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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
184/211

147話 神殿『ヨシュア』での戦い

────────────────────────────

【増える!】~一枚の切り札~《ネネview》

────────────────────────────


ザシュゥッ!!


「なにぃっ!? 反射されぬだと! 汝等のようないと小さき者共が、吾輩の術を理解したと言うか!?」


 私の魔法剣がロアを護る障壁を切り裂きます!

 ニャモとミミの仕掛けた攻撃を跳ね返す厄介なこの障壁ですが、その正体は……


「『すいっちょんくん』……アリサ様とレウィリリーネ様が開発した、あの究極結界の応用!」


 『無限円環(メビウス)』での訓練、その合間に私は、アリサ様とレウィリリーネ様に興味本意でお訊ねしたことがあった。

 『すいっちょんくん』とは、向けられるありとあらゆる力を強弱大小関係なしに、エネルギーとして捉え、吸収して、アリサ様の『貯槽(タンク)』へと送り込まれる。

 そして、その『貯槽(タンク)』にて貯蔵したエネルギーを総て、指向性を洗い流した純粋なエネルギーに変換させ、龍脈に流しその先の『世界樹(ユニちゃん)』へと辿り着く。そのエネルギーの供給を受けることで『世界樹(ユニちゃん)』は活性化して、世界の自浄作用の効果を高める事ができるのだ。


「要は『吸収』するか『反射』させるかの違い。その部分の術式に介入してやれば! 粉☆砕!!」


ドッゴォォーンッ!! バリィィーンッ!!


「むおぉっ!? 馬鹿な! 吾輩以外にその知に至る者がいたと言うのか!?

 あの魔女か! それに小娘の女神!!」


 モモのモーニングスターがロアを守っていた反射の術式を粉砕しました! さあ! 今こそ反撃の時!

 総ての元凶であるこの『狂神』を討ち果たしましょう!


「君はその、無駄に高い自尊心のせいで他人を見下し過ぎだね!」

「ふむ」


ビュオンッ! ガギィィンッ!!


 狼狽えるロアの隙を見て、レジーナの高速の剣が振り下ろされます! 咄嗟にロアは一体の『魔装戦士』を召喚し、その斬撃を防がせました。


「お得意のオモチャ? そんなの何体いようと私達の敵じゃないわ!」

「そうかな? ならば試してみるが良い。先程の汝等の回答は見事正解であるが、今度はそう簡単にいかぬぞ?」


 ドォォンッ! ニャモのナイフが煌めき、召喚された『魔装戦士』を一閃のもとに爆発させました。しかし、それと同時に今度は二体の『魔装戦士』が現れます。


「一体増えたからってどうなるってーのかな!?」


ヒュオンヒュオンッ!! ドドォォーンッ!!


 間髪入れずに召喚された二体の『魔装戦士』を、ミミの投げつけた扇が切り裂いてまたもや爆散させますが……


ブゥゥンブゥゥンブゥゥンブゥゥン……


「なんですなんです? 倍々になって増えていきますよ!?」


 こ、今度は四体! 倒した数の倍になって召喚されてしまうんですか!? ロアは、しまった! 距離を取られている!


「汝等のその強さ。認めよう……正直侮っていたぞ?

 故に、吾輩は汝等に敬意を表し、ひとつ切り札を開示しよう」


 ザザッ! ロアを守るように四体の『魔装戦士』が私達の前に立ちはだかりました。どうしましょう? 倒してもその倍の数がまた現れるとなれば、キリがありません。


「それならやり過ごすだけさ! みんな、『魔装戦士』の攻撃はいなしてロアだけを狙おう!」

「まあ、それが妥当な策ですよね」「オッケー!」

「些か消化不良ですけど、仕方ないですね」「ちんけな切り札ね『技工神』?」


 レジーナが直ぐに作戦を立てます。単純に『魔装戦士』を倒さず、ロアのみに狙いを絞ればいいだけ。モモはちょっと粉砕したりないのか、やや不満顔ですが、私を含め、皆その作戦にシフトします!


「そう思うか? ならば試してみよ?」

「言われなくとも! ハァッ!!」


ガギィィンッ! ビュオォンッ!!


「っっ!? な、なんだって!? さっきとまるで動きが違っうわぁぁーっ!!」


ドゴォォーッ!! ドガァッ!!


