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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
15/211

15話 魔女と履歴書

区切りを少しいじりました。

──────────────────────────────

【家族】~例え生まれは違えど絆は紡がれる~

──────────────────────────────


 引き続き、三日目の夜。


「じゃあ、アルティ達の報告を聞く前に……ティリア。はっきりさせておきたいんだけど」

「うん? どうしたのアリサ姉さん?」


 リビングに集まった私達10人+α。

 私、ティリア、アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネ、ユニ、バルガス、ネヴュラ、フェリア、パルモーはティターニアとアルティレーネ達との話し合いの内容を確認する為の会合に入った。一緒にミーナとモコプー五羽も同席だ。

 でも、その前に私はどうしても聞いておきたいことがあったんだ。主神のティリア、私の双子の妹に。


「あなたは私の監視ってことでこの世界にとどまっていられるのね?」

「!? アリサ姉さん……気付いて!?」


 そりゃ気付くでしょうよ、本来なら『聖域』が再生された時点で立会人の役目は終わっているんだ。役目が済んだ『主神』が一つの世界にとどまっているのはおかしい。何か他にも理由が必要な筈。では、その理由はなんだろう?

 黄龍のシドウが言ってたように『主神』が立会人となった理由は、『第二の魔神の発生防止』だ。

 アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネの三人は女神本来の力を行使しても『魔神』となる事はなかった。ならばもう安心なのか? いや、そうじゃない。『聖域』を再生するにあたり、様々な障害を乗り越え、成功に導いた鍵となる人物がいる。その者は今後、更にその力を増して行くだろう。その者こそが最も『第二の魔神』に近いのだ──


「ならば引き続き近くで監視をしなくてはいけない、もし、その者が力に溺れ『第二の魔神』となるなら……被害が出る前に消滅させる……と、こんなところでしょう?」


 全員が息を飲むのがわかる。まぁ、こうなるだろうとは思ったのでいいんだけどね、重いのは後に残したくないのよ。


「はぁ……凄いなぁ、全部お見通しなんだねアリサ姉さん」


 ティリアが降参降参とばかりにホールドアップする。


「まぁ、私が馬鹿なことしでかしたら止めてくれるってことでしょ? 正直助かるよ? それに、私の監視するってことでアルティ達とも一緒にいられるもんね♪」


 そう、結局私がやらかさなければ良いってだけでメリットの大きい話だ。


「そういう目論見があったのは認める。でも、誤解しないで。私がそう思ったのは、アリサ姉さんが心から私を思ってくれたからだよ。もし、あの時、アリサ姉さんが私を畏敬の目で見てたのなら大人しく『神界』に戻っていたわ」


 あの時というのは私がティリアを抱きしめて撫でた時だろうね。


「側にいたいって、心の底から思った……これは紛れもなく本心よ?」


 うん、そう思ってもらえて嬉しい。彼女の思いに答えるためにも、馬鹿なことしないように気を付けよう。


「ありがとうティリア。私はまだこの世界に来て日が浅いから、ちゃんと見ててくれると助かるよ。バルガス達も私が間違えてるって思ったら遠慮なく注意してね?」

「はっ! ご命令とあらば!」


 自分が凄いやつだ! とか増長してやらかす。なんてみっともないしね、みんなが「それは駄目だよ」ってちゃんと言える風土作りもしなきゃいけないね。私はちょっと器用なだけの魔女って認識しておこう。


「私達は種族も違えば、生まれも育ちも違う。血の繋がりもないけどこうして集まった『家族』だからね。この絆を大切にしたいな……」


 血が繋がってても、同じ家で一緒に暮らしても、「コイツがどうなろうと知らない」と見捨てた前世の家族。

 そんな家族と違って今の私達はとても温かな絆で紡がれてる。その絆を心に刻んで生涯忘れないようにしたい。知らず重ねた両の手を胸に添え祈る、敬虔な信徒が信じる神に捧げるように……


「『家族紡ぐ絆(タイズファミリア)』」


パアアァァーッ!!


