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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
176/211

141話 魔女と亡国の王子と技工神

ガッシュ「おぉ(・о・) こんな時になんだが、ユニークアクセスとやらが七万を越えそうではないか?( ´ー`)」

にゃるろって「にゃーん♪(=゜ω゜=) そうなんだけど、まだ閑話執筆してる最中らしいのにゃん!(´ヘ`;)」

レジーナ「おや、それでは暫くお預けかな?(゜A゜;)」

バルド「残念だ(>_<)」

ネネ「どうにもこうにも、暑さで執筆捗らないとか(;´A`)」

モモ「ちょっと行って『粉☆砕』してきましょうか~?(。・`з・)ノ」

セラ「いやいや(;-ω-)ノ 待ってやれよモモ?(゜ー゜*)」

バルガス「あの暑さは堪え難いものぞ……(>_<")」

ネヴュラ「うふふ♪(*´艸`*) そのあたりのお話になるとのことですから、今少しお待ちくださいね(*´▽`*)」

────────────────────────────

【接触する】~教団員~

────────────────────────────


「あんたがガッシュで間違いないか?」

「報告にあったあの『人猫(ワーキャット)』の幼子を連れて来たようだな?」

「……如何にも」


 話は『セリアベール』が『ディード教団』の襲撃を受ける少し前に遡る。

 にゃるろってと『猫兎(キャットラビット)』達と共に『ゲキテウス』の中枢である王都入りを果たしたガッシュは、冒険者ギルドにて『黒狼』達とも合流した。

 宿で『教団』の本部へと乗り込むための作戦を立てる前。彼は自分に接触してくるであろう教団員が現れると踏んで、単身街を歩いていたのだった。

 彼の予想通り、『教団』の人物が路地裏で接触してきた。王都入りして直ぐに尾行してきた二人だ。

 彼等は『教団』の信徒である、『人犬(ワードック)』とエルフ。ガッシュに今後の作戦を伝えにきたのだろう。


「あの幼子はすぐにでも国王との謁見を申請するべく城へと向かうのだろう?」

「うむ。そして私は『セリアベール』の冒険者ギルドのマスター。ゼオンからゲキテウス王宛ての書状を預かっている」

「ならば話は早い。『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』を上手くかわし、貴様と幼子の二人で城へと向かうのだ」


 どうやら間違いないようだ。彼等の話では『教団』は、ガッシュとにゃるろってを二人だけにし、城への道中に行動を起こすつもりらしい。


「具体的にどうするのだ? 私は真っ直ぐ城へと彼女を案内すればいいのか?」

「それで構わない。途中我々二人が城の兵を装い、空き家へと誘導する」

「貴様と王は昔馴染みなのだろう?」


 成る程、そう言うことか。

 ガッシュはその言葉を聞いて理解した。確かにこの『ゲキテウス』の王『シャイニング・レオナード』とは『誉』時代からの馴染み。その私が城に向かっているならば王も特別に会う事もあろう。

 彼等はその事を利用し、兵士に扮する事で周囲に怪しまれる事なく、伝えに来て、その空き家へと誘導するのだろう。

 恐らくその空き家とやらは『教団』の本部へと続く通路を隠すための物か……ならばその作戦を逆に利用させてもらおう。


「了解した。なんとか『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』を言いくるめて、あの幼子と二人で城へと向かおう……ふぅ、上手い理由を考えねばな。私にはこれが一番の難題だ」

「ふっ、そこは自分でなんとかしてくれ」

「この作戦が成功した暁には貴様を幹部として迎え入れようと言う話ものぼっているそうだぞ? 頑張ってくれ」


 そう言い残して去って行く二人の背を見送ったガッシュは……


「曇り濁った瞳よ……やれやれ、アリサ様と出会わなければ私もああだったのだろうな」


 晴れ渡る空を見上げ、一人呟いた。

 正気を取り戻し、アリサ達に協力する事になったガッシュは改めて間近で見た教団員達の異常さに気付き、かつての自分を見ているようで、少し耳が垂れる。そうしてやや暗い気持ちを抱えて宿へと戻るのであった。


