表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
185/211

148話 『熊神』と憐れな親玉

────────────────────────────

【手強くなってきた!】~だけど!~《ティリアview》

────────────────────────────


《行かせはせん! 落ちよ『魔装戦士』!》


シュゴォォォーッ!! ドゴォォォォォーンッ!!


「水上の『魔装戦士』撃沈! 『海王竜(リヴァイアサン)』がやってくれました!」

「よし! 安定してきたわね!」


 状況報告を挙げるセレスティーナの声に私は安堵する。

 懸念されていた、この『聖域』への『魔装戦士』達の侵入経路である水上、水中を『海王竜(リヴァイアサン)』が鉄壁とも呼べる護りで防いでくれるからだ。

 転移を使って『待ち望んだ永遠(アルカディア)』内部に侵入してきたヤツ等も、シェラザードを始め、アリスとティターニアが対策してくれた。

 今はその結界外縁で戦士達が戦ってくれている。


「うおぉっ!? ティリア様! 新たに召喚された『魔装戦士』! 今までと違います!」

「ジャデーク! 無理をするな! 俺達兄弟、強力して叩く!」

「ちぃっ! 明らかにこれまでとは動きが違う! 油断するなネハグラ、ジャデーク!」

「「了解ですフェリア隊長!」」


 だけどここに来て、『魔装戦士』達の動きが変わったわ! 今まではただ現れては、目につく対象に向かって攻撃するだけだった連中が、徐々に連携を取るようになったり、アイギス達冒険者のように盾役、アタッカー、サポーターといった役割分担をしたパーティーを組んできたりと、小賢しいったらありゃしないわ!

 それになにより、地力が、いえ……アイツ等の場合「性能が」って言った方がいいわね。まだまだ『無限円環(メビウス)』での訓練を乗り越えた皆には及ばないけれど、だんだんその差を埋める機体が現れ始めてる!


「マズイわよティリア……私達『聖域』はまだ大丈夫だろうけど……」

「はい、このままですと防衛が崩れる国も出始めるでしょう!」


 ヴィクトリアとアルナも『魔装戦士』の性能が向上してきていることに気付き、懸念を口にするわ。そうね、『聖域』には強い子達が揃ってるからいいけど、他国は心配ね! ガルディング達に連絡して、状況を報告させましょう。


『こちら『セリアベール』のゼオンだ! 俺達は心配いらねぇぜ! 『守護者(ガーディアン)』と『栄光の(グローリーオブ)世界樹(ユグドラシル)』! 更に『聖域』から来てくれた冒険者候補達がいるからな!

 寧ろ他国はどうなってんだ!? ゲッキー無事かよ!?』

『応! こちら『ゲキテウス』! レオナードだ!

 大地様とヒャッハーのお陰か、こっちはまばらだぜ! 寧ろ浮上した神殿の方に向いてるみてぇだぞ!?』


 うん。公爵だったってのは伊達じゃないわねガルディングは、仕事が早いじゃない!

 真っ先に報告を挙げてきたのは『セリアベール』のゼオン。あの街はアリサ姉さんが色々と手をかけたから、そうそう落とされる心配はなさそうね。状況次第で『聖域』からの冒険者候補達を配置替えさせてもらうかもしれないって事を伝えておきましょう。

 そして、そんな『セリアベール』に応えるかのように声を挙げたのは『ゲキテウス』だ。流石は大地とヒャッハーって言ったところかしら? 『ゲキテウス』の国土に関しての防衛なら任せておいても良さそうね……

 でも、神殿……『ヨシュア』とか言ってたっけ? よりにもよってその名前を冠するとはね……ゼーロ達『ガルーダナンバーズ』の隊長達と、『黒狼』、『猫兎(キャットラビット)』にバルガスとネヴュラもいる大所帯。ロアもそちらに戦力を割こうとするのは道理ってもんだわ。


『こちら『ジドランド』! 朱美よティリア様! ごめん、何人か応援ちょうだい! ドワーフ達も頑張ってるけど、『魔装戦士』の性能が上回って来たのよ!?』

『済まぬ主神様! こちらジドルじゃ! 儂からもお頼み申すのじゃ! 賢者パーシヴァル翁も支えてくれておるがそう長くは持ちそうにない!』


 わかったわ! 待っていなさい朱美、ジドル! 今すぐ援軍をそっちに転移させるから!


