151話 魔女の呼び声
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【極大魔法】~吹き飛ぶみんな~《ミストview》
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「中々に愉快であった。褒美をとらす」
──ッ!!?
ピシィィーッ! いけない! この脳裏をよぎる鋭い感覚は……『死の悟り』!!
さんざん『無限円環』での訓練で味わってきたこの感覚、間違えようがありません!
「皆さん下がって! ありったけの防御を!!」
「シェリー、ミュンルーカ、ミスト! ガッシュを護れぇぇーっ!」
ネヴュラさんとバルドさんがほぼ同時に叫び、沢山の防壁と障壁を展開させ、指示を飛ばします! 私も急いでそれに続いて魔法を発動させます!
「受け取れ。吾輩の実験成果のひとつである」
中空に浮くロアが大きく右腕を掲げ、一瞬のうちに魔素が魔力に、そして神気へと昇華されて行き、ひとつの極光を作り出しました!
「ふ、ふざけんなよ……あれじゃまるでティリア様が放つ……」
「極大魔法……っ!」
ブレイドとデュアードさんがそのロアの魔法を見抜きました。そうです、あれは『無限円環』で訓練を始めた頃に、ティリア様から洗礼として放たれ、私達に絶望と死への恐怖を植え付けた極大魔法の光そのもの!!
「この『神殿』は中枢の『黒水晶』を覆う殻に過ぎぬ。そしてその『黒水晶』は永い時間。あのエリクシル共の昏き憎悪の念を、その内包した穢れにより、更に増幅させ……吸収してきたのだよ」
くぅぅっ!! これは、いけない! さっきからずっと『死の悟り』が警鐘を鳴らし続けています!
「無知蒙昧ないと小さき吸血鬼の王子……汝はよく役立った。おかげで十全な状態で『黒水晶』は完成したのだ。これならばあの『魂喰神』もより強き力を伴い、復活を果たすであろう」
あぁぁっ!! 来るっ! ロアが今まさにあの極光を私達に向けて……
「では、邪魔な殻と共に消滅せよ。この『技工神』による裁きの光である」
ゴォォォーッ!!
「うおぉぉーっ!! 全員神気収束!!」
「死ぬ気で防げぇぇーっ!」
「全神気解放ぉぉーっ! 全身全霊で守りぬくっ!!」
バルドさんが、セラさんが、デュアードさんが!! 私達全員が一丸となって持てる総ての魔力を神気に換えて、更に収束させて、絶対とも言える障壁を張り巡らせました!
ズッドオォォォォォォーンッッッ!!!
そして何もかもをその極光が包み込み、視界総てが白に染まる……
──ォォォーッ
……私、死んじゃったのかな? なにもわからない。
はっきりしない、すごくふわっとしてて、曖昧な意識……
体の感覚も、全然わからない……
(みんな、は……無事、かなぁ? ブレイド……どこにいるのかな……?
……アリサ様も、ご無事かな? 全部終わったら……一日占有権で……独り占め、するもん)
ふわふわと右も左もわからない、ただ真っ白な空間を、歩いているのか、プカプカ浮いているのか……それすらもわからない。なにもかもが曖昧なこの世界で私は、仲間のみんなのこと、大好きなブレイドのこと。そして……アリサ様の笑顔を思い浮かべる。
─ほらあの娘もしもべとの約束を待っているみたいにゃ?─
─そうね、みんな頑張ってる。もうちょいしたら行くからね♪ だから、頑張ろう? ミストちゃん─
……っ!? い、今のって!
「……ト嬢! ミスト嬢!! しっかりしろ!」
「……ぅう。はぁはぁ……が、ガッシュ……さん?」
曖昧だった意識の中で、アリサ様らしき声を聞いたような気がしたと思ったら、急に視界が白から黒く、そして微かな光が差して、私は自我を取り戻す。始めに感じたのは全身に走る痛み。それから魔力切れのときのような、酷い倦怠感……
呼ぶ声がずっとしてるので、頑張って瞼を開けてみると、がおぉって吼える虎さん……あぁ、ガッシュさんだ。よかった、無事だったんですね?