「お帰りなさいガッシュくん。どう? 予想通りだった?」

「はい。ただいま戻りましたにゃるろって様。ええ、一人になった途端即座に接触してきました。

 皆とその内容を共有したいと思いますが、全員揃っていますか?」


 大丈夫だよ、さあ、入って入って。と入室を促すにゃるろってに頷き、ガッシュは部屋へと入った。そこには既に『黒狼』と『猫兎(キャットラビット)』達、バルガスとネヴュラの全員が揃っており、ガッシュの帰りを待ってくれていたようだ。


「──へぇ~なるほどな。んじゃその空き家から黒フード共の巣窟に殴り込めるってんだな?」

「ブレイド~私達はついて行っちゃ駄目なんだよ?」


 ガッシュの話を聞いた面々は皆一様に頷き、その空き家から『教団』の本部……もしくはそこに近しい場所に移動できると確信しているようだ。


「ふむ。本当にただの空き家でガッシュ殿とにゃるろって様を結界等で監禁する。とかかも知れぬ」

「ともすれば離れすぎるのもよくありませんわね」

「どうする? 僕達としてはその空き家の場所も押さえておきたいんだが?」

「レジーナの言う通りだな。俺達はにゃるろって様の『引き寄せ(アポート)』で一気に攻め込む予定だが、何らかで魔法が発動しない可能性もある」

「そうね、もしもの時を考えると『教団』の中枢に繋がっていそうなその空き家の場所は知っておきたいわね」


 まあ、『聖域の魔女』であるアリサ……今はにゃるろってであるが、を監禁できるような結界がそうそうあるものではないだろうが、可能性が無いわけではない。バルガスの言葉にそんな意味も含まれると知る皆は思考を巡らせ始める。


「……折角人数がいるんだ。こういうのはどうだろうか?」

「お、バルドくんなんか名案あり~?」

「ああ、尾行と先回りだ」


 そのなかでバルドが一つの案を出してきた。ミミが聞き返すその案は尾行と先回り。バルドはにゃるろって達がこの王都入りしてから自分達と合流するまで、『教団』に尾行されていたという話を聞き、その意趣返しをしようと言うのだ。


「更にここに『透明化(レムオリーノ)』の魔法を、シェリーとミストにかけてもらう」

「いい、な。そこに……剣聖剣技奥義『森羅万象』を……併せれば」

「なるほど、いいわね。今日私達を尾行してきたあの二人程度なら、見破る事はできないでしょう」


 バルドがシェリーとミストに頼む『透明化(レムオリーノ)』と言う魔法は、文字通りかけた対象の姿を透明化させる魔法。

 デュアードの言う剣聖剣技奥義『森羅万象』とは、自分自身の存在を自然に溶け込ませ風景とする技であり、例え目の前にいても認識する事はできなくなる。『無限円環(メビウス)』での訓練により皆が習得した絶技。精々がAランク冒険者程の実力の教団員達には、ニャモの言う通り看破される事はないだろう。


「決まりだにゃ♪ いよいよ決戦……みんな、勝とうね!」


コクリ。


 それぞれの思いを胸に『ゲキテウス』に集った皆が頷きあった。


────────────────────────────

【いざっ!】~敵陣へ~

────────────────────────────


「王のご友人『誉』のガッシュ殿とお見受けします」

「ああ、如何にも私がガッシュだが……」

「王が貴方をお待ちしております。特別な部屋にてつもる話をしたいと。

 我々は案内を仰せつかり、こうして罷り越しまして御座います」


 昼食を済ませた午後。早速ガッシュとにゃるろって達が二人で城へと向かい、その道中に他メンバー達が姿を消しつつ、見守っていると、先日の『人犬(ワードック)』とエルフが兵士の姿で現れ、ガッシュと接触してきた。


「ほう、それはなんともアイツらしいが……客人がいても?」

「はっ。王は「構わぬ」との仰せです」

「それは嬉しいにゃ~♪ 謁見の申請をして~何日か待たなきゃいけないかなって思ってたのにゃ~」


 先にも述べたが、『ゲキテウス王国』は「世界で一番住みやすい」と称される大国である。当然ながらそんな大国を治める王との謁見ともなれば、簡単に叶うものではない。その時の情勢や政治事情にもよるが、謁見の申請を出して数日経過後にようやく……であり、長い時には数週間待たされる事もあるらしい。それが、まさか訪れた当日にいきなり会えるのだから、にゃるろってが喜ぶのも当然である……まぁ、総てポーズではあるのだが。

