118話 聖女と『ぶっ飛びヒャッハーくん』
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【バルガス達の報告】~にゃんだと!?~
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「ただいま戻りましてございますアリサ様!」
「遅くなってしまい、申し訳御座いません」
バルガスとネヴュラが聞き込みから戻ってきた。『エルハダージャ王国』に向かう前に、この『セリアベールの街』で色々と情報を集めてくれていたんだけど、何か面白い情報はあったのかな?
はい。みなさんこんにちは♪ 聖女のアリサさんです♪ 『セリアベール』の旧スラム街、今じゃ『学区』と改められたこの場所で『人狼』のゲンちゃんや『商業ギルド』のマスターのディンベルのおっちゃんとか、あの、女の子のお尻スキーなデールのおっちゃん達。そして元スラムの住人達と楽しくタコパを楽しんでいたんだけど、時間も結構過ぎてそれもお開きとなった。
まぁ、途中ティリアからなんか『聖域』の防衛に関して色々アドバイスを求められたりもしたんだけど、まぁ、楽しい時間が過ごせたね~♪ 解散したその時に魔女の私……『人猫』に変身したにゃるろっても今は『猫兎』達に合流している。
「お帰りなさい。二人とも、何か目ぼしい情報はありましたか?」
「おぉ、うぬらの分のたこ焼きもしかと残しておるぞ? 食べながらでも聞かせてくれるかの?」
たこ焼きセットを一緒に片付けていたアルティレーネと珠実も、戻ってきた二人に気付いて、それぞれに声をかけてあげている。うんうん、ちゃんと二人の分のたこ焼きも沢山残してあるから、ゆっくり食べてちょうだいね♪
「ありがとうございます。アルティレーネ様、珠実様。中々に面白い情報が得られましたぞ?」
「うふふ♪ アリサ様もお喜びになられると思いますわ!」
ほうほう! そりゃ楽しみだ。一体どんな情報を仕入れてきたと言うのかね?
今から宿とるのもなんだし、この『学区』の敷地を貸してもらえたって事もあり、『中継基地』を設置させてもらったので、中でじっくりと聞かせてもらおうじゃないの?
タコパの片付けも済んだし、ゲンちゃん達や住人達もそれぞれ帰って行ったので、私達も揃い『中継基地』内に入り、移動初日を終わらせよう。
「では簡単にご報告いたしますわね。『エルハダージャ』の民達は皆揃って気風の良い方々だとお聞きしましたわ」
「ヘルメット殿のような者達が多いとの事でした」
へぇ~みんな江戸っ子気質なんだ? 中々に面白そうな国みたいだね!
『中継基地』内のリビングで私達は互い向き合ってソファーに座り、バルガスとネヴュラにお茶とたこ焼きを差し出して報告を聞いた。まずは『エルハダージャ』に住む人達についてだ。
「ふはは♪ それはなんとも騒がしそうじゃのぅ?」
「治安の方は如何なのでしょう? あまり良くないのであれば宿をとるよりもこの『中継基地』を利用した方がいいかもしれませんし」
うむ。確かに珠実が笑ってるように、みんながみんなヘルメットさんみたいな「べらんめぇ口調」だとしたら、結構なやかましさになってそうだね。アルティレーネは治安の心配してるけど、ふぅむ……行った先でトラブル事はイヤっちゃイヤだから、宿をとるかは現地判断だろうか?
「それほど悪くはないようですな。『ゲキテウス』程良くもなく、この『セリアベール』と同じくらいだと聞いております」
「ただ、気になるのが『冒険者ギルド』には私達女性はあまり近づかない方が良いともおっしゃってましたわ。何でも非常に暑苦しいとかなんとか……」
この『セリアベール』くらいなら全然問題なさそうだね。んでも、ネヴュラが言う『冒険者ギルド』が暑苦しいってのはなんだべ? この『セリアベール』のギルドしか見たことないから、どうにも想像がつかないね?