「ふぅ……『黒狼』達とバルガス殿、ネヴュラ殿が死力を尽くして障壁を張ってくれたおかげでな。
しかし、楽観もできん状況だ、ロアのあの魔法で『ヨシュア』は大爆発を起こし、皆散り散りに吹き飛ばされてしまった」
「うあっ!? ここ、空!? お、落ちてる最中ですかぁーっ!?」
た、大変です! もう、急速に意識が覚醒してきました! どうにも私とガッシュさん……
神殿ドッカン→わーっ!?→ピュー……←今ここ。
みたいですーっ! このままだと海にボッチャーンして、海の魔物達のごはんになっちゃいます!
「ふ、『飛行魔法』を! あぁ~魔力が足りないです!」
「これを飲むのだミスト嬢!」
慌てて『飛行魔法』を使おうとする私ですけど、さっきのロアの魔法を防ぐために全部の魔力を使いきってしまったせいで発動できません! ですが、私を片腕に抱き抱えるガッシュさんがバッグからマジックポーションを取り出して渡してくれました!
「ありがとうございますガッシュさん! んぐぅっ!?」
わぅぅーっ!? ありがたいんですけどガッシュさん! これ、このポーション! 以前の凄い味がするやつじゃないですか!?
「済まんが耐えてくれ!」「はうぅーっ!」
うぅぅっ! 仕方ありません! 選り好み出来る状況じゃありませんし……鼻をつまんで一気に飲み込みます! ゴクンッ!! ふみゃあぁぁぁーっ!!
「えぇーい! 『飛行魔法』ぃぃーっ!!」
ふわぁぁ~……
「おぉ! た、助かった……礼を言うぞミスト嬢。詫びにもならぬが、口直しにアリサ様のポーションを飲んでくれ。外傷はないようだが、あれだけの衝撃に吹き飛ばされたのだ、見えぬところで傷を負ってるかもしれん」
「あ、ありがとうガッシュさん……んぐんぐ、はぁ~美味しい」
あ、危なかったです……私がもう少し意識を取り戻すのが遅かったら、今頃二人とも海面に叩きつけられていました……ほっとして安心した表情を見せるガッシュさんから、アリサ様のポーションを受け取っていただきます。すると、全身に走っていた痛みがすぅーっと消えていきました。ガッシュさんが推測した通り、怪我してたみたいですね。
「しかし……これからどうすればよいのだ? 皆は無事だろうか?」
「私達がこうして無事なんですから大丈夫ですよ! なんとか合流しないといけませんね」
「うむ。そうだな……あの神殿がどうなったのかとかは、ともかく、皆と合流せぬことには……合流?」
そうです、ここで私達だけで色々考えても解決策が出せるとは思えませんからね。第一にみなさんと合流を果たさなきゃいけないです。取り敢えずこのバングルで呼び掛けて……
「ミスト嬢! これを使うのはどうだろうか!?」
「え? あっ!! ガッシュさんそれって!」
私がバングルを通じて仲間のみんなと連絡を取ろうとしたその時、ガッシュさんがなにかを思い出したかのように、慌ててバッグをガサゴソ始めたと思ったら、なんとびっくり! ガッシュさんが手に持って私に見せてくれたその魔装具は!
「うむ! アリサ様がお作りになられた小型の転移装置! 予め指定しておいた人物達を使用者の側に転移させるらしいのだ! 確か『おいでませくん』と言うらしい!」
「そ、そうか! あの神殿に私達が突入したとき、『ゲキテウス』に設置されていた『転移陣』を利用したから、今まで使わずにいたんですね!?」
凄いです! これがあれば『黒狼』だけじゃない、バルガスさんとネヴュラさんも、レジーナさん達『猫兎』ともいっぺんに合流できちゃいます!
