152話 『神域』で見守る勇者達
────────────────────────────
【ユニとミーナ】~『神域』で~《ユニview》
────────────────────────────
溢れる……アリサおねぇちゃんから送られてくる大きな力が。
感じる……アリサおねぇちゃんの『想い』……
《すごい神気……ユニちゃん大丈夫?》
《この短時間に一体何があったんだ……?》
ここは『世界樹』のね~『神域』ってとこだよぉ~♪
ユニはね、ロアに異世界に飛ばされちゃったアリサおねぇちゃんの居場所を探そうとして、ユニ達の世界、『ユーニサリア』から『龍脈の源泉』を通して送られる、いっぱいの魔力を分けてもらってね~?
えっと……そのためにユニはちょっとの間だけ、大人の姿になったりして。その姿見たティリア様達をビックリさせちゃったりもしたんだけど。うん、そこはいいや~♪ 一時的にユニは大人の姿になってるってだけでいいね~♪
それでね~? ユニ、いっぱいおねぇちゃんを探したんだよ~? ティリア様が教えてくれたロアの管理してるって言う世界の座標をもー片っ端から~!
でもでも~その座標上にある世界はどこも『世界樹』が元気なかったり……その、ね? 多分ロアに壊されちゃったりしてて……上手に探せなかったんだよ。
あうぅぅ~困ったよぉぉ~って、ユニ泣きそうになっちゃった……「絶対助ける!」なんてみんなに断言しておいて、うぅ、情けない!
でも、そんな風に落ち込んでるユニに、ミーナちゃんが「にゃぁん」って鳴いたの。そうしたら、あら不思議! ひとつの世界の座標がぴかーんって光出したんだよ~!
もしかしてって思ってその世界を探ってみたら、いたんだ! アリサおねぇちゃんが! 『世界樹』も大分弱まっているけど、しっかり生きてた!
急いでユニとアリサおねぇちゃんがいる世界の『世界樹』との経路……魔力による道みたいな? のを繋いで、あっちの『世界樹』にこっちの魔力を供給したよ!
その時にあっちでもアリサおねぇちゃんが『世界樹』に凄い神気をぶつけたみたいで、う~ん……なんだろ? 多分ユニの時みたいな呪いを受けちゃってたんだと思う。それを一気に吹き飛ばしたんだね!
そのおかげもあって、こっちからの魔力の通りもスムーズになったんだ! 今がちゃーんす! って思ったユニは魔力と一緒にみんなのアリサおねぇちゃんを想う気持ちを届ける! その時にミーナちゃんがね「にゃあぁ~にゃん。うなぁ~ん」って、なんだかアリサおねぇちゃんとお話したみたいだったよ?
そして今……サーニャお姉ちゃんとラインハルトお兄ちゃんが心配そうにユニを見てるんだけど。
「ユニ!? うおぉ!? どうなってんだこりゃ!?」
「ユニちゃんですよね? えぇ~とっても美人さんになっちゃってます!」
ゼルワお兄ちゃんとサーサお姉ちゃんだ。『龍脈の源泉』を通して、あの『グレブヒュ火山』での『武神』との戦いはユニも観てたよ! 凄くハラハラしたけどお兄ちゃん達は打ち勝ったんだ。
「二人ともお帰りなさい! あのね? アリサおねぇちゃんがロアに異界に飛ばされちゃったって話は聞いてるでしょ? ユニはそんなおねぇちゃんを探すために『龍脈の源泉』からの魔力供給を、しっかり受ける事ができる、この姿になってるの!」
「おぉっ! そりゃすげぇや! それでユニちゃんや、アリサ様の居場所ってのは?」
うん。バッチリだよゼルワお兄ちゃん! って、教えてあげると、二人ともわー! って喜んでくれた。
「だけど……ユニちゃん? なんだかユニちゃんから凄い力を感じるんですけど、一体何があったの?」
「う~ん……それが、ユニにもはっきりとはわかんないんだけど、多分ね~これ……アリサおねぇちゃんの力のお裾分けだと思うよ?」
ミーナちゃんがアリサおねぇちゃんがいる世界……うん。そこの大きくぺか~って光ってる星ね? そこに向かってにゃんにゃぁ~んっておしゃべりしたらね~? なんかこう、ユニの中からぶわーっって神気が溢れて来たんだよぉ~?
