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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
159/211

126話 魔女と冒険者候補の三日目

アリサ「あい(o・ω・o) ここでちょいとお知らせですよ~?ヽ(゜∀゜)ノ」

セラ「オホンッ!(_ _) みんな~いつも読んでくれてありがとな!o(*≧∇≦)ノ」

レジーナ「PVアクセス二十万を越えた記念の小話を用意したよ!( ゜∀゜)」

モモ「お礼と言うには拙い内容ですけど(-_-;) ご賞味頂けると嬉しいですね♪( ´ー`)」

ティターニア「投稿は明日ですの♪ヽ( ゜∀゜)ノ 前編後編の二本立てですわ!(・`ω・´)」

みんな「どうぞよろしくお願いしまーす!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」

────────────────────────────

【三日目】~冒険者候補達~《ニュイview》

────────────────────────────


こーんにちはぁぁぁーっ!!


「「はっハイぃっ!! こ、こんにちは!?」」


 にゃあ? なんでびっくりしてるのにゃこの門衛さん二人は? にゃあ達ちゃーんと元気に挨拶したのにゃ?


「お、驚きました。とても元気な挨拶ですね」

「この『セリアベールの街』の北門に来られた十人の旅人……もしや、ギルドマスターが話していた『聖域』からの冒険者候補の皆様でしょうか?」


 にゃはは♪ ちょーっと元気よすぎたみたいだにゃ!

 にゃんにゃーん♪ そうにゃそうにゃ! にゃあ達は『聖域』から、冒険者になるべくこの『セリアベールの街』にやって来たんだにゃぁ~♪


「はい! 女神様とアリサ様の遣いでもある私達十人!」

「この『セリアベールの街』にて、冒険者登録したく参った次第。ゼオンから話を聞いておられたか?」

「ええ! しっかりと伺っております!」

「ようこそおいで下さいました! 歓迎致します!」


 ルルリルとドランドがにゃあ達を代表して二人の門衛さんに、素性を話したにゃ。すると先の言葉通り、しっかりゼオンからにゃあ達のことを聞いてくれてたみたいで、にゃんとも嬉しそうに歓迎してくれたにゃ!


「この道を真っ直ぐ進めば、あの大きな建物に辿り着きます」

「そこが冒険者ギルドとなっておりますので、受付にてお話下さい。ギルドマスターがお会いになると思いますので」

「了解したわ、ご親切にありがとう門衛さん達」

「感謝するぜ! 何分初めて街に来るからなぁ~」


 門を開けてにゃあ達を街に招き入れてくれる門衛さん二人にゃ。しかも、ちゃーんと冒険者ギルドまでどう行けばいいのかまで教えてくれたにゃ! ホントありがとうだにゃ♪ にゃあもルーナとウェズに続いてペコリと頭を下げてお礼するにゃん♪

 どういたしましてっていう門衛さん達の笑顔に見送られてにゃあ達は街に入ったのにゃ!


「へぇーっ! 凄いじゃん! でっかい街~♪」

「ああ、『聖域』の住宅街がいくつも並んでる感じだな?」

「……外にはこんなに人がいたんだ」

「驚きの連続だわ……アリサ様が「外の世界を見て回れ」と仰った意味が少しだけわかった気がする」


 にゃあぁ~これが街! すごいにゃん! どこもかしこも人人人だにゃ! 大きな石造りや木造、色んな健在が使われた家達がずらぁーってお行儀よく整列して、にゃあ達を見下ろしてるにゃ! 道には中央を馬車がすれ違ったりして、なんか規則性があるにゃ? にゃあ達は街の中央に向かうので、そっちに行く人達が歩いてる側に寄って、馬車の邪魔にならないようにするにゃ!

 おなじ冒険者候補のレイがキョロキョロとあっちこっちに視線を向けては感心のため息だにゃ、ドランドの言うように『聖域』にもにゃあ達のお家がこう、ズラリと並んでるけど、こんなにいっぱいはないのにゃ! それだけこの街には人がいるんだとノアが少し目をまるくしてるのにゃ。