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【死ぬかと思った!】~セクシーな皆~《レジーナview》
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「ハァハァハァ……あ、危なかった!」
「危なかったよぉぉぉーっ!?」「ガッシュありがとぉぉぉーっ!!」
「いやぁぁぁ~マジに死ぬかと思ったわ!」
「ミストぉぉーっ! 無事で良かったぜぇぇーっ!」
ここは……『ゲキテウス王国』からやや西よりにある孤島のようだね……僕達はなんとか生き延びる事ができたようだけれど……
息も絶え絶えで、ガクリとひざを地に着かせ、大きく脱力するバルドくん。
うわあぁぁーんって泣き叫ぶミュンルーカさんに、これでもかってくらい、ガッシュにお礼を言ってるニャモ。ペタンと地に座り込み、はぁぁーっ! って大きなため息をつくミミ。そして、ミストちゃんと抱き合うブレイドくん。
本当にみんな無事でよかった! そう、僕達はガッシュがアリサ様から託されていた魔装具によって、全員無事に合流を果たしたのさ!
ロアと対峙してアイツが姿を消してから、僕達はあの神殿内を駆け回って、操られていた『亜人』達を保護して回っていたんだ。この時に大活躍したのが、僕のパーティーメンバーのみんなさ!
ニャモとネネは『人猫』の嗅覚で、ミミとモモは『兎人』の聴覚で。次から次に『亜人』達を見つけて回った。
ただ、厄介だったのはロアに、いや……エリクシルに洗脳を受けていたために、どうしても手荒な手段を採らなければいけなかった事だね……
「全員……保護、できたの、か……?」
「多分ですけどね~モモ達の聴覚とネネ達の嗅覚で探せる限りは全員です」
「もし、残されていた方がいらしたとしても……そこまでは責任もてませんからね……」
うん。デュアードくん、僕達はギリギリまで彼等の保護に走ったんだ。そして離脱の指示を出したのも僕の判断だからね? モモとネネを責めないでやってほしい。
「誰が、責めたり……するものか……」
「そうよレジーナさん。私達の隣人を助けてくれて感謝するわ」
気絶して、魔力の帯に縛られている保護した『亜人』達は十数人に及ぶ。島の砂浜に横にされた彼等の容態を確認していたデュアードくんとシェリーさんがそう言ってくれるのには、ちょっと嬉しいね。
「はぁ~流石にこの人数を『飛行魔法』で保護するのはキツかったです……魔力もすっからかん」
「オマケにあの極大魔法が来たものね……ガッシュが魔装具使ってくれなかったら皆今頃海の藻屑だったわ……」
本当だね、ネネ、ニャモ……彼等を保護して回ってるときに、凄まじい神気を感じたよ。それこそ『死の悟り』が激しく鳴り響くくらいに、僕達はそれで慌てて神殿から離脱したんだけど、あの破壊の余波は凄まじくて、咄嗟に張った障壁も飲み込まれて吹き飛ばされてしまったんだ。
「女神様方より授かりしこの鎧がなくては耐えられなかったやもしれぬ……」
「粉々に砕けてしまいましたけどね……格好よくて気に入っていたんだが……」
「ぷっ! なんだよバルガスもバルドもよぉ~? アタイ達はこうしてまだ生きてんだ! 鎧なんざまたアリサ達に頼んで作ってもらえばいいだろ! それよか、ホレ! これからどうすっか考えようぜ!?」
ふ、あはは! そうだね! セラちゃんの言う通りだ!