 『ゲキテウス』の王都は、城を中心点として、◎を描く構造で成り立っているのだが、中心に近付くにつれ、建ち並ぶ家々もグレードが上がって行く。にゃるろって達が案内されたその空き家は、そんな貴族の屋敷さながらの家が建ち並ぶ一画にあった。


(……この感じ、『転移陣(ワープポータル)』っぽいわね。ここから本部に繋がってるってわけ? 後で破壊しときましょうかね? いや……この感じ、あのお婆さんも気付いてる?)

「ささ、お二人共こちらです。どうぞこの『転移陣(ワープポータル)』へとお入り下さい」

「王の私室に繋がっておりますので、直ぐにお会いになれるでしょう」


 にゃるろっては感じた魔力の波長からこの空き家に『転移陣(ワープポータル)』が設置されていることに気付いた。そして同時にそれは『教団』がこの王都に攻め込んで来ることすら可能にするのだということにもなる。そうなるとマズイ。『ゲキテウス』の人々が危険に晒される事になってしまう。『黒狼』達に破壊してもらうか少し悩んだところで、あのウォーラルと言う老婆の微細な魔力を感じ取った。


「……どうされました?」

「にゃ? ちょっとビックリしたのにゃ。『転移陣(ワープポータル)』なんて珍しいって」

「ええ、何か有事の際に王が安全に城から脱出するための物です。この事はくれぐれも他言なさいませんようお願い致します」


 なるほど、如何にも自然な理由だ。


「行きましょうにゃるろって様。ゲッキーと会うのも久し振りです、そう時間は取れぬでしょうが私も色々と話したいですからね」


 ガッシュの言葉に頷きにゃるろっては『転移陣(ワープポータル)』に乗る。

 そうだ、今は自分自身の戦いに集中しなくてはならない。あのウォーラルも世にも名高い『三賢者』と謳われる者の一人と聞くし、任せよう。そう、総てを背負うことは出来ないのだから。


シュウゥゥン……


「さあ、この廊下を進んだ先に王がお待ちです」


 転移した先はちょっとした小部屋になっていた。目の前に扉があり、案内人を務める二人の話では一本の廊下が続き、その先が王の私室に繋がっているとの事だ。ふむ、なるほど。にゃるろっては内心頷き、その小部屋と廊下の立派な作りに、確かにお城の一室と廊下っぽいな、と感じていた。


「ご苦労様。じゃあね……少し、眠っていなさいね?」

「えっ?」「なっ!?」


ドサドサッ!!


 ここまで来ればもう遠慮はいらない。案内役の二人を魔法で眠らせ、仲間達を呼び寄せる。


「はは、『引き寄せ(アポート)』の手間が省けたじゃねぇか?」

「うむ。アリサ様のお手を煩わせる事なく済んだのは幸いである」

「ですがどうしますこの『転移陣(ワープポータル)』? 破壊しておきましょうか?」

「そうね、『ゲキテウス』に『教団』の連中が攻め込んで来られるのも困るだろうし、ネヴュラの言う通り壊しておきましょう」


 『教団』側が用意した『転移陣(ワープポータル)』を利用して続々と仲間達も転移してくる。セラとバルガスの言葉に「そうだね」と一言応え、ネヴュラが『転移陣(ワープポータル)』をどうするのかと言う問いに、にゃるろっては破壊を選んだ。


ポフンッ!


 にゃるろってが『転移陣(ワープポータル)』の魔力回路を短絡させ、魔力が行き渡らないようにすると、『転移陣(ワープポータル)』は発していた光が消えてただのオブジェクトに変わる。