「そうだねルーナ。私も街がこんなに活気あるとこだなんて知らなかったよ」

「棲処とはまた違った感じがするぞ~?」

「へぇ~『人間(ヒューマン)』ばっかかと思いきや、いるなぁ~エルフにドワーフ……」

「ああ、『兎人(ワーラビット)』に『人犬(ワードッグ)』と言った獣人達に妖精達も……」

「わん♪ 僕ちんの同胞もいるみたいだワン!」


 道行く人々、お店の前で呼び込みなんかしてる人、みんなみんな楽しそうだにゃ♪ そんな彼等を見てルルリルは、にゃ。にゃあ達はルーナの言った言葉を改めて実感したにゃ。『聖域』の外にはこんな風に暮らす人々がいて、こんな大きな街を作ってるのにゃ! にゃあ達の妖精国とも、アッシュの言う棲処ともまた違った賑やかさだにゃ♪

 そこには種族の垣根を越えて『人間(ヒューマン)』も『亜人(デミヒューマン)』も仲良くしてる。感慨深気にその様子を見てるウェズ、ザウル、ププルもなんだか嬉しそうにゃ。


「ふふ、ゼオンが自慢するわけだ。それはともかく、ドランド。ギルドに急ごう?」

「ああ、そうだな。街道の柵を点検しながらだったから、もう日も落ちそうだ」


 そうなのにゃ。にゃあ達は『セリアルティ王城跡地』から中継地点のキャンプ場、そしてこの『セリアベール』までの街道の、魔物避け効果が施された柵を点検しながらやって来たのにゃ! その為、早朝にキャンプ場を出発したのに、街に着いた頃にはもう夕暮れ時なのにゃ~、街の様子にはしゃいでばかりいたら、また野宿にゃ! 折角街に来たのにそれはイヤにゃ!


「そうだね。柵の数とか状態なんかも報告して、エミルあたりに宿を紹介してもらおうよ?」

「エミル? ああ、あのゲームで結構ガッツ見せたエルフだよね?」

「冒険者ギルドのサブマスターって話だったぞ~?」

「わーん♪ 関わる人達も覚えていかなきゃいけないワン!」


 そうだにゃ、エミルってのは『聖域』……アリサ様の『無限円環(メビウス)』でのゲームの時に一緒したエルフだにゃ? レイはちゃんと覚えてたのにゃ? ルルリルはちょっと曖昧みたいだにゃ。アッシュも覚えているにゃ、確かゼオンがマスターで、そのエミルがサブマスターって事らしいにゃ。うにゃぁ~ププル同様にゃあも覚えなきゃいけないにゃあ。


「お、見ろよ皆! でっけぇ建物が見えてきたぜ? あれが冒険者ギルドだな!」


おーっ!!


 うにゃ! これまたでっかいのにゃ! ここが冒険者ギルドなんだにゃ? ウェズの言葉に見上げて見ればそれは立派ででっかい建物だにゃ、にゃあ達は思わずおーって声挙げちゃったのにゃ!


────────────────────────────

【到着!】~冒険者ギルドだワン♪~《ププルview》

────────────────────────────


「はっ! ま、待ちなさいみんな! 私……ちょっと思い出してしまったのだけれど……」

「なんだぁ~どうしたんだぞルーナぁ~?」


 わわん? 一体どうしたんだワン? なんか冒険者ギルドに入った途端、ルーナが急に僕ちん達を呼び止めたワン。僕ちん達は足を止めてルーナに視線を向けたわん、アッシュが「どうした?」って聞くと……


「ほら、今はもう夕暮れ時じゃない? 私達がお邪魔すると……ギルド職員さん達、時間外労働になってしまうんじゃ……?」

「あっ! そっか、ヤベェな……あのルヴィアス様もゼオンも、更にはアリサ様も「残業なんて嫌だ」とか話してたの覚えてるぜ?」


 はっ! そ、そうだったワン!! あれは『無限円環(メビウス)』でのちょっとした夕飯時のアリサ様達の何気ない会話だったワン! その時に三人で仕事の話になってそんな会話をしていたのを僕ちんも確かに聞いたワーン!


「ど、どうしよう? こうしてまごまごしてる間にも時間が過ぎちゃうよ!?」

「と、兎に角! まだ受け付けてくれるか確認しなよ? ほらドランド、ルルリル!」

「わ、わかった、早速行ってくる」


 ルルリルが慌てて僕ちん達に「どうしよう?」って泣きついてくるワン! 同じように焦りながらレイがドランドと一緒に受付に行くよう促すワン。いやぁ~しまったワン……この辺の気配りが僕ちん達には足りてないワン、きっとアリサ様なら「明日にしよう」って判断するかもだけど、まぁこれも勉強だワン!


「あ、あのぅ~?」「も、申し訳ない、少しばかりよろしいだろうか?」

「はい! ようこそ冒険者ギルドへ♪ 初めてのお客様ですね? 今日は如何されましたか?

