表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
168/211

133話 『ジドランド王国』にて……

────────────────────────────

【ドガちゃん】~ジドルん~《アイギスview》

────────────────────────────


「ドガちゃーん!! おひさぁ~♪ 救援マジ感謝じゃーん!?」


 えぇ~? ドガちゃんって……


「うぉっほっほっほ! 久し振りじゃのぅジドルん~♪ 無事なようでよかったわい!」


 おいぃーっ!? ドガまで!? 流石に無礼が過ぎるだろう!!


「ははは! 相変わらず仲がよろしいようで何よりですなぁ~?」


 だ、大臣殿まで! いや、待ってくれ……「相変わらず」だって?

 『ジドランド』を襲った『魔装戦士』の群れを撃退し、私達『白銀』は今、ジドル王との謁見を果たした。しかし、驚く事にジドル王はドガの姿を認めるなり、まるで長年離れていた朋友との再会を喜ぶように、その相好を崩し駆け寄って来るではないか!?

 その事に呆気に取られてしまったのだが、答えたドガの返事に私達はまた驚いた! なんと、ドガまでジドル王を朋友のように扱うのだ! 駆け寄る王と抱き合い、再会を喜び、互いに肩を組んで「ドガちゃん」「ジドルん」と愛称で呼び合い笑いあっている!


「おや? ドガ殿は話しておりませなんだか? 我等が王とドガ殿は古くから朋友の間柄なのですよ?」

「そうじゃそうじゃ~大臣の言う通りじゃよ~♪ それはそうとドガちゃん! ファムちゃんとギドっちは一緒じゃないのん?」

「おお~ファムとギドも向かっておるぞい♪ 今はまだ定期船の上じゃろう」


 これは驚いたな。ドガだけでなく、ファムとギドもジドル王と朋友の間柄だったとは!


「はは! 俺達冒険者やってるせいで互いの過去に干渉しねぇでいたけどよ、こうして蓋開けてみりゃ、面白ぇもんだな?」

「まったくです。色々驚きがあって飽きません♪ ふふ、もしかして、レイリーアも何処かのお姫様だったりしませんか?」

「アハハ♪ アタシは至って普通のダークエルフよ~♪」


 ふふ、仲間達の言う通りだな。私達冒険者は互いの過去を詮索するのは禁忌(タブー)と、暗黙の了解で決まっている。故に長い付き合いであるドガの事も知らずにいたのだが。


「翁もお久し振りですじゃ、壮健そうでなによりですわい」

「ふぁふぁふぁ♪ 当然じゃ! 儂は後五百は生きてみせるぞい!」

「ふっ……調子に乗って『飛行魔法(フレイ)』で飛び回り、魔力切れ起こして墜落して死にかけた未熟者が何を言うのか?」


 あー! 師匠!! それは内緒ですじゃぁぁーっ!! と、恥ずかしそうに叫ぶのは世にも名高い『三賢者』のお一人であるパーシヴァル翁だ。彼は師匠と呼ぶ銀髪の青年にわたわたと慌てながら、必死に内緒にして下され~と泣き付いている。なんとも微笑ましい光景だが、この「パルマー」と呼ばれた青年は何者だろうか?

 『魔装戦士』を相手取った防衛戦での手並みを見るに、並大抵の者ではあるまい。アリサ様の『無限円環(メビウス)』での訓練を経た私達と同等の実力を持つ者がいるとは……世界は広いと言うことか?


「わかったわかった。他言はせんよ」

「わっはっは! パルマー殿もこう言っておられるのじゃ、兵達も翁の名誉のためじゃ、内緒にするんじゃぞ?」


りょ、了解です! ぷっ♪ 畏まりました! プフフ♪


「うおぉぉーん! 恥ずかしいのじゃ! ええい! 儂の事はよいのですじゃ王よ! 本題に入りましょうぞ!?」


 パルマー殿がやれやれと言った風に肩を竦めれば、ジドル王が大笑いして、側に控える兵士達にも他言無用と命じる。これには兵達も笑いを噛み殺しつつも了解。ふふ、面白い国だな。


「うむ。そうじゃな、事のあらましはある程度パルマー殿の占いと、ゼオン殿からの親書にて把握しておるが……アイギス殿よ。お主達の口からも経緯を聞かせてはくれぬか?」

「はっ! 畏まりましてございますジドル王」


 さて、ここからが本題だ。パーシヴァル翁の言葉に襟首をただし、玉座に腰掛けるジドル王の顔が、先程の旧友との再会に喜んだ親しみやすいそれから、民を、国を束ねる王のものに変わる。私達『白銀』もそれに倣い、姿勢を改め、王の御前にひざまづき応える。

 さあ、誠心誠意お話しし、王の理解と協力を得なければ! 『世界樹(ユニ殿)』の『神域』で待つアーグラス達のためにも、来る『武神リドグリフ』との闘いのためにも、『神斧ヴァンデルホン』を手に入れなくてはならないのだから!