『ティリア悪いがこっちにも頼む! ロアの野郎、俺を目の敵にでもしてんのか? 『魔装戦士』が全然減らないんだよ!? 出来ればシェラザードで! 安心して『ルクレツィア』を任せられるからさ!』


 ルヴィアスのとこの帝国は、なんと帝都の宮殿? 皇帝の居城まるごと魔装具にして、『ディード教団』のあの浮上した神殿に負けずに空へと上がってきた! 『魔装戦士』が減らないのは多分それが理由だと思うわよ? 誰だって倒しておきたい相手には戦力を割くでしょう?


「わかったのです! それならポコが『ジドランド』に行くのです!」

「仕方ないわね……ふふ、でもここでルヴィアスに貸しを作っておくのもいいわね♪」


 一緒に通信を聞いていたポコが名乗りを挙げ、シェラザードはご指名を受けて、最初こそ面倒くさそうな顔したけど、直ぐにニヤリっていう悪い顔になる。私知らないわよ~? シェラザードを指名したのはあんたなんだからねルヴィアス!


「じゃあ二人共、お願いね!」

「任せるのです! 戻った力でドワーフさん達を助けるのですよ!」

「いつでも転移させてくれていいわよティリア! ふっふっふ……さぁて、どんな事やらせてあげようかしらねぇ~ルヴィアス?」


 ほいほいほーい! シュンシューン!

 ポコとシェラザードの了解を確認した私は、二人をそれぞれ転移させる。


「お二人が抜けた穴は僕達が埋めます!」「おぉ! やるぞカイン!!」


 うん。元気いっぱいのカインとゆかりの新生カップルが頼もしいわね!


「さて、他の国はどうかしら? アルティ達もフィーナとセルフィの所も気になるわね」

『こちら『エルハダージャ』! 爽矢だティリア様。『魔装戦士』共はさしたる問題ではないが、珠実の様子がややおかしい気がする!』

『いや、案ずるな爽矢……妾のこれは……ああ、いや……済まぬが一人送ってくりゃれ?』


 え! なに!? どうしたのよ珠実! あんたと『四神』最強の爽矢なら向かうところ敵無しって思ってたんだけど!?

 アリサ姉さんが直々に師事して、その器用さに磨きがかかった『白面金毛九尾狐』である珠実に、『四神』の中でも他の追随を許さない実力の『真・青龍』爽矢の二人組は我が『聖域』の中でもトップクラス。故に『エルハダージャ』は安泰だって思ってたのに!


『じゃから、そう案ずるなと言うに……シドウの奴も言うておったじゃろう? これは……』


 え? シドウが言ってたって……なんだっけ?


『妾も進化する時じゃ』


────────────────────────────

【進化するぞー!】~護るんだぞ!~《ジュンview》

────────────────────────────


 護るんだぞー!


「アオオォォーッ!!」


ドガァァーンッ!! ドゴォォォォォーンッ!!


 護るんだぞー!! オイラ達の『聖域』! オイラ達の『ユーニサリア』!!


「バオォォーッ!!」


ドゴドゴドォォーンッッ!!


 群がる『魔装戦士』とか言うロアのガラクタなんてオイラの敵じゃないんだぞ!

 腕振って、「アオオォォーッ!」って吼えればたちどころにドッカンドッカンだぞー!

 でも、全然減らないなコイツら~! アリサ様が異界に飛ばされて大変なんだぞーこっちは! お前らの相手なんてしてやってる暇はないのにー!


「おお! 流石ジュン様だ、正に一騎当千!」

「然り! 俺達も負けていられんぞムラーヴェ!」


 おームラムラにガウガウ~♪ お前らも頑張ってるな~! じょうきょーはどーだぁ~?


「芳しくありません! 倒せど倒せど一向に『魔装戦士』の数は減らず!」

「やはりロアを討たねば止まらぬようで……持久戦となりましょう!」


 うあー! もーめんどくさいんだぞー!! ロアのバカタレめー!