「これでよし。さて、それじゃあ御対面と行きましょうか?」


 そうして彼女は『人猫(ワーキャット)』の幼女から本来の姿……『聖域の魔女』に戻り、仲間達の力強い首肯を頼もしく感じながら、廊下を進むのだった。


────────────────────────────

【ロアと】~エリクシル~

────────────────────────────


「ようこそ参られた。歓迎しよう『聖域の魔女』とその一行よ」

「あんたがロアかしら? それともエリなんとかさん?」

「なんだと貴様ぁっ!?」


 おーこわいこわい。等とおちゃらけるアリサ。廊下を抜けたさきには大仰な大扉が構えられており、そこを抜けた先にあったものは、アリサの前世でも近未来的な部屋であった。

 ズラリと並べられた中空に浮くモニターに、タッチパネルなのか平べったい計器類。そしてそこに居合わせる四人。


「何故ヴァルジャ様にジャイファ様がここに……はっ!? そうか、『転移陣(ワープポータル)』だな!?」

「如何にも。ガッシュよまさかお前が裏切るとは思いもしなかったぞ……」

「裏切者には死あるのみだ!」


 そう、四人の内二人は『セリアベール』の支部に居たはずの『蛇人(スネークス)』ヴァルジャと、エルフのジャイファだった。我々よりも速くこの『ゲキテウス』に移動できる筈がないと、驚くガッシュだが、直ぐにその理由を察した。

 ヴァルジャとジャイファが信用していたガッシュが裏切者だと知らされたのは、この本部にてエリクシルと、もう一人……ロアからだ。


「……どうやって気付いたのか聞かせてもらいたいものだな。ついでに、何故泳がせていたのかも」

「ふふふ、よか「んなもん洗脳魔法かなんかだろ?」なっ!?」

「下らん……そうでも、せんと……仲間も、作れない。小者だな、エリ……なんとか? は」

「ははは! そんなのにいいように使われてるお前等も惨めだなぁ~?」


 煽る煽る。ガッシュが自分が裏切った事をどうやって知ったのか? 裏切者と知りながら今まで自由にさせていたのは何故なのかを二人に問えば、襟の高いマントを羽織った、見るからに『ヴァンパイア』な男が立ち上がり、得意気に笑いながら説明しようとするのをブレイドが食い気味にセリフを被せ、デュアードがコケにしてはセラも続いた。

 それを聞いた『ヴァンパイア』風の男……エリクシル・ウィスタールはワナワナと震えだし、ヴァルジャとジャイファは顔を真っ赤にして「この無礼者共!」とか喚き始める。


「お久し振りですね。エリクシル・ウィスタール? 私を覚えているかしら?」

「何……貴様……あの時の悪魔か? ふん……再会できたなら礼の一言でもくれてやろうと思ったが……どうやら貴様も敵のようだな?」

「ええ、妄執に囚われて馬鹿なことをしようとしている貴方にお灸を据えてあげようと思って」


 うふふ、と怪しげな笑みを浮かべるネヴュラが騒ぐジャイファとヴァルジャ達の横からエリクシルに話しかける。エリクシルもやはり覚えていたようで、直ぐにネヴュラがあの時『ヴァリスデリダ王国』を滅ぼした悪魔であると気付いた。しかし、その悪魔が敵の陣営にいると言う事は……


「俺の朋友達の安らかな眠りを妨げ、下衆な術で利用したその罪、購ってもらうぞ『死霊使い(ネクロマンサー)』?」

「さっさとお仲間でも呼んだらどうなんです?」

「この私達『黒狼』が蹴散らしてあげるわよ!」


 この目障りな冒険者共々、自身の敵であるということだ。

 バルド、ミュンルーカ、シェリーが武器を構えエリクシルを睨み付ける。しかし、そんな彼等を見てエリクシル、ヴァルジャ、ジャイファの三人は互い顔を見合せた後笑い出したではないか。


「仲間か。よいぞ、呼んでやってもな?」

「ふふふ、生憎とその大多数が出払っていてな……ここに呼べる者達は少ないのだが……」

「いやいや、構うまい。リクエストには応えてやらねば……」


 ククク……と不気味に笑う三人。奥の扉から現れる『亜人(デミヒューマン)』達。


「マジに少ねぇ……黒フードってもっといるんだと思ってたぜ?」

「いや、待て。これだけの筈があるまい……ともすればっ!?」


 ぞろぞろと現れる教団員は精々が二十人程度。ブレイドがその少なさに拍子抜けしているところに、バルガスが何かに気付いたかのように、自分達がやって来た廊下があった方に慌てて振り返った。


「えっ!? あっ! そういうこと!? 『転移陣(ワープポータル)』が他にもあるんだ!?」

「ほほう、中々察しが良い者がいるではないか!」

「ふはは! 今頃お前達が拠点とする『セリアベール』はどうなっているだろうなぁ?」


 ミストが自分達もこの教団本部に転移するために利用した『転移陣(ワープポータル)』の存在を思い出し叫ぶとヴァルジャとジャイファが愉快愉快とばかりに笑い出した。


「そうだ。既に我が教徒達を各国家へと送り出した! そして、この『ゲキテウス』も滅ぼしてくれよう! この神殿『ヨシュア』の力でな!!」


ガゴォォンッ!! ゴゴゴゴゴッ!!


