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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
183/211

146話 魔女と異界の『世界樹』

────────────────────────────

【三人連れて】~目指せ『世界樹(ユグドラシル)』~

────────────────────────────


『遥か昔の話ですが、この世界は大層繁栄していたと聞いています……』

『豊かな土地の恵みを受けて、人々や多くの生命が満ち溢れていたそうです』

『それこそ、増えすぎて問題になるくらいにな……』


 ロアにより飛ばされた異世界、『ロアの実験場』にて発見した三人の遺体。

 彼等をもっと早くに発見出来ていれば、もしかしたら救えたかもしれないと。そんな無力感に苛まれるも、せめて、彼等の残した『想い』を具現させ、この世界についての情報を聞かせてもらっているところだ。


『そして、その頃から『生命の大樹』に異変が起き始めたのだそうです』

『総ての生命を死滅させる毒を撒き散らすようになったんですって……』

『何故そうなったのか……結局わからぬまま、文明は滅んだんだが……』


 彼等が語るのは、この『実験場』の昔話。

 美しく、大いに繁栄していたそうだが……『生命の大樹』、おそらく『世界樹(ユグドラシル)』が、突如として毒を放出するようになり、あらゆる生物が死に瀕したという。

 それからあの『魔素霧』が発生し始め、魔物と呼ばれる異形が蔓延り始めたそうだ。彼等の祖先達も必死に抵抗したそうだが、そのあまりの数の多さには敵わなかったようで、人々はひっそりと生きていく事になったのだそうだ。


(間違いなくロアの仕業よねそれって?)

(はい。です……『反転の呪い』をこの世界で実験したんでしょう)


 彼等の話を聞いた私とアリアはちょいとひそひそ話。その『生命の大樹』が毒を撒き散らすようになったのは、ロアによって『反転の呪い』がかけられたためだろう。で、その毒っていうのが高濃度の魔素であり、霧となって可視化されたものだ。高濃度の魔素に長時間触れていると、あらゆる生物は魔物と化す。もしくは、絶命する。

 あっという間にこの世界の人口は激減し、衰退の一途を辿る中、その魔素に順応した個体も現れ始めたらしい、この三人もそうらしく、自分の身を守りながら細々と生きていたそうだ。

 しかしそれも『合成魔獣(キメラ)』の出現により覆される。人を喰らった……取り込んだと言うべきか。その『合成魔獣(キメラ)』達は、高い知識を持つに至り、各地に点々と存在していた人里を次々に襲い、滅ぼしたと言う。


『私達も住んでいた里を滅ぼされ、一縷の希望を求めて『生命の大樹』へ向かう途中でした』


 『僧侶(クレリック)』らしき女性の名はヨミ。魔素に順応した者の一人で、日々傷付いていく人々を癒したいという気持ちが発芽し、魔法を会得する事に成功したそうだ。


『一体誰が言い出したのか? いつから伝わっているのかわかりませんけど、この世界にはひとつの伝承があるんです』


 そんな姉のヨミを守りたい。力になりたいと願い、努力と研鑽の果てに敵を打ち倒す魔法を身に付けたのが、妹のステラ。私達が発見したとき、既に身を冷たくしていた女性だ。


『曰く、世界が滅びに瀕する時、異界より一人の魔女が現れ、この世に光をもたらすだろう……その時は『生命の大樹』へと向かえ、と。俺達に残された最後の希望は、こんな僅かな伝承しかなかった』


 末弟のノース。生まれついて心を失い、機械のようにただただ敵を倒す力のみを追い求めた悲しい男性。その果てに、姉のステラの命を絶ってしまった……なにがどうしてそうなったかは知らない。しかし、それがきっかけになったのか? 彼は心を手にいれる事ができたのだそうだ。


「グギャアァァァーッ!!」「ギャオォォーッ!!」

「んもうっ! ゆっくり話を聞くひまもくれないってわけ!?」

「んぅ! あるじ様応戦します!」


 どこから嗅ぎ付けたのか? 多くの魔物と『合成魔獣(キメラ)』達が私とアリアを発見して、押し寄せて来る! これじゃ彼等の話を詳しく聞く時間も取れやしないじゃないの!