 今ロアに近いのはバルバル達か~?


《報告! 報告です! こちら『ガルーダナンバーズ』レイヴン!!》


 うおっ!? びっくりしたぞー! なんだぞなんだぞレイヴン!?

 ガウガウとムラムラの報告を受けてげんなりしては、ロアに一番近い場所にいる筈のバルバル達の事を考えてた矢先、レイヴンから通信だぞ!


《浮上した神殿が移動を開始しました! 進行先は恐らく……》


 なんだってーっ!? 浮上した神殿ってあれだろー? 黒フード達の……


「マズイ! アイツ等は『ディード教団』! その目指す先は一つしかない筈だ!」

「フェリア隊長!? それでは……」「まさかっ!?」

《『ルーネ・フォレスト』! いけません! このままでは『ディードバウアー』までもが復活する!

 ティリア様! 至急応援を! 神殿内部にはまだ『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』、バルガス殿にネヴュラ殿、そして、ガッシュという『虎人(ワータイガー)』が!!》


 な、なんてことだーっ!? こりゃマズイ! フェリアとネハグラ、ジャデークが血の気を引いたように、ガウガウとムラムラもレイヴンの報告を聞いて、顔を青ざめさせてるんだぞ!

 ……こーなりゃ、やるしかないんだぞ! オイラの中にちょこっと見えてるでっかい光を引っ張り出すぞ!


「なんてこと……これ以上『聖域』の護りを減らすのも……」

『ティリア姉さん! 大丈夫、『リーネ・リュール』から『れうぃりん』を呼ぶ』

『止めて見せるよ! 『ルーネフォレスター』と一緒に!』


 おぉ~次女と末っ子女神! そうか、『守護者(ガーディアン)』だなー!


『だったら俺も行くぜ! 『守護者(ガーディアン)』三体揃い踏みと行こうや!』


 ゼオン! お前も漢だなー!


「よーし! フェリア~ネハグラ、ジャデーク! お前達も行くんだぞ! 『聖域』はオイラ達に任せろー!」

「「「ジュン様!?」」」


 うおぉりゃあぁぁぁーっ!! だぞーっ!!


ズッドォォォォォォーンッ!!!


「ジュン!? 凄い神気! あんたどうしたのよ!?」

「よっしゃーだぞ! 進化したぞー! オイラ『熊神』ジュンだぞー!!」


 なーんだ! 思ったより簡単だったぞ! オイラの中にあった小さいけどでっかい光をこう~グイグイーって引っ張る感じ? ほらーアリサ様がポコぽんを神剣から引きずり出した時みたいにしたら、あっさりだったぞ!?


「す、凄い……『天熊』の時よりも凄まじい神気に満ちています!」

「体躯は小さくなったみたいだけれど……ティリア! これなら!」

「ええ! レイヴン、こちらからフェリア隊と『セリアベール』からゼオンと『セリアルティレーヴェ』が向かうわ! 合流してその神殿を抑えなさい!」


 おー! アリサ様の『小さいは可愛い(ミニムーラブリー)』かけてもらった時みたいのサイズになったな! これならあっちこっち走り回れるぞー!

 アルナとヴィクトリアもびっくらこいてるな~♪ そらそらそらぁーっ!!


ドドドォォーンッ!!


 わーっはっはっは! 軽い! 体が全然軽いぞーっ! あっちの『魔装戦士』も、こっちのもそっちのもほらほらーっ! ぶっ飛ばすぞー!!

 そんなオイラの大活躍を見てティリア様も決断できたみたいだぞ! アオォーッ! 任せるんだぞーっ! フェリア隊が抜けてもその三倍は働いてやるんだぞーっ!


「バルド! バルガス達はレジーナ達と合流して神殿から脱出しなさい!」

『了解です。親玉のエリクシルを討ち……そして洗脳されている『亜人(デミヒューマン)』達と『猫兎(キャットラビット)』達と合流……』

『然る後に、神殿の破壊を確認した後、最終決戦に臨むとしましょうぞ!』

『済まないみんな、僕達がロアを逃してしまったせいだ!