 温かい光が私達を包み、みんなの内に吸い込まれて行く。忘れないで、今の気持ち。私達はこんなにも温かい思いで繋がれているよ。そんな赤裸々な私の思いをみんなに届ける魔法、家族紡ぐ絆(タイズファミリア)。ちょっと恥ずかしいけど、知ってもらいたい。


「にゃあぁ~ん♪」


 ミーナ……いつも一緒にいてくれてありがとう。これからもずっと一緒だよ。


「あったかい……感じるよ、アリサおねぇちゃんの気持ち」


 ユニ……私の初めての友達、大事な大事な妹。大好きよ。


「アリサお姉さま」


 アルティレーネ……私をこの世界に連れてきてくれた優しい子。責任感が強くて、でも甘えたがりの女の子。これからは私が支えるからね。


「アリサ姉さん」


 ティリア……主神として今まで沢山の感情を圧し殺してきた、とても頑張り屋さん。せめてこの世界の中だけでも思うままに過ごせますように。


「アリサお姉さん」


 レウィリリーネ……素っ気なさそうに見えて、実はとても情に厚い、ちょっとだけ無口な子。これから貴女がもっと笑顔を増やしていけるように頑張るね。


「アリサ姉」


 フォレアルーネ……ぶっきらぼうなマイペースの性格。でもその持ち前の明るさにはきっとみんなが助けられてる。これからもその明るい笑顔を私に見せてね。


「心地よい温もり、このバルガス。しかと受け止めまして御座います」

「私共も家族とお認めくださるのですね……あぁ、なんと深い慈しみの心」

「感じます、アリサ様の思いを」「うん、胸がほわほわするよ。凄く気持ちいい」

「「「「「プー♪」」」」」


 バルガス、ネヴュラ、フェリア、パルモー、モコプー達……出会ったばかりだけど、みんなの厚い信頼ははっきり私に届いてる。これから色々苦労をかけるかもしれないけど、どうかよろしくね。


──────────────────────────────

【アリサさんの秘密】~履歴書~

──────────────────────────────


「ありがとうアリサ姉さん……家族紡ぐ絆(タイズファミリア)……とっても温かいわ。うん、やっぱりちゃんと話さなきゃ……聞いてくれる?」


 ティリアが家族紡ぐ絆(タイズファミリア)の温もりを噛み締めるように、目をつぶり何度も頷いている。と、思ったら、決意したように真剣な眼差しを私に向けてきた。


「大切な話みたいだね……うん、いいよ。しっかり聞くから」

「ありがとう、じゃあまずはこれを見て」


 ティリアが手を差し出して、私のよくやる映像通信(ライブモニター)みたいなウィンドウを展開させて見せてくる。なになに~?


[アリサ]

 職業[聖域の魔女][聖域の聖女]

 身長・体重・BWHっておいぃーっ!!?


「こらぁ! これはみんなに見せちゃ駄目なヤツでしょー!?」

「あ、ごめん! 間違えた!」

「にゃぁ!?」


 あーっ! 大きな声出したからミーナに怒られちゃったじゃない!

 ごめん、こっちこっち。って二枚目を見せてくるティリア。しょうがない、一枚目は個人的に後で見せてもらおう。


 ─────────────────────────────

  名前[アリサ]

  種族[人間(転生者)]→[亜神]                     

  職業[聖域の魔女][聖域の聖女]New              

  加護[不滅][不朽][不変][最適能力:イメージ魔法][無限魔力]

  能力[剣聖剣技]New[創薬][祈り]New[料理][万能言語]

    [聖霊召喚][神眼]       

 ─────────────────────────────


「……何て言うか、ツッコミどころ満載なんだけど?」

「ですよねー……あ、怒んないで! ちゃんと一つ一つ説明するから!」


 何を他人事みたいに言うんだこの妹は! ちゃんと説明なさい! って思ってたのが顔に出たかな? はぁ、これっていわゆるステータス? 何か履歴書みたいな感じだけど……


「これはアリサ姉さんの、うーん……履歴書だよ。便利な自動更新なの! 凄いでしょ?」

「ってまんま履歴書なのかーい! ステータス画面かと思ったわ!」


 加護とか能力って出てるからちょっと期待したのに……


「アリサ姉さんがイメージしてるステータスってあれでしょー? LvとかHPとかMPとか表示されるヤツ?」


 そう、まさにそれだ。やり込んで全ステータスMAXにするのが好きだったよ!