 レジーナ!! なんてこと!? 素早くロアとの間合いを詰め、斬りかかったレジーナの動きに『魔装戦士』が反応し、剣を盾で防ぎました! 今までとまるで違うその反応速度に驚くレジーナを『ビームソード』と言う魔法剣で斬りつける『魔装戦士』! それをかろうじて回避するものの、別の『魔装戦士』が猛烈なタックルを仕掛けます!


「うぐっ……やってくれるじゃあないか?」

「ちょっとレジーナ大丈夫!?」


 タックルをまともに受けたレジーナは、しこたまこの神殿の壁に叩き付けられて苦しそうにしながらも立ち上がりました。駆け寄るニャモからポーションを受け取り飲み干す彼女。これは、油断できませんね!


────────────────────────────

【積もった怨嗟】~『黒水晶』再び~《バルガスview》

────────────────────────────


ドゴォッ! バキィッ!!


「ぐわぁぁーっ!!」「うごぉっ!!」


 我の大剣の腹と、デュアードの槍の石突きが『蛇人(スネークス)』ヴァルジャの急所を打ち、膝をつかせる。それと同時、セラの斧とバルドの剣を捌ききれなかったエルフのジャイファもまた、我等の前に屈した。


「勝負ありだぜ? たかが十倍の重力に、力を十分の一にする結界なんぞで、アタイ達を止められるなんて思ったのかよ?」

「どうやらお前達は特殊な魔装具でその効果を無効化させていたようだが……」

「……ハンデにも、ならん」


 膝をつくヴァルジャと、倒れ伏すジャイファに対して武器を突き付け、明らかに勝敗を示す。

 この二人にエリクシルの手下である吸血鬼共は、結界の影響を受けることなく襲い掛かってきたが……それはバルドが見抜いた特殊な魔装具によるものであった。まぁ、デュアードの言うように、なんのハンデにもならぬほど、コヤツ等は未熟であったのだがな。


「あらよっと! バルドさん、こっちも終わりましたよ!?」

「少し過剰戦力だったかしらね?」「私、ほとんど出番なかったです」


 ふむ。吸血鬼共を相手にしていたブレイドにシェリー、ミストと我が妻ネヴュラの方も片付いたか。横目に少し見たが、ブレイドの奴が大層目立っておったな。ふはは、やんちゃ坊主めが!


「確かにこの者達に対しては過剰だったかも知れませんが、シェリーさん、ミストさん。遺された遺恨を抱える者の執念は非常に危険なものです。油断なさらずに」


 うむ。妻の言う通り油断はできぬ。吸血鬼共はともかく、この『蛇人(スネークス)』とエルフからは今までの洗脳を受けておる『亜人(デミヒューマン)』とは違い、確固たる意志と怨嗟をハッキリと感じたのだ。


「そもそも、どうしてこんな組織に与しているんですかあなた方? 『セリアベール』で暮らしていたのなら、差別なんてまずないでしょう?」

「差別、だと……?」「ふ、ふふふ……そうか、貴様達は知らんか……」


 我等の手によりきつく拘束され、身動きの取れぬ二人に、ミュンルーカが問いかける。そうだ。我も魔神に押し付けられた『聖域』の呪いの番から解放され、この現世に出てきたが、『亜人差別』など一度も見たことがないぞ?


「無理もない。貴様等はまだ若く、歴史を知らぬのだ」

「……これだから『人間(ヒューマン)』は……百年前の所業を伝えようともせん!

 我が部族は貴様達冒険者! 『人間(ヒューマン)』共に滅ぼされたのだぞ!?」


 ……ほう。なるほどそういうことか。妻の感じた強い遺恨の念。その闇が百年前か。


「それだけではない! 八十年前、私の妹が貴様等冒険者に拐かされ、辱しめを受けて殺された!

 当時は物珍しいエルフ、その美姫と言う理由だけでだ!!」


我等は貴様達を絶対に許さん!! この恨み! 晴らさでおくべきかァァーッ!!?


 ゴゴゴゴゴッ!! むぅっ!? このドス黒い魔力の奔流!


「ウヌ等『黒水晶』を!? やめよ! 戻れなくなるぞ!?」


 我等の前に屈したと思われたこの二人。憎悪の原因に触れたことで怨嗟の念が膨れ上がり、隠し持っていた『黒水晶』が反応を示しおった!

 二人の体から黒き魔力が溢れだし、その姿を異形に変貌させていく!


「グオォォォーッ!!」「ガアァァーッ!!」

「な、なんてこった! こんな禍々しい竜に精霊は初めて見るぜ!?」

「チッ! 勘違いも甚だしい、その事実は伝わっているからこそ、今『亜人(デミヒューマン)』と『人間(ヒューマン)』は手を取り合えているんだぞ!?」


 『黒水晶』が発する強大な魔力はヴァルジャとジャイファを包み込み力を与えるに至る!

