144話 『白銀』と『武神』と……
アリサ「うぇーい♪ヘ(≧▽≦ヘ)」
フィーナ「うぇーい!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」
アルティレーネ「うぇ、うぇーい……(゜ω゜;)」
アリサ「はい、アルティダメーっ!(ノ`Д´)ノ」
アルティレーネ「なんなんですか一体……(´_`。)゛」
フィーナ「ユニークアクセス七万突破記念の閑話の執筆が終わったそうなんですよ(_ _)」
アリサ「そうなの(*´∇`) だから今日から三日間、本編、閑話、閑話と連続投稿するんだって!ヽ(*>∇<)ノ」
アルティレーネ「まぁ♪(*´∇`*) それはそれは!( *´艸`)」
フィーナ「まぁ、私の出番はないんですけどね……(¬_¬)」
アリサ「『四季シリーズ』の夏の話だからしゃあないねぇ~?( ̄0 ̄;)」
アルティレーネ「うふふ!(*´艸`*) あの夏も楽しかったですね♪( ´ー`)」
フィーナ「うらやましいーっ!ヾ(*`⌒´*)ノ」
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【強敵】~リドグリフ~《アイギスview》
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焦りを悟らせてはいけない……心を落ち着けろ。
「はぁはぁ……ったく! どんな体力してやがんだこのバケモンが!?」
「まったくじゃ! 儂等五人を相手してなんというタフネスよ!」
私達がこの『武神』と闘い始めてからどのくらい時間が過ぎた?
徒手空拳を武器とする『武神リドグリフ』……その闘い方に不慣れな私達『白銀』は想定以上の苦戦を強いられていた。
その驚くべき拳速、多彩極める技の数、そしてなによりも恐るべきは底無しのスタミナ。
「流石『武神』と謳われる事はある……」
「アイギス! ゼルワもドガも奴に回復の時間を与えないで!」
ドドシューッ!!
「ぬぅんっ!! 『弓神』といい、貴様といい! 弓使いはどいつも厄介な奴等ばかりよ!!」
バギィィーンッ!!
レイリーアの『フォトンボウ』から放たれる矢は普通の矢ではない、『神気』の矢である。それは最早普通の矢であるはずはなく、例えるならば一つの強烈な魔法と言ってもいいだろう。それを剛腕を振り払い弾くリドグリフだが、その隙を私達は逃さない!
「応! わかっとる!! 食らえぃリドグリフっ!!」
「甘いわっ!」
ドゴォォッ!! ガツッ!! ザザァァーッ!!
「ぬぅぅっ!? やりおるわい!!」
ドガの『フォトンアックス』の一撃を空いた片腕で反らして、そのまま流れるようにカウンターの拳がドガに叩き込まれる! ドガは咄嗟に後方へ飛び退きその威力を軽減するも、ダメージは大きい!
「おっと! 追撃なんざさせるかよ! やるぜアイギス!!」
「ああ! 行くぞリドグリフ!」
「ぬぅぅっ!?」
強い。この『武神』は本当に強い……剣や槍、斧に弓、ナイフ等、武器を手に闘う事が当たり前の私達にとって、その五体のみを武器に闘うリドグリフは実にやりづらい相手だ。いや、大地殿が人の姿を取り闘う時もそうであったのだが、これほどではなかった。
「ハアァァァーッ!! ラッシュの速さなら負けねぇぜ!!」
「私も忘れてもらっては困る!」
「ぬぅぅんっ!! 見事也! 我の全力をもって尚捌ききれぬとは!!」
ズガガガガガッッ!!
よく言う! ゼルワの両の手に握られた『フォトンナイフ』による無数の斬撃を打ち払いつつ、私の『フォトンブレード』の一閃を蹴撃で反らすリドグリフはまさに『武神』!!
「ぐわっ!」「うぐぉっ!」
しかし接戦! 先の言葉通り、リドグリフもいっぱいいっぱいだ。ゼルワの斬撃がリドグリフの腕を切り刻み、小さくないダメージを与える! しかし、そのゼルワもまた無事にはいかず、リドグリフの重い一撃を肩に受けてしまう!
