122話 ファムナ村と『三神国』の王
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【こめられた『想い』】~断片~《レウィリリーネview》
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「これがその肖像画だべ。儂等は毎日さ必ずこの絵画を拝むどごがら一日が始まんだぁ」
「おぉ、確かにレウィリだわ!」
「はぁ~上手いもんだぜ、アタイなんて絵心ねぇから素直に感心しちまうなぁ」
フォーネの祖父、『ファムナ村』の村長に案内されたあたし達は、いよいよリュールが描いたと言う、あたしの肖像画をこの目にすることができた。その肖像画を見るために、わざわざ、『エルハダージャ』方面から『転移』して、アリサお姉さん達一行も合流してくれたのだ。
肖像画は村長の家の大きな空き部屋とおぼしき部屋の壁に、なんか祭壇みたいな感じで飾られていて、話を訊けばこの部屋は『祈りの間』とか御大層な名前の部屋だという。まったく、大袈裟な……なんて思ったけど、そのお陰で今まで大事に残っていたのだから、素直に感謝しよう。
アリサお姉さんとセラを始めに、みんながあたしそっくりの肖像画に驚いてる。
「……背景も見事な描き込みね?」
「これは、もしかして『リーネ・リュール』の王城ですか?」
うん。その通りだよ? シェリーとバルドが、描かれた背景にも目を向けたようだ。その肖像画は、当時の服装のあたしを中央に、『リーネ・リュール』の王城を背景にした一枚絵だ。うん……本当に懐かしいね。
「そうだったそうだった! 昔のレウィリ姉、こんな感じのドレス着てたよね!」
「そうでしたね。「ドレスとか動きづらいから」なんて言いながらも、しっかり着てたわ」
「ん。しょうがない……リュールが「着て!」ってしつこかった……」
むぅ。そうだった……リュールはホントわがままな子だった。勤勉でもあったのだけど……いや、勤勉であったが故の反動なのか? わがまま言ってもあたしになら許されるって思ってたのか? まぁ、それくらい気を許してくれていたんだって思う。
この画のあたしが着てるドレスも、リュールに「可愛いんだから着せ替えさせて!」とか言われて、ヘトヘトになりつつ、彼女が満足するまで何着も着せ替えした結果である。
「ですが、大分美化して描いていますよねこれ? レウィリはこんな儚げな微笑みするような子じゃないですし?」
「ほっほっほ! そうじゃなぁ~♪ この次女めは大抵ぼけ~っとしとるか、寝ておるかじゃしなぁ~?」
「うふふ! レウィリリーネ様のお昼寝中にほっぺたぷにぷにしちゃったわ、私♪」
ちょっと!? アルティ姉さんもシドウもひどい! それじゃあたしが普段からだらしない子みたいじゃない? 後、シェリー? そんなことしたの? 全然気付かなかった……
「それもあるけどさ~? ぷふー♪ 確かに盛ってるよねぇ~? パッド何枚入れてんだってーの!」
フォレアの言葉にみんなの視線が肖像画のあたしと、あたし自身の胸を行き来する!
「~~っ!!」
ペペしっ! ぺしぺしっ!!
「痛いっ! 痛いってば! レウィリ姉!? やめてよぉ~?」
「駄目。許さない!」
このこの! この駄妹め! そういうのは気付いても口にしちゃ駄目だと、何故わからないの!? あたしは怒りをこめてフォレアのお尻を叩く!
