132話 世界防衛! 大・作戦!!
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【俺等遅れてねぇ?】~何が起きてんだ?~《獅子王view》
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「──以上となります!」
「ご苦労! 下がっていいぞ!」
「はっ! 失礼致します!」
ビシッと、俺達に対して敬礼し退室する伝令兵。その背が扉で隠されたのを見届け、おれは盛大なため息をつく。
「……主に港と都市部に被害が出たか。んで、襲撃してきた鳥みてぇな『魔装巨人』共を追っ払ったのが、これまた鳥……伝説の神獣ガルーダみてぇな鳥型の『魔装巨人』と、『セイントビートル』を中心にしたグリフォンの軍勢……」
はっ! なんだそりゃぁ? ワケわかんねぇぜ!
「ふぇっふぇっふぇ……訳わからんことあるもんかね? 『ゲキテウス』は護ってもらったんだよぉ、『聖域』の者達になぁ~?」
「婆? んじゃなにか? 俺等の知らねぇとこで事が起きていて、それを『聖域』の連中は察してるって事かよ?」
このしわくちゃの『人間』の婆は、『ゲキテウス王国』の賢者、ウォーラル。世の三賢者と謳われ、古くからこの『ゲキテウス王国』の重鎮として代々の王。つまり……この俺、『シャイニング・レオナード』の先祖を支えてきた奴だ。
『人間』でありながら『不死』の秘術を編みだし、体現している化け物染みた婆だな、残念ながら『不老』とまではいかなかったようだがよ。
「誰が化け物じゃ! このケツの青い子獅子めが!?」
「おぉ、悪い悪い! で、その『聖域』の連中だがよ……」
ちっ、相変わらず察しが良すぎる婆だぜ。俺の考えてる事が直ぐにバレちまう。年の功には勝てねぇもんだ。
「ふんっ! レオ坊や。お主も見たであろう? 聞いたであろう? あの『ジスオウフェル』の氷漬けにされたクラーケンを、先日この王都の空に現れ、魔導師団長の使い魔をあっさり振り切ったという四羽の鳥の事をなぁ~?」
ふぇっふぇっふぇと愉快そうに笑いやがる婆……薄気味悪い奴だぜまったく……だが、確かに俺も『ジスオウフェル』の漁師達を襲った、バカでけぇクラーケンの氷像をこの目で見てきた。なんつってもあの港で獲れる魚はうめぇからな。報告を受けていの一番で見に行ったんだ。その時は、ウチの魔導師団長にこの婆も一緒だったんだが……
「し、信じられません……これほどの巨体を一瞬のうちに氷漬けにするなんて……」
「それだけじゃあないねぇ~ほら。この婆の骨と皮だけの腕でも、片手で持ち上がるよ?」
ヒョイと、その氷像になったクラーケンを軽々と持ち上げる婆に同行してた騎士団の連中も目をまるくして絶句したもんだ。
「あわわ……重力魔法まで、じゅ、術者が側にいないのに!?」
ペタンとその場で腰を抜かしてた魔導師団長のエルフが印象的だったぜ。聞けば重力魔法ってのはその制御が難しい事から、使える術者も少なく、またその術者が側にいないと解除されるのが一般的なんだそうだ。漁師達から話を聞けば、「アリサ」とか名乗る女神に助けられたとか言いやがる。まぁ、「神の力」って言われりゃこのクラーケンの事も納得できる。ああ、それはいい。
しかしだ! つい先日にこの『ゲキテウス』の上空に大きな力を持った四羽の鳥らしき魔物が旋回してやがった。その四羽はおそらく北から飛来してきたと思われるが、詳細はわからねぇ……そのまま通り過ぎるのかと思いや、何故か知らねぇがこの王都を観察でもするかのように、ぐるぐると旋回しやがってよぉ? 正体を探るべく魔導師団長の使い魔を接近させたんだが、そうしたら途端にとんでもねぇ速度で南にすっ飛んでいきやがった。
「あの鳥共は『聖域』の奴等なんだろう婆? この王都を偵察してたんじゃねぇか?」
「ひぇひぇひぇ♪ そうじゃろうなぁ~レオ坊や。お主はそれをどう考える?」
あ~? そりゃオメェ、その後そう日を空けず『魔装巨人』共が襲って来やがったんだぞ? 普通に考えりゃ『聖域』が仕掛けて来やがったって思うだろうが?
