119話 聖女と『エルジャ村』
ティリア「あら?(・о・) アリサ姉さんゲームやってるの?(^-^)」
アリサ「おーティリアじゃん(^ー^) いやね、なんか不意に昔遊んでたゲームをやりたくなる時ってあるじゃない?(*`艸´)」
ティリア「あ~そうね(´・∀・`) わかるわぁ~(°▽°) んじゃ、そのゲームが昔遊んでたやつ?(・。・)」
アリサ「うんにゃ~その続編だね、二作目だよ( ´ー`) 一作目はやってたんだけど二作目と三作目はやってなかったのよね~(^_^;)」
ティリア「ははーん(´・∀・`) それでやってみたらはまったと?(*^-^) ふむふむ、『ある……なんちゃら……ねこ』?(´・ω・`; )」
アリサ「詩を魔法にして敵にぶっぱなすゲームだよ(*´∇`*) これの三作目にはあんたと同じ名前の子が出るらしいわ(*´▽`*)」
ティリア「おー!ヽ(*´∀`)ノ ちょっと見て見たいかも!( ゜∀゜)」
アリサ「でも、しばらく中断(゜ー゜*)」
ティリア「えー?(*´・д・) なんで~?(;・ε・ )」
アリサ「ふふふ(  ̄ー ̄) なんとビルダーズがスチームでパワーアップして帰って来たから!(ノ≧▽≦)ノ」
ティリア「あ~(゜〇゜) あのブロック積むゲーム!(*`▽´*) あれ時間泥棒よねぇ~?(´ε`;)ゞ」
アリサ「ハマるともう一日中建築してたりするからねぇ~(゜∀゜;) まぁ、ほどほどに楽しむよ♪( ´ー`)」
ティリア「……何気に気持ち古いゲームばっかね?(^_^;)」
アリサ「新しいのは……指が動かんのんよ(T^T)」
ティリア「(´・ω・`; )」
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【宿れ!】~ウナギ職人達よ!~
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「い~い? よく見て、よく聞いてちょうだいねみんな……」
「は、はいなのじゃアリサ様!」「はい! お姉さま!」
「はっ!」「しかと拝見致しますわ!」
ふぅぅ~……集中よ、集中! 私の全神経を研ぎ澄ましてこの『イメージ魔法』にかけるのよ!? このまな板の上のウナギちゃんに大きな感謝をこめて、全身全霊で捌かなければ! さぁ、今こそ宿れ! 数多のウナギ職人さん達よ! その技術を私に貸して!!
「す、凄まじい気迫! アリサ様の本気が見られること、このバルガス! 感無量!!」
「はぁぁ……『串打ち三年』!」
トンッ! とまな板に乗った活鰻の頭を目打ちして固定!
「関東風で背開き……『裂き八年』!!」
スススゥゥーッ、と『妖精国』のドワーフ達からもらった包丁を、鰻の背から滑らせてその身を開いていく。うむ! 流石ドワーフ達自慢の一振りよね♪ よく切れるわぁ! 続けて串を刺し……うおぉ! なるほど思っていたより固い、こりゃ技術が必要になるのも納得だ。
「さぁ、『焼き一生』よ! 焼いて余分な脂を水で流して、蒸す!」
「なんじゃと!? 折角焼いたのを水で洗うのかえ?」
「しっ! 珠実、黙って見守るのです! アリサお姉さまのこれまでにない、あの気迫を信じましょう!」
すべてはこの時のために用意した! 『イメージ魔法』によるウナギ職人さん達の技術と、最高の『蒸し』と『焼き』を実現する魔装具『蒸し蒸しウナちゃん』と『焼き焼きウナくん』!
まずは『蒸し蒸しウナちゃん』に入れて、しっかりと蒸す。
「そしてぇ~はい、ドンッ! これも私がコソコソと何回も試行錯誤して作り上げた、蒲焼きのタレ! こやつに蒸したウナギをどぷんと浸ける♪」
そうしたら今度は『焼き焼きウナくん』の出番だ! タレをつけたウナギを焼いてぇ~♪
じゅううぅぅぅーっ!!
