、事細かに詳細まで把握できて、でも、処理は一瞬? いや、これは最初から全部わかる~みたいな?」

─最初のうちは視えすぎて、わかりすぎて戸惑うにゃぁ? しもべの好きなようにいじるといいにゃ。なんせ今のしもべに出来ないことはないのにゃ─


 うん。戸惑うわぁ~なんでこんなんなってるの?


─その答えもしもべはもう知ってるにゃ~ん─


 ……『神々神(デウス・イクシード)』? はぁ~? なんぞこれ? 神々の神ってなによ?


─にゃんにゃん♪ もしかするとあのアホ毛の方がみ~達より詳しいかもにゃ。戻ってきたら聞いてみるといいのにゃ~─

「はぁ、まーそうしますかね。にしたってこれは……ほへーん。よくなんかの物語とかでさ、神様が「いと小さき者達よ」とか言ったりしてたけど。それがよくわかるわね」


 どうやら私は『亜神』からなんぞ、諸々をすっ飛ばして最高位存在になってしまったらしい。これは、私の今までの頑張りが評価されたって言うより、どう考えてもミーナの力が大きいんじゃないかな?

 うむむ……私は結局また借り物の力に助けられてしまうのか? なんか悔しいのぅ~な~んて、んなこたぁこの際どーでもいいのよ! 要は『ユーニサリア』で頑張ってるみんなをしっかりキッチリ助けてあげられるってんなら、遠慮なく借りようじゃないの! ミーナの力だって言うなら絶対、悪い力じゃないってわかってるんだしね♪


─にゃん。そうだにゃ、今は検証だの考察なんて後回しでいいのにゃ~やることさっさとやって、早く帰ってくるのにゃ─

「はいはい。戻ったらいっぱい一緒に遊んで、美味しいチーズとか食べようね~?」


 にゃぁぁん♪ ってまぁ~嬉しそうに鳴くミーにゃんだこと! 正直聞きたいことは山ほどあるんだけど、今優先するべきは『ユーニサリア』の魔王達だ。

 私がロアにこの実験場に飛ばされた後、あちらではどんな動きがあったのかを確認してみようと思う。


パパパパパパーッッ!!


「うひっ? あーあー……はいはい。なるほど……」


 もー! なんなのこれ~? 私が『ユーニサリア』の情報を知ろうと思っただけで、その情報が全部頭に流れ込んでくるし、更にそれを私は全部理解できてしまっている。こりゃ、馴れるのに結構時間かかりそうだわ。あ、もしかしてそれも一瞬で終わっちゃったりする? いやいや、なんかこう上手いことコントロールしなきゃ。ずっと振り回されっぱなしになっちゃうよ。


─あふぅ、にゃしにゃし……しもべは過程を大事にするにゃぁ? まぁ~程よくに~だにゃん─

「あくびして顔洗って……おネムなの? もうちょっと起きててよ? 色々と聞きたいんだしさ!」


 この場にいなくても、ミーナがお手々ペロペロして顔を洗ってる姿が容易に見えてしまう。このままだと、ごろんって横になってはまるくなり、スヤァしちゃうのは確実なので、もうちょっと起きててくれるようにお願いしておく。なんにせよこっちは急なパワーアップにてんやわんやなのだ。アドバイザーに眠られては困ってしまう。


─うなぁん♪─

「え? 「しょうがないなぁ」って? ふふ。そんな嬉しそうな声出しといて、なにを言うのかねミーにゃんや♪」


 うっひょっひょ♪ 可愛いなぁ~あ~早く戻っていっぱいミーにゃんをもふりたいわ!


