136話 『ココノエ』の帰還
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【還るココノエ】~家族が待ってる~《アリサview》
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「か、書けたぁ~よかった、間に合ったね! ゼオンくん達に宛てた手紙♪」
「お疲れ様『ココノエ』♪ それじゃあ預かるわね?」
せっせせっせ、と元の世界に帰還する前にかつての仲間。『誉』のみんなに宛てた手紙をしたためていた『ココノエ』がその筆を止め、嬉しそうに破顔した。
はい。みなさんこんにちは♪ 聖女のアリサです。
ロアの『パソコン』に残されていた『記憶の断片』の情報を頼りに、この『エルハダージャ王国』を治める謎の多い女王、『ココノエ』と会うべくやって来た私と珠実。
冒険者ギルドのムキムキマッスルなオネェさんの手引きで、『三賢者』であり、国の大臣でもあるヒヒイロくんと接触。そのまま女王『ココノエ』とも無事に会う事ができた。
話を聞くに、どうやら『ココノエ』はこの世界の住人ではなく、元々いた世界でとある禁忌を犯し、その罰としてこの『ユーニサリア』へと追放されたらしいのだ。しかし、その罰も『ココノエ』の失われた記憶の復活と一緒に許され、今まさに帰還の途に付くところであるそうだ。
正直、間に合ってよかったと思う。彼女が教えてくれた『忠告』は、間違いなく私の……いや、この『ユーニサリア』の行く末を左右する重大なものだと、心で理解できる。その時が来たら忘れずに思い出せるように努めよう。
さて、話はそれだけではない。いつだったか、『ココノエ』が人の前に現れない理由について、方々で色々と噂になっている事が話題にのぼったのを覚えておいでだろうか? 美女説、老婆説、重病説等々色々と飛び交っていたそうだが、その真実はスムーズに珠実へとその座を譲り渡すためだったそうだ。
「まぁ、大衆の前に出てきたとして、そんなブレブレの半透明な姿をした者が、「国を治める王じゃ」等と言うても皆不安になるだけじゃろうしのぅ?
しかし、各国の王の中には知る者もおるのじゃろう? ヒヒイロよ、その辺りはどう説明するんじゃ?」
「そうですね……重要機密文書として各国に親書をしたためましょうか?」
どう頑張っても『ココノエ』がこれ以上この世界に留まるには限界が来ており、無理をすれば還る事が出来なくなってしまうそうで、女王の受け継ぎは必要なのだそうだ。そのため、『ココノエ』は今まで人目につかぬよう配慮を、ヒヒイロくんにお願いしていたのだ。
「ちゃんとお仕事はしてたよ~? 一番困ったのは行事とかだったけどね? そこはほら、噂にあった重病説が役立ったってわけ!」
それでも、知る者は知る『ココノエ』の事だ。そんな一部の人達には女王の崩御として伝えるつもりらしい。そして、珠実が新たな『エルハダージャ王国』の女王となる事も併せて御知らせするのだとかなんとか。
「……そろそろ限界みたい」
「そうか……ふふ、話したいこと、聞きたいこと……沢山あったはずなんじゃがなぁ~? 不思議と言葉が出てこぬものよな……」
「あなたは無事に罪を償ったのです。胸を張って還りなさい、元の世界に還れば私と叔母の帰還もそう待つことはないでしょう?」
『ココノエ』の姿がより揺らぎ、肉眼での視認も叶わなくなってきた。珠実とヒヒイロくんはそんな彼女と別れの言葉を交わし合い、やがて無言になっていった。私は『ココノエ』が消えるであろう数十秒、その少しの間、一つ魔法を行使する。
「『家族紡ぐ絆』」
「あっ!? これって、アリサさんの魔法?」
パアァァァーッと私を照らす淡い光が、『ココノエ』を包み、彼女の胸の内に吸い込まれて行く。