「まぁぁ~♪ なんて美味しそうな匂いなのでしょう!」
「むぅっ! これはたまらぬ! この香りだけでライスがいけるのではなかろうか!?」
わかる! わかるよネヴュラ、バルガス! タレが焼けるこの香りと匂い! 私も早く食べたくて仕方ない! でもでも、ここからが重要だ、焼いてはまたタレに浸けて焼くこと三回くらい繰り返して、初めて完成となるのだから!
「ら、ライスは! ライスはまだですかお二人とも!?」
「た、たまらんのじゃ! 妾、さっきから口の中がよだれでいっぱいじゃぁ~アリサ様! 早う、早う食べさせてたもれ!!」
「ご安心召されい! ただいま炊き上がりましたぞ!?」
「早速よそいますわ!」
はい! みなさんこんにちは♪ 引き続き聖女のアリサさん達がお送りしますよ♪
ウナギの噂を聞き、『ぶっ飛びヒャッハーくん』に乗って、『セリアベール』からこの『エルハダージャ』の辺境まですっ飛んで来た私達五人。早速目的のウナギをゲットして、夢にまで見たうな重を調理中なのだ! 私はウナギの調理方法なんて、知識にはあっても、実際にやったことなんてなかったんだけどね? そこをカバーしてくれるのが『イメージ魔法』ってわけだ! 経験のない事を無理にその『イメージ魔法』で実現するためか、かなり疲れるけど……めっちゃ良い感じに出来上がったのではなかろうか!?
アルティレーネと珠実が漂う美味しそうな蒲焼きの匂いに、我慢が限界に来てるみたいだけど、丁度良いタイミングでバルガスとネヴュラが炊いていたお米が出来上がった。私は二人がよそったそのご飯の上にタレをまぶし、焼き上がったウナギの蒲焼きを乗せて、みんなに配って行く。
「さぁ! 召しませ渾身のうな重! みんな遠慮せずやっちゃって?」
「「「「いただきまぁーすっ!!」」」」
はい。私もいただきます! あむちょっ!
うおぉぉぉーっ!!?
「な、なんという……なんということでしょう!? あぁ! 私これほどまでに美味しいとは露ほどにも思いませんでした!!」
「素晴らしい! なんたる美味か!」
「うまいのじゃ! うますぎるのじゃ!! それ以外の言葉が見つからんのじゃーっ!」
「これはっ! アリサ様が求め続けるわけですわね! 美味しすぎて箸が止まりませんわ!」
いんやぁ~こりゃうんまぁい♪ 焼き立てのウナギのこのふわっふわでいながらにして、すんばらしい肉厚ジューシー感! タレも見事にマッチしてご飯が進む進む! 他の四人も「もうたまらん!」と言った様子でがつがつむしゃむしゃと、凄い勢いで食べまくってる。
「あら!? えぇ~もう食べ終わっちゃいました……お姉さまぁ、お代わりがほしいです」
「妾も!」「我も!」「私も!」
うわ、速っ!? バルガスと珠実はまだわかるけど、普段お上品に食べるアルティレーネとネヴュラまで、掻きこむようにして、あっという間にうな重を食べ干しちゃったよ?
