140話 強襲される『セリアベール』
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【突然の襲撃】~素早い対応~
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ドォォォーンッ!! うわあぁぁぁーっ!!
突如として街中に起こる爆発! 驚き、逃げ惑いながら悲鳴を挙げる住人達がこの『セリアベール』に溢れかえっていた。
「くたばれ! 『人間』共っ!!」
「穢らわしい種族め! この世界は我々『亜人』のものだぁーっ!!」
ザシュゥッ!! ズバァーッ!! 黒いフードに身を包んだ『亜人』達がひとつの家から唐突に現れ、次々に『セリアベール』の人々に襲い掛かったのだった!
この大問題を聞いた代表者ゼオンは直ちに冒険者ギルド職員達を鎮圧に向かわせるが、その不自然なほどの大人数を相手に、完全に後手に回ってしまっていた。
「やってくれるじゃあねぇか! 冒険者達と連携を取れ!」
「怪我人の救助を急いで下さい! 『僧侶隊』編成急げ!!」
冒険者ギルド内。怒号と叫びが木霊するこの設備内は、さながら戦場の司令部といったところか?
「ゼオン! こちらドランド、アーヴィル組だ! 黒フード共が現れた家を押さえた!」
「大変だぞギルマス! これは『転移陣』だ! 奴等これを利用して部隊を送り込んで来たみたいだ!」
「なんだとぉぉーっ!? アーヴィル! ドランド! そいつをぶっ壊せるか!? これ以上来られると面倒でしょうがねぇぜ!!」
何故この『亜人』達黒フードの部隊が、『セリアベール』の街中に急襲を仕掛けることが出来たのか? それは『ディード教団』の支部がひとつの家の地下に隠されており、更にその深部には教団本部と繋がっている『転移陣』が存在していた為だ。
『聖域』出身の冒険者候補達である二組のパーティーもそれぞれに動きだし、この襲撃事件の対応に当たっていた。しかし、到着したばかりの初めての街ということもあり、地理に明るくない。そこをカバーするため、街に詳しい冒険者達とバディを組んでいるのだ。
「ドランドさんやってみてくれるか!? 俺達じゃこの障壁を破れそうにない!」
「承知したアーヴィル殿! 巻き込まれないよう離れていてくれ!」
Aランクパーティー『七つの光』を束ねるリーダー、アーヴィルは『聖域』の冒険者候補の一パーティー『ハンバーグ』のリーダーである、『龍人族』のドランドとバディを組んでいた。ドランドの自分達とはかけ離れた実力に、既に何度も驚かされているが、今この場において、心強いことこの上ない! と、全幅の信頼を寄せていた。
「障壁ごと消し飛ばす! 『昇龍』!!」
ゴォォォォーッ!! ズドォォーンッ!!
バギバギバギィィーッ!! 家の地下から強力な魔力で編み上げられた龍が立ち昇り空へと消えていく。その威力は家ごと『転移陣』を派手な轟音と一緒に粉々に打ち砕いた!
「うおおっ!? す、すげぇ! ギルマス! 『転移陣』の破壊を確認した!」
「了解! 二人はそのまま襲撃してきた『ディード教団』の連中を制圧してくれ!
他の冒険者は負傷者の救助と避難を! いいか! こんな事で誰一人死なせんじゃねぇぞぉぉーっ!!?」
「承知した! 参ろうぞアーヴィル殿!」
「「「おおぉぉーっ! 任せろ!」」」
アーヴィル達の報告を受け、新たに『教団』の制圧指示を出したゼオンだが、一先ず安心。とはいかない。現在も『教団』の『亜人』達が街中で『人間』達を中心に攻撃を仕掛けている最中なのだ。
しかしそこは長年『氾濫』を乗り越えて来た彼等だ。即座に救助部隊、その救助部隊の護衛部隊、更に救助者を安全に避難所まで護衛誘導する部隊とに別れ動き出す!