「……立派な絵画ね、凄く強い『想い』がこめられてる……」
あははってあたしとフォレアのやり取りにみんなが笑う中、アリサお姉さんだけは一人、じっと肖像画を見つめてはそう呟いた。
「アリサ様。そのこめられた『想い』を視ることは可能か?」
「うん。大丈夫だよリン……リュールは優秀な魔法の使い手だったみたいね? 『状態保存』の魔法がこめられた『想い』も永い年月から風化させないように護ってくれてる……」
そっと……アリサお姉さんが優しく肖像画に手を添えてリンに答えた。そして、少しの間、瞳を閉じてあたし達に向き直り、こう言った。
「レウィリ。この肖像画にこめられてる『想い』は、間違いなくリュールのものだよ? そして……それはきっと悲しい過去の記憶。視る覚悟、出来てる?」
ん……わかってる。どう頑張っても、『リーネ・リュール』が滅んだ過去は覆せない。あたしはそれを改めて受け止めて、リュールの『想い』に報いたい……たとえそれがどんなに辛い過去でも、大好きなリュールの気持ちなら……ちゃんと、知っておきたい。
「……大丈夫。お願い、アリサお姉さん」
「わかったわ。じゃあまずは『記憶の断片』を順番に視ていこうか」
あたしの答えにアリサお姉さんは頷くと、肖像画にこめられた『想い』を拾い、その断片を再生していく。さあ、どんな記憶が残されているんだろう? 少しの緊張で、胸の鼓動が速まる。それを誰にも悟られないように、あたしはアリサお姉さんの魔法、『記憶映像再生』に注視した。
「私達のご先祖様の記憶と、記録かぁ……なんだか、すごいドキドキしてきちゃった!」
「うん。私もだよフォーネ。しっかり観ようね!」
フォーネとリールがあたしの隣で一緒にモニターに目を向ける。リュールとフォレストが今に繋いでくれたこの二人。そして『ファムナ村』のみんなもどうか、しっかりと観てほしい。
「おら達のご先祖様達の記憶だべぇ~皆さ心してきぐんだぞ?」
「んだな! 俺達ば生きていられんのはご先祖様のおかげだもんな!」
「皆してしっがりど聴くべ!」
そうして、最初の『記憶の断片』が再生された。
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【滅び】~別れ~《フォーネview》
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「……リュール? 何描いてるの?」
「レウィリちゃん!? わぁ~もうっ! びっくりするじゃない!」
「ん♪ 日頃からあたしを着せ替え人形にしてる罰。重く受け止めて?」
最初に映し出されたのは、私にどこか似ている一人の女の子の顔のドアップだ。
最初は「なにこれ?」って思ったけど、女の子が絵筆を手にしていることから、これはキャンパスから見た視点なのだと気付く。
映る女の子の直ぐ後ろから、レウィリリーネ様が覗き込んでくる。私に似た女の子はその事に驚いた後、ちょっと眉を吊り上げては頬をふくらませ文句を言い出す。
「おぉ……懐かしい。この子がリュール。あたしの友達。そして、この時は、肖像画を描き始めたところだね? この時点じゃまだ『リーネ・リュール城』の風景だけだけど……」
「俺一瞬、フォーネ姉ちゃんかと思ったぜ……」
「うん。私も~♪ 似てますねフォーネさん!」
そ、そうかな? 私も似てるって思ったけど……ブレイドくんとミストちゃんもそう思う?
「レウィリリーネ様の言葉でこの子がリュールだってわかったけど、言われなきゃ「んん?」ってなったかもしれないわね」
「ああ。それ、くらい……似ている、な?」
シェリーさんもデュアードさんもそう言うなら、やっぱり私とリュール様は似ているんだね?
「それで? 何描いてるのって……『リーネ・リュール城』?」
「そうだよ~こうやってぽかぽか陽気の中で、のんびり画を描いたり、お昼寝できるのって平和な証拠だからね? 今のうちにしっかり残しておきたいじゃない?」
映像の中のレウィリリーネ様がリュール様の描いている絵を見て、首をかしげる。「平和な~」ってリュール様が言ってるから、この記憶は『魔神戦争』前の記憶なのかな?