ポーションのおかげで皆の傷は癒えたけど、爆心地にいたバルガスさん達と『黒狼』の皆の防具はそりゃズタボロだ。特に男性陣達の鎧は跡形もないほどに砕けてしまい、合流した時は皆血みどろで驚いてしまったよ。
「そうだよなっはくしょい! うぅーっ! インナーだけじゃ風冷てぇーっ! なぁ、状況も知りてぇし、一度『聖域』に戻った方がいいんじゃねぇかな?」
「そうだなブレイド……武器も消しとんでしまったしっ! うぅ、本当に冷えるな!」
ふふ、セクシーだねぇ~♪ 男性達! 君達もゼオンのようにもっと渋さを身に付けたら……って、いけないいけない♪ ふふふ、この緊急時に変な考えをおこすのはやめよう。
「あなた。アルティレーネ様が迎えに来てくださるそうよ?」
「バングルで女神様達と連絡を取りましたよぉ~♪」
おや、それはありがたいね。保護した『亜人』達の事もあるし、僕達の持っていたポーションも底をついてしまったからね……おそらくこの西の果てから『聖域』まで戻るには体力も魔力も足りていないから、とても助かる。
「ブレイドは見ちゃダメ! ミュンさん、ネヴュラさん何か上に羽織って下さぁい!」
「おわっ!? ミストなにすんだよ!? 見えねぇよ!」
「あらら~♪ うふぅーん♥️ お姉さんのお肌見て興奮しちうかなぁ~ブレイドぉ~♪」
「そう言われましても……着替えも何もありませんし」
あははは! ミストちゃんがブレイドくんを目隠ししているよ! 少し離れた所にいたネヴュラさんとミュンルーカさんが僕達の側にやって来たからだね。なんと言っても彼女達のローブや法衣は破れ方が際どいんだ。
ミュンルーカさんの服は上半身がほとんど破れちゃって、そのふくよかな乳房がこぼれてしまいそうになってしまっている、手でおさえていないと大切な部分が顔を出しちゃうかも!
ネヴュラさんはミュンルーカさんほどじゃないけど、やはり上半身の服が破れているし、スカートもボロボロだ。肉付きのよいふっくら柔らかそうなふとももまで、バッチリ見えてしまっているため、とてもセクシーな状態になってしまっているね。
「……私もかなりセクシーになっているのに、どうして反応が薄いのかしら?」
「え? シェリーさん!? あーあのぉ~シェリーさんはメガネだから……」
「応。俺メガネの女の人って趣味じゃねぇやい」
ムキー! このブレイドのクセに! ブレイドのクセにーっ! って、落ち着いてよシェリーさん。
ブレイドくんを目隠ししたまま、話しかけられたミストちゃんとブレイドくんがシェリーさんに振り向いて、ミストちゃんはちょっと返答に困り、だけど、ブレイドくんがハッキリ言うと、シェリーさんが怒っちゃったね♪
「ははっ! この状況でんな馬鹿なこと言ってられんなら上等だぜ! って、何で目逸らすんだよバルド? ははーん? さては、ようやくアタイの魅力に気付きやがったな?」
「ああ、わかったわかったからセラ。野営用の毛布でも被っていろ! お前はほとんど隠れてないんだから!」
あっはっは! いやいや、豪胆だねぇセラちゃん! それほとんど下着じゃないか?
「あーん? 隠れてんだろ? 前衛やってりゃパンツの一つ二つ見られんのは当たり前だぜ?」
「流石は普段からミニスカートで戦うセラさんですね? でも、もう少し恥じらいも持ちましょうね♪」
なんだよぉぉ~? お説教ならゴメンだぜぇアルティレーネ様……?
アルティレーネ様ぁーっ!?
うわっ!? ビックリした!! 凄い自然にアルティレーネ様がいらっしゃるんだもの! 全然気付けなかったよ! 一体いつの間に!?
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【絶叫】~『聖域』で~《アルティレーネview》
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ズッドオォォォォォォーンッッッ!!!
「バルドぉぉぉぉーっっ!!?」「ウソでしょぉぉーっ! バルガスさん! ネヴュラさぁーんっ!!」
「レジィィーナァァーっ!! ガッシューっ!!」
なんてことでしょう!? 浮上した神殿が極光と共に大爆発を起こしました! 私と共にその様子をモニターで確認していた『白銀』のアイギスさん、レイリーアさん、ドガさんが信じられない面持ちで叫び声を挙げます! 私も口を手で覆い、叫び声を挙げそうになりました……だってあの内部には『黒狼』と『猫兎』にバルガスさん夫婦、それにゼオンの朋友、ガッシュさんがまだいるんですもの!