 こちらではクエストの発注や、冒険者登録等々随時承っております」


 おずおず……と、いった感じで、ルルリルとドランドが受付のお姉さんに話しかけるのを、僕ちん達はハラハラした面持ちで見守るワン。お、怒られたりしないかな? 心配だワーン!


「そ、その……まだ受付はして頂けるのでしょうか? こ、こんな遅い時間に来てしまい、その本当にごめんなさいなんですけど! ご無理のようでしたら明日また改めてお伺い致しますので……」

「あら、うふふ♪ ご、ごめんなさい。そんなに気になさらなくても大丈夫ですよ?」

「そ、そうなのか? いや、遅い時間に来てしまったのは事実。その点はお詫び致します。私達は『聖域』より冒険者となるために訪れました」


 ホッ……よかったワン! ルルリルが凄い遠慮がちに話すのが面白かったのか、受付のお姉さんは笑って「気にするな」って言ってくれたワン。どうやら大丈夫そうだワン、僕ちん達は胸を撫で下ろしたんだけど……


「まあっ!? 『聖域』から! わぁー♪ アリサ様はお元気ですか!? ユニちゃんとミーナちゃんはご一緒ではないのですか?」

「えー? なになに~? 『聖域』から来たんですって?」

「おぉーっ! マジか!?」「いやぁ~よく来たな!」

「『聖域』からだとこの街は遠かっただろう? 一杯どうだい!」

「応! 俺達が奢るぜ!?」


 あわわ! なんだワン!? ドランドが僕ちん達の素性を話したら、途端にギルド内が騒がしくなっちゃったワン!? 僕ちん達の周りにもお酒を飲んでおしゃべりしてた冒険者達がいっぱい寄って来たワン!


「コラっ! 君達、『聖域』から冒険者登録をしに来た御方達がいらしたら、僕の所に通しなさいって言っておいたでしょう?」


エミルさん! サブマスター! ごめんなさ~い!


 おぉ、エミルだワン! 騒ぎを聞き付けたのか、二階に続く階段からエミルが降りて来て、騒ぐみんなを注意してくれたワン! 正直あっけにとられちゃってた僕ちん達はどうしていいかわからず、困ってたから助かったワーン!


「エミル! 助かるぜ、ちょっとこんなに歓迎されるなんて思っても見なかったからよ。ほ、ほら皆、気持ちは嬉しいけどよ、通してくれねぇか?」

「あ、アタシもお願い……その、撫でてもらえるのは嬉しいけど……」

「ぼ、僕ちんもだワーン! 困るワン、そんなわしわし撫でられるとぉーっ!」

「うにゃぁ~♪ 良いにゃ良いにゃ。もっと撫でるが良いにゃぁ~♪」


 ウェズとノア、そして僕ちんとニュイはなんだか女性冒険者や受付のお姉さん達にきゃーきゃー♪ 言われながら握手を求められたり、頭を撫でられたりして、それはそれは大層な歓迎を受けたんだワン!


「うふふ♪ 助かりましたエミルさん」

「久し振り……と言うほど日は経っていないか? 壮健そうでなによりだ」

「うひょぉぉ~美人な『狐人(フォクシズ)』の姉さんだなぁ?」

「めちゃめちゃイケメンのお兄さん♥️」


お近づきになりたぁぁーいっ!!


 一方で僕ちん達とはまた違った人気なのが、ルーナとザウルの二人だワン! この二人には僕ちん達みたいに人が集まってくる訳じゃなくて、なんだか熱のこもった熱い視線が投げかけられているんだワン……わぅぅ~なんだか釈然としないんだワーン?


「うぅ、私リーダーなんですけどぉ?」「私もだが?」

「ルルリルとドランドは地味だからじゃなーい? あはは♪ ほらほら、みんな~これから長い付き合いになるんだから、お話は後でいっぱいしようよ? 今はエミルさんとお話させてね♪」


 そんな僕ちん達を見ては、「ぐぬぬ!」って悔しがるルルリルだワン。ドランドのぼやきも無視してうらめしそうに見るの止めてほしいワン? レイは同じようにみんなに囲まれても慌てる事なく笑顔で対応してるワン、凄いワーン。ああいうのを社交的っていうのかワン?


「いえいえ、どういたしまして。さぁ、みなさん! そろそろ皆さんを解放してあげて下さいね?」


はーい! また後で色々話そうな~!


 おぉ、流石はサブマスターといったところかワン? エミルの掛け声ひとつで僕ちん達に群がっていたみんなが席に戻っていくワン!