 ヴァルジャは黒紫の竜に、ジャイファは黒炎を纏う精霊に! それぞれ共通してドス黒い魔力をオーラにして放つ……なんと哀れな姿か……叫ぶセラとバルドの声も届いてはおるまい。


「……俺達の知らねぇ過去にそんな時代があったんだな?」

「そうだね、ブレイド……私達の今は多くの歴史の上にあるんだ……」

「……そうだな、ならば……拾おう」

「仕方ないわね……貴方達のその恨みつらみもひっくるめて!」

「ワタシ達が未来に持っていきますよ!」


 ブレイド、ミスト、デュアード、シェリー、ミュンルーカ……ウヌ等、受け止める覚悟か。うむ。見事!


「気を付けろ皆! この二人は最早怨嗟を力に換えた怪物だ! くそっ! 結界もまだ効いている……思うように動けんか!」

「ガッシュさんは無理をせずに! いいですか? この障壁から出てはいけませんよ!?」


 十倍の重力に、力を十分の一にするこの結界の中、立ち上がろうとするガッシュを妻が諌める。我等のように訓練を経ておらぬガッシュにはこの結界は辛かろう。


「ネヴュラよ、ガッシュをなんとしても護り通せ。ゼオンやゲキテウス王に引き合わせねばならんからな」

「ええ。『エルハダージャ』で行われる『ココノエ』の手紙の開帳会もございますしね」


 ああ、それにこの先にはあのヴァンパイアロードが待ち構えているのだ。いつまでも留まってはおられぬ!

 さあ、往くぞ! 『黒狼』達と共に!


────────────────────────────

【攻撃開始!】~同時に『亜人(デミヒューマン)』救出!~《ゼーロview》

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《目標を肉眼で確認! 的は大きいぞ皆!》

《逸らないで下さいよゼーロ! 内部には『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』達がいるんですから!》

「なに、案ずるなレイミーア殿! 外装兵器を破壊してただの空飛ぶガラクタに変えてやればよかろう!」

《ユナイトの言う通りです、お楽しみは皆脱出してからに致しましょう!》

(おやぁ~? 早速お出迎えの『魔装戦士』達がやって来ますよぉ~?)


 大地殿とヒャッハー殿より送られてきた『ディード教団』の本拠地たる、浮上神殿。その要塞のごとき全容の映像を見た我々『ガルーダナンバーズ』の各小隊長達は、揃い是非とも挑みたいと、心を一つにした。

 『聖域』の空の守りは部下のグリフォン達とカインやゆかり様と言った強者達に任せ、我等は喜び勇んでこの『ゲキテウス西海』の空へと揃い踏みしたのだ!

 映像で見るのとは違うその巨大さ、まるで一国の王城がそのまま空へとあがってきたかのようではないか! 素晴らしい! これぞ我等の相手に相応しいものはあるまい!

 興奮を隠しきれず、高揚した気分のままでいたら、仲間達に諌められてしまった。そうだ、忘れてはいかん。バルド殿達、バルガスとネヴュラ、そしてレジーナ達『猫兎(キャットラビット)』が今もあの内部で戦っているのだ。


《よし! ならばユナイトの案を採用する! 目標はあの神殿に搭載されているであろう攻撃兵器だ!

 ふはは! 派手に騒ごうぞ、祭りの始まりだ! 各自散開!! あの神殿を丸裸にしてやれ!!》


了解っ!!


 バァーッ!! 我の号令のもと仲間達が各々散って行く! ふふふ……この大物を前に猛る気持ちは皆同じよ! さあ! まずは出迎えの『魔装戦士』と戯れてくれようか!


ドシュゥーッドシュゥーッ!!


 ふんっ! 砲撃するタイプが二体だけか? 随分甘く見られたものだな!? そんな見え透いた狙いで当たると思うたか!?


ヒュゴォォーッ!! ザンッザンッ!! ズドォォーンッ!!


 我は『魔装戦士』の砲撃をヒラリとかわしつつ、急速に接近。展開させておいた『光の翼(ライトブレード)』にて撫で斬りし撃破する!


ズダダダダダダッッッ!!!


《ほう、間髪入れずに攻撃してきたか! 中々に相手の練度も高いようだな!?》


 我が二体の『魔装戦士』を撃破すると同時、神殿から激しい攻撃が我を襲う。確かこの礫の雨は『機銃』とか言うのだったか? 使い手の腕は確かに良い。正確無比に我を狙っている! 見越し射撃も上手い!