「どのように暑苦しいのでしょうね?」
「それがなんともはっきりしませんで、皆「行けばわかる」としか……」
「どちらにせよ、ゼオンの坊主の手紙を足掛かりに『ココノエ』に仲介してもらわねばならんし……まぁ、行ってみるしかあるまいな?」
実は私達が『エルハダージャ』に向かうにあたり、ゼオンが気を利かせて、二つの手紙を書いてくれたのだ。その一つが『エルハダージャ』の『冒険者ギルド』に対して、王城へ入城するために便宜を図ってくれってもの。
それともう一つが『ココノエ』宛に書かれたもので、こちらは私達の事と、魔王問題や、『聖域』に『冒険者ギルド』を設立する事とかを説明した、結構枚数のあるお手紙になっている。別に直接王城に赴いて門番の兵士さんとか通して直接でもいいのではないか? と言う問に、ゼオン曰く「ギルドを設立しようとしている以上、先達の顔は立てておいた方がいい」との事なので、こんなめんどくさい手順を踏む必要があるってわけだ。
一体どんな感じの暑苦しさなのかアルティレーネが聞いても、バルガスが言うには、聞く人聞く人みんなして言葉を濁すばかりで、はっきりしたことはわからないと言う。う~ん、私達女の子達はあんまり近付かない方がいいってのもなんか気になるね? まぁ、珠実の言うように行かない訳にもいかないので、一応警戒しておこう。
「それと、『エルジャ茸』という特産のキノコが大変美味らしく、是非とも食してほしいとのことでした」
「おぉ♪ 特産品のキノコかぁ~♪ そりゃ食べなきゃいけないね!」
「うふふ、アリサお姉さまのキノコ料理ですか。楽しみですね♪」
おほぅ♪ これこれ! こういう情報はとても嬉しい。『エルハダージャ』特産のキノコ『エルジャ茸』! 一体どんな味がするんだろうね? 楽しみーっ! アルティレーネもちょっとわくわくしてるし、今のうちにどんなキノコ料理にするか考えておこう!
「最後に、朗報が御座いますわ♪ アリサ様が以前からご所望のウナギが『エルハダージャ』に棲息しているらしいのです!」
「にゃんだってぇーっ!? ちょちょ、ちょい! ネヴュラさんや、kwsk!」
おぉ! なんということでしょう!! 遂に遂に夢にまで見たウナギちゃん達が見付かったと言うのかね!? こりゃいてもたってもいられんぞい! ネヴュラから詳しく話を聞いてゲットしに行かなくてはなるまい!!
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【ウナギが】~私を待っている!~
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「こうしちゃいらんないわ! 全員支度なさい! 直ちに『エルハダージャ』に向けて出発するわよ!?」
「ええっ!?」「なんじゃと? 今からか!?」
「畏まりました!」「直ちに支度致します」
バルガスとネヴュラからもたらされた朗報に私は嬉々として立ち上がり、今すぐ出発する気満々でみんなを促す! アルティレーネと珠実は完全にくつろぎモードのだらだら状態だった事もあり、突然の私の宣言にびっくりしているけど、報せを持ってきたバルガスとネヴュラは即座に立ち上がった。
「ふふ、アリサ様がこの話を聞けば、きっと直ぐに出発するのではないかと思っておりましたぞ?」
「ええ、まったくですわ。常日頃からアリサ様、「ウナギ食べたい」とぼやいていらしたもの♪」
「それは、私も何度か聞きましたけれど……明日でもよいのではありませんか?」
「そうじゃぁ~妾のんびりしたいんじゃがのぅ?」
ええい何を言うか!? アルティレーネにたまみんや! ウナギだぞう? ウナギぃ~♪ もちっとバルガスとネヴュラを見習いたまへよ?
「たまには私のワガママ聞いてくれてもいいでしょ~? ねぇねぇ~? 行こうよ行こーっ!?」
自分で言うのもなんだけど、私これまで結構色々と頑張って来たじゃん? ちょっとそんな自分にご褒美あげたいのよん! ねぇ~お願い~行こう?
