142話 『聖域』での戦い
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【なんかいきなり】~ユニが大人に!~《ティリアview》
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「えぇっ!?」
「どうしたのティリア!?」
そ、そんな……ウソでしょう!?
「姉さんから『無限魔力』のパスが私に切り替わった……」
「ど、どういうことなんですか……?」
突然叫んだ私にヴィクトリアとアルナが何事かと、慌てた様子で駆け寄ってくる。だけど私はその事態を直ぐに信じる事が出来ず、説明に手間取ってしまう。
アリサ姉さんに与えた加護『無限魔力』だが、姉さんはそれを様々な事に使用してきた。『無限円環』やヒャッハーくん、世界各地に張った『神の護り手』や配置したオプション。果ては『聖霊』であるユニ達に割く分と、様々に。
それらに魔力を供給し、維持し続けていたのが私が与えた加護の『無限魔力』に依るものだ。今までは私から姉さんに、姉さんからそれぞれに供給されていたそれが、直接私からそれぞれに供給されるようにパスが切り替わったのだ。
「そ、それって……アリサさんに何かあったってこと……?」
「ティリア! 大変なのです! 各地に『魔装戦士』が出現! 『亜人』達も暴れだしたって報告があがって来てるのです!!」
なんてこと!! このタイミングでロアが動き出したってことは、やっぱり姉さんに何かがあった!?
ヴィクトリアの不安そうな問いに、ポコからの報告が重なり、私はそう確信する。
「『ジドランド』より報告! 一部の『亜人』が暴動を起こし、『魔装戦士』現る!
現在鎮圧作戦行動中とのことです!」
「同じく! 『ルヴィアス魔導帝国』より同様の報告があがっております!」
「『セリアベール』にも『亜人』の暴徒化と、『魔装戦士』が!」
「大変です! 『ゲキテウス王国』の西海より巨大な要塞が浮上!! 攻撃を仕掛けて来たと!!」
セレスティーナとガルディング、ナターシャとファネルリアから矢継ぎ早に続々とあがる報告。そのどれもが黒フード達が動き出したこと、『魔装戦士』が襲撃してきたことを語っていた。が、情けない事に私はアリサ姉さんの身に起きたことが気掛かりでならず、その報告を受けても何をどうすればいいか、まったく頭が回らない。
「ティリア様!? ティリア様ご指示を?」「しっかりなさって下さい!」
「そ、そうよティリア! しっかりなさい!」
わ、わかってる! わかってはいるんだけど……っ!!
「落ち着いて。各方面に『四神』を向かわせます!
『ガルーダナンバーズ』はこの『聖域』上空の『魔装戦士』を撃破して!」
ユニ!?
えっ! ユニ? ユニよね!? どうしたのよその姿! めっちゃ大人になってるじゃない!?
「驚くのも無理ありゃーせんでっす! でもティリア様、今は後にしまっしょい!」
「アリサおねぇちゃんが何処か別の空間に送られちゃったみたいなの! ユニは『世界樹』を通じておねぇちゃんの居場所を探って見る!」
呆気に取られている私にアリスが側に寄って来て話は後だと諭す。そうだわ! 呆けている場合じゃない!
パンパンッ!
私は気をしっかりもつために、自分の頬を両の掌で叩いて「しっかり!」と言い聞かせる!
「よし! 聞いたわね? 『四神』は各々が守護すべき方角に飛びなさい!」
「了解です! ルヴィアスさんと連携して帝国を護ります!」
「我は『エルハダージャ』へと向かおう! 珠実と連携すれば『魔装戦士』などものの数ではない!」
「私は『ジドランド』ね! 気張るわよぉーっ!」
ドドシュゥゥーッ!!
命を受けた『四神』達が各方面にすっ飛んで行く! 頼んだわよーっ!
大地は既に『ゲキテウス』に行ってるから、ヒャッハーくんと協力して国を護るように通信で伝えましょうか!
