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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
132/211

閑話 風雲! 女神城!~弐~

アリサ「二日目だよぉ~♪ヽ(*≧ω≦)ノ」

ユニ「えへへ(*´∇`*) みんな明けましておめでとう!ヽ(*>∇<)ノ」

アリア「おめでと、です♪(*ノωノ) んぅ~ちょっと恥ずかしい(u_u*)」

アルナ「皆様。謹賀新年明けましておめでとうございますm(_ _)m どうぞ今年も私達をよろしくお願いいたしますo(*⌒―⌒*)o」

ポコ「アルナちゃんはお堅すぎるのです~♪( *´艸`) 今とっても楽しそうなことやってるのに!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」

ヴィクトリア「もうポコったら、挨拶は大事よ?(´・ω・`; ) 皆さん明けましておめでとう(^ー^) 今年もよろしくね?(*^-^)」

アリア「んぅ~♪( ´ー`) いよいよ始まる、です!(・`ω´・ )」

ユニ「『風雲! 女神城!』の第一関門だね!(・о・)」

アリサ「一体何人クリア出来るのかな?(´・∀・`) お楽しみに!(ノ^∇^)ノ」

────────────────────────────

【四つのお城と】~城壁~

────────────────────────────


「素晴らしい!! 素晴らしいぞアリサ様ぁぁーっ!! 前回の棒読みセリフは何処へやら!? 名演をありがとぉぉーっ!!」


ワアァァァーッ!! アリサ姫! アリサ姫! イェェアァーッ!!


 ちょっと!? 流石にそこまで姫姫しとらんがな!? やめんさいよ! 恥ずかしいでしょぉぉーっ!? あと、ユニの名前もコールしなさいよ!

 ってわけで、みなさん『こんにゃる~♪』って、別に今の私は猫幼女じゃないけどね♪

 アルナ達の歓迎会を兼ねた『風雲! 女神城!』の開催が決定され、またしても囚われのお姫様役になったアリサさんですよ。みんなに助けを求めるお姫様の演技を見せて、それに乗っかった参加者も沢山集まって来たところ……


「いよぉぉーしっ!! 続々と参加者が集まって来ているところで、今回のルールを説明するぜぇーっ!! みんな心して聞けぇぇーっ!!」


ウオオォォーッ!!!


 いよいよ『風雲! 女神城!』の幕が切って落とされようとしている。司会のエルフは妹達から何やらメモを受け取り、観衆達に向けて叫び出した。どうやら今回のゲームの概要とルールが説明されるらしいね。


「い、一体どんな催しになるんでしょう!? 私、なんだかドキドキしてきました!」

「なのです! ポコもウズウズしてきました! ワクワクなのです!」

「まーた面白そうな事をやってるのね? もぅ! これならもっと早くこの世界に来るんだったわ♪」


 モニター越しの来賓達、アルナ、ポコ、ヴィクトリアの三人も今から始まるであろうドタバタ必須のゲームをワクワクした様子で見守っている。うん、ホントにどんな感じになるんだろう? 私とユニも説明される内容を見逃すまいとモニターに注目。


「ふおぉぉーっ!? なんだってぇぇーっ!? こいつは凄いぞ! みんな心の準備はいいかぁーっ!?」

「「「うるせぇな! さっさと言いやがれこのはぐれ野郎!?」」」


 そーだそーだ! もったいつけてないでさっさと説明しなさいよ!? わざとらしく溜める司会のエルフに観衆達もブーイングを飛ばしまくりだ。引っ張りすぎはよくないぞ!?


「オーケー! じゃあみんなまずはこれを見てくれ!」


ブゥゥンッ!!


「うおぉぉっ!? なんだこりゃ! 城が四つも建ってやがるぞ!?」

「むおぉ? 手前の城壁高ぇぇーっ!」「その後ろにあるいくつも扉が並んだ通路はなんだぁ?」


 おぉぉ? この四つの城が妹達の城ってこと? 司会のエルフが指し示したモニターに今回のステージが映し出された。その映像で目立つのはやはり四つの巨大な城だろう。並列に三つの城が並び建ち、その真ん中の城の後方に更にもう一つある。おそらくこれらが妹達の創造した城なんだろう。