「もうっ! ここはゲームの世界じゃないのよアリサ姉さん? レベルだのHPだの数字で表されるわけないでしょう? まぁ、そういう世界創ってる子もいるけども」


 あ、あるにはあるのね、そういう世界。考えてみればこの世界ってアルティレーネ達が創ったんだっけ……そりゃRPGなんて知らないわよね。


「スゲェー! 無限魔力なんて存在してたんだ!?」

「やはり、アリサ様は神であらせられた!」

「魔女と聖女……最上級の二つの職……!?」

「けけ、剣聖剣技!?」


 おーおー、バルガス一家が揃って驚いてるぞ。だけど私が一番ツッコミたいのは、いや……上から順に聞いていこう。まずは……


「『亜神』ってなんぞ? 転生者から変化したの?」

「アリサお姉さま、『亜神』『聖域の聖女』『祈り』についてはおそらくですが、あのお姿になられた事が原因かと思いますよ?」


 あの姿ってなに?


「ほら、アリサ姉! バルバル達威圧したときの、あのかっちょえぇのだよ!」

「あたしも気になってた……あの時のアリサお姉さん、凄い神気纏ってたし、アリアも剣になってたし、詳細希望」


 あぁ、聖なる(セイクリッド)戦乙女(ヴァルキリー)かぁ~。確かにあの姿は、剣聖奥義の息吹・神気循環のお陰で至れた境地だ。コツは掴んだのでその気になればいつでもなれる。その辺をちょちょいと説明。


「なんとっ!? 失われた剣聖の剣技を受け継がれたと!? アリサ様、どうかこのバルガスにも御師事下され!」

「父上狡い! アリサ様! 私にもどうか御教授を!!」


 あはは、バルガスとフェリアが凄い勢いで食いついてきたよ。武人気質の二人にとって剣聖の剣技は垂涎ものなのねん。メルドレードの思いを繋ぐためにも喜んで教えてあげるつもりだ。


「間違いないですね、『亜神』と至るには神々に認められ、様々な偉業を成し遂げる事」

「アリサ姉さんは、私、アルティ達が認めてるうえに『聖域』の再生までに魔神の呪いを解呪」

「納得。これでアリサお姉さんは私達とほぼ同列」


 どうやらそういうことらしい。頑張った私へのご褒美かな? まぁ、別に困るものでもなさそうだしありがたくもらっておこう。『亜神』についてはこのくらいでいいや、詳しくは追々知ればいい。

 次は『聖域の聖女』について聞いてみたい。これほど滑稽な話はないだろう、私のように俗にまみれた人間がどうして『聖女』になるんよ?


「ひじょーに私らしくない職業が追加されてるんだけど……これは何の間違いかな? ちゃんと修正しなきゃ駄目じゃないこの履歴書」

「いや、アリサ姉ぇ……自覚ないん?」


 なによフォレアルーネ、その呆れた目は~?