「ようようーっ! ティリア様よ! あの浮上してきたデカブツなんだけどよ……ヒャッハー、映像送れるか?」
《オーケー大地! コイツヲ是非ゼーロ達二見テモライテェゼ!》
なんて思ってたらその大地とヒャッハーくんから連絡が入ったわ。なんだか黒フード達のアジトだと思われる浮上した要塞の映像を送ってきたけど、これをゼーロ達に見せればいいのね?
《おおおぉーっ! これはあの団子を彷彿とさせるではないか!》
《お、落としたい! ゼーロ! あの女神城での経験を活かす時です!》
《主神様! 是非この要塞の撃破をワタクシ達に!!》
えー! その要塞の映像を見たゼーロ達がなんか「ウヒョーッ!」ってやたらテンションあげて俺達にヤラセローっ! ってきたわ!
「あはは……いいんじゃないかなティリア様? グリフォン達に残ってもらえば『聖域』の護りは十分だと思う」
「ゆ、ユニ……あんたホント何がどうなってそんなになったのよ?」
ゼーロ達のやたら高いテンションに若干引く私に、アリサ姉さん並みに色々立派に育った大人ユニが苦笑いを浮かべながら彼等の要塞撃破を賛成してきた。ホントに何があってこうなったんだろ? アリサ姉さんの事で不安が尽きないのに、急な変化見せないでよね。
「ごめんなさい。この姿は一時的なものだから安心して下さい。異空間に飛ばされたおねぇちゃんを探すにはどうしても『龍脈の源泉』からの魔力供給が必要なの。そしてその供給を十全に受けるには……」
「成人した大人の姿になる必要があるのですね、ユニ姉さん?」
「ユニお姉ちゃんカッコいいのです! 絶対にママを見付けて下さいね!」
はぁ~なるほどね……『世界樹』は世界創造の折りに必須となる、『星の命』とも言うべき存在だ。アリサ姉さんの『無限円環』は例外とするも、おそらく、ロアと対峙したアリサ姉さんが飛ばされたという異空間はロアの創造した世界……実験場の一つのはず。
ユニはその世界の『世界樹』に呼び掛け、アリサ姉さんを見付け出そうとしているんだろう。
「そう。絶対に見付けてユニ達の『想い』を届けるの!
今までずっとユニ達を助けてくれていたおねぇちゃんを、今度はユニ達が助けるんだ!
だから、みんな! ユニを、アリサおねぇちゃんを信じて『想い』を届けて!」
ウオオォォオオォォーッ!!
ユニのその言葉に『聖域』のみんなから雄叫びが挙がる! 同時、私は思い出していた。
「アリサ姉さんの履歴書……私達じゃ閲覧出来なかったわよね、ヴィクトリア?」
「え? ええ、そうね……もしかして! もしかする!?」
そう。話を振ったヴィクトリアもその可能性に気付いたみたいね!
この『聖域』の空にも無数の召喚陣が展開され、今まさにロアの『魔装戦士』達が現れようとしている。
「信じましょう! 私達のアリサ姉さんを!」
「ふふっわかったわ!」
その空を見上げ、私達は気概を昂らせて行く! 上等! やってやろうじゃないの!
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【おねぇちゃんは】~ユニが助ける!~《ユニview》
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《では往くぞ! 『ガルーダナンバーズ』各小隊長集え! 目標は『ゲキテウス』西海上空! 『ディード教団』の巨大要塞だ!》
《おおぉぉーっ!! これまでの修練の成果見せる時!》
「我等一丸となりて敵を穿たん!」
(やってやりますよぉぉぉーっ!!)
ユニの上空で集まるゼーロちゃん達。頼もしい空の覇者、『ガルーダナンバーズ』!
ゼーロちゃんを始めに、レイミーアちゃんがユナイトちゃん、エスペルちゃんがそれぞれに吼える!
「皆さん! あの要塞には『黒狼』と『聖魔霊』のご夫婦、そしてガッシュさんと『猫兎』がいるはずです! 合流して『教団』を叩いて下さい!」
了解ぃぃーっ!