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【三日目】~リージャハル~《にゃるろってview》

────────────────────────────


「こんにゃる~♪」

「は~い、こんにゃる~♪」「こんにちは、よくおいでくださいました」


 あはは! セルフィってばなんてノリのいい女神にゃ! 私の妙な挨拶にもちゃんと反応してくれるじゃないの♪ でもって、このイケオジバトラーが噂のシーベルさんだね? なんともダンディさがあふれでる紳士だにゃん♪

 あい、みんなもこんにゃる~♪ 猫幼女にゃるろってに扮する魔女アリサさんですよ~? なんぞ久し振りだねぇ~? まあ、それはそうと……『セリアベール』で黒フード一味の『虎人(ワータイガー)』ガッシュくんを護衛として、『猫兎(キャットラビット)』と一緒にこの『リージャハル』までやって来た。

 途中で合流した翼達……『聖域』の偵察部隊の四羽、今はみんな人化して人の姿だから、四人かな? も、一緒に今日のお宿を求めて、ガッシュくんのオススメであり。つい先日アイギス達『白銀』も泊まったっていうこの宿屋さんにやって来たんだにゃ。


「これはこれは、ガッシュさん! お久し振りです。お元気でしたか?」

「お久し振りですシーベル殿! 貴方もお元気そうで。リデル嬢も大きくなられましたね?」

「あはは! ガッシュさんは老けましたねぇ~♪」


 そのシーベルさんと嬉しそうに挨拶を交わすガッシュくんは、その昔『誉』と言うゼオン達のパーティーで、このお宿を何度か利用していたらしいね。久し振りの再会に二人とも楽しそうだ。

 そして、シーベルさんの一人娘、リデル嬢もまた昔を懐かしみニコニコと微笑んでいる。が、彼女の正体はティリアの義姉妹である、女神セルフィーヌである。

 聞いた話だと、本当のシーベルさんの娘、リデルは既に亡くなっており、その事に絶望し、自害しようとしていたシーベルさんの心の寄り所となるべく、そのリデル嬢の記憶を引き継ぎ、こうして一緒に暮らしているそうだ。


「ガッシュ、盛り上がっているところ済まないが……」

「おお、そうだな。シーベル殿、十一人なのだが、このにゃるろって様は幼子ゆえ、部屋はこの女性達と一緒で構わないので、宿泊させて頂けるだろうか?」


 旧友との再会に話が弾むのは無理ないだろう。だけど、それじゃ私達は待ちぼうけなので、レジーナがガッシュくんに宿の利用を促した。

 このお宿はちょっとしたお屋敷風だが、部屋数はそんなに多くなくて、お客さんも十人までと制限をもうけているらしい。まあ、親子二人だけで経営しているから大人数だと苦しいのだろう。


「はい。そういう事でしたら構いませんよ、リデル。お部屋にご案内してくれますか?」

「は~い♪ それでは皆さんこちらです!」

「ああ、私はもう少しシーベル殿と話をしているから、先に行っていてくれ」


 私は今『人猫(ワーキャット)』の幼女に変身しているので、定員の十名の枠に納めてくれるらしいね。ありがたや~♪ 快く了解してくれたシーベルさんに感謝だにゃん。


「へぇ~綺麗なお宿じゃないの♪」「素敵ね、窓から港が臨めるわ」

「客が俺達だけっていいな! 翼~早速キッチン使わせてもらえるよう頼もうぜ!」


 リデル嬢改め、セルフィに案内されて部屋へと向かう私達、ミミは綺麗な内装を見ては喜び、ニャモは窓から見える港の様子に感心したりと、楽しんでいるみたいだ。ウノは他にお客さんがいないなら、遠慮なくお菓子作りができる! と、嬉しそうに翼にキッチンを使わせてもらえるよう交渉しようと促している。人目につくとこでお菓子なんて作ると目立ってしょうがないからね。私も『セリアベール』で半端に料理広めちゃって、大変だったからわかる。


「はいはい、昨日の通信でお話したグリフォンさん達ですね? 勿論構いませんよ~♪ アリサお姉様もどうぞ遠慮なく!」

「ありがとね、セルフィ。そういやこうしてあんたと話すのってなかったわね? 翼に差し入れのお弁当持たせてるから、後でゆっくり食べてちょうだい」

「わぁ~♪ ありがとうございますアリサお姉様♪ うふふ、楽しみです!」


 丁度ガッシュくんが席を外しているので、私とセルフィは素のままのしゃべりかたでお話する。ティリアに頼んでこちらの事情は説明してもらったので、ガッシュくんが一緒してる間はお互い「にゃるろって」と「リデル」で呼び合うように意識あわせして、お部屋到着。