 そしてその城が並ぶ前方には、前回の第一関門でもあった巨大な城壁と、それを越えた先に、いくつもの扉が並んだ通路が見える。


「驚いたよなみんな!? じゃあ説明していくぞぉぉーっ! 見ろ! 前回もあった第一関門!『城壁』がパワーアップして舞い戻って来やがった!!」


 モニターの画像が切り替わり、高く聳える『城壁』の全容を映し出す。「パワーアップした」っていう言葉の通り、その高さは更に伸びている。しかし、注目すべきはなんと言っても、上に登るほどきつくなる『反り返し』だろう。よじ登ってもそのゆるやかなRを描く反り返しのせいで、簡単には登れない仕組みになっている。


「確かに普通に登るならキツイだろうけど、『飛行魔法(フレイ)』を使えば……」

「尚この関門では魔法も技能も一切使用禁止だぜ!? お得意の魔法も、なんちゃら剣技だの使ったら反則と見なされぇるっ! そう、脱落だぁーっ!!」


えぇぇーっ!? 魔法も技能も駄目なの!?


 シェリーのセリフに被せるように司会のエルフからこの関門のルールが説明されると、参加者達……特に魔法使い達が揃って不満の声を挙げ始めた。あ~、そりゃ『飛行魔法(フレイ)』使って空飛んじゃえば、城壁なんてなんの意味もないからわかるけど……剣技とかも駄目なの?


「残念だったわねシェリー、他の魔法使い達! ここで使っていいのは道具と技術だけよ!?」

「ふはははっ! そう言うことだよ! 因みに反則した人は問答無用でこの『無限円環(メビウス)』から『聖域』にお帰りいただきまぁーす!!」

「ん♪ そして『聖域』でお留守番中の、魔女の方のアリサお姉さんに慰められるがいい……」


 ティリアにフォレアルーネ、レウィリリーネの三人が「してやったり!」とでも、言わんばかりに戸惑うみんなを煽りよる。因にだが、今ここにいる私は聖女の方で、魔女は例によって『聖域』で留守番している。まぁ、この『無限円環(メビウス)』内の時間を速めているので、『聖域』では精々小一時間足らずの間だろう。


「そんなら壁に穴空けてやりゃいいじゃねぇか? これなら魔法も技術もいらねぇ。純粋なパワーと得物だけで済むぜ!」

「残念ですがセラさん? それも反則とさせていただきますよ?」


えぇーっ!?


 あはは、実に単純明解なセラちゃんの脳筋理論だけど、流石に認められないと、アルティレーネが注意した。そして、セラちゃんと同じことを考えてた者が数人いたようで、またも不満の声が挙がる。

 いやはや、そんな簡単にクリアしちゃったらゲームにならないんだからしょうがないじゃん? 限られた手段でクリアしてこそだよ~みんな?


────────────────────────────

【アミダくじと】~商魂逞しいラグナース~

────────────────────────────


「さぁ気を取り直して次に待ち受ける関門を見てみようぜぇーっ!!」


オォォーッ!!


 城壁に関しては多少の違いはあれど、前回とあまり変わらないからいいんだけど、次の関門、これってもしかしてアレかね? 並ぶ扉を突っ走ってぶち破り、最後まで抜けた人の勝ちっていう……


「これは今回が初の御披露目だね! ここではアミダくじみたいにみんなをグループ分けさせてもらうよ!」


アミダくじーっ!?


「ん♪ そう。くじ。この扉が並ぶ通路を駆け抜けてたどり着く先は三つのゴールと、一つのハズレがある」

「つまぁぁーり! この第二の関門『運命の扉』を駆け抜けて、それぞれの城に挑むことになるか! はたまたハズレを引いて観客の一人となるかが決まぁぁーるっ!!」


そーいうことかぁぁーっ!?


 はぁ~なるほどね! この通路の扉を抜けた先が妹達の城に繋がるってことか! 中にはハズレの扉もあって、そこに入っちゃうと残念! 脱落ってことになるのね? フォレアルーネのアミダくじ発言に「なんだそれ?」って感じだったみんなも、レウィリリーネと司会のエルフの説明で合点がいったみたいだ。恐らく、城壁を無事にクリアした参加者を妹達が更に篩にかけるつもりなんだろう。