「はぁ、それを言われると、私は何も言い返せませんね。お姉さまにはお世話になりっぱなしですから」
「そうじゃなぁ~♪ ふふ、アリサ様も我が儘になるときがあるのじゃな? なんだか嬉しいのじゃ♪」
「じゃあじゃあ! オッケー? 行っていいの!?」
私がちょっと強引に我を張れば、やれやれと肩をすくめるアルティレーネと珠実。二人ともちょっと苦笑いを浮かべて了解してくれましたーっ! いぇーい!
「ではせめて、ゲンのヤツには挨拶しておこうかのぅ?」
「そうですね、少し急な出発となってしまいますから、せめて。ね?」
おう……そうでした。急な出発になるとは言え、せめて敷地を貸してくれたゲンちゃんには行ってきますの挨拶くらいしないと失礼ってもんだ。いけないいけない。興奮するあまり、その辺おろそかにしちゃうとこだったよ。
「んじゃ、私とアルティ、珠実で挨拶してくるから。あんた達はたこ焼き食べて寛いでて?」
「了解です!」「はい。行ってらっしゃいませ皆様」
……と、言うわけで。『中継基地』にバルガスとネヴュラをお留守番させて、ゲンちゃんの家に向かう私達。と言っても、ゲンちゃん家は直ぐ目と鼻の先なので数歩てくてく歩けば到着だ。
コンコン。
「ゲンちゃーん? 今ちょっといいかなぁ?」
「アリサ様? はいはい、今お開けしますね~」
ゲンちゃん家の扉をノックして声をかけると、ゲンちゃんは返事をしてくれた後、ガチャっと開けて、私達を招き入れてくれた。椅子に座って「おくつろぎください」なんて、言われたけど、そうのんびり構えるつもりでもないので、手短に話を済ませる。
「──はぁ~なるほど。『エルハダージャ』のウナギですか。ですがあの魚はあまり美味しいものではないと聞きますが?」
「んもぅ~ゲンちゃんまでそんなこと言うし~?」
「アリサお姉さま。フォレアみたいな口調になってますよ?」
「いや、なに。そんな魚がアリサ様の手でどう変わるのか興味はあるのじゃよ♪」
ゲンちゃんは私達の話を聞いて、「ウナギですかぁ?」って感じの見るからに困り顔。まぁ、美味しい調理法を知らなければ、骨は多いし血に毒はあるしでとても食材としては見られないのかもね。ちょっと残念な気がして声を出せばアルティレーネに突っ込まれるし。でも珠実は結構興味あるみたい。私がやたらと騒ぐもんだから気になったのかな?
「ははは。アリサ様が我が儘を言ってまで求めるのですから、相当なんでしょうね♪ わかりました! ゼオンさんやディンベルさん達には俺から伝えておきましょう」
「ありがとうゲンちゃん♪ 帰って来たらご馳走するからね!」
「済まんのぅ~急な訪問に急な出発で」
「目まぐるしく状況が変化する中、大変かとは思いますが頑張って下さいね?」
うおぉ~ありがとうゲンちゃん! ウナギをゲットしたらこの『学区』のみんなにも振る舞うからね♪ 楽しみにしててちょうだい。
珠実とアルティレーネもゲンちゃんに一言済ませ、『中継基地』に戻る。するとそこには、既に出発の準備を済ませたバルガスとネヴュラが待っていてくれた。
「おぉ、早いのぅお主等。もうたこ焼きは食うたのかえ?」
「はっ! 大変美味で御座いました!」
「うふふ♪ 残りは移動した先で落ち着いて頂きますわ。それでアリサ様、移動は『飛行魔法』で行くのでしょうか?」