「ふふ、やっぱり繋がったね? ほら、これを持って行きなさい。あなたの元いた世界にもちゃんと届くから、みんなでわけて食べるんだよ?」
「あ、ありがとう……アリサさん!」
「むふふ♪ きっと「懐かしい」って思ってもらえるんじゃないかな?」
私がこの子に渡したのは、みんな大好き玉子焼き♪ 少なくとも私が知る限り、今までに私の料理を食べたみんなにはこれが一番人気。他にも色々な料理を作って並べても、必ずリクエストされ、そして奪い合いが始まるなんとも罪深く業の深い一品である。
「えぇ~ちょっと、どこまでわかっちゃってるのぉアリサさんてば!?」
「さぁ~なんの事かしらね? 『神域』ぽいところのユニっぽいあの子にもよろしく伝えてちょうだいね? ○○○ちゃん♪」
「はわぁーっ!? なんでなんで!? どどど、どうしてぼくの名前まで!?」
お~お~♪ 慌てとる慌てとる! わたわたしおってからに、めんこいのぅ~♪
そりゃあ最初は考えもしなかったけどね、話を聞くにつれて、「もしかして」って思うようになり、あの『ファムナ村』から『聖柩』に行く途中、『神域』らしき場所でユニらしき人物と出会い、私の考えはほぼ確信に変わっていった。
そう……この子達は、私達の『可能性』……だから、『家族紡ぐ絆』も繋がる。
「ふふ、元の世界に還ったら訊いてみて? あんまりオイタしちゃ駄目よ♪」
「あはは……そっかぁ~「大体の事はすーぐバレちゃうんだよぉーっ!?」って言ってたお姉ちゃんの言葉の意味がよくわかったよ、うん!」
ふふ、元気でやるのよ~♪
きっと「懐かしい」って言うのは私なんだろうけど……
「達者でやるんじゃぞ~?」
「もう我が儘を言って皆を困らせてはいけませんよ?」
「はーい♪ 気を付けるね! それじゃあ……みんな、頑張って!
また会おうね!? バイバーイ!」
「ありがとう。また会える日を楽しみにしてるわ!」
シュンッ……
こうして『ココノエ』は満面笑顔で元いた世界へと還っていった。
永い時間、受けた罰を償い、一生懸命に頑張っていたあの子がちゃんと笑顔でサヨナラできてよかった。
きっと、再会はもっと先の話だろうけど……ふふ、今からその日が楽しみだよ。
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【ただいま!】~封印されし玉子焼き~《ココノエview》
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シュゥゥン……
「あぎゃぁ!?」
ズデーン! あうぅ……イタタ、派手にしりもちついちゃった! うぅ、ぼくのぷりちぃなお尻がぁ~! うぐぐ、尻尾をクッションにする暇もないとか酷いよぉ~!
「って、ここ……」
キョロキョロ……辺りを見渡せば懐かしい! ぼくの部屋だ!
お気に入りのモコプーカーペット。ふっかふかのお日様の匂いがするベッド! コンコンキツネちゃんの可愛いカーテン、ズラリと並ぶ、おばあちゃんがくれた『白銀』と『黒狼』と『猫兎』のぬいぐるみ。
「……帰って、来たんだ」
はわぁ~って、感慨深く見馴れた、でも、凄く懐かしい自分のお部屋を見回して大きなため息。アリサさんから渡された玉子焼きの入ったお弁当箱を机に置いて、改めて帰って来たんだと実感する。
長かったなぁ~まさか、ちょぉーっと叔母さんに我が儘言ったら、あんなとんでもない目にあうなんて想像できなかったよ。
ガチャ……
「あら? 帰って来たのね♪ お帰りなさい」
「おばあちゃん! わぁーい! ただいまぁ~♪ 会いたかったよぉぉーっ!」
そんな風に感慨に耽っていると、ぼくの部屋の扉が開き、大好きなおばあちゃんが「お帰りなさい」を言ってくれたの! 嬉しくなったぼくは思わず抱き付いちゃった♪
「あらあら♪ うふふ、こっちじゃまだ一日しか経ってないわよ?
