114話 『聖域』の防衛対策と海原を行く冒険者候補達
────────────────────────────
【『聖域』の防衛について】~どう対策する?~《爽矢view》
────────────────────────────
「ほう、なるほど……それでパルモーを『ジドランド』に向かわせたのだな?」
「わかったわ主神様。『聖域』の守りに関しては大丈夫だと思うし、私達もアリサが悲しむような事態は避けたいもの」
主神の言葉に我と朱美がそう答える。
ここは『聖域』に建てられた女神の神殿の会議室。『ユーニサリア』ではつい先日の事となるが、この会議室でゼオンやラグナース達を紹介されたりと……我等にとって随分と久しいものに感じられる。まぁ、それだけアリサ殿の『無限円環』で過ごした一年間が濃密だったということだが。
近々、各地で復活を果たすであろう残りの魔王達。すなわち、『武神リドグリフ』、『技工神ロア』、『獣魔王ディードバウアー』の三体に対し、我等『聖域』の面々は、各々各地へと飛び、『三方面作戦』が開始された。
皆が留守の間、『聖域』の守りを任されたのは、我々『四神』と、『ガルーダナンバーズ』、『懐刀』より、『天熊』のジュン殿、『妖精国』の女王ティターニア、『セリアベールの街』からやって来たガウスとムラーヴェ、『ルヴィアス魔導帝国』から『ランバード公爵家』の面々、そして『聖魔霊』の子供フェリアとパルモーである。
更に、そこには主神のティリア、『勝利の女神』ヴィクトリア、『幼女神』のアルナとポコ、そしてアリスも加わり、そうそうたる顔ぶれが揃っている。
そのなかでティリアより、パルモーをアイギスの護衛に回すとのお達しがあった。アイギスはアリサ様の想い人であり、彼女の心の安寧のためにはなくてはならぬ重要人物である事は、皆も重々承知故、その件に反対する者はいない。寧ろ『聖域』の守りに過剰な戦力が集まっているとも言えるので、「パルモー一人でいいのか?」との声も挙がるくらいだ。
「そうね、戦況によっては各地に増援として誰かしら向かってもらうことになると思うから、皆もそのつもりでいてほしいわ、いいかしら?」
《了解したティリア様。我等『ガルーダナンバーズ』いつでも戦地へ赴けるよう、体制を整えておこう》
「俺等『四神』も場合によっちゃ、外に出ることになるかもしれねぇってこったな?」
ふむ。ティリアの言い分は、本丸であるこの『聖域』を守り通す事は勿論だが、各地の状況次第で我等が応援に駆け付けなくてはならぬかもしれんと言うことか。ゼーロと大地も「任せろ」と意気込んでいる。うむ。いいだろう、我等が目指すは誰一人として、欠けることなく勝利する、『完全制覇』のみ! 如何なる困難も乗り越えて見せよう!
「ええ、その時はお願いね? じゃあ次に敵の視点から見て、この『聖域』にどう攻め入るかを考えて、それぞれに対策案を出していきましょうか」
「普通に考えれば、やはり空路よね? そもそもこの『聖域』は孤島でもあるんだし」
「お船さんはどうなのです? こう~どぶらこどんぶらこ~って?」
各地への応援について、集う皆が意識を共有した事を確認すると、ティリアは次の対策について話始めた、敵の視点。この場合の敵とは主に『技工神ロア』の尖兵である、『魔装戦士』と称される『魔装巨人』共の事であろう。まぁ、『魔神の残滓』等も現れるかも知れぬが、それらを引っ括めて敵である。
さて、ではその敵がこの『聖域』にどう攻めてくるかだが、ヴィクトリアとポコが言うように、空路と海路が真っ先に思い付く。
「マスターとアリスが張った『待ち望んだ永遠』があるとは言っても、迎撃には出張った方がいいでっすよぉ~♪」
《空路はわたくし達がいますから問題ありませんが、海路は如何なさいましょう?》
「……それだけでなく、海底、地下にも気を配るべきです。ロアの『魔装巨人』ならばやるでしょう」
「更に言うなれば『転移』してくる可能性もあるな。かの魔神がそうであったように……」
ううむ、考えれば考えるほどいくつもの可能性が浮かび上がってくるな。焦らずに一つ一つ整理していこう。まず、空路についてだが、こちらはレイヴンの言葉通り、ゼーロ率いる『ガルーダナンバーズ』に一任だ。彼等は空の覇者。その誇りにかけて守り切ってくれるだろう。
次いで海路だが、こちらはやや問題だ。水中での戦闘は我のような龍や、水菜の領分であるが如何せん手数が足りぬ……いや、水上なら或いは。
ともすれば、アルナの言う海底と地下もまた同じ理由で厳しい状況となろう、どうしたものか?