「相当美味しかったみたいだね? じゃあ、お代わりの分作ってる間にあんた達には、ちょいと一仕事お願いしようかな?」
「任せて下さい!」「「なんなりと!!」」「妾に任せるのじゃ!」
あはは♪ まったくこの子達ったら、内容も聞かずに二つ返事しおってからに! まぁ、お願いする仕事は大した事じゃない。
「分かりやすいようにマーキングしておくから、ちょっとこの辺歩いて、山椒の実を採って来てちょうだい?」
うな重に欠かせない臭み消しであり、香辛料でもあるサンショウが付近に自生してるのはミニマップを見たときウナギと一緒に確認済みだ。早くウナギが食べたかったからすっ飛ばしちゃったけど、やっぱりサンショウがある方が私は好きだわ。なので、ミニマップにマーキングしてるのを応用して、山椒の実を分かりやすくリアルにマーキングしておき、この食いしん坊達に採取してきてもらおうというわけだ。
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【特盛りひつまぶし!】~食べ方色々♪~
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そして二日目。
「おはようなのじゃアリサ様♪」「おはようございますお姉さま♪」
「「おはようございますアリサ様!」」
「あい、みんなおはよぉ~♪ なんか朝からめっちゃ元気ね?」
昨日に降下して、ウナギをゲットした川付近の木々をちょっとだけ伐り拓いて、『中継基地』を設置して、一夜明かした私達。夜遅くまでウナギでひゃっほいしてた分、みんな朝起きてくるのは遅めの時間である。私も今日はちょいとお寝坊さんをさせてもらったけど、まぁ、ご飯の準備とかあるから、みんなより少し早目に起きてきたんだけどさ。
珠実にアルティレーネ、バルガスとネヴュラもキッチンにいる私の姿を認めて、元気な挨拶♪
「うふふ♪ だって昨日のウナギがあまりにも美味しかったものですから!」
「うむうむ! そりゃぁ妾もご機嫌になるというものじゃよ♪」
あはは。もう単純なんだから! バルガスとネヴュラもそんなアルティレーネと珠実の答えにうんうんって力強く頷いて同意してるし。まぁ、確かに昨日のうな重は最高だったわ。サンショウも無事にゲットして、魔法で粉末にしてちょこっと振り掛けて食べるうな重! むふふ……早く『聖域』のみんなにも食べさせてあげたいね♪ きっと喜ぶだろうし!
「ふふふ。随分昨日の蒲焼き祭りが気に入ったようね? そんなあんた達にもっとウナギの魅力を教えてあげましょう~♪」
「なんと!? 更にウナギを使った料理があるのですかな!?」
「嬉しすぎます! あぁ、是非とも私にもご教授下さいませ!」
そうだよ~バルガスさんや? ウナギの魅力は何も蒲焼きだけじゃない。今朝の朝ごはんでそれをみんなにも知ってもらおうと一生懸命に準備をしていたのだ。ネヴュラにも勿論教えてあげるからね?
「それがこの「ひつまぶし」だよ♪」
「わぁ! す、凄い豪華ですね! これで一人分なんですか!?」
「はわわわ! おひつにいっぱいのウナギの蒲焼きに、お吸い物。数々の薬味に漬物!」
「これはだし汁ですか? 凄い……これら御膳が一人分……」
ふふふ、びっくりしてるね! 無理もない。前世でも「ひつまぶし御膳」なんて結構なお値段する、ちょっとお高級な料理だからねぇ~? しかも食いしん坊のみんなのためにおひつも特大サイズだ。付け合わせのお吸い物やらお漬物に薬味、だし汁とかまとめてお盆に乗せて、はい一人分! そりゃ豪華にも見えるよね♪
「このおひつから四等分してさ、このお椀に自分でよそってね? 食べ方は自由だけどさ、基本的に最初の一杯はそのまま、二杯目は薬味をかけて、三杯目はそのだし汁をかけてお茶漬けにして食べるわね♪」
「ほぉぉ~なんと色々と試せるのじゃな!? 四杯目はどうするのじゃアリサ様?」
ひつまぶしの基本的な食べ方は言った通り、四等分して味変を楽しむ食べ方が普通だけど、別にそれにこだわらなくてもかまわない。好きに食べてくれていい。まぁ、でも先人達が美味しく食べるために考えたのだから、ならっておくことを勧める。
「四杯目はねぇ~結構色々パターンがあったね~? 醤油漬けにした卵黄かけたり。とろろ芋かけたり……」
「お、お姉さま? おひつの中のうな重を四等分とおっしゃいますが……四等分しても凄い量です!」
「まぁ~♪ これでしたら色々な食べ方が試せますわね!」
「うむ! 四杯目と言わず、五杯目、六杯目もいけよう!」
そう。普通のひつまぶしって、大抵四杯目で食べ終わるんだよね。定番の三杯目までの食べ方を楽しんだら、後は好きな食べ方でどうぞって感じ。なのでこの四杯目って、色んな食べ方があるみたい! 実はおひつを特大サイズにしたのには、この色んな食べ方ってのを私も試して見たかったって理由もあるんだ♪ だからアルティレーネが四等分に分けようとして、お椀いっぱいにしてびっくりしてるのもしょうがないね! ネヴュラもバルガスも色々試してみてね?
「では早速、いただきます!」
いただきまーす!!