でも、その様子だと大冒険してきたみたいね?」
「うん! あのねあのね! いっぱい、いぃーっぱいお話したい!」
えへへ♪ おばあちゃん! もぅ、ずっとずっとこうして抱きしめてもらいたかった! 『ココノエ』やってた頃は人と触れあう事も出来なかったから、凄く嬉しい!
「あらら、こりゃまた随分と甘えん坊によりかけて帰って来たわね~? よしよし♪ じゃあみんな集めてお話聞こうかしらね?」
「うん! あ、そうだ……おばあちゃん。これ、帰ってくる直前に渡されたんだけど……」
むへぇ~♪ おばあちゃんのなでなで、めっちゃ久し振り~♪ めっちゃ気持ちいい~ん!
なんてうへうへしてると、おばあちゃんがみんな集めてぼくのお話聞きましょうねって、にこにこしてくれた。その時に思い出したのが渡された玉子焼きだ。
はいってそのお弁当箱をおばあちゃんに手渡すと、おばあちゃんは「ふふ、懐かしいわね」って目を細めた。
「きっとみんなもこれ食べたら「懐かしい」って思うわね♪
私も久し振りに、このレシピで作ろうかしら?」
「え? でもでも~いっぱい入ってるよ玉子焼き。余っちゃうんじゃない?」
「あはは♪ それはないわよ? 断言するけど足りなくなるわ」
えーっ!? こんなにあるのに!? ってぼくがびっくりしてると……
「いい匂いがするーっ! って、おぉ~帰ってきてんじゃーん♪」
「ん。懐かしい匂い……これは、あの禁断のやみつき玉子焼きに相違ない。あ、お帰り」
「姉さーん! 食べさせてーっ! あら~もう帰って来たのね?」
「ふふ、お帰りなさい。良い旅が出来ましたか? それはそうと、お姉さま食べましょう♪」
バタバタバターッ!!
一体何処から嗅ぎ付けてくるのか……お姉ちゃん達が玉子焼きの匂いに釣られて、ぼくの部屋にみんなで駆け込んで来たよ! むぅぅ~みんなぼくの事より玉子焼きに夢中っぽいのはなんかひどくなーい!?
「あはは♪ それは仕方ないよ」
「ふふ、その玉子焼きは、あるじ様が卵の消費量を心配して封印してたもの、です」
ぞくぞくとやってくるお姉ちゃん達だ。って、なんだって? 卵の消費量を心配して封印してたレシピ!? いやいや、意味わかんないよ! だってどう見ても普通の玉子焼きじゃない?
「あなたも食べればわかるわよ~♪ お母さんだって未だに再現できないんだから♪」
「ままん! ただいまぁ~♪ 会いたかったよーっ!」
わーい! ままんだ~♪ えへへ、あっちの「のじゃのじゃままん」も新鮮だったけど、いつもの優しくニコニコしてるほんわかままんがぼくにとって一番のままんだよ~♪
「はいはい、みんな~♪ この子も無事に帰って来た事だし。今日はお祝いしましょうね♪
明日にはあの子達も戻って来るだろうし、それもお祝いしなきゃね!」
わぁぁーいっ!! やったぁぁーっ!
おばあちゃんがぼくの帰還のお祝いとして、盛大にパーティーを開いてくれることになったよ! 嬉しい~♪ こっちの世界なら明日にもあの二人が帰ってくるだろうし、ちょっとしたお祭り気分♪
あ、もらった玉子焼きはね~とんでもなく美味しかった! うん! まさにやみつき玉子焼きだね!
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【女王として】~『九重珠実』~《珠実view》
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「そう……そうだったのね……女王様、今までそんな苦労を背負っていらっしゃったのね……」
「……アリサ様、そして珠実様。私達はこの『エルハダージャ』と言う国が大好きです」
「俺も……いや、俺達だけじゃない! 多くの国民がきっとそう思ってる!」
「うん! だから、どうか……」
「どうか、小生達のこの想い、『ココノエ』陛下の想いを汲み、統治願います」
新たな女王、九重珠実様!!
「うむ……お主達の『エルハダージャ』に対する切実なその心。妾がしかと受け止めた!