「くそっ! 折角嬢ちゃんが張ってくれた『神の護り手』も街の内部に入り込まれちゃあ意味ねぇか!」
「落ち着いて下さいゼオンさん! 確かにこんな手で襲撃して来るとは予想外でしたけど、幸いまだ死者が出たという報告は挙がって来ていません。まだまだ巻き返しは可能ですよ!」
そう、突然の襲撃を受けたのにも関わらず、重症の者はいても、死亡者は出ていなかった。その理由は勿論、先に述べた『氾濫』を乗り越えてきた経験。更に……
「オラオラオラァーっ! ロアに踊らされてんじゃねぇぞテメェらぁぁーっ!?」
「黒いフードの連中! コイツ等が情報にあった『ディード教団』の奴等か!?」
「なにっ!? 何故こうも早く我等の動きを掴んだ!?」
「おのれ! 同じ『亜人』が邪魔をするか!」
「この世界に『人間』はいらん! 邪魔するならばお前らも排除するのみだ!」
我等の理想郷を築くためにっ!!
狂ってるぜ……ウェズと行動を共にする『七つの光』の『鬼人』であるビリーは遭遇した教団員達の狂信っぷりに、冷たい汗をかく。なんの躊躇いも無しに無力な町人達に斬りかかり、口を開けば、やれ理想郷だの、『人間』に対する怨み言の数々。
「ウェズさん! こんな危ねぇ連中はさっさとぶっ飛ばすに限る! やるぜ!?」
「応! だが殺すなよビリー! 話じゃコイツ等は親玉の被害妄想を刷り込まれただけらしいからなぁーっ!」
ドゴォッ! バキッ!
「ぐおぉぉーっ!?」「お、おのれぇーっ!」
町人達が襲われている現場に駆け付けたウェズとビリーの雄叫びを皮切りに始まる乱戦。
持つ武器を槍から棍に変えた『聖域』の冒険者候補、『魚人』のウェズが、ビリーの持つ槍の腹が町人を襲う『教団』の連中を片っ端から叩き、昏倒させ、共に来た冒険者達とギルド職員もそれに続けば、あっという間に教団員達は無力化されていく。
「怪我なら俺が治してやるぜ! 『範囲回復』!
職員達に護衛してもらいながら冒険者ギルドに避難しな!」
ウェズは『四神』である『玄武』の水菜に仕える『僧兵』である。根っからの『僧侶』であるミュンルーカや、モモ程ではないにしろ、回復魔法も使用可能であった。彼が魔力を自身に走らせ、棍を地面に一突きすると、淡い光輪が町人達を包み込み、怪我を癒していった。
「あ、ありがとう! 冒険者ギルドに避難します!」
「頑張って『魚人』のお兄さん! ビリーさん! この街を守って!」
「よし! 縛り上げろ!」「俺達は彼等をギルドまで護衛する!」
礼を言う町人達に「いいってことよ!」とサムズアップするウェズと、「任せろ!」と力強く頷くビリー。
ギルド職員により縛り上げられ、拘束される教団員達。彼等の連携によって命が守られているのだった。
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【候補生達と】~『七つの光』~
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「ほれぇーっ! しっかり着いて来るんだワン、ファビル! あっちにコイツ等の気配を感じるんだワーン!」
「はいさーっ! ププルさん! でも僕の手持ちのポーション少ないんだけど~?」
更に、『クーシー』であるププルもまた、『七つの光』の斥候である『人犬』のファビルを引き連れ回し、行く先々で教団員を制圧し、大量に用意したアリサポーションを使い、被害を抑えていたのだ。
「心配ないワン! 僕ちんの『収納魔法』でまだ沢山のポーションを持っているワン!」
「マジ~? ちょー羨ましいんですけどー!」
『セリアベール』の街は流石に『エルハダージャ』や、『ゲキテウス』の王都と比べればそう大きくはない。しかし、それはあくまで大都市と比較した場合であって、普通の街に比べたら、大きい方に入るものだ。
ガキィンッ!! ギィンッ!!
