138話 『武神』との闘い
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【戦闘開始!】~潜む『魔装戦士』~《パルマーview》
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ズドォォォォーンッ!!!
さっきまでアリサ様のお弁当食べてたフィーナっていう女神が突然キレて、翼さん達と一緒に極大の一撃を『武神リドグリフ』に向けて放った! 交戦していた『白銀』達も咄嗟に飛び退く!
「ぬぅっ!? この威力!」
うわっ! 馬鹿じゃないのアイツ? あの攻撃を真正面から受け止めるとか正気の沙汰じゃあない! 下手すりゃそのまま消し飛んじゃうぜ? ……ま、それならそれで楽だからいいけどさ。
ドゴォォーッ!!
「うわっ! 凄い爆発です!」「ははは! 派手にかましたなぁ~♪」
「相当お怒りだったのじゃなフィーナ様」
爆発した。いや、そりゃまた派手に。リドグリフは放たれたその攻撃を跳ね返すか、逸らそうとしたんだろうけどね。残念、フィーナ様達の一撃はそれを許さず爆ぜた! サーサ姉ちゃんとゼルワがその爆風からガードして、ドガじいちゃんは冷や汗垂らしてフィーナ様の方に視線を投げた。
「まあ、いいの入ったみたいだし?」
「ああ、お遊びはここまでとしよう。あまりお待たせしてはフィーナ様の御機嫌を損なわれる」
眼下の爆煙を見て、レイリーア姉ちゃんとアイギス兄ちゃんの顔が真剣なものに変わる。確かに、ずっとこんな場所を見張ってたフィーナ様の機嫌は良いとは言えないだろうからね。いつまでもじゃれあいを続けられたらイライラしちゃうだろう。
「くくく……気の短いことよ。神たる者悠然と構えるべきぞ?」
「はぁ? ちょっと無視されたくらいでキレるような小者が何を言うんでしょうね?
さて、いい加減この場所に留まるのも飽き飽きです。さっさと終わらせなさい『白銀』達」
あんまりモタモタしてると私が終わらせますよ? と。フィーナ様が薄らいで行く煙の中から無傷で笑うリドグリフの姿を見て吐き捨てる。敵同士だからってのもあるんだろうけど……相当仲悪いなぁ~この二人。
「ええ。手早く終わらせます。皆、いいな?」
「応! やってやるぜ!」「前世から続く因縁をここで断ち切りましょう!」
「翼達も手出し無用よ?」「まぁ、ゆるり見物してくれるかの!?」
はいはい。手なんて出さないよ? ま、アイギス兄ちゃんがヤバい時は別だけどさ。
それにしても……ふふ♪ マジ強くなったもんだよね、兄ちゃん達。初めて出会った頃なんて僕達『聖魔霊』にもびびって、腰引けてたってのにさ?
それが今やどうだい? まさか魔王の相手を任されるに至ってるんだぜ?
元々、『勇者達の転生体』ってのもあるんだろうけど、目まぐるしい速度で成長したもんだ。
……頑張れよ~兄ちゃん達!
「ふはは、この我を前に動じるどころか、そのような大言っ……!!」
ビュオンッ!!
「お前はいちいち口上を垂れねば拳を交える事も出来んのか?」
おおぅ……キレッキレだなぁ兄ちゃん? 話をぶった斬るように目の覚める一閃が『武神』の頬を掠めたぞ!
「面白い……ならば是非も無し! 死合おうぞ!!」
スッ……ペロリ……からの、ニィッ。って感じで、切れた頬から流れた血を親指で拭き取り、舐め取っては不敵な笑みを見せる『武神』が戦闘態勢を取った。
「始まりますね……今までのお遊びとは違う、本気のぶつかり合いが」
「お手並み拝見といきますよ。駄目そうなら本当に私が終らせます。いいですね、アルティレーネ?」
睨み合う『武神』と『白銀』達を見てるアルティレーネ様とフィーナ様の呟きが耳に入った。
(へぇ……『弓神』フィーナ様ってそんなに凄いの? ティリア様の義妹って聞いてるけどさ……)
そう思うと同時、僕はさっき見た『偵察部隊』達の魔法を取り込んだフィーナ様が放った一矢を思い出す。ほんの戯れに放った一撃だったんだろうけど……やれやれ、彼女が味方でよかった。
ま、本気のフィーナ様も見てみたい気もするけどさ……それはまた別の機会かな?