「ももちー達も間違えて呼んじゃわないように注意ですねぇ?」

「そうですね、気を付けましょうか」


 よっこいしょって、荷物を部屋に置いてモモとネネが私達の名前の呼び方に注意しようと『猫兎(キャットラビット)』達、それにルロイヤと話をし、頷きあっている。


「その事なのですけど、アリサお姉様? ガッシュさんについてちょっとお話したいのです」


 ほう……なるほどなるほど。どうもセルフィのリデルから受け継いだ記憶から『誉』時代に会ったガッシュくんについての話を聞いたのだけど、当時の彼は亜人差別について今ほど苛烈に反応を示してはいなかったそうだ。なんでも、この宿でのお酒の席でそういう話が出たらしく、その時は、「そんなの『人間(ヒューマン)』にも『亜人(デミヒューマン)』にもいるだろう?」と、今の私達に似た考えの持ち主だったそうだ。


「では、その後に何か今みたいに黒フードの考えに至る出来事があったのでしょうか?」

「もしくは僕達にもゼオン達にも隠し通していたのかな?」


 ふむ……ルロイヤとレジーナの意見。どっちも考えられる事だね? セルフィはどう思っているんだろう?


「私が思うに、事の背後にロアがいると思うんですよねぇ、ガッシュさん達は多分、何らかの意識操作とか洗脳を受けているんじゃないでしょうか? それこそ、『ディード教団』のここ数年の内の勢力拡大は異常な勢いですから」


 ふぅむ、どうやらセルフィは「ロアが既に復活を果たしているかも」と、仮定して考えているみたいだ。うん、それは考えられうる悪い事態だね、私達も「そうかもしれない」として、一緒に話し合ってみようか?


────────────────────────────

【アリサお姉様と】~ガッシュさん~《セルフィview》

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「ももちー達が冒険者やってた十年前はそんな教団知らなかったですよ?」

「そうだよね? あたしも聞いたことないよ?」


 アリサお姉様ことにゃるろってちゃんご一行が私達のお宿にいらしてくれました! ふふ、お会いしてゆっくりお話したいと思ってましたから嬉しいですね! しかもお弁当も用意して下さったそうで今から楽しみですよ♪ さ~ら~に! 美味しいお食事も、ケーキも作ってくれるって言うんですから、歓迎しないはずがありませんよぉーっ! うっふっふ♪ フィーナお姉様に自慢しちゃいましょう~♪


「じゃあ、ここ最近になってできた教団なんですの?」

「そうねぇ恐らくは古くから存在自体はしていたんじゃないかしら? それがここ最近になって表舞台にも顔を出し始めて来た、と」


 さて、そんなお楽しみを楽しむためにも、問題のガッシュさん。それと、その背後に見え隠れしている『ディード教団』について、アリサお姉様のお仲間達ともお話しませんと。

 今モモさんにミミさんが首を傾げているように、『ディード教団』とは一昔前にはあまり聞かない名でした。ルロイヤさんが言う最近にできた教団なのか、それともニャモさんが言うよう単純に今まで目立たなかっただけでしょうか?


「ちらっとこの町で聞いた噂レベルの話だと、生活苦の『亜人(デミヒューマン)』を保護する教団らしいのですけどね? それは表の顔で、裏では世界を滅ぼす算段を立てていた。ということのようですねぇ?」

「う~ん、じゃあその教団を率いているのが、ロアなんでしょうか?」


 ネネさんが私の話からそう推測しますけど、あの旧神はそんな面倒な事はしないと思うのですよ。自分が興味を示した事以外は無関心な神でしたからね……恐らくは代表者を操って手駒にしているんだと……


「なるほどね、できなくはないかな? 魔装具だったり、魔法だったり使えば人の意識や心を一定方向に向かわせる事は可能だし……要は『待ち望んだ永遠(アルカディア)』の逆ってこと。それなら、確かめる術はあるわ」


 おぉ~流石はアリサお姉様です! 『待ち望んだ永遠(アルカディア)』とは、『聖域』に張った大規模結界だそうで、その効果のひとつに、「結界内にいる者の悪意を霧散させる」というものがあるらしいのです。

 それはつまり、やろうと思えばアリサお姉様にも人の心や意識を操作できるという事に他なりません。なるほど……ティリアお姉様やアルティレーネ達が彼女の闇堕ちを恐れる訳ですね、アリサお姉様がもしそうなってしまったら……一体どれ程の被害が出るかと想像して、身震いしちゃいます。


「あ~そこは一応自分でプロテクトかけてるから大丈夫だと思うよ? 私自身、自分のヤバさってのは理解してるつもりだからね?