『ああ! きっと私達を食べに来たんだわ!』

『腹を空かせているのはアイツ等も同じだ……』

『私達を置いて、貴女は御自分の成すべき事をなさって下さい』


 最後の最期に貴女に会えて光栄でした。ですって!? ふざけんじゃないわよ? こちとらまだまだあんた達に話を聞かせてもらいたいのよ!? 勝手なこと言って満足しないでちょーだいな!


「取り敢えずま~ミーにゃんポーチにあんた等の遺体をポイポイってして……」

『『『えぇ~!?』』』

「でもって邪魔な魔物と『合成魔獣(キメラ)』共はオプションで~よし、やっちゃえ!!」


ブゥゥゥンバシュバシュバシュバシューッ!!!


「ギャッ!?」「ゲベェッ!!」「ガフッ!!」「グギャアッ!!」


 ヒュンヒュンヒュンヒュンッと、私を中心にぐるぐると周囲を旋回し、襲い掛かる魔物達に向けて次々と各属性の魔力弾を撃って、的確に撃ち落として行く。


「悪いけどあんた等の相手なんてしてる暇ないのよ」

《あるじ様、魔力は大丈夫、です? あと、制御は?》


 三人の遺体をミーにゃんポーチに収容し、アリアを箒にチェンジ。展開させたオプションと一緒に再び空へと舞い上がる。アリアが心配する魔力も魔素を吸収する方が上回っているので大丈夫。オプションの制御についても、並列意思は既に自分のものとしているのでまったく問題はない。


「大丈夫よアリア。まだまだ余裕あるから! さあ、さっさと『世界樹(ユグドラシル)』に向かおう!」

《はい! です!》


────────────────────────────

【み~?】~煌めく聖星~

────────────────────────────


『自分の体がそんな小さなポーチに入っちゃうのは……なんか、すごい不思議な感じね』

『空を飛ぶ事事態が驚きなんだが……』

『こうして体を失っても話ができるのも奇跡ですよね……』


 遺体をミーにゃんポーチにしまったおかげでステラ、ノース、ヨミの三人の『想い』もまるっと私について来る。可能なら腰を据えて、じっくりと話を聞いてあげたいのだけど、私は私で一刻も早く『ユーニサリア』へと帰還しなきゃいけないからね。


「と言うか、きになったんだけどさ……あんた等に伝わってたっていう伝承」

『異界から魔女が……というやつか?』


 そう、それ。ノースが教えてくれたこの世界に伝わってたっていう伝承。

 おかしな話じゃあないの? そりゃ私も冗談半分でそんなのあったらな~なんては思ったよ? それがマジに伝承として伝わってたなんて、いくらなんでもおかしいっての。


「具体的すぎるよね? 『異界から』とか、『魔女が』とか」


 百歩譲って『異界から』ってとこはまだいいとしても、『魔女が』ってのは流石に変だ。性別どころか職業までズバリじゃんじゃん? 偶然にしては出来すぎでしょーよ?


『確かに……言われると、そう、ですね……』

「まったく、どこのどいつがそんなこと言い出したのやらだわね」


 ステラも顎に手をあてて考えこんだ。そう、おかしいのだ。誰が広めたのかは知らないけど、その誰かはまるで私がこの『ロアの実験場』に飛ばされる事を予め知っていたって事にならないか? 一体それは誰なのだろうか?


─み~よ?─


「え? あんた達、今なんか言った?」

『言ってないです』『何も言ってない』『え? 言ってませんけど?』

《アリアも、です》


 んん~? おかしいな? なーんか今聞こえたような気がしたんだげんちも~?


《あるじ様!》

「ん!? おぉ~予想はしてたけどさ、やっぱりかね? 芸がないねあの残念ぼっち神は」


 突如頭に響いた妙ちくりんな声に、なんぞ? って思ってみんなに聞いてみても誰もなんも言ってないっていう……はて? 空耳だったのかしらん? なんてひとり首をひねっていると、アリアが大きな声を挙げた。ちょいとびっくらこいた私はアリアの声に周囲に注意を向けてみる。すると、どうだ。


「どっかで見たことある影ねぇ~? シェラザードとルヴィアスにポコってとこかしら!?」

「──っ!!」「!!」「─っ!!」


『ユーニサリア』の『聖域』を再生する際、影となったメルドレードとそっくりなシェラザードとルヴィアスとポコの影が敵意剥き出しで襲い掛かって来るじゃないの! ゴォォォーッ!! って凄まじい轟音を立てて三体の影が強烈な魔法を私に向けて放ってきた!