「むぅっ!? 地震……ではないな? 何をしたエリクシル!?」

「この地面に押し付けられる感覚……まさか、浮上してるってのかよ!?」


 床が自分達を押し上げ、重力が自分達を押し付ける異様な感覚を目の前の『ヴァンパイア』が何らかの方法で成した! バルドとセラはこの感覚にまさかと問うのであった。


────────────────────────────

【要塞の浮上】~魔女、強制退場~

────────────────────────────


「ふははははっ! 仰ぎ見よ! これこそが我が『新生ウィスタール王国』! 我等が理想郷の王都の姿である!!」


 叫ぶエリクシルに反応するように並んだモニターに外の様子が映し出される。

 そこには上空に浮上する巨大な建造物。この『ディード教団』の神殿『ヨシュア』の姿。いや、『神殿』というよりは『要塞』だろう。

 ザバアアァァーッ!! と、まるでひとつの小島が海から浮上する様に、モニターで見る『ゲキテウス』王都の民達のざわめきが聞こえてきそうだ。


「ふはは! 死を恐れぬならば追ってこい。ロア様、この場は任せましたぞ!?」

「うむ。存分に吾輩の『魔装戦士』を使うがよい」

「てめぇ等! 逃げんのかよ!?」


 教団員達と共にこの場から踵を返すエリクシルとヴァルジャとジャイファに、場を任されたロアは不敵な笑みを浮かべ、ブレイドが食い下がる。


「止めたければ追ってこいか。いいだろう、行くぞ『黒狼』! この要塞ごと奴等を打ち落としてやる!」

「応よ! んじゃ任せたぜアリサ!」

「レジーナさん達も頑張って!」「ガッシュさんも私達と!」

「了解した! 私を洗脳した報いを与えてやらねば気が済まん!」

「我等も行きます」「アリサ様、ご武運を!」


 三人の消えた廊下に駆けて行く『黒狼』達。先頭をバルドが、後に続くセラ、ブレイド、デュアードにミュンルーカ。ミストはレジーナ達『猫兎(キャットラビット)』に一声かけて、シェリーはガッシュも共に来るよう促すと、ガッシュも闘志を滾らせその後に続き、バルガスとネヴュラも駆けて行ったのだった。


「さて、要らぬ問答は省こう……先ずは消えよ『聖域の魔女』とやら」

「!?」


 『黒狼』とガッシュ、バルガスとネヴュラを見送り、対峙するロアとアリサに『猫兎(キャットラビット)』達。何か二、三軽口でも叩き合うか等と考えていたアリサだが……


フィィィーンッ! バシュゥッ!!


 いきなりか! と、アリサは思った、が、しかしその一瞬の隙がいけなかった。その一瞬の内に束縛する結界と、転移の魔方陣が足元に同時に敷かれ飛び退く間もなく彼女はこの場から強制退場させられてしまったのだった。


アリサ様っ!!?


 その一瞬の出来事にレジーナ達の叫びが重なる。まさか、あのアリサが、『無限円環(メビウス)』での訓練でも誰一人として越えられなかったあのアリサがこうも簡単に! と、戸惑いと驚愕を隠せずに。


「……ふふ、まさかこれでアリサ様を無力化できた。なんて思っているのかい? 『技工神』?」

「だとしたら、とんでもないおマヌケさんですねぇ~♪」


 だが、直ぐに「あのアリサの事だ、問題ない」と判断し気持ちを切り替える歴戦の冒険者。何せ以前もシェラザードの異空間に放り込まれたアイギス達『白銀』を救い出した事のある彼女だ。なんの問題もなく自力で戻ってくる。そう思い立ったレジーナとモモが軽口を返す。


「ふむ、いと小さき者達よ。かの者の力の秘密は女神達の加護に依るところが大きいのであろう? 特に、主神の『無限魔力』の加護はさぞ幅が広かろうな?」

「何が言いたいのさ! この伊達インテリ眼鏡!」


 しかしロアは淡々と口を開きアリサの力の源をツラツラと並べ立てた。その無感情な神に嫌悪を覚えたミミが怒ったように叫ぶ。


「簡単な話である。汝、かの者がその加護の総てを失ったとしたら?」


!!?