「この頃はまだ魔神が攻めて来る前で……ホントに平和だった。やることあんまりなかったし、退屈だったんだけど、毎日が穏やかで幸せだった……」
あ、やっぱりそうだったんだ? 『魔神戦争』が起こる前かぁ~モニターに映るレウィリリーネ様とリュール様の幸せそうな笑顔見てるとホントに平和だったんだなぁ~ってわかる。
「んぅ、確かにあったかくて気持ちいい。最高のお昼寝日和……
あ。そう言えば北方は? あれ以来攻めて来たりしてないみたいだけど?」
「ん~ちょっとした小競り合いはあるけど、レウィリちゃんが作った魔装具見て直ぐ逃げて行くね♪」
えぇ? 北方? 北方って言えばルヴィアス様が平定して……って、あれは『魔神戦争』の後の話だったっけ。
ザザーッ!
画面が切り替わった。んだけど、真っ暗でな画面で何も見えない。どうしたんだろう? まさかあれだけしか『記憶の断片』が残されてなかったとか?
「これは多分……肖像画をあたしにバレないように、リュールが何処かに隠したからだね? アリサお姉さん、視点操作できない?」
「また難しい事を~? ちょいと待ってなさい、これを、こうして……」
グイーンってアリサちゃんの手の動きに合わせるようにして、モニターに映像が映されました。なんかアリサちゃんが広げた人差し指と親指を閉じて行く動きに合わせて、映像がこう~ぐーんって広がって、周囲が見渡せるようになりました。
どうやらまた別の記憶らしいですね。映し出される場所は王城の一室かな?
「……これは、リュールの部屋だね」
「はぁ、流石女王の私室だけあって、すげぇ豪華だなぁ? アタイだったら絶対落ち着かねぇぜこんな部屋」
切り替わった画面に映し出された場所ついてレウィリリーネ様がそう説明をしてくれました。なるほど、広い間取りに、立派な家具や装飾品が並ぶ、如何にも貴婦人の部屋って感じ。セラちゃんが気後れしてるけど、私もこんな部屋使ってなんて言われたら、汚しちゃいけなさそうで動けなくなりそうだよ~!
「レウィリちゃん……ロアの『魔装戦士』の勢い……全然衰えないって……もう、このお城が落とされるのも、時間の問題だって……」
「ん……その報告に、間違いは、ない……ごめん、リュール……あたしの友達。『神』の問題に巻き込んでしまった……」
「……もう少しで、もう少しでアーグラスくん達が来るのに……っ! 悔しいよ!」
……これって、そんな! 『リーネ・リュール王国』の落城の記憶!?
見えてきた映像はリュール様がレウィリリーネ様に抱きついて、慟哭を挙げている場面だった。遂に『魔神戦争』が始まり、『技工神』ロアの『魔装戦士』の軍勢が『リーネ・リュール』に攻め入って来たんだろう。
「ごめん……ごめんねリュール……後はあたしと黄龍に任せて、貴女達は逃げて?」
「レウィリちゃん!? そんな、ヤダよ!! 私、もっとレウィリちゃんと一緒にいたいよ!?」
ごめんね……大好きだよ、リュール……
その言葉を最後に、また映像が切り替わった……
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【志し】~仲間と共に~《リールview》
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ポツリ……ポツリ……
切り替わった映像。映るのはどんよりとした雲に覆われた空。モニターの画面に落ちてくる雨粒の音が、私達の耳にひどく響いてくる……それと一緒に、パシャパシャと言う数人の足音。
「あった……よかった、ちゃんと残ってたよ……」
「……よく、描けている。在りし日のレウィリリーネ様だ」
「たいしたもんだぜ、『魔装戦士』とアーグラス達の戦いのど真ん中でも綺麗に残ってるなんてよ、『状態保存』の魔法はすげぇな?」
えぇ!? ゼオンさん!? あ、いやそんな筈ないか。リュール様と一緒にいるはずないもんね。じゃあもしかして……この映ってる三人って……
「フォレストくんだ……」
「ええ、それにユグライアも……」
「……あたし達が顕現出来なくなった後?」
や、やっぱり! じゃあ、このざんばら茶髪のお兄さんが、私のご先祖様のフォレスト様なんだ!? そして、この三人が揃ってて、女神様達の言葉から察するに……『魔神戦争』が終結した後?