 僕達はユナイト君と一緒に『亜人(デミヒューマン)』達の保護に回るよ!』


 うおぉー大分情報が錯綜してるみたいだぞ! まーその辺は頭いい連中が上手くまとめると思うし、オイラは片っ端から『魔装戦士』共をぶっ壊すだけだぞーっ!


────────────────────────────

【先王と共に】~俺も往く!~《ゼオンview》

────────────────────────────


ズドォォーンッ!!


「さあ、次は何方です!? このラグナース、『セリアベール』の未来のために働きますよ!」


 ラグナースが陣形を組んでいた『魔装戦士』の一部隊を、シェラザード様達から師事を受けた自慢の魔法で一網打尽にする。


ドシュウゥーッ!! バシュバシューッ!! ドゴォォォォォーンッ!!


「うおぉっ!? って、おぉ~凄いなこの結界! あれだけの攻撃にも全く被害無しだ!」

「ああ! 流石お嬢さん(フロイライン)とレウィリリーネ様が構築なされた結界だね!」


 ディンベルが最前線……っつっても街の内部。結界内で指揮を採っている最中、『魔装戦士』からの激しい攻撃が放たれた! しかし、『セリアベール』を覆う結界『栄光の(グローリーオブ)世界樹(ユグドラシル)』の前に爆ぜたその力も一瞬で霧散し吸収されていく。

 その効果をまじまじと観察したディンベルは、補佐を務めるデールと一緒になって嬉しそうにしてやがる。ったく、もうちょっと緊張感ってのをだな……


『ゼオンよ! この街の防衛は優勢だ! そうそう動くこともあるまい!

 寧ろ過剰な戦力が集っているとも言えよう。他国の状況を確認し、救援を求む声があれば応えるべきぞ!』

「ええ! 丁度俺もそう感じてたとこでさぁ! ご先祖様!」


 そう俺と同じ考えに至るのは、『守護者(ガーディアン)セリアルティレーヴェ』……に、何故か乗り込んでいる俺のご先祖様の『ユグライア王』だ!

 多分だがアリサ嬢ちゃんのオプションである『あるちぃ』が気でも利かせてくれたんだろうな。俺に憑依してるだけじゃ力になれねぇって思ったご先祖様を『セリアルティレーヴェ』に招待しやがった。今は仲良く一緒に搭乗してるってわけだ。

 さて、そんな中『聖域』で全体の指揮を採ってるティリア様からの連絡だ。

 なんでも『魔装戦士』達の性能が徐々に向上してきているようで、こっちにも召喚されて行くだろうって話だ。しかもその後に『ガルーダナンバーズ』のレイヴンから、あの黒フード共の神殿が移動を始めたってな連絡が入り、場が騒がしくなった!


「陛下! 『ルーネ・フォレスト』には『ディードバウアー』が眠っております! あの者達の狙いはその魔王を目覚めさせる事に他ならぬでしょう!」

『それならばなんとしても止めねばなるまいな……我が子孫ゼオンよ。ここは余が往こう!』

「おっと、それなら俺も行きますぜ。『三神国』の王とその末裔で揃いましょうや?」


 まあ、アイツ等の組織って『ディード教団』とか言う名前だしな。真っ先に信仰する『ディードバウアー』を復活させようとすんだろう。んなこたぁさせねぇぜ~? 『セリアベール』は皆がいりゃ問題ねぇ! 俺とご先祖様……そして、リールとフォーネは『三神国』の縁の下に、奴等との『魔神戦争』時代からの因縁に決着を着けなきゃあな!!


「ならば私もお伴致しましょう!」

『いや、ならぬビットよ。お主はこの『セリアベール』を護る事に尽力せよ!』

「ええ、頼みますぜビットさん! 俺達はちょっと暴れて来ますんでね!」


 当然自分も! って、俺達に同行しようとするビットさんだけどよ。ここはちょいと我慢してもらいてぇ。ご先祖様と俺は揃ってビットさんに街の防衛に残ってもらいたいと頼む。


「……ご下命とあらば、このビット全霊を賭してこの街を護り抜いて御覧にいれましょう……ですが両陛下!! どうかその御身を案じなさって下さいますよう! 御武運を!!」

『うむ』「わかってますって!」


 ありがとよビットさん! 勿論俺は死にに行くつもりは毛頭ねぇんで! まだまだやらなきゃならねぇ事ぁ山積みだしよ!