「ゼルワ下がれ! はあぁぁーっ!!」
「ぐぅっ! おのれっ!?」
ブォォンッ!! 私の斬り上げが空を切る! リドグリフも読んでいたか、ゼルワが下がると同時、私の攻撃を飛び引く事で回避した!
「逃がしません! 『フォレストスノウ』! 『リーネリーネ』!」
ドシュゥゥーッ!! ズガァァーンッ!!
「うおぉっ!? 舐めるなぁぁーっ!! かあぁぁーっ!!」
バギィィーンッ!! けたたましい炸裂音! 飛び引いたリドグリフにサーサがアリサ様のオプションの如く操る『神弓フォレストスノウ』による一射と『神杖リーネリーネ』による雷撃魔法が放たれるが、リドグリフは身に纏った神気を爆ぜさせてそれらを弾き返す!
「ぬうぅりゃあぁぁーっ!!」「うおおおぉぉっ!!」
ザシュゥゥッ!! ドゴォォッ!!
「「「ドガあぁぁーっ!!?」」」
そこに突っ込んだドガの渾身の一撃! 振り下ろされた『フォトンアックス』はなんとリドグリフの右腕を切断してのけた! しかし、同時に叩き込まれる『武神』の左腕から放たれた剛拳がドガの胸に直撃! ドゴォォォーン!! と言う凄まじい爆音を伴い、地に叩きつけられ、この『グレブヒュ火山』に新たな火口を作り上げた!
「やべぇ! サーサ! 俺よりドガの回復を急げ!」「はい!」
「生きてるわよねドガ!? アイギス! このチャンス逃す手はないわ!」
「くっ! ドガ死ぬなよ!?」
叫ぶ私達だが今はサーサの回復とドガのタフさを信じ、リドグリフへの追撃にかかる!
「……焦りが見えたぞ? そこだっ!」
「やっ! ヤバ! キャアァァーッ!!?」
ドオォォンッ!! 一瞬。『フォトンボウ』を構えたレイリーアのほんの一瞬の隙にリドグリフが拳を振るい神気を飛ばす! 虚を付かれたレイリーアはそれを回避出来ず!
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【動く!】~やらせはしない!~《パルモーview》
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「危ないレイリーア! 『神の護り手』!!」
ギィィーンッ!!
むぅ! 危なかった! あのままではレイリーア姉ちゃんにリドグリフの神気が直撃するのはは免れないって判断したんだろう。アイギスの兄ちゃんが咄嗟に『神の護り手』を張ってそれを防いだ!
「そうするだろうと思ったぞ勇者ぁーっ!!」「何っ!? しまった!!」
ドゴォォォーッ!!
「がっはっ!!」
「なんだと!? 読んでいたのか!」
渾身の一撃! アイギスの兄ちゃんがレイリーアの姉ちゃんに気を取られた間にリドグリフは一瞬で距離を詰め、神気を乗せた拳をアイギスの兄ちゃんの横っ腹に叩き込んた! 『神の護り手』の発動と同時に叩き込まれたその拳をまともに受けてしまった兄ちゃんは、派手に吹き飛び、地に叩き付けられてしまった!
「ゴフッ!」
たまらず喀血する兄ちゃん……呼吸するのも苦しそうだ! まさか肋が肺に刺さった!? ま、マズイ、まずいなこれは! 僕が出張る番か!?
「ぐああぁぁーっ!!」「舐めてんじゃねぇ! この筋肉ダルマがぁーっ!」
「アイギス! 『神の護り手』サンキュー! 今のうちにポーション飲みなさい!」
ザシュゥッ!! と、肉を斬り裂く音と、リドグリフの絶叫にそちらに目を向けると、ゼルワの兄ちゃんだ! レイリーアの姉ちゃんも『フォトンボウ』で強烈な矢を放ち、リドグリフを穿つ!
ドシュゥゥーッ!!
「お、おのれぇぇーっ!! うぐおぉぉーっ!!」
ドォォーンッッ!! レイリーアの姉ちゃんが放った矢が、ゼルワの兄ちゃんと打ち合いを続けるリドグリフを狙う! ゼルワの兄ちゃんもそれをわかっているようで、上手くその射線にリドグリフを押しやっている! でもこのままじゃゼルワの兄ちゃんまで巻き込まれるぞ!?