不肖の弟子の興したこの国を大切に想ってくれていること、心から感謝しよう! ありがとう!」
妾の弟子。『ココノエ』が元の世界へと還って行き、女王の座を受け継ぐ事となった妾じゃ。
そしてまずは一歩目。今まで『ココノエ』を支えてきたヒヒイロに、『ココノエ』の事を知る者について訪ねたところ、冒険者ギルドのマスターであるあのムキムキなオネェさん。そしてSランクパーティーである『閃光』の面々が事情を知っておるとの事じゃった。
故に、彼等を城に召集し、総ての事情を明かしたのじゃ。『ココノエ』が長年かけ、築き上げた大国じゃ。民に対し誠実に向き合わねばアヤツに申し訳が立たぬからのぅ。
事情を聞いたオネェさん、ウィーリミア、レグス、キャルル、ドムが順にその思いの丈を妾達にうったえてきおる。うむ! 任せるがよい! 妾は『エルハダージャ王国』女王、『九重珠実』として其方達に向き合うと妾の弟子『ココノエ』に誓おう。
「さて、それならばじゃ。アリサ様、妾は今後女王として専念したいと思うのじゃ」
「うん、『懐刀』の件だよね? ゆかりに代わってもらう?」
そうじゃ。妾は女神の『懐刀』じゃ。しかし、今後は政務に集中したい故な、この機に辞したいと思う。後釜にはアリサ様が言うように、『黒竜』が適任じゃろう。『黒竜』たるゆかりならば『懐刀』の座をしっかりと守る筈じゃ。
「うん。じゃあ一度ゆかりと妹達に『懐刀』を中心に集まってしっかり話しなきゃいけないね。『聖域』との『転移陣』設置するから、ちょっと時間作りましょう?」
「済まぬなアリサ様、苦労をかける。ああ、ついでじゃが、妾の棲処の部下共にも声をかけるかのぅ」
アリサ様が気を遣ってこの城にも『転移陣』を設置して下さるそうじゃ。助かるのぅ、これで気軽に『聖域』と『エルハダージャ』を行き来できるのじゃ。うむ、妾の部下共にも補佐を務めてもらうとしよう。勝手知ったる者がおればなにかとやりやすいし。
そんな事を皆と相談しておると、不意にアリサ様の腕に着けたバングルが光始めおった。あの女神の次女と共同開発したと言う通信用の魔装具じゃな。
『アリサ様。こちら『聖域』、セレスティーナです。応答願います』
「セレス様? 少しお待ち下さいね。映像通信を繋ぎます」
ブゥゥン……
「えっ!? 何この魔法!?」「わぁー! 凄い!」
ほほほ♪ 『閃光』の連中が驚いておるわ。なんぞこの反応も久しい感じじゃの♪
さて、一体どんな話かと聞いてみれば、なんでも世界各国の代表者共に呼び掛け、大規模な防衛線を敷き、ロアの『魔装戦士』共に対抗するのだとか。既に主だった大国の元首達が集っており、妾達『エルハダージャ王国』の参加を待っていると言うではないか?