「気を付けろ! コイツ等結構腕が立つぞ!」
「我々を踏みにじる『人間』共ぉぉーっ!」
「迫害を受け続けてきた我等の恨み、思い知れぇぇーっ!」
ププルとファビルが到着した先。教団員と激しく剣をぶつけ合う冒険者達の姿があった。実力はほぼ互角のようだが、冒険者達は教団員のその血走り、狂気じみた言動にやや萎縮し押され気味のようだ。
「正直、なに言ってるかわからん! ええい! 怪我人を救助せねばならんのに!!」
「そうだぜ! この街は勿論、今じゃ何処だろうと『亜人』も『人間』も平等だろうが!?」
どうやら押され気味に見えたのは彼等の近くに、攻撃を受けたのだろう町人達の姿があるのも関係しているようだ、深い裂傷から今も夥しい出血している重症の者が意識を失い倒れており、その者を必死に手当てしている数人の町人達もところどころに傷を負っている。
「ワンワンわわーん! お邪魔するワーン!」
「はいはい、お取り込み中しつれ~しますよぉ~?」
トスッ! トストストスッッ!!
「ぐあっ!?」「なにっ!?」「っ!?」
バタバタッ! バタバタバターッ!!
ププルとファビルは迷うことなく、その戦闘の場に割って入り、素早く投げナイフを教団員全員に投げつける。麻痺と睡眠効果の毒の塗られたナイフだ。小さく呻き声を挙げた教団員達はあっという間に昏倒し、その場に膝をついた。
「おぉーっ! ププルさん! ファビル! ありがとう、助かった!」
「礼なんていらないワン! 早くポーション使って怪我人を助けるんだワーン!」
「手が空いた人はコイツ等の拘束ヨロシク~!」
冒険者達のお礼をそぞろに返してププルは怪我人の下に直行して、早速ポーションを振り掛ける。その間、ファビルは教団員達の拘束を手伝うよう指示して行く。
「うぅ、ありがとう……助かった……」「おお! よかった、意識を取り戻したぞ!」
「よかったワーン! さぁ、ここは危険だワン! 速く避難所に急ぐんだワン!」
「コイツ等の拘束も完了だよ~後はギルド職員に任せていいだろうね」
重症だった町人が意識を取り戻し、ようやくププルも安心し、落ち着きを取り戻す。ファビルと冒険者によって気絶している教団員達も拘束。これでこの場は大丈夫だろう。
「わんわん! 次に行くワン! 冒険者達はこの人達を避難所に連れて行ってあげてほしいワン!」
「ああ! 任された!」「ありがとうな二人共!」
そうしてププルとファビルは次の現場に向かうのだった。
「にゃにゃにゃーっ! 急ぐにゃディーネ! 負傷者の治療を何よりも優先するのにゃ!」
「はい! ニュイさん! っ危ない!」
「我等の邪魔はさせん!」「卑しい『人間』共に加担するか!?」
「我々『ディード教団』が粛清してくれる!!」
一方こちらは『七つの光』の弓士を務める若きエルフ、ディーネとバディを組んでいる『ケットシー』のニュイ達。彼等もまた沢山のポーションを持って町人達の治療と保護に駆けていた。
その行く先で出くわす教団員達は、皆目が血走り、血塗れた得物を手に、有無を言わさず襲い掛かって来る!
「うるさいにゃ! トチ狂った狂信者共!!」
にゃぁーっ!!
ニュイが向かって来る三人の教団を達に吼えると同時、教団員達の動きがピタリと止まる。
「なにぃっ!! ぐぅ、い、意識が……」「おのれ……っ!」
「きょ、『教団』に栄光あれ……!」
バタバタバターッ!! 動きを封じられ、更に意識まで刈り取るニュイのオリジナル。『影眠り』である。『無限円環』で訓練を共にした仲間達ならばほんの足止め程度にしか効かないが、教団員達には絶大の効果を発揮する。
「はぁはぁ、うう……い、痛いよぉ~痛い……お母さん」
「ああ……私の、娘を……た、助けて……」
「大丈夫です! 絶対助けますから! ちょっと沁みますよ!?」
倒れ伏す母親とその娘であろう二人は地面を鮮血で赤く染めあげ、息も絶え絶えだ。娘の方はユニくらいの幼子で、か細い声で母親に痛みを訴えている、その母の傷も酷い、蒼白となった顔色で明らかに失血状態とわかる。ニュイ達に気付き、必死に娘を助けてくれと手を伸ばす姿が痛ましい。
ディーネは急ぎ『魔法の鞄』からポーションを取り出し二人に振り掛ける。
「あ、ありがとう……」
見る間に塞がる傷口と、出血。ディーネが「もう大丈夫」と言った言葉に安堵したのだろう。母娘の二人共に気を失った。その様に一瞬焦ったディーネだが、静かな寝息が聞こえてきたので、眠っただけだとホッと息をついた。
「こんなユニ様くらいの小さな子まで傷つけるなんて……許せないのにゃ!!」
「そうですね! ここからなら『学区』が一番近い避難所です。ニュイさん、二人を運びましょう!」
にゃん! と、ディーネに返事を返すニュイ。二人は母娘を避難所に運び込むのであった。
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【ゲン】~『学区』を守る『人狼』~
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「早く! 治療を急いで下さい!