─どうでもいいことだが、しもべよ~? み~の正しい名はどれなのにゃ? 『ミーナ』だったり、『ミーにゃん』だったり、『ミーにゃごん』だったり、『にゃごすけ』だったり……み~はわからないにゃん─

「あ、あぁ~ごめんごめん! うはは♪ その時その時の気分で色々変えてたから混乱しちゃったかな? 最初の『ミーナ』が正しい名前だよ」

─にゃぁん。まぁ、知ってたけどにゃ♪─


 おいぃ? んじゃわざわざ聞かんでもいいでしょーが! はは~ん。さては今、かまってちゃんモードだなぁ? まったくもう、可愛いんだから!


「ミーナ。帰ったら沢山遊ぼうね♪ ふふ、今度はずっと連れ回すから覚悟せい!」

─うにゃぁ~遊ぶのは歓迎だけどにゃ、ほどほどがいいのにゃ~─


 あはは♪ そうだね! じゃあ、のんびりいきましょうか。私達には余るほど時間があるんだから。


────────────────────────────

【光れ!】~アリサさんアーイ!~

────────────────────────────


「あるじ様! 大丈夫です、か? なんだか今までとは違った、凄い力を感じます、けど……?」

「あ~うん。大丈夫だよアリア。ごめんね、ぼーっとしてて、心配かけちゃったね?」


 この実験場の朽ちた『世界樹(ユグドラシル)』をほぇぇ~って見上げて呆けてた私を、アリアの心配そうな声が引き戻してくれる。おーイテテ、ずっと見上げてたから首が痛いわ。

 正直もっとミーナとのお喋りに興じていたかったけども、私にはやんなきゃいけないことが山盛りだ。それにアリア達を放置するのもよくない。


「ってわけで~ササっとやっちゃいましょうかね」

『やっちゃうって……魔女様、一体どうするんですか?』

『この世界にはもう、何も残されていない……』

『希望だった『生命の大樹』もここまで朽ちてしまっていては……』


 そう言ってガッカリした顔を見せるのは、この世界の現地人であった三姉弟達だ。私とアリアがこの三人を発見したときには既に三人共事切れていたのだけど、彼女達の『想い』は強く残されており、それを『聖域の魔女』の権能で拾い上げた。ご遺体は大切にミーにゃんポーチに収納してあるため、私達と一緒に移動することが可能なのだ。


「そう悲観しないで、ステラ、ノース、ヨミ。このアリサさんに任せなさいって!」


 かわいそうに……自分勝手な創造神の実験に付き合わされたこの三人……いんや、この世界。このまま「はい、さようなら~」なんて、当然できるはずがないのだ。そして、どーにかこーにかできるだけの力を私はミーナのおかげで手にする事ができた。

 人に迷惑しかかけないあんなアホ神には、うん。退場してもらうのは当然として、他にも管理してる世界からも手を退いてもらうとしよう。

 さあ、今こそ光れ! パワーアップしたアリサさんアーイ!


「ほっほぉぉ~あんにゃろめ『旧神』とか言うだけあって結構な数の世界持ってんじゃねぇのよ?」


 ぴかーん☆ミ てな感じで私は目を光らせ、ロアが創造した世界がどのくらいあるのかってのを検索してみた。なんか『イメージ魔法』で似たことやってたけど……段違いだわ。範囲、精度、速度とくらべもんにならんね。

 それで出てきた結果は百八十三。それだけの世界総てがロアの実験の犠牲になってしまっているようだ。


「なんでティリアはこれをほっといてんの?」

「んぅ。あるじ様……ティリア様は『旧神』とは、いわば敵対関係にあります。遍在存在も立ち入らせないようにしてるんじゃないです、か?」


 おぉ、そっか。アリアの言うように『保守派』と『革新派』とで『神界』は対立してるんだっけ? いくら主神って言っても他の神が創造した世界にはおいそれと遍在存在を送り込む事はできないんだろう。


『よくわからないが……要は監視されてるようなものか?』

『なるほど、それじゃこんな酷い状況の世界なんて見せらんないよね?』

『神々も一枚岩ではないのですね……』


 話を聞いていたノース達も納得がいったようだ。しかし、この分だと他の『旧神』共もなんかしらやらかしてそうね。


「よし! んじゃまぁ、ティリアのガサ入れの一助にもなるだろうし、このロアの世界ぜ~んぶ掌握させてもらいましょうか!」


 多分この百八十三ある世界のどっかに『魔装戦士』の生産工場なんかもあると思うんだよね。あ、いや……『ユーニサリア』に出現してるあの『魔装戦士』って、もしかしたらあれか? 星の数ほどドッカンされても際限なく出てきてるとこ見るに、アバター?