────────────────────────────

【女神様が来る!】~歓迎せねば!~《ジドル王view》

────────────────────────────


「ほう! それはまたなんとも! アイギス殿達は大変な冒険をされておいでじゃな!?」

「ええ~ええ! 私も感心して止みませぬ!」


 うむうむ! まこと素晴らしい冒険譚じゃ! 儂等に話を聞かせてくれるアイギス殿達。『セリアベールの街』が誇るSランクパーティー『白銀』のこれまでに至る壮大な物語!

 アイギス殿の語るその話に儂はおろか、大臣もまた感嘆のため息をついておる。

 メンバーとの出会いから、多くの『氾濫(スタンピート)』を乗り越え、不覚にも腕を失うと言う大怪我を負って尚、諦めず、希望を『聖域』に向け、そこでまた信じられない出会い! そう、なんと女神様達との出会いを果たしたと言うではないか!!


「それでですね……ん?」


ペカペカペカーッ!!


「やや? アイギス殿のバングルがなにやら明滅しておりますぞ?」

「失礼しました大臣殿。こちらは先程お話しに挙がりました『聖域の魔女』アリサ様より託された、通信用の魔装具なのです」


 儂等一同、皆アイギス殿の話に興味津々で聞き入っておったその時じゃ。アイギス殿の身に付けておるバングルが白い光を放ったのじゃ。その小さくもはっきりとした光は明滅を繰り返しておってな、大臣が何かと問えば、なんと通信用の魔装具とな?


「話の途中で申し訳御座いませんが、起動してもよろしいでしょうか?」

「うむ。火急の要件やも知れぬな。アイギス殿、遠慮せずに!」


 アイギス殿達はパルマー殿の占いにあった勇者一行じゃ。冒険譚の続きも勿論気にはなるが、その通信相手もまた気になるところよの! 勇者殿に連絡を取る相手、もしや。と、思うて胸が高鳴るのぅ!


「寛大なお言葉痛み入ります。それでは失礼して……はい、こちらアイギスです」

『ああ、よかった。繋がりましたね? アイギスさん、私アルティレーネです。アリサお姉さまの作戦通り、そちらに合流を……あら? そこは何処かの王城ですか?』


うおおおぉぉーっ!! この御方が女神様か!? なんと神々しい!


 おぉーっ!! やはり! やはりじゃ!! 先のアイギス殿の話は間違いではなかった! 先祖より代々口伝にて伝え聞いておる、創世の三女神の一柱! 『生誕』のアルティレーネ様じゃ!! その女神様を映し出すこの謁見の間の中空を見て儂等大興奮! うひょー! すげぇーっ!! じゃなくて! いかんいかん! 女神様の御前じゃ、皆を静めお話しを拝聴せねば!


「皆の者! 静まれいっ! さも尊き『生誕』がアルティレーネ様の御前じゃ! 頭が高い! 控えおろう! 御神言をしかと拝聴せよ!」


ハハァーッ!! ザザザッ!!


『あら? そんなに畏まらなくともよろしいですよ?

 ……なるほど、『ジドランド王国』に無事着いたのですね?』

「はい、アルティレーネ様。『魔装戦士』の襲撃を乗り越え、『神斧ヴァンデルホン』をお貸し願えぬか、陳情しているところでした」


 うむ。そうなのですじゃ! 幼馴染みのドガちゃん達が懇意にしてる冒険譚パーティーですのでな、国宝たる『神斧ヴァンデルホン』を貸し与える事に異存はありませぬが、ちと話を聞きたかったのですじゃ!


『うふふ♪ そうでしたか。今代のジドル? よろしければ私もそちらにお邪魔させて頂けませんか? アリサお姉さまから託されたお土産もあるんです♪』

「なんとぉぉーっ!? アルティレーネ様御自ら御越しになられると!? み、皆の者! 急ぎ歓迎の準備じゃあぁぁーっ!!」


ははーっ!!