「おっし! エミル! ディンベル! 俺は『セリアルティレーヴェ』と一緒に黒フード共の神殿とやらに行って来るぜ! 防衛の指揮はお前らに任せるぞ!?」

「了解しました! ゼオンさん、これが終わったら仕事山積みなんですからね! ちゃんと戻って来て下さいよ!?」

「任せておけ! 女神様達によろしくな!」


 エミルとディンベルが快く送り出してくれる! 大丈夫だ、俺達はちゃんと帰って来るぜ! あ~でも、ちょいと『聖域』寄ってサボんのもありかもな♪ まぁ、バレたら目茶苦茶どやされるだろうが……あ~でも、ちっとくれぇいいよなぁ~?

 街の指揮はあの二人に、戦力は『フライドポテト』に『ハンバーグ』、それにラグナース、ビットさん。彼等を中心に歴戦の冒険者達がいる!


「へへっ! 頼もしい限りだぜ! なんの心配もいらねぇ!」

『うむ! 心強き民達だ! さあ、往くぞゼオン、『セリアルティレーヴェ』の肩に乗るがよい!』


 応! 往きましょうやご先祖様! 女神様やアリサの嬢ちゃんから授かったこの力! 存分に振るってやるぜ!


ドシュウゥーッ!!


 俺と『ユグライア王』は上空から一度、街の皆に対し敬礼し、西へと飛び立つ!

 見てやがれロア! てめぇの思い通りになんてさせねぇぜ!!


────────────────────────────

【情けない親玉】~エリクシル~《ミュンルーカview》

────────────────────────────


「オラァッ!!」


ズバァァーンッ!! ドォォーンッ! ガラガラガラーッ!!


 セラの武器『ヴァランガ』が分厚い扉を切り裂き、激しい音を立てて崩れ落とします。ガッシュさんが嗅ぎ付けた黒フードの親玉、エリクシルが待つ神殿最奥の扉を今突破したワタシ達!


「無礼者共め……王の眼前ぞ? 礼儀を弁えよ」

「貴様こそ道理を弁える事だ」

「笑わせる……死者をも利用する外道が……」

「下郎に尽くす礼儀なんてありませんねぇ~?」


 玉座に座り瞑目していた瞳を開け、エリクシルが怒気を孕ませワタシ達を睨み付けます、が。それに臆するような者はこの場に一人もいません。

 バルドとデュアードが静かに闘志を滾らせ、ワタシもそれに続き武器を構え返答します!


『バルド! バルガス達はレジーナ達と合流して神殿から脱出しなさい!』


 その時、『聖域』のティリア様から連絡が入ります。

 どうやらこの神殿は『ルーネ・フォレスト』に向けて移動を始めたようで、その目的は『ディードバウアー』を目覚めさせる事に他ならないとのこと。

 それを阻止すべく、『ガルーダナンバーズ』と各『守護者(ガーディアン)』、更にフェリアさんが率いる小隊がこの神殿の破壊を目的に動き出しているのです!


「了解です。親玉のエリクシルを討ち……そして洗脳されている『亜人(デミヒューマン)』達と『猫兎(キャットラビット)』達と合流……」


 ジャギィンッ! バルドがその大剣『真・黒狼』を鞘から抜き放ち……


「然る後に、神殿の破壊を確認した後、最終決戦に臨むとしましょうぞ!」


 バルガスさんがその剣先でエリクシルを差し示し応えます。


『済まないみんな、僕達がロアを逃してしまったせいだ!

 僕達はユナイト君と一緒に『亜人(デミヒューマン)』達の保護に回るよ!』


 続けて聞こえてくるレジーナさんからの通信を皮切りにして、先頭開始!


「行くぜバルド! いつまでも王様気取りのこの野郎をぶっ飛ばす!」

「ああ! 朋友ロッドを利用したその罪、この場で償ってもらう!」


 まずセラとバルドが斬り込みました、剣聖剣技奥義の歩方『圧縮』により、瞬きの、いいえ、それ以上の刹那の間に間合いを詰め、武器を振り下ろす!