そして実食♪ うむうむ、やっぱり美味しいね! そのままでも、薬味かけても……あぁ、特にこのワサビとかいいわぁ~♪ だし汁かけたお茶漬け風も!
「さて、んじゃ四杯目♪ 私はまずこの醤油漬けの卵黄をかけて……」
ふぉぉ~♪ こりゃウマーイ! 卵黄がウナギを包んでまろやかぁんなとろみが! うひょーっ! 食べる手が止まらんね!
最初は生卵を食べる事に敬遠されたものだけど、私がしっかり魔法で殺菌してるから大丈夫だと、みんなを説得したのが懐かしい。卵殺菌用の魔装具なんかも作ったから、『聖域』じゃみんな普通に生卵を食べているんだよ?
「まぁ、本当ですね♪ これなら小さいお子さんにも喜ばれそうです!」
「そうですわねアルティレーネ様♪ シャフィーちゃんや、ネーミャちゃんにも食べさせてあげたいものです」
私の卵黄かけた食べ方を真似したアルティレーネとネヴュラがそんな感想を漏らし、ニコニコ微笑んでいる。卵が包むとろりとして濃厚な味わいは確かに子供達にも喜ばれるだろう。帰ったら作ってご馳走してあげよう♪
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【絶対食べ過ぎです!】~お嘆きネヴュラままん~
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ん? なんぞオプションに反応があるね? これは『ルーネ・フォレスト』の『龍脈の源泉』を監視してるオプション……ゼオンに渡したあるちぃと同様に、フォレアルーネをモチーフにした『ふぉれやん』からの反応だ。なんだべ? なんぞ『龍脈の源泉』に異常でもあったのかな? どれどれ、ちょいと見てみようか?
私はその事をひつまぶしを食べてるみんなにも説明して、映像通信を展開させる。するとそこには……
「ん~? 『ルーネ・フォレスト』にいる『ふぉれやん』からなんか反応あるなって思ったら……翼達かね?」
《おわぁっ!? び、ビビったぁ~! アリサ様俺っち達に気付いてたんですか!?》
おやま。何かと思えば見馴れた鳥達。『鳳凰』の翼率いる『偵察部隊』じゃないの? 突然映像通信が現れて驚いたのか? 四羽の鳥達は揃って面白い顔をしてる。
「ぷふっ! なんじゃ翼よ? その間の抜けた面白い顔は~♪ 妾達は食事中ぞ? 笑かすでない」
《マジに繋がっちゃったぞ! うぇぇーい! 千切りキャベツに顆粒出汁。あざぁーしたっ!》
《うふふ♪ 夕べはお好み焼きで、今朝はホットケーキを食べましたの!》
それを見た珠実が可笑しそうに笑うと、『偵察部隊』はみんな我に返ったようで、ウノとルロイヤが嬉しそうに食べたご飯の報告をあげてきた。
彼等の言った千切りキャベツに顆粒出汁は私が『無限円環』にいる間に、旅立つみんなのためにと、せっせせっせと用意した物だ。役立ててくれたようで何よりだねぇ♪
その後、バルガスがひつまぶしを見せびらかしたり、それに翼達がうらやましがったり、そのウナギと『ラングドシャクッキー』を送ってほしいだのなんだのと、まぁ~色々とお願いされたけど、ないならないで、色々模索して旅を楽しみなさいと、言っておいた。
翼達はこれからゼルワとサーサの故郷に向かい、頼まれた手紙を渡しに行くみたいだね。中々閉鎖的な集落って話だから、変にトラブルとか起きないといいんだけど……まぁ、翼達なら大丈夫でしょう?
「ああぁぁ……なんてこと……あれだけの量を食べて……食べきってしまったわ……っ!」
でもって、みんなぺろんちょと朝ごはんに出したひつまぶし御膳を食べきって、「ごちそうさまでした~♪」ってにっこりした後のことだ。ネヴュラがなんぞ頭抱えて喚き出した。
「なんじゃネヴュラ? お主もうまそうに食うておったではないか?」
「うむ。実に幸せそうに食っておったな?」
「ですから! それが問題なのです珠実様! あなた! 昨夜のうな重から今のひつまぶしまで! ああぁぁ……どう考えても食べ過ぎです! だ、ダイエットがぁぁ~」
おぅ……そう言うことか……確かに、昨日もうな重お代わり含めて……うん。そして今の朝食に特大おひつでひつまぶし……うん。ヤバいわ、私やアルティレーネは『不変』持ちだから問題ないけど、ネヴュラ達は違うもんねぇ?