「……ルヴィアスに拾われて、北方を平定したのはいいけどよ……俺の『ルーネ・フォレスト』も、この『リーネ・リュール』もひでぇ有り様だ……」
「ユグライアくんの『セリアルティ』には魔素霧が酷すぎて近付けもしなかったもんね……」
そっか……この記憶は『魔神戦争』が終わって、ルヴィアス様が逃げ延びた『三神国』のみんなを保護して、北方大陸の争乱を収めた後……その王様達が爪痕を見に来たところなんだね?
「……余は、諦めぬ。アルティレーネ様が……女神様が、勇者殿達が、文字通りその命を賭けて繋いで下さったのだ……余の代で叶わずとも、次代に引き継ぎ、いつの日か必ず……っ!」
ゼオンさん……じゃない。ユグライア様が伏せていた瞳を開き、リュール様とフォレスト様の前に、力強く握りしめた拳を掲げ、宣言した。その顔は女神様達を失った悲しみや、魔神達か、それとも護りきれなかった自身に対しての怒りか……? 覇気満ちる程に真剣だった。
「ユグライア……」「ユグライアくん……」
「貴公等もそうではないのか? 魔神共にいいようにやられて、「はいそうですか」と滅ぶ道を選ぶ程に柔ではなかろう!? 余と共に来い! 余はこれより『セリアルティ』の南方に町を作る!」
おおっ!! 気落ちしてたリュール様とフォレスト様を励ますユグライア様が、『氾濫』の時にみんなに檄を飛ばしたゼオンさんと被って見えた! アルティレーネ様が「瓜二つ」って言う訳だよ。マジにそっくりだね!
「はっ! 馬鹿野郎が、すかしてんじゃねぇっての!」
「そーだよ! ユグライアくんのクセに生意気じゃーん!?」
「あいたっ!? こ、こら! お前達止めないか!?」
ばーかばーか! 何が「貴公等もそうではないのか?」だよ!? とか、なんかギャイギャイと騒ぎ出すご先祖様達だ。あはは♪ なんだかすごく面白い三人だね!
「あっはっは! 相変わらず口悪いなぁ~フォレストくんてば!」
「うふふ♪ ユグライアも元気そうで、本当によかった!」
「なんかめっちゃ友達っぽい三人ね? 昔からこんな感じなの?」
「ん。そう♪ 民衆の前じゃしっかりしてたけど、あたし達とか、親しい者だけの集まりだとこんな感じ」
そんな楽しそうな三人を見て、フォレアルーネ様と、アルティレーネ様が思わずって感じで笑い出した。他のみんなもつられて笑ってる♪ アリサちゃんがレウィリリーネ様にこの三人のこと訊くと、レウィリリーネ様も嬉しそうに答えた。
「いいぜ? 行方眩ましたエリクシル達『ウィスタール』の連中も気になるが、まずは自分等の足場固めておかねぇとな!?」
「私も! 三人でおっきな町作ろう!? そして、いつか絶対『リーネ・リュール』を復興するんだ!」
……え、『エリクシル』って、さっきアリサちゃんとアルティレーネ様が見付けた格納庫の『魔装戦士』に魔力を供給して、動かそうってしてた二人組の黒フードが口にしてた『ヴァンパイア』のこと!? 行方を眩ましたって……もしかしてこの頃から企みを?
……駄目だね、考えてもわからないや。
それにしても……『セリアベール』って、この三人が中心になって作ったのか。思った以上に歴史深い町なんだね? なんだかそういうこと知ると、この世界の歴史にどんどん興味がわいてくるね。今度アリサちゃんとルヴィアス様誘って、勉強してみるのも面白いかもしれない!