「生憎てめぇと心中する気はサラサラねぇぜ! あらよっと!」
「き、貴様!? うがあぁぁぁーっ!!」
バキィッ!!
うおぉっ!? すげぇやゼルワの兄ちゃん! 迫るリドグリフを、身体をバク転させつつ蹴り上げる事で仰け反らせた! こいつは決まるぞ! その体勢じゃレイリーア姉ちゃんの矢は避けられない!
ズオオォォォーッ!!
レイリーア姉ちゃんの矢が大気をうねらせ虚空に消えて行く! リドグリフはどうなった!? って、うおぉ……マジ?
「フゥフゥフゥ……い、今のは我も肝が冷えた……ぐぅっ!!」
ボダボダボダッて、大量に出血しながらもリドグリフは耐えた! だけど流石にダメージは大きく、彼の右脇腹が一部抉れている……常人なら立ってなんていられない、いや、動けないほどの大怪我だ。
「ぐっ……ふぅ……やれやれ、しつこいな? まだ倒れないか……」
ポーションを飲み干して若干の回復を済ませたアイギスの兄ちゃんが、膝を抱えながらもぐぐぐっと立ち上がる。そして……
「じゃが、そろそろ幕引きの頃合いじゃて……決着をつけようぞ『武神』!!」
サーサ姉ちゃんの回復魔法でドガじいちゃんも続いて立ち上がってきた!
「ふぅふぅっ!! よし、もう一踏ん張りね! やるわっと!?
え……ウソ? ヤバイわ、流石に射ちすぎた? もう神気を練れるほど魔力が……」
んんっ!!? レイリーア姉ちゃんが突然膝をついたぞ! どうしたんだ!?
「レイリーア!? くっ! あぐっ!! も、もう少し……もう少しなのに……っ!」
って! おいおい!? まずいぞ!!
レイリーア姉ちゃんが魔力切れ起こしちゃってるじゃん!! サーサ姉ちゃんは……っ!! なんてこった! 血涙、鼻血、加えて手の毛細血管が破裂しての流血! 『神器』の制御に耐え切れなかったんだ! その証拠にサーサ姉ちゃんを護るように周囲に浮いていた『神器』が地に落ちてしまっている! 道理でドガじいちゃんの怪我が完全に治ってないわけだ!
アイギスの兄ちゃんもポーション切れてるみたいだし、頼みの綱はゼルワの兄ちゃんか!?
「はぁはぁはぁ……くっそ! 肩が上がらねぇ……俺が気張らねぇとなんねぇってのに!!」
駄目だ! ゼルワの兄ちゃんも両腕をだらりと下げたまま、息も絶え絶えだ! あれだけ打ち合ってたんだ、そりゃ無事ってわけにはいかなかったか!?
「……頃合いかも知れない。恨んでくれるなよ?」
こうなったら、是非もない。僕が出る!
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【託します】~魔力譲渡~《サーサview》
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「いい? よく聞きなさいサーサ。貴女が私のオプションに憧れて真似したいって気持ちは嬉しく思う……けどね?」
「……けど?」
「正直おすすめできないわ」
アリサ様の『無限円環』での訓練の時、私はどうしても気になった事をアリサ様に訊いてみたのです。それは『オプション』についてです。あらゆる場面で自分の分身のごとく操れ、あらゆる局面に対応できる素晴らしい魔法です! 憧れない筈がありません。
ですが、アリサ様にその教えを請おうとしても、こうして断られてしまいます。
「せ、せめて理由を教えて下さい! どうして駄目なんでしょうか!?」
「ん。あたしが教えてあげる……理由は単純。脳が焼ききれて廃人になるから」
「そ。レウィリが言ったように、ぶっちゃけ危ないのよ? ほら、あんたもティリアに見せてもらったでしょ? 私が『世界樹』と戦った時の記録」
あっ! そ、そうでした……私達『白銀』が初めて『聖域』を訪れ、アリサ様に助けて頂いて……皆さんを紹介されたときの事です。たったお一人であの呪われた『世界樹』と戦ったアリサ様。一度、行使する魔法の制御が追い付かず、窮地に陥ってしまった事は、ティリア様が見せて下さった記録映像で私達も知りました。
「で、その後ヘドロ沼に落ちて、二つ頭のウナギを見て『並列意思』を獲得できたからこそ、ここまで制御が可能になったってわけよ?」
「ん。それはお姉さんの『イメージ魔法』の存在も大きい……『並列意思』や『思考加速』等は普通、そうそう簡単に会得できるものじゃない」
如何にアリサ様が受けた女神様の加護の凄さが理解できた話でした……それを誰よりも実感しているからこそアリサ様はご自分の力を借り物と称し、決して傲ることなく謙虚な姿勢を貫いているのですね?