「ほへぇ~なるほどでっすよぉ~こりゃ下手すりゃパーティー組んでる意味がなくなっちゃいまっすねぇ?」

「えーっ? なんだぁ~折角私達でパーティー組んだのに!」

「ランダムで抜ける先が決まってしまうなら私達もバラけちゃうかもしれないわね?」


 その事にちょっと残念がっているのはアリス、ゆかり、シェラザード達。この三人は他にカイン、リール、フォーネの三人を加えた六人パーティーを組んで、挑戦するつもりだったようだ。まぁ仕方ないね、これから先いくらでも機会はあるよきっと。


「あれ? でも、ランダムと言うことは、一つの城に人数が集中したり、逆に誰も集まらない城も出てくるかもしれないんじゃ?」

「いい質問ねカイン! 安心しなさい、そこは上手いこと調整されるように出来てるからね♪」

「わぁーそうなんだぁ~? うぅ、そうなると同じお城の攻略になるように祈るしかないねフォーネ?」

「まぁまぁ、バラけてもその先で合流出来るように頑張ろうリール!」


 うむうむ。カインの質問は私も思ったけど、そこんとこは妹達も想定済みみたいで、上手く振り分けされるようだね。ランダムで誰がどのお城の攻略に組み込まれるかが決まるなら、中々意外な組み合わせもあるかもしれないし、面白そうだ。ちょっと私も参加したくなっちゃうな!


「どうだぁみんなぁーっ!? ここまでは理解出来たかぁーっ!?」


わかったぜぇーっ! 了解だぁーっ! やってやろうじゃねぇかぁーっ!!


「オーケーオーケェィ!! 向かう三つの城! すなわち!

 西に臨むは自然に囲まれた草木の萌ゆるフォレア城! 東に浮かぶ煌めく天空の城はレウィリ城! そして中央に座する白亜の城はアルティ城! 諸君達はまずこの三つの城を落とすのだぁーっ!!」


ウオオォォーッ!!


「そしてぇっ!! その三つの城を攻略した暁には! かの主神! ティリアが君臨する白き大宮殿にて最終決戦が行われるぞぉぉーっ!!」


ワァァァーッッ!!


 おぉ! これは展開が楽しみだ! 前回と比べてかなり大規模になった今回のステージ! 大人数の参加者達の中で一体誰が栄光を勝ち取るのか? はたまた、妹達がその参加者達を跳ね退けて見せるのか!? うーんっ! 全く予想がつかないよ!


「うわぁぁ~♪ 凄い盛り上がり! ユニも参加してみたいなぁ~!」

「ふふ、ホントだね♪ 私も参加したいよ♪」

「お、それ面白そうだねアリサ様! いつになるかはわからないけど、俺とゼオンで協力してこういうの作ろうか? な、ゼオン!」

「面白ぇ~そん時のタイトルは当然『ゼオン城』な?」

「待てよ! そんなの狡いじゃん! 『ルヴィアス帝国! 女神への挑戦状!』って決めてんですー!」


 あらら♪ 盛り上がってるみんなをちょっと羨ましく見てた私とユニだけど、ルヴィアスがゼオンと一緒になってなんかアトラクション用意してくれるそうだ。なんか妹達みたいな言い合いしてるけども……まぁ、二人ともやること山積みだろうからそれが完成するのは相当先の話しになるだろうね。気長に待つとしましょうか♪


「いえ、『セリアベール』の住人は大のお祭り好き達です。更に『氾濫(スタンピート)』が解決し、『セリアルティ王国』の復興を掲げた昨今、娯楽を求める方達も増えるでしょう。そこにこういった大規模なアトラクションがあったとしたら……」


 おや? なんか大人しく微笑みをたたえて今までの説明を聞いていたラグナースが何やら凄い早口で喋り出した!


「いけます! これはいけますよゼオンさん、ルヴィアス様! 街にもこんな楽し気な設備があれば繁盛する事間違いなしです! やりましょう! エミルさん、復興計画の予算の見直しをですね!」

「ちょっとちょっと! ダーリン落ち着いて!」

「そ、そうですよラグナースさん。確かに魅力的な話ですけど、今はこのアトラクションを楽しみましょう?」


────────────────────────────

【開始!】~第一関門~

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 いやいや、どこまで行ってもラグナースは商魂逞しいねぇ? レイリーアとエミルくんに落ち着くように言われて、「す、すみません」ってペコペコと頭を下げる彼の言った設備というのは、前世の世界にあった遊園地や、アスレチック施設を彷彿とさせる。