「この『神域』は辺り一面……足元も星空だけど、そうですか。この各々の星総てがひとつひとつの世界なんですね?」
「で、この強く光ってる星。この世界にアリサ様がいるのか……『世界樹』が『門』の役割をしてるってのは、こう言う意味もあるんだな?」
《二人とも理解が早いな? 俺はそんな直ぐにはわからなかったぞ?
どうもあの妹弟子が何か大きな力に覚醒したみたいでな、『聖霊』のユニはその影響を強く受けているんだろう》
「うん。アーグラスのお兄ちゃんが言った通りみたい。なんかね~? アリサおねぇちゃんにぎゅって抱きしめられてるような、そんなあったかくて、やわらかくて、優しい感じがするの♪
えへへ、まだちょっと制御がおぼつかなくて、馴染ませるためにじっとしてるんだぁ~♪」
サーサお姉ちゃんとゼルワお兄ちゃんがこの『神域』に浮かぶ、一際明るく光る星を見上げて「ほへ~ん」「なるほど~」ってうんうんしてる。ユニがせつめーしなくても理解しちゃうから凄いや。
「にゃぁん♪」
「うん、そうだねミーナちゃん♪ アリサおねぇちゃんはもう心配いらないよ~もうすぐ帰ってくるからね!
それよりサーサお姉ちゃん、大丈夫? 大分無理したんだね……見た目じゃわかんないけど、凄く魔力が乱れてるみたい」
「あはは……実はそうなの。ティリア様にも休みなさいって言われちゃって」
「流石の『神々の雫』でも焼きついちまった脳神経までは治せねぇって話でなぁ~」
この溢れる力から、もうアリサおねぇちゃんは心配いらないって確信してる。きっと向こうの世界で色々とやってから戻って来るんだと思う。それより心配なのはサーサお姉ちゃんの状態だね。『武神』との戦いでかなりの無茶をしたんだろう。サーサお姉ちゃんに流れる魔力は大分乱れてしまっている。そのせいか、まともに歩くのもつらそうで、今もゼルワお兄ちゃんの肩を借りている状態だ。
「うんうん。この『神域』でならゆっくりだけどちゃんと治るよ~♪ アーグラスのお兄ちゃん達とお話しながらのんびりしてってね!」
にこーって二人に笑顔を見せると、「ありがとう」ってお礼言われちゃった。えへへ、どういたしまして! ん~でも、ユニがこのアリサおねぇちゃんからもらってる力を制御できるようになれば、直ぐ治してあげられるかな? よーし、頑張って制御しよう!
────────────────────────────
【ジドルの帰還】~揃う前世達~《ゼルワview》
────────────────────────────
「ありがとなユニちゃん! おぉ、ラインハルトにサーニャ、アーグラス、ナーゼ!」
「お待たせしました。『ヴァンデルホン』持って来ましたよ?」
いやいや、驚いたぜ! ティリア様に言われて『世界樹』の中に入ったら、早速『神域』に繋がってよ。そこにいたユニちゃんが大人の姿になってんだもんなぁ~しかもアリサ様みてぇに見事なスタイルのちょー美人になってんの! しかも、そのくせ、口調は幼いまんまだから、もう可愛いのなんの! 俺にサーサっていう恋人いなかったら、ヤバかったな……コロっとほだされちまうとこだったぜ!
ま、そんなユニちゃんにも驚いたが、もっと驚いたのはユニちゃんが纏う神気だ。
話を聞けば、どうもアリサ様がすげぇ力に目覚めた影響を、アリサ様の『聖霊』であるユニちゃんも受けてるってことらしい。
《ああ、ありがとうゼルワ。サーサ。これで俺達五人、ようやく揃った……》
《応。随分と久しいのぅ皆! 元気しとったか?》
そうなりゃアリサ様はもう自力でもこっちの世界に帰ってこれるって事で、俺とサーサも一安心だぜ。
後はサーサの回復をこの『神域』でゆっくり待つだけだが、忘れちゃいけねぇのが、俺達の前世の姿である、『想いの欠片』達だ。
アーグラス、ナーゼ、サーニャ、ラインハルト、そしてジドル。かつての勇者パーティーが長い年月の果て、ここにようやく再会した。
《ドガと共にあのリドグリフと決着を着けて、儂はスッキリしたぞい!》
《バカ野郎が、何一人でスッキリしてやがんだよこのジジイが!》
《そーよ! あんたが抜けた後大変だったんだからね~?》
再会を喜ぶジドル、ラインハルト、ナーゼ。ワハハって笑うジドルに二人が怒ってるようにも見えるが、その表情はめっちゃ笑顔だからな。やっぱ嬉しいんだろうよ。
《サーサも色々と迷惑かけちゃってごめんね? 頑張ってくれて本当にありがとう》
《アイギス達にも礼を言いたいが……まだやることがあるんだろう?》
「気にしないで下さいサーニャ。これは私が未熟だったせいですからね」
「ああ、リドグリフの野郎と戦うって決めたのは俺達の意志だからな!