(それはそうと……やっぱり、いるね? なるほど、本当に抜け目のない奴だ、ロアってのは)
この火山の山頂にロアの『魔装戦士』が一体潜んでいることに気が付いた。
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【回想】~僕が変身魔法を覚えた頃~《パルモーview》
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「アリサ様! 今日は何をお手伝いすればよろしいでしょうか? なんなりとこのアイギスにお命じ下さい!」
「……あ~そうねぇ? んじゃ取り敢えずさ。その悪趣味な変身止めようかパルモー。ねぇ? 私がブチキレる前に、ねぇ!?」
うわわっ!? ウッソだろぉーっ!? どうして一目でバレたのさ!?
「ほら? 早く止めなさい? ねぇ? パルモー……あんた私を怒らせてどうなりたいの、ねぇ? 他の人ならいざ知らず、なんでアイギスに変身したの、ねぇ? 教えてよ? ねぇ? それとも、なに? 訓練に疲れたから消滅させてくれって言いたいの? ねぇねぇねぇ!?」
あばばば!!? 待って! アリサ様!! 怖い怖い怖い!!
新しく覚えた『変身魔法』を使って、最近の模擬戦では中々の戦果を挙げる事が出来ているので、僕はもっと精度を高めたくなったんだ。そこで思い付いたのが、普段の生活の中で、変身する対象の人物を自然に演じられるようにまでなることで、何かしら掴めないものかと画策したんだよね。
そして、どうせならちょっとしたイタズラもしてみたくなっちゃってさ……
「はい! ごめんなさいアリサ様!!」
「この大馬鹿者ぉぉーっ! そんな謝罪じゃ足りんだろ! 地に頭を着けろ! 土下座だ土下座!!」
「は、はい! このとおりです! お許し下さい!」
アリサ様相手にアイギス兄ちゃんに変身して見せたのが間違いだった。アリサ様は一目で僕の変身を見破って、直ぐに止めるように注意してきたんだ……だけどさ、その様子が尋常じゃなくて……なんだか瞳から光が消えてて、無表情なのに物凄い圧があって背筋が寒くなるような恐怖を感じるんだよ!
内心ヒィィーッて恐怖の叫びを挙げて、とにかく謝った。フェリア姉ちゃんもそんなアリサ様の異様さに気付いて、僕の側に走って来てはスパーンッと僕の頭をひっぱたいてもっとしっかり、土下座して謝るように促して来たから、迷わずそうしたよ。
「はぁ、パルモー? あんたの『変身魔法』は見事なモンよ? 実際に模擬戦では相手陣営に混乱を与えて、自分達の陣営に有利をもたらしてるしね。
でもね、私には相手の魂っていうか……『精神体』、『星幽体』そして『根源の核』が見えるからね? それらはどうしたって偽れないモノなんよ?」
「そ、そうだったんですね……? だから一発で見破れちゃうんだ……」
ゆ、許してもらえてよかった……直ぐに変身を解いて、姉ちゃんと一緒に必死こいて土下座で謝ったのが奏功したみたい。「フェリアに免じて許してあげる」って言ってくれたし、後で姉ちゃんには改めて感謝しとかなきゃね!
「そう。でもそれとは別に……」
ぐりぐりぐり。
あうっ! い、痛くはないけど、人差し指でオデコをぐりぐりされちゃってるーっ!
「私が怒ってるのはアイギスに化けたってトコよぉ~パルモーちゃん?