 ラグナースの慧眼は中々のものだ。なんと言っても『ユーニサリア』には娯楽が少ないのだ。精々が酒場でお酒を飲んで騒ぐとか、男性なら綺麗な女の子のいるお店で、「お楽しむ」とかくらいらしい。

 それもこれもみんな大人じゃないと駄目だし、女性やお子さまが楽しめる娯楽設備なんて皆無と言ってもいい。

 そこに先の施設が出来たとしたら? 最初こそ物珍しさだろうが、人は集まる。そうして楽しさを知った人達の間で話題となり、他の人々にも拡がって行くだろう。そうなればどうなるのか? その施設は街の名所となって、更に人が集まる……んじゃないかなぁ? そして人が増えれば街も大きくなって~って、ならない? う~ん、この辺私は素人だからよくわからんね。


「いいわよいいわよラグナース! 流石私が見込んだ『聖域』の御用商人だわ♪」

「うふふ♪ その設備が完成したら是非遊びに行きますね!」

「こいつはまた一つ楽しみが増えたなぁーっみんなぁーっ!! もしかしたら近い将来こんなアトラクションに挑む女神様達の姿を拝めるかもしれないぜぇーっ!?」


わぁぁーっ♪ なにそれ~!? その時は是非御一緒したぁぁーいっ!!


 あはは、やっぱり妹達も企画する側だけじゃなくて、参加する側に立ってみたいって気持ちはあるみたい。ティリアとアルティレーネもラグナースの提案にとっても嬉しそうな笑顔を見せているしね♪ ホントいつかそんな設備が出来るといいね!


「さぁぁーっ! それではいよいよおっ始めるぜぇーっ! 囚われの姫君を救うべく集いし勇士達よぉぉーっ! 準備はいいかぁぁーっ!?」


おおおぉぉーっ!!


「第一関門んんーっ!! 『城壁』だぁーっ! 先にも言ったようにここでは道具と技術のみが使用を許される!! 間違えて魔法や技能を使えば即失格! 脱落になるから気を付けるぉぉーっ!! それではぁ~始めぇぇーいっ!!」


うおおおぉぉーっっ!!!


 さぁ! いよいよ始まったよ! 『風雲! 女神城!』だ! 最初の関門は『城壁』。高く聳え、上部に行くほど反り返りがキツくなるこの巨大な壁を挑戦者達はどうやって攻略するんだろう?


「へへ! 道具は使ってもいいって話だったな? 皆、俺に任せとけよ!」

「ふふん♪ こう言う時こそ光るのが私達『斥候(ローグ)』よね!」

「あら? 『弓士(アーチャー)』だって負けてないのよ? 見てなさい!」


 先頭に立ち、自信満々に任せろと言ってのけるのは、やはり『斥候(ローグ)』のこの二人。ゼルワとニャモだ。そして、負けじともう一人、レイリーアが動き出す。


「なるほどレイリーアの技術なら……」「魔法をつかえないんじゃ私達には厳しいです」

「済まん。三人とも頼む!」「折角の挑戦なのに、こんなに直ぐ終わりたくねぇよ!」


 そんな彼等に望みを託す挑戦者達。アイギスがレイリーアの技術ならなんとか道が作れると信じ、サーサは無力な魔法使い達を代表して三人に頼み、バルドくんとセラちゃんもそれに続いて頭を下げて頼み込んでいる。


「任せといて! ゼルワ、ニャモ。私があの反り返しの終点部分辺りにロープのついた矢を射って足掛かりを作るわ!」

「じゃあ、その固定は私がやるわね。ゼルワより軽いから矢が抜けるリスクも減るわ」

「あいよ! そしたら俺がパイル打ち付けて足場を作るぜ!」


 シュンッ! と、言うが早いか射るが早いか。レイリーアが素早くロープを矢にくくりつけ、城壁に向けて射った。その矢は城壁に阻まれて落ちるだろうと、誰もが予想するのだが……


ガッ!! おおぉー!


 意外や意外! なんと彼女が放った矢はしっかりと城壁に突き刺さったではないか!? これには観客も参加者からも感嘆のため息が出る。


「はぇ~あんなカチンコチンに見える壁に、どやったらあんなに綺麗に矢をさせるんですかぁ~?」

「ふふ、これは『弓士(アーチャー)』の技術の一つよ? 一見しっかりとしてるように見えるこの城壁だけど、ちょっと接合が甘い部分が数点あるのよ。そこに角度とか速度とかをきっちり合わせて穿てば、ご覧の通りってわけ!」

「す、スゴォォーイィッ!! これは凄い技術を見たぞ! 流石は前回の覇者レイリーアだぁぁーっ!!」


ウオオォォーッ!! 姐さんスゲェェーッ!!