《うおぉぉぉーっ!?》《ぐわぁぁぁーっ!!》(プップーッッ!!)
その様子を映し出していた『ガルーダナンバーズ』の面々の叫び声と一緒に、モニターに映る映像がぐるんぐるんと激しく回転し、途絶えます!
「ゼーロ!? 『ガルーダナンバーズ』無事ですか!? 応答して!!」
大変です! あの極光はまるでティリア姉様が放つ極大魔法かのようでした! 神殿を攻めていた『ガルーダナンバーズ』達もあの大爆発に巻き込まれて……いいえ! いいえ! そんな簡単に彼等がやられる筈がありません!
信じません! 私達の大切な仲間がこんな一辺になんて! お願い! 応答してください!!
『ぐぅぅっ!! 皆無事かーっ!?』
《むぅぅっ……ゆ、ユナイトか? こちらゼーロ! なんとか無事だ!》
ああ! 良かった! ユナイトを始めにゼーロ、レイヴン、レイミーア、エスペル等が次々に無事を告げてくれました! ですが……
「ゼーロさん! 神殿は!? バルド達はどうなったのよぉぉーっ!?」
「落ち着かぬかレイリーア!」
でもでもぉーっ!! まるでやや子のように取り乱すレイリーアさん……無理もありません。あの大爆発を見てしまっては……
《……済まぬレイリーア殿。爆発の瞬間、我等も吹き飛ばされ彼等の安否まで確認が取れておらんのだ》
「大丈夫ですゼーロ殿。バルド達はきっと生きています。父上母上、どうか彼等に呼び掛けを続けて下さいますか? ティリア様。どうかご許可下さい」
「あー大丈夫よ。あんた達あれが私のと同じに見えたんでしょうけど、私ほどのもんじゃないわ。そうね、ガルディングとセレスティーナは二人で突入したメンバー達に呼び掛けなさい? 多分爆発で吹っ飛ばされて気を失ってるかもしれないから」
「了解致しました!」「直ちに皆さんに呼び掛けますわね!」
おぉーっ!!
流石ティリア姉様です! あの一瞬でそこまでは把握されていたなんて!
アイギスさんが報告を挙げるゼーロを安心させるように声をかけて、通信を担当されているガルディングさんとセレスティーナさんにバルドさん達へ呼び掛けを続けるように促し、それをティリア姉様に許可して頂くよう頭を下げたのですが、ティリア姉様は冷静に状況を把握して推測をお立てになられました。それを聞いた私を含め『白銀』の三人は、希望はあるのだと喜び、歓声を挙げます。
「聞いたなレイリーア? 希望はある! だから私達は信じるのだ!」
「ええっ! わかったわ! ごめん、取り乱しちゃって……」
「う~ん、ただ何人かはバングルもぶっ壊れたんじゃないかしら? 散り散りに吹っ飛んだみたいだし、上手く合流できるかしらね……? あぁーっ! こんなときにアリサ姉さんがいれば『引き寄せ』で一発解決するのに!」
希望は確かに見えました。しかし、状況は厳しいままです。
散り散りとなった神殿突入部隊と『ガルーダナンバーズ』達は勿論のこと、それにより神殿がどうなってしまったのか観測ができないのも不安を煽ります。
「彼等の捜索と、神殿の状況を観測する必要がありますが……ティリアお姉様。後者は増援部隊に任せ、鳥達を捜索に回しては如何ですか? 私達も神殿へと向かいますから」
「……僕もフィーナ様の意見に賛成するよティリア様。父ちゃんと母ちゃんのことは心配だけどさ、僕も神殿に行く! 父ちゃん達なら絶対そうしろって言うしね!」
フィーナ姉様、パルモーさん……とても落ち着いていて冷静な判断です。尊敬します。特にお母さん子のパルモーさんはネヴュラさんが心配でしょうがないでしょうに……
「いい判断だと思います。流石ですねフィーナ」
「は? ちょっと馴れ馴れしいですね『幼女神アルナ』? ティリアお姉様に楯突いた事。私は許していないのですが?」
はうぅぅっ!? って、あらら? フィーナ姉様に凄まれておっかなびっくりのアルナがヴィクトリアの背に隠れちゃいましたね。
「はぁ、やめなさいよフィーナ。アルナをいじめるとアリサさんが鬼神の如く怒るわよ~?」
「うぅーっ! そうです! お母さんに言いつけますからね!?」
「……は? 意味がわかりません。ヴィクトリア、どうしてアリサお姉様がアルナのお母さんなんですか?」