「オプション展開。『空間(ディストーション)歪曲(フィールド)』」


ドゴォォォーンッ!!


『うわっ!? な、なんて凄まじい力だ!』

『こ、こんな攻撃まともに受けたらひとたまりもないじゃない!』

『魔女様! ご無事ですか!?』


 おーおーノース達、現地三人組がびびっとるびびっとる。はいはい、問題ありませんよ~?

 オプションが張った『空間(ディストーション)歪曲(フィールド)』に弾かれた影達の魔法が霧散して魔素に還っていくので、そちらも忘れず回収回収。

 いや、ぶっちゃけロアにこの世界に飛ばされた時点でさ、こういう展開になるだろうな~ってのは予想ついてたわ。だってあの『パソコン』のレポートにもあったように、『黒水晶』作ったのがロアなら、他の魔王達の影だって作れるもんね?


「でも、やっぱり『ユーニサリア』に降りた時点での強さだね。更に影になってる分の弱体化も合わさって大した強さじゃない」


 向かってくる三体の影を冷静に分析した結果。『無限円環(メビウス)』での訓練を経た私にとってさほど脅威ではないとわかった! しかし魔力は有限だ、節約しなきゃいけないだろう。なんせここは物量戦をもっとも得意とするロアの世界なのだから。


「あの影の正体は黒水晶。凝り固まった穢れ、一点集中でその穢れを討ち祓う!」 


バッ! シュバァァァーンッ!!


「「「─っ!?」」」


 ボシュゥゥゥ~……私が三体の影に手をかざしたその一瞬、微かに光る時に視認できるかどうかの線が走り、正確に影達の力の源である黒水晶を刺し貫き、砕けさせた。するとどうだ、影達はその姿を維持できず、やはり魔素へと還っていくではないか。


「はいはい。無駄にできないよ~? アリア、回収回収♪」

《は、はい。です!》

『な、何が起きたんですか……今の?』

『彼女が手をかざしたら……』

『あの影人間? が消えちゃった!』


 ん~まぁ、見てる分にはちょいとわけわかんなかったよね? 実はこれぞ秘密特訓で編み出した、私の『必殺技』なのだ! めっちゃ完成に時間がかかったけど、その効果はすんごいぞ~♪

 なんせアルティレーネの『絶対命中』を基盤にしているので、まず的を外す事がない。更に、小さいけれど、とんでもなく尖らせた私の神気を飛ばすので、弾かれる事もそうそうない。


「『煌めく聖星の瞬き(スターライトシュート)』とでも名付けましょうかね?

 ごくわずかな神気で大きな戦果をあげられるとっておきだよ♪」

《アルティレーネ様の権能まで……あるじ様はすごい、です!》


 でしょぉぉ~? もっと褒めてアリア! アリサさんは頑張ったのですよ!


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【今がその時?】~『ココノエ』の忠告~

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シュゴォォーッ!!


《あるじ様! また来ます!》

「はいよ! って、なんだあのバルガスみたいな厳ついおっちゃんは!?」

「──ッ!!」


ブォンッ! ゴォォォーッ!!


 うぉぅ!? なんぞまた影が飛んで来たと思ったら、あのオネェさんとかバルガスばりにマッスルな上半身裸の黒い影のおっちゃんが現れた!

 おっちゃんは私達を見るやいなや、拳を打ち出し、その衝撃を私達に向けて飛ばして来たじゃないの!


「ひょいっとな。ははーん、なるほど。このおっちゃんが『武神リドグリフ』ってわけか」


ドォンッ!! シュババババッブォォンッ!!


 縮地で一気に私との距離を詰め、両の拳で放つラッシュ! そんなのにまともに付き合うつもりのない私はちょいと後ろに下がるのだけど、逃がしはしないとばかりに強烈な蹴りが飛んでくる!


「悪いけどあんたと遊んでる暇はないのよ! 消えときなさいな!」

「─ッ!?」


シュバァァーンッ!!