「これは、良い機会です。珠実様、いえ、女王陛下。先程の件、その場を借りてお伝え致しましょう」
「そうじゃな。妾がこの国を治める事となった旨を伝えようぞ!」
「……あ、アタシ達も一緒でいいのかしら~?」
「いいと思うよ? オネェさん達もしっかり話を聞いてこの世界を守る事に協力してほしいな」
各国の代表者が集まっておると言うなら、『ココノエ』の事に妾の事を伝える良い機会じゃ。
話を聞いたオネェさんに『閃光』の皆が尻込みしておるが、なに。遠慮するでない。アリサ様の言う通り、世界を守るためにはお主達の協力が不可欠じゃからな。
「わかったわ! それじゃあ心して参加するわねぇーっ!」
「ああ、世界の命運を決める大仕事になりそうだし、俺達も喜んで協力するよ!」
いや、オネェさんにレグスや。ムキーン! と、いちいちそのムキムキを強調するポーズをせんでもよいのじゃが? うむむ、そう言えばコヤツ等がどうしてこうなのかを『ココノエ』に訊くのを忘れておった……まぁ、良いか? 個性じゃ個性。
「……恥ずかしながら、小生。興奮を隠しきれません!」
「わたしも! 全世界っていう大規模の防衛戦線なんてすごすぎるよ!」
「ええ! 私も気持ちが昂って仕方ないわ! みんな、一緒に『エルハダージャ』を守りましょう!」
おぉーっ!! と、雄叫びを挙げるオネェさんと『閃光』の皆じゃ。うむうむ、心強いのぅ! 後でヒヒイロにも話して『エルハダージャ王国』全体にもこれから始まるであろう戦の事を伝えねばならんな。
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【港町から】~ゲキテウス王都へ~《にゃるろってview》
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「……珠実が『ココノエ』の後を継いで『エルハダージャ王国』の女王になるみたいだにゃ」
「なんだって! 珠実様が!?」「何があったんですかにゃるろってちゃん!?」
《あの珠実様が女王だって!?》《ビックリですわ!》
ヒュオォォーッ!!
私、にゃるろってが率いる囮部隊と、『聖域』の偵察部隊は現在、『リージャハルの街』から翼達の背に乗って『ゲキテウス王都』へと空を飛ぶ。
その間、『エルハダージャ王国』へと向かった聖女とのリンクが一時的に切れたので、女王『ココノエ』との謁見に入ったのだと察したのだけど……そのリンクが再接続されてみれば、なんともまぁ、情報の多いこと! ちょっとびっくりしちゃったよ。
そしてその情報の一部をみんなに話せば、レジーナ、ネネ、ウノにルロイヤが揃い声を挙げて叫んだ。私は、一つ一つ丁寧に説明していく。
「……ココノエ、そうか。そのような事情があったのだな? まさかアイツがそんな幼子だったとは」
「びっくりだよね~? すごい綺麗な『人間』のお姉さんって思ってたのに」
《しかし珠実様が女王をお継ぎになられるというのであれば、『エルハダージャ』は安泰だろう》
《だなぁ。なんだかんだ言って珠実様って人使うのも、纏めあげるのも上手いからな》
その情報に感慨深く瞑目するのはガッシュくんだ。彼は『誉』という冒険者パーティーで『ココノエ』と一緒に過ごしていたから、色々と思うところがあるんだろう。ミミも十年前に『ココノエ』とは会った事があるそうで、ガッシュくんの言葉に頷いている。
一方で、珠実が女王となった事に安心感を覚えてるのがドゥエと翼。『懐刀』の珠実を昔から知っている事もあって、信頼感が半端ないようだね?
「にゃるろってちゃ~ん、その世界防衛戦線会議の様子は観れませんかねぇ?」
「そうね、名だたる各国の代表者に『三賢者』まで、そうそうたる顔ぶれが集っているんでしょう?」
「私も出来るなら拝見したいです、にゃるろって様」
同時、今『聖域』では各国家の主要人物が通信越しとはいえ、一同に会し、魔王の脅威から世界を守るべく、大規模な防衛線を敷くための会合が行われようとしている。その中にはゼオンは勿論、ルヴィアスにゲキテウス王、『ジドランド王国』のジドル王の姿も見られ、まさに揃い踏みと言えるだろう。モモとニャモ、ガッシュくんがその様子を観たいというが、私も気になる。