いい加減止めろお前達! こんな事をしても自分達の立場をより悪くするだけだと、何故わからないんだ!?」
「黙れ! 『人間』に尻尾を振る狼! いや、貴様は飼い慣らされた犬だな!?」
「『人間』は我等『亜人』を虐げる害悪!!」
「邪魔するならば同朋でも容赦せん!!」
有事の際に『セリアベール』の各ギルド代表達が決めた、避難所がある。この元スラム街であった『学区』もそのひとつで、現在多くの避難者が集まっていた。
そこに襲い来る教団員達と対峙するのはこの『学区』の代表者、『人狼』のゲンである。
この避難所には子供が多く、大人達も元々スラム街の者達で戦える術を持っていない。以前珠実が張った結界内に閉じ籠もり、皆が恐怖に震えていたのだ。そして、今。避難してきた町人達が、もう少しで結界内に入ろうとする間際、教団員達が襲い掛かったのだ。
「頑張って下さい! もう少しで結界内に入れます! 走って!!」
「「あ、ありがとう! ゲンさん」」
「行かせるか!」「させん!!」
ゲンは結界から飛び出し、避難してきた町人達を咄嗟に教団員達の凶刃から庇った! 叫ぶゲンに礼を述べた町人達は急ぎ『学区』の結界内に駆け込み、それを防がんとする教団員達が刃を振り下ろす。
ザシュゥッ!!
「うぐあぁぁーっ!!」
「ゲンさん!!」「「ゲンおじちゃーんっ!!」」
血飛沫が舞い、路上を紅く染める。ゲンの白い毛並みが鮮血により上塗りされていくその様に、町人達の叫びが木霊した。いかに『人狼』が並外れた生命力を有していようと、一方的な私刑に耐えられるわけはない。
「この! 卑しき『人間』等に媚び売る穢れた畜生がぁーっ!!」
「死ぬがいい! 我等の理想郷にお前のような下郎は要らぬっ!!」
ズバッ! ザクッ! ドゴォッ!
「がっ! うがぁっ!! ぐふぅっ!!」
ゲンさぁぁぁーんっ!!!
滅多打ち……この光景を言葉にするならこれほど適した言葉はないだろう。切り刻まれ、打たれ、殴られ、蹴られて、ゲンはその度に苦痛に声を挙げた!
「ちくしょぉぉーっ! 待ってろゲン! 今助けるぞ!」「待てっ! 結界から出るな!」
「お前が行って何ができる!?」
そのあまりの仕打ちに黙って見ている事の出来なくなった者が『学区』の結界から出て、ゲンを助けようとするのを他の者達が慌てて止めに入る。
「離せっ! このままじゃゲンが殺されちまう!」
「お前まで殺されちまうぞ! 堪えろ! もうすぐデールさんが戻って来る!」
くそぉぉーっ! 避難者達に押さえられ、止められた男の嘆きが響く。
この『学区』の責任者であるデールは、他の冒険者達の指揮をとり、一人でも多くの町人を助け、避難させようと場を離れているのだ。残念ながら、そう直ぐには戻ってこれないだろう……
「『誘導魔力弾』!!」「『束縛の輪』!!」
ドゴドゴドゴォッ!! ブゥゥン……バキィィーンッ!!