 はっへぇーっ!? そりゃ凄い! ミュンルーカと全く同じ疑問を私も思ったんだけど、いやはや……凄い職人技だ! 接合が甘い箇所なんて私には全然わからんよ? それを即座に見抜いて的確な力と角度に速度も合わせて~なんて、そうそう出来る事じゃない!


「ふふん♪ もっと褒めて! アイギス達と出会うまで、伊達にソロでやってたわけじゃないのよ♪」

「ええ、見事だったわレイリーア! じゃあ、ささっと固定してくるから待ってって!」


 のっけからスーパープレイを披露したレイリーアに歓声が沸き立つ中、その矢から垂れ下がったロープを軽い身のこなしで、ニャモがヒョイヒョイと登り、しっかりと壁に固定する。


「凄い凄い! アリサおねぇちゃん冒険者って凄いね!」

「うん。大したもんだわ! 色んな創意工夫があるんだなって改めて勉強になるねぇ」

「うぐぐ……まさかこんなあっさりと……急造の粗をつかれたわね!」

「まぁまぁ、ティリア姉~これからだよ? これから♪」


 モニターを見つつ、取り敢えずオヤツのクッキーやらポテトチップスやら、お菓子作りをする私とユニは一端手を止めて、挑戦者達の様子にまじまじと感心していた。ティリアとフォレアルーネも観ているようで、意外とあっさり攻略されつつある第一関門に悔しがっている。


────────────────────────────

【待ってるぞ!】~早く登って来い!~

────────────────────────────


「まぁ、確かにまだ始まったばかりだし……多分登った先には……」

「そう言えばアリサおねぇちゃん。アリアちゃんは何処にいるの? 姿が見えないけど……」


 登りきって「はいクリア!」ってならないのがこの『城壁』だ。前回を踏まえて考えれば登りきったその先に彼等が待機しているだろうって、ユニ、アリアが何処にいるか知らないの?


「アリアなら、ほら。箒になってみんなに映像を届けてるよ?」

「え? あ、ホントだ! なんか先っぽにくっつけて飛んでる~♪」


 そう、観衆のみんなに映像を届けているのは他ならぬアリアである。城や各ステージを作るのに夢中で、カメラを設置し忘れた妹達がお願いしてきたのだよ。他にも私のオプションを飛ばしてカメラ係りを増員させてたりもする。


「アリアちゃんお仕事できてえらいなぁ~♪ えへへ、沢山お菓子作って「お疲れ様」って言ってあげなきゃね!」

「うん♪ そうだね、いっぱい差し入れしてあげようね、って、ほら見てユニ。みんなが城壁を登るよ?」


 箒になって空を飛び、先端にカメラを付けて私達にみんなの様子を届けてくれるアリアに、ユニは差し入れのお菓子を張り切って作るのだと、にっこり『天使の微笑み(エンジェルスマイル)』を見せてくれるのがとっても嬉しい♪

 さぁ、第一関門はニャモに続いてゼルワがしっかりした足場を作り、みんなが登り始めたぞ。


「気を付けろよドガ? 絶対奴等お前を狙って来るぜぇ~♪」

「ぷっ! また「ぬわぁぁーっ!!」ってなったりしちゃってね?」

「ええい! 言われんでも気を付けるわい! 笑うとらんで進まんかセラ! ミスト!」


 ぷふふ♪ 前回の映像記録を見て大笑いしたセラちゃんとミストちゃんはドガに気を付けるように言いながらも、どこか期待したような目を向けている。流石に今回も~なんて事はないだろうけど、やっぱり、もしかしてって思っちゃうよね? 私も同じ気持ちだよ。


「城攻めの際、迂闊に頭を出してはなりません。陛下、ここは私にお任せを!」

「おぉ? ビットさん、なんか策が?」

「はい。相手は我々が城壁を登って来ていることは既に知っております。しかし、何の妨害もなくここまで来れたと言うことは……」


 城壁を登りきるのに、みんな後頭一つって高さまで来たところで、ビットがみんなを止める。そしてゼオンと何やら話を交わし、ポイって何かを城壁の向こう側、登る先に投げたじゃないの。


シュポポーンッッ!! ババシィッ!!