アルナちゃんも通信から状況を把握して、指示を出している。きっとあの要塞の中には噂の黒フードの親玉さんと……『技工神』ロアがいるだろう。みんな気を付けて!
「にゃおぉ~ん!」
「うん。わかったよミーナちゃん! ユニ頑張ってアリサおねぇちゃん探して繋ぐから、力を貸してね!」
真っ先にアリサおねぇちゃんの異変に気付いたのは他の誰でも……ユニでもなくて、おねぇちゃんが前世から一緒だったミーナちゃん。ユニが『世界樹』を通じておねぇちゃんを探すって手段をとったのもミーナちゃんが「そうしなさい」って言った気がしたからなの!
「……ユニちゃん先輩はミーにゃん大先輩の言葉がわかりまっするんでっす? なんかアリスには二人で会話してるように見えるんでっすけども……?」
「ううん。わかんないよ? でもね、何て言うんだろ……こう~直接心にどーんって来るっていうか~?」
アリスちゃんがミーナちゃんに返事してるユニを見てそんなこと訊いてくるけど、説明が難しいよ~!
「『魔装戦士』召喚始まりました!」
「来たわね! 先ずは私がド派手にかます! みんな下がってなさい! 巻き込まれないでよ!」
っと! 始まったみたい! こうしちゃいられないね!
ユニはアリスちゃんと頷きあってそれぞれの役目を果たすべく動き出す!
空にはティリア様が飛び上がり、数えきれないくらいにズラリと並んだ召喚陣から出てくる『魔装戦士』達に向けて……っ!!
「ふははは! 見なさいロア! あんたが舐めくさってくれた力で大好きなお人形さんがぶっ壊される様をねぇーっ!! 『神怒爆発』!!」
シュバァァーッ!!
両の手から放たれる一条の光がティリア様を中心に輪を描きながら空を駆けて行く、まるで星を輪切りにするかのように! そして次の瞬間、巻き起こる爆発!
ドドドドドドドドォォォォーンッッ!!!
それはこの『ユーニサリア』総ての空に爆ぜる花火のよう……ってーっ!
「ちょっ! ティリア様! 『世界樹』までドッカンしてないよね!?」
「なははは! 爽快ね! って、何よユニ? そんなヘマしないわよ! それよりホラ!」
フィィーン……召喚されたばかりの『魔装戦士』達が粉々に砕け散って行く様子に高笑いをあげるティリア様にユニが思わず文句を言うと、ティリア様は大丈夫と言いながら一つのデータを『世界樹』を通してユニに送ってきた。
「これは……?」
「ロアが創造した世界の座標よ! アリサ姉さんはその世界のどれかに飛ばされてるはず! 必ず見つけ出して助けてあげて!」
わぁ、そうなんだ! これは凄く助かる! この座標データがあれば一気にアリサおねぇちゃんの居場所を絞り込めそう!
「ありがとうティリア様! おねぇちゃんは絶対にユニ達が助けるからそれまで頑張って!」
「頼んだわよ! さあみんな! こっからが本番よ! 気合い入れなさい!」
おおおぉぉぉーっ!!
『聖域』のみんなの昂る気概にユニも「よぉぉーしっ!」って叫んじゃった!
待っててアリサおねぇちゃん! 絶対に助けるからね!
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【ブラウニーちゃん】~どこぉ~?~《アルセイデスview》
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「行くぞガウス! 妖精の皆さんを御守りするっ!」
「応さ! 『魔装戦士』なにするものぞ!」
ドォォーンッ!! ザシュッ! ズドォォーンッ!
ムラーヴェさんとガウスさんの斬撃が私達に銃口を向けていた『魔装戦士』を斬り捨てます!