「なに、その分運動すれば良いのじゃ♪」
「如何にも。なんならここから『エルハダージャ』の王都まで走れば良い」
「そんなぁ~!?」
しかし、珠実とバルガスはそれがどうした? って感じで笑い飛ばし、王都まで走るのはどうだとか言い出した。普段あまりそういった運動をしないネヴュラにはキツイんだろう? ガックリと肩を落として嘆き出した。
「そう言えばここは『エルハダージャ』の王都からどのくらいの位置にあたるんでしょう? お姉さま、地図をお願いしても?」
「あいよ~大分東に飛んで来たからね。通り過ぎちゃってるんじゃないかな?」
アルティレーネに促され、私は『世界地図』をモニターごと映し出し、現在地と目的地である『エルハダージャ』の王都との距離を確認する。うん、やっぱり通り過ぎてる。
「ほう。今いるのはこの大陸の大分東のはしっこじゃなぁ?」
「王都は……ふむ。大分北ですな? 少しばかり西に戻り、北上致しましょうぞ」
「と、遠いです……この距離を走るんですか?」
この大陸は地図上で見るに、大分縦長な大陸のようで、私達がいるのは珠実も確認したように、大陸の南東だ。目的地の『エルハダージャ』の王都は、ここからだと大分北に位置している。北北西と言ったところだね。バルガスの言うように、一度少し西に戻り、そこからひたすら北に向かって進めば王都に着くだろう。ネヴュラがうへぇ~ってなってるように距離はあるけどね。
「途中に村があるようですね? 立ち寄ってみますか?」
「そうだね、今日はその村まで移動して一夜を明かそうか? ふふ、ネヴュラのダイエットもかねて走って移動するなら、いい距離なんじゃない?」
あー恥ずかしいです! って、私が「にしし♪」って笑いかけてやれば、両手で顔を覆って、いやんいやんするネヴュラさんですよ♪ うむうむ。お昼はちょいと軽めにしてあげましょうね。
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【立ち寄った村】~『エルジャ村』~
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「へいっ! らっしゃーい! よく来たな旅人さん達! 『エルジャ村』にようこそ!」
「あ、はい。どうも……」
そんなわけで、シュタターって、森を越え、川を飛び越え、山を登って降りては野を駆けて~なんて事を繰り返すこと数時間。私達はウナギをゲットした最初のポイントから、『エルハダージャ』の王都までの間にある、村というよりは町と呼べる規模の『エルジャ村』にやって来た。
道中結構強い魔物……まぁ、『聖域』の魔物ほどじゃないけど。が、襲撃してきたり。アルティレーネが道に迷ったり、ネヴュラがひぃこら言って転ぶこと数回、等。まぁ、ちょっと笑える出来事もあったりしたけど、日が沈む前に辿り着けたよ。よかったよかった♪
「よかったよかったじゃありません! アリサ様ひどいです! 私一生懸命走りましたのに、お笑いになるなんて!?」
「いや、ネヴュラよ。お主はどう考えても運動不足じゃぞ?」
「ははは! 元気な旅人さん達だな!? あんたらもやっぱり『エルジャ茸』が目的かい?」
なんて思ってるのが顔に出てたのか、ネヴュラがゼーゼー言いながらも、私にぷんすか怒ってる。いやいや、私達結構のんびり来たじゃん? お昼も軽いサンドイッチとお茶やジュースで、紅葉と動物達を眺めてピクニックしたし。あ、鹿ちゃん達可愛かったねぇ? っと、脱線するとこだった……まぁ、確かに走って来たってのは事実だけど、適度に休憩も挟んだし、無理のないペースだった筈だ。それがキツイっていうなら、珠実が言うように運動不足なんだろう?