「あり得る~あのヴェーラとか言うおババにそれ教えたのって、ロアらしいし」

「あぅ、そう言われると……規模こそ違いますが、確かにそっくり、です!」


 うむ。アリアも同意してくれておる。ま、それもこれも引っ括めて手を打ちましょうね!


「展開。『上書き(ライズ)』。この百八十三ある世界全部を~創造神をロアから私に変更して、それから『万全事象記憶円盤(アカシックレコード)』にアクセスっと。全管理神っての作成して、それを私とミーナにしとこうね」

─にゃぁ~? み~はなにもしないのにゃ?─


 うんうん。いいわよそれで? どうせ暫定的なもんだし。後でティリア達とも相談してここは色々変えていこう。ってかさ、あんたと私以外に『神々神(デウス・イクシード)』っておらんの? 新人の私がこう、好き勝手やっちゃっていいのかしらって、ちょいと不安になるんですけど?


─にゃん。安心していいのにゃ。み~に並び立てる存在なんていないのにゃ─

「おうおうおう? マジか? マジで(ミーナ)に敵う者などおらんのか……そんなあんたがなんでまた私をパートナーに選んでくれたんだか? 気になるけど、後で訊くわ」


 世界どころか宇宙? いやいや、そんなちゃちなもんじゃない。この次元? 時空? 総てにアクセス可能だし、その総ての事象を記憶しているあの有名な『アカシックレコード』……所謂、なんでもかんでもを記録してる媒体すら編集が可能なのだからびっくりよ!

 でもって、いじった後に他の『神々神(デウス・イクシード)』達に怒られるんじゃないかって不安になるのがアリサさんクオリティー。だけど、ミーナが言うにはミーナと私以外にはおらのだそうだ。


─み~としてはほっといてもよかったんだけどにゃぁ~? な~んか、しもべのとこでぬくぬくしてたら、あのロアとか言う小者が、しもべが住んでた世界に接触してきたのにゃ─


 ほうほう、私が前世でミーナと過ごしてた時にか。確かあの世界は『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』が管理……いや、監視してて、あえて魔力もなく、神々も一切の関与をしないっていう、テストケースの世界だってのを、以前にルヴィアスが口滑らせてティリアに睨まれてたっけ。

 ミーナの話だと『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』はあくまでも観測システムに過ぎず、その世界の住人達に何かをしていたりはしていないそうだ。

 そこからミーナはロアのやらかす影響が私にまで及ぶと……ふむ、ここでいう影響ってのは巡りめぐって私がティリアに選ばれるってことのようだ。それを知って『ユーニサリア』にまで着いてきてくれたのだと……うぅ~ありがとね! ミーにゃん大好き!


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【頑張れみんな♪】~とりあえず『魔装戦士』は止めとくね~

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 みんな、は……無事、かなぁ? ブレイド……どこにいるのかな……?

 ……アリサ様も、ご無事かな? 全部終わったら……一日占有権で……独り占め、するもん。


「おぉう!? ミストちゃん?」


 おぉーい!? なんじゃありゃ! 『ユーニサリア』で私達が乗り込んだ神殿がドッガンされたじゃねぇのよ!? なにしてくれてんだあの拗らせボッチ神は!?

 突如頭に響いてきたミストちゃんの声に、私は『ユーニサリア』の状況をアリサさんアイで確認する。そしたらなんとまぁ、あの浮上した神殿が大爆発して、みんな吹っ飛んだじゃないの! 急いでみんなの無事を確認したけど、ミストちゃんが気を失っちゃって、真っ逆さまに海に落ちようとしてる!