ま、後はアイギス達と女神様達、多くの仲間達がやってくれるぜ。だから安心してくれ!」
きっかけは確かに俺達の前世であるこいつらの『想い』が転生した俺達の中に残ってたってことかもしれねぇけどな。それでも戦うって決めたのは、紛れもない俺達自身の意志だ。それに、謝られたり、礼を言われたりしても困っちまうぜ!
「アーグラスのお兄ちゃん達はど~する~? もう還っちゃう?」
《……俺は、できればアリサ達の、この戦いの結末を見届けたい》
《だなぁ~折角こうして揃ったんだしな、ちゃんと見届けてよ、皆に挨拶して……そっからでも遅くねぇだろう?》
ユニちゃんの問い掛けにアーグラスとラインハルトが答える。既に転生体である俺達『白銀』がいる以上、ここに残ってるコイツらは、再会っていう心残りが成就した以上、後は天に還るだけなんだ。
「うん♪ それがいいよ~戻ってきた『神器』とね~? ユニのこの力が馴染んでくれば~アーグラスのお兄ちゃん達ももうちょっといられるはずだから!」
《おぉ~♪ ユニちゃん凄い!》《ありがとうユニちゃん!》
《うむうむ! 儂も感謝するぞい! どれ、ここはひとつ再会を祝して乾杯といこうではないか! ホレ、ゼルワにサーサよ! 酒を出さんか!》
はぁーっ!? なに言い出すんだジドルの野郎! ったく!
俺達があの火山での戦いの後、回収しておいた『神器』がアーグラス達のとこにひとりでに帰っていき、再び彼等の存在を守るよう発光を始めた。多分、勇者パーティーの「もうちょっと残って、見ていたい」ってな、願いを叶えようってしてるんだろうな? ユニちゃんも「ぱわーあっぷ」してるっていうし、どうやら、もう少しコイツらと話していられるみてぇだ。
「まったく、ドワーフは……この場合お供え物でいいんですかね?」
「まぁ、それでいいんじゃね? ちょっと待ってろよ……確かまだ、預かってた『魔法の鞄』の中に……」
正直、嬉しいさ。俺もサーサもコイツらとこのまま、「はい、さようなら~」じゃ寂しいし、味気ねぇって思うし。どうせなら全部終わってから俺達全員で見送ってやりてぇとも思うぜ? だけど、それを待たずにジドルの野郎、早速酒だ酒だと……ったく! ホントにしょうがねぇなドワーフ!
「おぉ、あったあった! ドガがこっそりバッグに隠してた清酒! へへ♪ 盗んでおいてよかったぜ!」
「ゼルワったら……手癖悪いです。でも、ドガも戦いに赴くのにお酒を忍ばせておくなんて……」
《あっはっは! どっちもどっちって感じねぇ~♪》
《うふふ♪ こうして私達のところに渡って来たんですから万事オッケー! ということで♪》
《わはは! だなぁ~♪ おいゼルワ。つまみは~? お前らばっか美味いもん食ってずりぃぜ?》
うしし♪ 「ほらよ!」って勇者パーティー達に酒を見せてやると、めっちゃ喜ぶナーゼとサーニャにラインハルト。サーサは俺の手癖の悪さとドガの酒に対する姿勢に呆れてる様子だけど、いいじゃねぇの? こうしてコイツらも喜んでんだしよ!