 ボシュゥン……うむ。正に一撃必殺である。使えるねこの『煌めく聖星の瞬き(スターライトシュート)』は! まぁ、これが弱体化を解除された本気の魔王達だったらこう上手くはいかないだろうけど……ロアの造り出した影ならなんの問題はない。


『……『技工神ロア』、そいつがこの世界の創造神なのか』

「創造神なんて言えば聞こえはいいけどさノース。ソイツは自己満足のためにこの世界をこんなにした張本人なのよ?」


 魔王の影を退けて、『世界樹(ユグドラシル)』に向かう私達。

 こちらの事情もノース達に説明して、どうして私がこの世界に来たのかってのと、元凶であるあのワガママぼっちの神ロアの存在を話しておいた。


『それじゃあ、アリサ様のいらした世界、『ユーニサリア』もこの世界と同じようにしようと!?』

『そんな……私が人を癒す力を身に付ける事ができたのは、神の思し召しとばかり思って……祈りを捧げてきたのに……』


 三人共に私の話を聞いて、往々にショックを受けている……無理もない、すがるべき神が実は黒幕でした。じゃ、あまりにもあんまりだもんね。特にヨミは、人の傷を癒す治癒魔法の発現が、この絶望的な世界において希望になると信じ、それをもたらしてくれたであろう神様に深い感謝をしていたそうだ。


「実際にはヨミの人を癒したいっていう気持ちと、それまでに色々と頑張った成果が出たってとこでしょう……この魔素についても研究とかしてたんじゃない?」

『え、ええ……順応できたとはいっても、この黒霧が危険なことには違いありませんでしたから』

『私達はそんな姉さんに付き合っていたら、いつの間にか魔法を使えるようになっていました』


 ふむ、生きる術として魔素と付き合っていった結果、それぞれに魔法という力が発芽したんだね。

 それにしても、中々に難易度ハードな世界だ……


『この世界はそのロアって奴の実験場……さしずめ俺達は実験材料といったところか、ふざけた話だ』

《そして、その成果をアリア達の『ユーニサリア』に持ち込んで……》

「今まさに新たな実験場としようとしている……私達はそれを防ぐために、早急に帰還しなきゃいけないのよ。だから、ごめんね? あなた達のこの世界も救ってあげたいのは山々なんだけど……」


 こればかりは本当に申し訳なく思う。だけど、こうしてる今も『ユーニサリア』では、私の仲間達が、大切な人達が一生懸命戦っているんだ!


『気になさらないでアリサ様。こんな悲劇を被るのは私達だけでじゅうぶんです……』

『ああ……その通りだ』

『そうだね、『生命の大樹』……えっと、『世界樹(ユグドラシル)』だっけ?

 それなら、あの大きな影がそうだよ! もう少しだから頑張ろう?』


 私の謝罪にヨミが首を振って気にしないでと言ってくれる、ありがとう。ノースも頷いて、ステラが遠くに見える大きな影を指差して励ましてくれた。

 彼等もまたいい人達だ。それだけに悔しい……秘密特訓頑張ってきたつもりだけど、まだ足りない。

 勿論、全部救うなんて事は出来ないってのは重々承知しているけれど……それでも、「もっと私に力があれば」と、思わずにはいられないよ。


─ならば、み~の声を聞くがよい─


「ん!? また聞こえた!」


 誰よ一体!? なんかさっきよりも声が大きくなってるような気もするし……


《あるじ様? どうしたの、です?》

「アリアにはさっきの声聞こえなかった? みんなも?」


 ふるふる……全員が首を振っているところを見ると、どうもあの謎の声は私にしか聞こえていないみたいだ。

 ……いや、待てよ? そういや『ココノエ』が言ってたっけ?


「──『自分が何者なのか』を思い出して下さい。そして、『みんなの声を聞いて』、『初めから貴女に寄り添ってくれていた者の声を聞いて』……そうすればきっと、道が開けます」


 そう、『ココノエ』は確かにそう言っていた。それは正に今、この時のはずだ!


