127話 魔女と襲来する『魔装戦士』
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【流石は『誉』の一員か?】~ガッシュ~《魔女view》
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「貴方を利用しようとしたこと、ここに深くお詫びするわ。本当にごめんなさい」
「あ、あ、アリサ様? にゃるろって様は、アリサ様だったのですか……そんな、いえ……私は、貴女を……貴女だけではなく、シーベル殿にリデル嬢……そして多くの同朋に朋友達をも、害してしまうところであったのです……目を覚まして下さり、私こそ感謝と謝罪致します!」
うむ。どうやらセルフィの予想はバッチリと当たっていたようだ。
シーベルさんのお宿で、ティリアの義姉妹の一人であるセルフィと合流した私達は、彼女のシーベルさんの娘、リデルの記憶から今のガッシュくんの様子について議論を交わし、彼が何らかの精神感応とか操作とかこう~心を操っちゃう的なのを受けているんじゃあないかと結論付けて、それならば、と。夕飯の料理にちょっとした小細工を施し、それを食べてもらったのだ。
その効果はてきめんで、なんとガッシュくんは自ら問題になっている黒フードこと、『ディード教団』とか言う教団の一員であることを明かしてくれて、更にその目論見やら、幹部やら親玉の情報に、極めつけは背後にロアがいることまで、ぜーんぶぶっちゃけてくれたのだ!
これには流石のアリサさんも、なんか彼を利用として教団本部に乗り込もうってのを隠してたのが申し訳なく思っちゃってさ、正体をバラして、ごめんなさいしたとこなのよ。まあ、先にルロイヤがバラしちゃってたんだけどね?
あい! そんなわけで。みなさんこんにちは♪ めっちゃお久し振りの魔女アリサです。なんだか最近は聖女の方ばっかり目立ってたけど、これからは私もどんどこ顔を出して行くから、よろしくね~♪
「あの、私もお聞きして良いのでしょうか? 何やら壮大な内容のようで、非常に恐縮してしまうのですが……」
「いやぁ~構わねぇよシーベルの旦那。何が起きてるかワケわかんねぇままに、騒動に巻き込まれたくねぇっしょ?」
「関わった以上、私共も全力で貴方達親子をお守りしますけれど……」
「ああ。俺達も全能って訳じゃない、それなりに心構えはしておいてくれるか?」
おっと、申し訳なさそうに私達に声をかけてくるのは、セルフィのお父さん……正確にはセルフィが記憶を受け継いだ、リデルと言う娘さんのお父さん。こと、シーベルさんだ。マジもんの執事さんらしく、めっちゃイケオジである。前世の英国紳士を絵にかいたようなダンディー♪
そんなシーベルさんは、どうも教団の話とかその目的とかを聞いて目をまるくしているみたいね? まあ、一般人がいきなりそんな話聞かされてもついていけないよね? でもウノにルロイヤ、ドゥエのグリフォン三人の言葉通り、ある程度把握しておいてもらえると、騒動が起きた時に混乱せずに済むと思うから、そのまま聞いていてもらおう。
「──そうでしたか。『猫兎』も翼殿達も……『聖域』の総出を挙げて、いや、ゼオンも……『白銀』も『黒狼』もが動いているのですね?」
「済まなかったねガッシュ、君を騙していたこと。僕からも謝罪させてほしい」
今に至る経緯をガッシュくん達とも共有して、なるほどと納得した様子のガッシュくんに対し、レジーナが『猫兎』を代表して頭を下げた。
「ま、俺っち達が『聖域』の『偵察部隊』ってのは本当なんだけどな?」
「でも、如何なさいますのアリサ様? 『にゃるろって』様としてその教団? とやらの内部に潜入する作戦は?」
うむ、翼が苦笑いしてガッシュくん達にそう言った後、ルロイヤと一緒に私を見る。できればその作戦はこのまま続行したいと思う。ガッシュくんが意識操作が解かれた今なら、味方についてもらって、サポートに回ってもらえると嬉しいんだけど……
「アリサ様、その作戦、是非とも私に協力させて頂きたい! これまで通り『にゃるろって』様を教団に潜り込ませ、一気に制圧してしまえば被害は激減するでしょう! 私にはそんな事でしか罪を償えませんが、なにかしたいのです!」
「ガッシュさん、そんなに思い詰めないで下さい。まだ貴方は罪を犯したわけではないのでしょう?」
「そうですよ~♪ あんまり気にすると~ますますその毛並みがくすんじゃいますよぉ~?」
ガッシュくん、マジで真面目だなぁ~ここに来るまでの道中で聞いた『誉』時代の苦労人っぷりは今も健在ってわけだ。シーベルさんとせルフィが言うようにそんなに自分を責めちゃ駄目だよ? でも、協力してもらえるなら甘えさせてもらおう!
