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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
13/211

13話 魔女と会議

【会議】~再生のその後~


 聖なる(セイクリッド)戦乙女(ヴァルキリー)を解除して、アリアを箒にチェンジ。いつもの魔女装備に戻った私は屋敷に帰ってきた。

 いやぁ~時間にして数時間だったのに、凄い長い時間が過ぎたように思えるよ……疲れたぁ。正直もうお風呂入ってぐっすり寝たい気分だ。


「ただいま~そしてお帰りなさい♪」

「ただま~おかり~♪」

「ふふっ、ただいまですアリサさん。そして、お帰りなさいみんな」

「わーい! 帰ってきたぁ~♪」「にゃぁ~ん♪」

「ん……無事に帰ってこれた」


 振り返り、女神達に声をかける。みんな無事に帰ってこれた事に喜んでるね。

 屋敷の周囲を見渡せば再生された影響で、黒ずんでいた大地に緑が戻り、近くを流れる川はとっても澄んだ綺麗な水が流れている。

 草花は咲き誇り、色とりどりの色彩で私達の目を楽しませてくれる。木々に囲まれた森のような空気はとても美味しくて深呼吸しちゃう。これが『聖域』の本来の姿なんだね。


「なるほどな! ここが姐御達の棲処なのか、立派な屋敷じゃねぇか!」

「女神達がおらねば存在に気付けぬ隔離魔法だな……我等が探しても見つからぬ訳だ」

「お、お邪魔してもよろしいのでしょうか?」

「あはは! 大丈夫よげんちゃん。アリサが招待してくれたんだもの」


 屋敷を見上げてそれぞれに感想を述べるのは、人の姿をとった『四神』達。

 まずは白虎だけど、身の丈190cmはあるだろう引き締まった身体にジャケット、パンツといった出で立ちに、二十代半ばであろう気の強そうな顔立ち、ツンツンヘアーはモノクロメッシュと、意外とオシャレさん。

 そして、青龍。なんと和服姿である。オールバックにした黒に近い深い青の髪、彫りの深い顔は五十代くらいのおじ様に見える。白虎よりは少し小さいから、180cmくらいかな? いやぁ~渋さが滲み出てるね! おじ様好きの女の子だったらコロっといっちゃうよ♪

 玄武ことげんちゃん。ちょっと前にも述べたように深い青色のストレートヘアーは長くて膝裏くらいまである、気を付けてないと地面について汚れちゃいそう。私よりは少し小さい背丈は150cmくらいかな? RPGに登場する魔法使いのようなローブで身を包んでいる、ベルトのバングルにミドリガメのワンポイントがなんか可愛いね♪ たれ目の優しい妹って感じ、おっぱい大きいけど。

 そして朱雀、朱雀お姉さん。燃えるような真紅の髪は毛先にウェーブがかけられて少しフワッとしている、ポニーテールにまとめたそれを見事な装飾の髪止めでとめており、巫女装束のような袴。キリっとしたつり目に、私より高い……170cmくらいの身長から如何にもお姉さんって感じがするね!


「隔離魔法か、道理で私の隠蔽破壊(インビジブルブレイク)に反応しないわけだ」


 呪いの発生源『黒水晶』を露にした私の魔法、隠蔽破壊(インビジブルブレイク)。その効果はあくまでその場に隠されている物を見つけ出すってものだ。青龍が言うように、女神達が不在の場合、『聖域』から隔離されるため反応しなかったって事なんだね。

 ん? じゃあなんで私は見つけられるんだろ? 後で女神達に聞いてみようかな。


「儂と九尾……珠実はともかく、リンにジュンは入れそうにないのぅ?」


 『四神』達と同様に人の姿をとった黄龍こと、シドウが屋敷の大きさを確認して一言。

 シドウはみんなが言うようにおじいちゃんだけあって、人の姿も長い髭を蓄えた仙人みたいなじいちゃんだ。でも、背筋はピッシリのびているし痩せこけているわけでもない。皺が多い顔、でも、目はしっかりと見開かれているし、白髪の頭部はフサフサだ、艶もある。160cmくらいの身長はやや私よりは高いかな? 仙人が着るような服に草履をはいたその姿は元気なジジイだね。