「ぐわっ!?」「なにぃっ!?」「うぐっ! う、動けんっ!?」
しかしその時だ。上空から教団員めがけ、魔力弾が直撃すると同時、その魔力弾が弾け、彼等の手足を拘束したではないか! あまりに一瞬の出来事に何事かと戸惑う教団員達。魔力弾の飛んできた上空を見上げるとそこには二人の人影があった。
「ゲンさん大丈夫!? 酷い怪我! お願い、ルーナさん!」
「お任せを。貴方はアリサ様のご友人と聞き及んでおりますわ……そんな大切な御方を死なせはしません!」
「うぅ……あ、ありがとう……ございます……」
その二人は『七つの光』の魔法使いシンシアと『聖域』の冒険者候補、『狐人』のルーナであった。『飛行魔法』を使うルーナと手を繋ぎ、『浮遊』で自身を軽くしたシンシアが先のゲンの叫びを聞き、駆け付けたのだ。
「おのれ『狐人』! 貴様も『人間』達と手を取り合うかっ!?」
「うるさいわよ! あんた達が『人間』になにされたかなんて知らないけどね! 関係無い人達まで巻き込まないで!!」
「口論しても無駄ですよシンシア? この者達はヴァンパイアの妄執を植え付けられて、いいように操られているだけです」
四肢を拘束されて身動きが出来ない教団員の一人が、シンシアとルーナに対し怨嗟の声を挙げるが、シンシアの言う通り彼女達にとってはただの迷惑な被害妄想でしかない。彼等もガッシュと同様にエリクシルの妄執を刷り込まれ操られてると断じるルーナが手をかざすと、バタバタバタと教団員達は気を失い倒れ伏した。
「おぉーっ!! よかった! ゲーン! 大丈夫かぁぁーっ!?」
「済まねぇゲン! 見てる事しかできなくて!」
わあぁぁーっ! と、教団員が倒された事で避難者達が一斉にゲンの元に駆け寄り声をかける。それを慌てて止めるのがシンシアだ。
「待ってみんな落ち着いて! まずはゲンさんを治療しなきゃ駄目よ!
ゲンさん、ポーションよ! 飲める? 振り掛けるより飲んだ方が効果が高いわ!」
「うぅ……は、はい……んぐ、んぐ……」
シンシアに止められた町人達は、皆ハッとなって、ポーションを少しずつ口に含むゲンを心配そうに見守る。ゲンは、差し出され、少量ずつ口元に垂らされるポーションをゆっくりであるが、確実に飲み込んでいった。そして……
「ああ、はぁ……これは凄い! もうこんなに動ける! シンシアさん残りのポーションを頂けますか?」
「よかった! はい! 全部飲んで!」
回復力も高い『人狼』というのもあってか、ゲンは見る間に回復し、シンシアから一瓶のポーションを受け取っては一気に飲み干した。
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【第二波】~途絶えた連絡~
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「ゼオン! こちらエリック、ノア部隊! 北東Aエリア制圧完了しましたぞ!」
「うん。嫌な気配感じなくなった……」
「北西Bエリア。ザウルだ。ウーデムという冒険者の案内であちこち回ってみたが……おおよそ制圧は完了だ」
冒険者ギルドには多くの避難者達で溢れかえっていた。一階の広間は負傷者達、彼等を治療する『僧侶』達にその補佐を務めるギルド職員。
そして受付カウンターと、食堂はそのまま利用されており、避難者達の憩いの場になっている。簡素ではあるが、食事がとれ、また人々と会話もできるので、活力を生んでいるのだ。
「了解! 他のエリアはどうだ!?」
「こちらルルリルとゴード班! 南東Aエリア制圧完了! 『龍眼』で確認したけど『教団』の連中はもういないみたいだよゼオンさん!」
「結構な人数の避難者がそっちに行くぜ~? 避難所空いてるかよ~?」
「おお、安心してくれゴード。商業ギルドも他のギルドも無事だからな」
冒険者ギルド二階。ゼオンの執務室。彼等はアリサとレウィリリーネが作った小型の通信用魔装具であるバングルを活用し、街の状況を正確に把握していた。『教団』の襲撃に対し早期の対応が取れたのもこのバングルあってこそだ。
多くの避難者を受け入れて来た冒険者ギルドもいよいよ手狭になりつつあったのだが、ディンベル達の商業ギルドに、他ギルドも協力し、部屋を空けてくれた事もあり、受け入れ先のトラブルや混乱が起こらなかったのは、ゼオン達に心の余裕を持たせてくれていた。
《うむ。流石は我が『セリアルティ』の血を受け継ぐ民達だ。皆が助け合い、協力しあっておるな》
ゼオンに憑依しているかつてのユグライア王も、有事の際に協力しあう『セリアベール』の町人達の姿に感慨深く頷く。
「──了解しました! 引き続き要救助者達の捜索に当たって下さい。僕達は避難者達から情報を集めて精査します!」
了解!!