「これだから単細胞って言われんのさぁ~あんたは。その『魔装巨人』の襲撃から国を真っ先に護ったのは何処のどいつだい?」
「さっき言ったガルーダみてぇな『魔装巨人』に『セイントビートル』だろうがよ? あ、待てよ? んじゃなにか? 婆はそいつ等こそが『聖域』の連中だってのか?」
なに言ってんだこの婆とか思い、さっき口にした連中を思い出す。そうだぜ、アイツ等が来てなかったら被害はもっと拡大してた……つーことはだ、俺達は護られたってことに他ならねぇわけで……
「そうさね。いいかいレオ坊や? 『聖域』は神とその使い達の淵叢だよ? そして今。その『聖域』が表立って動いている……この意味をよぉく考えてごらん?」
……俺は婆のその言葉に、懐から朋友、ゼオンからの手紙を取り出し、読み返した。
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【長い時】~獅子王の守り人~《ウォーラルview》
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長かったねぇ……ようやく事が動き出したよ……わたしゃ一体どれほどの歳月を過ごしたのか? ようやくじゃ、ようやくわたしの罰も終わる……もう少しさね?
「……婆、するってーとあれか? ゼオンが送って来やがったこの手紙に書かれてる、魔王共が復活するってぇのか?」
「それだけじゃあないだろう? あの『教団』のことを忘れちゃあいけないよ?」
わたしはウォーラル。この『ゲキテウス』で王を務めるこの単細胞の子獅子のお守りをしている婆だよ。中には『魔女』だ『賢者』だの言う輩もいるがねぇ~? わたしなんざ今噂の『聖域の魔女』に比べたら、そこら辺にいる婆となんら変わらんさね。
まぁ、『不死』な分、長生きだけはしてるからねぇ、ふぇっふぇっふぇ♪ なんせこの『ゲキテウス』の建国から携わってるんじゃよぉ? どうだい、中々にすげぇ婆さんだって思ったろぉ?
……さて、なんだっけかね?
あぁ、そうだねぇ。わたしがこのレオ坊やのお守りをしているって話だったねぇ? 『獅子王』って種族のレオ坊やは、そりゃあ名に恥じず立派な獅子さ、まだまだ浅慮なとこのある単細胞だけどね? 何者をも恐れず立ち向かうその豪胆さ。弱きを助け、強きを挫く正義感と優しさに、他人の話をしっかり聞いて考える事のできる、民思いの王だよ。
そんなレオ坊やを支えてるのが、臣下達と、わたしってわけさ。おかげさんで、この『ゲキテウス』は最も治安がよく、住みやすい国だって謳われるようになったのさ。
……だけどね、最近その平和を崩そうとしている輩がいるのさ……それが『ディード教団』の連中だよ。あの連中、おかしいのさ。
「あの過激な宗教団体か、狂ってるとしか思えねぇよな。魔王ディードバウアーを復活させてこの世界をぶっ壊すだの」
「ああ、確かに『亜人』達が『人間』に虐げられていた時代もあったのは事実さね……でもねレオ坊や、それはいつの話だい?」
そう、今じゃ何処に行っても『亜人差別』なんてしている方が珍しいんだよ。それなのにあの連中はどうして、教団を作り上げる程に人数が増えた?