そんな風にプリプリ怒るネヴュラをみんなでなだめていると、『エルジャ村』の門番さんかな? 若い青年だ。角刈りの茶髪の結構がっしりとした体格に、作務衣のような服装、結構質の良さそうな槍を持って、私達のやり取りを面白そうに笑っている。
あれ? そういやこの門番さんが言った『エルジャ茸』って確か……
「ほう。名前からそうだとは思ったが、やはりこの村が産地であるか? 門番殿?」
「応よ! 『世界一美味いエルジャ村のエルジャ茸』! 今じゃその名も轟き『エルハダージャのエルジャ茸』になっちまったけどな!?」
ほほーう! バルガスが『セリアベール』の酒場で冒険者達から聞いたっていう、『エルジャ茸』その産地がこの村なのね? 「有名すぎて、今やお国を代表するくれぇだぜ!」とは、この門番さんの言葉だけども。いやいや、嬉しそうだねぇ?
「だけどなぁ~最近は……あぁ、いや済まねぇ! 見たところあんた達は悪人でもなさそうだし、遠慮しねぇで村に入んな! もうすぐ日も暮れちまうぜ?」
「あ、うん。ありがとう門番さん。さ、みんなも行きましょう?」
なんか、今門番さんの嬉しそうな表情が一瞬曇ったわね? なんだろ、何か問題でもあるのかな?
「結構活気のある村ですね? 村人達も楽しそう♪」
「うむ……しかし、なんじゃろうな? 先程の門番もそうじゃったが、少し耳をすませば、どこか不安そうな声が聞こえてきおる」
門番さんにお礼を言って村に入って見ると少し魔素が薄らいだのを感じる。どうやら、村を囲む木壁は、街道にも使用されている魔物避けの魔装具のようで、村人達はそのお陰でのほほんとした感じに生活できてるみたい。
門を抜ければちょっとした広場になっており、正面に村の中央へと続く道が幅広く走り、その左右に木造の平屋が軒を並べている。私達のいる広場から正面、右には大きな二階建ての家があり、玄関前に掲げられた大きな看板から、宿である事が直ぐにわかるようになっていた。今日はその宿で一泊かしらね?
村人達は中央あたりにいるのか、この入り口付近にはあまりおらず、しかし時折見かける子供達や、主婦であろう婦人達が皆笑顔で楽しそうなのを見て、アルティレーネが嬉しそうに微笑む。珠実はその耳の良さから、少し離れた位置にいる人の話し声なんかを拾っては、何か不安そうにしている者もいるようだと感じているみたいだ。
「とりあえずはあの宿に入りましょうぞ?」
「そうですわね。宿の主人から色々と話を伺ってみましょうか?」
まぁ、この入り口で突っ立ってても仕方ないっちゃ仕方ないね。バルガスとネヴュラの言うようにあのお宿にお邪魔してみようか。
「らっしゃい! 五名様かい? おやおや! 厳つい剣士のおっさん、えらいべっぴんさん四人も連れ込んで~♪ すみに置けないねぇ? うちは素泊まりでお一人銀貨三枚だよ?」
「ふむ。我と妻で一部屋、このご婦人達に一部屋の二部屋を借りたいが、空きはあるか店主よ?」
おぉ、宿屋の店主らしきおっちゃんよ。勘違いも甚だしいぞ? まぁ、でも私達の中でバルガスは唯一の男性だから、私達が侍ってるって思われても仕方ないか。
「応。そうかい、まぁ、邪推もよくねぇわな! 二人部屋と三人部屋だな? 空いてるぜ?」
「ではそれでお願い致しますわ。それから店主、この村は『エルジャ茸』の産地だとお聞きしましたけれど、食事はでないのかしら?」
「あぁ、生憎となぁ……う~ん、あんた方は腕も立ちそうだし、話してもいいか……」
バルガスが店主にネヴュラと夫婦だって仄めかし、店主もそれを聞いて察したんだろう。素直に二部屋を案内してくれる。ネヴュラが私達を見て暗に「構いませんか?」と、確認を取って来たので首肯で応えると、店主に向き直り、手続きを進めた。その際に『エルジャ茸』の産地なのに、食事は出ないのかと問うと、店主は表情を曇らせて、少し悩んだ後、その事情を話し出した。