 それ急げ! やれ急げ! これは我が『ジドランド王国』始まっての大事件じゃぞ!? おぉ! 儂の代で女神様とお会いできる日が来ようとは!!


「歓迎致しますのじゃアルティレーネ様!!」

「うおぉぉーっ! 長生きしておいてよかったわい!」

「兵達よ急ぐのだ! 城のありったけの酒をもてぇぇーいっ!!」


ウオオォォォーッ!!


『あはは……本当に突然で申し訳なく思います』

「何を言われますアルティレーネ様! 儂等は今日ほど心踊る日はありませんでしたぞ!?」


 儂等の行動にやや苦笑いを浮かべておられるアルティレーネ様じゃが、気にする事など御座いませぬぞぉーっ! むおぉ~今日はなんとよき日じゃ! 翁も感涙にむせび泣いておるし、大臣も意気揚々と兵達に指示を飛ばしておる! それを受ける兵達のあの嬉しそうな顔よ!!


────────────────────────────

【再会】~旧友と女神~《ファムview》

────────────────────────────


「ふぅ~やれやれ。無事に着いたねぇ?」

「おお。港に被害が出とらんようでよかったぜ」


 よっこいしょっと、あたしは凝った腰をポンポン叩き、定期船からこの『ジドランド』の港に足を踏み出した。うちの宿六とアイギス坊や達が、話に出てた……なんて言ったっけね? 『魔装戦士』だったかい?

 まあ、そいつ等の襲撃から見事、この港と国を護ってくれたようで、多少騒がしくはあるものの、通常通りに運営しているようだね? 一緒に船を降りてきたギドも安心した様子だよ。


「久し振りの帰省だってのに、とんだ災難だったなファム?」

「なぁに、仕方ないさ。『白銀』が頑張ってくれなきゃもっと酷い事になってたかもしれないんだしねぇ?」


 あたしとギドもこの港の上空で何度も爆ぜる閃光を、定期船から見てたからねぇ……あれだけ派手にドンパチやっておいて港に一切の被害なしってのはすごい事じゃないのさ!


「はっはっは! 違いねぇ! ……ん?」

「失礼します! お二人はギド様とファム様でお間違いないでしょうか!?」


 おや? あたしと笑い合ってるギドのとこに、城の兵士らしき成りのドワーフがやって来たじゃないか?


「応、あんたは城の伝令だな? 確かに俺がギドでこっちがファムだぜ?」

「あたし達になんか用なのかい?」

「はっ! ジドル王ならびにアイギス殿『白銀』の皆様がお呼びであります! 女神様も御越しになられておりますので急ぎ王城へ来て頂きたいと!」


 おやおや、そいつはご丁寧にどうもねぇ~? うん、どうやら宿六達は既に王と謁見してる最中のようだね? しかも女神様まで来てるって? 国宝の『神斧ヴァンデルホン』を貸し与えるのを王が渋ってるのかねぇ~?


「どうだろうな……俺達は確かに親友の間柄だが、流石に国宝を「はい、どうぞ」ってわけにはいかんだろうし……」

「やれやれ、しょうがないね? あたし等も顔出しておこうじゃないか?」


 今代のジドル王と旦那のドガ、そしてこのギドはあたしの昔馴染み。こうして久し振りに故郷に帰って来たんだし、国宝だのなんだのはさておいて、親友として顔を見にいこうかね?


「「ようこそいらっしゃいました!!」」「「ささ! こちらへ! 王がお待ちです!」」

「お、おう……なんだかえらい歓迎されてるじゃねぇか? ドガの奴なにしたんだ?」


 あたしを出迎えてくれた城の伝令の兵士に着いていき、辿り着いた『ジドランド城』。そこでまた兵士達に手厚く歓迎されたあたし達だよ。やれやれ、襲撃受けたばっかりだってのになんだい? まるでお祭りのような賑やかさじゃないか?