《残念だがその程度の威力ではな!》


カッ! ズドォォーンッ!!


 よし! まずは一つ落としたぞ。我が『熱光線(プロミネンス・レイ)』の威力も厳しい訓練を経て、相当増している。その直撃を受けた兵装設備は跡形もなく粉微塵よ!


《ゼーロ! 神殿の兵器を操作してる者は『教団』の親玉に洗脳されているだけだと言う話でしょう!?》

《案ずるなレイヴン! しもべの吸血鬼のみの部隊であったのは確認済みだ》


 レイヴンが『教団』の親玉であるヴァンパイアロードに洗脳を施された『亜人(デミヒューマン)』を、我がまとめて消し去ったとでも思ったのだろう。


「なに、それならば我が内部の『亜人(デミヒューマン)』達を拘束して連れだそう!」

《それは頼もしいですね! ユナイト、お願いします!》


 だが、確かにいちいち相手が『教団』の親玉に洗脳された、元は何も知らぬ『亜人(デミヒューマン)』であるのか? それとも眷属と成り果てた吸血鬼なのかを判別しながら戦っていたのでは、全力で戦うにも支障が出る。ユナイトもそれを察してくれたのだろう。『セイントビートル』の小さな体躯であればこの神殿に侵入するのも容易だ。我もレイミーア同様にユナイトに願おう!


《頼むユナイト! 洗脳された『亜人(デミヒューマン)』達を救いだしてやってくれ!》

「了解だゼーロ殿! ついでに『猫兎(キャットラビット)』と『黒狼』の様子も見てこよう!」


 うむ! よろしく頼むユナイト! その間我等は『魔装戦士』の相手をしよう!


ゴゴゴゴゴッッッ……


(はっ!? こ、この気配! このいやぁ~な気配は!!)

《むぅっ!? なんとドス黒い魔力!》


 ユナイトが神殿内へ侵入し、我等は『魔装戦士』を相手にしつつ、神殿の武装のみを破壊していくその最中。その神殿の内部より二つの魔力の昂りを感じ取った! エスペルが真っ先に気付き、続いて我も感じた、このドス黒い嫌な気配は!


《忘れもしない! 『黒水晶』の魔力!!》

《なんてこと! バルド殿達とレジーナ殿達は無事でしょうか!?》


 そうだ、この感じは『聖域』を再生させたあの戦いの際に感じた『黒水晶』の魔力だ! レイミーアとレイヴンも……いや、誰もが忘れる筈もないあの禍々しい魔力の奔流!

 嫌な予感がする! 急いでくれユナイト! 『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』達、それに『亜人(デミヒューマン)』達が気がかりでならん!


────────────────────────────

【甘く見ていた】~これ程とはな~《ロアview》

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「くぅっ! ネネ! 『魔装戦士』の動きを止めるんだ!」

「このままじゃ埒があかないよ!」


 存外粘るものだな。

 吾輩の反射の護りを一目で見破り突破したこのいと小さき者共に、些か興味が湧いた吾輩は、戯れを今暫く続けることにした。

 女神共に鍛えられたのか? はたまた、実験場へと追放してやったあの魔女のお陰か?

 このいと小さき者達の力は並大抵のものではない。吾輩の『魔装戦士』をものともせずに斬り捨てるその実力、ふふふ……愉快でならぬな。

 ああ、認めよう。汝等は強い。神たるこの身にその刃が届くほどまで鍛え上げたその努力。見事であると、称賛してくれよう。


「了解! オプションブレード!」


 この『兎人(ワーラビット)』と『人猫(ワーキャット)』共を束ねる『人間(ヒューマン)』である、レジーナという者とミミと呼ばれた『兎人(ワーラビット)』の叫びにネネという『人猫(ワーキャット)』が応え、拘束の魔法を取り囲む『魔装戦士』に仕掛ける。


バギィィィーンッ!!


「だ、駄目!! 効いてない!」


 浅慮である。ニャモという『人猫(ワーキャット)』が叫んでいるが、吾輩の『魔装戦士』達は常に学ぶのである。


「そしてその情報を共有すると同時、性能も向上させていく。これが『アップデート』である」

「それなら、力ずくですよ! 粉砕!!」


ドガドゴバキボゴォォーッ!! ガララーッッ!!