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【あれ? どっかで聞いたような?】~バカダケキノコ?~
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結論から言うと。この『エルジャ村』で、現在『エルジャ茸』を手に入れる事は出来ないらしい。と言うのも、『エルジャ茸』の群生地である近くの森に、魔物が棲み付いたからだそうだ。
その魔物っていうのがなんでも、物理的な攻撃が何故かまったく効かず、下手に近付こうものなら、麻痺や眠り、毒や幻惑攻撃で無力化されてしまう。唯一、魔法による攻撃なら通るらしいが……
「なんせ数が多すぎてなぁ~王都から来た冒険者達も失敗続きでよぉ~採りにいけねぇって来たもんだ! 今んところ少し前に採って来たもんで賄っちゃいるがな? 『エルジャ茸』は俺らの主食なもんで、客に出せるほど数がねぇんだ……済まねぇな?」
「なるほどねぇ……おっちゃん達ならそんじょそこらの魔物なんかぶっ飛ばしそうだけど?」
「あたぼうよ! この『エルジャ村』の皆はそこいらに棲みついてる魔物なんざ目じゃねぇや! 俺も自慢の斧でぶったぎるぜ!?」
うむうむ。噂通り、『エルハダージャ』の国民性はやんちゃ上等の江戸っ子だわね♪ 魔物避けの木壁で囲まれてるとはいえ、こんな周囲が森と山ばっかの、如何にも魔物が棲んでます~な場所に暮らすだけあるよ。
「なんじゃ? どこぞで聞いたような魔物じゃのう~店主よ、その魔物とやらはもしややたらと巨大なキノコの魔物ではないか?」
「おぉ! やるなキツネの嬢ちゃん! その通りだぜ! 「ぎゃぷーぎゃぷー!」とか、人を小馬鹿にしやがるふてぇ野郎共だ! 腹立つったらねぇぜ、チクショウめ!」
珠実はどうもその魔物に心当たりがあるらしく、店主にこんな魔物じゃないか? って確認を取っている。どうやら大当たりのようで、店主も思い出したのか凄く腹を立てている様子だね。
ってか、物理攻撃が効かないキノコの魔物って……『バカダケキノコ』かな?
「間違いないでしょうね。群生地に棲みついたのが『バカダケキノコ』なら、冒険者にも厳しいでしょう」
「一般の冒険者であるなら、Sランク相応の魔物でしたわね?」
アルティレーネとネヴュラがその魔物の特徴を聞き、『バカダケキノコ』と断定する。うむ。これまた懐かしい話だけど、『聖域』に来たばかりの頃のアイギス達『白銀』の面々……いや、あの時はサーサに相手させたんだっけか。結構苦戦してたよね? 当時のアイギス達はSランクの冒険者達だったからね、その彼等が苦戦した相手が群れてるなら、そりゃ討伐も難しいだろう。
「も、物知りなんだなぁ~べっぴんさん達! しかし、Sランク相当かよぉ~? こいつは参ったぜ! どうにかならんもんかねぇ?」
「なんなら私達が明日にでも出向こうか? 私もその『エルジャ茸』食べてみたいし♪」
そんなアルティレーネとネヴュラ、珠実に感心した店主だけど、突き付けられた現実にまた頭を抱えてしまう。まぁ、『エルジャ茸』に生活を支えられてるみたいだし、死活問題なのだから無理もないね。こりゃ放って置くわけにもいかないでしょう? 折角だし私もその『エルジャ茸』を食べてみたいから、手を貸そうと思うよ。
「おおっ! そいつはありがてぇ!! 是非とも頼むぜ! よっしゃ、ちっと待っててくれよ? おーい! お前ーっ!?」
「なんだいあんたぁーっ!? お客さんかい?」
おやおや? むほほ♪ 宿の受付の奥に店主が大声で呼び掛けると、小柄ながらも恰幅のいいおばさまが登場したぞ? 割烹着姿の如何にも「かみさん」って感じ。店主の奥さんだろう。うむうむ、夫婦間で「お前」と、「あんた」呼びってのも通じあってる感じがしていいねぇ♪