「アリサ様は間違いなく『聖女』だと思うよボク?」


 パルモーが両手を後頭部に組んで椅子の背もたれに寄りかかって、へへって無邪気な笑顔を向けてくる。おーおー、このやんちゃ坊主め可愛い笑顔するねぇ。


「私はやること済ませてぐーたらだらけたいだけだよ? 世のため人のため~なんて考えてもいないって」

「ふふっ、そういうことにしておきましょう。そうそう、『祈り』は『聖女』の能力ですからセットで追加されているんです」


 そういうことにされちゃった。まぁ、いいか……アルティレーネの説明によれば魔女と聖女は似て非なる間柄らしい。

 魔女は『思い』を様々な形に具現させ、聖女は『祈り』を同様に具現させられるのだそうだ。さっきの家族紡ぐ絆(タイズファミリア)も聖女の祈りらしい。

 正直よくわかりません。これも追々知っていこう。

 さて、次はいよいよ一番知りたいと思った項目。


──────────────────────────────

【加護】~食っちゃ寝しほうだい~

──────────────────────────────


「すっごい気になってた『加護』これはいくらなんでもやりすぎじゃない?」

「うちから説明しよう! うちがアリサ姉に与えた加護は『不変』だよ!」


 フォレアルーネが嬉々として『不変』について説明してくれる。

 どうもこの効果は病気にならないというものらしい、ユニもミーナも持っていて、以前聞いたヘドロすらも魔力にしてしまうというアレだ。それだけじゃなく、虫歯になったりもしないし、太りも痩せもしないという。


「聞けば聞くほど素晴らしい加護じゃないの! いくらぐーたらしても体型維持、病気もしない! あぁ、なんて私にうってつけの効果……ありがとうフォレア!」

「でしょー! もう最高だよね! 怪我とかは普通にしちゃうけどさ、ダイエットとか歯磨きしなくて済むんだよ!?」

「いや、歯磨きはちゃんとしなさい」

「ぎゃう!」


 同士を見つけた~って感じで喜ぶフォレアルーネに、ビシッっと一言。変な声で項垂れる彼女を見て、あははは! ってみんなが笑い出す。なんかこの子も結構な怠け癖がありそうね、歯磨きは大事なんだよ? それにダイエットとまでは言わないけど、適度な運動もしないとね?


「では、私の加護『不朽』について、正直あまり役に立つものでなくて申し訳ないのですが……」


 おずおず、と申し訳なさそうに説明を始めるアルティレーネ。

 聞けば技術や知識の劣化を防ぐ効果があるそうだ。

 折角身につけた技術や知識も、長年活用しなければ錆び付いてしまう。「腕が鈍った」とかよくある話じゃない? 昔やり込んだゲームを久し振りにプレイして、「思うように動けない、このアイテム何に使うんだっけ?」みたいな経験は私にもあるよ。

 この『不朽』があれば、そういったことがなくなるのでありがたいと思う。


「じゃあ、次はあたし。『最適能力』について説明する。これは、「その人が最も得意とする能力を自動で付与する」というもの」


 レウィリリーネの話を真剣に聞く。今まで私を助けてくれた魔法。『イメージ魔法』は、私の生命線だからね。

 どうも話を聞く限り『最適能力』は人によって違い、かの勇者アーグラスは『剣技』だったそうだ。人それぞれで十人十色、付与される能力についてはレウィリリーネも詳しくは知らないらしい。


「アリサお姉さんの『イメージ魔法』はスキルすらも再現できる凄い能力。もっと沢山の可能性があると思うから、自身で色々やってみてほしい」

「わかった、ありがとねレウィリ♪ これからもバンバン使わせてもらうよ!」


 私の答えに満足そうに微笑むレウィリリーネ。うん、本当にありがたい能力もらったものだ、感謝感謝。


「じゃあ次はいよいよ私ね……アリサ姉さんも一番気になってたんじゃないかしら?」

「まあ、そりゃあねぇ……『不滅』と『無限魔力』って名前だけでとんでもないのがわかるし」


 ティリアが施したであろう『加護』の二つ、気にするなって方が無理な話だ。

 まず『無限魔力』だけど、これはティリアから間借りしている状態なのだそうだ。主神ってだけあって、持ち合わせている魔力……というか、神気は当然のように無限大でいくら貸し与えても減りようがない。魔神の呪いに対抗させるべく私に付与してくれたらしい。道理で底無しの魔力だなぁって感じたわけだ。