私はティターニア女王陛下が治める『妖精国』の森のニンフであるアルセイデスの一人です。共を一人連れて、伝令みたいなことをしているのです。
女神様や女王様はアリサ様から通信用の魔装具をお持ちですが、私達住人総てが持っているわけではありませんので、どうしても細かい部分で抜けが生じてしまうため……
「危険な役回りですが、やって下さいますか?」
──と言う、女王様のお願いに私達が名乗りをあげました。
「御安心召され! 貴女達は俺達が命に代えてでも御守り致しましょう!」
「然り! 『セリアベール』で受けたアリサ様への恩義! この戦にてお返しせねばなるまい!」
「あ、ありがとう……」
「ごめんなさい、足手まといになってしまっていますね、私達……」
私達は皆さんのように『無限円環』での訓練を受けたわけではないので、どうしても皆さんの足を引っ張ってしまいます。それ故にここ最近は『妖精国』から無闇に『聖域』への移動を禁じられていたくらいなのですが、つい先ほどブラウニーちゃんが『妖精国』に避難できていない動物がいると言って、『聖域』に出てしまったのです。
弟のノッカーくんまで姉のブラウニーちゃんを探しに行くと、『聖域』に出ようとしたのを「私達が探してくるから」と、説得して今に至るのですが……心配でなりません。
「何を言われます!? 朋友を、同朋をを案ずる心は俺達も同じです!」
「うむ! ブラウニー殿は『酪農班』の要とも言える存在……必ず助け出しましょう!」
「はい!」「ありがとう二人共!」
ああ、なんて心強いのでしょう! ムラーヴェさんとガウスさん。この二人は『セリアベール』から来た客人だと言うのに、こんなにも私達を案じてくれるのですね?
「しかし、一体何処に行かれたのだろうか?」
「もしや『魔装戦士』から逃れるべく、離れた場所に行ってしまったやもしれんぞ!」
「はっ! そうだわ、アリス様なら存じ上げていらっしゃるかもしれません!」
「そっか! アリス様はこの『聖域』の意思! きっとブラウニーちゃんの居場所も把握されてるはず!」
『妖精国』の入り口周辺や、動物達の厩舎等、色々探し回る私達ですが、一向にブラウニーちゃんの姿が見つかりません。気持ち焦るムラーヴェさんとガウスさんを見て私ははっと思い付きました! アリス様です! 彼女なら! 私がその事を口にすれば、同朋のアルセイデスもその可能性に気付いたようで、嬉しそうに声をあげました。
「なるほど! では早速お訊きしてみましょう! アリス様ーっ! こちらムラーヴェ! ブラウニー殿が行方知れずなのですが、何処におられるか!?」
『あいあい。あーた達が探してるんでっすね? シールド張って保護してまっするよぉ~?
その場所からやや南でっす! 早く『妖精国』に連れて行ってあげてくだぁさいね?』
わぁっ!!
よかった! 無事なのね! ムラーヴェさんが通信用の魔装具で、ここと離れた場所で『魔装戦士』と戦うアリス様に確認をしてくれました。そのお陰でブラウニーちゃんが無事とわかり、私達は喜びます。
ブゥゥンッ!
「危ない!」
ガギィィンッ!!
そんな風に喜んだのも束の間。突然私達の目の前に魔法陣が出現して、やや小さめの……と言ってもグリズリー並みに大きいのですが、『魔装戦士』が現れ、手にした魔法剣で斬りかかって来たのです! しかしそれをムラーヴェさんが咄嗟に盾で防いでくれました!
「ええいっ! また『転移』して来たか! ぬぅんっ! 一閃っ!!」
ズバアァァーンッ!! ドゴォォーンッ!!
続けざまにガウスさんが剣を斬り上げ『魔装戦士』を真っ二つに斬り裂きます! 『核』の魔石を砕かれ、爆発するその衝撃に私達は思わず目と耳を塞ぎしゃがみこんでしまいました。
「こんな形でアリス様の『待ち望んだ永遠』を抜けて来るとは!」
「油断ならんぞムラーヴェ! お二人も俺達から離れぬように!」
「「は、はい!」」
うう、以前レウィリリーネ様より頂いた『魔除けの指輪』も『魔装戦士』には効果がないようですし、大結界の『待ち望んだ永遠』も『転移』で潜り抜けて……正直怖い! でも、一人残されたブラウニーちゃんはもっと怖い思いをしているはずです! こんなことでへこたれてなんていられません! ムラーヴェさんとガウスさんを信じて先に進むんです!