 むぅ……このモモと呼ばれた『兎人(ワーラビット)』はやはり危険である。その行動に躊躇いが一切見られぬ。今も迷いなく四体の『魔装戦士』の四肢を破壊し、身動きを封じた。

 成る程、完全に破壊さえしなければ増えることはないとでも踏んだか?


「やはり浅慮。その程度で吾輩の兵を抑えたとでも言いたいか?

 知れ。愚かな思慮浅き小さな者共。吾輩の前に立った時点で汝等の敗北は必定であると。

 これが『無限錬成』である」


ブゥゥゥーンッッ……


「な、なんだって!?」「そ、そんな!」

「ウッソでしょ!?」「これは厳しいですね……」


 青ざめたな? 吾輩が新たに呼び出した『魔装戦士』達を見て絶句する汝等のその表情。実に愉快である。『人間(ヒューマン)』も『人猫(ワーキャット)』の二人も、『兎人(ワーラビット)』の一人も……むっ?


「ふんさーいふんさーい! 『粉☆砕』! ですよぉぉ~♪ あはははは!!」

「なにっ!? 貴様っ!」


ドガァンッ!! ドゴォォーンッ!! ボゴォォーッ!!


 一人だけ! 一人だけおかしい者がいる!!

 なんなのだこのモモと呼ばれる『兎人(ワーラビット)』は!? 吾輩が召喚した『魔装戦士』を次々に行動不能、爆破未満に破壊していく!


「ほらほらぁ~みんな~♪ この程度の事で根をあげてちゃアリサ様が戻られたときに大笑いされちゃいますよ~?」

「モモ! あ、ああ……そうだ……そうだね! 君の言う通りだ!

 皆立ち上がれ! 召喚される『魔装戦士』達を片っ端から行動不能にするんだ! 僕は彼を叩く!」

「はっ! はい! わかりましたレジーナ! モモに続きます!!」

「いっけない! あたしってば飲まれてた!? くぅ~踊り子が舞台でビビってどうするっての!?」

「ありがとうモモ! そうね、ここは私達『猫兎(キャットラビット)』らしく派手にいきましょう!」


ズバァァンッ!! バシュゥッ!! ドガドガァッ!!


 ぬぅっ!! おのれ、小賢しい者共め! それならば新たに召喚し、動けぬ『魔装戦士』を自爆させるまでだ!!


「おっと! 下手な動きすら今の僕は見逃さないぞ!! 君が見せた『無限錬成』とやらは、何かしらアクションが必要になるんだろう!?」


 ちぃっ! このレジーナという娘。一体どのような鍛え方をしたのだ!? 武芸と学問。畑違いといえど、吾輩は神の一柱。その吾輩に一切の隙を与えぬ機敏な動き! だが、残念だったな?


「吾輩は『技工神』。その尖兵たる『魔装戦士』は吾輩の手足! どのような状況からでも呼び出せるのである。そう、こうして吾輩が口を開いている間にもな?」


ブゥゥンブゥゥン……


「はっ! 上等よ、最初こそ面食らったけどだいぶ馴れてきたわ!」

「だね! これなら『無限円環(メビウス)』でやった千人組手の方がよっぽど地獄だったよ!」


 なにぃ? 『無限円環(メビウス)』だと? なんだそれは!?


「貴様がロアかぁぁーっっ!?」

「なにぃっっ!?」


ドグシャァッ!!


────────────────────────────

【今ここで!】~同胞の無念を晴らす!~《ユナイトview》

────────────────────────────


 我自身、恥ずべき行為であると重々承知している。

 しかし、それでも尚、仕掛けずにはいられなかった……この不意討ちという、騎士にあるまじき行為を!

 目の前にいるのはこの騒動の総ての元凶たる、『技工神』ロア!


「うがあぁぁっ!!?」

「ロア! 貴様だけは断じて許さん! 我が同胞達の無念、ここで晴らさせてもらうぞ!!」

「ゆ、ユナイトくん!?」「どうしてここに!?」


 我の不意討ちにより、心臓を貫かれ苦痛に喘ぐロア! やはり不滅持ちの神! 普通ならば即死であろうが……しかし、その痛みは相当であろう!! レジーナ殿、ニャモ殿、済まぬが勝手に介入させてもらうぞ!?


「立ていっ! 我が同胞や『聖域』の朋友達が被った痛みと苦しみは、そんなものでは済まされん!」

「がっ! ぐぅぅ……わ、吾輩が……吾輩が、こんな!?」


 ちぃっ! 既に傷の再生が始まっている! これだから厄介なのだ、神や魔王という連中は!