《なんだよぉ~ドガがまた調子こいて登って来たと思ったのによぉ~?》

《今のは小石か? ふっ、今回は相手にも手練れがいるらしいな》

《むぅ、向こう側に回り込んで相手の陣営を確認出来ぬのは歯がゆいものですね》


 やっぱり待機してたよ『ガルーダナンバーズ』! さっきビットが投げた小石に反応して、前回同様、私の『弾性空気弾(もちもちエアもっちー)』を参考にレウィリリーネが作り上げた魔装具、『エアもっちカノン』を装備した翼とゼーロ、そしてレイヴンが反応し射撃したようだ。


「出たぁぁーっ!! 前回この関門でドガを降した『ガルーダナンバーズ』達だぁぁーっ!!」


ワァァァーッッ!! いいぞいいぞぉ~♪ 全員叩き落としてやれぇーっ!!


「尚、女神様達の通達により、彼等が狙撃するのは登って来た者に対してのみ! また、何処から登って来るかを調べてはいけない。だそうだぁーっ! そこにもしかしたら活路があるのかもしれないぞぉぉーっ!? 頑張れみんなぁぁーっ!」


 なるほどね。道理で回り込んで挑戦者達の様子を見に来ないわけだ。魔法も技能も使えない状況でそこまでされちゃったら、脱落者が続出してしまうもんね。


「そして大事な事だから言っておくぞぉーっ!? この『城壁』のクリア条件は『ゴールに到達すること』だ! そしてそのゴールは壁を越えた先にあるぞぉぉーっ!!」


 ほほう〜? 今回はゴールを設けているのね? 前回は登り切って先に越えればそれでクリアだったから、今回もそうだと思ってたよ。


「はは、そう言うことか。オーケー。状況は理解したよビットくん。任せてくれ、道具は使ってもいいってんなら……」

「はい、皇帝陛下♪ ちゃんと用意してあるよ!」

「おお? なんだオルファその玉っころは?」

「ふふふ、ゆかりさんこれはね『ルヴィアス魔導帝国』が開発した魔装具です!」

「これをあっちこっちに放り投げてゼーロさん達の注意を逸らすと同時に……」


 ゼルワの作ったパイルバンカーによる足場上で階段みたいに並んでる挑戦者達。さっきのビットが投げた小石を見て、ルヴィアス達帝国組が何やら小さな玉ころを取り出してみんなに配り始めたぞ? さっきみたいにぶん投げてゼーロ達の注意を分散させるつもりかな?


────────────────────────────

【懐かしいなめ猫、ならぬ】~なめ鳥?~

────────────────────────────


「よし、じゃあ作戦開始! 皆さん放り投げて!」


応!!


 何やらみんなに説明をしていたカレンのかけ声を合図に、挑戦者のみんなが渡された玉ころを城壁の上に放り投げた、すると!


カッッ!!


《うおぉぉっ!? なんだ!?》《うわぁぁっ! なんだこりゃぁっ!?》

「「グワーワッ!!」」


 目映い閃光が城壁の上で弾け、一瞬辺りが真っ白になるほどの光量を解き放つ! モニターも真っ白で何も見えない! さっきの玉ころは『閃光弾』みたいな目眩ましか!? こりゃ至近距離で目の当たりにした『ガルーダナンバーズ』はひとたまりもないだろう!


「今だ皆! 一気に駆け登れ!」


おおおぉぉーっっ!!!


「こ、これは凄い隠し玉だぁぁーっ! みんな目は大丈夫かぁーっ!? 私はレウィリリーネ様からサングラスなる物をもらっているから平気だが! おぉっとぉっ!! 挑戦者達が一気に城壁を登りきるぞぉーっ! 勝負を仕掛けるつもりだぁーっ!!」


ワアァァーッ!!


 どうやら観客達はモニターから距離があった分、「ちょっと眩しい」くらいで済んだようだね。よかったよかった。

 司会のエルフはこういう事態を想定してたのか、レウィリリーネから予めサングラスを渡されてたようで、光が弾けた瞬間素早く装着して難を逃れたようだ。

 ……ん? レウィリリーネが()()()()()()()()


「いざ参らん! っ! 何ぃっ!?」


ポポポーンッ!! バシィッ! バシバシバシィッ!!