「ありがとうガッシュくん。貴方のその覚悟に敬意を。それじゃ早速、作戦の詳細を詰めていこうか!」
「ゼオンさんにもガッシュさんが正気に戻ったこと報せたいです、アリサ様!」
彼に礼を述べて、引き続き『にゃるろって』の囮作戦を更に細かく決めようと、みんなに声をかけると、モモがそんなことを言い出した。
「あ~なんか今ゼオンはね、聖女と妹達とで『ファムナ村』から『三神国』の王達が眠っているっていう、『聖柩』って特殊な空間にいるみたいなのよ。そこだとなんでかしらないけど、連絡がつかないみたいなの」
「なんだって? それは、大丈夫なんでしょうかアリサ様?」
私の説明に驚くドゥエ、翼達や『猫兎』達も目をまるくしている。確かに連絡取れないのは不安だけど、『三神国』の王達が眠る墓所だし、危険はないだろう。むしろ完全に外界と遮断された世界らしいので逆に安全かもね?
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【襲来!】~『魔装戦士』~《アルナview》
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ビャーッビャービャーッ!! ウゥゥーッ!! ビャーッビャーッ!!
きゃあっ! うるさっ!? ちょっと、何ですかこのけたたましい耳障りな音は!?
《緊急! 緊急警報ダゼ!! コチラヒャッハー! 世界各地ニ『魔装戦士』出現! 繰リ返ス! 世界各地ニ『魔装戦士』出現ダ!》
お母さん達が旅立って四日目の早朝。『聖域』中に響き渡る、その非常に耳障りな警報が鳴り、私達は寝床から飛び起きました。警報に続いて聞こえてくる不思議な声に、異常事態であることを察した私は急いで身仕度を済ませます!
「アルナちゃん急ぐのです! ティリアの所に集まりますよ!?」
「はい! 直ぐに行きます!」
一緒のお部屋で寝ていたポコも勢いよく跳び起きて、素早く着替えを済ませます。お母さんが不在の間、『聖域』の指揮はティリアが採る事になっていますから、緊急時には皆、彼女の元に集まる事になっているのです。
「──わかったわ、それじゃあ貴方は『ゲキテウス王国』の防衛に当たりなさい! 皆よく聞いて、恐らく今回の襲撃は威力偵察よ! こちらの情報は渡したくはないわ、一体たりとも残さず潰しなさい!」
いけない! もう皆さん集まってティリアからの指示を受けています! 『世界樹』を守る女神の神殿の前に、私とポコも駆け付け並びます。
「アルナ、ポコ。こっちよ! 現状を説明するわ」
「ハイなのです!」「お願いしますヴィクトリア」
すると、私達に気付いたヴィクトリアが手招きをして呼んでくれました。そして彼女から色々と説明を受けます。まず、あの警報を出したのは、アリサお母さんが『無限円環』で作成した『魔装巨人』であり、『聖域』の遊撃手だそうです。
「そしてセルフィーヌが予想したように、ロアは既に復活を果たしている。それから、聖女のアリサさんからの報告で世界各地に点在している『魔装戦士』の『格納庫』に黒フードの連中が暗躍していたと言う事実。これらを総合すれば……」
「ロアと黒フード達は繋がっている……そういうことなのですね?」
なんということでしょう! 既にロアが復活しているばかりか、話に聞く黒フード達と繋がりをもっていたなんて!