……ですが、私はあきらめ切れずにいました。だって、オプションが有力であることには変わりありませんからね、取り敢えずアリサ様とレウィリリーネ様が仰られる、『並列意思』ろ『思考加速』を習得すべく訓練を開始しました。
「ん……そうだね、今すぐは無理でも、サーサは長寿のエルフ。きっと将来に開花する」
「後は、アリアみたいに自分の意思を持ってる武器に協力してもらえば、少ない魔力でも制御が出きるんじゃないかな?」
「ホントですか!? よぉぉーし! 私頑張ります!」
「あ~でも、複数同時に操るってなると、結局脳の神経をそれぞれにリソースを割く必要出てくるから、無理は禁物よ?」
──朦朧とする意識の中、私はそんな事を教えられたなぁ……と思い出していました。
確かに、私達の前世から託された『神器』なら少ない魔力でもオプションのように扱えました、まるで彼等が力を貸してくれているような、そんな心強ささえ感じたくらいに……でも、私が耐えられなかった……
やっぱり、私ではアリサ様のようには出来ませんね……無理を続けた代償でしょうか? いくつかの脳神経が焼き切れたのか、身体が動きません。
「うおぉぉーっ!」「ぬりゃぁっ!」
「まだ終わらぬ! 食らえぃ勇者達よぉーっ!!」
ブオォンッ!! ガギィッ!! アイギスとドガがリドグリフを相手に果敢に攻撃を仕掛け、リドグリフもまた負けじと拳を繰り出している。『強化魔法』の『魂の絆』はとうに切れ、地力の勝負。
「ああ……うぐっ!!」
私はなんとか身を起こそうとしますが、その度に襲う剣で抉られるような頭痛に苛まれ、動けません。
「ぜ、ゼルワ……来て! わ、私をレイリーアの側に!」
「サーサ!? バカ野郎無理すんじゃねぇぜ!?」
なんとか絞り出した声に、両腕をだらりぶら下げたゼルワが来てくれました。無理に立ち上がろうとする私を叱りますが、聞けません! 今無理をしなくてはリドグリフは倒せない。
「わかったぜ、レイリーアのとこにまで飛ぶ! へへっ、腕上がらねぇからお姫様抱っこは出来ねぇ、我慢しろよ?」
ふふ、この状況でそんな軽口をきけるならきっと大丈夫ですね。私はゼルワと手を握り、彼の『飛行魔法』でよろよろとレイリーアの元に……
「サーサ! ゼルワ!? 動けるならアイギスとドガの援護して! アタシは魔力切れで、思うように動けないの!」
「だ、大丈夫……レイリーア、私の手を……」
「俺はやれるだけやる! 腕はまともに動かねぇが、まだ脚があるからな!」
ダダダッ! と、私を送り届けたゼルワはアイギス達の所に駆けて行きます。さあ、私もレイリーアに託さなければ!
「こう? こうでいいのサーサ? 一体何するつもりなのよ?」
「簡単です。私は脳神経が焼けて動けませんが、魔力はまだ残っています、それをレイリーアに譲渡しますから、お願い……それで戦って下さい!」
「そ、そんなことできたの!? わかったわ!」
先にも言ったように『神器』をオプションのように操るだけなら、それほど魔力は使いませんでした。ただ、先に制御が出来なくなっただけですから、魔力だけならまだあるんですよ。
「行きます……『魔力譲渡』!」
「んううっ! ちょっとくすぐったい!」
我慢してくださいレイリーア! ……頼みますよ? 必ずリドグリフをやっつけて下さいね?