「闇よ!」


ブワァァァーッ!!


「なにっ!?」「ちぃっ!!」


 あれは! 闇の最上位魔法、『闇の衣』!?

 ババッ! っと、斬り込んだバルドとセラが強引に体制を変え跳び退きます。『闇の衣』とは、自身の命を触媒にした、所謂バリアの一つ。その衣に触れた者を決して消えない暗黒の炎で焼き付くすという、術者にとっても危険極まりない魔法です!


「どうした? 私の炎を恐れるか?

 この身は不老不死たるヴァンパイアロード! 偉大なる先王より受け継ぎし至高たる存在!」


 ゴォォォーッ!! 凄まじい熱量の黒炎がエリクシルを守護するオーラとなってワタシ達を阻みます。まったく、往生際の悪い……


「憐れですねエリクシル。その程度で至高とは片腹痛いというものですよ?」


パチンッ!


「なにぃっ!?」


 ボシュゥゥン……ネヴュラさんが指を鳴らした瞬間、エリクシルを護っていた黒炎があっという間に消えてしまいました。術式に介入し無効化させたのですね? まさか自慢の魔法がこうもあっさりかき消されるとは思いもしなかったのでしょう。エリクシルは驚愕にその表情を歪めます。


「魔法に関しましては私達、とある御方達から厳しく手解きを受けていますのよ?」

「そうね。自身の不老不死っていう特性を活かした強力な魔法ではあるけれど……」

「肝心の術式が無防備なんですものね~? 打ち消すのは簡単です♪」


 そんなエリクシルに対してネヴュラさんとシェリー、ワタシで少しだけ『闇の衣』をどうやって無効化させたのかを教えてあげます。


「馬鹿な!? 完成された魔法の術式に介入して効果を打ち消す……だと!? ふざけるな! お前達の方が余程化け物であろうが!?」

「わぁ~なんだか懐かしい反応ですね……」


 ワタシ達の話を聞いて目を見開いた後、怒鳴るように大声を挙げるエリクシルですよ。そんな彼の反応をミストを始め、ワタシ達はちょっと懐かしく感じてしまうのでした。それはと言うのも……


────────────────────────────

【回想挟んで】~魔法の仕組み~《シェリーview》

────────────────────────────


「ほーっほっほっほ!! 食らいなさいアリサ!! 魔法でなら貴女に負けないわ!」

「ん~ほい。『無効(ヴォイド)』っと」


プシュゥン……ペチン☆


 は? 今……何が起きたのかしら?

 シェラザード様がアリサ様に対して極大の極炎魔法を放ったはずよね?

 アリサ様は『貯槽(タンク)』使用禁止っていうルールで……この『無限円環(メビウス)』内でならいくら無茶しても平気なのでシェラザード様も全力全開で魔法を放った……はず、なのに?


「ちょぉぉーっ!! ちょちょちょちょーっ!?」

「あちょぉー?」


 私達と一緒にポカーンとした顔をしてたシェラザード様が、はっと我に帰ったと思ったら凄い勢いでアリサ様に詰め寄ったわ。いやいや、アリサ様……そんな手刀構えて変な構えしてないで、シェラザード様は今のはどういう事かと説明を求めてるんだと思うんですよ?


「うん。なんか魔法の術式っての? それが丸見えで崩せそうだったから、こう~ほいって?」

「むきぃぃぃーっ!! あーた! あたたたたーっ!!」

「何、今度はホワチャァァーッ!? とか叫べばいいのかねシェラザードさんや?」


 ちょっとシェラザード様がおかしくなっちゃってるわ……まぁ、それだけさっきのアリサ様の『無効(ヴォイド)』が衝撃的だったのよね。正直私も開いた口が塞がらなかったもの。