「はいはい。ちょっとしたおつまみなら私がまだ持ってますよ」
「あ、ユニもね~ポーチにいっぱいお弁当入ってるよ~♪ みんなで食べようね!」
《おぉ! これは有り難いな! 俺達の時代にはろくな食料がなかったから……アイギスの奴が自慢してて、ずっと食ってみたいって思っていたんだ!》
《わっはっは! 儂もじゃアーグラス! ドガの奴めいつも美味そうに飲みおってからに!》
ははは! そうかそうか! いやぁ~そりゃ悪いことしたな? アリサ様が教えて広めようとしてる料理はマジにどれも美味ぇからな! 食ってみたくなるって気持ちはよぉぉーっくわかるぜ!
「あはは♪ じゃあね、みんなの頑張りを見ながら、飲んで食べて~沢山応援しようね!」
「にゃぁ~ん♪」《《わーい!》》
嬉しそうに笑顔見せて、ユニちゃんがばんざーいってすりゃ、この『神域』の星空に沢山のモニターが現れて、外の様子を映し出したぜ。ははは、ミーナも皆も嬉しそうだ。よーし、んじゃ、信じた仲間達を精一杯応援するとしようじゃねぇの!
────────────────────────────
【懐かしい顔触れ】~現世に疎い俺達~《アーグラスview》
────────────────────────────
『シドウ!? リン!? ちょっ! ウソでしょ!? どうしちゃったの!?』
『うぐぐ……なんたる事じゃ、よりによってこの時に!?』
『うぐっ! す、済まぬ女神達……これは、進化の時……抗えぬ眠気……が』
おいおいおい!? 大変じゃないか! ユニの映し出すモニターのひとつ。かつての『ルーネ・フォレスト』を映し出すそれを見ていた俺は、食事の手を止めて思わず見入ってしまう。
フォレアルーネが叫ぶのは『黄龍』『神狼』に対して。なんとその二頭は、途端動かなくなり、どうしたのかと問えば、進化の眠りにつこうとしているというではないか!
《マジか!? そりゃヤベェぞ!》
《むぅ! この状態でディードバウアーが復活したら、厳しい戦いになるぞい!》
ラインハルトとジドルが叫ぶ。ああ、その通りだ! ディードバウアーは暴れ狂う獣。掟破りの罰で弱体化していたとは言え、正直当時の俺達でも相当手を焼いた相手だ! 勝てたのが不思議なくらいの強敵であり、難敵でもあった。それが今回は本気……妹弟子の造り上げた『守護者』達がいるとはいえ、強大な戦力である『黄龍』と『神狼』が外れるのは痛い!
「魔素霧が酷くてよく見えねぇな……くそ! 他のとこから応援呼ぼうにも『魔装戦士』共が暴れてやがるし!」
「大丈夫です! きっとフィーナ様やアルティレーネ様達が動きます!」
《ゼルワくん~? 間違えても「俺が行く!」なんて言っちゃダメよ~?》
《そうです。仲間達を最後まで信じる。それも重要な事ですよ?》
世界各地の状況を映すモニターを交互に睨み、焦るゼルワにナーゼとサーニャが諭すように話しかける。ああ、気持ちは痛いほどわかるぞゼルワ。なんせ俺達もその思いを嫌と言うほどに味わって来たからな。だが、ここはサーサの言う通り、仲間達を信じて見守っていろ。
「うなぁ~ん。にゃぁ♪」
「うん、うんうん……大丈夫だって~なんかね、アリサおねぇちゃんが『魔装戦士』達の~『でーた』? みたいなの見付けて、ドッカーン! ってしたから、なんとかなる~って!」
はぁーっ!?
いやいや! ユニ。アリサがなんだって? 『魔装戦士』ので~……なんだって?