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【─は完璧なんだな?】~とか一度言ってみたい~

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『アリサ様! 影とあの化け物達が群れをなして来るぞ!?』

「またあっ!? もうっ! 埒が明かないじゃないの!」


 さっきの謎の声はどうも『世界樹(ユグドラシル)』に近付くにつれて、はっきりと聞き取れるようになることがわかった。わかったんだけど……


『こっちからも来てる!』『向こうからも!』

《あるじ様! 四方を囲まれてます!》


 やっつけてもやっつけても、次から次に魔王の影達と魔物達に『合成魔獣(キメラ)』共がわらわらと湧いては襲い掛かって来るもんだから、どうしても牛歩の歩みとなってしまう。


「ああっ! めんどくさい! 取り囲むってなら好きなだけ囲みなさいよ!」


 ふんっ! ジャッキィィーンッ!! 私はまったく数の減らない相手にちょいとキレ気味になりつつも、オプションを二つ杖へと変化させ、両の手に持って構える! ピンチに見えるこの状況は逆に大チャンス!

 時にみなさんはあのWなガン○ムをご存知だろうか? 私はあの主人公が駆るゼロが大好きでさ、真似して一人部屋でクルクル回って遊んだものだ。


「ふははは! 食らうがいい! 『ローリングバスターらいふ』……まんまはマズイか? 『ローリングバスターシュート』!!」


ドッゴォォォォォォーンッッッ!!!! ズドドドドドドッッーンッッ!!!


『うわぁぁーっ!? す、すごぉぉーい!』

『ば、化け物かよあんたは!?』『あ、あれだけいた敵が一瞬で……』


 大出力のダブル粒子砲を二つの杖からぶっぱなし、ぐるりんちょ、とその場で一回転。私を取り囲んでいた敵を残らず粒子砲が飲み込んで消滅させていく! ステラが大仰にびっくりして、って! おいノース! 人を化け物呼ばわりすんな! ヨミみたいに素直に驚いておいてもらえないかね?


「さて、行ってオプション! こいつらの発生源を探してちょうだい!」


 これだけの大軍勢をあっという間に用意するからには、なんぞカラクリがあるはずなんだよね。未だに『魔装戦士』が一体も出てこないのも気になるし。あの『パソコン』に書かれてたレポートから察するに、なんぞコアになるもんがあって、それに自動的に魔力を供給して、さっきの影とか『合成魔獣(キメラ)』だのを召喚とか……あんま想像したくないけど、生産するような施設みたいなのあんじゃないのぉ? って思ったので、それらをオプションに探してもらう。


《今のうちに一気に『世界樹(ユグドラシル)』に近付く、です!》

「おーっ! かっ飛ばしなさいアリア! あんたはできる子だ~♪」


ドシュゥゥーッッ!!


 うんうん! 速いぞアリア! 正直あんたがいてくれてよかったわ。一人じゃさびちぃーっ! ってのも、勿論あるんだけど、ぶっちゃけよく気が付く子だから何かと助かるんだよね!


『はやーい! アリアちゃんて凄いんですね!』

『見ろみんな! 『生命の大樹』の姿が見えてきたぞ!』

『あっという間ですね。でも、やっぱり……あんなに黒く染まってしまって……』


 足止めされた分を取り返すように、アリアがこの魔素霧に覆われた異界の空を駆け抜けて行く。やはり敵の出現にはある程度のインターバルがあるらしく、あの大群を一掃した後からそんなに湧かなくなった。まぁ、チラホラとは現れるんだけど、ほんの少数のため、障害にもならない。

 そうして、ようやくこの世界の『世界樹(ユグドラシル)』の全容が確認できるくらいには近付けたのだ。


《枯れちゃってます……もしかしたら、ユニもこんな姿に成り果てていたのかもしれないんですよね?》

「そうね……酷いものだわ。もしかしたらユニの兄弟姉妹かもしれないのに!」


 見えたこの世界の『世界樹(ユグドラシル)』は、『反転の呪い』を永い間受け続けたためか、カサカサに枯れて、ポロポロと剥がれ落ちる樹皮に、酷く黒ずんでいて毒々しい。事実、今も生命を脅かす毒を吐き続け世界を滅びに向かわせている。


─さあ、み~の不甲斐なく不出来なしもべよ。いつまでも戯れておらずに、この大樹の呪いを解き、皆の声を聞くのだ─


「ちょ……誰が誰のしもべだって~? あんた誰よ!?」


 また聞こえてきたぞ謎の声! いや、マジに誰なのよ? えらい尊大な口調な上に人を駄目なしもべ呼ばわりだとぉぉ~?