「坊や? これはまだ憶測だけどね、教団の連中は魔王に利用されてるんじゃあないのかい?」
「……おい? 婆、その言いぶりだと魔王ってな既に復活してるって事にならねぇか? いや、マジにあり得るのか……」
ボリボリと頭を掻くレオ坊やは、やると決めたら徹底的にやるタイプだからねぇ、その分しっかり情報を集めて、精査してからでないと駄目だと教えてやったのが懐かしいさね。
「悠長にしてる暇はなさそうだが、情報がほしいぜ。ゼオンに一度、その『聖域の魔女』とか言う女との会合の場を用意してもらえるよう頼んでみるか?」
「そうさね、それがいいだろう。『教団』の調査も進めるんだよ?」
応と、返事してでかい図体に見合わない小さな机に向かい、筆を取るレオ坊やだ。わたしゃそんな坊やの背を眺め、一人思う。
(聞くのと、実際に体験するのではこうも違うもんかね? わたしに残されてる時間はそう長くはないだろうが……ふぇっふぇっふぇ。行く末を最後まで見届けたいもんだねぇ~)
わたしが受けた罰。姪っ子にせがまれて、禁忌と知りながらもあの場所へと連れ出してしまった……あの日に消された記憶も戻ってきたよ。本当に、長かったねぇ……だが、これからが正念場さね。わたしゃ知ってるよ、これから全世界を巻き込んだ大きな戦いが起こる事をね?
「なあ、婆よ? 事態が逼迫してるってのは俺もヒシヒシと感じちゃいるんだがよ? 実はゼオンからの手紙を読んでからずっと気になってる事があんだわ」
「おや、なんか下らない事を言い出しそうだねぇあんた? いいさね、聞いてあげるよ。なんだい、その気になる事ってのは?」
こういうときにレオ坊やが言おうとしてるのは、大抵どうでもいいような事だってのは、今までの付き合いから察せるんだよぉ? ふぇっふぇっ、まぁ、余計な事を考える余裕があるだけマシなんだろうねぇ。
「あ~この「余談だが~」って件のとこだぜ。「アリサの嬢ちゃんのおかげで最近は飯が美味いぜ? 今度時間作って食いに来いよ? 奢るぜぇ~?」とか!? 気になって仕方ねぇぜ!」
「ひゃっはっは! なんだいなんだい? やっぱりそんな事かね? そうさねぇ~わたしも風の噂で聞いただけなんだがね? 『聖域の魔女』様はそれはそれは大層な料理上手らしいよ?」
あひゃひゃ♪ 『セリアベール』の『氾濫』の応援に出向いた兵達も、解決記念の祭りでたらふく食って来たらしいしねぇ?
「くそぉ~羨ましいぜゼオンの野郎ぉーっ!」
「ふぁっふぁっふぁ♪ そう思うんなら、問題解決して奢ってもらえばいいさね。頑張りなレオ坊や?」
叫ぶ坊やを笑いながら、わたし達は今起きている問題の対抗策を考えていった……はてさて、『聖域の魔女』様はこの『ゲキテウス』に来てくれるかねぇ?
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【鍵は】~虎人くんに!~《にゃるろってview》
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さて、取り敢えず『魔装戦士』達による襲撃はしのいだ。
シーベルさんとセルフィがうまいこと町人達を避難誘導してくれたのと、『猫兎』達と『偵察部隊』が『魔装戦士』達を町から引き離して戦ってくれたおかげで、人的被害はゼロで済んだよ。
いくつか建物や家が壊されちゃったけど、そこは私がちゃちゃーっと修復しておいた。
その後、町長さんともお話して、事情を説明。驚きながらも町長さんや、各ギルドに勤めている支部長? まぁ、『リージャハル』に支部を置く各ギルドの代表者達だね。彼等も理解してくれて、私達のことを応援してくれた。
私はそんな彼等の気持ちに嬉しくなって、緊急避難先を町長のお屋敷の地下に作って、危ないと感じたら町人達を避難させてほしいって頼んでおいたよ。あんな自己中な神のせいでこの街の人達が傷付くなんて嫌だからね!
《にゃるろって様~『ハンフィリンクス』の港は結構被害が出たようだぜ?》
《ですが、何隻かは船が動いておりましたわ!》
「わかったにゃ。やっぱり船はやめておくのにゃ~稼働数が少ないなら、私達がお邪魔するのも気が引けるしね」
この『リージャハル』の対岸。『ゲキテウス王国』の玄関口とも言われる『ハンフィリンクス』の様子を見に行ってもらってた翼とルロイヤが、このシーベルさんのお宿に戻ってきて、私に向こうの港の状況を教えてくれる。港が無事だったなら、私達も定期船を利用して『ゲキテウス』にお邪魔するつもりだったけど、数隻しか動けないのであれば、他のお客さんに譲るべきだ。
「やはり港か。それに主要都市も狙われたんだろう?」
「ああ、『教団』の狙いは各大陸の港を攻撃し、次いで国家中枢を攻撃することで、それぞれを孤立させる事だったんだろうな」
「俺は、知らされていなかった……教団の幹部にとって、教団員など使い捨ての駒でしかないということか……」
この『リージャハル』も含め、襲撃を受けた都市には教団に所属している者も少なからずいたはずなのだ、しかし『魔装戦士』達はそれを意に介する事なく攻撃してきた。レジーナとドゥエが考察する教団の目的を予め知らされていたならともかく、ガッシュくんのあの怒りようから察するに、他の教団員も知らされてなかったのだろう。手段を問わず、味方すら巻き込むなんて……とんでもないヤツだ!