私はアイギスにしか見せない、見せたくない顔とか気持ちってのがあるの……そして、それは私の根幹を成すくらいの大事なモンなのよぉぉ~? わ・か・る・わ・よ・ねぇ~?」
は、はうっ! ぐりぐりぐり~からのデコピンーっ! い、痛い……いや、それ以上に怖い……
……まぁ、そんな世にも恐ろしい恐怖体験をしたわけだけど……本題はここからだ。
「ま。私が見知った人物に変身するとこうあっさりバレちゃう訳だけどさ。あんたの『変身魔法』も使いようによってはかなりの成果を挙げられると思うよ?
例えば全然知らない人物に変身するとか。ほら、私が猫幼女になったみたいに」
イテテ……まあ、こんな簡単にバレるのはアリサ様くらいだけど……確かに一緒に訓練してる仲間達には、直ぐに感付く人もいるね。変身する人物像を自分でイメージして作り上げればいいのかな?
「後はそうだね……擬態することかな? 私の前世の話だけど、戦乱の時代に「忍び」とか、「忍者」っていう、何て言うか、「諜報員」みたいなのを村人の格好させて、他国に送り込んで情報を集めさせる~なんてのがあったのよ?」
「なるほど、翼殿達のような『偵察部隊』でしょうか?」
「そっか……木の葉を隠すなら森の中ってわけだね! アリサ様?」
そそ、そーいうことよん♪ って、いつもの調子に戻ってくれたアリサ様が明るく言う。よかったぁ~。
でも、そっか……木の葉を隠すなら~か。これは参考にできそうだね。同時に、相手側にやられると厄介そうだよ……
(……色々と試したりしたからわかる。あの岩壁に擬態している『魔装戦士』にも!)
そんな『無限円環』での思い出を振り返り、この火口の岩壁に擬態して風景に溶け込んでいる一体の『魔装戦士』をどうしてくれようかと思う。
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【出し惜しみだと!】~舐めるな!~《リドグリフview》
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「さぁて。先ずは儂等が相手じゃ『武神』よ!」
「面白い! かつてのように屠ってくれよう! ドワーフの戦士よ!!」
「そう上手く行くと思うな!」
ドッゴォォォーッ!!
ほう、やりおる! この勇者、かつてまみえた時は盾なぞほとんど使わずにおったものを、我が拳速を見切り見事に防ぎおったわ!! しかも、我が拳を受けながら、この盾、傷ひとつつかぬ!
「ヌゥゥンっ!!」
ドガァッ!! ガゴォォーンッ!!
そして流石の膂力よ! ドワーフの戦士! こやつの振るう斧が先程まで我がいた位置に振り下ろされ、固い岩盤を容易く破砕する!
「ふはは! 我と闘うためにわざわざかつての武器を揃えてきおったか!」
「他にもあるがのぅ!」
「その私達の苦労に感謝してもらいたいものだな?」
くくく! 抜かしよる! ああ、感謝するとも! わざわざ我を討つためにうぬ等はどれほどその腕を磨いて来た!? かつての勇者達の実力を更に上回り、ここに至るにどれほどの死地を抜けて来た!?
「極上の供物である。敬意と感謝を込め、この我が残さず喰ろうてやろう!!」
ブォンッ!! ガッ! ビュオンッ! ガキィィンッ!!
良いぞ良いぞ! 実に良い重き攻撃! 我は勇者と戦士の繰り出す攻撃を真っ向から受け止める。その度に走る腕の、脚の鈍く残る痛み。素晴らしい……これこそが我の望む闘争!
しかし、気になるのが残りの三人。我と勇者、戦士の闘いを上空でつぶさに観察しておる……くくく、何を企む? あの弓士も斥候も不意打ちを狙うような素振りも見せぬ。魔法使いも同様か? 魔法を構築している様子も無し。
ブオォンッ!! ドゴォッ!!
「ぐぉっほぉ!!」
「うぬ等! 出し惜しみなど無粋な真似をしてくれるな!」
戦士の一撃を最小限の動きで回避しつつ、カウンターの拳を戦士の腹に叩き込む。戦士は派手に後方に飛び、その威力を上手く殺しよる! ならば追撃!