「あーフィーナ。その辺りは追々話してあげるわ。今はあんたの案を採用するから準備してちょうだい」
あはは……そうですね。その辺はやや込み入った事情がありますからお話すると、ちょっと長くなってしまいますね。
「よし! ドガ、レイリーア。ゼルワとサーサの分まで気張らなくてならん、覚悟は出来ているか?」
「愚問じゃ!」「ええっ! 大丈夫よ!」
「う~ん、僕としてはアイギスの兄ちゃんにはこの『聖域』で大人しくしててほしいんだけどぉ?」
一方、神殿の状況を観測すべく、ゼオンとフェリア隊に合流する予定の『白銀』の面々が意気込むのを、ため息をついて困ったような顔を見せるパルモーさん。
アリサお姉さまの想い人であるアイギスさんを守護する役目をティリア姉様から受け、リドグリフ戦後、任務完了と思えば、また戦地へと赴く事になった彼に対して思うところがあるのでしょう。
「あー、もしディードバウアーが復活するような事態になってもさ。あんた達は手出ししないでいいわ。
いえ、寧ろ手を出さないでちょうだい? あんた達に矜持ってのがあるように、妹達にも『懐刀』達にも意地と誇りってのがあんのよ?」
ティリア姉様……はい。その通りです! この世界を創造したのは他ならぬ私達。彼等はじゅうぶんすぎる程に協力してくれましたからね。後は見届け人となっていただきましょう!
「……それを言われちゃ、何も言い返せないわ」
「そうじゃなぁ~協力すると願い出たのも儂等じゃしのぅ」
「ですが、いざというときは私達も動きます!」
三人のその答えに私達は頷き合います。ありがとう、その心意気、本当に嬉しく思いますよ。
「! 繋がりました! ネヴュラ殿とミュンルーカ殿です!!」
ざわっ! ガルディングさんのその声に私達は一斉に彼へと振り向きました! やはり無事だったのですね!
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【姉さんの声】~最終局面に!~《ティリアview》
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よかったら! 無事だったみたいね。
ガルディング達の呼び掛けに応じたネヴュラとミュンルーカから話を聞くと、あの爆発を起こしたのは他ならぬロア本人だそうだ。
……エリクシルのその並々ならぬ『人間』達への憎悪を利用し、神殿と言う殻で隠した巨大な『黒水晶』を完成させる事が、ロアの口から語られた奴の目的だった!
そしてその『黒水晶』はディードバウアーをより強く、より凶悪にして復活させる為の触媒。元々は『魂喰神』のディードバウアーが浄化させるはずだった、多くの魂にこびりついた穢れの塊……それが『黒水晶』の正体である以上、ディードバウアーはその本能で取り込もうとする。
「なるほど、小賢しい……」
『恐らくは既に『ルーネ・フォレスト』へと移動済みかと……』
『こうなって来ると、リールとフォーネ達が心配です! ティリア様、どうかワタシ達も!』
通信越しに見るネヴュラとミュンルーカは神妙な表情で私に報告を挙げた後、『ルーネ・フォレスト』にいるリールとフォーネ達の心配をし始める。あちらには妹二人に、シドウとリンと言う『懐刀』の二枚。更に三体の『守護者』が合流する上、フェリア隊も向かわせている。強力な布陣だから安心しなさい……そう言ってやりたいけど。
「……取り敢えず、貴女達のとこにアルティを向かわせるわ。一度『聖域』に帰還しなさい? 装備はおろか、体力も魔力もギリギリでしょう?」
『『了解しました! ありがとうございます!』』
どうにも不安が拭えないわ。それを顔に出さないようにして、彼女達には帰還するように指示を出す。
さて、問題の『ルーネ・フォレスト』はどうなっているかしら? 魔素霧が大量発生したせいで、映像は拾えなくても音声なら。
「レウィリ! フォレア! 応答して。状況を報せなさい!」
『──姉ぇっ! ……リア姉ってば!!』
ザーザザザッ……
うわっ! 酷いノイズね、充満した魔素霧のせいでバングルの通信機能に支障が出てるのかしら?