ザザッ!
そして、また映像が切り替わった。
映し出されるのは、あれ? ここって……この部屋じゃない!? 今私達が集まって、映像を観てる『ファムナ村』の『祈りの間』だ。リュール様が膝をついて、手を合わせて瞳を閉じ、お祈りしている姿。他には誰もいないみたい。
う~ん、リュール様は何をお祈りしてるんだろ? それぞれの国を復興するぞって笑い合ってたさっきの記録から、どれくらい過ぎたのかな? ユグライア様とフォレスト様はいないの?
そんな風に色々疑問を浮かべていると、映像の中の『祈りの間』の扉が開いて、誰かが入って来た。
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【村の成り立ち】~リュールの今際~《リンview》
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「リュール。ユグライアが来たぜ?」
「あ、はーい♪ っとと……」
む? 映像のリュールの様子がおかしいな。足を引き摺っている。
「ああ、無理に動くな。支えてやる」
「あ、ありがとフォレストくん」
「久し振りだな。リュール……足は、そうか……」
フォレストに次いで、ユグライアも映像の『祈りの間』に入って来た。足を引き摺るリュールを支えるフォレストに苦笑いを見せるリュール……ふむ、怪我でもしたのか、病を患ったか……どちらにせよ、リュールは思うように動けぬようだな。
「ごめんねぇ~迷惑かけちゃって? 少しずつ良くはなってるんだけど」
「はぁ? 何を謝ってんだよばーか? こんなの普段のお前の行いに比べりゃなんともねぇっての!」
「そうだな。寧ろしおらしくなってこちらも助かると言うもの……いい薬となってるんじゃないか?」
ふふ、相変わらず仲が良いようで何よりだ。互いに気を遣う事のないようにしている。
「もー! ひどいなぁ~! まぁ、でも……おかげでフォレストくんとくっつけたわけだし、いい薬って言えばそうかもね!」
「まさかお前達がくっつくとはなぁ~ふはは! この事を女神様方が知ったらさぞ驚くことだろうに」
「だなぁ? へへっ、フォレアのアホみたいに驚くツラ見たかったぜ!」
なんと!? リュールとフォレストが番となったのか!? この事は女神達も知るまい。一体どんな反応を……?
「はぁぁぁぁーっ!!? いやいやいや! どーいうことどーいうことぉぉーっ!?」
「び、びっくり! え? リュールそんな素振りあたしに見せたことなかった、よね!?」
「あらあらあらあらぁ~♪ そうだったんですねそうだったんですねぇ~! うふふふ!」
三者三様に驚いて目をまるくしているな。フォレアルーネの慌てようが面白い。いやしかし……あの無頼のフォレストがなぁ~国を滅ぼされ、互い手を取り合い助け合う内に、そういう関係となったか……うむうむ、人の営みとはどう転ぶかわからぬものよな。
「あんれぇ~? おら達言ってながったべか?」
「この『ファムナ村』はリュール様とフォレスト様が御成婚されで作られだ、そりゃぁ~縁起のいい村なんだべや!」
「ちょぉーっ!? 初耳だべよお父さんお母さん!」
「んだ! 今さ初めで知ったんだげんちもっ!?」
おいおい、フォーネにリールよ? 訛りが出ているぞ? どうやら村人達はこの村の成り立ちを知っていたようで、フォーネの父母の言うことに、揃い頷いている。
「伝え聞いておる話じゃぁ~リュール様は足さ動がねぇ病さ患っちまったそうじゃ。それでも国の復興ばあぎらめずにいだんだべ。だげんども、病さ癒えた頃にゃぁ高齢でなぁ~その辺りも残ってんでねぇべが?」
ふむ。村長の話を聞いてなるほどと、合点がいく。リュールとフォレストの二人ならばとうの昔に国を復興させていただろうに、何故未だ滅んだままなのかと疑問だったのだ。この村から『リーネ・リュール』は結構遠い。年老いてしまってはその長旅は過酷なものとなろう。
ザーッ!