─ほらあの娘もしもべとの約束を待っているみたいにゃ?─

「そうね、みんな頑張ってる。もうちょいしたら行くからね♪ だから、頑張ろう? ミストちゃん」


 取り敢えず優しく声かけて、目を覚ましてもらう。後はガッシュくんもいるし、ミストちゃんは強い子だからきっと大丈夫!

 ふふ、ミーナの言う通り、ミストちゃんには私を一日独占できる権利の約束があるからね♪ その時はいっぱい甘やかすんだ!


「おぉ、よかった! ちゃんと目を覚まして窮地を脱せたね♪」

─にゃん♪ あの娘もみ~を撫でるの上手だから、無事でなによりにゃ─


 そうだね♪ ミストちゃんはその優しい性格故か、ミーナ含め動物達に好かれているのだ。なでなでも上手だし、ブラッシングも丁寧、遊びにも沢山付き合ってくれるし、なにより目線が近いっていうのも大きい理由なんだそうな。


─にゃぁぁ~ん。ほれほれ、しもべ。次はあのでっかい人形達だぞ~?─

「あいよ~任せてちょうだい! あ、ホイっとな!」


 これでよがんべ~? どうだ!


「あ、あるじ様! 消えたです! 『魔装戦士』達がアリア達の世界から!」

「おー、やったね! やっぱりあのおババの操ってたのと同じだったわ……これであのボッチ神の手駒を潰せたかな?」


 百八十三あるロアの創造した世界のいくつかに、予想されてた『魔装戦士』の『存在情報(アカウントデータ)』を発見していた私はミーナの促す声に応えて、それらを残すことなく凍結(フリーズ)させてやった! うっへっへ♪ ざまぁみろ~! やーいやーい♪ って、思いっきりロアに言ってやりたいけど。まぁ、もうちょい待とう。


『彼等が魔女様のお仲間達なのですね?』

『……強い生命の力に溢れている、人も世界も』

『みんな空飛んでる……でも魔女様~なんだか全員戸惑ってるみたいですよ?』


 世界すらも隔てて機能するほど強化された『監視カメラ(モニタリング)』を展開し、そのモニターに映し出される『ユーニサリア』の状況を観てるアリアと三兄妹。アリアが叫んだように、空を埋め尽くしていた『魔装戦士』達が綺麗さっぱりと姿を消し、私は上手いこと無力化させられたって喜んだんだけど、続く三人の声に、おやぁ? って思った。

 ヨミとノースは『ユーニサリア』の私の仲間達や、緑に溢れた大地を見ては、ほぅって感嘆のため息。一方、ステラは仲間達がみんな空飛んでることに驚いた後、その仲間達が戸惑ってるのを感じ取ったみたいだ。


「んぅ、きっと『魔装戦士』が突如として消えたのはロアの企みじゃないかって、思って警戒してる。です?」

「あっちゃぁ~そういうことか! そりゃ戦ってた相手がいきなり消えたら警戒するわ。しゃあない、ちょっと声かけておきましょうかね?」


 こりゃ私の配慮が足りてなかったね。取り敢えず大丈夫って事をみんなに伝えなきゃいけないので……誰がいいべ? ティリアと~ユニと~アリスに伝えとくか? 全員でもいいんだけど、ロアには私が無事でいるってことをギリギリまで隠しておきたいしね~♪ それに、こっちとしても、もうちょっとやりたいことあるし。


「もう少し頑張ってティリア」

─うなぁ~ん─

「ユニ~アリス~? 『魔装戦士』が消えたのは私の手によるものだから安心していいってみんなに教えてあげて~?」

─う~にゃにゃ~ん♪─


 ……いや、いいんだけどさ。ミーナちゃんや、あんた結構なおしゃべりさんだったのね?