「じゃから普段よりこういった術も身に付けよと言うておったんじゃ……それなのに、コヤツ等ときたら面倒くさがりおってからに!」

「オイラ難しい事わかんないんだぞー!?」

「まぁ、そう怒鳴らんでくれ珠実よ、誰にでも得手不得手はあろう?」


 その大きさからどう頑張っても屋敷に入れそうにないリンとジュン。まぁ、姿を変えたり出来る方が稀なんだろうから仕方無いんじゃないかな? ペガサスや、ガルーダ達も当然屋敷に入れないから、私達は広い庭に集まる事にした。


「さて、みんな座れてるかな?」


 広い庭。と言っても、何処までが庭になるんだろう? とりあえず周囲の草を魔法で刈り、木を数本切り倒して枝を取り、一本一本横にして鳥達が羽休め出来るように並べる。

 フォレアルーネが、屋敷からテーブルを、レウィリリーネが椅子をそれぞれ運び出して私達が座れるように場を整えた。

 即席だけど種族会議の場が完成、屋敷を背に私、ティリアさま、女神達。川を背に各種族の代表、更にその後ろにはグリフォン達がズラーって二列になって綺麗に整列している。因みにミーナはテーブルの上でまるくなっている。


「いずれしっかりした会場? みたいなの作りたいな」

「その件も含めて話し合いましょう。アリサさん、時間は沢山ありますよ」


 即席会場を軽く見渡してこぼした私の一言をアルティレーネが拾う。


「ん、これからの事。ゆっくり決めて行けばいい」

「だねぇ~ま、優先順位つけてやってこーよ?」


 そうだね、レウィリリーネの言うようにゆっくりやっていこう。とりあえず、私が思った議題をあげて、フォレアルーネの言う優先順位を付けて、一つ一つ解決して行こう。


【侵入者対策】~人ん家に勝手に入るな~


「さて、まずはみんなお疲れ様! みんな頑張ってくれたお陰で無事に『聖域』が再生されました!」


おおぉ~っ! わあぁ~っ!


 私の声にみんなから喜びの声がでる。集まってくれたみんなに、労いの言葉をかけて会議スタートだ。会議で使われるホワイトボードと、マーカーをイメージして具現させてドンって置く。どうでもいいけど、前世ではプロジェクターなんてのにとって変わられてたな……


「さて、今回みんなと話し合いしたい事は主にこの三つ」


 一、魔素濃度低下による侵入者対策。

 二、開拓について。

 三、会議の場所について


「……え? なんぞこの文字?」


 自分でホワイトボードに書いておいてなんだけど、今まで見たことない変な文字を書いた。不思議と普通に読めるんだけどね。


「ん、それは共通語(コイネー)。この世界の共通言語」

「アリサっちが困らないようにうちらで付与しといたんだよ!」

「他種族と会話も出来るようにしていますよ♪」


 おぉ~そうなんだ! 確かに異世界に来て言葉が通じないのはマズイもんね。


「だからグリフォン達とも会話出来るのか、便利だわ~ありがとね!」

《なるほどな、ようやく合点がいった》


 どうやら私がみんなと会話出来るのは女神達のお陰らしい、ありがたや~。ガルーダの疑問もこれで解決。さて、気を取り直して会議を進めよう!


「じゃあ始めるね、まずはこれ! 『魔素濃度低下による侵入者対策』についてね!」

(重要な議題ですねぇ~魔神の呪いが全て解呪されて、『聖域』が再生した事で、『聖域』周囲の魔素はだいぶ薄まっています)


 そう、モコプーが言うように一番重要な議題だ。以前は魔素の濃度が高すぎて殆どの人がこの『聖域』に近づく事すら出来なかった。


「ふむ、現状は人間共の領域よりはだいぶ濃いだろうが……」

「えぇ、このくらいなら人間でも耐えうるでしょうね」


 バルガスとネヴュラが空を見上げて、今の魔素濃度を確認して教えてくれる。そうなのだ、魔素が薄まった事で人間達が踏み込んで来る可能性が高いのだ。


《人間共にわたくし達の『聖域』を踏み荒らされるかもしれないと、アリサ様は危惧しておいでなのですね?》

「そう、多分調査って名目で冒険者が来ると思うんだよね。正直、人間って欲深い連中が大半じゃない?」


 八咫烏の言葉に頷く。勿論善人だっているってのはわかってるけどね、『聖域』に来る人間総てがそうじゃない。馬鹿正直に来る者拒まずにいたら骨まで食い尽くされるのは間違いないだろう。