どうやら用意したたこ焼きを食べた後、残りを『魔法の鞄』に詰め込んで後で食べるつもりらしい。うむ。慌ただしく食べるよりはいいかもね♪ まぁ、そうさせちゃった私が言うことではないだろうけど。
でもって、移動手段だけど、魔法で飛んで行くのもいいけど、一つ『無限円環』で作ってた魔装具があるからそれを使おうと思う。とりあえず、ここじゃ邪魔になっちゃうので、一度上空に上がろう。
私は『中継基地』をミーにゃんポーチに収納し、みんなに『飛行魔法』で上空に上がるよう促した。
「むふふ。さぁお披露目だぞぅ~♪」
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【ぶっ飛び!】~ヒャッハー!!~
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《イェアァーッ!! ヨウヤクデバンカイ? マイマスター!?》
「えぇ~? お姉さま……何ですかこれ……?」
『セリアベール』の上空に浮上してきた私達。求め続けたウナギの棲息地が『エルハダージャ』にあると聞き、いてもたってもいられず、急遽出発する運びと相成った。
この『セリアベール』から『エルハダージャ』までの距離は結構あるし、その間ずっと『飛行魔法』で飛び続けるのも……『無限魔力』持ちの私はともかく、他のみんなの負担が大きすぎる。
「と、言うわけで! はい。アルティ! そんな変な顔しないの! 私が『無限円環』でちまちまと作ってた『魔装巨人』! その名も『ぶっ飛びヒャッハーくん』である!」
《ヒャッハー! トバスゼトバスゼ! ブットビダァーッ!!》
「「「えぇ~?」」」
ちょい!? 何よ、珠実もバルガスもネヴュラまで!? その盛大に不安そうな顔は!? よく見なさい! このゼーロをモチーフにした美しい鳥型の『魔装巨人』を!
「しかも『自律思考』まで搭載した優れモノなのよ? 『神の護り手』も標準装備! 『世界地図』から、一度でも行った事ある場所なら『転移』だってできるし、めっちゃ強力な武装も搭載したイカした『魔装巨人』なんだからね!?」
せっかく力作をお披露目したというのにコヤツ等め!? なんだねそのため息とジト目は!? 言っとくけどこの『ぶっ飛びヒャッハーくん』は妹達の三神国をモチーフにした『守護者』並みに……いいや! その技術の粋を結集して作ったから、それ以上に凄いんだぞぅ!?
《ソウダゼソウダゼーッ! ウヤマイナー? マッハコエテ、ブットバスゼェーッ!?》
「かぁーっ!? このがらくた風情が妾達に対し「敬え」とか抜かしよるか!? 笑わせるでないわ!」
ピィィィーッ!!
「あびゃびゃびゃっ!? しし、痺れるのじゃあぁぁーっ!?」
ふんっ! 愚かなりたまみん! 『ぶっ飛びヒャッハーくん』を侮辱してはいかんよ? 「敬え」って言った『ぶっ飛びヒャッハーくん』を馬鹿にした珠実に、『ぶっ飛びヒャッハーくん』からビリビリ光線が発射されて直撃する。珠実はその光線を浴びると、全身の毛が針ネズミのようにとんがって、「あばば」と震え出す!
《ウヤマエッテイッタロー!?》
わはは! そのビリビリ光線は別にダメージは入らないけど、全身に強烈な痺れを起こさせるのだよ!?