「フォレアルーネ様! こちら『聖域』! 聞こえますか!? 状況を!」
『──ん。多分これで……大丈夫。聞こえてる
ティリア姉さん、ちょっと問題発生……シドウとリンが……』
微かに聞こえたフォレアの声にガルディングが必死に呼び掛けると、少しのノイズが走った後、レウィリの落ち着いた声がクリアに聞こえるようになった。多分、魔装具に詳しいあの子だから、バングルを上手いこと調整したのかしらね?
いえ、それより聞き捨てならない情報が! シドウとリンに何があったの!?
『進化の眠りについちゃったんだよ! ヤバいって! さっきからとんでもない神気を感じるし!』
なんてこと! このタイミングでシドウとリンが!?
これは不味いわ。弱体化のペナルティが解除された本気のディードバウアーに、先のネヴュラ達の話の神殿だった巨大な『黒水晶』を取り込ませてしまったら!
どうする!? どうすればいい? フィーナとパルモーにも向かってもらう? さっきはああ言ったけど、『白銀』にも手を借りて……各地は、駄目ね。まだ『魔装戦士』達と戦いが続いてる!
『あれーっ!? ティリアティリアーっ! こちら『ジドランド』のポコなのですーっ! なんだかいきなり『魔装戦士』達が消えちゃったのですよ!?』
『聞こえるかティリア! こちらルヴィアス! 帝国で引き付けていた『魔装戦士』が一体残らず、消失した!』
『こちら『エルハダージャ』の爽矢! こちらも同じくだ!』
『応! 主神様よ! 大地だ! 『ゲキテウス』も同じだぜ!? いきなり消えたもんだから獅子王共も面食らってらぁな!』
『こちらエミル! 『セリアベール』でも同様の事が起きています!』
『あおぉー? なんだぁ~あの人形達消えたぞーっ!?』
『ティリア様~『聖域』からも『魔装戦士』がいなくなりまっしたよぉーっ!』
「なんですって!?」
まるで取って図ったかのようなタイミングで、なんと、各地に出現していた『魔装戦士』共が、突如として姿を消したと言う報告が相次いだ! それはここ、『聖域』でも同じで、突然消えたその『魔装戦士』達にジュンが不思議がり、それを裏付けるようにアリスからも報告がきた。
「……どういうつもりよ、ロア? ここに来て「はい、降参」なんてわけないでしょうに!」
「不気味ですヴィクトリア……ロアは何かを企んでいるのでは!?」
世界各地から届く同一の内容の報告に、えも知れぬ不安を感じたのだろうヴィクトリアとアルナ。モニターを険しい目で睨み付けている。
─もう少し頑張ってティリア─
─うなぁ~ん─
「アリサ姉さん!?」
今の声! 私の心に直接呼び掛けるような、不思議だけど、間違いようのない聞き慣れたあの声は、アリサ姉さんとミーナだわ!
「ティリア様! ティリア様!? どうされたのですか!?」
「あ、ああ……うん。ごめんセレスティーナ。大丈夫よ」
その一瞬。どうやら私は呆けていたみたいで、心配に思ったセレスティーナの焦ったような声に私は我を取り戻す。
ありがとう、アリサ姉さん! 色々動いてくれているのね? 大丈夫! 姉さんが帰ってくるまで私達頑張るわ!