バスンッ!! ドガァッ!!
「ぬぅっ!?」
「そう思うなら私達を全員動かして見せろ!」
シールドバッシュから、流れるような動きでタックル! 我はその衝撃をステップを踏み消していく。
戦士を追撃せんと動こうとした我の『起こり』を読みおったか勇者!?
「よかろう!」
ズドンッ! ガギィンッ!!
「っ!?」
縮地にて勇者との間合いをゼロに! さあ、受けてみよ! 我の怒濤の連撃をっ!!
「ぬぅぅららららららららららららぁぁぁーっ!!!!」
ズドドドドドドッ!!! ガガガガガッ!!
「ぐぅぅっ!! なんのこれしきっ!!」
神気を乗せた拳のラッシュを勇者に叩き込む! 自慢の大盾で防いでいるがいつまで保つ!?
「ホッホッ! ラッシュ比べならば儂もまぜてもらおうかのぉぉーっ!!」
よかろう! 来るが良い!! 二人まとめて吹き飛ばし、我を相手に戦力の出し惜しみができる余裕等ないのだと教えてくれる! うおぉりゃあぁぁぁーっ!!!
ドゴドゴドゴドゴドゴォォォーッッ!!
おおおおぉっ!! どうしたぁーっ!? 二人掛かりでその程度か!?
我が拳を一方的に受けているだけであった勇者を助けるように、飛び込んで来た戦士が手に持つ斧にてラッシュに対抗してくるが、遅い! 我が繰り出す拳の速度についてこれておらぬ!
「うっぐ、ぬああぁぁーっ!!」「うおぉぉーっ!?」
ドォォォーンッ!!
これで終い! と言わんばかりに振り抜いた拳でラッシュを締め括る! 勇者と戦士をまとめて吹き飛ばしてやったわ! さあ、これで出し惜しみなどせぬだろう!
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【冷静に】~いつも通り~《サーサview》
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「勝てねぇ相手じゃねぇな?」「そうですね……ですがどんな力を隠しているか。まだわかりません」
「そうね。だけど恐れることなんてないわよ♪ 意地だの矜持だの因縁だの口にしたけど……『いつも通り』行きましょ?」
アイギスとドガが色々とやってくれたお陰で、私達はかの『武神』をじっくり観察することが出来ました。『相手をよく観察すること』……これは基本中の基本。そう、初見の魔物を相手にして、まず必要となるのが情報ですから。
「ここに来る前にアイギスが言ってた通りに。だな?」
ゼルワの言葉に私とレイリーアは頷きます。そう……私達は勇者パーティーじゃない。『白銀』という、一介の冒険者パーティー。その私達が強敵、例えばダンジョンの階層主などと言ったボスを相手にとってきた、いつも通りの戦略でこの『武神』という魔物を倒すだけです。
ふふ、正直ダンジョンで出会う階層主と違って、些か楽かもしれません。だって、脱出する余力を残さなけれいけないダンジョンと違って、倒れるまで全力で戦っても、アルティレーネ様達がいらっしゃいますからね。
「んじゃ行くか! 頼むぜサーサ、レイリーア!」
「ええ、任せて下さい」「ああ、わかってると思うけどアレは下手に壊さないでよ?」
ゼルワが珍しく槍……『神槍アルティリオン』を手に地上に降ります。『神器』は現状対魔王に特化した武器ですから、この闘いにおいて非常に有効です。勿論、アリサ様の『フォトンシリーズ』が劣っているわけではないのですが……あちらは自分で『神気』を纏わせなければいけないため、消耗が激しいんです。その代わり一瞬における攻撃の威力は凄まじいので、短期決戦……必殺の間合いで使う秘密兵器として運用することにしたのです。
そして、レイリーアの言うあれとは、この火山の岩壁に擬装しているロアの『魔装戦士』です。お粗末な擬態……ですが、あれはおそらくただの監視役でしょうね。気付いていながら放置しているのは、余計な邪魔が入ってほしくないからです。もし、はじめからあれを破壊してしまえば、ロアは即座に『魔装戦士』の大軍をここに投入してくるでしょうからね。
ですので、リドグリフとの戦闘中に流れ矢とかで破壊しちゃった。とかなら仕方ないですが。意図的に破壊するのは止めようってわけですね。
「まあ、『魔装戦士』達が現れたら現れたで、その時はその時ですねぇ」
私は『神杖リーネリーネ』を構えぼやきます。あくまでも希望論ですから、問答無用で『魔装戦士』がやってくる可能性もあります。その時は仕方ありません、アルティレーネ様達を頼りましょう。翼さん達も、もしかして、パルマーさんはそれを見越して?