「す、凄いユナイトさん! あのロアが膝をついた!」

「一気に畳み掛けようよ、みんな!」

「そうね! 凄い速さで傷が塞がっていく!」

「この機会を逃す訳にいかないね!」

「さあ、今度こそ『粉☆砕』してあげますよぉ~!」


 ネネ殿が驚き、ミミ殿が呼び掛ける! さすれば即座に動き出すニャモ殿とレジーナ殿にモモ殿だ。流石はベテラン冒険者! 状況を素早く理解し、対応を取る。その臨機応変な姿勢に感服せずにおられん。

 では往こう! この元凶を討ち総ての因縁に決着を着ける!


「図に乗るなぁぁーっ!! この有象無象共がぁァァーっ!!」


ドゴォォォォォーンッ!!!


「うおぉぉっ!!?」「「「きゃあぁぁぁーっ!!?」」」


 我等が一気にロアを叩こうとしたその瞬間、奴は怒りの雄叫びを挙げ、大気が爆ぜた!

 その凄まじい衝撃に吹き飛ばされる! おのれ! 悪足掻きを!!


「汝等は許さぬ……戯れは終わりだ! 吾輩が描くこの世界の終わりをその眼に焼き付け滅びるがいい!」


シュンッ……


「貴様! 逃げるか!?」


 捨て台詞を吐いて何処かに転移するロア。くそっ! 逃してしまった!


「マズイね、逃がしちゃった……アイツ、どうするつもりだろ?」

「わからないけど、嫌な予感で尻尾がビンビンしてるわ!」

「ああ、僕もさ。それはともかく、ありがとうユナイトくん。救援感謝するよ」


 起き上がるミミ殿とニャモ殿が各々の武器を納め、神殿の壁を睨み付ける。確かにロアの言動は気になるところだ。一体何をするつもりなのか……?


「そうですね、ガルーダナンバーズはこの神殿を無力化させるために動いてるのではありませんでしたか?」

「なんかここに来たのって理由あるんですか?」

「おお、そうであった! 我は『亜人(デミヒューマン)』達を退避させるべく乗り込んだのだ」


 我に礼を述べるレジーナ殿に「気にするな」と一声。ネネ殿とモモ殿が何故我がこの神殿内部に来たかを問うた事で我も本来の目的を思い出した。いかんいかん……ロアの姿を、その名を聞いた時に、我が今まで溜め込んでいた積年の『想い』が爆発してしまった……我を忘れた横槍、誠に済まぬ。


「大丈夫さ! 君達は『魔神戦争』当時、実際に被害を被ったんだ。元凶を前にしてそうなるのは無理もないよ?」

「ええ、レジーナに同意するわユナイトさん。それより、洗脳されて操られている『亜人(デミヒューマン)』達を探すなら、急ぎましょう!」

「はい! 私達も協力します!」「ロアもどっか行っちゃいましたしね」

「どうにも嫌な予感が収まらないよ、急いだ方が良さそうだね!」


 皆……感謝する! 確かに我も悪い予感がしてやまぬ。ロアを仕留め損ない、中途半端に深手を負わせただけ、という結果になってしまった事で事態が悪い方向に進んでしまうかもしれん! 急ぎ『亜人(デミヒューマン)』達を保護し、皆が全力で戦える場を整えなければ!


ゴォォンッ! ゴゴゴゴ……


「うわっ!?」「なにっ!?」

《ユナイト聞こえるか!? 神殿が移動を始めたぞ! 『亜人(デミヒューマン)』達の救出はどうなっている!?》

「ゼーロ殿か! 済まぬ、突入した先でロアと対峙! 深手を負わせたものの逃げられてしまったのだ!

 現在『猫兎(キャットラビット)』達と合流した、これより『亜人(デミヒューマン)』達の保護に向かう!」


 我は飛んでいるためわからなかったが、どうやら神殿が突如揺れ出したらしい。ミミ殿とレジーナ殿が少しよろめき驚いている。その矢先、我等が隊長のゼーロ殿より通信が入る。それによればこの神殿が移動を始めたと言う。一体何処に向かうつもりだ!?


《急げ! この進路は……むおっ!?》

「「「ゼーロさん!?」」」


 我が今の状況を伝えると、ゼーロ殿の焦りが混じった声がした後、通信が途絶えた! 共に通信を聞いていた『猫兎(キャットラビット)』の面々も、そのただならぬ事態に焦燥が募る……


「急がねばならぬな! バルド殿達『黒狼』とも合流したいが……」


────────────────────────────

【アタイ達は】~止まらねぇぜ!~《セラview》

────────────────────────────


「グオオオォォーッ!!」「ガアアァァーッ!!」


ビュオンッ! ドゴォォーッ!! ズドォォーンッ!