「あー、確かにアリサ様の言う通りだな……ヤツ等にとってはこの『聖域』は宝の山だろうし」

「そうだな、パルモーの言は正しい。人間の欲深さは度を知らぬからな」


 パルモーとフェリアは元々悪魔だけあって人間のことを良く理解してるみたいだね。


「確かに、人間全部が勇者みてぇなヤツじゃあねぇか……じゃあどうするよ姐御? 取り敢えず俺等『四神』で警戒しとくか?」


 白虎達『四神』はそれぞれに東西南北を守護してるって話だから、それも有効だねぇ、でも、どうしたって見逃しは出てくると思うんだよね……


《魔神の残滓は消え失せたものの、普通の魔物は健在ですから、侵入者はどうあってもそれなりの手練れとなりましょうね》

《うむ、我が眷属共の相手としては丁度良いやもしれんな》

《おぉ~!》《やってやんぜ!》《ご主人の為に!》


 フェニックスの言葉で思い出したけど、普通の魔物は確かに健在。プテランバードだの、ワイバーンだの、ホーンライガーとか色々生息している。『聖域』に侵入するからにはその魔物達の相手をしなくてはいけなくなるので、それなりの実力者でなければ厳しいだろう。

 ガルーダはグリフォン達に侵入者の相手をさせようとしてるみたいで、グリフォン達もやる気だ。


「ごめんガルちゃん! グリフォン達には別にやってもらいたい事があるんだ」

《む、そうであるか?》


 グリフォン達には次の議題で役目を与えようと思っているので、少し待ってもらう。


「はい! アリサおねぇちゃん!」

「はいユニ! 何でも言ってみてね♪」


 ユニが元気良く挙手してきたので聞いてみる。うんうん、こんな小さな子でも遠慮なく意見出してくれるなんて嬉しいね!


「えっとね、けっかい? っての張れないかな? 悪い人は入れないやつ!」

「名案じゃ! 流石ユニちゃんじゃあ~っ!」


 ユニの提案にシドウがはしゃぐ、ジジイうるさいよ?


「シドウやかましいんだぞー!?」

「落ち着けシドウ……年甲斐もなくはしゃぐな、見苦しい」

「お、お主等……儂に厳しくないかのぅ~?」


 はしゃぐジジイにジュンとリンが怒る、まったくこのジジイはユニが絡むと、とことん残念になるんだから。


「でも、ユニの意見は良いと思うんだぞー!」

「そうだな、余もユニの意見を推したいと思う」

「妾も賛成じゃ、皆が住まう『聖域』悪意ある者に穢されるのは二度とごめんじゃからの」


 『懐刀』達の言葉にみんな頷いている、どうやら悪者を弾く結界を張る事で決定かな?

 私はホワイトボードに出た案を箇条書きにしてまとめる。


「うん、じゃあ『結界』、『監視』、『魔物』の三重の護りって事で良いかな?」


 まずは『悪意を持つ者を弾く結界』だけど……今まで散々魔神の呪いを見てきた私達は、悪意や、邪心にとても敏感だ。女神達を含め全員で協力して行おう。

 次に『侵入者の監視』について。人間誰しも善性と悪性を持っているものだ、例え結界をクリアしてもその先で悪意を抱く事も考えられる。そういった者を早急に対処する為にも必要だろう。自律式のドローンでも用意しようかな。

 最後に『魔物』だけど。これは結構その場任せ。「『聖域』は決して安全な場所ではない」とやってくる侵入者に対して思い知らせる為だ、まぁ、ここに来ようとする者はそれなりの覚悟をして来なさいよって警告かな?