《おぉ! 見るんじゃ皆! 各地から『魔装戦士』共が消えおったぞ!?》
ユニとアリサの猫がなにやら会話? のような事をしてると思ったら、続くユニの言葉に俺達一同、目をまるくして驚いた! そしてジドルが叫び、皆を呼ぶ。彼が指差すそのモニターには今、ユニの言った言葉を裏付ける事態が起きていたのだ。
『これはどーしたのです? 朱美ちゃんわかりますか?』
『わかんないわ! ロアの策かしら? 油断しないで構えましょうポコ!』
ジドルの興した国『ジドランド』で、『朱雀』とかつて、俺が『レリルティーネ』に封印したポコが、その封印から解かれ、呪いも解呪されて、元気な姿を見せ。
『ロアの野郎、一体何を企んでいる? 水菜、シェラザード、油断するなよ! アイツはなに考えてるかよくわからない奴だからな!?』
『ふん! 油断なんてするものですか! ……でも、本当に妙ね、陣の気配も何もかも消えたわ』
『それも含めて、ロアの策略なんでしょうか?』
北方の『ルヴィアス魔導帝国』では俺達の旧き朋友。ルヴィアスと……ああ、二代目の『玄武』だな? 随分立派な姿になって……先代をゆうに超える力を身に付けているようだな。そして、シェラザード。あのヒステリックな魔王がこんなにも理知的な姿を見せるとは……
『おいおい! ヒャッハー!? こりゃどうなってんだ!?』
『落チ着ケヨー大地? コイツハキットマスターガヤッテクレタニ違イネーゼ? ホレ、召喚陣ノ術式モ綺麗サッパリ消エテンダロー?』
西の海上では『白虎』と……『ガルーダ』? いや、なんだあれ? まさか『魔装巨人』なのか? よくわからないが、戸惑う『白虎』と比べて状況を正確に把握しているようだ。
『珠実様ーっ! 爽矢さん! ヒヒイロさん! どーしたことか『魔装戦士』が消えましてよ!』
『ああ、何故かはわからぬが。珠実が進化を果たすまでの良い時間稼ぎとなろう』
『……これは、おそらく。あの『聖域の魔女』様が私達にお与え下さった好機でしょうね』
東の『エルハダージャ』と呼ばれる国では、『妖精女王』と『青龍』そして『九尾』の姿。むむ? いや、もう一人、誰だアイツは? どことなく俺に似てるような……ん? なに、あの国の大臣? ほぉ~そうなのか。
『これで、一先ずは安心かねぇ……』
『あんだババア? 元の姿に戻っちまったのかよ? ガハハ! もったいねぇな! ずっとあの若ぇ姿だったら俺の嫁にしてやれたぞ!?』
『かーっ! この小僧が馬鹿いってんじゃないよ!? 五百年経ってから出直しといで!』
ここは? うん……そうか『ゲキテウス』という国か。俺達の戦いの後に興った国なんだな? それであの婆さんが『魔女』で、ふむ、あの獅子の獣人が王なのか? おぉ、なるほど。
『油断めさるなエミル殿! 警戒を維持されよ!』
『了解ですビットさん! 皆さん厳重警戒です! 何処からまた『魔装戦士』が現れるかわかりません!』
『避難所の皆にも声かけを忘れるなよ!』『応! 最後まで気を抜くなよ皆!』
あれは! ビットじゃないか!? エミリオにガディも! それにアイツは確か財務大臣? 『セリアルティ』の重鎮達だ!
「アーグラスさっきからうるせぇって! ビットさん以外は皆子孫だぞ?」
《ゼルワお前! うるさいとはなんだ! って、ビット以外はってどういう事だ?》
「はいはい。じゃあその辺も説明しますから、座りましょうね?」
俺が懐かしい顔ぶれにうおおーっ! って叫んだら怒られた。でも、そうか。しっかりとルヴィアスが俺達との約束を守って、戦火から逃れた人々を助けてくれたんだな……ああ、天に還る前にアイツにも礼を言っておきたいな! だが、驚くことにサーサの話だと、ビットは当時のビット。当人だそうじゃないか! うむ。これはますます話をしたい!
『世界各国に通達! 『聖域』戦力は直ちに『ルーネ・フォレスト』に集結しなさい!』
サーサとゼルワに色々と話を聞かせてもらっていると、モニターからはそんなティリアの指示が飛んでいた。
────────────────────────────
【守り切ったのです!】~『ジドランド』~《ポコview》
────────────────────────────
なのです!?
ポコは今ドワーフさん達の国『ジドランド』にいるのです! そこで、ロアの『魔装戦士』っていう悪い人形を相手にドッカンドッカンしてたのです。『朱雀』の朱美ちゃんもそんなポコに「助かったわ!」って喜んでくれたのですよ♪
ドワーフさん達も王ちゃまと、大臣さん。ギドってじいちゃまの指示で大砲とか言う兵器とか、色々な武器を使って『魔装戦士』と応戦してたのです! でもでも、やっぱり大変だったみたいなのです。結構な怪我人が出ちゃってて、『賢者』って呼ばれてるおじいちゃんもてんやわんやだったのです!