 哀れな奴等だぜ! いくら『黒水晶』の力に頼ってもそれを制御できなきゃなんの意味もねぇだろ?

 アタイ達は怒りと憎しみに囚われ、その力を何倍にも増幅させる『黒水晶』を取り込んだ黒フード共の幹部だっつー『蛇人(スネークス)』のヴァルジャと、エルフのジャイファって野郎達の相手をしている。

 『黒水晶』を取り込んだ事でこの二人……ヴァルジャは禍々しい黒紫の竜へと、ジャイファはドス黒い魔力を纏う精霊にそれぞれ変化したんだけどよ……


「愚かな……力に呑まれたか」

「最早、理性なきただの魔物だな……バルガス殿」


 うむ。って、バルドと隣り合うバルガスがその声に頷く。そして振り上げる両の剣。


「ギャオオォォーッ!!」

「せめて安らかに眠れ!」「剣聖剣技奥義・魔断!!」


ズバアァァァーンッ!!!


 剣を構える二人に形振り構わず、ただただその憎悪に従い向かってきたヴァルジャに対し、バルドとバルガスが放つ剣聖剣技・奥義『魔断』! この技は相手の悪意や憎悪と言った負の魔力に対して特効を持った剣聖メルドレード、ひいては『剣神』RYOの編み出した奥義。その破魔の斬撃を受けたヴァルジャの奴は……


「ギャオォ……ガァ……」


 最後の最期まで、自分自身の理性を取り戻すことなく……一頭の哀れな竜としてその身を魔素に還し、消えていった。


「……こっちも終わらせるぜ、ネヴュラ?」

「ええ、彼もまた完全に『黒水晶』の力に屈し、何一つ言葉が届きません……」


 ああ、そうだな……アタイとネヴュラが睨み付けるこの精霊に声を届ける事ができるとしたら、それは、コイツの妹だけだろうぜ? その妹ってのも八十年前に没してる。無い物ねだりしたって仕方ねぇぜ。


「アガアァァーッ!!」


 ジャイファが放つ炎魔法『獄炎(インフェルノ)』がアタイとネヴュラに迫る、けど……


「『魔法の盾(マジックシールド)』!」「『魔力障壁(マジックバリア)』!」

「『炎抵抗(フレイムレジスト)』!」


 続けざまに重なる防護魔法がそれを決して通さない。シェリーの『魔法の盾(マジックシールド)』、ミストの『魔力障壁(マジックバリア)』、そしてミュンの『炎抵抗(フレイムレジスト)』だぜ。


「そう騒ぐんじゃねぇよ? 今楽にしてやっからよぉ……シェリー、ミスト、ミュン。サンキューな」

「セラさん、『ヴァランガ』を……」


 応、わかってるぜネヴュラ。

 アタイの『ヴァランガ』はアルティレーネ様が創ってくれた特別な武器よ。


「ウガラァァーッ!!」

「ははっやっぱ本能的にコイツのヤバさに気付きやがったみてぇだな!?」

「ふんっ!」「おらよっと!」


ザシュッザシューッ!!


 構えを取ったアタイに猛然と突っ込んでくるジャイファには、明らかに焦りが見られる。

 それもその筈で、この『ヴァランガ』が本領を発揮するのは超強力な『浄化』の力だ。『黒水晶』みてぇな穢れの塊取り込んだコイツにゃ、正に天敵だろうぜ?

 だが、そんなジャイファの突進を怯ませる二つの斬撃疾る。デュアードとブレイドによる一閃だ!


「いけ……セラ。終わらせろ……」

「見届ける……俺はコイツらの事、絶対忘れねぇぜ!」

「ウガ……ガァ……!」


 任せろデュアード、いい顔するようになったなブレイド! さあっ! 決めるぜ!!


「おらぁぁーっ!! 吼えろ『ヴァランガ』!! 行くぜ! 『破魔断滅斬』!!」


フィィィン……ズッバアァァァーンッッ!!


「ウガアァァァーッ!!!」

「消えな! あの世とやらできっとてめえの妹も待ってんだろうぜ!!」


 ジュワアァー……って大気に溶けるようにして消えていくジャイファ……まったく、後味の悪い戦いだぜ!