─しもべが頑なにみ~の声を聞こうとしなかったのがいけないにゃ~折角『万能言語』までもらってたのににゃぁ~? どーいう了見だにゃ?─

「え~? だってあんたにもし、「キライ!」なんて言われたら私、立ち直れないもん!」

─にゃぁ~そんな事思ってたらとっとと逃げ出してたのにゃ。しもべは心配性がすぎるのにゃ─


 あはは、そりゃどうも。知らぬがなんたら~じゃないけどさ、まぁ、臆病者な自分がおったんですよ?

 それはさておき、どうやら『ユーニサリア』の面々にも『魔装戦士』が消えた事に、安心が拡がったようだけど……


『うん? 魔女様、あの大きな龍と狼が動きませんが……どうされたんでしょうか?』


 ヨミがひとつのモニターを指差し問うてきた。映っているのはシドウとリンだ。『ルーネ・フォレスト』の上空で二頭共にスヤァしちゃってる。空飛んだまま寝るとか器用だわね? フォレアルーネと、レウィリリーネが付き添ってるけど、これは……


『おい! こっちの狐耳と尻尾もだ!』


 ノースが叫ぶ先。『エルハダージャ』を映すモニターには、先の二頭と同じように意識を失っている珠実の姿があった。


「これって……んん。進化の眠りじゃないですか、あるじ様?」

「おぉ……なんちゅうタイミングよ?」


────────────────────────────

【狼で神様と言えば!】~やっぱアレでしょー!?~

────────────────────────────


 確かに、自分達ももうじき進化できるだろう。みたいな事をシドウからは聞いてたけどさ。こんなタイミングで来てしまうとは思いもよらんかったわ。

 珠実は『エルハダージャ』にいるからまだ大丈夫だろうけど、シドウとリンは今まさにディードバウアーが復活するだろう、爆心地にいるんだ。このままだといい的になってしまう。


(……逸るこの思いを抑え、皆を信じ、完璧に進化を果たそうぞ)


 ん? 今、頭に過った『想い』は珠実かな? ふむん。焦る気持ちはみんな一緒だね。


─にゃぁぁ~ん♪─

「そうそう♪ 焦っちゃ駄目よ珠実?」


 ミーナと私。つい口を揃えて珠実に同意しちゃった。しっかり届いたかな?

 でもこういう応援もありだよね? どれ、それならシドウとリンにも声をかけてあげようかな!


「ほれほれ! しっかりしなさいよじいちゃん!? みんなあんたを頼りにしてんのよ? まだまだポコやユニと遊びたいでしょぉ~?」

「……あるじ様、ポコはともかく、ユニは嫌がると思う、ですよ?」


 こらこら、そういうこと言うんじゃないのアリアちゃんや! あのおじじは弁えさえすればまともなじいちゃんなんだからね?


─業の深い龍だにゃ……─


 ミーナまで、いや、うん……確かに可愛い幼女に異常な反応見せる変態(ロリコン)だけどさぁ……あー、駄目だ、あんまり擁護できる言葉が出てこないや、まぁ。シドウじゃしょうがないかな?


(これっ! この性悪魔女め! もうちょっと頑張って儂を立てんかい!? 儂はこれからかっちょよく進化して、大活躍するんじゃからな!?)


 おぉーおぉー!? なによこのジジイ、ちゃんと聞こえてるし応えてんじゃん? これならな心配いらないかな? きっとしっかりと進化を果たしてみんなの力になってくれるだろう。

 それより問題そうなのがリンだ。なんだか落ち着かない様子だけど、大丈夫だべか?


(……見えぬ。見えぬのだ)

「あれま? なじょしたのよリン? 「見えない」って一体なんぞ? アリサさんに話してみ~?」


 リンの様子を観察するに、表面上はまるくなって眠っている狼だけれど、時々苦悩しているかのように、ウゥ~って唸ったり、首を振ったりしてて落ち着かない。悪い夢に魘されているかのようだ。


(はっ!? あ、アリサ様か!! 無事であったのだな!?