「マップを見なさいみんな。『魔装戦士』達が綺麗にこの『聖域』の四方を取り囲んでるわ。一斉攻撃を仕掛けて、こちらの戦力を図って、その情報をロアに送るつもりのようね!?」
ティリアの声に私達三人は揃い、お母さんが準備してくれた『聖域』のマップを開示して現状を確認します。確かに各方角四方に赤いマークがズラリと並んでいます、その数合わせて百体はいるでしょうか?
「はっ! 笑わせやがる! たったの百体程度で俺達『聖域』の戦力を図れるとでも思ってんのか?」
「同感だ。なに、慌てる事はあるまい? ここ数日待機ばかりで退屈していたところだ」
「そうねぇ~ちょーっと遊んであげましょうか?」
「もう、大地も爽矢も朱美も! 油断大敵だよ!? ティリア様、どう動かれますか?」
それを見て一笑に付するのは『四神』の三人。なんとも頼もしいですが、玄武の水菜は彼等を窘めティリアに指示を仰ぎます。彼女は慎重ですね。
「そうね。さっきも言ったけどこちらの情報は渡したくないわ。グリフォン達に動いてもらいましょうか?」
《いぃぃやっほぉぉーぅっ! 出番来たぜぇーっ!》《おっしゃぁぁっ!》
《任せてくれティリア様ぁーっ!》《いっちょ暴れてやるぜぇーっ!》
ぐわーぐわー!! と、指名を受けたグリフォン達が猛ります。なんとも血気盛んな事で。彼等はいつもガルーダのゼーロの指揮の下、訓練に勤しんでいましたから、その成果を出せる場が与えられて嬉しいのでしょうか?
《いいだろう。では我等隊長格は手を出さず、指揮に専念しようぞ?》
「ええ、それでお願いねゼーロ。そして水上から来る相手には……」
「そこはぁーっ!」「我等にお任せあれぇーっ!」
ババァーンッ!! とか、変な擬音が聞こえて来そうな妙なポーズを取り合うムラーヴェさんとガウスさんがティリアの前に躍り出ます。あの、そのポージングにはなんの意味があるのですか?
「ここらでひとつぅーっ!」「俺達もやれると言うことをぉーっ!」
ビシィッ!! 見せねばなりますまいーっ! って、ああ……はい。貴方達もですか? 『聖域』の皆さんのために少しでもお役に立ちたいのですね? とても殊勝な心掛けなのはわかりましたから、ポーズ取らなくていいですよ?
「ガウガウとムラっちょでっすか~? いいんじゃないでっしゃろかティリア様~? やらせてみまっしょい!」
「そうね。あんた達も『無限円環』で頑張って来たんだし……」
《否。お待ちをティリア様。水上、水中の敵ならば、それは我等の領分に御座います》
「この声……『聖域の水蛇』? 悪いけど、あんた達じゃ流石に『魔装戦士』相手じゃ分が悪い……って、うえぇぇーっ!?」
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【いつの間に進化?】~『海王竜』~《ヴィクトリアview》
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ザパアアァァァーッ!!
アリスさんが立候補した二人に水上から来る『魔装戦士』の相手を任せてみたら? と話し、それをティリアが了解しようとしたところで待ったがかかった。
大きな水飛沫をあげて『神々の雫の泉』からせりあがってきた『聖域の水蛇』……と、思われたその姿は、なんてこと!?
《我等も日々の研鑽の果て、更なる進化を遂げまして御座います……》
「なな、なんですって!? 貴方! もしかして『海王竜』じゃないの!?」
はあぁぁぁーっ!!? マジでぇぇーっ!?
なんとはなしに話すその『聖域の水蛇』と思われた彼! その姿は更に大きくなり、青龍の爽矢程になって、蛇というより竜の顔に近しい!
そんな以前の姿とはかけ離れた巨躯と、ずおおぉぉって、見下ろしてくる竜然りとしたその風貌。何より私達にも優るとも劣らない強い『神気』を纏う彼を見た全員が驚愕しているわ!