 そして『不滅』についてはあの不老不死の上位互換のようだ。

 不老なのは同じだけど、不死は根源の核を破壊してしまえば普通に死ぬらしい。対して『不滅』の場合、その根源の核すらも再生するのだそうだ。ただ、根源の核から再生。となると、完全に復活するまで早くて数十年かかるらしく、実質の死亡とたいして変わらないんだって。

 神のほぼすべてがこの『不滅』を持っていて、かの魔神も持っていたそうだけど、ティリアの権能『存在消滅』で、肉体や魂はおろか、根源の核含め『存在』そのものを『消滅』させられたのだそうな。


「この事をアルティ達にも話さなかったのは、アリサ姉さんに無茶してもらいたくなかったから……」

「私達も同じ気持ちでしたよティリア姉様? でなければ最初に説明しています。でもまさかここまでして頂いていたなんて……」


 初めて会った時、アルティレーネが私を鑑定しようとしてたのは、もしかしたらちゃんと加護が付与されてるかとか色々含め確認したかったってのもあるんだろう。今思うとその鑑定を弾いて正解だったのかな? 確かに知ってたら私、無茶苦茶したかもしれないし。


「……私、死ねないのか」

「アリサおねぇちゃん?」


 思わず声に出る。ユニがそんな私を不思議そうに見つめてくるけど、どうしても前世のにがい記憶が思い出され憂鬱になった私は気にかけてやる余裕を失っていた。


「死ぬって事はある意味救いなんだよ……前世で苦しい思いして死んで、今ここにいるんだし」


 今世ではそれが許されない、死にたいような辛い思いをしても死ねないんだ。あぁ、でも……前世と違って色々できるし、最悪ミーナと数百年引きこもればいいのかな?


「……それでも駄目ならティリアに頼んで消滅させてもらえばいいんだ」

「そんな悲しいこと言わないで! アリサおねぇちゃんはユニが守るから!!」


 !!? ビックリした……っ! 伏せていた顔を上げれば、ユニが真剣な表情で私を見つめている。いや、ユニだけじゃない、みんなが心配そうな表情で見ていた。


「アリサお姉さま……大丈夫です! ここは前世の世界じゃありませんよ!」

「ん、あたし達がずっと一緒にいる」

「一人で抱え込む必要なんてないっしょ! うちらに相談してよ?」


 長い……永い時間を生きる事になるんだよ? 絶対楽しいことばかりじゃないでしょ? それでも、それでも一緒にいてくれるの?


「アリサ様は前世でだいぶお辛い目にあわれたのですね? 大丈夫ですわ、私達家族が貴女様を御守り致します」

「うむ! 妻の言う通りに御座います! 我等一同アリサ様と共にありますぞ!?」

「頼りないかもしれませんが、どうぞなんでも御相談下さい!」

「楽しいことばっかじゃないかもだけどさ! 一緒に悩んでいこうよアリサ様!」


 みんな……良いの? 側にいてくれるの? 私、きっと沢山迷惑かけちゃうよ?


「ずっと一緒だもん! ユニ達は家族だってアリサおねぇちゃんが言ってくれたんだよ!?」

「アリサ姉さん。私達の思いも同じよ? 家族紡ぐ絆(タイズファミリア)の祈りはちゃんと届いてる。絶対一人になんてしないし、させないわ」


 みんな……うっ、泣けてきた。家族紡ぐ絆(タイズファミリア)を通してみんなの思いやりの心が伝わってくる。


「あ、ありがとう……みんなわっぷっ!!?」「プープー♪」「んにゃあ~ん♪」


 モコプー達と一緒にミーナが私に飛び付いてきた。はずみで私は椅子から落ちちゃって床に尻餅をつく。


「いでで……もう! なにすんのミーナにモコプー達!?」

「あはは♪ 大丈夫アリサおねぇちゃん? 見て見て、モコプーちゃん達が歌ってる♪」


 ユニの言葉にモコプー達を見れば、テーブルの上で五羽が揃ってプープー♪ と鳴きながらその体を光らせている。これは魔神の残滓達との戦いの時に見たあの光だね。


希望の光(エスペロルーモ)です。モコプー達がアリサお姉さまの未来に希望を謳っていますよ?」

「あんた達……ありがと、ありがとね……っ!」

「にゃあぁ~ん♪」


 嬉しい……みんな一緒にいてくれるんだ、うん……うん、そうだね、ここは前世の世界じゃない。今の私にはこんなにも優しい家族がいるんだ。これからの永い時間、きっと色々な事があるだろうけど、みんなと一緒ならきっと大丈夫だ!