「まぁ、ピリピリ殺気立ってられるよかマシだがねぇ~あんた達、ちっと緊張感なさすぎじゃあないのかい?」

「ははは! まあまあ、ファム様。その理由も謁見の間に行けば直ぐにわかりますよ!」

「あ~女神様もいらしてるって言ってたな? とすりゃあ~もしかするかぁ?」


 あたしがちょいと呆れて謁見の間に案内する兵士にそう言えば、笑い飛ばしてくるよ。ギドもそんな兵士の様子に思わず苦笑いだ。女神様が来てるって言うし、まぁ……何かをもたらしたんだろうね?


「失礼します! 王のご友人、ファム様とギド様をお連れしました!」

「よし! 入れ!!」


ギィィィーッ……


 そして謁見の間に到着だ。あたし達を案内した兵士が謁見の間の扉の前で大声を挙げ、中の兵士達に扉を開けさせた。


「おぉ! ファム、ギド! 無事に定期船も動いたようじゃな!」

「うおぉぉーん! ファムちゃん! ギドっちーっ! お久ぁぁーっ!!」


 ドドドっ! ってな感じであたし達のとこに駆け寄ってくる宿六と、あっはっは! こりゃ懐かしい! ジドルじゃないか! コイツは変わらないねぇ~?


「はいはい、あんたは相変わらずだねぇ? 元気してたかい?」

「応。久し振りだなジドルん! しかしなんだこりゃ? 乱痴気騒ぎじゃねぇか?」

「わっはっは! うんうん、二人も元気そうじゃ! 無論儂も元気いっぱいじゃ! それでな、これはなーんと! 女神様がそれは見事な酒を土産に持って来てくれたんじゃよ!!」


 はぁ~やっぱり酒だったかい? 嬉しそうにあたし達との再会を喜び、寄って来たジドルに話を聞けば、何でもアイギス坊や達が国宝を借りようとしてるのに、手土産もなしでは失礼だろうと、レーネちゃん……ああ、いやいや、アルティレーネ様がアリサちゃんから沢山持たされたって話らしいねぇ?


「凄いんじゃよ! 『聖域』の酒は! もうマジ美味い! それに料理もさぁーっ!」

「うふふ、落ち着いてジドル? お久し振りですねギドさん、ファムさん。『セリアベール』では大変お世話になりました」

「アルティレーネ様。お久し振りですね、うちの宿六がご迷惑おかけしてないでしょうか?」

「久し振りですなアルティレーネ様。こっちこそ『氾濫(スタンピート)』を解決してもらって有り難い限りですぜ?」


 ホラホラってあたし達にその酒を注いだグラスを手渡すジドルから、そのグラスを受け取って、互いの無事を喜び乾杯していると、アルティレーネ様が興奮気味のジドルにやんわりと注意しながら側にやって来て下さったよ。うん、そんなに日は経ってないはずだけどねぇ、日々が忙しかったせいかひどく懐かしい感じがするね? それはギドも同じのようさね。


────────────────────────────

【お姉さまからの】~手土産です♪~《アルティレーネview》

────────────────────────────


「ではアリサお姉さま。私は早速アイギスさん達と合流します。『神斧ヴァンデルホン』が彼等の手に渡るよう努めますね?」

「あ~ちょいと待ちたまへ妹よ? 確かそのヴァンデルホンって『ジドランド王国』の国宝になってるって話じゃん?」


 リールさんとフォーネさんの故郷である『ファムナ村』でパーティーを再編し、各々行動に移ろうとした時の事です。私、アルティレーネも行動を起こすべくアリサお姉さまに一声かけて、いざ転移を。と、思ったのですが、待ったがかかりました。


「思ったんだけど、いきなり押し掛けて来て「国宝貸して」って……ちょっとアレじゃない?」

「それは……確かにそうかも知れませんが、きちんと事情をお話しすれば……」


 お姉さまのその言葉に暫し考えます。ええ、確かに『ジドランド』側から見れば寝耳に水。場合によっては荒唐無稽な戯言を吐いて、国宝を掠め取る輩と思われてしまうでしょうか?