「いやいや、ホントどうなってんのあんた達は? こないだ『聖域の水蛇』に進化したって思ったばかりなのに……」
「な、なんにせよ頼もしいではありませんかティリア様。ここはお任せ致しましょう?」
本当にそれね? 彼等は元々『ツインヘッドイール』っていう弱々しい魔物だったって聞いているわ。それがこの短期間で二段階も進化を果たすなんて!? ティリアと同じ感想を覚えた私は頷くことしかできない。でも、そうね。ガルディング公が言うように任せて見てもいいかもしれないわ。
ドシュウゥゥーッ!! バチィィッ!!
「きゃあぁぁーっ!!」「うおぉぉーっ!?」「こ、攻撃を受けているぞ!?」
「落ち着きなさい! 同朋は皆『妖精国』に避難を! ネハグラさん、ジャデークさん! 貴方達もご家族を連れておゆきなさいな!?」
などとのんきにしてる時間はないようね? 『魔装戦士』達が放つ魔法が『待ち望んだ永遠』に阻まれては弾かれる音が鳴り、妖精達が怖がってしまっているわ! 素早くティターニアがネハグラさんとジャデークさんの二家族も一緒に『妖精国』への避難を促した。
「誰がどーだとか言ってる場合じゃないんだぞ? グリフォン! ガウガウ、ムラムラ~『海王竜』達と協力して迎撃するんだぞーっ!?」
「「応さ!」」《《任せといてくれジュン様!》》《委細承知!》
バシュバシューッ!! バサァッバサバサバサーッ!! ザバアァァーンッ!!
ガウスさんとムラーヴェさんが『飛行魔法』で、グリフォン達がその翼をはためかせ、『海王竜』が魔装具で『転移』して、それぞれ『魔装戦士』達に向かっていくわ!
「よし! 迎撃は彼等に任せるとして、アリサ姉さんはこの状況を視てる? アリサ姉さん応答して?」
ザザッと、少しだけノイズが鳴り、身に付けたバングルに呼び掛けるティリアに、アリサさんの声が返って来たわ。
『はいよこちら魔女アリサ。ちょっと待って、今映像通信に切り替えるわ』
ブゥンッ……アリサさんの声がそう応えると、直ぐ様私達の前に、最早見馴れたモニターが展開される。あら? アリサさん、変身を解いているのね? そこは何処かの街の建物の一室かしら?
「ヒャッハーくんを自由にさせたのは正解だったね。こちら『リージャハル』よ、夜明けと同時『魔装戦士』の襲撃を受けているわ。『偵察部隊』と『猫兎』達が今迎撃に当たってる」
なんてこと! 先のヒャッハーさんの言った事は間違いじゃなかったのね? 世界各地への同時攻撃……とんでもない物量戦をいきなり仕掛けて来るなんて!
「おねぇちゃん! 大丈夫!? 怪我とかしてない!?」
「ありがとうユニ。大丈夫よ? 今回襲って来た『魔装戦士』達は十中八九偵察が目的でしょうね? 大して強くないし、様子見ってとこだと思うわ。んで、襲撃を受けてるのは主要都市が大部分のようね?」
ユニさんの心配する声ににっこり微笑んで安心してと呼び掛けるアリサさんは、『世界地図』を開き、私達にも現状を伝えてくれる。その地図に記された無数の赤いマークの分布を見れば、この『聖域』に南の『セリアベール』、西の『ゲキテウス王国』、北方の『ルヴィアス魔導帝国』にも集中しているのがわかる。
「アリサ様。『エルハダージャ』には『魔装戦士』が出現しておらぬのですか?」
「そうね、不自然な程に『エルハダージャ』には『魔装戦士』が現れていないんだけど、これは『ココノエ』が事前に『格納庫』からの起動を防いでいたからでしょうね。ふふ、他にも何か秘密がありそうだけどね……」
ガルディング公が皆が思ったであろう疑問を訊いてくれたわ。私達にも『エルハダージャ』で発見した、ロアの『魔装戦士』の『格納庫』の話は報告で知っていたけれど……『エルハダージャ王国』の女王はただ者じゃなさそうね。
「それと『ファムナ村』に行ってる聖女とは連中が取れない状況だけど、これは『三神国』の王達が眠る『聖柩』に移動してるからだから、どうか慌てないで。それより、『ゲキテウス』方面に少し応援飛ばしてあげてくれる? ヒャッハーくんだけじゃあの広大な大陸はカバーしきれないわ」
了解! ティリアがアリサさんの指示を受けて返事を返したわ。『三神国』の王達も気になるけれど、確かに『ゲキテウス』方面は手薄だわ。さて、誰を向かわせるのかしら?