「ホント、危なかったわ。ポコが応援に来てくれるのがもう少し遅かったら……」
「朱美ちゃん! 大丈夫なのです♪ 実際みんなまだまだ元気なのです!」
怪我して「イテテ」ってしてる人はいても、亡くなっちゃった人はいないのですよ!
その事を朱美ちゃんに伝えると、「そうね!」って、力強く頷いてくれたのです。うんうん、さぁ、元気に『ジドランド』を守って、みんなにもこの元気を分けてあげるのです!
おーっ! って朱美ちゃんと気合いを入れて、『魔装戦士』を睨み付けるポコ達だったのですけど……どうしたことでしょう! 突然その『魔装戦士』達が消えたのです!
何が起きたのかさっぱりわからないポコ達は、ロアの罠かもと、警戒してたのですよ! ですがそこに、ティリアから声がかかったのです!
「大丈夫なのです!?」
「ロアの仕掛けた罠って可能性はないの!? ティリア様!」
『安心しなさい! 今アリサ姉さんの声が聞こえたわ!』
なんですってーっ!? ママの声が!?
ティリアの答えにびっくりぎょーてんしたポコは、ちょっと詳しい話を聞いてみたのです!
レウィリちゃんとフォレアちゃんが向かった『ルーネ・フォレスト』、そこでなんとタイミング悪く、シドウのじいじとリンちゃんが、進化の眠りについてしまってさー大変!
もうすぐディードバウアーは復活してしまうし、浮上した神殿を爆破させたロアも、間違いなく『ルーネ・フォレスト』に現れ、エリクシルという吸血鬼の積年の負の感情を吸い上げた巨大な『黒水晶』で、復活するディードバウアーをより強化するだろう。
そんなピンチに世界各地の『魔装戦士』達が一斉に姿を消した! あまりのタイミングの良さに、ポコ達と同じく「ロアの罠ではないか?」と訝しんだティリアに、ママとミーナちゃんの声が届いたって言うんです!
『大丈夫でっすよぉ~♪ アリスにもマスターのお声が聞こえましたでっす!
皆さん遠慮せず『ルーネ・フォレスト』に向かって下さい!』
『この『聖域』には私とアリス、ジュン。そしてガウスとムラーヴェが残る!』
アリスちゃんはママの『聖霊』だけあって、ママの声が届くのですね? ちょっと羨ましいのです!
『聖域』にはティリア達と非戦闘員達が残って、ポコ達の帰る場所を守ってくれます!
「朱美ちゃん! 行きましょう!」
「ええ! あんた達、私達は最後の決戦に向かうわ! 後の事は、あんた達の意地と矜持で国を守りなさい!」
そうなればポコ達も迷うことはないのです! 朱美ちゃんと一緒に『ルーネ・フォレスト』に向かって、ディードバウアーとロアを叱ってあげるのですよ!
「おぉ! お任せ下され『朱雀』様、ポコ様! このパーシヴァル、全霊をもって、『ジドランド』を守りぬいて見せましょうぞぉー!」
「救援に感謝しますじゃ! なぁに! あの『魔装戦士』がいなくなれば、この難攻不落の『ジドランド』! 落とさせやしませんわい!」
「最後まであんたらに頼っちまって済まねぇな……武運。祈ってるぜ!」
朱美ちゃんも力強く頷いて、集まっている『ジドランド』の人達に言いました。『賢者』のおじいちゃん、王ちゃま、ギドおじいちゃんが「任せてくれ」って、ポコ達を送り出してくれるのがとっても嬉しいのです!
きっと……ううん。絶対にポコ達が勝って終わらせて来るのです! そうしたらこの『ジドランド』にまた遊びに来るのですよ!
「その時は盛大に歓迎しますぞ! 是非『聖域の魔女』様もご一緒にお越し下され!」
えへへ♪ ありがとなのです大臣さん。その時は絶対、パパとママ、そしてポコとアルナちゃんにお姉ちゃん達家族で一緒に来るのです!
────────────────────────────
【再会願う】~泡沫の夢~《珠実view》
────────────────────────────
……そうか、流石はアリサ様じゃ。ふふふ、こうなってくると異界に飛ばされた事も、総てアリサ様の計算の内であったのではないかと思ってしまうほどじゃな。
「ではヒヒイロとやら。くれぐれも珠実を頼むぞ?」
「ええ。お任せ下さい爽矢様。このヒヒイロ、身命を賭し、偉大な女王陛下をお守り致しましょう」
「うふふ♪ 珠実様は『四神』の皆様にとって『母』とも呼べるお方ですわ! しっかりとお守りなさって下さいませんと、『四神』の皆様がお怒りになられましてよ?」
「はっ! 心得ております『妖精女王』様!」
やれやれ、仰々しいのぅヒヒイロは。今少し肩の力を抜いてもよかろうて……しかし、この状況じゃ。無理もないかの?