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【抜けてくる!】~止めてやるわ!~《シェラザードview》
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「アリス! 『待ち望んだ永遠』を『転移』で抜けられているわ! 術式に介入して事前に防ぐわよ!」
「うえぇっ!? 今からそんな解析なんてムリリンじゃあねぇでっす!?」
泣き言言わない! やるったらやるのよ!
私は次々とこの『聖域』に『転移』で侵入してくる『魔装戦士』を相手取りながら、そうアリスに言うのだけれど、アリスったらやる前から無理だなんて決めつけて!
「しっかりなさい! 今もブラウニーが取り残されてるのよ!? ムラーヴェとガウスが向かってるとは言え、危険な状況なのはわかるでしょう!?」
「は、はい! ってこのぉーっ! 邪魔でっしゃろい!!」
ズビィィーッ!! ババッ!
「『エナジースピア』!!」
バシュバシュッ!! ズドォォーンッ!!
返事するアリスに襲い掛かる『魔装戦士』のビームソードを回避して、カウンターのエナジースピアを突き刺す! アリサの『無限円環』での訓練を経た私達にとって、大した相手じゃないのだけど、こんなチマチマしてたら物量に押し潰されてしまうわ!
「私もフォローしますわ! 一度この辺り一帯の『魔装戦士』を一掃致しましょう!」
「助かるわティターニア! アリス、やるわよ!」
「りょぉぉかいでっすよぉぉーっ!」
同じようにこのままではマズイって感じていたのでしょうね? ティターニアが協力に来てくれたわ! これなら奴等の『転移』の術式の解析に手を回せそうね!
「あの防衛戦の時と違い、十全な威力で放つ! 消えろ『魔装戦士』! 僕達の『聖域』をこれ以上穢させはしない! 『天地雷鳴・雷神撃』!!」
ズッガアァァーンッ!! ドゴドゴドゴォォォォーンッッ!!!
私達三人が合流し、群がる『魔装戦士』を一掃しようと魔法を構築しようとしたその刹那、ヒヒーンッ! と言う雄々しい馬の嘶きと共に、『魔装戦士』達の頭上に凄まじい轟雷が落ちる!
「追加だ! 珠実に代わり新たに『懐刀』となった私の初陣! 華々しく飾らせてもらうぞ!! 『奈落』!!」
ブゥオォンッ! ズゴォォォォーッ!! ボボボボォォーンッ!!
次いで現れるのは巨大な『黒竜』! グオォォーッ!! と大きな『咆哮』の後に繰り出された闇の大魔法『奈落』がこの『聖域』の上空に大きなブラックホールを生み出し、『魔装戦士』だけを吸い込んでは爆散させながら呑み込んで行く!
「カイン! ゆかり!!」
「ハーッハッハ! こんな奴等いくら用意しようと私達の相手になどならん!」
「シェラザード様、アリス様、ティターニア様! 僕達が『魔装戦士』から御守りしますから、その間に!」
「助かりますわ! さあ、やりますわよシェラザード様、アリス様!」
「ええ! ありがとう二人共! 直ぐに解析するわ!」
「っしゃあぁーっ! やっちゃりまっするよぉーっ!」
なんて頼もしいのかしら! カインとゆかりが『魔装戦士』の相手をしてくれるなら私達は三人共、『転移』の術式の解析にあたれる! 奴等の『転移』を封じる事が出来れば『待ち望んだ永遠』の外で大暴れしているジュン達の鉄壁の護りで『聖域』は確固たる『安全地帯』となるだろう!