画像がまた切り替わったな。む? これは……大分時が過ぎた後のようだ。
映像に映っているのは、年老いたリュール。布団に横になり伏せているようだ。そして、その横に同じく老いたフォレストと、沢山の村人達。
「……晩年の時だわ。心して観ましょう」
「リュール……」「フォレストくん……すっかりおじいちゃんになって……」
余達はアリサ様のその声に、皆、固唾を飲み込み、映像を注視する。レウィリリーネとフォレアルーネの漏らす呟きが、耳に残った。
「フォレストくん……ごめんね……私と一緒になったから、国を復興出来なかったね?」
「気にするな。子供達が叶えてくれらぁな。だから安心しろって」
「……私ね、フォレストくん。国を復興したいっていう、私達のわがままを……それを子供達にまで背負わせたくないんだ」
──っ!
フォーネとリールが弱々しく話すリュールの言葉に息を飲んだ。
……無念であろうな。病を患いさえしなければ……ユグライアとフォレスト、リュールの三人で復興を果たせていたやも知れぬというのに……
「わかったぜ……確かに、俺達のわがままだ。押し付けるような事はしねぇ。約束するぜ」
「ありがとう……あぁ、レウィリちゃん。会いたいなぁ……ちゃんとお別れの言葉も交わせなかった」
「リュール……っ! あたしも、あたしだって……っ!!」
国の復興に子孫達が誰も着手しておらんのは、二人の『想い』故か。言われるがままに国を復興したとして、そこにゼオンのような志しに、それを共に分かち合う仲間達がおらねば何の意味もない。リュールは暗にそう言いたいのだろうな。フォレストも王であり、リュールの夫として、その『想い』を汲み取ったのだ。
フォレストの答えに安心したのだろうか? リュールは痩せ細ったその腕を余達に……つまり、レウィリリーネの肖像画に向けて悲しそうに呟く。瞳に涙を湛え、泣き崩れそうなのを耐えていたレウィリリーネが、感極まったように声を挙げた。
わかっているはずだ……これは、過去の記録に過ぎぬと……それでも、それでも。伸ばされたリュールの手を掴もうとするレウィリリーネ……虚空を空しく掴むその手にはなにもなく……
「うぅ……リュール……リュールぅぅ……」
「レウィリ、しっかり。しっかりなさい。ちゃんと見届けて……?」
愕然とし……遂には、膝を折り泣き崩れてしまった……そんなレウィリリーネを支えるアルティレーネの瞳にも涙が溢れそうであった……
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【会いたい】~私も……~《アルティレーネview》
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「きっと会えるぜ。先に逝ったユグライアの野郎も待ってんじゃねぇかな?」
「あはは……そうかも、その時はちょっと文句言ってやろうかな?」
「ははは! そうしろそうしろ! 俺も近い内に逝くしよ、そしたらまた三人で馬鹿やろうぜ!?」
……なんて、なんて悲しい。この時には既にユグライアもなく……リュールも旅立とうとしている。穏やかな……それでいて、とても悲しい語らい。
「……子供達、村のみんな。この『ファムナ村』をお願いね? 仲良くするんだよ~?
フォレストくん……こっちに来るのは、ゆっくりでいいからね? ……おやすみ、なさい」
「ああ、おやすみ。リュール……」
そうして、レウィリが祝福を授けた、『リーネ・リュール』の女王は静かに眠りにつきました。国の復興を望むものの、病を患い、若くして不自由な体になってしまったリュール……その病が癒えた頃には随分と年老いて……
ザーッブツンッ!