《ふっ、流石はかつての『セリアルティ王国』の聖騎士だなビットよ!》

《おやりになりますね。咄嗟にあの射撃を剣で弾くとは……》

《ですが残念でした。あの程度の策、女神様達は最初から見越しておいでです!》


ジャジャーンッ!!


「なんとおぉぉーっ!? 見ろみんなぁーっ! なんということだぁぁっ!? 『ガルーダナンバーズ』の連中が、みんな……みんな……サングラスをかけているぅぅぅーっ!!」


うおぉぉっ!? マジかよぉぉっ!?


 アハハ!! みんな結構似合ってるじゃない! あはは♪ 可笑しい~なんか前世の「なめ猫」を思い出しちゃったよ♪ みんなは知ってる「なめ猫」って? まぁ、それはどうでもいいや。おそらく妹達が設定したルールの道具の使用はオッケー♪ ってのは、この状況に絞り込む一つの罠だったんだろう。ステージや場面から相手がどんな手段を用いて来るかは予想がつけやすいからね。さぁどうするビット? 咄嗟に剣で『エアもっちカノン』から放たれた『弾性空気弾(もちもちエアもっちー)』を弾いたものの、目の前にはゼーロ、レイヴン、レイミーアが立ちはだかっているぞ!?


「ビットさん! こうなりゃ実力行使しかねぇ! 俺も得物は持ってきてらぁ! 正面突破だ!」

「その通りだ! 『白銀』! 『輪形陣』を組め! 魔法の使えないサーサを護るんだ!」

「俺達『黒狼』も続くぞ! ミュンルーカ、シェリー、ミスト! 陣の内部に入れ!」

「「「了解!!」」」


 これには流石に挑戦者達も慌てるんじゃないかな? なんて思ったけど、ビットの後から続いて登って来たゼオンと、アイギス達『白銀』。そしてバルドくん率いる『黒狼』の面々は即座に作戦の失敗を悟り、陣形を組んで魔法の使えないみんなを護る態勢を整える!


「うおおぉっ!? 素晴らしい切り替えの速さだあぁーっ! 流石は歴戦の冒険者達ぃーっ!! Sランクとギルドマスターの称号はは伊達じゃないぞぉぉーっ!?」


わぁぁーっ! 正面対決っ!? こりゃ見物だぜぇぇーっ!! 頑張れぇーっ!!


「あっちゃぁ~やるねぇティリア達! 俺達はまんまと誘導されたってわけか?」

「す、済みません陛下……僕の浅慮でした!」

「知恵比べで女神様を出し抜こうなんて、私達には荷が重かったわね……オルファ気にしないで? 相手が悪かったってだけよ!」

「今は悔やむのも反省も後だオルファ、カレン! ゼオン殿やアイギス殿を見習って切り替えろ!」


 そしてその更に後からルヴィアス達『帝国組』も駆け付ける。作戦を立てたオルファちゃんはちょっとしょんぼりしちゃってるけど、カレンの励ましと、バロードくんの叱咤で気持ちを切り替える事に成功したようだ。


「はいはい。シェラザード様にリールさんとフォーネさんは真ん中でっすよぉ~?」

「ゆかりさん! 僕と一緒にこの三人を護り抜きましょう!」

「ははは! 勿論だカイン! 知ってるぞ、こう言うの『いちゃらぶ』って言うんだろう? 私とカインの『いちゃらぶ』っぷりをあの鳥達に見せ付けてやろうじゃないか♪」


 挑戦者達は続々と城壁を登り、『ガルーダナンバーズ』と対峙する。今度はアリス、シェラザード、ゆかりにカイン、リールとフォーネ達の即席パーティーだ。アイギス達やバルドくん達に倣い、シェラザード、リール、フォーネを中央に配置し、前衛にゆかりとカイン。殿をアリスが務めるようだけど……ゆかりちゃんや。『いちゃらぶ』ってそうじゃないと思うんですけど? まぁ、当人同士がそれでいいならいいのかなぁ~?