「サーサ! いいか!?」
おっと、アイギスから私に声が掛かります。はいはい。『強化魔法』の準備ならいつでもどうぞですよ!
キィンキィンッッ!! ブオォッ!!
「うおっ! あっぶねぇーっ!」
「ぬるい! ウヌは確かに速いが攻撃にまったく力がのっておらん!」
正面にアイギスとドガを相手取り、その隙を突いて背後から斬り掛かったゼルワを、まるで見えていたかのような裏拳で打ち落とそうするリドグリフ! やりますね! ですが更に死角からレイリーアが!
バシューッッ!!
『神弓フォレストスノウ』の強烈な神気を帯びた矢をリドグリフに向けて放ちました! 同時、レイリーアは直ぐ様その場を離れます。相手に射角等から自分の位置を割り出せないようにするための基本的な技法だとかなんとか……しかし!
「ヌゥゥンッ!!」
ゴォォォーッ!! という音をたてるほどの拳がレイリーアの矢に放たれ、無効化されてしまいました!
「無念夢想とは流石『武神』と称されるだけはある!」
感心するアイギスが言う無念夢想とは、無我の境地。早い話がこの闘いに集中するあまり、無意識下でも勝手に体が反応し、死角からの攻撃にも対応するようになるというひとつの境地なのだとか。なるほど、厄介です!
「コソコソせんと正面からぶつかれ! っちゅうことじゃなぁーっ!!」
「上等! 唸れ! 『アルティリオン』! ラインハルト、お前の力を借りるぜぇーっ!!」
ドガが『神斧ヴァンデルホン』を、ゼルワが『神槍アルティリオン』を握り締めて吼えます! ええ、やってやりましょう! 『無限円環』での訓練を経て、「アリサ様に近しい『魔女』」とまで称されるようになった私の魔法……存分に味あわせてあげましょう!
「望むところです……サーニャ、かつての勇者達! そして、遠くの地で闘う仲間達!
未来を切り開くために、力を貸して! 『魂の絆』!!」
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【『武神』】~その『武』~《ドガview》
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ゴォォォォーッッ!!
緑炎が渦巻き、儂等の身を包み込む! きおったぞい! あの『セリアベール防衛戦』の最中、『悲涙の洞窟』で受けたアリサ様からの『聖なる祝福』にも負けぬ強力な『強化魔法』! サーサが編み出した『魂の絆』じゃ!
全身を駆け巡るような溢れんばかりのこの力。今こそ魔王にぶつけん!
《心地よい力じゃのぅ! 礼を言うぞドガよ! このジドルにあやつとの再戦の機会をくれて!》
『神斧ヴァンデルホン』より儂の心に話しかけるは、かつての儂。前世のジドルじゃ。こうして、己の前世と会話するのはなんとも奇妙なことじゃが……ふはは! なに、今更じゃな!
(応! お主が力を貸してくれるなら心強い! 共に悲願を果たし帰りを待つ者達の元へ帰ろうぞ!)
長い時を経て尚、『聖域』で……『世界樹』でジドルの帰りを待つアーグラス達もおる! 無論、儂にもファムとギドという大事な妻と朋友がおるんじゃ!
「行くぞ! リドグリフ!」
「来るがよい! 全霊をもって打ち砕く!!」
うおぉぉーっ!