「じゃあみんなで観るにゃん♪ 既に『ゲキテウス』の王都入りしてる『黒狼』とバルガス達にも伝えておくかにゃ?」
ヒャッハーくんが『ゲキテウス』方面を飛んでくれたお陰で、『転移』で行ける幅が拡がったからね。『ファムナ村』で再編されたパーティーを各地に転移させる事も可能となった。その時に聖女によって、『黒狼』の面々とバルガス、ネヴュラが移動を済ませ、既に『ゲキテウス』の王都で私達が来るのを待っている。
「レウィリとフォレアにはティリア辺りから連絡行ってる筈。場所は女神の神殿の会議室。映像通信接続っと!」
『──故に、妾は『懐刀』を退き、『エルハダージャ』の女王として政務に専念しようと思うのじゃ』
おっと! 映像通信を繋ぐと、丁度珠実が妹達に『懐刀』の座から退き、『エルハダージャ王国』の女王として行くことを宣言しているところだ。
《マジに珠実様が一国の王になんのかぁ~?》
『お、その声は翼っちだね? にゃるろってちゃん達も一緒か~じゃあ今『ゲキテウス』に移動中?』
『ん。『無限円環』の三人も、『黒狼』とバルガス達も来たから……これで全員?』
私とガッシュくんを乗せて飛ぶ翼が珠実の声を聞いて、感心したような呟きを漏らす。障害物のない空とは言え、よそ見運転は危険なので、偵察部隊には音声のみだ。そして、『ルーネ・フォレスト跡地』へと向かっているフォレアルーネと、レウィリリーネがその声に反応を返して来た。どうやら、彼女達も既にこの会合に参加していたようだ。
『こちら『黒狼』のバルド。俺達は『ゲキテウス王都』の宿屋の一室で待機している』
『うちらは移動中。各国の代表者のみんな! 集まってくれてありがとね!』
『こちら『無限円環』! 『黒竜』のゆかりだ。他ならない珠実のお願いだしな、『懐刀』は私が引き継ぐぞ!』
うん。レウィリリーネが言ったように、各方面に散った仲間達とも通信が繋がっているようだ。
各国の代表者達は珠実の宣言に驚愕した様子だけど、徐々に落ち着きを取り戻し始め、みんなその顔を真剣なものに変えていく。
「……ティリア。大丈夫?」
さあ、舞台は整った。しかし、心配なのがティリアだ。義弟達から『神界』にいるティリアの本体に事の真実を打ち明け、ショックを受けた彼女を立ち直らせたとは聞いているけど、やっぱり姉としては心配してしまう。
『ありがとうアリサ姉さん。大丈夫よ? そりゃあ流石にショックだったけどさ、それ以上にロアの奴への怒りが勝ってる! まずはアイツをぶっ飛ばして、他の魔王も抑えて、それから責任の取り方とか考えるわ!』
おぉ、よかった。大丈夫そうだね! モニターに映るティリアはその闘志をメラメラ燃やして、めっちゃやる気に満ちあふれている。サポートしてくれるヴィクトリアにアルナ、ポコもいるし頼もしいことこのうえないね!
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【反省は後よ!】~最善を探して~《ティリアview》
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『さて、女王たるもの、このような幼子の見目では民も不安がろう。ちと、本来の姿に戻るとするか』
「言われればそうかも知れないわね。ふふ、珠実が本来の姿を見せるなんていつ以来かしら?」
続々と役者達が揃い、いよいよ世界防衛戦線会議が始まろうとしている。
その中でも各国の代表者達を驚かせた『エルハダージャ王国』の女王となった珠実が、その姿を本来の姿に戻そうと言い出す。確かに今の珠実は小さな女の子の姿。彼女が『九尾』である事を知る者ならいざ知らず、何も知らない人々の目には幼子が国をまとめる事に異を唱えるだろう。
『ぷりちぃな幼子であれば誰もが油断しおるでな、妾も気が若く持てるし、アリサ様にも愛でてもらえるしで良い事の方が多いのじゃがなぁ~まぁ、仕方あるまいて』
『どんな姿になっても珠実は珠実だよ♪ 私は遠慮なくモフらせてもらうからね~?』
あはは! アリサ姉さんは流石ね♪ 皆もそんな『エルハダージャ』を映すモニターを見て小さく笑いあっているわ。
ボフンッ!