 なんだって!? それはマズイぞ! 続くロアの言葉を聞いた『猫兎(キャットラビット)』は、総じて全員が顔を青くし、冷や汗が流れるのを感じた。


「かの者が転移した先は吾輩の実験場の一つである。そこでは女神共の加護が封じられるのだ。

 そして、吾輩の実験体達を放置してあるのだが……さて、『兎人(ワーラビット)』の娘よ?」


 そこまで話してロアはミミに初めて目を向けて問う。その瞳はまるで出来の悪い教え子を侮蔑するかのような目だ。


「そんなところで加護を封じられたかの者は、どうなると思うかね?」

「あんたをブッ飛ばせばアリサ様もそこから抜け出せるのかな?」


 つぅーと、ミミの頬に冷たい汗が流れる。いや、それは『猫兎(キャットラビット)』達全員がそうであった。確かにアリサは以前から「自分の力は借り物だ」と自ら口にしていたのだ。それ故に決して傲らず、力の有り様については常に謙虚な姿勢を貫いていたのをよく知っている。その彼女の力が封じられたとなれば……


「ふむ、質問に質問で返すとは……愚かなことであるな。

 嘆かわしい限りだが、汝の問いに答えてやろう……あの者が吾輩の実験場から抜け出せる可能性は」


 ふぅ。と、ひとつのため息をついて、かける眼鏡の位置をを人差し指でクイっと直しながら「残念である」などとぼやくロアだが、焦りながらも、自分を睨み付ける『猫兎(キャットラビット)』を見て、ニヤリと笑い、言い放つ。


「……皆無である」


────────────────────────────

【『想い』成す】~『エルハダージャ』~

────────────────────────────


「アリサ様!?」


 瞬時に目の前にいたアリサが消えた。『転移(ワープ)』とかではない。珠実はそう理解したことで、遂に始まったのだと確信した。


「なっ!? なになに!? アリサ様どうしちゃったの~? どこ行っちゃったのさ!」

「落ち着きなさいキャルル! 珠実様、ヒヒイロさん! これは……」


 共にいた『エルハダージャ』の冒険者パーティー『閃光』のメンバー、キャルルがその突然の事態に混乱を隠せずに皆に騒ぎ立てた。同じメンバーでリーダーを務めるウィーリミアが落ち着くようにと宥めはするが、彼女もまた動揺を隠せずにいた。


「ええ、おそらく彼女が言っていた「共に戦えない」という事態が起きたのでしょう」

「そういうことでしょうね。ヒヒイロさん? アタシ達はどう動くべきかしら?」


 反対に落ち着いているのが『エルハダージャ』冒険者ギルドのマスターであるオネェさんと、『ココノエ』を支え続けて来た大臣、ヒヒイロである。


「ええ、お力添え下さいオネェさん。先ずは『ココノエ』が予見していた場所へ兵と冒険者を」

「ふむ、その場所とは? 何があるのでしょうか?」

「はい。行き先不明な『転移陣(ワープポータル)』がございます。十中八九、『教団』が用意したものでしょう。恐らくは教徒達を一気に攻め込ませ、『エルハダージャ』を制圧するために」


 オネェさんに一礼し、指示を出すヒヒイロに『閃光』の僧侶(クレリック)のドムがそこには何があるのかを問うと、淡々と答えるヒヒイロ。「大変じゃないか!」と慌て出す、同じく『閃光』の戦士(ウォーリアー)であるレグス。


「いいえ、既に『ココノエ』が結界で封じておりますから。転移は出来ても、その建物から外に出ることは叶いません。同時、街に潜伏している教団員達も動き出すでしょうから、そちらも抑えなくてはいけません」