「ちょっ! ひどいですアリサお姉さま!? 珠実になにするんですか!?」
「なにって……? 血行を良くしてあげたんだよ? これでお肌のトラブルも解決だね♪」
「まぁ! それは素敵ですけれど……」
「あびゃびゃ……し、刺激が強過ぎるのじゃぁ~毛がビンビンになってしもうたぞ?」
「ぶふっ! いや、失礼……わ、笑ってはいかぬと思いつつも……」
アルティレーネが突然、珠実が攻撃を受けたとでも勘違いしたのか、私を責めて来るので、きちんと説明してあげた。さっきのビリビリ光線は別に攻撃じゃなくて、対象者の全身の血行を良くしてあげるってだけなのだ。肌のシミや、ニキビなんかにお悩みの女の子には嬉しい効果があるんだぞ? まぁ、ネヴュラがちょっと興味ありそうにしてるけど、まだ「あびゃびゃ」ってる珠実が言うように、ちょっと刺激的かもしれないね♪ でも、ぷふーっ! 珠実の九本の尻尾がビンビンにとんがって凄い事になってる! それだけじゃない、髪もそうだし、狐の耳も、ぶはは! なんの生き物だっちゅうねん!! バルガスが笑いを堪えるのに必死なのもわかるわぁ~♪
《チョーシヨクナッタダロ~? ケンコーダイジダゼーッ!? サァーノンナ!》
「うぬぬ……く、悔しいが確かに気持ち体が軽くなりおったわ! 痺れも収まってきおったようじゃし……」
「乗れと言われても、あら? ちゃんと席が背中にあったのですね?」
『ぶっ飛びヒャッハーくん』が珠実にそう言ってはカカカと笑い、私達に乗るようにと促してきた。アルティレーネはそう言われて、普通に背中に乗ればいいのかどうかを迷ったみたいだけど、不意に『ぶっ飛びヒャッハーくん』の背中がウイィィーンって左右に開き、その中に席が五つ用意されてるのを見付けたようだ。
「丁度五人だからピッタリね! 一番前の席は私が乗るから、みんなは好きに座ってちょうだい」
この席はいわば『ぶっ飛びヒャッハーくん』のコックピットである。まぁ、完全自律式なのでなんの操作も要らないんだけどね♪ 一応私がマスターなので一番前の席に座り、彼に目的地とか魔物に遭遇した際の指示とか出す事になる。
「それでは私は夫と隣同士に座らせて頂きますね?」
「んむ。それでは妾は女神と乗るでの」
バルガスとネヴュラ。珠実にアルティレーネもそれぞれ乗り込んで、最後に私も乗ると、自動で開いていた背中が閉まり、コックピット内の照明が点灯すると同時、無数のモニターが展開され、外の様子がよくわかるようになった。
「ホントはあのロボットみたいに全天周囲モニターにしようか迷ったんだけどねぇ~?」
「え? なんですかアリサお姉さま?」
いんや~なんでもにゃ~でございます~この辺はあまり深く言及してはいけないね。それよりどうかな? 『ぶっ飛びヒャッハーくん』の内部は?
「結構座り心地は良いのじゃなぁ? 妾のように尾がある者でも十分にくつろげるのは嬉しいのぅ♪」
「あ~珠実? くつろぐのはいいけど、ちゃんとセーフティベルトつけなさいね? みんなも」
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【エネミー?】~シランナァ? ブットバスゼーッ!~
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《モクヒョウ、『エルハダージャ』ノウナギ!!》
「え? え? せぇふてべるとってなんじゃ? アリサ様!?」
「ちょっと! ほら珠実これですよ! 早くつけましょう!」
《スティンバァイ! スゥリィー、トゥゥー、ワァン……》
「わわわ!? ちょっちょっと待つのじゃぁーっ!?」
《イェェアァーッ!! ブットビダゼェェーッッ!!》
ズッドォォォォーンッッッ!!!! ぶぎゃああぁぁぁーっっ!!?
ひゅーっ! カタパルト使ったわけでもないのにこの超加速! たまらーんっ!! 『ぶっ飛びヒャッハーくん』はカウントダウンの後に、『エルハダージャ』に向けて一気に超加速して飛び立った!
「た、珠実ぃーっ!?」「うぎゅぅ~あ、アリサ様! なにするんじゃぁーっ!?」
「むおぉ、なんと言う加速か!」「凄まじいですわね! 背がシートに食い込むほどです!」
あれま。珠実ってばそんなに必死にシートに顔埋めてなにしてるの? ってか、あんたベルトはどうしたの、つけなさいって言ったでしょう?
「そんな、いきなり言われてもじゃな!? もちっと説明があってもよかろうに!」
「しょうがないわねぇ~『ヒャッハーくん』ちょい減速してちょうだい?」
《ラジャ!》
アルティレーネが珠実の事叫んでるから何事かと思えば、当の珠実が壁にへばりつくトカゲみたいにシートに抱きついているじゃないの? バルガスとネヴュラが加速のGに背がシートに食い込むって言ってるから、それかな? 見れば珠実ってばセーフティベルトつけてないし。危ないなぁ~下手すりゃ壁に激突してたわよあんた?