 それはそうと……セルフィ、私も厨房を使わせてもらうわよ? もし仮にあんたの言う洗脳とかをガッシュくんが受けてるんだとしたら、ちょいと小細工したごはんを食べてもらえばいけると思うわ♪」

「それは凄い! 僕達としても昔馴染みの彼と敵対はしたくないからね……叶うならこちら側についてもらいたいよ」

「まあ! 流石はアリサ様ですわ♪ そのお料理私達が食べても平気なんですの?」


 はぇぇ~いやぁもう感心しかできませんねぇ……私も他の皆さんもおーってあんぐり口を開けて、アリサお姉様を見ていますよ。レジーナさん達『猫兎(キャットラビット)』もガッシュさんとは旧知の間柄のようですし、複雑な今の現状はやりづらいのでしょう。少しホッとした様子です。これで彼が目を覚ますというか、考えを改めてくれると嬉しいですね。

 さて、そのごはんとやらですが、ルロイヤさんの質問に問題なしと笑顔でお答えになるお姉様です。それなら安心してお任せできますね!

 そうと決まれば私達は早速揃い、一階のキッチンへと移動します。


「ほぉ、ここまで正確に分量を測るのですか? 菓子作りとは大分手間がかかるのですね?」

「先日ご宿泊された『白銀』の皆様もお料理をされておりましたが、これほど丁寧に測ってはおりませんでしたね」


 わあ~♪ やってますやってます! 一階のキッチンでは既に翼さん達がお菓子作りを始めています! むふふ~早くも期待でわくわくが止まりませんよ私~♪ そして、その様子を興味深そうに見学してるのがガッシュさんとお父さんですね。


「にゃんにゃ~ん♪ やってるね~翼様達! 私にもちょっと使わせてほしいにゃん?」

「うっす! にゃるろって様、俺達は取り敢えず小腹空いたんで直ぐ食えるホットケーキと~」

「間食用にイチゴのケーキを作ってるとこだぜ~♪」


 わーい! ホットケーキにイチゴのケーキ!? やった、やりました! ずっと食べたいって思っていたケーキです♪ ウノさんと翼さんがシャカシャカと泡立て器で何かをボウルで混ぜているのを目にして「もしや」と思いましたが……感謝ですね!


「あら、それでしたら私もお手伝いしますわ♪」

「にゃるろって様、早速このマグロをお願いしていいですか?」

「はいは~い♪ お刺身が食べたいんだっけドゥエは?」


 わいのわいの♪ と、途端に賑やかになるウチのキッチン。ルロイヤさんも、ドゥエさんもにゃるろってちゃんも楽しそうです。皆さん本当にお料理が好きなんですねぇ~? 私も『白銀』の皆さんの真似して頑張ってみましたけど、やっぱりこうして皆でワイワイやったほうが面白いみたいですね~私もまぜてもらいましょう!


「ははは♪ 僕達はお邪魔になりそうだし、こちらのリビングで優雅にお茶でも楽しむとするよ」

「にゅふふ♪ 待ってるだけでごはんの方からやってくる♪」

「ああ、なんて贅沢かしら。ほらガッシュ? 私達にお茶を持ってきなさいな?」

「お前らなぁ~? 私を散々独り身といじっておいて……ふん、そんな調子ではお前達こそ嫁の貰い手がなくなるぞ?」


 あっはっは! リビングに座り私達の様子を観察する体のレジーナさんとミミさん、寛いでますねぇ~? ニャモさんはこの宿の雰囲気と私とお父さんがメイドに執事ということもあってか、お嬢様気分に浸っているみたいです♪ うふふ、お茶を用意するように言われたガッシュさんは顔をしかめて文句をたれつつ、しっかり用意してあげるんですね?


「ガッシュさん、それは私がやりますから! お客様として貴方のお寛ぎ下さい」

「おお、シーベル殿。いやいや、大丈夫ですよこれくらい?」

「あはは♪ ガッシュさんありがとうございます。いただきますね?」


 お父さんが慌ててお茶を用意してるガッシュさんに声をかけてますけど、なんでしょうね? ガッシュさんてば、言葉は悪いですけど、下働きが板についているというか、慣れているというか……既にネネさんがガッシュさんの淹れた紅茶を頂いてますよ?