「そっちも片付いたかセラ」

「ああ、みんながフォローしてくれたかんな!」


 仲間達がアタイに集中する時間を与えてくれたお陰で、『ヴァランガ』に魔力を十分チャージすることができた。ほんの数秒のチャージでも結構な威力が出せる、正に『神器』だぜ。


ブゥゥゥン……


「おぉ、か、体が動く! 二人が倒された事で結界が解除されたのか?」

「ご無事でなによりでした。ガッシュさん、エリクシルの臭いは辿れますか?」


 おっ? ホントだ。体が軽くなったぜ。ガッシュも立ち上がってる、ネヴュラがしっかり守ってくれたお陰だな!


「うむ。済まぬネヴュラ殿……足手まといの私を守って頂けたこと感謝する!

 エリクシルは……フンフン……あの先だ! 上手く誤魔化しているようだが、私の嗅覚は欺けん!」


 そう言ってガッシュが指差す先。この広間から何本かに枝分かれしている通路から、迷わず指し示したその一本の長い廊下をアタイ達は睨み付ける。

 さぁて、いよいよ王手だぜ! 首洗って待ってやがれ黒フードの親玉さんよぉ!!

ガッシュ「す、凄まじい!Σ(゜ロ゜;)」

ネヴュラ「ガッシュさん、結界でお辛いでしょうがもう少しの辛抱です(^ー^)」

ガッシュ「す、済まぬネヴュラ殿(;>_<;) しかし貴公等は一体どんな訓練をしてきたのだ?(;`・ω・) 『黒狼』の連中はつい先日までは私達とそう差はなかった筈……(゜A゜;)」

ネヴュラ「あら( *´艸`) 気になりますか?(*´∇`)」

ガッシュ「無論だ!(。・`з・)ノ どうしたらあんな力をこの短期間で身に付けられるのだ!?((゜□゜;))」

ネヴュラ「うふふ♪(*≧∀≦) これも我等が神たるアリサ様のお陰ですわ( ・∇・) 私達はアリサ様がご用意して下さった特殊な空間で修練に励みましたのよ?(_ _)」

ガッシュ「なんと、特殊な空間ですか?(゜Д゜;)」

ネヴュラ「はい(^-^) なんとその空間ではこちらの一日が一年となるのです!(y゜ロ゜)y」

ガッシュ「はぁっ!?Σ(Д゜;/)/ そんな馬鹿な!?(゜ω゜;)」

ネヴュラ「うふふ(*´艸`*) 冬に召したあの『お餅』は色々な味付けができて、その柔らかい食感がとても楽しく……(*´ω`*)」

ガッシュ「は……?(´・ω・`; ) え、オモチ……?σ(´・ε・`*)」

ネヴュラ「春には菱餅、ひなあられ、ちらし寿司に桜餅……:*(〃∇〃人)*: ああ、あの甘酒に白酒もとても美味しく……o(*⌒―⌒*)o」

ガッシュ「あ、あのぉ~(ーー;) ネヴュラ殿?( ̄0 ̄;)」

ネヴュラ「夏も凄かったのですよ!( ・`ω・´)」

ガッシュ「え?Σ(O_O;) あ、はい……どのように凄かったのでしょうか?(;´A`)」

ネヴュラ「うふふ!(*`▽´*) なんとカレーですよカレー!ヽ( ゜∀゜)ノ」

ガッシュ「か、カレー……?(-_-;)」

ネヴュラ「はい、四種類の辛さがあって、その中から自分の好みに合ったカレーを探すのが楽しかったですし、その後に作ったカレーうどんも!(≧▽≦)」

ガッシュ「( ゜□゜)」

ネヴュラ「更に更に!(≧□≦) 夏祭りの屋台ではりんご飴やチョコバナナ等々!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」

ガッシュ「あのぉ~(´ヘ`;)」

ネヴュラ「秋は秋で収穫の秋でした!( ̄¬ ̄) それはもう、毎日の食事が豪華で……って(・о・) どうされましたガッシュさん?(´・ω・`)」

ガッシュ「あの……お聞きした感じ、食事情ばかりなのだが……?( ̄▽ ̄;)」

ネヴュラ「あらやだ!?(´□`; 三 ;´□`) 私ったらつい!(*/□\*)」

セラ「因みにネヴュラは訓練終わる頃には結構な肥え方してたんだぜ?。:+((*´艸`))+:。」

ネヴュラ「きゃーっ!?Σ( ̄ロ ̄lll) それは言っちゃいけませんセラさん!。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」

ガッシュ「……なんなのだ一体?(  ̄- ̄)」

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