街を四つのブロックに区分けし、各エリア毎に腕利きの冒険者……『七つの光』や、他A~Bランクの冒険者達。『聖域』から来た候補生達を主軸として事の鎮圧に向かわせたこの作戦もどうやら上手く行ったようだ。
北東Aエリアにノアとエリック。Bエリアにニュイとディーネ。
南東Aエリアにルルリルとゴード。Bエリアにルーナとシンシア。
北西Aエリアにププルとファビル。BエリアにザウルとBランク冒険者のウーデム。
南西Aエリアにウェズとビリー。Bエリアにドランドとアーヴィル。
「失礼しますディンベル様。避難者達からまだ見付かっていない住人達の事を聞き、リストに纏めました」
「速っ! 流石ミリアさん!」「おお! そいつは有難い!」
執務室の扉をノックし、上品な所作で入室して来たのは、商業ギルドのミリア女史だ。彼女は商業ギルドのマスターであるディンベルの秘書を務めており、ゼオンと一緒にいる彼に「一言行く先をお伝え下さい」と軽く文句を言いながらリストを手渡した。
「はは、済まん済まん! おい、ゼオンにエミル。こいつを使って街を駆け回ってる連中に探してもらおう!」
「ええ! ゼオンさん、早速呼び掛けましょう!」
「応! ありがとうなミリア! 恩に着る!」
そんなミリアに驚くエミルと、礼を言いながらリストを受け取ったディンベルは、早速そのリストに載っている住人達の捜索を、街の各エリアに散らばる部隊に指示しようとゼオンに詰め寄る。ゼオンもそれに頷き、ミリアに礼を言い頭を下げた。
「各部隊聞こえるか!? 今から言う名前の住人を探してもらいたい!」
そして次々にゼオンからこのギルドに避難していない人物の名を、街を駆ける各部隊に伝えられると……
「こちらルーナ、シンシアコンビです! 今名前が挙がった数人が『学区』に避難しているわ」
「こちらラグナース、デール組です! 現在多くの要救助者の救助に成功!」
「今名前が挙がった者達も大勢いるようだよ? 直ちにギルドへ向かうから部屋を用意願えるかい?」
おおーっ!! 続々とその名の人物達の行方が判明するではないか。これにはゼオン達も安堵のため息が出る。先のエリア毎の組分けに入っていなかったデールとラグナースは、ラグナースが『無限円環』での訓練により開花させた魔力感知能力を十全に発揮させるべく、自由にさせていたのだ。
「凄いです! あっという間にこのリストの人達が見つかりましたよ!」
「ああ、『氾濫』を乗り越えてきただけあって、皆馴れたもんだぜ!」
「了解したぜデール、ラグナース! こっちは各ギルドと協力して全員受け入れられるよう手配を……」
ズンッッ!!
リストに載っている住人のほぼ全員が見つかり、執務室に詰めているエミル、ディンベル、ゼオンの三名が喜んだのも束の間。突如としてこの『セリアベール』全体を大きな魔力が包んだ!
「ゼオン! 聞こえる!? 大変だよ、空が……空が嫌な魔力に包まれて真っ暗になっちゃった!!」
「あおおっ!! マズイんだぞ! これは『聖域』が再生する前に似てるぞ!?」
「陛下! 戦士達に召集を! 奴の軍勢が攻めて来ます!!」
上空から街の外を警戒していた三名。『聖域』からの冒険者候補のレイとアッシュ、そしてかつての『セリアルティ王国』の聖騎士ビットがいち早くその異変に気付き声を大にして叫んできた。同時現れる無数の『召喚陣』!