「船はやめるって、にゃるろってちゃん~それならどうやって『ゲキテウス』に渡るの~?」
「それでしたら、翼様達の背に乗せてもらうというのは如何でしょう?」
「だな。にゃるろって様がアリサ様だってのはバレてねぇだろうし、ここは隠し通す方がいいぜ」
ミミがそう問えば、シーベルさんが『偵察部隊』を見て提案する。ウノはそんな二人の意見に頷き、翼、ルロイヤ、ドゥエに目配する。
「そうだにゃ。ほんとはもうちょっとのんびり旅を続けたかったけど、そんなこと言ってられなくなってきたし、もう一気に『ゲキテウス』の王都まで行っちゃうのにゃ。王様に会って状況を伝えないと!」
おそらくだが、この状況に一番戸惑っているのが『ゲキテウス王国』だろう。勿論彼等なりに情報収集はしているだろうが、私達『聖域』と接点のない王国だ。ゼオンからの手紙で魔王云々の事を知っているかもしれないが、半信半疑なのではなかろうか?
そこで私達が直接会って事情を説明して、理解と協力を仰がねばならない。予想外の強襲でだいぶ予定を繰り上げることになってしまったけれど、致し方ない。
「バルドくん達『黒狼』も聖女に『ゲキテウス』まで『転移』させるから、そこで合流するのにゃ。んで、一応、はいこれ。レジーナ受け取って?」
「おや、これは……ゼオンからゲッキーに宛てた手紙かい? にゃるろってちゃん?」
ヒャッハーくんが『ゲキテウス』方面のマップを埋めてくれたおかげで、私自身まだ行ったことのない、オプションを飛ばしたこともない『ゲキテウス』への『転移』が可能になった。そこに『黒狼』達を聖女が『転移』させて、私達と合流する。
そして私には『教団』の一味が接触を図ってくると思われるため、『ゲキテウス』の王、『シャイニング・レオナード・ゲキテウス』と会う事は叶わないかもしれない。
「その『教団』の一味に、ガッシュさんと一緒に本部へと連れて行かれるわけですね?」
「ふふ、そこでガッシュが持った小型の転移装置の出番よね?」
「アリサ様が信用して託す魔装具です……ガッシュさん、そのこと忘れないで下さいね?」
……なので、ゼオンから預かった手紙はレジーナに渡しておく。『猫兎』達はゲキテウス王と顔馴染みだってことだから、きっとすんなり会えるだろう。
そして今、モモとニャモが言った通り、『教団』の思惑に沿って『にゃるろって』は『聖域』の弱味として連行される。ガッシュくんと一緒に教祖様の『エリクシル』と、裏にいるであろう『技工神ロア』の待つ『本部』にね? そこまできたら後はガッシュくんが魔装具を起動させるだけだ。
私が作っておいた魔装具。『おいでませくん』だ。これはぶっちゃけると、『引き寄せ』の魔法をこめた物で、予め指定しておいた人達を使用者の側に引き寄せる効果があるスグレモノ♪
「無論だネネ……このガッシュ。『誉』の一員として、私の心をお救いくださったアリサ様の信頼に、全霊をもって応えると、敬愛する『白虎』様に誓おう!」
ネネの真剣な顔付きに、同じく神妙な表情で決意を誓うガッシュくん。彼が『教団』の一味だったこともあり、やはり心配なんだろう……「もしかしたら裏切るかも……」ってね? でも『神眼』で覗く彼の心の内は一切の嘘偽りのないものだし、心配いらないと思うよ?