「プー♪」

「わぁ! ちょっと~折角お風呂入ったのに~!」


 喜んだのも束の間、モコプー達が嬉しそうに私に飛びっかってきてすりすりしてくる、うち、一羽は私の頭に乗ってくるし! 重いわ! それよりあんた達外で遊んでたから汚れてるじゃない!


「うぅ……後でまたお風呂入らなきゃ……」


 パジャマがだいぶ汚れた~髪もズシッて乗っかられたものだから土埃がついちゃったよ、トホホ……なついてくれるのは嬉しいけど、こういうのは勘弁してほしいね。


──────────────────────────────

【妖精女王のお願い】~安全確保と寮を~

──────────────────────────────


「ん♪ あたし達と一緒に入ろうアリサお姉さん!」

「ふふん~♪ モコプー達も綺麗に洗ったげる!」

「うふふ♪ 私はアリサお姉さまの御髪を洗いたいです♪」

「はぁ、そうだね。後で一緒に入ろう、ミーナも久し振りにお風呂入れてあげる」

「うにゃぁ~ん!」


 ヤダ~! じゃあないの。相変わらず水嫌いねあんたは。


「ふふっ、よかった。すっかり立ち直ったみたいね」

「うん、ごめんねティリア。前世を思い出しちゃうとどうしてもネガティブになっちゃう……」


 ん? どうしたんだろ……ティリアが少し寂しそうに見える。


「アリサ姉さんはさ、強いわ。Sランクって言われてる冒険者よりも遥かにね?」

「アリサおねぇちゃんはつよーい♪」


 お、冒険者のランクはなんかテンプレぽいぞ。アルファベット表記なんだね。


「Sランクの冒険者ってどのくらい強いの?」

「うーん、多分この『聖域』の魔物くらいかな?」


 フォレアルーネが教えてくれた、この辺の魔物がSランク相当なら確かに私はそれ以上だろうね。


「その力で多くの人と関わって、羨望を受けたり、頼られたり、敬られたりすると思う」

「ちやほやされちゃうねアリサ様は!」


 パルモーの言うように下手に力を振るえば目をつけられるだろうね。これはティリアなりの忠告なんだろう、気をつけてって言ってるんだね。


「そうして永い時間過ごすうちにそれが当たり前になって、増長して力に溺れ求め。最終的に狂っちゃったのが魔神なの……アリサ姉さん、どうか同じ道は辿らないで?」


 ビックリだ……ティリアは私が魔神になる可能性があるとして注意してくれている。詳しく聞くと、魔神も最初から悪神だった訳ではなく、真面目を絵に描いたような善神だったそうだ。

 その能力も優れており、人々だけでなく、他の神々からも頼られていたらしい。だけど……いつからか野心を抱くようになってしまったという。


「図に乗った魔神はティリア姉様の主神としての力を奪おうとまず私達に接触してきたんです」

「ん、あたし達に求婚してきた」

「ま、うちらはそんな目論見わかってたし、何より有頂天になってたアイツが大嫌いだったし!」

「そうそう、私も図に乗るなって忠告したら逆ギレされてね……扇動してた神々を魔王に堕とした上にアルティ達の世界を滅茶苦茶にするしで……」


 後は私達の知っての通りだそうだ。なんとも恐ろしい話だこと……人の敬意や羨望は神すら狂わせるんだね、魔神みたいに勘違いした大馬鹿者にならないように私も注意しよう。まぁ……


「調子に乗って痛い目見る。なんて事前世で結構経験してきたからなぁ~、身に染みてわかるよ。不安なら私は『聖域』に引きこもってようか?」


 元々引きこもりだったし、別に構わないよ?