まったく……折角幽閉が解けたと思ったらこれだものね。ああ、でも……ふふ。ティリアに迷惑かけたくなくて『無限円環』に引きこもっていたら、いざ幽閉が解けたとしてもちょっと後ろめたさを感じてしまっていたでしょうから……不謹慎だけれど、結果的によかったのかしらね? なんせみんなと一緒に『ユーニサリア』を守るために大手を振ってこの『聖域』に出てこれたんですもの。
「かーんりょぉぉーっ!! どうでっすかシェラザード様!」
「私も解析が終わりましたわ! それで、妨害するならば、この一文を崩してやれば!」
「!! 流石ね二人共! 私も同じ答えを出したわ。これで行きましょう!」
そんな風に少し考えに耽りつつ解析を進めると、アリスとティターニアがほぼ同時に穿つべき穴とも言える術式の隙を見つけ出して私に見せてくる。驚いたことにそれは私が導きだした解とまったく同じ! 嬉しくなった私が二人を手放しに褒めると、「シェラザード様にはみっちりしごかれまっしたもん! 当然でっしゃろい!」「そうですわ! シェラザード様とルヴィアスさんに師事して頂いたのですもの、当然ですわ!」なんて、更に嬉しくなる事を言ってくれるじゃないの!
「じゃあ行くわよ! 『破壊術式』!」
「「『破壊術式』!!」」
私、アリス、ティターニアの三人で、『魔装戦士』達の『転移』魔方陣を破壊する術式を同時に紡ぎ出し、解き放つ!
「「「『解放』!!!」」」
シュバアァァァーンッ!!
一瞬の内にこの『聖域』を駆け抜ける私達の『破壊術式』! その度に『魔装戦士』達の『転移』魔方陣が割れて砕けて行く!
「……『魔装戦士』、現れません! 成功でっすよ!」
「ええ! やりましたわ!」
「ひとまずはこれで安心かしらね? 後はマップをこまめにチェックして警戒しましょう!」
よし! やったわ! これで『聖域』内部への侵攻は止められた。これで少しは償いになったかしらね?
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【お姉さん達と】~お兄さん達♪~《ブラウニーview》
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はぁはぁはぁっ! 急がなきゃ急がなきゃ!!
「ハナちゃぁーん! どこぉぉーっ!?」
私、ブラウニーは今、『魔装戦士』がどこからともなく『転移』して現れる危険な状態の『聖域』を走る。一度目の襲撃の日から緊張状態が続いていたんだけど、それが遂に本格的な戦闘になってしまったんです。
私達妖精は危ないから、動物達と一緒に『妖精国』に避難していたんですけど、牛のハナちゃんがいなくなっていたんです! 『妖精国』から『聖域』に出ちゃったんだってわかった私はいそいで探しに来たんですけど……
ドォォーンッ!!
「ひぃっ!? こ、怖いよーっ! でもハナちゃんはもっと怖い思いをしてるだろうし……」
あちこちから聞こえるドォォーンとかドガァーンとかいう爆発音におっかなビックリしながら、見付からないよう慎重に進みます。弟のノッカーには止められたんですけど、ハナちゃんを見殺しになんて出来ません!
「心配してるだろうけど、ごめんね! 放ってなんておけないの!」
きっと、たかが牛の一頭。もっと自分の命を大事にしろ。とかお説教されそうだけどね……
「ンモォ……」
「ハナちゃん!?」
聞こえた! ハナちゃんの声だ! 良かった、無事みたい!
だいぶ弱々しくて、怯えが混じった声だけどちゃんと聞こえた! 私は急いでその声の方に向かう。
「ハナちゃん! 大丈夫!? 向かえに来たよ! って、怪我しちゃったの!?」
「モォォ……」
見付けた! ハナちゃんがいた! 森の木の一本の下でうずくまって震えてる。うん、怖かったよね? 大丈夫だよって声をかけてお腹を擦ってあげると、いくつかの傷があるのがわかった。多分怖くてこの森の中を走った時に枝とかに引っ掛かってついたんだろう。ちょっと血が滲んでてかわいそうだ。
ブゥゥンッ!