……終わりのようです。
誰も……口を利けなかった。『記憶映像再生』を操作していたアリサお姉さまも、うつむき、涙をこらえ。他の皆も同様で……
「……子等に託すではなく、自由とさせたか。役目や使命に縛らせぬその心は……変わらぬのじゃな……最後まで己を押し殺す王であり……母であった」
「リュール……フォレスト……ユグライア……其方等は『三神国』の王に恥じぬ者達だ。立派であったぞ……」
本当に……シドウとリンの言う通りです。私達女神は、貴方達に出会えて……苦楽を共に過ごせたこと、誇りに思います!
「……会いたい」
「レウィリ姉……」
膝をつき、静かに涙していたレウィリがボソっと呟いたその一言に、皆うつむいていた顔を上げました。フォレアに支えられて、立ち上がるレウィリが私達に向き直り、アリサお姉さまを見つめます。
「お姉さん……会いたい。あたし……リュールに、ちゃんと……言葉、を……っ!」
「レウィリ……」
ポロポロと……レウィリの頬を涙が伝い床に落ちて行く……わかります、痛いほど。私も、フォレアも、ちゃんとユグライア達に別れの挨拶が出来ていませんでしたから……
アリサお姉さまは、ぎゅっとレウィリを抱きしめて、涙を流し一言「わかったわ」と答えました。
「私も、会ってみたいって思う。村長、彼女達が眠る墓所は何処にあるの? どうにも強い『想い』を感じるけど、私の力が届かないわ」
「なんと……アリサ様の力すら届かせぬとは、それだけ重要な場所に安置されておるのか?」
「ふぅむ……似たような状況がしばし前にあったのぅ……もしや『神器』を奉った『聖域』の『聖樹』のように隔離されておるのか?」
レウィリリーネを抱きしめて、アリサお姉さまが村長に問いかけます。リュール達の『想い』を感じても、その出所……おそらく彼女達が眠る墓所からだとは、私も思うのですが、そこが何処なのかがわかりません。
滅びてしまったとはいえ、かの『三神国』の王達の眠る墓所が、村の共同墓地であるとは思えませんし、バルガスさんが言ったように重要な場所だとは思うのですが。そんな風に私達が考えていると、珠実が気配を感じても、見付けられない。という、この状況が、かつてアリスさんが『聖域』に隔離した『神器』を求めた時に似ていると言うのです。
「うむうむ。遂に儂等が先祖代々御守りしてきたかの地の扉を開く時が来ましたわい……」
「んだ。粉う方なき『調和』の女神レウィリリーネ様だべ」
「ご案内せななんねべ? お父、『聖柩』の鍵ば持ってくっぞい?」
どうやら村長達はその場所を知っているようです。フォーネさんの母親がその『聖柩』と呼ばれた場所の鍵を取りに行く間、詳しく話を聞いてみましょう。
「ええ~ええ~いいですとも。他ならぬ女神様達の頼みじゃ、なんぼでも話すべ。
さっきの記録からわがるように、儂等は『リーネ・リュール』、『ルーネ・フォレスト』、『セリアルティ』……『三神国』の民の末裔なんだべ……」
「んで、おら達村の長を務める家系はリュール様とフォレスト様の直系なんだべよ」
なるほど、だから村長のお宅にレウィリの肖像画が家宝として奉られていたのですね?
「北方の『ルヴィアス魔導帝国』の分派のような形なんだな」
「それなら『セリアベール』も似たようなもんだろうな?」
「……違うとすれば、王が、眠りに……ついた、地。だろう……」
バルドさんとセラさん、デュアードさんがこの『ファムナ村』のありかたについてそのように考察しています。驚きなのが、この小さな村にユグライア達が眠っているということですね。
「でもって、『聖柩』ってのは、フォレスト様が晩年の際に、どごがらが現れたっちゅぅ、『おきつね様』が建てたもんだど言うはなしだべ」
「なんじゃと!? 村長よその『おきつね様』とは、妾のような見目の『狐人』かえ?」
なんてことでしょう。『三神国』の王の中で、最後の一人となったフォレストの前に現れたという、謎の『おきつね様』とは一体……? その名からして『狐人』でしょうか? 珠実が村長に確認していますが……もしや?