「あはは、そこまでしなくても大丈夫よ! なんせそうならないように私がいるんだし。ただアリサ姉さんにはちゃんと知っておいてほしいって思ったからすべてを話したの」


 そっか、話してくれたティリアに感謝だ。もし私が第二の魔神になっちゃったら、きっとこの子は悲しむ。姉と呼ぶ親しい人をその手にかけなければいけなくなってしまう。そんなこと絶対にさせない。改めて心に刻もう「調子に乗ると痛い目見るぞ」っと!


「さぁ、私からはこんなところよ? 次はティターニアとどんな話をしたかだったわよね?」

「そうだね。アルティ、お願いしていいかな?」


 場をティリアが仕切り直して、今度はアルティ達からティターニアとの話し合いの内容を聞くことにする。さて、あの女王様はどんなこと言ってたのかな?


「はい、それでは報告しますね。と言いましても、それほど多くはありません」

「農業や酪農をやるにあたって、妖精達の協力をお願いしたら、二つ返事で引き受けてくれた」

「まぁ、当然っちゃとーぜんだけど、協力してくれる妖精達の安全を確保してほしいってのが一つ」


 ふむふむ、妖精達の安全確保は絶対に必要だね! お互い楽しく作業したいし、仲良くなれるといいなぁ♪


「そして、その妖精達の住まいを用意してほしいと言うのも一つです」

「なるほど、妖精達の棲処が何処にあるかはわかんないけど、通勤距離は短い方がいいよね」

「通勤って……アリサ姉ぇ、あはは、まぁ上手いたとえだね」


 間違いじゃあないでしょう? でも、家か……何人くらいの妖精が来てくれるかわからないけど。


「アハハ! いっそ集落でも作っちゃえば良いんじゃないかな!?」

「パルモー? 集落って、妖精達のか?」


 おっと、パルモーが私と同じこと考えてたみたいだ。


「ううん姉ちゃん、別に妖精だけに限らなくていいじゃん? もしかしたらこれからボク達みたいに色んな種族が増えるかもしれないんだぜ?」

「だがそれはあくまでアリサ様がお認めになった者達でなくてはならん。これから来るであろう妖精達も、協力者とはいえ警戒を怠ってはならぬぞ?」


 勿論だぜ父ちゃん! って元気よくサムズアップするパルモーに満足気に頷くバルガス一家。うーん♪ 頼もしいね! でも人っていうか種族? 増えるかな……『聖域』の魔物達はSランク相当って話だし、余程の物好きじゃなきゃ来ないんじゃないかな?


「そこはちゃんとアリサ姉さんに害を成さないことって、こっちからも条件付けてるわよね?」

「ん、当然。悪いことしたり、考えたりするようならあたし達全員を敵に回す事になるって言っておいた」

「ウハハ♪ そしたらティタっち真っ青な顔して「もももっ! 勿論ですわわぁ! よく言って聞かせますわあぁっ!」ってめっちゃビビってたよ!」

「『神眼』持ちの私達には嘘も悪意もお見通しですからね? とも付け加えてありますので大丈夫ですよ」


 な、なんか……ティターニアが可哀想に思えてきたよ、今度会ったら優しくしてあげよう。

 それよか何気に『神眼』っての、私も持ってたよね? なんか嘘とか見抜けるようになったのはこれのおかげみたいだね。正直前世で人に騙され続けた私には嬉しい限りだよ。


「それと、こっちに来るとき食材を持って行くので、アリサお姉さんの料理を食べさせてもらいたいって。美味しければレシピもほしいって言ってたんだけど……アリサお姉さん、どう?」

「へぇ~食材持って来てくれるんだ! うーん、食材にもよるけど料理するのは構わないよ♪ みんなで食べようね♪」


 やったぁ~♪ これで料理できるよ! 屋敷のでっかいキッチン見てからというもの、実は料理したくてしょうがなかったんだよね!