私は後で女神様達に治してもらいますから、今は少し……眠ります……ぐぅzzz
「ちょ、この状況で寝るとか!? しょうがないわね……確かに受け取ったわサーサ!」
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【還された加護】~襲来!~《アルティレーネview》
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「……どういうつもりだ? 女神アルティレーネよ」
「ごめんなさい……ですが、どうか彼等に最後までやらせてあげて下さい、パルマーさん」
ドガさんがリドグリフの腕を斬り飛ばすと同時、もう片方の拳で殴り飛ばされ、レイリーアさんに向けられた攻撃を『神の護り手』で防いだアイギスさんを、そうすると読んでいたリドグリフが叩きつけ、ゼルワさんは激しい打ち合いの末に肩を砕かれて……サーサさんは『神器』の制御に限界が来て倒れ、レイリーアさんは魔力切れで思うように動けない。
そんな『白銀』達の窮地にあの『ジドランド王国』にいた魔術師パルマーさんが戦闘に介入しようとしたので、私は慌てて彼を引き止めます。
「……異なことを、貴女が方が最も望むは世界の安寧ではないのか?
冒険者達の矜持や意地を優先するべきではあるまい?」
わかっています……わかっているのです。
アイギスさん達『白銀』と、『武神リドグリフ』との戦いを私とフィーナ姉様、翼達『偵察部隊』は固唾を飲んで見守っていました。それこそ、何度も何度も助けに入りたい、共に闘いたいと感じながら。
それでも手を出さず見守り続けたのは、彼等がかけがえのない朋友達だからです。
もし、彼等が私達と面識がなく、この世界の住人に過ぎなかったとしたら、私も今のパルマーさんと同じ答えを出して、即座に闘いに介入したでしょう。ええ、世界の安寧は冒険者の矜持や意地よりも優先すべきですから。
「ですが! それでも……」
「済まぬが聞けぬ。私は貴女よりも上位の存在に頼まれているのだ」
なっ!? なんですって! そんな……私達よりも上位の存在で、この『ユーニサリア』の事情を知っている存在となれば……
「ティリアお姉様が……!?」
「如何にも……って、もういいかな?
ごめんねアルティレーネ様、僕は兄ちゃん達のワガママなんかよりさ、アリサ様の笑顔を優先させたいんだよね。それはティリア様も同じ考えなんだよ」
ぱ、パルモーさん! なんと言うことでしょう!? あの謎の銀髪の青年はパルモーさんが変身魔法で姿を変えていたのですね!?
《ああ!? なんだよ! お前パルモーじゃねぇか!》
《ぜ、全然気づきませんでしたわ!》
正体を明かしたパルモーさんを見て翼とルロイヤ達も寄って来ました。「安直な名前なのに誰も気付かないからちょっと面白かったよ♪」なんて笑うパルモーさんですが、うむむ……なんだか悔しいです!
《それで、パルモーはアイギス達の闘いに介入して助けたいのか?》
《あぁ~気持ちはわかるぜ? ご主人を悲しませたくねぇってのもよぉぉくわかる! でもよぉ~》
「おしゃべりはそこまでにしなさい。戦闘態勢を!」
えっ! フィーナ姉様!?
パルモーさんの目的がアリサお姉様の想い人であるアイギスさんを守ること、という事についてドゥエとウノも話に加わろうとしたその時、突然フィーナ姉様が立ち上がり、弓を構えました!
「はっ! この召喚陣はロアの『魔装戦士』を呼び出すものですか!」
《ちぃっ! アイギス達とあの『武神』をまとめて消そうって腹か!?》
《やるぞ翼! 召喚される『魔装戦士』を蹴散らす!》
《応よ! おい、パルモーも手伝えよ!? どっちにしろアイギス達のピンチだぜ!?》
私がフィーナ姉様の言葉に空を見れば、既に無数の召喚陣が展開されています! 翼の言う通り、アイギスさん達とリドグリフが弱ってくるタイミングを見計らっていたのでしょう、そうはさせません! ドゥエがウノに、ウノがパルモーさんに順に『魔装戦士』との戦いに向かおうと声をかければ、流石にパルモーさんもこの状況をよく思っていなかったようで二つ返事で了解しました。
《アルティレーネ様! 私は動けないサーサを回収しますわ! 援護をお願い出来まして!?》
「了解です! 行きましょうルロイヤさん!」
私を呼ぶルロイヤさんは、脳の神経を酷使しすぎて気を失ったサーサさんの保護に向かうとのこと! 無論私も喜んで援護しましょう! 誰一人失ってなるものですか!!