主神のティリアにより、各地に救援として移動していた『聖域』の面々に『ルーネ・フォレスト』へと集結するようにとの命令が下った。間もなく復活するであろうディードバウアー。それを更に強化してくれん、とロアの奴めも現れるであろうその場こそ、決戦の地に他ならぬ。
一斉に姿を消した『魔装戦士』の残党がいやせぬかと、この国『エルハダージャ』の空をぐるり周り、戻って来た爽矢とティターニア。妾は未だ進化の途中故、動けぬ。そんな妾の守人をヒヒイロが買って出て、爽矢とティターニアがそれを認めたところじゃ。
この『エルハダージャ』王都の上空からでも、『ルーネ・フォレスト』方面からは酷く禍々しい気を感じられるくらいじゃ。爽矢、ティターニア……心して挑むのじゃぞ?
「うむ。油断なく」
「慢心せず。ですわね!」
その通りじゃ。ほんに……成長したのぅお主達。妾は嬉しく思うぞ?
この二人だけでなく、他の『四神』達も……冒険者達も、そして女神達も……此度の戦を向かえるにあたり、皆大きく成長しおった。皆がやや子……雛鳥とも言うべき彼方より見守って来た妾にとって、それはとても喜ばしくもあり、同時に一抹の寂しさも与えてくれる。
じゃが、感慨に耽るにはこの戦に勝利せねばなるまいて! もう一息じゃ。残す敵はディードバウアーとロアの二体のみぞ! 気張れ! 妾も進化を果たした暁には戦場へと駆け付ける!
「うふふ♪ 出番があればよろしいですけどね!」
「ふっ、そのくらいの意気込みで臨もう! では、往ってくるぞ!」
ドシュゥゥゥーッ!!
頼もしい。飛び立って往く二人のなんと頼もしいことか。そして、なんと心を奮わせることか!
あぁ~もどかしいのぅ~! 叶うならば直ぐにでも共に往き、共に戦場を駆けたいものなのじゃが!
「今暫くは堪えて下さいませ、陛下。折角の進化で御座いますれば。焦り不完全に終わっては忸怩たる心残りとなりましょう?」
むぅぅ~確かにの。進化失敗。不完全に終わっちゃいました~では、あまりに恥ずかしゅうて、皆に顔向けできぬわ。うむ。逸るこの思いを抑え、皆を信じ、完璧に進化を果たそうぞ。
─にゃぁぁ~ん♪─
─そうそう♪ 焦っちゃ駄目よ珠実?─
おぉぅ。今のはミーナとアリサ様じゃな!?
うむうむ♪ やはりご無事であるようじゃな! 妾達の『想い』はしっかりと届いたのじゃな?
「さて、陛下。一度城へ戻り、兵達に冒険者達や各機関から報告を受けると共に、現状を伝えましょう」
ふむ、そうじゃな。進化中とはいえ、報告を聞いたり、指示出しなんかは可能じゃて。引っ張って連れて行くのじゃ。
妾がヒヒイロの奴にそう、念を飛ばすと。ヒヒイロは「畏まりました」と、これまた堅苦しい。今はそちと妾の二人だけじゃて、込み入った話をしてもよいのじゃぞ?
「……お気付きになられましたか? ですが、今この場にいる私は、ひとつの泡沫の夢に過ぎません」
なんじゃ! 寂しい事を言うではないか? カカカ♪ 安心いたせ。お主の存在は既に確定しておるよ♪
「そこまでわかるのですか?」
うむ。妾がこう確信しとるんじゃ。アリサ様も既にお主達の事は理解されておるじゃろうよ。
「……そう、ですか。ふふ、やはり敵いませんね」
当然じゃ当然! なんせ妾達の守護神様じゃからのぅ~♪ それに妾も、まんざらではないのじゃぞ?
ん~? ちゃんとわかっておるかお主~? 他ならぬ妾がここまで言うておるその意味がのぅ?