「お願いする以上こっちもなにかしら手土産を用意しておかないといけないかなって思うのよ? 効果あるかわかんないけど、あんたのバッグに色々詰めるから貸しんしゃい?」

「手土産! そうですね、そう言う事でしたら……はい。お願いしますお姉さま」


 なるほど、流石アリサお姉さまです! 『魔装戦士』の襲撃で私も少し冷静さを欠いてしまっていましたね。アポなしの突然の訪問にもなってしまいますし、せめてものお詫びとお礼はしなくてはなりません。


「うんうん。気遣いって大事よね~? えっと、ドワーフさん達の国ってんだから、当然お酒よね、それとおつまみに、作り溜めしといたアホの数あるお弁当をこれでもかって詰めて~」

「お、お姉さま? なんなのですかその……一軒家ほどの数あるお弁当は!?」


 ニコニコと、はじめのうちは私も、私の『魔法の鞄(マジックバッグ)』にお酒や、それに合うおつまみを入れていくアリサお姉さまの様子を見ていたのですが……なんと、その後には信じられないくらいの数のお弁当箱をミーにゃんポーチから取り出したではありませんか!? その数と言ったら『ファムナ村』の一軒家をぎゅうぎゅうにしてしまうのではないかと思われるほどです!


「あ~これは『無限円環(メビウス)』で色々と研究してた副産物? みたいな? 全部状態保存の魔法かけてあるから出来立てだよ♪ 『ジドランド』の兵士さんとか何人いるかわかんないけど、まぁ~仲良くシェアしてもらってちょうだいね?」


 はぁ~おみそれしました、アリサお姉さま……ここまで来ると、もう感嘆のため息しか出ませんね……


「──と、言う次第でして。こちらがそのお弁当とお酒、おつまみ各種です」

「「「すっげぇーっ!!」」」


 そうしたやり取りの後、私はアイギスさんに連絡を入れ、この『ジドランド王国』へと転移して来ました。今代のジドル王と国の重鎮の大臣や、賢者の方にも挨拶をして、その手土産をお披露目しましたよ? ふぅ~取り出して並べるのも一苦労の数でした。アイギスさん達『白銀』の皆さんにも手伝ってもらって、ようやく並べ終わりましたよ?


「凄すぎますぞこれはぁぁーっ! いやはや、なんとお礼を申せばよいやら! 『ヴァンデルホン』に関しましては親友のドガちゃんに託しますのでな! ご安心下されアルティレーネ様!」

「あら? ありがとうジドル。それではこちらはお近づきのしるしに。ということで♪」


うっひょぉぉぉー!! 宴会じゃ宴会じゃぁぁーっ!!


 どうやらジドル王とドガさんはお友達だったようで、アイギスさんから事情を聞いて『ヴァンデルホン』をドガさんに託す事を既に決めていたようなのです。ふふ、事がスムーズに運んで良かったです。


「ギド、ファム。無事でよかった」

「アイギスの坊や、おかげさんでね。それで? 国宝を借りる事はできたのかい?」

「うむ! これで総ての神器が揃ったわい!」


 お酒におつまみ。美味しいお弁当がずらーりと並べられてドワーフ達がどうするか? 言うまでもなく、宴会が始まりました。ジドルも大臣も賢者の方もはたまた兵士達も飲めや歌えやの大騒ぎとなったこの謁見の間に、遅れてやって来たのは、ドガさんとジドルの親友であるファムさんとギドさんです。無事にこの『ジドランド』へと到着し、再会を喜び合っていますね。まさか四人共に親友だったのは驚きましたけれど♪


「アイギス殿。貴殿達はかの『武神リドグリフ』との決戦に赴かれるとの事だが……その『武神』の復活する場所は把握しておられるのか?」

「パルマー殿、ええ。とある御方から有力な情報を得ました」

「俺達はこの後、『エルハダージャ』に向かうぜ!」

「そこの南方の『グレブヒュ火山』……その山頂にかの『武神』が復活するはずです」

「前世からの因縁の相手じゃ……必ず決着をつけねばならん!」

「ええ! 必ず勝って凱旋しなきゃね! 勿論全員で!」


 アイギスさん達に話しかけたあの銀髪の青年の得体の知れない感じ……「パルマー」と名乗るこの者は何者なのでしょう? 気になりますね、敵ではないようですが。一瞬こっそり鑑定して見ようかとも思いましたが、好奇心で許可も得ず勝手にそんなことをするのはあまりにも無礼ですね。やめておきましょう。

 気になる、と言えば……アイギスさんは、アリサお姉さまが各組の状況を知るために呼び掛けた時点で、『リドグリフ』の復活する場所を『グレブヒュ火山』と断定していましたね? 一体「とある御方」とはどなたなのでしょうか? まあ、こちらは後程お聞きしましょう。