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【久々の鑑定】~強行偵察型~《魔女view》
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「『神の護り手』! みんな起きなさい! 敵が来るわ!」
「大丈夫さアリサ様! 皆起きているよ!」「まったく~気持ちよく寝てたってのにーっ!」
ここは『リージャハル』のシーベルさんのお宿。ガッシュくんを味方に付けた私達は、『にゃるろって』の囮作戦をそのまま続行するべし、との結論で意見が一致し、明日の『ハンフィリンクス』行きの定期船に乗るため、宿泊していたんだけど、魔素の微細な動きを感知した私は咄嗟に街を『神の護り手』で覆い、一緒に寝ていた『猫兎』達を叩き起こす。
しかし、私と同じく魔素の動きを察したのだろう、彼女達は既に目を覚ましており、各々戦闘準備を始めているじゃないの。ふふ、流石に『無限円環』で鍛えられただけはあるね。頼もしいよ!
「アリサ様。私達『偵察部隊』先行致しますわ! 既に翼達も上がっているようですし!」
「ええ、お願いねルロイヤ。情報は逐一報告してちょうだい」
こういうとき動きが素早いのが『人化の術』で人の姿を取っているルロイヤ達だ。なんせ元々グリフォンであり、『人化』を解けば直ぐ様元の姿で行動可能なわけで、チマチマとした準備要らず。
窓の外から見上げる空には、早くも翼、ウノ、ドゥエが旋回しており、ルロイヤを待っているようだ。このまま初手は彼等にお任せするとしよう。
「アリサ様は出ないで下さいね? もし昨日の話が本当なら、『にゃるろって』様イコール、アリサ様だと勘づかれるわけにいきませんから!」
「そうね。ここは私達に任せて、他グループと連絡を取り合って下さい!」
「そうだね、一応護衛のガッシュと一緒にいてくれるかい?」
ネネとニャモが準備を整え、私にそう言ってくる。そうだね、これから黒フード達の懐に潜りこもうってのに、私がにゃるろってであることを知られるわけにはいかない。レジーナの言う通り、ガッシュくんと合流しておくとしよう!
「えぇっと、『世界地図』に『監視カメラ』と……了解。それじゃあ悪いけどお願いね! ガッシュくんは起きてる? 私達の部屋に来て!」
私は二人の言葉に頷き、この突然の事態に各国、各街の状況を知るべく二つの魔法を展開しつつ、ガッシュくんに映像通信を飛ばす。
「うおぉっ!? アリサ様!? 一体何事ですか!?」
「話は部屋で説明するから! 急いで!」「りょ、了解です!」
よし、これでガッシュくんも来るだろう。おや? 『ゲキテウス』方面には行ったことないのに『監視カメラ』ができるぞ?
《ヘイッ! マスター♪ マッピング出来テナイ地域ヲ飛ンデオイタゼ!
ツイデニ、『聖域』ニモ『魔装戦士』出現ノ報セヲ流シテオイタ! 今ティリアガ指揮ヲ採ッテイルゼ?》
はて? いつの間にって思っていたら、私の横に映像通信が展開し、ヒャッハーくんからの通信が入った。
「そう言うことか。ありがとねヒャッハーくん。そのままティリアの指揮下に入って動いてちょうだい」
《OK! 丁度今『ゲキテウス』方面ノ防衛ヲ任サレタトコダ! エネミーヲ殲滅シテクルゼーッ!》
うむ、有能な『魔装巨人』だ。さて、それでは改めて『世界地図』を確認して状況を見てみよう。
ドオォォーンッ!!