「世界各国に通達! 『聖域』戦力は直ちに『ルーネ・フォレスト』に集結しなさい!」
「ティリア!? ロアの罠の可能性だってあるのよ!?」
「早計過ぎます! せめてもう少し様子を見てからに!」
私のその宣言にヴィクトリアとアルナがはっとなり、私に叫ぶ。
ええ、貴女達の不安は理解できるわ。でも大丈夫よ!
「安心しなさい! 今アリサ姉さんの声が聞こえたわ!」
焦る皆に、私はついさっきの事を教えてあげる。あまりにタイミングのよすぎる『魔装戦士』達の一斉消失と、その直後に聞こえたアリサ姉さんの声のこと!
「間違いない……アリサ殿はロアの『無限錬成』の仕組みを見破り、打破したんだろう」
「……異界に飛ばされて、いえ……異界と言ってもそこはロアの実験場……そう言うことですか!」
おっと、アルティレーネに連れられてバルド達、神殿突入部隊が帰って来たわね!
「うむ、そうか……我もわかった気がする。よくよく考えてみれば、あのヴェーラの『ジェネア軍』と類似しておるのだな」
「アリサ様がロアの実験場でその発生源、『存在情報』でしたかしら? きっとそれを発見して処置を施したと言ったところでしょうか?」
うん、そもそもヴェーラに『機械仕掛けの神』の世界の技術を提示したのは他ならぬロアだった……バルガスとネヴュラの推測もきっと当たってると思う。
「さあ皆! アリサ姉さんがくれたこのチャンスを逃す訳にはいかないわ! 最終決戦よ!
敵は『技工神』ロア! そして復活するだろう『獣魔王』ディードバウアー!!」
おおぉぉぉぉぉーっっっ!!!
さあ、いよいよ最終局面よ! ロア! ディードバウアー! 決着を着けましょう!!
ミミ「むっはぁぁーっ!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ 男子達のセックシィィショォォーット!!O(≧∇≦)O」
ネネ「ミミ……(-_-;) 恥ずかしいからやめて(>_<")」
ニャモ「いいわぁ~♪(///∇///) ほらバルドくん、デュアードくん!(*´艸`*) そこで髪をかきあげて!(≧▽≦)」
レジーナ「ニャモまで……(;´∀`)」
バルド「え?(^_^;) こ、こうですかね?( ・`ω・´)」
デュアード「……寒いから……ちょっとだけ、だぞ?(ーー;)」
ミミ&ニャモ「キャァァァーッ!! ♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪ カッコいいーっ!(〃艸〃)」
セラ「!Σ( ̄□ ̄;) Σ(゜Д゜;≡;゜д゜) (*/□\*)ーっ!?」
シェリー「うん(^ー^) また逞しくなったわねデュアード♪(*^-^)」
モモ「ぷぷっ!(*≧ω≦) セラちゃん慌てすぎですよ~?(*´▽`)」
レジーナ「う~ん(´ヘ`;) 二人共に若すぎるなぁ(*゜∀゜)=3 バルガスさんを見なよ?(*´▽`*) 男の色香に溢れていると思わないかい?(u_u*)」
ミュンルーカ「えぇ~?(;´д`) ワタシにはわかりませんよぉ……(;゜゜)」
ミスト「むっきむきのパパって感じです♪o(*⌒―⌒*)o」
バルガス「(  ̄- ̄)」
ネヴュラ「うふふ♪(*`艸´) 旦那の良さがわかる人がいて嬉しいですけれど( ´ー`) 駄目ですよレジーナさん?(*`エ´*)」
レジーナ「あはは♪(´▽`) 安心してよネヴュラさん(´・∀・`) 僕はそんなつもりないからね!(*゜∀゜)」
ガッシュ「見事に鍛え上げられた肉体……(゜Д゜;) いかんな、私も鍛え直さねば……なんだか弛んできたし(*T^T)」
ブレイド「ガッシュのおっちゃん、自分の腹つまんでなにしてんだ?(´・ω・`)」
ネネ「あ、ブレイドくん(-∀-`; ) そこはそっとしておこうね?(ФωФ)」