「ひぃひぃ~やっと解放されたのじゃ……アリサ様酷いのじゃ! ちゃんと確認してから出発してたもれ!」
「あはは、ごめんごめん! あんたも横文字に疎かったわね。セーフティベルトってのはそれよ、両腕通して、ふとももの所も。そうそう♪ それをお腹の所でカチンって」
ごそごそごそごそ、カチン☆ そうそう! 上手くつけれたね? それがセーフティベルトだから覚えといてね?
《ヘイ! マスター! ゼンポウニ、エネミーダゼーッ!? ドースル!?》
ふぅ~これで安心なのじゃ♪ って珠実がしっかりセーフティベルトを装着して安堵したその時、『ヒャッハーくん』からエネミー出現の報告! ここで彼の言う「エネミー」とは。私が常時使っているミニマップ上に表示されるマーカーに由来している。
「なんだねありゃ? ワイバーンの群れがなんぞ騒いでるね? まあいいや『ヒャッハーくん』ヒャッハーしちゃいなさい♪」
《ヒャッハー! ラジャーダゼ! マイマスター!! オレノジャマスルハエドモォ~! ブットビナァーッ!!》
なんぞワイバーンの群れが私達……この場合『ぶっ飛びヒャッハーくん』に気付いて、ギャーギャー騒ぎだしたので、ちょっくら蹴散らしてもらうとしよう。『ヒャッハーくん』は嬉々として返事し、パカッちと口を開けて……
ズッドォッアァァァーッ!!
超強烈な魔素粒子砲をぶっぱなし、ギャギャギャーッ!? とワイバーン共を一瞬で消し去った。うむうむ、痛快である! 百年経ったら出直していらっしゃい!
「うわぁ~……アリサお姉さま、今の砲撃ってなんですか? 強力な神気を感じましたが?」
「まぁ、魔素ならぬ神気粒子砲? 『神怒の槍』とでも名付けましょうかね♪」
ええぇ~?
「たかがワイバーン数頭相手にやりすぎじゃ……まぁ、よいが。
ふむぅ~しかし速いのぅ~『セリアベール』があっという間に彼方じゃ」
「さっきのワイバーンいたとこに港町なかった? 気のせいかな?」
何で群れてたのか知らないワイバーンを蹴散らしぶっ飛ぶ『ヒャッハーくん』だ。確かに珠実が言うようにワイバーン相手にオーバーキルかなとは思うけど、それが『ヒャッハーくん』なので仕方あるまい。あっという間に通りすぎちゃったけど、なんか街があって、船が停泊してたように見えたけど、既にだいぶ後方に流れて行ったので、よくわからない。まぁ、帰りにでも確認しておこう。
「あら? 『世界地図』では都市部は別の方角ですが、山の方に向かっているのですかお姉さま?」
「そそ。日が落ちる前にウナギをゲットしておきたいからね! 山間に流れてる河川目指してるよ?」
既に私達は『エルハダージャ』の領内上空に来ている。後はウナギが棲息してそうなポイント……山間に流れる川を見付けるだけだ。
《ヒャッハー! マイマスターノゴショモウノポイントハ、モウ、メノマエダゼーッ!?》
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【なんとなく?】~そんなことよりウナギが大事!~
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『エルハダージャ』は山や森に囲まれ、南方に大きな火山を有する、中々に自然に富んだ大地にある国のようだ。『ぶっ飛びヒャッハーくん』が私の求めるウナギが棲息してそうな良さげなポイントを見付け、現在降下地点を探してその上空を旋回中、私達はモニターで周囲を見渡している。
「人の手が入っておらぬ未開の地も多そうですな?」
「今更ですけれど、私達、不法入国になりませんかこれ?」
「構わんじゃろ別に、しかしこう森や山が多いと、駆け回りたくなるのぅ~♪」
「あ、お姉さま! あの少し開けた場所はどうでしょう?」
バルガスは『エルハダージャ』の大地を見て、その自然の多さにまだ見ぬ未開の地もありそうだと言う。そうねぇ~? 結構海に近いし、この辺って辺境ぽいから国も管理が届いてなさそうではあるね。
でもってネヴュラの懸念については、マジに今更なのでしょうがない。そこまでしっかり法が整備されているか知らないからねぇ~怒られたら素直に謝りましょう。
珠実は溢れる自然、緑映えるその景色に狐の野生がうずくのか、尻尾をパタパタさせて嬉しそう♪ ふふ、可愛いね!