《アリサ様、何体か『魔装戦士』をぶっ倒して見たが、攻撃は大した事ねぇみたいだ! ただ、逃げ足が速いぜ!》
「恐らく偵察部隊だ! 鳥に姿が酷似しているのはそのためだろうね!」
翼とレジーナの連絡に、この『リージャハル』上空で戦う彼等の方にも『監視カメラ』してみる。ふむ、なるほど。確かにレジーナ曰く「鳥を模した」戦闘機タイプの『魔装戦士』群だ。聖女が『エルジャ村』で発見した『格納庫』に置かれていた人型ではない。
「アリサ様! お待たせして申し訳ない! ロアの『魔装巨人』が襲撃してきたのですな!?」
「そうなんだよ! これから鑑定してみるところだけど、ガッシュくんは情報持ってる!?」
「あれは『偵察』が目的の機体だと聞いております! あ、シーベル殿とリデル嬢も既に事態を把握して動こうとしておりますが!?」
「そっか! あの二人には町人達の避難を誘導してもらおうか! 翼達と『猫兎』には街に近付けないように指示出すよ!」
ピコーン。
『『魔装戦士』強行偵察型。『技工神ロア』の造り出した飛行特化型の『魔装巨人』であり、敵状偵察が主目的。そのため、攻撃能力は低い。ただ、その飛行速度はかなりのものであり、逃さず倒すことは難しい』
ふむ。ガッシュくんの言った通りだ。ロア達もまずは様子見ってとこかしらね。久し振りに聞いた『鑑定』のピコーンを聞き、私はロアと『教団』の目的が様子見であると察した。『世界地図』上に無数に出現したこの赤いマークは各主要都市、国家に集中しているから、ロアが現在の各国家戦力を図るべく差し向けたのだろう。
『……アリサ姉さん応答して?』
「はいよこちら魔女アリサ。ちょっと待って、今映像通信に切り替えるわ」
キャーッ!! うわああーっ!! と、何の前触れもない『魔装戦士』の襲撃と、それを撃退するために四羽の鳥に、五人の冒険者が街近くの上空で繰り広げる戦いに悲鳴を挙げて逃げ惑う町人達。『神の護り手』で街全体を護っているので被害は出ないと思うが、万が一があっても困る。ここはセルフィとシーベルさんが上手く町人達を避難させてくれることを願おう。
また翼達と『猫兎』達にも『魔装戦士』達を出来る限り街に近付けないようにお願いもしておく。そんな矢先『聖域』のティリアからバングルを通しての連絡だ。私は直ぐに映像通信を展開、『聖域』の状況も確認したかったのでタイミング的にバッチリだね。
そしてティリアの話を聞くに、数こそ多いものの、この『リージャハル』と同じく偵察目的の『魔装戦士』が大部分らしい、中には人型タイプもいるらしいが、その数は少なく、グリフォン達にガウスとムラーヴェ、そしていつの間にか更に進化を果たした『聖域の水蛇』こと、『海王竜』五体が迎撃に当たってるそうだ。
(どーしたらうなぎが蛇になったり竜になったりすんのよ?)
等と思いっきりツッコミたいけど、今は戦力が増えた事に素直に喜ぶとしよう。
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【迎撃!】~逃がさねぇぜ!~《翼view》
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「一応『神の護り手』で街は護っているけど、出来る限り近付けさせないで!」
《了解! 聞いたなルロイヤ、ウノ、ドゥエ!? 奴等を押し返すぜ~!》
《畏まりましたわ!》《オッケー! 軽く捻ってやるぜ!》《油断するなよ皆!》
散開! ブワアァァーッ!
アリサ様の指示に従い飛行型の『魔装戦士』共に向かう俺っち達。アイツ等の目的が俺っち達と同じ偵察だってんなら、一体たりとも逃さねぇ! そう易々と情報を得られると思ったら大間違いだって教えてやるぜ!
ダダダダダッ!!