─ふにゅぅ、愚か者めが。み~の事がわからぬとは。まぁ良い。ホレ、さっさと呪いを解いてやるのだ。モタモタしていると帰り道を失うぞ?─


 うげっ!? そりゃマズイ! こんな終わった世界でアリアと二人だけで寂しく暮らすなんてイヤだよ! とにかく、『世界樹(ユグドラシル)』の呪いを解けばいいのね?


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【謎の声の正体】~おつまみおつまみ♪~

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 ざわざわと……この朽ちた『世界樹(ユグドラシル)』に手を触れたその瞬間、確かな人のざわめきが聞こえてくるけれど、くぐもっていて聞き取れない。どうやらあの謎の声が教えてくれた通り、呪いを解呪しないことには始まらないようだ。


「よし! いくわよ! この子の『(コア)』を露出させる!」

《了解、です!》


 今回は葉っぱとか枝の邪魔が入らない分、事はスムーズに運ぶ。剣聖剣技・奥義の息吹『神気循環』にて練り上げた神気に聖なる属性を持たせ、この大樹全体に走らせる!


「行けぇぇーっ!! ふぬぁぁぁーっ!!!」


ズッッドォォォーンッッ!!! ゴゴォォンッ! ゴォォンッ!!


 バリバリバリィィーンッ!! うおぉ!? 『(コア)』を露出させるつもりが一発で『世界樹(ユグドラシル)』の呪いが全部ぶっ飛んだぞ!? うむむ、これは私のレベルがユニの時に比べて格段に上がったって事だろうか?


『おぉ、これが……『生命の大樹』の本来の姿なのか。しかし、随分間の抜けた一声だったな?』

『ふぬぁぁぁーっ! アハハ♪』

『ちょっと! ノース! ステラ! 失礼ですよ!?』


 ぷふーって、ちょっとノース、何が可笑しいのよ? ステラは笑いすぎ! しょうがないじゃん! 咄嗟に出てきた、かけ声だったんだから!? 笑う二人を注意しては私に申し訳なさそうに頭を下げるヨミ。

 はぁ~ま、いいか。と、私は改めて『世界樹(ユグドラシル)』を見る。

 ……なんか、光ってんだけど? え、これ大丈夫なのかな?


《……やっぱりユニのように『聖霊』になったりはしない、ですか?》

「う~ん……どうだろうね? ほとんど朽ち果ててたし、そんな余力も残ってなかったのかもね」


 よく観てみると呪いの影響で黒ずんでいた樹皮は剥がれ落ち、実に健康的な瑞々しい樹皮が見える。触れて感じる魔力から、とても生命力に溢れていて、元気を取り戻したのだと理解できた。


『──姉さんは必ず帰ってくる!』『(わたくし)達は信じてお待ちするだけですわ!』


 あっ! 聞こえた、聞こえたぞ!! 今のはティリアとティターニアの声だ!


『グリフォン軍! 北はルヴィアスの『ルクレツィア』に任せて、東のポコを助けてあげて!』

《合点承知ーっ!》《了解しましたヴィクトリア様!》

『頑張って下さい! アリサお母さんは必ず帰って来ます!』


 ヴィクトリア! グリフォン達、アルナ! 聞こえる……届いてる!


『まったく! めんどくさいったら、ありゃしないわ! さっさと帰って来なさいよアリサ!』

『大丈夫だシェラザード! アリサ様なら絶対私達のとこに帰ってくる!』

『はい! それまで僕たちでこの『聖域』を、『ユーニサリア』を守り抜きましょう!』


 シェラザード、ゆかり、カイン……届いてる届いてるよ! みんなの『想い』が!