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【洗われる思考】~溶け行く心~《ガッシュview》

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 それは、夕食の時。にゃるろって様が作って下さった味噌汁というスープを食した後に起きた。ホクホクとしたジャガイモにしんなりと柔らかくなったタマネギのほのかな甘味、味噌という調味料と海の香りのする奥深い味に私は感動を覚え、じっくりとそのスープを味わって頂いた。

 一口、一口。その味を楽しみ、胃に落としていく度に、温かい気持ちになれて心のわだかまりまで溶けていくようだった。そして、それは私の今までの思考にも及んでいき、今まで『人間(ヒューマン)』を憎んでいたその理由すらも、改めて客観的に見えるようになったのだ。


「にゃるろって様……どうしても『ゲキテウス』には行かねばならないのですか?」

「にゃあ~? ここまで来てどうしたんだにゃガッシュさん?」


 不思議だ、よくよく考えれば、今までの「魔王に世界を破壊してもらい、その上に『亜人(デミヒューマン)』達の理想郷を築く」と言う『ディード教団』の思想にどうして賛同したのだろう? 魔王に力を借りてなど……なんと危険極まりない! それにこの宿の親子にはとてもよくしてもらっているのだ!

 否、シーベル殿達だけではない、『セリアベール』にも沢山の『人間(ヒューマン)』の朋友がいるではないか……!


「まさか……ガッシュってば、船酔いするのかい!?」「あーそれで嫌がっちゃってますか?」

「あらら? 酔い止めのお薬をご用意しましょうか? お父さん、常備してましたよね?」


 ああ、いやそうではなくて。シーベル殿大丈夫です、ご心配おかけして申し訳ない。

 レジーナとモモには、突然私が『ゲキテウス』行きに難色を示したのを、船酔いするせいと思われたらしく、その勘違いにリデル嬢が反応し、シーベル殿に酔い止めの薬を用意してくれるように促すのを、私は慌てて止める。


「一体どうしたんですかガッシュさん? ここまで来て依頼放棄なんてしたら……」

「ランク降格に、信頼も落ちるわよ? 長年冒険者やって来た貴方ならわかるでしょう?」

「へぇ~冒険者ってそうなんだな? まあ、受けた依頼を途中でほっぽりだすのは流石に問題っちゃ問題だわな?」


 ああ、ネネとニャモ、そして翼殿言っている事はもっともだ。そこは私も重々承知している。しかしだ、『ゲキテウス』に上陸すれば間違いなく教団の手の者がにゃるろって様を狙ってくる。どうすればいい? どう説明すれば彼女達を止められるだろうか?

 私は悩みに悩んだ、しかし、その時だ……


「取り敢えずごはん食べるにゃ、ほらガッシュさん♪ お刺身もいいけど、このさばの味噌煮なんて美味しくできたのにゃ」


 コトリ。と、私の前に差し出された一皿。鯖と呼ばれる魚を、このスープにも使われている味噌で味付けした料理が出され、にゃるろって様に食すようにすすめられた。言われるがままにフォークで食べてみるその味……実に美味である。


「これは美味しいですねぇ~♪ 味噌って調味料は『セリアベール』で売ってます?」

「ライスが進みます! ああ、リデル? 確かこの『リージャハル』でも扱っているお店がありましたよ?」

「美味しいねぇ~♪」「ああ、最高だなぁ」

「菓子もいいけど、んぐんぐ。はふぅ~こんな美味い飯食えるのって幸せだよな!」


 あはは♪ と、皆が皆心底嬉しそうに、楽しそうに料理に舌鼓を打ち、笑い合うそんな温かな光景を目にして私は……なんだか悩み、皆に対して自分が教団の一人であることを隠していることが、とても不誠実なことのように思えてならない……


「にゃるろって様。そして『猫兎(キャットラビット)』に翼殿達……少し、私の話に付き合って頂けるだろうか? 勿論シーベル殿達も……」


 決めた。私は総てを打ち明ける。その私の改まった真摯な姿勢に皆、何かを感じ取ったのか、しばし私に視線が集中した後に首肯し、話を聞く態勢を取ってくれたのだ。

 私は話した……自分が『ディード教団』の一員であること。そして今は、その教団の考えに異を唱える事になった事。にゃるろって様を利用し『聖域』の戦力を削ぐ計画……幹部のヴァルジャ様とジャイファ様が『セリアベール』にいる事。