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【今こそ!】~恩義に報いる時!~《ルヴィアスview》
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「──と、言うわけだ諸君。遂に事態が動き出した!」
「この事態に対し、我等『ルヴィアス魔導帝国』はどう動くべきなのか? 本日の議題はその一点のみ!」
やあ、みんな久し振り~♪ ルヴィアス皇帝陛下のおなりだぜぇ~? なんてな!
さて! 今回はそんな風におちゃらけてもいられない状況だ。と言うのも、俺達の帝国にもロアの『魔装戦士』共が襲撃してきたからに他ならない。
まぁ、あのクソババアこと『ヴェーラ』の一件以来、警戒を強めてたから、被害はほとんど無いに等しい。襲撃してきたのが『偵察型』っていう、戦闘力の乏しい『魔装巨人』だけだったってとこも大きいんだけどな。
それにしてもだ。まったく、ロアの野郎~いつの間に復活してやがったんだ? しかも話に聞いたあの黒フード共の親玉とつるんでるかも知れないだってぇ~?
「ふふふ、皇子よ。これは議題ではなく、決定事項の通達であろう? 違うかね?」
「うむうむ。因みに訊くが、あの御方はなんと仰られていたのかな?」
さて。その件も含め、朝っぱらに襲撃してきやがった『魔装戦士』共。ひいてはその背後にいるロアのクソバカ野郎。んで、アリサ様の報告にあった『ディード教団』とか言う、十中八九ロアに利用されてる連中に対して、俺達帝国はどう動くかって議論を、諸侯達と擦り合わせしてるんだが。
「ふふ、察しがいいな? 流石はハイジャフェリラ王にディベリオン王だ」
俺が治めるこの北方。『ルヴィアス魔導帝国』には四つの国が属国として存在している。
聖女のアリサ様の報告にパーティーの再編成。そして、俺達『ルヴィアス魔導帝国』と、ゼオンのとこの『セリアベール』に託された『世界防衛』! こいつはどでかい案件よ? こうしちゃいられんと、皇帝の俺が自ら属国にすっ飛んで行っては、各王をこの帝都に連れてきたんだわ。
改良してもらった『言霊の石』で連絡を取り、事態を察した王達は快く招聘に応じてくれたよ。各国にはそれぞれ大きな港を構えてるんだけどさ、四国共その港が狙われたらしいんだわ、後、城ね? 今、俺の養子のルォンと話してる『ハイジャフェリラ』と『ディベリオン』って国は、この北方大陸の北西と北東に位置する国。『ランバード領』ほどじゃないにしろ、どっちも厳しい寒さの中で懸命に生きてる。
そんな似たような境遇からか、結構な仲良し組だったりすんだよね。『ハイジャフェリラ』の王は壮年のエルフ男性。って言っても、千も生きてないから、俺に言わせればまだまだ若僧だけどさ。
んで、『ディベリオン』の王は珍しく精霊ノーム。まぁ、元々北東の地は大昔から精霊達の棲処でさ、俺が平定するまで、各国の争いから自衛してたんだ。
「互い長生きはするものですなディベリオン王」
「ふはは、いやいやまったくだなハイジャフェリラ王よ」
今じゃ二人共にどっぷり人の俗世に浸かっちまってさ、一緒に酒飲んだりメシ食ったり……まぁ、気心知れた友人みたいな関係を築けてると思う。
「今朝の襲撃に対し、早くも対策を練られたアリサ様方、神々の慧眼は流石でございますな……」
「うふふ♪ 神々のおかげで私達『ルヴィアス魔導帝国』の文明は飛躍的に向上致しましたものね? 魔王等にいいようにやられてなるものですか」
続いて、うんうん頷いてはニヤリと不敵な笑みを見せる、『人間』のオッサンが『ガーブルム』の王だ。そして、彼の言ににっこりと微笑んで中々の強気発言する、同じく『人間』のうら若き女性、『ノヴェダリュス』の女王だね。
「うむ。アリサ様達は既に魔王達に対抗すべく動き出しておられる! そして、そのアリサ様より我等に協力要請が来ているのだ! 皇帝陛下、その内容を諸侯にご掲示下さい!」