「アリサおねぇちゃんすっごく嬉しそう~♪ えへへ、ユニもアリサおねぇちゃんの手料理楽しみだなぁ~!」

「ヒャッホ~! うちも楽しみ!」

「うふふ、ではまとめますね。一つ、妖精達の安全確保。一つ、妖精達の住まい。一つ、料理とレシピの提供。大きく分けてこの三つですね。細かい事はまだあるでしょうけれど、そこは実際に活動していくうえで改善していけば良いかと」


 オッケー! 料理とレシピは問題なし。住まいに関してはどんなのが良いか話を聞いて、出来るだけ要望に応えるって感じ。安全確保はとりあえずグリフォン達に護衛してもらうとして……


「あら、では全ての条件はクリアしていますね」

「そうですね、住まいは実際にどのような者がくるかによりますし、場所とて選びたいでしょうからね!」


 だね、家建てるならちゃんと立地から選びたいだろうし。うーん、後気になるのは……


「何か魔物除けみたいなアイテムってないかな? グリフォン達を信用しない訳じゃないけど、安全を確保するならいくらあっても良いと思うんだ」


 これだね。安全確保をするうえでの究極、「近付かない」だ! 今回は「魔物が」って頭につくんだけど……それに、念を入れてグリフォン達に護衛してもらえば完璧じゃないかな?


「おぉ~! 良い考え♪ 流石アリサ姉! さすあり~!」


 やかましいわフォレアルーネ! さすありってなんぞ!?


「ん、それならユニの髪を使って良いのを創る。任せて」

「ふふっ早速有効活用できますね」


 あー、今日の朝に切ったユニの髪の毛か。世界樹の魔力の塊で扱い方次第では危険だって話だったね。


「まとまったみたいね。はい、アリサ姉さん! ミーナちゃん確保しといたわよ」

「にゃあぁ~にゃー!」

「あはは、ありがとティリア」


 お風呂に入れられると察して逃げようとしたミーナを、浮遊(フロート)で浮かせて私に渡してくるティリア。できた妹だこと♪

 とりあえず、これで会合は終了。後はみんな思い思いに過ごしてね。私は二度目のお風呂にいってきます。


「お疲れ様~! ユニちゃんボクとオセロで遊ぼうよ!」

「うん! いいよ~ふふふ~パルくんにユニの強さを思い知らせてあげる♪」

「あなた、どうされますか?」

「うむ、問題はないと思うが、我等はこの屋敷の警備を任されたのだ。軽く見回ろうと思う」


 バルガスは念のため屋敷を見回ってくれるそうだ、今までそんなこと考えもせずにグースカ寝てたね……まぁ、女神達もいるし大丈夫とは思うけどここはありがたく厚意を受け取ろう。


「父上と母上は一回りされた後そのままお休み下さい。今夜は私が不寝番を務めます」


 えっ!? そこまでしてくれるの? 流石にそれは申し訳ないんだけど?


「そうそう、一応治ったとは言え怪我したんだから今日はかわいい奥さんに甘えなさい」

「あ、う……うむぅ、ティリア様がそう仰られるのであれば……」


 あー、あー……そう言うこと。そう言うことね? 見ればネヴュラは少し俯いて頬を染め、バルガスは目が泳いでいる。うん、アリサさんは空気読みますよ~。


「さぁ、モコプー達もいらっしゃい。綺麗に洗ってあげるから」

アリサ「このお話が今年最後の更新になります(*^▽^*)」

ユニ「えへへ♪ ここまで読んでくれてありがとう~o(*⌒―⌒*)o」

アリサ「みんな今年はどんな一年だったかな(´・ω・`)?」

ユニ「お外に出る機会が減って太っちゃったって人が……( *´艸`)」

アリサ「あ、こら! 駄目よユニ(>д<*)」

ユニ「あわわ、ごめんなさいヽ(´Д`;)ノ」

アリサ「何はともあれ、みんなよいお年をヽ(*´▽)ノ♪」

ユニ「よいお年を~来年もよろしくね(ゝω・´★)」

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