 更に教祖であるエリクシル様に導かれた事に、その背後にロアと呼ばれる存在がいる事を……総て話したのだった。


「…………」


 沈黙が、痛い……私の告白に皆が口をつむぎ押し黙っては私を見続けている。私は酷く申し訳ない気持ちになり、俯いた顔を上げる事が出来ずにいた。明らかに異常な思考に囚われていたのは何故なのか……知る由もないが、朋友達やこの方達に悪意を抱いていたのも事実……どんな罵声を浴びせられても、文句を言えよう筈もなし、断罪すると言うのであれば、それも潔く受けよう。


「よく……話してくれたね? ガッシュくん。ありがとう、そして、ごめんね?」

「驚いたね。まさか本当にそうだったなんて……」


 沈黙を破り、にゃるろって様が優しく私に声をかけてくれた、謝罪するのは私のほうだ。ましてや感謝などされるに値しない……ん? レジーナ。「そうだった」とは一体どういう事なのだ?


「ふふ、一体どんな小細工をなさいましたの? ()()()()?」

「なっ!? なんだと!? ルロイヤ殿、今なんと?」


 続くルロイヤ殿の言葉に私は心底驚愕し、バッと俯いていた顔を勢いよく上げて、にゃるろって様とルロイヤ殿。そして皆を見る! 不思議そうな表情のシーベル殿以外は皆、頷き、状況を理解している様子。


「だからごめんて? 実は私達知ってたんだ。ガッシュくんが黒フード……その教団の一味だって事も、『ゲキテウス』方面にその本部みたいなのがあるだろうって事もさ」

「な、なんと……!?」


 そこまで言って、にゃるろって様はひとつの魔法を行使した。彼女からまばゆい光が発せられ、思わず目を細めたその次の瞬間には……


「貴方にその本部まで案内してもらうつもりだったのよ。『人猫(ワーキャット)』の幼子に変身してね?」


 黒い魔女服に身を包む、『セリアベール』の新たな英雄。『聖域の魔女』が立っていたのだった。

レジーナ「それでアリサ様、料理に一体どんな小細工をしたんだい?(・_・)」

アリサ「うん?(・-・ ) ジャガイモとタマネギのお味噌汁にしたってだけだよ?(*´▽`*)」

ネネ「えっ!?Σ(゜ロ゜;) そ、それだけですか?(゜A゜;)」

アリサ「後はさばの味噌煮出したくらい?( -_・)」

翼「えぇ~?(゜Д゜;) そんだけでガッシュの洗脳?(´・ω・`; ) 解けたん?(;´A`)」

シーベル「確かにとても美味しい料理だとは思いましたが……(;゜0゜)」

セルフィ「うっふっふ♪(*´艸`*) それだけアリサお姉様の作られた料理が美味しかったって事なんですかねぇ~?o(*⌒―⌒*)o」

ウノ「実際どうなんだガッシュ?(´∀`;) 俺達に打ち明けたのはアリサ様の料理が決め手だったんか~?(°▽°)」

ガッシュ「そうですね……(*´・ω・) あのホクホクとしたジャガイモに、タマネギの味噌スープと、さばの味噌煮と言う魚料理をライスと一緒に食していたら……(*´ー`*)」

ニャモ「食べていたら……?(´・∀・`)」

ガッシュ「身も心も、こう……芯から温まるような感覚を覚えてなヾ(゜▽゜*) なんだか「自分はなにやってるんだろう?(*T^T)」って気分になった( ̄0 ̄;)」

ドゥエ「ふっ(  ̄ー ̄) 心に隠し事があれば殊更響くのがアリサ様の料理だ(^ー^)」

ルロイヤ「なるほど~♪(*´▽`) 美味しい料理に楽しい食卓なら、心から堪能したいと思うものですものね!Σd(・∀・´)」

モモ「旧友のシーベルさんの存在も大きかったんじゃないです?(´・ω・`)」

ミミ「え~(*´・д・) そこはあたし達も含めてほしいよ~?ヽ(*´∀`)ノ」

ガッシュ「ああ(^ー^) それは勿論だ、『誉』時代を思い起こしたりもしたぞ♪(^-^)」

セルフィ(ふふ( ´ー`) 『想い』を具現させるアリサお姉様のお料理は正に『魔法』ですね♪(*´艸`*) 『聖域の魔女』の肩書きに偽りなしです!ヽ(*´∀`*)ノ)

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