そうして、珠実が「そーれ!」と本来の姿に戻るべく術を行使すれば、白煙がモニターを覆い、一瞬何も見えなくなるのだけれど……
『『『うおぉぉーっ!?』』』
『はは、こりゃ驚いた! 『美女説』ってのも間違いじゃなかったって言えるんじゃないかな?』
『ヒューッ! 『ココノエ』の師匠ってなこんなべっぴんさんかよ!?』
「うむ……まこと、この姿は久方ぶりじゃ。思えば女神のお守りを請け負った日以来か?」
わああぁぁーっ! って大きな歓声がこの『聖域』に留まらず、各国の代表者達からも挙がったわ。
珠実の本来の姿……『白面金毛九尾の狐』は『黄龍』のシドウに次ぐ古参も古参。私達姉妹や、『新神』等よりも旧くから存在し、『旧神』達とほぼ同世代って話なの。
……ホントに凄い美人だわ。私も相当久し振りに見たけど、アリサ姉さんに並ぶプロポーションに、長く綺麗な睫毛をたたえた切れ長の目、スラッとした鼻筋に妖艶な唇には紅の口紅を差し、プラチナブロンドの艶やかな髪はキラキラ光ってさえ見える。優雅に着こなす和服がより珠実を『絶世の美女』たらんと言わしめる。
ルヴィアスとレオナード達各国の代表者が手放しで褒め称えるのも納得ね。正直うらやましいわ。
『そうだね~たまみん今まで『懐刀』としてうちらを支えてくれてありがとね!』
『本当に貴女にはお世話になりっぱなしでしたね? 私からもお礼を言わせて下さい、ありがとうございます』
『ん。あたしからも、そしてこれからもよろしく、珠実』
妹達も懐かしんでいるわ。ふふ、なんだか嬉しいわね♪ 今回で長い間妹達の『懐刀』としての活動は終わりだけど、まだまだこれからもずっとずっと付き合って行くことになるからね! 私からもよろしくね、珠実。
『うむ。皆の衆もよしなに頼むぞえ? それと、『誉』の皆に『ココノエ』から手紙を預かっておる。どうせじゃ、総ての問題を片付けた暁に、我が『エルハダージャ』で酒宴を催そう。其方達も参加してたもれ?』
『ココノエの奴が……それは是非とも参加しねぇとな……』
『はい。僕も彼女の残した言葉を是非知りたいです』『私もだ』
『喜んで参加させてもらうぜぇ珠実様よぉ♪ 勿論上手い飯も期待してるぜ!?』
『……一度、足を踏み外した私でも、許されるのであれば!』
あら♪ 素敵な催しね! その際には私達女神も一緒させてもらおうかしら?
『ココノエ』の残した『誉』のメンバー達に宛てた手紙ね? ふふ、ゼオン、エミル、デール、レオナードが嬉しそうにしてるわ。だけど……ガッシュ。彼は一度黒フード達……『ディード教団』の手を取ってしまったその罪悪感からとても申し訳なさそうにしているわね。
『貴方がガッシュね? そんなに気を病まないでほしいわ。貴方は引き返すことができたのだから。どうしても罪の意識があるというのなら、問題解決に尽力してちょうだい……そう、私も同じだから……』
『シェラザード様……勿体ない御言葉……痛み入ります』
彼の事情についてはにゃるろってちゃんから報告を受けているの。勿論、ゼオン達にも話してあるわ。だから彼を責める者は誰もいない。だけど、自責の念は募るものだ……その事をよくわかっているのがシェラザード。彼女の言葉には自分が体験したことの重みがある。
それは私も同じ……私もどれだけの間違いを犯してきたか……
「ティリアもついさっきまでめちゃくちゃ落ち込んでたのよ?」
「そうですよ……立ち直らせるのに苦労しました、はぁ」
ちょっ!? ヴィクトリア~アルナ~? やめてよ恥ずかしい!
「つまりは主神でも間違えるときは間違っちゃうのです! だから気にするなとまでは言いませんけど、あんまり引き摺らないでほしいのです!」
「……そうね。ポコの言う通りよ、今は何をすることが最善に繋がるのか? しっかり考えて行動を起こしましょう!」
お互いにね? そのためにもみんなで話し合っていかなきゃ!
さあ、ガッシュ達も各国の代表者達もみんな頷いている。始めましょう! 世界防衛戦線会議!