 当時、私達女神もそれぞれが魔神の手先や各魔王の猛攻を受けていて、『リドグリフ』が討たれた事を知ったのは大分後になってからでした……それも『聖域』で魔神との決戦の直前です。アーグラスさん達は仲間のジドルを失って辛そうにしていましたし、詳しく訊くのも憚られましたから……そんな理由もあって『リドグリフ』の復活場所を特定出来ずにいましたからね。


────────────────────────────

【次なる任務】~『グレブヒュ火山』へ~《パルモーview》

────────────────────────────


「そうか……なるほどな」


 僕はそれだけ言って、アイギス兄ちゃん達の前から踵を返す。


「パルマー殿。此度は助力頂き感謝します」


 背中にアイギス兄ちゃんのお礼する声が聞こえてきたので、振り返らずに手を軽く振って応えておくことにしたよ。下手に会話して正体がバレるのもマズイからね。


「キザな野郎だなぁ~ま、なんにせよサンキューな!」

「儂の故郷を護ってくれたこと、感謝するぞい!」

「貴方ほどの実力者がいるとは思いませんでした。協力して下さってありがとうございます」

「ホントね。世の中広いんだって改めて知ったわ! ありがとうパルマーさん!」


 ちょっとゼルワ? キザじゃないよ? クールっていいなよ? まあいいや。他の『白銀』メンバー達もお礼を言ってくれてるので、クールなキャラっぽく、彼等を横目に見て「ふっ」って笑っておいた。くぅー! 我ながらカッコいいぞ~僕! 大きくなったらこんなクールなキャラになろうかな!

 さて、取り敢えず最初のミッションでもある、『神斧ヴァンデルホン』が『白銀』の手に渡るようにする。っていうのはクリアしたし、僕がこの国に留まる理由はもうないね?

 周りを見れば、皆アルティレーネ様が持って来たお酒と料理でどんちゃん騒ぎしてる。まったく、楽しそうで何よりだけどさ、もうちょっと緊張感持った方がいいんじゃないの? なんて思うのは僕がまだお酒を飲めないからだろうか?

 ま、それは別にいいや。それより新しい情報があったね。『エルハダージャ』南東の火山の山頂……そこに『武神リドグリフ』が復活するって!


「……ならば、次の目的地はそこだな」

「師匠~♪ 楽しんでおられますかなぁ~? 儂ぁ~最高に気分がいいですじゃ~実に美味い酒に料理ですな! わっはっは♪」


 うぅわ、酒臭ぁーっ! ちょっとパーシヴァルのじいちゃん、どんだけ飲んだのさ!? ふらふら~って覚束ない足取りで僕のとこまで「うぃーっく♪」とか言いながらやって来て~まったく!


「パーシヴァルよ。この国での私の役目は終わった、後はお前達で護るのだぞ?」

「師匠!? まさかもう行きなさるのか!?」


 ありゃ? やるじゃんお爺ちゃん。一瞬で酩酊状態を解除するとはね♪


「最初に言っておいたでしょ? 僕の役割はあのアイギス兄ちゃん達に『ヴァンデルホン』が渡されるように手配する事だって?」

「そ、それはそうですが……急過ぎますじゃぁ~! 儂寂しいですじゃ!」


 エルフのサーサ姉ちゃんとか、ハーフエルフのゼルワにダークエルフのレイリーア姉ちゃんみたいな、耳のいいみんなにも聞こえないように、軽く遮音魔法を小さく展開させてコソコソとお爺ちゃんにこの国を出る事を伝えると、お爺ちゃんってばしょぼーんってしちゃったよ。


「しょうがないなぁ~それなら全部片付いたらお爺ちゃんも『聖域』においでよ? そしたら僕なんかよりもっと凄い人達と会えるし、なんなら今並んでるのより美味しいご飯も食べさせてもらえるよ?」

「おぉぉ……それは誠ですかな!? 本当に師匠に師事して頂けたりも!?」


 うんうん。勿論さ! ちゃんと自力で『聖域』まで来れたならアリサ様も女神様達もきっと歓迎してくれるよ!


「や、約束ですぞ師匠!? 儂、絶対に師匠にお会いすべく『聖域』に行きますじゃ! それまでこの『ジドランド』を守り抜いて見せますぞぉーっ!!」

「ふっ、そのいきだ。私も次なる任務へと向かおう。次に会うときは総ての問題が解決した後だ、精々長生きするのだぞ、パーシヴァル。我が弟子よ?」


 ふふって笑い合い、僕は口調を「パルマー」に戻して『飛行魔法(フレイ)』を発動。テラスから飛び立った。背中にお爺ちゃんの「お達者でーっ!」って大きな声に振り返らず、手をサッと挙げて応えて、『エルハダージャ』方面に向かう!