あんだぁ? なんか撃って来やがったぞ? 『機銃』ってやつか! 射速は速ぇが、これなら『無限円環』で女神様達が用意した訓練用『魔装巨人』の方がよっぽど強い!
《おらよっと!》
ドォォーンッ!!
正面から反攻戦仕掛けて来るとかアホかよ? 機銃をかわし、軽い『魔力弾』であっさり落ちるコイツ等はマジに大した事ねぇ、だが足が速ぇな!
「翼くん達! 逃がしてしまっては厄介だ! 上手く包囲できないかい!?」
《あぁ! 任せろレジーナ! 逃げ足ばかり速いこんな奴等にはだな……》
バサァーッ!! ドシュドシューッ!! レジーナ達『猫兎』も『飛行魔法』を駆使して空を縦横無尽に駆け回る! 俺っち達鳥が弧を描いて飛ぶのに対し、カックンカックンとまぁ、全方向に角を残してその軌道を変えやがるのは大したもんだ。勿論俺っち達もやろうと思えば出来るけどさ、加速と制動の衝撃が結構キツイんだよな。
《ドゥエが罠を仕掛けますわ! 皆さん注意を!》
《了解だ! 頼むぜドゥエ!》「はーい!」「あれをやるのね!? 了解したわ!」
正面の『魔装戦士』群のど真ん中に突っ込むドゥエだが、これはルロイヤが叫んでるように罠を仕掛けるための動きだ。ウノ、ミミ、ニャモもそれを理解しそれぞれが散らばる『魔装戦士』共をドゥエの方に向かうように牽制する動きにシフトする!
《食らえ! 『重力領域』!》
ズオオォォォー……
敵陣のど真ん中で発動させるドゥエの魔法『重力領域』! その範囲内にいた『魔装戦士』共の飛行速度が極端に落ち、容易に追い付くことが可能になる。
「ナイスだよ! ドゥエさん! やっちゃえネネーっ!」
「はいっ! 行きます! ニャアアーッ! 『オプションブレード』展開! 凪ぎ払えーっ!!」
見る間にノロマになっていく『魔装戦士』達。慌てたように機銃を乱射したり魔力砲を撃ってきたりするが、俺っち達には掠りもしない! これはチャンスとミミがネネの名を呼べば、ネネが魔法を行使! ブゥンブゥンブゥン……と鈍い音と共にいくつもの魔法剣が現れる!
ズッバァァァァーンッ!!
その魔法剣が一斉に一閃! 無数の斬撃が『魔装戦士』共を切り裂き、ズドオォォーンッ!! と、魔力爆発を起こして散らして行く! お見事! って、言いたいんだが……最初に「ニャアアーッ!」って、猫が伸びをするような体勢とか必要なわけぇ~? それやらんと魔法剣の召喚が出来ねぇとかあんのネネ?
ズダダダダッ!! ビィィーッ!! バシュバシューッ!!
「おっと! 感心してる場合じゃあないね! 残りも蹴散らすよみんな!」
《逃げる奴は俺とルロイヤに任せろ! レジーナ達はソイツ等頼むぜ!》
ドゥエの魔法とネネの攻撃から逃れていた『魔装戦士』がそれぞれ、俺っち達に向かって来る奴と、この空域から離脱しようとする組に別れて動き出す。機銃の射撃とビームとか言う魔法の砲撃をかわし、レジーナとウノで咄嗟に役割分担。
「オッケー! 任されたよ!」《俺っち達『聖域』の『偵察部隊』から逃げられると思ってんの?》
攻撃仕掛けて来る相手は『猫兎』が、逃げ出し情報を持ち帰ろうとする奴等を俺っち達が追撃して、一機足りとも逃さず殲滅だ!
《そういやこう言うとき厄介だなって思った攻撃ってか、武器? あったじゃん?》
《おぉ、あの『無限円環』でのゲームの空中戦の時だな?》
《いいじゃないですの! ちょっとやってみましょうか!》
《んじゃいっせーの、『追尾弾』! オラオラ! 逃げられるもんなら逃げてみやがれってんだ!》
ブゥゥゥン……ドババババシュバシュバシュバシューッ!!