「第二波! って事かよ!?」「あれが! 『魔装戦士』か!!」
執務室の窓にへばりついてその異常な空を見上げるゼオンとディンベルが戦慄し、震えた声を挙げた。
あっという間に上空を埋め尽くす無数の『魔装巨人』達……黒鉄の甲冑に身を包んだ巨人の大軍勢が今、『セリアベール』を落とさんと攻め込んで来たのだ!
《あれが、『リーネ・リュール』を滅ぼしたロアの『魔装戦士』だ! ゼオンよ、我が子孫達よここが正念場ぞ! 心せよ!》
「ええ! 了解だぜご先祖様よ……『ハンバーグ』! 『フライドポテト』! ビットさんとラグナースを中心に迎撃体制! 俺も『守護者』を起動させて出るぞ! エミル、ディンベル! 指揮を頼む!」
ユグライア王の言葉に奮い立つゼオンが指示を飛ばす!
王の檄を受けた戦士達も、それぞれに気概を揚げ叫ぶ!
「「「応よ!!」」」
負けはしない! 俺達がやってきたあの『無限円環』でのぶっ飛んだ訓練は今日、この日のためにある! 心強い仲間達と共にこの『セリアベール』を守り抜く!!
「おそらく各地にも同じように『魔装戦士』が展開しているでしょう! 援軍は望めません……僕達でこの局面を切り抜けなければ!」
「ああ、その通りだぜエミル。ゼオン! 『栄光の世界樹』も起動させろ! 住人達をこれ以上不安がらせてはいかん!」
先に襲来した偵察型の『魔装戦士』が世界各地に同時展開された事から、今回の襲撃もそれと同様であることは想像に難くない。ともすれば、当然、他国へ援軍を要請しようにも期待は出来ないということでもある。
「上等! やってやろうじゃねぇか! 俺達を舐めくさったロアとか言うクソ魔王に一泡吹かせてやるぜ! おい、援軍は望めねぇにしても、報告は挙げとけよ!」
「はい! ですが……」
「どうしたエミル?」
今この『セリアベール』には多くの戦力が集っている。更に虎の子の『守護者』に、外部からの攻撃の一切を無効にする結界『栄光の世界樹』も起動すれば難攻不落の要塞と化すだろう。寧ろ、早急に『魔装戦士』達を撃退し、我々が他国へ援軍に向かう事も考えるべきか。そのくらい強気な姿勢で構えるゼオンだが……
「あ、アリサ様との連絡が……途絶えた、と……」
エミルのその報告に背筋が寒くなるのを覚えたのだった。
ティリア「いよいよ物語も終盤ね!( ・`ω・´)」
アルティレーネ「そのようですね(_ _) 魔王達との決戦、頑張ります!ι(`ロ´)ノ」
レウィリリーネ「実際、年内で完結させるつもりで執筆中らしい(  ̄- ̄)」
フォレアルーネ「ありゃりゃ( ̄▽ ̄;) まだ出てきたばっかの人とか、名前だけの登場ってのもいるのにね(*´∇`*)」
アルナ「私とかヴィクトリアとかポコとかイクシオンとか……(*T^T)」
ポコ「バハムートとか名前だけなのです♪(*≧ω≦)」
ヴィクトリア「こうやって後書きで馬鹿なこと言えるのも後僅かねぇ~(^_^;)」
フィーナ「セルフィお姉様ばっかり出番があってズルイです!L(゜皿゜メ)」」
セルフィ「あっはっは♪。゜(゜^∀^゜)゜。 なんだかすみませんねぇ~(*´艸`*)」
TOSHI「俺等ももうちっと出番が欲しいぜ(´・ω・`; )」
RYO「同感(-_-;) いっそのこと皆で押し掛けちゃおうか?(°▽°)」
イクシオン「おほぉぉーっ!ヽ(*>∇<)ノ そりゃよごでんすなぁ~わっちもはじけちゃいまんすでよぉ~♪(ノ≧▽≦)ノ」
ルヴィアス「いいんじゃないのぉ~?(^ー^) あのくそロアの『魔装戦士』をブッ飛ばすって名目でさぁ~♪(*゜∀゜)」
シェラザード「不謹慎かもしれないけど(;´∀`) 世界規模のお祭りみたいな感じだしね(´∀`*)」
私「拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けます事を切に願いますm(_ _)m」