「ああ、よく聞け! 我が誇り高き『ルヴィアス魔導帝国』の諸侯達よ! これなるは神の啓示!」
ルォンの俺を呼ぶ声に玉座から立ち上がる。集まってくれた諸侯にはやっぱり、アリサ様本人の声が一番通るだろうって思って、映像通信の内容をそっくり記録した『記憶の宝珠』を起動する。諸侯達はそれに気付くと、ザッ! とその場にひざまづき敬意を示す。それを見届けたルォンと俺も倣い、一緒に内容を確認するのだ。
「おぉ……ガルディング公の小倅が……随分立派になったものよ……ふふふ、年甲斐もなく滾ってきおるわ!」
「ゼオン殿もまた覇気に満ちておられるな!」
「凄いわね! 女神様だけでなく『懐刀』の皆様まで!」
「なんという興奮だ! 『セリアベール』だけでなく、『聖域』も含めた共同戦線にてこの世界を護ると言う大任!」
パーティーを再編して、各組に別れ動き出すアリサ様達の姿に、ゼオンと俺の返事を見て、聞いた諸侯達が「うおおぉぉっ!!」って感じでやる気を漲らせて立ち上がる!
「遂にアリサ様達へ受けた恩義を返す機会が訪れた!! 諸侯達よ立て! 我等はこれより『セリアベール』及び、『聖域』との共同戦線を構築し、女神達が愛するこの世界を護るのだ!!」
ウオオォォーッ!!
いよっし!! 俺も気張るとするか! ルォンが飛ばす檄にもあったように、俺達はまだアリサ様に何も返せてねぇからな! 後は俺のペナルティが早いとこ解除されるといいんだけど……頼むぜ~RYO!
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【セリアベールと帝国】~そして『聖域』~《ゼオンview》
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「今回は助かったぜ、恩に着るドランド! ルルリル!」
「いやなに、あれくらいのこと造作もない」「そうだよゼオン! みんな無事でよかった!」
俺とビットさんが聖女のアリサ嬢ちゃんに連れられて向かった『ファムナ村』。そこでバルド達『黒狼』と、リールにフォーネ、女神様達に、リン様、珠実様、シドウ様。バルガスさん、ネヴュラさんと合流し、ご先祖達の眠る『聖柩』を訪れ、無事に偉大なる祖先にも会えて、『憑依』って形だが、行動を共にすることもできて……まぁ、順調でいいことが続いていたんだがな。
驚いた事に、その『聖柩』から出てみれば日付が変わっており、更に『魔装戦士』が襲撃を仕掛けて来たって言うじゃねぇか!?
事態をいち早く察し、動いてくれたのが『聖域』から来てくれていた『冒険者候補』達だったってのは、サブマスのエミルから聞かされたぜ。しかし、『技工神ロア』が復活してるって事実が明るみになり、俺達は作戦変更を余儀なくされたんだ。
で、アリサの嬢ちゃんに『転移』で『セリアベール』に戻って来た俺達は、先ず『魔装戦士』の襲撃から街を護ってくれた『ハンバーグ』と『フライドポテト』の皆に礼をして、各ギルドのマスター達、そして冒険者達を集め、緊急会議を開いている。
「彼等が素早く門衛と、櫓の見張り番に報せてくれたおかげで被害は建物の損壊だけで済みました。本当に感謝します」
「にゃあ~そんなことないにゃ! にゃあ達もびっくりしてるにゃ!」
「そう、だね。アタシも驚いた……一言声かけただけで、あっという間に街のみんなが防衛態勢を整えるんだもの」
「流石、『氾濫』を凌いで来た街だって感心したぜ!」
改めてエミルからも『冒険者候補』に礼を言えば、ニュイとノア、ウェズの三人が街の組織力の高さを絶賛してくれるじゃねぇか。まぁ、確かに何年も『氾濫』を乗り越えて来たからな! 防衛力の高さには自信ありよ!
「ありがとよ! さて! 皆に集まってもらったのは他でもねぇ、今回の襲撃とその裏にいる奴等から、この『セリアベール』……いや、この世界総てを護るって言うとんでもねぇ規模の大作戦だ!」
オオオォォォーッ!!