「うん、いいと思うわ。『聖域』は観光名所じゃあないんだし、誰それと気軽に入って来られちゃ困るものね!」

「ティリア姉様と同意見です、余程の事情がない限り、おいそれと来られるのは困ります」

「うちらの寝床に好き勝手入って来られちゃたまんないよ!」


 ティリアさまにアルティレーネも賛成。

 フォレアルーネの言葉に思わず、寝起きに泥棒が入った状況を想像して、ゾッとする、確かに冗談じゃないね。レウィリリーネも頷いているのでこれで決定だ。


「ありがとうユニ、お陰でまとまったよ♪」

「えへへ♪ おねぇちゃんの役にたててよかった!」


 う~ん! 可愛い♪ 沢山撫で撫でしちゃうぞ!


【開拓】~誰もが命を食べている~


「じゃあ、次の議題、『開拓』についてだね、これについては多分に私達のワガママが含まれるから……嫌なら遠慮なく言ってね?」


 これは昨夜に話してた事だ、私達は食事をとる必要がないけど。心の栄養の為に美味しい物を育て作りたい。それにはこの『聖域』をいくらか切り拓く必要があるのだ。


「なるほど、だいたいの話はわかったわ。でもさアリサ、酪農……えっと、あなたに動物を殺すことできるの?」

「うっ……難しい、かも……」


 朱雀の言葉に思わずシュンとなる。私は動物が好きだ。もふもふの哺乳類は勿論、鳥も魚も、カエルも蛇も昆虫も基本的にみんな好き。それを殺さなきゃいけないなんて、出来そうにない。


「動物達も食べられる為に生きているわけではありませんよ? 子を育てる為の乳を拝借するのもおかしな話ではありませんか?」


 げんちゃんの一言がもっともすぎて刺さる、言われてみることで、前世では凄い贅沢してたんだな私って感じる……食事を必要としないくせに、楽しむために生き物を殺して食べようなんて……傲慢が過ぎるかもしれない。


「ごめんなさい……傲慢が過ぎました。酪農は取り止めます」


 帽子を脱いで、全員に向かってペコリと頭を下げて謝罪する。残念だけど仕方がないね。


「朱雀、げんちゃん。意地が悪いのではないか? アリサ殿の言う牛や鶏、豚は繁殖が早く棲処には収まりきれぬほどいるであろう?」

「ははっ! そう言うなよ青龍、生き物の命だ。姐御には上に立つモンとして、その重さってのを知っておいてもらいてぇってこったろ?」


 え? そうなの?

 どうも『四神』達と『懐刀』達は魔素の高濃度化から、『聖域』に住んでいた動物達を手分けして、各々の棲処に保護しているのだそうだ。あまり濃度の高い魔素を摂取し続けていると魔物化してしまうための対策だそうだけど、どうもこの世界の動物達は私が知るよりだいぶ繁殖力が高いらしい。


「アリサがいた世界には魔物っていなかったもんね、この世界は普通に魔物が存在するぶん、弱肉強食の三角形も違うのよ?」


 ティリアさまが説明してくれる、魔物がいるぶん、家畜達は弱者となり種の存続の為の繁殖力が前世の世界に比べて強いのだという。


「アリサ様も見たことはないか? 尾羽根が蛇となり巨大化した鶏などを?」


 リンの言葉に思い出す! そうだ、いたわそんなの! あれが普通の鶏のなれの果てなのか!?


「ふふっ、ごめんねアリサ。確かに意地悪だったわ。青龍の言う通り沢山いるから大丈夫よ?」

「アリサ様が命を軽んじるとは思えませんが、確認をしたかったのです」


 あぁ、そう言うことか。うん。勿論感謝していただきますよ。「いただきます」は食物への感謝の言葉だし、食前の祈りってのもあるとこにはあるしね。


「妾の棲処にも動物共が溢れておってのぅ、可哀想ではあるが間引いてやらねば草木が食い尽くされてしまうんじゃよ……殺すのが忍びない気持ちはよぅわかるでの、何匹か棲処から出してしもうた」

「オイラは食っちまったぞー! 命って言うなら草木だって命だぞー!?」

「ジュンの言う通りじゃな、増えすぎては害となろう? 魔女よヌシがいたという世界では獣害はなかったのかの?」


 珠実は棲処から何匹か出して、ジュンは増えた動物を食べていたそうだ。シドウの言うように確かに前世でも獣害はあったね、そう考えると環境保護って意味でも躊躇してる場合じゃないのか?