「あはは、力になれなくてごめんね!」「頼りにしてますね!」

「もぅ、魔法使っちゃ駄目って、歯がゆいわねぇ! アリス、カイン、ゆかり! ゴールは目の前よ! 必ず突破してあのポンコツ主神に目にもの見せてやりましょう!」


 そう。ゴールはゼーロ達『ガルーダナンバーズ』の真後ろにある! しかもけしからん事にティターニアの『妖精国』の森の妖精。ニンフことアルセイデスが二人! 水着姿で「ゴールはこちらでーす♥️」とか、うっふぅーん♥️ なポーズで誘ってやがるじゃないの!?


「なんて破廉恥な格好をさせているんですか女神様方!?」

「年端の行かぬ子も観ております故、お控え下さいませぬか?」

「そうですよ……アルナ様もポコ様もおられるのに……」

「どうせならももちー達みたいにバニーさんになればよかったのにって思います!」

「天然兎が紛い物に負けるかーい!」


 そのエロけしからんカッコしたアルセイデス達を見て妹達に抗議するのは、『猫兎(キャットラビット)』達に護られてるセレスティーナ様にガルディング様。そして何故か一緒にいるラグナースだ。バニーもまたエロチックだよねぇももちー。んで、ミミはちょっと何言ってるかわかんない。


「ふぅ、道理であっさりと登れると思った……ここまでは女神様も織り込み済みって事ね?」

「ふふん♪ 『ガルーダナンバーズ』の諸君! 悪いが通してもらうよ!」

「クライアントの頼みですからね。姫様達は私達がお救いします!」


 ふむ。ニャモちゃんや、反り返しの城壁に、追加で妨害もあったら難易度跳ね上がっちゃうから妹達はバランス調整したんだと思うよ? まぁ想定内と言えばそうなんだろうね?

 さぁ、これで挑戦者もみんな登りきった。後は目の前のゴールに飛び込むだけだ……上手くゼーロ達の攻撃を掻い潜る必要はあるけども。


《ヒューッ♪ 格好いいねぇ~? 俺っち達の包囲網から抜け出せるつもりかぁ~?》

「口では何とでも言えよう? 行動で示して見せよ!」

(やれるものならやってみせてくださいよぉ~?)


 翼とユナイト、エスペルも『エアもっちカノン』を挑戦者に向けて迎え撃つ準備は万端だ。うむむ! 一体どれだけの人数がゴールできるんだろう?

アリサ「ぷぷっ♪(((*≧艸≦) あんた達結構似合ってるじゃないそれ?(*´∇`*)」

ゼーロ《ふふふ(* ̄ー ̄) なかなか便利であるな、このサングラスとやらは(°▽°)》

エスペル(これのおかげで太陽に向かって飛んでも視界が保てます♪ヽ(*´∀`*)ノ)

レイヴン《わたくしは元々平気ですけど(_ _) 今やカラスもオシャレをする時代ですからね?ヾ(´∀`*)ノ》

レイミーア《ご覧下さいアリサ様!(´▽`) 私の纏う不滅の焔にも負けぬサングラス!( ・`ω・´) すごいと思いませんか?( ゜∀゜)》

アリサ「うんうん(´・ω・`; ) 謎の無駄技術よねぇ(^_^;)」

ユナイト「正にそれですな(・д・`;) まさか我の分も用意されておられるとは……(;゜Д゜)」

翼「マジすげぇよなぁ?(;´A`) ユナイトはカブトムシなのによぉ(^∇^)」

ルロイヤ「クワガタムシではなくて(´・ω・`)? この小さいサイズのサングラスをよくもまぁここまで精巧に作られるものですわねぇ(゜ー゜*)」

ウノ「俺達はどうよご主人?(*´∇`) 結構似合ってるだろー?(ノ≧∀≦)ノ」

ドゥエ「俺も気に入ったぞ、この黒眼鏡(^ー^) なんかカッコいいじゃないか♪ヾ(≧∀≦*)ノ〃」

アリサ「あんた達『偵察部隊』が人の姿でそれかけると(-ω-;) 陽気な遊び人の集まりに見えるわねぇ?(´∀`;) ま、似合ってると思うよ?(*´∇`)」

偵察部隊「イエェアァー♪゜.+:。∩(・ω・)∩゜.+:。」

ガルーダナンバーズ《むむっ!?Σ(゜ω゜) 我等も『人化の術』を学ぶべきか!?(`Д´)》

アリサ「ふふ♪(*´艸`*) それも面白そう!(*´▽`*) 頑張ってね?(*・∀・*)ノ」

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