《オーケーアルティレーネ! ソノポイントニコウカスルゼ!》
そんな中、アルティレーネが良さそうな降下ポイントを発見し、『ヒャッハーくん』と一緒に確認。問題なさそうなので早速降りる事に。ここまであっという間に移動してくれた『ぶっ飛びヒャッハーくん』にお礼を言って、再びミーにゃんポーチにしまおうって思ったけど、なんか変な予感がしたので、ポーチにしまうのをやめて、彼を自由にしてあげる。
「よろしいのですかお姉さま?」「その予感とはなんなのじゃ?」
「アルティ、珠実。うん、大丈夫だと思う……この子は私の神気で動くから途中エネルギー切れなんて起こさないだろうし、自由にさせておいて、魔王との決戦でサポートに回ってもらおうかなって思うよ……ホント、なんとなくそうした方が良いって感じたんだよね」
マジに何でか? なんてわからない。だけど、こういった予感には従った方がいいってのは、前世からの経験で感じるんだわ。
《ワカッタゼ、マイマスター! ソーイウコトナラ、オレハ「ユウゲキシュ」トシテウゴクトスルゼ!》
「うん。それでお願いね? マップやモニターとか通信なんかを駆使して得られた情報を精査して、持ち前の性能を十分活かしてみんなを助けてちょうだい」
「頼もしい限りですな。宜しくお願い致す『ヒャッハー殿』!」
《マカセトキナー! マイマスターモヒツヨウナラ、エンリョナクヨンデクレヨナ!?》
フィィィィーン……ドシュゥゥーッ!!
そうして『ぶっ飛びヒャッハーくん』は私達を降ろした後、浮上しまた彼方へとぶっ飛んで行った。『守護者』以上の性能を持った子だから、きっと魔王達との戦いにおいて、切り札となってくれる事だろう。
「よーし! んじゃ早速ウナギを見付けに行きましょう~♪」
「「「「おーつ!!」」」」
さあ! 気を取り直してウナギだ、ウナギ! うひょひょ♪ 楽しみだわぁ~! やっぱり蒲焼きよね! 後はひつまぶしなんかもいい! どれどれ~早速検索かけて探してみましょうか!
「アリサ様がこれほどまでに情熱を注ぐ、ウナギ! うふふ♪ 私も今から楽しみですわ!」
「うむ! まったくあの酒場のマスターには感謝せずにはいられぬな?」
「そうですねぇ~アリサお姉さまがこんなに執着されるのも珍しい気がします」
「しかし、そのマスターの話ではとても食えたもんではないと言う話なのじゃろ? 妾は、ちと不安なのじゃぁ」
おやおや? みんなも期待してくれてる様子だねぇ~? ネヴュラの言うように、私はウナギ大好きなのよ? マジにバルガスが聞いたって言うその『セリアベール』の酒場のマスターさんには感謝だね! 全部終わったら、手土産用意して私もお邪魔しようかしら?