「そうか……焦ったよ。でも、それなら俺達冒険者に任せてくれ!」

「うむ。そちらは済まぬがお主達に任せる。妾はアヤツ等を蹴散らしてくれようぞ!」


 どうやら先代の女王『ココノエ』によって既に対策が講じられていたらしく、それを聞いた『閃光』達は安心して、落ち着きを取り戻し、街の警備に当たると申し出る。それを承諾する珠実は、この謁見の間から大窓を見上げ、気概をあげた。


「来るぞ……ロアの奴めのオモチャ共じゃ! ヒヒイロよ、冒険者や兵達の指揮はお主に任せる!」

「はっ! お任せ下さい陛下! 必ずやこの国を護り抜いて御覧にいれましょう!」


 空には無数の召喚陣が並び、次々と『魔装戦士』達が現れては覆いつくす。それを目にした皆は戦慄を覚えるが、珠実の力強い宣言に挫けそうになった心を奮い起たせた!


「呆れた物量じゃが、なに……くふふ♪ 烏合の衆をいくら用意したとて妾の敵ではないのぅ?

 それにじゃ。安心せい皆の衆、我等が守護神たるアリサ様は約束を違えぬお方じゃ、必ず戻ってくるじゃろう」


おぉっ!! 流石は女王様だ! なんと頼もしい!!


 国内に自分が『エルハダージャ』の女王であると、『ココノエ』が用意してくれたその席にすんなり座る事ができたのは『ココノエ』とヒヒイロがなにかと便宜を図ってくれていたおかげもあるが、なによりも珠実のその実力。ネームバリュー。そして絶世の美女たる美貌をもちながら、どこか気風のよいその佇まいが民達の心を掴んでいたのだ。

 高らかに宣言する我等が女王! 立てよ国民! 集え兵士達! 今こそ我等一丸となりて本国を! いいや! 世界ですら救ってくれようぞ!! ワァァーッ!! と盛り上がり凄まじい士気の高さを見せているこの『エルハダージャ』王都にはたとえ潜伏している『ディード教団』の教徒達が現れても、瞬く間に制圧されるのではなかろうか? そして、彼等のその昂りが龍を呼ぶのであった!


ビュゴォォォォォーッッ!!!


「フハハ! 中々どうしてどうして! 随分と盛り上がっておるな珠実! 微力ながらこの『真・青龍』こと爽矢! 助太刀に参ったぞ!!」


 『聖域』から飛んで来たのだろう。王都の西の空に稲妻を纏う巨大な蒼白の龍が現れる。そう、『聖域』護りし、『四神』が一体。「東の青龍」が進化を果たし更なる力を得た『真・青龍』こと爽矢である。


「ほぉ~! うぬが来てくれるとはな! 心強いぞ爽矢よ!」

「ああ、頼りにしてくれ! ふふふ、今にも召喚されそうではないか! 楽しみであるな! な!?」


 爽矢はやたらと上機嫌であった。何故かと言えば、ようやく進化した力を存分に振るえるからだと言う。


(そう言えばコヤツは勇者達を失ってからというもの、ひたすらに己を鍛えておったな? やれやれ、手にした力でアリサ様への恩返しが出来て嬉しいのじゃろうが……こうはしゃぐ様はまだまだ子供よの♪)


 爽矢が……否。爽矢だけではない。『四神』達が幼い頃から世話を焼いてきた珠実は、はしゃぐ彼を見ては優しい微笑みを浮かべ、気をよくした。が、爽矢は知っているのか? 今アリサとの連絡が途絶えていることに?


「うむ。無論知っているぞ! 女神共もあわてておったが、ユニがその場を収めてな」

「なんじゃと? ユニが!? 一体あの娘はなにをしたんじゃ?」


 驚いたことにアリサとの音信不通を既に知っていただけでなく、その事に慌てる女神達をユニが落ち着かせたと言うではないか。あの普段からほわほわとした幼子がいったいぜんたい、なにをどうしてそんなに立派な事を?


「詳しくは一段落ついてから話すが、兎に角今アリサ様は、己の戦いに専念されておるのだ! それは我等を信じ、託したと言う事なれば!」


ゴォォォーッッ!! バヂバヂバヂィッ!!