「少し意外ですわ……アリサ様は随分素直なのですわね? 皆の言葉を素直に受け止めて、しっかりお考えになって……もっと傲慢に振る舞うのかと思いましたけれど」

「え、そりゃあ普通に一般人だったからね。それに上から目線なんて嫌でしょう?」


 今まで静観していた妖精女王のティターニアが、なんか私に対する感想みたいなの言ってきた。会議なんだから考えるのは当たり前です~、頭ごなしに従えー! なんて言う人に誰がついて行こうなんて思うのよ?


「ふふっどうやら(わたくし)、アリサ様を誤解しておりましたわ! お詫び、と言う訳では御座いませんが、(わたくし)からも意見を述べさせていただきますわね?」


 あぁ、初対面で威圧的な態度を取ったから誤解させちゃってたのかな? まぁ、それも、もう解けたみたいだし良かった良かった。


「動物達は珠実様のように『聖域』に解放なさればよろしいかと思いますわ! 例え魔物化したとしても皆様にとって十把一絡げでしょう? 寧ろ『聖域』を護る一要素ですわね」


 確かにここにいるみんなにとっては、魔物化した動物くらい大したことない相手か。最初の議題である『侵入者対策』にしちゃうって言うティターニアの意見は有りかもしれないね!


《いいんじゃねそれ!》《俺等が食ってやんよ!》《気にする事ねぇぜご主人~!》

《たまには真っ当な意見を出しますね、流石は妖精女王様です》


 グリフォン達がやけに乗り気だね、八咫烏はティターニアを褒めているのか、皮肉ってるのかどっちだろ?


「アリサ様、僕はティターニア様の意見に賛成です。魔物化した動物達を相手にするのは同胞達にとっても良い運動になりますから!」


 ペガサスが賛成してくるって事は少なくとも魔物化した動物はミッドルよりも弱いのかな? 戦闘に向いてないこの子が言うくらいだし……モコプーはどうだろう?


(大丈夫ですよぉ~気にかけてくれてありがとうございます~♪ 魔物化した動物くらいならぷちってやっちゃいますからねぇ~!)


 私が投げた視線に反応するモコプー。この子にのし掛かられたら確かに潰れそうね。


「じゃあ、有り難く酪農やらせてもらうね! 美味しいの出来たらお裾分けするから楽しみにしてて♪」

「わーい! アリサおねぇちゃんの手料理が食べられる~♪」

「わ、我もご相伴に預かっても良いだろうか?」


 ユニが嬉しそうに満面に笑みを浮かべ、セインちゃんはちょっと遠慮気味に訊ねてくる。


「勿論だよ、みんなに振る舞うからね……味見役もかねて……」


 前世で一人暮らしだった私は自炊もしていたのだ、ある程度ではあるが料理は出来る。だけどここは異世界だ、食材の違いもあるだろうし、みんなの好みの味も違うだろう。色々試行錯誤していきたいな。


「そして、次に話す農業でもそうだけど、ティターニア。妖精達の力を借りたいんだけど……良いかな?」

「うふふ、そう言うことならお任せくださいませ! ノームや、ノッカー、ピクシーといった大地や草花の妖精達が喜んでお力になると思いますわ!」


 おぉ~やった! ティターニアも乗り気だ、嬉しいね♪

 後は手伝ってくれる妖精達をちゃんと魔物共から護ってあげなくちゃいけないから……


「グリフォン達~みんなで手伝ってくれる妖精達を護衛してくれないかな?」

《おー!》《ご主人の頼みなら!》《喜んでやるぜぇ!》《ご主人好きだー!》


 うんうん、なんか変な事言ってるのもいるけど、みんな協力してくれるみたいだ!

 よーし、麦や、米を優先して、野菜も揃えて~あぁ! もう色々やりたくてしょうがないよ!


「食事には塩が必要であろう、確か白虎様の西の岩山にそれらしき物があったと記憶しているが?」


 セインちゃんが言ってるのは岩塩かな、うん。塩は大事だね!


「それでしたら私の北には海が御座いますよ? 海水から塩を精製することも可能ですね、ふふっ海の幸も美味しいですよ?」


 おぉ~! いいね♪ 海があるなら昆布もあるだろうし、出汁が取れるよ! げんちゃんに案内してもらって見に行ってみようかな?