「きゃあぁぁーっ!!?」
大変! ハナちゃんを安心させて『妖精国』まで戻ろうとしたら、目の前に魔方陣が現れて『魔装戦士』が『転移』して来た! 私達を見るやその『魔装戦士』は剣を振りかぶる!!
ガギィィンッ!!
「ガッ!?」「えっ!?」
その剣が私ごとハナちゃんもまとめて斬るその瞬間、光の盾がその攻撃を防いだのだ! 一瞬呆気にとられる私達と『魔装戦士』だけど、更に……
「『擂光の槍』!!」
ズガガガァァーンッ!! ドゴォォーンッ!!
一本の鋭い落雷! その直撃を受けた『魔装戦士』はたまらず爆発して消えて行く!
「ブラウニー! 大丈夫でっす!? どうして『妖精国』の外に!?」
「アリス様! ありがとう! でもハナちゃんが!!」
アリス様が助けてくれたんだ! 私がどうして『妖精国』から出てこんなところにいるのかを説明すると、「わっかりまっした! でも、今はこれが精一杯です。助けが来るまで我慢の子でっすよ!?」と言い、周囲をさっきの光の盾で囲ってくれたんです!
私とハナちゃんは周囲から聞こえてくる激しい戦闘の音に怖がりながら待ちました。すると、アルセイデスのお姉さん二人と、ムラーヴェさんとガウスさんが来てくれたんです!
「よかった! ブラウニーちゃんが無事で!」「心配したじゃないもうっ!」
「ハナちゃん殿も無事でなにより! いつも美味な乳を分け与えて下さって感謝してます!」
「然り! さあさ皆『妖精国』に戻りましょう! 露払いは俺達にお任せを!」
えへへ♪ 心配かけてごめんなさいお姉さん達。ムラーヴェさんとガウスさんもありがとう! 私がそうお礼を言うと四人は本当に安心した微笑みを浮かべてくれたんです。ふふっ、ハナちゃんも嬉しそうにモォォ~♪ って喜んでます。
「本当にありがとう二人共! この戦いが終わったら何かお礼します!」
「うんうん! ブラウニーちゃんも私達も無事なのは二人のおかげ! 絶対お礼します!」
『妖精国』の入り口に戻るまでに何度か『魔装戦士』が襲って来ましたけど、ムラーヴェさんとガウスさんはとっても強くてものともしません! 凄く心強くて安心感が半端ないです! アルセイデスのお姉さん二人も凄い感謝してて、二人にお礼したいって言います。私も何かお礼したいです!
「はっはっは! お気になさらずに! 見目麗しい皆様が大事なくてなによりですから!」
「何を紳士ぶっているムラーヴェ! 俺はわかっているぞ? このお二人にまたあの「レースクイーン」の格好をしてもらいたいと思っているのだろう!?」
「ええっ!? やだぁ~♪ もう♥️」「私達の事を覚えていたんですか!?」
あはは♪ そうです、このアルセイデスのお姉さん二人は、あのゲームでちょっと大胆な姿で登場してたあの二人なんです。ムラーヴェさんとガウスさんはしっかり覚えていたみたいですね? お姉さん二人も恥ずかしがりながら、なんか嬉しそうです♪
「なにおぉ~? それは貴様の願望ではないか!? いや、無論俺も見たいが!? 寧ろこの期に親密にお近づきになりたいが!?」
「然り! 下心あっての俺達よ! わはははっ!」
アハハ! も~正直すぎますよお兄さん達♪ 大笑いするムラーヴェさんとガウスさんを見てた私達は、つられるようになんだか可笑しくなってきちゃって、気付けば一緒になって笑い声をあげていました。もう、さっきまでの怖い気持ちは吹き飛んで、心から笑えたんですよ!