バシュゥゥゥーッ!!


 さあて、急がないとね! アルティレーネ様とアイギス兄ちゃん達が来る前に『グレブヒュ火山』に行って、『武神リドグリフ』を見張らなきゃ!

 アイギス兄ちゃん達『白銀』は出会った頃に比べてとんでもなく強くなったし、ペナルティが解除された魔王と闘ってもきっと負けないだろう……とは思う。まぁ、いざとなったら形振り構わずアイギス兄ちゃんだけでも助けて逃がしてやるけどさ。恨まれるかな~? ま、これもアリサ様のためだからね! 割り切って考えないとやってらんないね。

 でもって、もうひとつ……無事にリドグリフをやっつけた場合だ。

 まぁ、当然ながら兄ちゃん達はぼろぼろになってるだろう。そこをロアが見逃すとは思えない。絶対に止めを刺しに『魔装戦士』達が来るだろうね? そうなったら僕とアルティレーネ様で兄ちゃん達を護る事になるわけだけど……二人でいけるかな? せめてもう一人いてくれるなら助かるんだけどなぁ~?


「まぁ、仕方ないか。その時はその時で!」


 僕も気張ろうじゃないか!

ジドル王「およよ!?Σ(゜ω゜) パルマー殿はもう行ってしまわれたのか?(´・ω・`; )」

パーシヴァル「うむ(_ _) 師匠はお忙しい御方じゃからのぅ、儂も残念じゃ(-_-;)」

大臣「なんと!Σ(゜ロ゜;) まだ礼もろくにできておりませなんだと言うのに!(゜Д゜;)」

アルティレーネ「あら?(´∀`;) お酒にも手をつけずに……せめてお弁当をお持ちしてもらいたかったですね(^_^;)」

パーシヴァル「ああ、アルティレーネ様(^ー^) 師匠は酒は飲みませんのじゃ( ゜∀゜) 代わりに弁当はひとつ持って行きましたぞ(*´∇`*)」

レイリーア「あら( *´艸`) 意外とちゃっかりしてる人だったのね?(°▽°)」

サーサ「なんにせよ彼がいてくれて良かったですね?( ´ー`)」

ドガ「そうじゃな!(^∇^) あの見事な魔法の冴え……ネヴュラ殿やアリス殿を彷彿とさせるもんじゃったわい!(・о・)」

ゼルワ「強者ってのはやっぱいるとこにはいるもんだなぁ~?( ; ゜Д゜) 俺達も負けてらんねぇぜ!( ・`ω・´)」

アイギス「パルマー殿もそうだが……私はドガ達がジドル王と朋友の間柄ということに驚いたな(゜∀゜;)」

ジドル王「むぉふぉっふぉ♪(*≧ω≦) そうなんじゃよアイギス殿!(ノ≧▽≦)ノ」

ギド「あー( ̄▽ ̄;) 俺等こう見えて実はこの城に仕えてる……まぁ、他国で言う貴族なんだわ(´・∀・`)」

白銀「ええぇぇーっ!?Σ(Д゜;/)/」

ドガ「うむ、幼い頃は四人集まってよう遊んだもんじゃ( ´ー`)」

ファム「あっはっは!( ^▽^) 懐かしいねぇ~ジドルが王位を継ぐまで色々やんちゃしたもんだよ(*´∇`)」

アルティレーネ「まぁ~そうだったのですね?(*´▽`*)」

大臣「そしてギド殿はもっと幅広く鍛冶を、ドガ殿は冒険者となり、最高の酒を作るため、ファム殿はそんなドガ殿を支えつつ、ご自分の店を持つという夢を抱き、『セリアベール』へと旅立ったのです(゜ー゜)(。_。)」

パーシヴァル「うむぅ~あの時の王といったら、毎日寂しそうにしておったなぁ~?(*`艸´)」

ジドル王「翁~!o(T◇T o) それは内緒じゃと言うたであろうにーっ!?(; ゜ ロ゜)」

みんな「あははははっ!!。゜(゜^Д^゜)゜。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