「勿論です……ただ、暫し長い時間をお待たせしてしまうのが本当に申し訳なく思うのですが……」
ふはは♪ よいてよいて! その時間もまた変化の連続できっと楽しかろう。それにじゃ、こう見えて妾は辛抱強いんじゃぞ? 何年生きとると思うておるのじゃ?
と言うても具体的な数字を言いおったら怒るがのぅ? ふははは!
なんとも愉快な気持ちとなった妾は、ヒヒイロとのやり取り楽しむ。コヤツもココノエと同様、近い内に本来の己がおるべき場所へと帰って行くのじゃろう。正に今のこの瞬間は泡沫に消え行く儚き夢じゃ。
「……ならば、私達が再び出会うその日を守るため、今出来ることを」
そうじゃな……そのために、妾も全霊を尽くそう!
アーグラス「おぉ、これがアリサが作ったっていうベントーか!?(*´▽`*)」
ラインハルト「こりゃすげぇ!Σ(*゜Д゜*) 見た目も匂いも美味そうだ!(°▽°)」
サーニャ「それもありますけど……( ゜Å゜;) これ湯気出てる、もしかして『状態保存』の魔法?(゜ω゜;)」
ナーゼ「えぇ~?( ̄0 ̄;) あんな高度な魔法を食べ物にわざわざかける?( ´~`)」
ジドル「かぁーっ!(ノ≧▽≦)ノ この酒は美味いのぅ~♪∩(´∀`∩)」
ユニ「んっふっふ~♪(*≧∀≦) 喜んでくれたようでユニも嬉しいーっ!ヽ(*´∀`*)ノ」
ゼルワ「アリサ様だけじゃねぇんだぜ?( ´ー`) ユニちゃんもサーサも、俺だって簡単な料理なら作れるようになったんだ!v(o´ з`o)♪」
サーサ「そんなに驚くことですか(´・ω・`)? 貴方達って、ティリア様に召喚された、所謂『異世界人』なんでしょう?(´・ω・`; ) 元々いた世界では美味しい料理はなかったんですか?(・д・)ノ」
アーグラス「いやぁ~それがな……(´-ω-`)」
ジドル「儂等みーんなして、元いた世界の事はな~んも覚えとらんのじゃ(;´д`)」
ラインハルト「そうなんだよなぁ~σ(´・ε・`*) こういう料理もあったのかもしれねぇけどよ、覚えがねぇから新鮮だぜ!(^∇^)」
サーニャ「うん!(°▽°) 美味しい~♪(≧▽≦)」
ユニ「えへへ♪(*`艸´) いっぱいあるから沢山食べてね~?(ノ゜∀゜)ノ」
ミーナ「なぁ~ん♪(=^ェ^=)」
ナーゼ「まぁ、あんまり気にしたってしょうがないから、考えないようにしてるのよね(゜ー゜*) あ、ホントに美味しい!(・о・)」
ゼルワ「ふーん(゜.゜) もしかすっと女神様達の言ってる『洗濯機』にかけられて記憶とか洗われてんのかもな~?( ´・_ゝ・)」
サーサ「まぁ、転生体の私達がこうして存在してますから……そうなんでしょうね(´・∀・`)」
アーグラス「そう言うことだ、お前達もあんまり気にするな!(´▽`*) しかし、惜しむらくは生前にもこんな美味い飯を食えればなぁ~ってことか( ̄▽ ̄;)」
サーニャ「あはは♪(´▽`) そうですね!( *´艸`)」
ラインハルト「しっかしよぉ~ルヴィアスとか女神達とか(´・∀・`) 懐かしい面子が変わってねぇのはなんか嬉しいよな?(*´▽`*)」
ジドル「そうじゃなぁ~なんぞ感慨深いもんがあるぞい♪( ´ー`)」
ゼルワ「お?( ゜ー゜) その辺りの話も色々聞きてぇなぁ~♪(*^▽^*)」
ナーゼ「ふふ(*゜∀゜) いいわよ、聞かせてあげる♪(* ̄∇ ̄)ノ」
サーニャ「沢山お話しましょうね!ヽ( ・∀・)ノ」
ユニ「ふふふ♪(*´艸`*) こうしてみんなでわいわいおしゃべりするのって楽しいねミーナちゃん?ヽ(´▽` )」
ミーナ「にゃぁぁ~ん♪( ̄0 ̄)/」