「ふふっ♪ それなら~全部終わったらデート♥️ とか、しちゃいます?」
「素敵♪ 私、『セリアベール』の街に行ってみたいわ!」
はい! 喜んでーっ! って、お姉さん達のちょっと「うっふぅん♥️」なお誘いに、それはそれはいい笑顔を見せるお兄さん二人です。「よっしゃやるぞぉーっ!!」って凄い気合いを入れて、私達を『妖精国』に送り届けては『待ち望んだ永遠』の外の『魔装戦士』達に向かって行きます。頑張って下さいね、お兄さん達!
ティリア「ちょっとぉぉーっ!Σ( ̄ロ ̄lll)」
ユニ「ど、どうしたんですかティリア様ーっ!?Σ(・ω・ノ)ノ びっくりするじゃないですか!(゜ω゜;)」
ヴィクトリア「そうよ!( `□´) いきなり大声出して、なんなの!?(。・`з・)ノ」
ティリア「なんなの!( `Д´)/ じゃなぁぁーいっ!(`□´) なんなのっ!?o(T◇T o)」
アルナ「大変です(゜A゜;) ティリアがおかしくなっちゃいました!((゜□゜;))」
ポコ「……元から結構変だったと思うのです(*`艸´)」
ユニ「あはは( ̄▽ ̄;) で、どうしたんですかティリア様?( ̄0 ̄;)」
ティリア「ユニ!(。-`へ´-。) 大人の姿にならざるを得ない理由はわかったわよ!(_ _) でも、なんでそんなにボンキュッボーン!(≧▽≦) なのよ!?ι(`ロ´)ノ」
ユニ「え~?(´▽`*) だってユニの理想はアリサおねぇちゃんだもーん♪ヽ(*>∇<)ノ」
ヴィクトリア「うんうん(*´▽`*) ユニちゃんのその姿をアリサさんが見たらきっと喜ぶわよ♪( *´艸`)」
ポコ「ユニお姉ちゃん格好いいのです!(ノ≧▽≦)ノ」
アルナ「私も素敵だと思いますよ?(*^-^)」
ティリア「うぐぐ……な、なによみんなしてぇ~!?(≧口≦)ノ スタイル良ければいいってもんじゃないもん!。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」
ヴィクトリア「泣かないでよ……(´д`ι)」
みんな「(ーー;)」
ブラウニー「……あれ?(゜Д゜;) お姉さん達?(-_-;)」
アルセイデス①「どうしたのブラウニーちゃん?(^ー^)」
アルセイデス②「なにか気になることでもあったの~?(・_・)」
ブラウニー「いえ……あの、さっきの会話なんですけど(^_^;) いわゆる『死亡フラグ』なんじゃないですかね?(´゜ω゜`)」
アルセイデス達「ええっ!!?Σ(´□`;)」
ハナちゃん「ンモォ~?( ̄0 ̄)」
ブラウニー「ほ、ほら!( ゜Д゜)ノ 戦いの最中に未来の希望とか、やりたい事を約束し合うと、決まって悪い事が起きるっていう……ヾ(;゜;Д;゜;)ノ゛」
アルセイデス達「((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル」
ハナちゃん「モォォ~(。-ω-)zzz」
アルセイデス①「だだだ、大丈夫よきっと!(ノ`Д´)ノ あの二人ならそんなの吹っ飛ばしてくれるわよ!ι(`ロ´)ノ」
アルセイデス②「そ、そうね!(; ・`ω・´) きっとそんなよくわからないジンクスなんかより、二人の煩悩が勝つ筈だわ!(>д<*)」
ブラウニー「ぼ、煩悩って……(゜∀゜;) なんか妙に説得力があります(´ε`;)ゞ」
ハナちゃん「ンモッモォォ~( ̄q ̄)zzz」
アルセイデス①「そうよ!(*´∇`*) 約束通りまたあのレースクイーンの格好して、「お疲れ様♥️」って労うんだから!ヾ(o≧∀≦o)ノ゛」
アルセイデス②「うふふ♪(///∇///) デートも沢山するんだからぁ~♥️:*(〃∇〃人)*:」
ブラウニー「……(ーωー) お姉さん達も結構な煩悩まみれでしたか( ̄▽ ̄;)」