猛然とぶつかり合う儂等とリドグリフ。
儂の『ヴァンデルホン』による渾身の一撃、アイギスの『レリルティーネ』による斬撃、ゼルワの『アルティリオン』による刺突。そしてレイリーアの『フォレストスノウ』から放たれる一矢に、サーサの『リーネリーネ』による数々の魔法!
対するリドグリフの剛拳、剛脚より繰り出される数々の技!
儂の振り下ろす『ヴァンデルホン』よりも一瞬速く間合いを詰め、掌打にて斧の腹を打ち、軌道を逸らすと同時強烈なタックルにて儂は吹き飛ばされた!
続くアイギスの横薙ぎを蹴り脚ハサミ殺しにて完全に止め、容赦なく剛拳を顔面に! と、これは上手く盾でガードしたアイギスじゃが、振り抜かれたリドグリフの拳はアイギスを儂と同様に吹き飛ばしおった!
ゼルワの『アルティリオン』による超高速の突きの乱れ撃ち……フェリア殿と、アルティレーネ様、デュアードの三人の監修と、凄まじい鍛練により更なる高見へと昇華させた『無限の刺突』を回し受けで防ぎ、その手で『アルティリオン』を掴み取ると、ゼルワごと中空へと放り投げおった! むぅ! 凄まじい『武』よ!
「やってくれるじゃねぇか! それならコイツはどうだっ!!」
空に放り投げられたゼルワは、その身を捻り、『アルティリオン』の神気を解放させリドグリフめがけ投げ放つ! これはデュアードの技を改良した『流星・改』じゃな! その『アルティリオン』が纏う神気にまともに受けてはマズイと悟ったのであろう、リドグリフは素早く飛び上がり、空中へと避けた。しかしそれを読んでいたかのようにレイリーアの『フォレストスノウ』から放たれた矢が回避した先に飛んでくる!
「ぬぅっ!?」
咄嗟にガードした腕に突き刺さる矢に呻くリドグリフじゃ! 流石レイリーアじゃの、上手いもんじゃ!
同時、ズドォォーンッ!! と、大きな爆音を立て、先程までリドグリフがおった場所を『アルティリオン』が穴を穿ち火口を広げると、マグマが我先にとその広がった火口へ流れ込んでいく。
「まさか『神器』を使い捨てにするとは予想だにせなんだ……なんと大胆な奴よ!」
リドグリフが矢を受けた腕から流れる血を拭い、嬉しそうに笑いおる。『神弓フォレストスノウ』は以前レイリーアが所持しておった魔弓『閃弓』と同じように矢を必要とせんのじゃ。それぞれの持つ神気、魔力で矢が作り出される。故にリドグリフの腕には矢は残らぬ。
そして広がった火口へ流れ込んでいくマグマが『アルティリオン』を飲み込んで行く様に、まさか『神器』を投げ捨てるとは! と、驚いたようじゃな。
「そんな事するわけないでしょう? 貫け! 『アルティリオン』!」
ドシュウゥゥーッ!! ズバァァーッ!!
「なにぃぃーっ!?」
ズバァァーッ!! 溶岩に飲み込まれた『アルティリオン』をサーサが呼ぶと、なんと、かの槍がひとりでにその矛をリドグリフに向け、火口から飛び出して来たではないか! これにはリドグリフも虚を突かれたようで驚愕したその一瞬に回避が遅れたぞい!