 ……済まぬ、無様を晒してしまった。どうにも此度の進化、今までと違い、進化するべき先が見えぬ)


 ほほう~どうやら話を聞くに。個人差や種族差ってのはあるんだろうけど、進化には明確な進化後の姿ってのが、今までだと明示されていたんだそうだ。脳裏に写るそのヴィジョンを見て、自分が変わる姿を想い、成し遂げる。


「今回はそのヴィジョンが浮かび上がらない……?」

─つまり、どう進化したらいいかわからない。ということだにゃ─


 なんだべ? 例えるならそのヴィジョンってのは設計図かなんかなのかな? 組み立て説明書のないプラモデルなんてそりゃ作れる気がしないってもんだし。どれ? んじゃ、ちょいとばっかしアリサさんがお手伝いしましょうかね♪


─にゃぁ、リンは『神狼フェンリル』っていう、最上位の存在なのにゃ。最上位だから、更にその先が見えないでいるんだにゃ? しもべ。何かその最上位『神狼フェンリル』を超える存在があるかにゃ?─


 ほむむん。そりゃあるでしょ? 要はイメージなんだろうし、最上位だのなんだの枠を決め付けないで、もっとシンプルに自分がパワーアップするイメージを描けばいいんでないの?


「……『神狼』ってさ、神様の狼って捉える事ができるじゃん? それって、「神様の下」って意味にもならんかねリンちゃんや?」

(……神の下。うむ、確かにそうやもしれぬ)

「だったら、イメージは簡単。あんたが神様になっちゃえばいいよ♪ それもただの神様なんかじゃなくて~もっとでっかい存在」


 イメージするのは神々しいまでの神明。それを纏う大いなる神の姿。太陽のごとき大いなる光を背に、その白き姿で野を駆る威光。その咆哮は暗雲を吹き飛ばし、暗き闇夜すらあまねく照らす!

 さあ、受け取ってちょうだい! これが私の描くリンの新たな可能性!


(おお……見えた! 闇に閉ざされていた余の進化の先が! アリサ様、感謝致します!

 我等一同、貴女様のお帰りを心待にしております……それまで、この力にてこの世界を守り通して見せましょう!)

「うん。お願いね。リン! 私達はもう少しこっちでやることあるから、それまで、頑張って!」

(委細承知!!)


 よし。これでリンは心配いらないだろう、さて! それじゃロアの力の源泉ともいうべき百八十三の世界をなんとかしようじゃないの。

 今まで散々好き勝手やらかしてくれちゃって……見てなさいよ? その報いを受けさせてやるんだからね!


「ふっへっへ、覚悟しなさいよロア? ボッコボコにしてやるんだから!」

─うなぁ~ん─

「はぅぅ、あるじ様の逆鱗に触れたロア……憐れな未来しか思い浮かびません。です……」

『……ちょっと怖いです魔女様~!』

『まぁ、これだけの事を仕出かしたんだ、そのロアとかいう奴には同情する気にもなれん……』

『ええ、ノースの言う通りですね。無惨にも散っていった私達の仲間を思えば、当然の報いでしょう』


 この世界だけじゃない。他の世界すらも破滅に追いやって、しかもそれが自己満足のためとかふざけた理由で行われた事だ。断罪されて然るべき! その裁き、私が下す!


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【お団子捏ねて】~『第二のユーニサリア』~

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 さて、それではロアの創造した百八十三の世界を改めて視てみる事にしよう。

 あの拗らせボッチはこの百八十三の世界から魔力を吸い上げ、己の力に変換させている事は明白である。しかし、それは創造神をロアから私に書き換えたことで防げた。


「だけど未だに魔力の流入が止まってないとこをみるに、そういう風に最初から創造したのね? 他には全く与えようとしてない……」


 あのアホは何かを育もうって行為を全くしない。在るもの総ては自分の物。とでも言いたいのか? 自己中を極めに極めた、マジに害悪。故になんの遠慮もいらんのよね~?