 ズドォォーンッ!! 召喚され始めた『魔装戦士』達に洗礼の一撃! 強烈な雷撃のブレスが直撃し、多くが爆散しては塵となり風に運ばれていく。


ウオォォォーッ!!


 それが狼煙となり、今ここに『エルハダージャ』の軍勢とロアの『魔装戦士』軍の激突が始まる!


「我等はその信頼に応えると同時! アリサ様を信じ進むのみだ!」

「……ふっ、ふははは! そうじゃな! 主の言う通りじゃな爽矢よ! 妾達のやることは、アリサ様が安心して戻ってこれるよう努めることじゃ!

 往くぞ! 妾は『エルハダージャ』女王! 九重珠実である! 兵達よ武器を取れぇ! あの無粋なカラクリ人形共を一体残らずガラクタに変えるのじゃあぁぁーっ!!」


おおぉぉよぉぉーっ!!!


 アリサを信じ、また自分達もアリサの信頼に応える! 爽矢の言葉がストンと胸に落ちていくのを感じた珠実は、たまらずと言った感じに笑い、ヒヒイロの指揮の下、配置に付いた兵達に呼び掛けたると、途端王都中に響き渡る兵と民達の怒号! その大きな『想い』がここに成るのであった。

アリサ「あ~れぇ~!?ヽ( ̄▽ ̄)ノ」

猫兎達「アリサ様ぁぁーっ!?( ̄□ ̄;)」

ロア(よっし!(。・`з・)ノ 一番面倒臭そうなヤツをボッシュートしてやったぞ!(ノ≧∀≦)ノ これで吾が輩の勝ち確である!(*´∇`*))

ミミ「あわわ(゜Д゜;) 『黒狼』のみんなも『聖魔霊』夫婦も行っちゃったんですけど!?(´□`; 三 ;´□`)」

ネネ「わ、私達だけで神と戦わないといけないの!?Σ(゜ロ゜;)」

レジーナ「ははは(゜∀゜;) こりゃあ大ピンチじゃあないか?( ̄▽ ̄;)」

ニャモ「それが何だって言うのかしらぁ~?(´・ω・`)」

モモ「神だろうがなんだろうが「粉☆砕」あるのみでーす♪O(≧∇≦)O」

ロア(えぇぇ~?((゜□゜;)) なにコイツら怖いのだが!?(゜A゜;))


ヒャッハー《オオッ!(・о・) 見ロヨ大地~ナンカスゲェデカブツガ浮上シテキタゾ!( ・∇・)》

大地「ああん、なんだありゃぁ?( ̄O ̄) 女神達が造った『超スーパーゴッデム』みてぇだな?(´・∀・`)」

ヒャッハー《マスターノメモリーヲサーチ……(_ _) オオッ!(°▽°) ゼーロ達ガ喜ビソウナ奴ダナ!!ヽ(*>∇<)ノ》

大地「アイツ等呼んでやろうぜ?(^ー^) きっと喜んで相手するだろうしなぁ♪(*`▽´*)」


教団員達「よし!(*`Д´*) 一気に『エルハダージャ』を制圧するぞ!(`へ´*)ノ」

教団員達「あれ!?Σ(゜ω゜) 結界張ってあって出れないぞ!?( ; ゜Д゜)」

ウィーリミア「はい捕まえた~♪ヽ( ゜∀゜)ノ」

教団員達「い、いかん!(; ・`ω・´) 戻れ、『転移陣』で戻るんだ!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」

レグス「おっと!(  ̄▽ ̄) 『転移陣』は破壊させてもらったぜ!( ・`ω・´)」

キャルル「大人しくお縄につきなよ!ι(`ロ´)ノ」

教団員達「そ、そんなぁ~!!Σ( ̄□ ̄;)」

ドム「さあ、貴方達のお仲間のことも洗いざらい話して頂きましょう!(`∀´)」

教団員達「ふざけるな!(`□´) 仲間を裏切るような事を我々がすると思うか!?L(゜皿゜メ)」」

オネェさん「うっふっふ~♪(*ov.v)o いいのよ?( ´ー`) 最初はみ~んなそう言うの(*´ω`) でもね、アタシにかかれば……( ☆∀☆)」

教団員達「ひ、ヒィィッ!?ヽ(;゜;Д;゜;; )」

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