「おのれっ! 小癪な真似を! この、魔法使い風情がぁぁーっ!!」
『アルティリオン』はリドグリフの左腕に大きな裂傷を与え、サーサを護るように彼女の傍らを浮遊する。その様はオプションを展開させたアリサ様の如しじゃ。
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【意思をひとつに】~フォトンシリーズ~《フィーナview》
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ほう、なかなかやりますねあのエルフ。ゼルワと呼ばれたハーフエルフが投げ放った『アルティリオン』をあのような形で回収すると同時、攻撃の手段として用いるとは。よく考えたものです。
「驚かれましたかフィーナ姉様? サーサさんのあの技術はアリサお姉様のオプションを真似ているのですよ?」
ふむ。アルティレーネの話を聞くと、なんでもアリサお姉様はその無限の魔力で数多くのオプションという自分の分身のような物を展開させるらしいのですが、それを模倣するとなれば、魔力の消費が激しく、とても不可能だそうです。しかし、こういう場面での有用性は折り紙つきであることは、アリサお姉様の今までの闘いから実証されており、使えるなら大きな戦力となることはうけあい。
《そこで考えたのが『神器』を使うってこったよな?》
「そうです。『神器』とは名の通り、私達の『神気』を宿す器。彼等『白銀』の持つ『神器』には私達姉妹の『神気』が宿っていますから」
「なるほど、緻密な制御は必要でしょうが少ない魔力でも十分に操れるということですか……加えて、彼女達はかつての勇者達の転生体。『神器』も喜んで手を貸すでしょうね」
鳳凰とアルティレーネの説明に私は、実に理にかなった手段であると感心しました。『神器』にはかなりの神気が内包されていますから、五つの『神器』は彼等にとってのブースターとしても使えるでしょうね。
しかし、ゼルワは『神器』無しにあの『武神』とどう闘うつもりなのでしょう?
《ご心配には及びませんわ、フィーナ様。ご覧になって?》
「おのれっ! 小癪な真似を! この、魔法使い風情がぁぁーっ!!」
ルロイヤと名乗った『グリフォン・ロード』の言葉に私は再び彼等の闘いに注目します。
サーサが操った『アルティリオン』により、左腕を下から肘にかけ、大きな裂傷を受けたリドグリフが激昂し、彼女に攻撃を仕掛けんと一気に間合いを詰めます! 既に一撃必倒の間合い!
ゴォォッ!! ザシュゥッ!!
「うがあぁぁっ!?」
なんと!? これは驚きました! 彼女は魔法使いではなかったのですか!?
驚くべき事にサーサは迫るリドグリフに対し、後退も回避もせず、逆にその剛拳を潜り抜け接近したのです! そして交差の間際に一閃! 後に大きく距離を取りました。
腰から腹部にかけての斬撃をカウンターで受けたリドグリフの出血が夥しい。一体今の攻撃はなんだったのでしょう? 気になった私はサーサの手に握られた武器に視線をやります。
「なんだと……貴様、その武器はなんだ!? いや、その身のこなし……」
リドグリフの驚嘆はもっともです。私も彼女は魔法使いだとばかり思っていましたから……その彼女が手にする武器、それは……
「『フォトンウォンド』……アリサ様がご用意下さった、私達の意思の強さをそのまま力とする新たな『神器』です! 『武神リドグリフ』! この意思の力で貴方を討たせてもらいます!!」
それは一見するとショートソードにも見える……しかし柄が長く、その先端には美しいクリスタルがまるで一輪の花の如く鎮座した短杖でした。ですが、そのクリスタルから放たれるのは実体のない神気の刃。
「……「絶対に負けられない」と言う彼等の強い意思の力をそのまま刃とするだなんて、アリサお姉様は彼等に絶対の信頼を寄せていられるのね……?」
「はい、フィーナ姉様。特に彼等『白銀』を束ねるリーダーのアイギスさんは、アリサお姉様の想い人でもあります。そしてそれは私達もティリアお姉様もお認めになられました」
おお、なんということでしょう! 私は彼等の事を少し過小評価していたのかも知れませんね。アルティレーネの言葉に内心驚き、改めて彼等を見ます。
「さぁて、覚悟してもらうぜぇ~? 『武神』さんよぉ!」
ヒュヒュヒュンッ!! パシィッ! とゼルワが新たに短剣……『フォトンナイフ』を取り出し握りしめ。
「ここでキッチリあんたを倒して!」
『フォレストスノウ』をサーサに投げ渡し、『フォトンボウ』を構えるレイリーア。
「ジドルよサーサを護ってやってくれい! リドグリフよ貴様との因縁、ここで断ち斬ってくれようぞ!」
同じくドガが『ヴァンデルホン』をサーサに託し、『フォトンアックス』を構え吼える。
「もうこれ以上貴方達魔王の好き勝手はさせません!」
受け取った『神器』を周囲に浮遊させ『フォトンウォンド』をリドグリフに向けるサーサ。
「行くぞ『白銀』! ここで『武神』との決着をつける!!」
そしてアイギスが『レリルティーネ』を皆と同じくサーサに渡して『フォトンブレード』を抜き放つ!