「さて、どうしたらいいと思う、みんな?」

『百八十三もあるのか?』

『管理が大変そう……神様ならそんなでもないのかな?』

『そもそも管理する気などなかったのでしょう?』


 話を聞いたノースがその数の多さに驚き、ステラはそんな数の世界を管理できるのかって首を傾げているが、続くヨミの言葉にあーって納得してるみたい。


「確かに、搾取するだけの世界をわざわざ管理なんてしないかも……です?」

─にゃん。ひとつひとつを再生させるのは流石に手間がかかるにゃ─


 そして、アリアとミーナ。うむ。きっとロアにとっては、今私達がいるこの世界も含めて、全部の世界が使い捨てなんだろうね。まったく……カイロじゃあるまいに!


「……他は『世界樹(ユグドラシル)』も死んじゃってるみたいだし、この世界に統合してから再生させるか。んでさ、あんた達三人でその統合・再生した新しい世界を見守ってあげてくれないかな?」


えぇーっ!!?


 いやいや、そんなに驚かないでよ? 逆にこっちがびっくりしちゃったわ。


『そ、そんなこと言われてもだな? 俺達は既に終わった命なんだぞ?』

『そうですよ魔女様、確かに私達、この世界の救世を願ってこの生命の大樹を目指してましたけど……』


 慌てるノースとステラだけど、う~む、いきなりそんなこと言われても戸惑っちゃうか……だけど、私も早いとこ『ユーニサリア』に帰還しなきゃいけないのだ。世界を隔てると、流石に彼等の『想い』も霧散してしまう可能性が出て来ちゃうから、今、このときに対応しておきたい。


『あの、具体的にどうすればいいのでしょうか? 見守ると一言で仰られても……』

「ん~まぁ、『ユーニサリア』を参考にするなら、基本なんもしなくていいと思うよ? 産まれてくる命を祝福して、世界が壊れないように調和して、潰える命はしっかり輪廻させてあげて~って感じ?」


 この三人には『ユーニサリア』での、アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネの三人と同じような役割を担ってもらえればそれでいいと思う。


─それでいいと思うにゃ、基本生命の営みには手を出さず、でも世界を壊そうとするなら口出しする─

「そうそう、『第二のユーニサリア』みたいな感じでやっていこうよ♪ 私もあっちが落ち着いたら、仲間達連れて様子を見に来るからさ!」


『……そ、そういう、事なら? いや、いいの……か?』

『う、う~ん。取り敢えずやってみよっか?』

『はい! 私頑張りますね!』


 よしよし。三人共に納得してくれたみたいだね! んじゃ早速やりましょうか。まずは私達を保護する空間を作り出して。移動するでしょ~?

 でもって、ブゥゥンとモニターを出して、その中に手をこう突っ込んでっと、百八十三ある世界を鷲掴みして~お団子丸めるようにこう捏ねて捏ねて……あ~みたらし団子食べたくなってきたねぇ♪


「あわわわっ!? あるじ様、なんですこの空間~?」

『『『な、何が起きてるんだ!?』のぉーっ!』』


 あー、ハイハイ。直ぐ済むからそう騒がないでちょーよ? コネコネ~はい! 出来上がり♪

 なにもない亜空間に突然移動したことで慌て出すアリアと三姉弟だ。ごめんごめん、説明してなかったわね? 一言謝ってから、かれこれこーいうわけだと改めて説明。


さっぱりわかりません!


 おう……そりゃ困ったね。みんなして口揃えて同じこと言うんだもん……こっちとしても説明がちょいと難しい。なので目に映る現実を見て納得してちょうーだいね?