「応! 実はな、こうこうそういうわけでよ!?」
「あれまぁーっ! そりゃあありがたいねぇ!? でも、ホントにいいのかいお客さん達? 結構危ないよ!?」
「ご安心下さい奥様。私達こう見えて魔法には一家言御座いますの。ふふ、『バカダケキノコ』とも何度か戦った事がございましてよ?」
店主が嬉しそうに奥さんに経緯を説明してあげると、おかみさんもまた嬉しそうに笑顔を見せるけど、直ぐに私達の身を案じてくれる。この人達もまたいい人だなぁ~? そんな二人にネヴュラがお任せくださいと胸を張り、やる気を滾らせる。
「かぁーっ! 嬉しいねぇ! よし! じゃあ無事にあのオバケキノコ共をやっつける事ができたら、宿代をタダにしてあげるさね! あんた! いいだろう?」
「あたぼうよ! 俺達ゃ~受けた恩は必ず返すぜ! お前、このお客さん達を部屋に案内してやってくれよ! 俺ぁ村の衆に伝えてくらぁ!」
任せな! って、おかみさんの元気な返事を聞いて店主は外に飛び出して行っちゃた。よっぽど困ってたんだねぇ? こりゃしっかりご期待に応えてあげなきゃいけない! 私達はみんなで顔を見合せては、「うん!」って頷きあった。
「さぁ、部屋に案内するよお客さん達! 今日はゆっくりと休んでおくれ! 明日には村の衆でその群生地に案内するからね!」
「わかったわおかみさん!」
「大船に乗ったつもりで安心するがよいぞ♪」
私と珠実がおかみさんにそう答えれば、おかみさんもいい笑顔を見せてくれる。こういう気風の良いおかみさんってのも、憧れちゃうねぇ~♪
そのおかみさんの話だと、どうやら村人達がその『エルジャ茸』の群生地にまで案内してくれるみたいだ。まぁ、普通は私みたいにミニマップなんて使えないから、これは村人達の誠意なんだろうね? 丁度いいので、その村人達には討伐した所をしっかり見せて、安心してもらいましょう♪
アリサ「うひょー♪(゜∀゜) 紅葉綺麗だねぇ~!ヽ(*´∀`*)ノ」
アルティレーネ「ええ!(^ー^) とっても♪(*⌒∇⌒*)」
珠実「見事な滝もあるのぅ~( ´ー`) あ、ホレ見るのじゃアリサ様!( ̄0 ̄)/ 鹿の番じゃ♪( ・∇・)」
アリサ「あらホント!?(*´∇`*) 仲良さそうだねぇ~(^-^)」
アルティレーネ「そう言えばこちらのご夫婦はどうされたんです?(´・ω・`)」
珠実「あそこで妻の方がバテておるな(-∀-`; )」
バルガス「しっかりせんか!?( ・`ω・´) こんな事ではアルティレーネ様の護衛が務まらぬぞ!?(*`Д')」
ネヴュラ「ぜぇはぁ……(;><) も、もう駄目ぇ~ヾ(;゜;Д;゜;)ノ゛」
アルティレーネ「あらあら(^_^;) 仕方ありません、少し休憩を挟みましょうか?( *´艸`)」
アリサ「はいはい( ゜ー゜) んじゃサンドイッチでも食べて紅葉狩りでも楽しんで行きましょうか♪(゜▽゜*)」
珠実「うむうむ!(°▽°) 妾あの鹿共と遊んで来るのじゃ♪(ノ≧∀≦)ノ」
バルガス「申し訳御座いませぬ(;>_<;) 我が妻が皆様の足を引っ張ってしまいましたな(-_-;)」
ネヴュラ「うう……夫が冷たいわ(*T^T)」
アリサ「大丈夫だって( ̄▽ ̄;) でもネヴュラはもうちょっと運動した方がいいかもね?(*`艸´)」
アルティレーネ「うふふ♪(*´艸`*) 特に最近は美味しい食事が増えましたし、油断しているとあっという間にぷくぷくに……(*≧∀≦)」
ネヴュラ「いやあぁーっ!Σ(>Д<) あ、アルティレーネ様!( ;`Д´) 『不変』! 『不変』をどうか私めにもお授け下さいぃぃ~!o(;д;o)」
アリサ「う~ん(´・ω・`; ) 最強のチートはやっぱり『不変』かもしれないねぇ?(*`艸´)」
バルガス「だから食った分動けとあれほど……(;´A`)」