未来を切り開くために!!
勇ましき今代の勇者達の意思が今ひとつとなったのでした!
フィーナ「まったく!(。-`へ´-。) さ、お弁当の続きを楽しみましょうか(^ー^)」
アルティレーネ「あ、はい(-_-;) ……あの、フィーナ姉様(´・ェ・`) もう少し緊張感というものを……(´ヘ`;)」
フィーナ「あ?( `Å´)」
アルティレーネ「ひぅっ!?Σ(゜ロ゜;) ごご、ごめんなさい、なんでもないです(/´△`\)」
ルロイヤ《あらあら(゜∀゜;) ご機嫌斜めですわねフィーナ様(;´A`)》
翼《弁当食った後はやっぱデザートだよなぁ?(*´ー`*)》
ドゥエ《ちょっと待ってくれ(;-ω-)ノ ウノ、魔法の鞄になんか入ってないか?(_ _)》
ウノ《お~( ̄0 ̄)/ ちっと見てみるわ( ´ー`)》
アルティレーネ「な、なんでしたら翼達!(;・∀・) ちょっとこの場から離れて安全な場所でケーキを作って来て下さいよ!(;`∀´)」
翼《えー?Σ(´□`;) 嫌だぜ~?(`□´)》
ルロイヤ《結構な距離をずっと飛びっ放しでしたのよ!?ヾ(゜д゜)ノ 疲れてもう動きたくありませんわ!ヽ(`ω´)ノ》
フィーナ「貴女が作ってくれてもいいんですよアルティレーネ?(゜ー゜*)」
アルティレーネ「そ、そんな!Σ(・ω・ノ)ノ 私お料理なんて全然(*ノωノ)」
翼《女神様ん中でまともに料理覚えたのレウィリリーネ様だけでしたからね(ーωー)》
フィーナ「あきれた( ´Д`) 貴女、恋する乙女じゃなかったのですか?(・_・) RYOに手料理作ってポイント稼いだりすると思ってましたよ?( *´艸`)」
アルティレーネ「そ、それは……問題が片付いたら……(*≧д≦)」
ウノ《単純にぶきっちょってだけだよなぁ~アルティレーネ様?(¬∀¬)》
ドゥエ《そうだな(  ̄- ̄) 何度教えてもらっても失敗ばかりするから、アリサ様も後回しにしたほどだものな……(*゜∀゜)=3》
ルロイヤ《熱意は伝わって来ましたけどね?(*`艸´)》
アルティレーネ「うわぁぁーん!!。゜(゜´Д`゜)゜。」
フィーナ「やれやれ┐( ̄ヘ ̄)┌」
ウノ《それよかはい、フィーナ様(*´∇`*) ホットケーキが一枚残ってたんで差し上げますよ♪(ノ≧▽≦)ノ》
フィーナ「おお、ありがとうございます!ヽ(*´∀`*)ノ」
ドゥエ《バターとハチミツもありますんで(* ̄∇ ̄)ノ 後でご主人に頼んで『聖域』でスイーツパーティーでも開きましょう(*´▽`*)》
フィーナ「素晴らしい!ヽ(*>∇<)ノ ほら『白銀』達スイーツパーティーのために頑張りなさい!。:+((*´艸`))+:。」
パルマー「……いやいや(;-ω-)ノ どんだけ食い意地張ってんのさ( ̄▽ ̄;)」