「わぁぁぁーっ!? あるじ様あるじ様! すごい、すごい! です!!」

『おぉぉ……これが! これが、俺達の世界なのか!?』

『あぁぁ、なんて……なんて美しい大地! なんて清々しい空気!!』

『お日様の光……初めて見た……うぅ、なんか……感動で涙が……』


 はい! 出来たぞい『第二のユーニサリア』! どーよ? 結構な出来栄えでしょー? なんたって向こうの『』聖域を再生させた時のうん百倍の力でペカーってしたからね!

 まずは、朽ちていた『世界樹(ユグドラシル)』を完全復活させて、『ユーニサリア』と同じく、世界各所に『龍脈の源泉(レイライン)』を走らせ、創造神に流れてた魔力を世界中に巡らせた。

 そして、濃すぎる魔素に毒されていた大地を全部浄化させ、僅かに残ってた生命を活性化。見る間に緑が溢れる大地へと生まれ変わった、当然水源も浄化したので、その水質はとても上等なものだ。

 これだけ環境が整えば、近いうちに生物達も生まれてくるだろう。


─始まりは猫にするようににゃ~ん─

「それも面白そうね♪ 猫は神の遣いって事にしよっか?」

「あはは♪ それは素敵です! きっと楽しい世界になる、です!」


 うむうむ。実際に私が猫のミーナのおかげでこんなとんでもない力を手にしたんだし、この『第二のユーニサリア』では猫を崇め称える世界にだね?

 ……いや、冗談だよ? だからヨミ、ステラ、ノース? そんな「えぇ~?」って顔しないように。

アリサ「あらぁーっ!?(゜▽゜*) よく見るとジュンはもう進化を果たしているのね?(・о・)」

アリア「だいぶ小さくなっています、です(⌒‐⌒)」

ミーナ─でも漲る力は今までと比じゃないのにゃ~♪(=^ェ^=) 『天熊』から『熊神』に昇華した証拠だにゃ(゜ー゜*)─

ノース『あんた達は凄い世界の住人なんだな?( ; ゜Д゜)』

ヨミ『あの龍といい、狼といい、狐の女性といい((゜□゜;))』

ステラ『うむむーっ!(`ε´ ) あの龍と狐は一体どんな姿に進化するんだろう?o(*゜∀゜*)o』

アリサ「予想して遊んで見る?(*´艸`*)」

アリア「それは面白いのです(^ー^) アリアとしては、シドウのおじじは若返ってたりして!(*`艸´) 珠実ちゃんも今より若くなるのです!(* ̄∇ ̄)ノ」

ミーナ─あの龍は確かにそうなるかもにゃ(_ _) 狐はどうかにゃ~?(;´д`) み~の予想では尻尾が減ると思うにゃ(=゜ω゜=)─

アリサ「ウッソ!?Σ( ̄□ ̄;) 珠実のもふもふが損なわれちゃうの!?(´゜ω゜`)」

ステラ『あぁ~(・o・) このふっさふさの尻尾は見ただけで凄いですものね♪(*´▽`*)』

ヨミ『魔女様はこういうふわふわしたのがお好きなのですね?(*≧ω≦)』

ノース『あのもふもふに包まれて寝れたら( ・`ω・´) ……いい夢がみれそうだな♪ヽ( ゜∀゜)ノ』

アリア「んぅ( ´ー`) 実際に気持ちいい、です♪(´▽`*)」

アリサ「珠実のもふもふが損なわれませんよーに!(´。・д人)゛」

ミーナ─ホレ、しもべよ(ФωФ) 遊んでばかりいないで、さっさとこの三人をどうにかしてやるのにゃ(*゜∀゜)=3─

アリア「です(゜-゜) そして『ユーニサリア』を救いに行きましょうヽ(*>∇<)ノ」

アリサ「あ~(;´∀`) ハイハイ、そうでしたそうでした( ̄▽ ̄;) んじゃ三人のご遺体、いじらせてもらうね~?(*・∀・*)ノ」

ヨミ&ステラ『はーい♪( ・∇・)』

ノース『お、お手柔らかに頼む!(; ・`ω・´)』

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