「ちぃっ! あの『狂神』めが、無粋な真似を!」
「よそ見なぞしとると、もう片方の腕も斬り飛ばすぞリドグリフぅーっ!!」
「行くぞ! 剣聖剣技秘奥!」
「俺は昔から足癖悪くてなぁーっ!! 食らいやがれリドグリフ!!」
「決める……サーサが託してくれた魔力を神気に練り上げて……正真正銘、『最後の一射』よ!!」
リドグリフも上空にズラリと展開された『魔装戦士』召喚の魔方陣に気付き、毒づきますが、『白銀』のみなさんはそれをまったく意に介さず、リドグリフへの猛攻を開始しました! ええ、存分に出し切りなさい! 貴方達のこの誇り高い大一番。絶対に、何者にも邪魔させませんから!
パキィィーンッ……
「え……? アリサお姉様……?」
しかし、その時私の中で何かが割れるような不思議な感覚が走りました。凄く嫌な感じ……これは、アリサお姉様に与えた加護『不朽』が還ってきた?
「どうしたのですアルティレーネ!? 呆けている場合じゃありませんよ!?」
「フィーナ姉様! 大変なんです! アリサお姉様に与えた加護が還って来てしまったんです!!」
一瞬、何が起きたのかが理解できず、茫然自失として立ち止まってしまった私を、フィーナ姉様が叱りつけます。その怒声に我に返った私は、ありのままを伝えました。
「……なんて事、急いだ方がよさそうですね。
聞きなさい皆。今の話からアリサお姉様にただならぬ危機が迫っているのは明白です! 呼び出される『魔装戦士』を一蹴し、『白銀』を回収! 私達も『聖域』へと移動します!」
《はぁっ!? マジかよフィーナ様!?》《この『龍脈の源泉』はどうすんだ!?》
《アイギス達とリドグリフはどうする!?》
くっ! この場は『ユーニサリア』にとって重要なポイント、『龍脈の源泉』! 『魔装戦士』が今にも呼び出されようとしているこの状況で放棄してするわけにも! フィーナ姉様の決断に私を含め、翼とウノが狼狽えてしまう! それにドゥエが言った『白銀』達とリドグリフの戦いもまだ!
「問題ありません。ここは私が監視していたのですよ? それに……」
慌て狼狽える私達に不敵な笑みを見せるフィーナ姉様は、『白銀』達とリドグリフの戦いに目をやりました。釣られるように私達もそちらに目を配します。
ギィィィィィィィィーンッッ!!!
「『断絶』ーっっ!!」「うおぉぉーっ!!」
「……あちらも決着です」
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【飛ばされた世界】~封じられた力~《アリサview》
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ふぅむ……いやぁ~こりゃひどいわ。
太陽の光が厚い雲に覆われてるせいで、あまり熱が届かないのだろう。それに加えて『魔素霧』が広範囲に渡って立ち込めて至る所で渦を巻いている、だからか、ここは暗くて寒い、終局を向かえた世界とでも言えばいいのか?