『完全復活したポコは無敵なのですーっ! いっぱい活躍してママにほめてもらうのです!』

『あおおーっ! 『聖域』には一歩たりとも通さないんだぞーっ!』

『我等が神たるアリサ様が戻られた時に御安心頂けるよう、このフェリア! 粉骨砕身の覚悟!』


 ポコ、ジュン、フェリア! なんて頼もしいんだろう……

 届いてくる……この『世界樹(ユグドラシル)』を通して、『ユーニサリア』で今も戦っている私の大切な仲間達の『想い』と『祈り』……


『妾達にはまだまだアリサ様が必要なんじゃ……だからお願いじゃアリサ様。早う帰ってきてたもれ!』

『優勢だぞ! 気張れお前ら! 俺達には『守護者(ガーディアン)』がいる! アリサの嬢ちゃんだって直ぐに帰ってくるぞ!』

『全砲門開け! 群がる『魔装戦士』を蹴散らすぞ! ほらほら! この戦に勝てばまたアリサ様に美味い料理教えてもらえるぞ!? 気合い入れろ皆!!』


 『エルハダージャ』の珠実が、『セリアベール』でゼオンが、『ルヴィアス魔導帝国』でルヴィアスが……他にも、『ジドランド』のみんなに、『ゲキテウス』の人達まで! みんながみんな、『願い』を届けてくれている!

 そして……


『届いてるかな、アリサおねぇちゃん? ユニ達の気持ち!』

『マスター! アイギスさん達が『武神』を退けたでっすよぉーっ!』


 ユニ! 届いてる! 届いてるよ! あぁ、こっちからの声は向こうに聞こえないのか?

 そしてアリスからも嬉しい報告だ。やったねアイギス! リドグリフに勝ったんだ!?


─ふなぁ~、ホレ、受け止めるのだ。み~のしもべよ。戯れは終わりにして、早く帰ってくるのだ─


「ああ、はいはい。もう~ホント誰なのあんた?」


 みんなの気持ちと一緒に届くあの謎の声。なんかあくび混ざってないかね? 結構今こっちも『ユーニサリア』も緊迫した状況だと思うんだけど? のんきっていうか、なんていうか……


─しもべも直ぐにその訳がわかる。ちょっときっかけを与えてやろう。新たな力に目覚め、み~を構うのだ。み~は退屈だ、ちーずとやらを所望するぞ? あと、さらみと言ったか? あれも用意せよ─


 は? いや、待ってよ……チーズにサラミ? それって、どっちもあの子の大好物……


「あんた……まさか、ミーナなのぉーっ!?」

アリサ「あんたらみんなして黒髪って珍しくない?(´・ω・`)」

ノース『いや、黒髪はこの世界じゃ普通だぞ?(・о・)』

ステラ『結構一般的だよね?(*´∇`*)』

ヨミ『中でも艶があって美しい髪の持ち主は、それだけでちやほやされます( *´艸`)』

アリア「それならきっと、あるじ様もほっとかれない、です!(ノ≧∀≦)ノ」

アリサ「ふぅん(゜-゜) じゃあ、アリアみたいな髪色は珍しいんだね?(^-^)」

ステラ『そ、そうですね( ̄▽ ̄;)』

ノース『下手すれば魔物の仲間と思われて、攻撃されていたかもな(ーー;)』

アリア「えぇっ!?Σ(゜ロ゜;) そんなぁ~アリアはいい子、です!(。・`з・)ノ」

ヨミ『あはは(´▽`*) 勿論わかっていますよ?(^-^) 平時であればそうなっていたかもって話です(;´A`)』

アリサ「ってことは、結構閉鎖的な文化だったのかしら?σ(´・ε・`*) ああ、いや(-д- 三 -д-) そうね、あんな化け物達が闊歩してるんだもん、無理もないのか(´д`ι)」

ステラ『そうですね……私達も他部族との交流なんて全然ありませんでしたし(´ヘ`;)』

ヨミ『日々の生活もやっとでしたね……(>_<) 私もアリサ様のような御召し物を一度纏ってみとうございました( ´△`)』

アリサ「ふーむ(*´ー`*) 三人とも美形だしオシャレしたら映えるだろうねぇ?(^ー^)」

アリア「あるじ様あるじ様(*´▽`*)♪ この三人にあの着物とか着せたい、です!ヽ(*≧ω≦)ノ」

アリサ「おぉ~♪ヾ(´∀`*)ノ そいつはいい案だぞいアリアちゃん( ・∇・)」

アリア「はい、です!(*>∇<)ノ きっと似合います♪(*`艸´)」

三人『まぁ( ̄0 ̄;) もう死んじゃってるんだけども……(-_-;)』

アリサ(黒髪の三人姉弟……(´-ω-`) 和風な出で立ち……Σ(゜Д゜〃) 閃いたわ! うっしっし♪(*´艸`*) なんとかできたらなんとかしよーっと!(*^▽^*))

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