「我が守護する東の森には茸や木の実が豊富であるな」

「う、私の南は火山地帯なのよね……何かあるかしら? アリサ、後で案内するから確認してくれないかしら?」


 青龍のいる東の地帯には木の実、茸があるらしい。茸があるって事は菌の概念があるんだ、麹菌もあるかな? 味噌とか醤油ほしい!

 朱雀のいる南は火山地帯らしい。何か生産性のあるものないかな? こちらも実際に行ってみて鑑定を駆使して確認する必要があるね!

 そうだ、この屋敷に戻ってくる途中リンゴが生ってる樹があったから数個頂戴してきたんだ。あれは中央付近か、屋敷のみんなで『聖域』散策するのも良いかも! 検索すれば早いんだろうけど、せっかく再生されたんだから、ちょっと冒険してみたいよ♪


「ティターニア、妖精の国に種や苗はありませんか?」

「そうですわね……稲や麦といった穀物、果物などあった筈ですわ。調べておきますわね♪」


 アルティレーネがティターニアと話を進めてくれる、そうだね、なんでも自分一人でやることないんだし……夜にでも話し合って役割分担しようかな。例えば私とアルティレーネが農業やって、レウィリリーネとフォレアルーネが酪農やって~とかね。


【神殿】~聖域リンゴ~


 ここらで一つ小休止、私は一度屋敷から人数分のコップや桶、皿、フォークを準備して、神々の雫(ソーマ)を注ぐ。採ってきたリンゴの皮を包丁でスルスルスル~。うん、途切れる事なく綺麗に一枚繋ぎで剥けたね、腕は鈍っていないようだ。


「わぁー! おねぇちゃんすごーい♪ 聖域リンゴの皮ってこんなに綺麗に剥けるんだね!」

「ふふっ、敢えて皮を残して……こういうのも出来るよ~ほら!」


 皮剥きに感心しているユニに、リンゴウサギにカットして皿に乗せ、フォークを添えてて差し出す。いや、このリンゴ凄い! 蜜がたっぷりだ、見るからに美味しそうだね♪


「ウサギさん! これウサギさんだぁ~♪」


 わーい! って喜ぶユニに思わず私もにっこりしちゃう。こんなに喜んでもらえると嬉しくなっちゃうね。


「はぁ~アリサって器用なのね。ありがとう、いただくわね♪」

「ありがとうございます、アリサさん」

「ん、あたしもウサギがいい……」

「聖域リンゴなんて久し振りに食べるよ~いっただきまーす!」


 神様って料理とかしないのかな? 差し出したリンゴと神々の雫(ソーマ)を嬉しそうに食べる四人を見て思った。あっ、ヤバイ……グリフォン達に行き渡らない、どうしよ?


《ご主人~!》《俺等の分は気にしなくていいぜー!》《ワハハ! 勝手に採って食うしな!》

《リンゴより肉食いてぇ!》《肉食う時呼んでほしいぜ!》

「あんた等はどっちかって言うと肉食? あ、雑食なのね? でも肉の方が好きと。わかったわ、じゃあ、今度集まるときはお肉を焼きましょう」


 グリフォン達にそう約束して謝って取り敢えずその場をおさめる、タレ、とまでいけなくてもお肉を食べるならなにかしら調味料用意しておきたいね。


「では、次の議題に参ろう。『会議の場』についてだな?」


 リンが会議を進めた、うん。次はこうやって集まる場所の相談。別に会議じゃなくてもワイワイしたい時とか場所を決めておけば便利かなぁって思っての提案だ。


「オイラみたいにでっかいのもいるし、広いトコがいいぞー!」

(賛成~広くて、わかりやすい場所が良いと思いますよ~)