襲撃を受けて大人しくしてるような奴は、この『セリアベール』にゃいねぇんだよ? やられた分はキッチリやり返してやるぜ! 見やがれ、誰一人として臆しちゃいねぇ……寧ろ「よくもやりやがったな!?」って殺気立ってるくれぇだ。
「当然! 俺達だけでそんな事できやしねぇ! しかしだ! 北方を治める巨大な帝国! 俺達『セリアベール』の旧い朋友! 『ルヴィアス魔導帝国』!!」
ブゥゥンッ!!
『呼んだかいゼオン? こちらも諸侯達を集めて緊急の会議中さ。内容は……同じ、だよな?』
「おおっ!! ルヴィアス皇帝陛下だ! 皇子殿下に四王様のお姿も!」
俺は皆に叫びながらアリサの嬢ちゃんにもらったバングルを起動させ、ルヴィアスに呼び掛ける。すると中空に『ルヴィアス魔導帝国』の帝都内の一室が映し出され、ルヴィアス達帝国の重鎮達が一同に会して、俺達と同様の議題で盛り上がっている様子が見れる。それを見た各ギルドのマスター達も思わず驚き声を大にした。
「そして! またまた世話になるぜ! 『聖域』のみんなだ!」
ブゥゥンッ!!
『にゃあぁぁ~ん?』
『ちょ、ミーナ大先輩! それオモチャじゃねぇでっすから!?』
『はいはい。ユニ~ミーナと遊んでて?』『はーい♪』
続けて今度は『聖域』のティリア様に対して呼び掛ければ、いきなりミーナのドアップが映し出され、その横からアリスの嬢ちゃんが顔を出してミーナを回収。次いでティリア様に呼ばれたユニの嬢ちゃんもやってきては、アリスの嬢ちゃんからミーナを受け取り、このモニターに手を振ってにっこり微笑んでいった。
「「わあぁぁぁーっ!! ミーナちゃん、ユニちゃん可愛いーっ!!」」
「「あ、あ、アリス様ぁぁーっ! 踏んで下さぁぁーい! またひっぱたいて下さぁぁーい!」」
おい!? ミーナとユニの嬢ちゃんはいいとして、アリスの嬢ちゃんに対してその歓声は止めろ! 『セリアベール』が誤解されんだろうが!?
『集まっているようね? 私はティリア。神々を束ねる主神を務めさせているわ。『セリアベール』のみんなは初めましてね? 先ずは集まってくれた事に感謝を。そして、私達神々の問題に巻き込んでしまった事に、謝罪をさせてちょうだい……有り難う、そして……ごめんなさい』
「お、おお……主神様自らが……」『なんと勿体ないお言葉!』
改まった様子で俺達に深々と頭を下げるティリア様に、『セリアベール』と『ルヴィアス魔導帝国』の面々も絶句している。無理もねぇな、なんせ神々の頂点が直々に感謝と謝罪をしてるんだからよ。
「あ、頭をおあげくださいティリア様!」
『そうですわ! 私達は誰も貴女様達に憤りなどもっておりませんわ!』
「如何にも! 互い手を取り合い、この難局を乗り切りましょうぞ!」
オォォーッ!! そうだそうだ! 頑張りましょうティリア様ぁぁーっ!!
『みんな……有り難う! その心。嬉しく思うわ!』
ワァァァーッ!! っていう大歓声が『セリアベール』の街に響き渡る。すげぇ士気の昂りようだぜ!
よっしゃ! このままみんなで世界の防衛大作戦をおっ立てようぜ!
見てろよ魔王共! てめえらの好き勝手になんてさせねぇからな!