そう、『無限円環』であの団子とドンパチやらかした攻撃手段『追尾弾』! ドゥエもルロイヤもウノも咄嗟とは言え即座に察してくれて嬉しいぜ!
魔力と少しの神気を織り混ぜ俺っち達四羽からの一斉射撃! 散開して各々に離脱しようとする『魔装戦士』共を追跡しては突き刺さり、爆散させる!
ドドドドッドォォォーンッ!!
《よっしゃあっ!!》
《任務完了。ふん、小手調べにもならん》
ウノが『魔装戦士』共を蹴散らしたことに雄叫びを挙げ、ドゥエがニヒルに笑う。ま、魔王も序の口とか思ってんだろうが、俺っち達の力はまだまだこんなもんじゃねぇぜ?
「おーい! こっちも終わったよ~?」「残敵はいないようだね。アリサ様と合流しよう」
どうやら『猫兎』の方も問題なく撃破出来たようだぜ。はっはっは! 完全勝利じゃねぇの! 手を振ってるミミと、周囲を注意深く観察しているレジーナ達と合流して帰還するとしよう!
シーベル「さあ、皆さんお急ぎください!ι(`ロ´)ノ」
セルフィ「西側海沿いなら安全ですよ~!o(* ̄○ ̄)ゝ」
町人A「い、一体何だってんだい!?(; ゜ ロ゜)」
町人B「わからねぇ!(`□´) いきなり魔物みたいな鳥が群れで襲って来たんだ!( `□´)」
町長「シーベルさん、リデル嬢ちゃん!Σ(;゜∀゜)ノ 避難誘導感謝する!ヽ(;▽;)ノ」
冒険者ギルド職員A「現在山間へと冒険者とグリフォン達が魔物?(; ・`ω・´) を誘導して町から遠ざけています!o( ゜Д゜)o」
町人C「えぇっ!?Σ( ゜Д゜) グリフォン達ってどういうこと!?(゜A゜;)」
船舶ギルド職員A「港は!?Σ(`Д´ ) 港は無事かーっ!?((゜□゜;))」
船舶ギルド職員B「大丈夫だ!(°▽°) 船も全て無事だぞ!(ノ≧▽≦)ノ」
冒険者ギルド職員B「こ、この結界は『セリアベール』が『氾濫』にあった時の!Σ(゜ロ゜;)」
冒険者ギルド職員C「ということは、アリサ様もおられるのか!ヽ(*´∀`*)ノ」
町長「おお!( ・∇・) 『セリアベール』を救ったと言う、『白銀』と『黒狼』に続く新たな英雄殿がこの町に!?o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪」
町人D「ほ、本当だ!Σ(O_O;) 魔物の攻撃が結界に弾かれたぞ!(^∇^)」
町人E「す、凄い!(゜▽゜*) これなら安心だ!(・`ω´・ )」
船舶ギルド職員C「しかし、あの鳥みたいな魔物は一体何処から飛んできたんだ!?(; ・`д・´)」
町人F「それな?(-_-;) 気が付いたらもう町が襲われてたからな(。・`з・)ノ」
冒険者A「済まん!(;゜0゜) あそこまで高度あげられると……(>д<*)」
冒険者B「魔法も矢も届かないわ!(>o<")」
冒険者C「追いかけて飛んで行ったのって、『猫兎』達か!?Σ(*゜Д゜*)」
冒険者D「すげぇ~アイツ等生きてたのか?( ゜□゜)」
冒険者E「『セリアベール』に助っ人に来たバルガスさん達みたいに空飛べるとか!?( ; ゜Д゜)」
冒険者F「い、今や冒険者も空飛べなきゃ駄目なのか!?Σ( ̄□ ̄;)」
町人G「いやいや(;-ω-)ノ 流石にそりゃないでしょうよ?( ̄▽ ̄;)」
アリサ「……被害は、少し建物が損壊したか?(; ・`ω・´) でも怪我人がいなくてよかった(*゜∀゜)=3 んでも……こりゃ町のみんなに説明しないとダメかしらね?(;´д`)」