「……貴女、今「見えた」って言ったわね? なんでよぉぉーっ!?」

「ん……それは多分視点操作の影響だと思う。ほら、お姉さんは最初から色々な物を色々な角度で観てきたでしょう?」


 ガックンガックンってアリサ様の両肩を掴んでゆっさゆっさ揺らすシェラザード様に、「あぁあぁぁあ~」とか答えになってない応え方をするアリサ様。それがなんだか可笑しくて思わず「ぷっ」って笑いだしそうになっちゃったわ♪


「普通は視認できるものではありません……よね? ルヴィアス様?」

「ああ……まぁ、その……見える域に達した奴ならいたんだよネヴュラさん……」

「まあ! それは一体何方ですの!」


 魔法使いが使う魔法は色々と段階……階位と呼べるものがあるの。

 覚えたての初心者の扱う魔法は丁寧に詠唱し、印をなぞるため、誰が見ても何の魔法を使おうとしているかがはっきりとわかるのね。それが熟練者となってくれば、詠唱は短くなり、並列化されたり多重化されたり、果ては無詠唱になっていく。印も同様で、簡略化されつつも威力を損なわせる事もなくなって、究極は身振り手振りといった動作のみで発動させる事が可能になる……まぁ、そんな事が出来るのは目の前の神様達の領域なのだけれど……

 だけど、どんなに熟達しようと魔法を使う以上外せないのが印を構成する術式だ。これは普通、魔方陣に隠されているため視認……というか認識するのは難しい。いいえ、普通は認識なんてしようとはしない。


「魔神でしょそれ?」


えぇっ!!?


「正解……流石だねアリサ様。アイツがおかしくなる前はさ、ティリアの無限魔力に憧れて随分研究に熱入れてたんだよね」


 ルヴィアス様にティターニア様がそんな術式を目に見る事が出来る人物について訊ねた答えをアリサ様が回答なさった途端、私達は驚いたわ。


「不思議じゃないよね~? 魔法を司るからこそ『魔神』なんだろうし」

「確かにね。でも、アイツだって『見る』事は出来ても、『観る』事までは出来なかったんだぜ?」

「そうよぉぉーっ! つまり貴女がおかしいの! 私達にもおーしーえーなーさぁぁーいっ!」

「あーあーあぁあぁ~わぁ~かったからぁ~ゆーらーすーなぁぁ~!」


 ぐらんぐらんぐらんと、シェラザード様に揺らされるアリサ様。そう、これを期に私達の猛特訓が始まったのよね……ああ、思い出しただけでちょっと意識が遠退きそう……


「──ですから、たとえ闇の大魔法って言っても通じません!」

「……付け加えると、お前が自慢している『不老不死』……その弱点についても、俺達は……知っている!」

「ふ、ふざけるなぁっ!! そ、そんな馬鹿げた話があってたまるか!?

 魔法が発動後の術式に介入して無効化させるなど……!! 馬鹿な馬鹿な! 認めん! 闇よ!」


ブワァァァーッ!!


 懲りないわね……わざわざ私が回想も交えて懇切丁寧に種明かしをしてあげたというのに……ミストとデュアードの言葉に酷く動揺しているエリクシル、とかいうヴァンパイアロードさんは、飽きもせず再び『闇の衣』を身に纏った。


「忌々しい女神の手先共が! 我等の理想郷の礎としてくれるわ! 『闇の獄炎(ダークインフェルノ)』!!」

「えいっ!!」


ポシュン……


「馬鹿なぁぁーっ!?」


 今度はミストがエリクシルの魔法をかき消した。『闇の衣』も『闇の獄炎(ダークインフェルノ)』もあっという間に霧散し魔素へと還っていく。怒りと驚愕にワナワナと震えるエリクシルが少しだけ憐れに思えるわね。所詮は箱庭の王……結局のところ、井の中の蛙でしかなかったのだから。


「だが、同情する気にはなれん。貴様はここで潰えろ!」

「おのれ! 私はまだ終わらぬぞ! 私にはロア様がついている、来たれ『魔装戦士』!」


ブゥゥンブゥゥン……


 往生際の悪い! バルドに責められたエリクシルが手を振りかざすと、周囲にいくつもの召喚陣が! そこから現れる何体もの『魔装戦士』達!


「ここからが本番と言うわけね……皆、油断せずに! でも、迅速に片を付けましょう!」


応!!