レジーナ達『猫兎』と一緒に乗り込んだ黒フード達の本拠地で、私は総ての元凶である『技工神ロア』とあいまみえた。しかし、私が挨拶がてらに、文句のひとつでも言ってやろうとしたその時、ロアは問答無用とばかりに私を縛りこの世界に転移させたのだ。
まったく、相対する相手と軽口も叩けんとは……ロアってのはとんだコミュ症である。アイツ絶対友達いないわね! むしろみんなから嫌われてるまであるだろう! バカたれだねぇ~前世の私みたいに巡り合わせが悪かったわけでもないでしょーに? ま、どうでもいいか。
「……私が置かれてる現状を把握しなきゃ」
さて、あんなコミュ症拗らせたワガママぼっち神の事など今はどうでもいい。『ユーニサリア』に戻ったらボコスカにぶん殴ってやろう。そのためには、自分が今どういう状況にあるのかを、はっきりと確認しておかねばなるまい。
まず、転移した先はかつて高度な文明が栄えていたのだろうと思わせる、倒壊したなんかの建物群が転がっている……街? 城? みたいなもんの遺跡っぽい。取り敢えず、日照量の関係でこの世界全体が非常に寒い。辺りを見渡し、雨風を凌げそうな、比較的無事に見える建物の中に隠れる事にした。
続いて、私自身の確認……ふむ、どうやら妹達から授かった加護が封印でもされたのか、まったく使えない。むむむっ! 虎の子の『イメージ魔法』も『無限魔力』も駄目か。
「なるほど、これがココノエの言ってた『窮地』ってことか……」
まあ、当然これだけの筈はないだろう。この世界はロアの実験場だろうし、奴の手先……それこそ『魔装戦士』みたいなのがいるんだろうね? そんな中能力を制限されて、『ユーニサリア』への帰還方法を探し出さなければいけない。うん、なるほど……確かに『窮地』っちゃー『窮地』だわね。
さて、んじゃ次は『ユーニサリア』への帰還方法についても考えなくてはいけないが、それについては目星がついている。こんな終局を向かえた世界でまだ生きているかはわからないけど、『世界樹』が存在している……もしくは、存在していた筈だ。
そこから龍脈と『神域』を通して『ユーニサリア』のユニとコンタクトを取る、そうすれば妹達とも繋がるし、帰還も容易だろう。
「ちょっと私の調査が足りてないんじゃないかね『技工神』さんや、魔素をがっつり残しまくって」
う~ん……これがココノエの言ってた『窮地』? ホントに?
確認したところ封じられた能力は加護だけだった。つまり、『剣聖剣技』や『聖域の魔女』、『聖域の聖女』としての能力はそのまま。更にミーにゃんポーチもそっくりそのまま利用できる。『無限魔力』に『イメージ魔法』は確かに使えないけど……要はそれだけだ。
「神気循環でこの世界に充満してる魔素を神気に換えてやれば魔力問題はクリアだし、『イメージ魔法』だけが魔法じゃないし……はっ!?」
そうかっ! わかったぞ! なんて事だ『不変』だ! 一番の問題はフォレアルーネが与えてくれた最強の加護『不変』! あれが封じられた以上、お腹が空くし、病気にもなる! おおっ!! なんということだ! おのれロア! 許すまじ!
……少し、秘密を話そう。
私は『ユーニサリア』に転生して、女神達から加護を授かりその結果、加護する筈の女神達と同等……もしかしたらそれ以上の力を手にした。それは今までの経緯からもご理解頂けるだろう。しかし、所詮それは多重の加護があってこそだ。
なら、その加護がなくなったらどうなる? 当然一般人以下だ、もしかすると子供以下かもしれない。
そう考えた私は、とある魔法の構成を練り、機会を待っていた。何せ『ユーニサリア』じゃ次から次へとやることが増え続け、まとまった時間が取れずにいたからね。その魔法を試すにはちょいとしたミスが致命的になっちゃうんだわ。そして『無限円環』で訓練する事になり、これはその魔法を試す最高の機会が来たって思ったの。
みんなが寝静まった深夜、私は自分にその魔法をかける。
アイギス達『白銀』が受けた、夢の中で理想の自分に鍛えてもらうっていう試練をアレンジしたやつで、その夢の中で行った鍛練の成果がしっかり現実にフィードバックされる、名付けて『夢か現か幻か』だ。
アレンジしたのはその夢の中は『ユーニサリア』の一日を『無限円環』内で一年にしたようにこう、どどーんと更に一年に延ばした事。それと、別に理想の自分が出てくるわけじゃないって事。
その一年に引き延ばされた夢の中で……まぁ、夢の中で一年もなにもないかもだけど、『不滅』と『不変』『不朽』以外総ての能力を封じて…鍛えてみたのだよ。
いやぁ、仮説は正しかったって確信したよね……十回も出来ない腕立て伏せに腹筋、背筋。剣技を使おうと持った木剣の重さにゼーハーゼーハーと息切れ……妹達ももうちょっと丈夫な身体に再構築してくれればよかったのに……
そんななんとも情けない秘密特訓がスタートしたわけなんだけど、こっから私は頑張ったのよ! それこそ「やりすぎじゃね?」「話盛り過ぎじゃね?」「ご都合主義過ぎじゃね?」とか思いっきりつっこまれそうなほどに!