にゃるろって「(ФωФ)」
ウォーラル「おやおや、可愛い『人猫』の子だねぇ~(^ー^) どうしたんだい、こんな婆を見つめて?( ゜∀゜)」
にゃるろって「あんたが『ココノエ』の叔母でしょ?(¬_¬) 駄目よ、姪を甘やかしちゃ?( ・`ω・´)」
聖女「なんでそんなお婆さんの姿をとってるの?( ´ー`) バレないようにするため?(・_・)」
ウォーラル「Σ(O_O;) こりゃ参ったね……お見通しかい(;´A`)」
ヒヒイロ「安心しろウォーラル(^_^;) アリサ様は内緒にしてくださる(_ _)」
聖女「後でお説教ね?(ーωー)」
にゃるろって「覚悟しとくといいにゃ~(=゜ω゜=)」
ウォーラル「(´・ω・`; )」
ゼオン「おいガッシュ?(*`Д´*) オメェ後で殴らせろ(´・∀・`)」
ガッシュ「は?(;`・ω・) イヤだが?(`Д´)」
ゲッキー「ああん?(´・ω・`) 『教団』の事か?(*`エ´)」
エミル「もう、お二人ともまたそんな喧嘩腰で(;´д`)」
デール「落ち着きたまえよ?( ゜ー゜) ガッシュは利用されていたに過ぎないのだからね?( ´ー`)」
ルォン「……あれが、『エルハダージャ』の新たな女王……『九重珠実』様(・о・)」
ティターニア「オベロン?(*゜ε´*) 何を鼻の下を伸ばしてますの!?ι(`ロ´)ノ」
ルォン「えぇっ!?Σ(・ω・ノ)ノ ち、違います!(゜Д゜;) それは美しい方だとは思いましたが!(;´゜д゜)ゞ」
バロード「皇子殿下( ̄▽ ̄;) 焦り過ぎですよ?(´∀`)」
オルファ&カレン「ぷふっ♪( *´艸`) 皇子様のこんな焦った姿なんて珍しい♪( ☆∀☆)」
ティターニア「後でお説教ですわぁぁーっ!(≧□≦)」
ルォン「は、はい(T^T) ごめんなさい(/。\)」
リール「あはは(´▽`*) なんだか面白い事になってるね!(*´艸`*)」
フォーネ「ルヴィアス様の息子さんがティターニア様の婚約者だってのにはビックリだけど(°▽°) 見つかってよかったよね♪(*`艸´)」
レウィリリーネ「ん( ´ー`) なんだかんだ言っても、ティターニア幸せそう(゜ー゜*)」
フォレアルーネ「だねぇ~(*´▽`*) でも、たまみんが『懐刀』卒業かぁ~ちょっと寂しいな(´・ω・`; )」
シドウ「なに、『転移陣』で『聖域』と繋がるんじゃ(´・∀・`) 今までと大して変わらんじゃろう(*`▽´*)」
リン「『聖域』には珠実の棲処もあるからな( ・-・) 『聖域』から『エルハダージャ』へと通うのだろう?( ゜ー゜)」
ティリア「シェラザード、あんたの幽閉も今日をもって終了よ!( ・`ω・´)」
シェラザード「わかったわ(・-・ ) 問題解決に向けて尽力しなさいって事ね?(o・ω・o)」
ゆかり「よぉーし!( ̄▽ ̄) 一緒に暴れてやろうじゃないか、カイン! シェラザード!!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」
カイン「ええっ!ヽ(^∀^*)ノ 『魔装戦士』なんて蹴散らしてやりますよ!( ≧∀≦)ノ」
アルティレーネ「頼もしい限りですo(*⌒―⌒*)o 『白銀』の皆さんも私が『魔装戦士』から守りますから、リドグリフとの闘いに専念してくださいね!( `ー´)」
アイギス「ありがとうございますアルティレーネ様!m(_ _)m」
白銀「感謝します!」
聖女「さあ、始めましょうか!ヽ( ・∀・)ノ」