 十中八九。この神殿には『ディードバウアー』を復活させる為の鍵となる何かがある! それを阻止するためにもこの戦いは早急に片付けなくては! いくわよ!!

アリサ「みんなの魔法はね~サンドイッチなのよ(^ー^)」

ユニ「はーいo(*≧∇≦)ノ ユニはね~アリサおねぇちゃんの作る、ふわっふわのタマゴサンドがだーい好き♪( 〃▽〃)」

アリア「んぅ~♪(*>ω<*) アリアも大好き!(*´▽`*) です!( *´艸`)」

ネネ「わかります(⌒‐⌒) あのクリームのような柔らかくてまろやかなタマゴサンドは病みつきになってしまいますよね♪(*≧∀≦)」

モモ「なんだか食べたくなってきちゃいました~♪(´∀`*)」

シェリー「ちょっと( ̄▽ ̄;) 今はそういった話じゃないでしょう?(´ヘ`;) いえ、私も好きだけど、タマゴサンド(^_^;)」

シェラザード「つまりは中身が見えているって言いたいのね?(;¬_¬)」

ルヴィアス「あー(・o・) なるほどそういう喩えか( ´ー`)」

アリサ「そそ(*´▽`*) 私達らしく食べ物に喩えてみたよ♪(^ー^) 魔方陣がパンで、術式が具材ね?(*゜∀゜)」

ティターニア「積層型の魔方陣を用いる魔法なら( ´~`) さしずめハンバーガーですわね!(*^▽^*)」

アリス「でっすとサンドイッチも積層型になりゃーしまっせんかねぇ?σ(´・ε・`*)」

ミスト「アリスさん!(`□´) この際そんな細かい事はいいんですよ!ι(`ロ´)ノ」

アリス「あ、はい(´・ω・`; )」

レウィリリーネ「ん(_ _) そう考えるとわかりやすい……ジャムパンとかあんぱんにすればいいって事になる( ̄0 ̄)/」

アリサ「どんぶりでもいいのよ~♪(*`艸´) ほい(* ̄∇ ̄)ノ これはカツ丼かな?( ´ー`) それとも親子丼?(´・ω・`)」

ユニ「ユニは親子丼がいいと思います!( ・`ω・´) あの柔らかい鶏のお肉をお出汁の利いたふんわり玉子とご飯を一緒にあむーって!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ あぁん♥️ ヨダレでちゃーう( ̄¬ ̄)」

アルティレーネ「私はカツ丼が良いですね(*´∇`*) サクサク衣にとろ~り卵が美味しいおつゆを吸って、ライスと一緒に食べると、ジューシーなお肉の美味しさと合わさって……じゅるり(゜ρ゜)」

ミスト「き、聞いてたらお腹空いてきちゃいました~σ(*´∀`*)」

サーサ「作りましょうアリサ様!(。・`з・)ノ 私もお腹ぐうぐうです!ヽ(*´∀`*)ノ」

アリサ「はいはい。:+((*´艸`))+:。 じゃあ美味しいの作ろうねみんな♪(´・∀・`)」

シェラザード「はぁ……(*゜∀゜)=3 結局食べ物に行き着くのねぇ(;´∀`) あ、私海老カツ丼がいいわ!(*`▽´*)」

ルヴィアス「おっと!( ; ゜Д゜) 贅沢じゃーんシェラザード?(°▽°) んじゃ俺は牛丼をリクエストしちゃおうかな!ヽ( ゜∀゜)ノ」

ユニ「あははヾ(≧∀≦*)ノ〃 もう全部作ろうよ♪(*>∇<)ノ」

ミスト「みんなで作ればあっという間ですね!(*´∇`*)」

アリス「うしし♪(*´艸`*) ランバード使用人部隊もだいぶおっりょ~り上手になってまっすしね!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」

モモ「わーい!ヽ(*>∇<)ノ ごっはんごっはん~♪(≧▽≦)」

ネネ「毎日美味しいご飯が食べられるのは幸せ~♪O(≧∇≦)O あれ?(゜A゜) なんの話してたんだっけ?(´-ω-`) まぁ、いっか♪(=^ェ^=)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