みんなにお休みなさいして、毎夜毎夜私の秘密特訓は続く、夢とはいえ毎日が一年。いやぁ~前世で独りには馴れてたつもりでいたけど、あまりの孤独感に途中で投げ出しそうにも、気が狂いそうにもなったんだけどね……目が覚めて、フィードバックされた自分の身体に凄い達成感溢れてさ。それが嬉しくなって、ずっと続ける事が出来たよ。
んで、そんなことを続けて『無限円環』でのみんなの訓練も終わりに近付く頃には、私自身ちょいとヤバイくらいになってた。それを実感したのが『白銀』と手合わせした時だ。彼等の新たな武器を創造するために、訓練を経た彼等の実力を見る目的で行ったんだけど……まぁ、お察しである。
「むほほ♪ ティリアが今の私の履歴書見たらなんて思うんだろうねぇ~?」
そんなわけで、今私が置かれたこの状況も正直それほど『窮地』とは感じない。ささっと『世界樹』を見付けて『ユーニサリア』に帰還しましょうかね♪
アリサ「うーむ……(´ヘ`;) やっぱり『イメージ魔法』はめっちゃ便利だったんだなぁ~って二度目の痛感(_ _)
この世界でも『検索』が使えればなぁ~(-_-;) 現地の人にどんな状況なのか聞けただろうに……誰もおらんのんかしら?o(* ̄○ ̄)ゝ
いや、そもそもこんなにも『魔素霧』が発生してたら普通の人は生きてないか……(>_<) 適応してるとしたら魔物化した動物?(-ω- )
……見渡す限りの廃墟ねぇ~歩いて調べてたらどんだけ時間あっても足りないや、空……飛ぶかぁ~( ̄~ ̄;)」
アリア「……さま? あるじさま?ヾ(・o・*)シ」
アリサ「うおぉ!?Σ(゜ロ゜;) アリア!?(*`Д´*) そっか、ミーにゃんポーチだ!(*´▽`*)」
アリア「んぅ(^ー^) アリアはあるじさまといつも一緒、です( ´ー`)」
アリサ「癒しキター!!♪o(゜∀゜o)(o゜∀゜)o♪」
アリア「飛ぶならホウキになります(ノ≧∀≦)ノ」
アリサ「うん!( ・`ω・´) お願いね!( ゜ー゜) あなたがいてくれてよかった、一緒に『世界樹』を探そう!(*>∇<)ノ」
アリア「おー!(ノ゜∀゜)ノ です!(*´▽`*)」
身勝手な神が見放したこの世界。恐るべき死の霧により、人々は明日をも知れぬ今を懸命に生きていた。
誰が言い出したのか? 世界が破滅の終焉を迎える時、異なる次元より一人の魔女が現れ、その大いなる力にて世界の闇を祓う……
アリサ「……とかぁ~?(*´艸`*) あったりしたら面白いのになぁ~♪(゜∀゜)」
アリア《はうぅ、そんな伝承があってもなくても( `д´) あるじさまの思うままに、ですよ?(о^∇^о)》
アリサ「そう、だね( `ー´) 出来るならこの世界もなんとかしてあげたいとは思うけど、優先すべきは仲間達が待つ『ユーニサリア』への帰還だから!(。・`з・)ノ さぁ、久々の『集塵機』装備のアリアだ!( ̄0 ̄)/」
アリア《はい、です!(*´∇`) この『集塵機』ポーチにしまっていたんですねあるじさま?( ̄▽ ̄;) 懐かしい、です!(*`艸´)》
アリサ「うん♪(゜ー゜*) この魔素霧見て思い出したよ(^_^;) でもこれでガンガン魔力に換えてやれば無限とまではいかずとも、無尽蔵に使えるぞいヾ(≧∀≦*)ノ〃」
アリア《それならもう怖いものなし!(≧▽≦) ですね♪(ノ≧▽≦)ノ》
アリサ「よーし♪(°▽°) ガンガン行こーっ!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」
???「……あれは、お前の言ってたやつか?」
???「ま、まさか……信じられません……伝説が真実となる日が来ようとは!」
???「しかし、見失った……」
???「いいえ、伝説の通りなら……彼女の行先は『生命の大樹』のはず」
???「行くか……どのみち長くはもたん……」
???「ええ……」