アリサ「あら(・о・) まだ『記憶の断片』が一つ残ってたわ(^-^)」
みんな「観よう視よう!( ・∇・)」
アリサ「ほい(。・ω・)ノ んじゃ再生っと( ・-・)」
ザーッ
フォレスト「──にしてもよ、リュールってマジに絵描くのうめぇな(^ー^)」
ユグライア「ああ( ´ー`) お前にこんな才能あったなんてな?( ゜∀゜) ちょっと驚きだぞ?(´・∀・`)」
リュール「うぇっへっへ~♪(`∀´) ありがと二人とも♪(^∇^) 実はこの肖像画描いてる途中にねぇ~面白い事あったんだよ~?(*≧ω≦)」
リン「ほう、これはこの『ファムナ村』で三人が肖像画を観賞しているところか(o・ω・o)」
ミュンルーカ「リュール様の言う面白い事ってなんでしょうね?(*´ー`*)」
レウィリリーネ「……( ゜Å゜;) イヤな予感しかしない(-_-;)」
ユグライア「ほう?( ゜ー゜) 気になるな、何があったのだ(・_・)?」
リュール「ぷぷっ(*`艸´) 私がお着替えしてる時にねぇ~レウィリちゃんったらジー(( ̄_| って見ててさ(*´▽`*)」
フォレスト「ほうほう(゜ー゜)(。_。)」
リュール「私が「どうしたの( -_・)?」って訊いたら~(≧ω≦。) 「なんでもない(o´・ω・`o)」って言ってぇ~自分の胸をペタペタ触って落ち込んでたの!ヽ(*≧ω≦)ノ」
フォレスト「ぶはははっ!!。゜(゜^Д^゜)゜。」
レウィリリーネ「~っ!!((ヾ(≧皿≦メ)ノ)) おのれリュール!(#゜Д゜) あたしの涙を返せ!?ι(`ロ´)ノ」
フォレアルーネ「ぷふっ!(*゜∀゜) まあまあ~落ち着きなよレウィリ姉~♪(°▽°)」
アルティレーネ「あっはっはっはっはっ!!ヾ(≧∀≦*)ノ〃」
ゼオン「ちょ(;・∀・) いくらなんでも笑いすぎですぜアルティレーネ様?( ̄▽ ̄;)」
ユグライア「ははははっ!( ^▽^) それは愉快だな!(o^∀^o)」
フォレスト「はーはー……。・゜・(ノ∀`)・゜・。 いやぁ~笑ったわ♪(´∀`*) レウィリはちんちくりんだかんなぁ~ハッハッハ!(*`▽´*)」
リュール「あはは♪(*≧∀≦) 妹のフォレアちゃんよりちっちゃいもんね?o(*⌒―⌒*)o だからぁ~この肖像画( ・`ω・´)」
ユグライアとフォレスト「うん?(´・ω・`)」
リュール「ちょぉお~っとおっぱい盛っておきましたぁ~♪(((*≧艸≦)」
ユグフォレ「ギャハハハハハっ!!!。゜(゜^∀^゜)゜。」
セラ「わはははは!!( ^∀^)」
バルド「ほ、本当に盛られていたのか……(*´艸`*)」
珠実「はははは!!(ノ∀≦。)ノ こいつは傑作じゃな!(`∀´)」
レウィリリーネ「りゅりゅ、リュールぅぅーっ!!!Σ( ̄□ ̄;)」
シェリー「ぷぷっ!(*≧ω≦)」
デュアード「こ、こら……シェリー(^-^; わ、笑う……ぶふっ! な( ´∀`)」
ブレイド「そう言うデュアードさんも笑ってんじゃないですか♪(;´∀`)」
アリサ「この王様達も結構なイタズラ好きみたいね?( ̄▽ ̄;)」