レオ「そうかよ、『聖域の魔女』ってなぁメシ作んのがうめぇのか(*´∇`)」
ウォーラル「『セリアベール』から帰って来た奴等が言うとったからねぇ~♪(*≧∀≦)」
レオ「ゼオンの野郎も最近飯が美味くなったって言うしよぉ(  ̄▽ ̄) 『ゲキテウス』にもその美味いメシ広めてもらいてぇな、婆?( ̄¬ ̄)」
ウォーラル「ひゃっひゃっひゃ♪(*´▽`) 広めてもらうんなら何がいいさね?( ´ー`) やっぱり魚かい?( *´艸`)」
レオ「魚と肉だな!ヽ(*≧ω≦)ノ どっちも俺の好物だしよぉ~♪(*゜∀゜)」
ウォーラル「ふぇっふぇっふぇ!( ^▽^) そんなこったろうと思ったよぉ~(°▽°) 『聖域の魔女』が来たら精々もてなすことだねぇ?(´・∀・`)」
にゃるろって「へくちん!( >ε<)」
モモ「あらぁん?(・о・) 風邪ですかにゃるろってちゃん?(;`・ω・)」
ネネ「大変!Σ( ゜Д゜) 上着着て温かくしましょ?(゜ω゜;)」
にゃるろって「あ~( ̄O ̄) 私、風邪ひきたくても『不変』持ってるからひかにゃ~よ?( ´ー`)」
ガッシュ「なんて便利な……(゜A゜)」
レジーナ「でも、お酒にも酔えなくなるらしいよ?(゜∀゜ )」
シーベル「それは酒好きの私達にとって重大な問題ですね((゜□゜;))」
ミミ「じゃあ誰かが噂でもしてるのかもね~♪(*`▽´*)」
ニャモ「ふふ(*`艸´) きっと『セリアベール』のみんなとかね~?(^∇^)」
セルフィ「意外とこれから行く『ゲキテウス』の王様だったりして!( ・∇・)」
ルォン「遂にアリサ様達へ恩義を返せます!ι(`ロ´)ノ」
ハイジャフェリラ王「うむ!( ・`ω・´) アリサ様のおかげで『ピザ』なる美食が食せるようになったのだ!(ノ・∀・)ノ」
ノヴェダリュス女王「私達はあの『カプレーゼ』の虜ですの!ヽ(*>∇<)ノ」
ガーブルム王「うむうむ!(*´▽`*) 我等もあのハンバーガーなる料理に魅せられた者よ!ヘ(≧▽≦ヘ)♪」
ディベリオン王「魚のムニエルやホイル焼き……( ̄¬ ̄) 我等北方の魚はどれも身が引き締まっていて美味い!(o・ω・o) それを教えてくれたのもアリサ様よ!ヽ(*´∀`)ノ」
ルヴィアス「……いや、わかるけどさぁ~( ̄0 ̄;) 食いもんばっかだね君達?(^_^;)」
バロード「ははは(^o^;) でも、襲撃を受けたの当日になんで諸侯が集まれたんだ?(・_・)」
オルファ「僕が頑張って女神様達の『転移陣』を模倣して作った魔装具のおかげだよ?(^ー^)」
カレン「この北方大陸内限定とはいえ、凄いの作ったわね?(゜Д゜;)」
エミル「はぁ~♪o(*⌒―⌒*)o ミーナちゃんは相変わらず可愛いですね!(^-^)」
冒険者○「きゃあぁぁ~♪( 〃▽〃) ユニちゃんよぉ~♪(ノ≧∀≦)ノ」
冒険者△「可愛いーっ!(´▽`*)」
アーヴィル「あの方がティリア様か(・о・)」
ビリー「確かにアリサ様と瓜二つだな(゜-゜)(。_。)」
シンシア「アリサ様の双子の妹様って話よね!?(*^▽^*)」
ゴード「ウホォォーッ!(^◇^) ティリア様にも罵られたいんおぉーっ!ヾ(o≧∀≦o)ノ゛」
ファビル「ああぁぁっ!!ヽ(´∀`≡´∀`)ノ アリス様とティリア様に、ふ、踏まれたいなぁぁーっ!?ヘ(゜∀゜ヘ)」
ディーネ「二人とも自重しなさい!L(゜皿゜メ)」 今から重要な作戦会議なのよ!?(`Д´)」
エリック「そうですぞ二人とも(-∀-`; ) 某達に様々な恵みをお与え下さったアリサ様達に報いるためにも、ここは真剣になるべきですぞ?(_ _)」
ゼオン「『七つの光』は本当に極端な面子だな……( ̄0 ̄;)」