「ならば世界樹(ユグドラシル)が一番適しているだろう」


 ジュンの巨体は移動が大変だしね、モコプーも大きいけど空飛べるし……うん、セインちゃんの言う通り世界樹が一番良いかな? 中心地だし、目立つし。


「発言、よろしいでしょうか、アリサ様!?」


 その時、ピシィって勢いでお手本みたいな挙手をしたのは、フェリア。この子はなんかしっかりしてるねぇ~。


「はいな、フェリアちゃん。もっと力抜いて楽にしていいんだよ?」

「ありがとうございます! お気遣い、痛み入ります! 集会場についてですが、どうせなら世界樹(ユグドラシル)を護るように周囲を囲んでみては如何でしょうか?」


 成る程、確かに今は人の手が入っていない自然に任せた環境だ。誰でも世界樹に行こうと思えば行けてしまう、そう、魔物でも。


「おぉ! そいつは良い案だぜ! 魔神みてぇなヤツがそういるとは思わねぇが……あん時は世界樹(ユグドラシル)を護る事すら出来なかったからな……」


 白虎がかつての惨状を思い出したのか、その顔を苦渋に染める。話を聞いていた他のみんなも神妙な顔付きになった、勿論私もだ。世界樹は星の命。絶対に護らなきゃいけない存在なのだと改めて思う。


「そうだね、フェリアの案を採用しようか。具体的なイメージ……「こういう感じ」みたいなビジョンはあるかなフェリア?」

「はっ! 世界樹周辺を切り拓き、女神様の威光を知らしめる神殿を建設なさるのは如何でしょうか?」


 ふむ、世界樹(ユグドラシル)をぐるっと囲むような神殿か……中心の世界樹を高い壁で囲い、部屋として、そこに繋がる扉を女神達の許可無しでは開けられないようにして……更にその部屋を囲むように、少し低い壁で覆い東西南北に門を設置。この門は『四神』達の許可で開くように……


「──って感じはどう?」


 今考えた漠然とした私のイメージを映像通信(ライブモニター)に映して、全員に見せてみる。


「悪くありませんね、あの大きさを完全に覆うことは出来ませんから……屋根を突き抜けて樹がそびえ立つようになるのは仕方ないです」

「最悪ユニと根さえ残っていれば失われる事はない……」

「うん、うちらの許可制ってのもいいね!」


 円と線の大雑把な俯瞰図とアイソメ図のイメージ画像を見て、女神達の感想が出る。まぁ、フェリアの案を元に、即席で考えただけだから参考程度にしてほしいな。


「内と外の二重城壁なのですわね! しかも入るには許可制、厳重ですわ!」

「それだけ重要な場所ですものね、懐刀の皆様の許可も追加しては如何ですか?」

「うーん、あんまりガチガチにしちゃうと、それが裏目に出るかもしれないからねぇ~」


 ティターニアとネヴュラが神殿(仮)の厳重さを知って感心している。

 ネヴュラにいたっては更にシドウ達の許可も追加してはと提案してきたけど、それだと、有事の際は堅牢な護りになるけど、平時には面倒だと思うのよ?


「みんなで集まって騒ごう~! って時にわざわざ許可取らなきゃいけないってのもねぇ?」

「アリサ様、それならば中央のその二部屋以外にも開放された部屋を用意してはどうですかな?」

「うぅむ、それも良いじゃろうがだいぶ大掛かりにならんかのぅ?」


 バルガスは鍵の必要ない部屋を作ればどうと言うけど、シドウの言うようにそれだと結構大掛かりになると思うなぁ~正直人手が足りないね。


「取り敢えずさ、その二部屋だけでも作っておいて、外周? のことは後から考えるのはどうかなアリサ様?」


 ボクも土魔法で手伝うよ! ってパルモーが言ってくれる。そうだね、やれるとこからやっていくとしようか。


「ふっふっふ……ユニがますますぱわぁあっぷしちゃうぞー! 楽しみだなぁ♪」

「おぉ~そうじゃな! ユニが健やかなれば妾達も安心じゃのぅ♪」


 リンゴを頬張りドヤ顔のユニとニコニコ珠実。そんな二人にみんなが笑顔になった。

 これからも色々やることあるけど、今日はゆっくり休もう。

ティリア「お肉を炭にしたことならあるわ!ヽ( ゜∀゜)ノ」

アルティレーネ「お野菜の皮を剥いていたらお野菜そのものがなくなりました(。・ω・。)」

レウィリリーネ「お鍋で湯を沸かせてたら空焚きになって火が吹いたσ(´・ε・`*)」

フォレアルーネ「丸かじり!⊂(・∀・⊂*)」

アリサ「よくわかった……あんた達は調理場出入り禁止!ヽ(♯`Д´)ノコリャーッ」

ユニ「お料理って難しそうだねぇ(´・ω・`)」

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