アルティレーネもウナギの美味しさを知ったら、きっと執着せずにはいられなくなるよ? 珠実はちゃんと食べられるのか不安みたいだけど、大丈夫! いずれウナギを食べる日を想定して料理の訓練はしてきたからね! このアリサさんが美味しくしてあげる♪
「うっひょぉーっ!! すんげぇわ! いるいる! ウナギ祭りじゃぁ~♪」
でもって、この私達が降り立った周辺地域を、ウナギで検索かけてみたら、いやいや! めっちゃヒットするのよ♪ やっぱりあれか? 調理法が確率してない分、ウナギを食べるってことがあまりにも少ないのかね? なんてもったいない! まぁ、私としてはめっちゃラッキーなんだけどね!
「やりましたね! アリサお姉さま♪ それでは早速捕まえに参りましょう!」
「おーっ! みんなも行くどー? 私に続けぇ~♪」
ひゃっほいひゃっほーい♪ アルティレーネも嬉しそうに早く行こうってノリノリだ! 勿論私も嬉しくてスキップしちゃうくらい♪ 求めるウナギちゃん達がいるのは、やっぱり川! ここからちょいと森に入ると、その川が見えてくる。
「アリサ様がおればどんなに深い森や洞窟だろうと迷子になることはなさそうじゃのぅ?」
「本当に川がございましたな……この近くにウナギが!」
「バルガスとネヴュラは、ご飯炊いておいて! ほーら! こんなに活きの良いウナギちゃんがわんさかおるぞーい!?」
その川に辿り着けば、後は早いもんだ。だって普通にウナギちゃんが水面に顔出したりしてるんだもん♪ うひょひょ、済まんねぇチミ達? 私が美味しく頂いちゃいますよっと! ドンッ! と、『貯水槽』を出して、川の水と一緒にウナギちゃん達を『引き寄せ』して一気に大漁ゲット♪ うむうむ! まるまると肥えおってからに! 実に美味しそうじゃないの?
なんぞ迷わずこの川に来てウナギちゃんゲットする私に珠実が感心してるけど、そりゃミニマップがあるからね。さぁ、バルガス。「もう既に捕まえておられた」とか、驚いてないで、ネヴュラと一緒にご飯を炊きなさい? その間に私が料理しちゃうからね?
珠実「ぬあぁぁぁ(;´Д`) ようやっと痺れが消えてきたのじゃ……(*゜∀゜)=3」
ネヴュラ「うふふ♪(*´艸`*) 心なしか珠実様、血色がよくなったように見えますわ!(*´∇`*)」
アリサ「実際効いてるはずだよ( ´ー`)」
珠実「うむ!( ・`ω・´) 先程も言うたが、気持ち体の調子が良いな♪(*゜∀゜)」
ヒャッハーくん《ソウダロ~?(°▽°) カンシャシナー!( ・∇・)》
アルティレーネ「あのハリネズミ状態も面白かったですよ♪(*≧艸≦)」
バルガス「実際どのような感じだったのですかな?(゜ー゜*)」
珠実「あ~(・о・) あれじゃ、長時間正座して立ち上がった時の痺れに、よう似ておる(;´д`)」
アリサ「それが全身に走る感じよね?(^ー^)」
ネヴュラ「まぁ!Σ(゜Д゜ υ) それはそれでキツそうですわね(´゜ω゜`)」
アルティレーネ「アリサお姉さまも体験されているのですか?(^_^;)」
アリサ「そりゃ造った手前、テストはするわよ( ̄▽ ̄;)」
ヒャッハーくん《オレサマハー、モトモトケンコウゾウシンヨウゴーレムトシテ、ツクラレタンダゼー♪ヽ(*´∀`*)ノ》
バルガス「そ、それがどうしてこのような兵器に!?Σ(*゜Д゜*)」
アリサ「え~?(´・ェ・`) だってその方が面白いじゃん?(*`艸´)」
ヒャッハーくん《ホラー?(o゜◇゜)ゝ ネヴュラ、オマエチョットフトリギミダゼ~?(゜∀゜ )》
ネヴュラ「きゃあぁーっ!?ヽ(;゜;Д;゜;;) ななな、なんてこと言いますの!?Σ(ノ`Д´)ノ 夫の前でやめて下さい!(つд⊂)」