「困ったわね。『転移』してくる奴は片っ端からぶん殴ればいいけど、海と地下かぁ~?」
「アリス様。『待ち望んだ永遠』で防ぐことは出来ませんか?」
朱美がユナイトの懸念である『転移』による侵入者は殴ればいいと、実に単純明快な答えを出す。そんなのでいいのか? と思われるかもしれないが、何、問題あるまい。それよりもフェリアがアリスに確認している、『待ち望んだ永遠』で海底や地下からの侵入を防げるのか否か? ということの方が重要な気がするぞ。
「大丈夫だとは思いまっすよぉ? 『待ち望んだ永遠』はでっすねぇ、みなさんもご覧になっていたと思いまっすけども、八つの『聖印』を用いた、この島全体を覆う、超超巨大な八芒星の柱になってるんでっす。ですので、天からも地からも簡単には侵入できない筈でっす!」
うむ、なるほど。流石は我等の『想い』と『祈り』を結集した大結界よ。得意気に語るアリスのなんと頼もしいことか。この『待ち望んだ永遠』こそが我等の『聖域』防衛の要となりそうだ。
────────────────────────────
【頼れば良いのです!】~ミニマップ~《ティターニアview》
────────────────────────────
「……ですがその『待ち望んだ永遠』にばかり頼るのは危険ですわ! 他にも何かしら策を用意すべきではなくて?」
(他にもって、ティターニア様。何か妙案がおありですかぁ~?)
「全くもって御座いませんわ!」
ガクーッ!! って、あら、おーっほっほっほ♪ また古めかしいズッコケ方をなさいますのねみなさんったら!
「あ、あんたねぇ~? 何の策ももってないってのに、どうしてそんな高笑いが出来んのよ?」
「あらイヤですわティリア様! 困ったら頼ればよろしいのですわ! そう、アリサ様に!」
《ちょっとアリサ様に頼り過ぎではないでしょうか? アリサ様もお忙しい御方。私達のためにお時間を割いていただくのは気が引けます……》
ズッコケたティリア様が頭を押さえながら、私が笑う理由を聞きますの。そんなのアリサ様に相談すれば一発解決するからですわ~との事を言えば、今度はレイミーアさんがあんまり頼り過ぎるのは如何なものかとーって言って来ますのよ?
「大丈夫ですわよ♪ きっと今頃『セリアベールの街』でご友人に料理でも振る舞っていらっしゃるでしょうし。できる方に頼るのは恥ではありませんわ」
「その通りですな。『聖域』はアリサ様のお帰りになられる大切な家に御座います」
「ありとあらゆる対策を講じてでも、守り通さなければなりませんわ」
ええ、ええ。ガルディングさん、セレスティーナさん。その通りですわ。後になって聞いて、「ああ、そうすればよかったのか~」とかじゃ駄目ですの。作戦開始して間もない今だからこそ、訊いておくべきなのですわ!
「……そう、ね。一理あるわ。今回の作戦に失敗は許されない以上、形振りなんて構ってられないか、オーケー、じゃあもう遠慮なしに聞いちゃいましょう」
話を聞いていたティリア様もう~んと唸り、納得された様子ですわ。ええ、今回の作戦で長きに渡る魔神との因縁に完全決着を着けるのですから、一切の妥協は捨てましょう。
『──たこ焼きウマにゃぁ~ん♪』
『ほれ、にゃるろって、口の周りに青のりがついておるぞ~ちゃんと拭くのじゃ』
『しょうがない子猫ちゃんねぇ、と、ちょっと待ってておっちゃんズ、『聖域』から通信だわ』
……え? なんですの? 『にゃるろって』って、『たこ焼き』ってなんですの?
「……ずるい、ちょっとアリサ姉さん! 私もたこ焼き食べたい!」
「ん~? 今のって珠実様とアリサ様だよね? じゃあ『にゃるろって』って誰かな?」
「いや、水菜。姐御だろ? ほら、『人猫』になった姐御」
早速『セリアベールの街』に赴いているであろうアリサ様とバングルを使っての通信を試みたティリア様ですけれど、繋がった先から聞こえてきたのは、『たこ焼き』なるものを食べているであろう、『にゃるろって』なる人物と珠実様、そしてアリサ様のお声でしたわ。
『ああ、ごめんごめんティリア。そういや『無限円環』でもたこ焼きは出さなかったっけ。全部終わったら作ってあげるから、我慢してちょうだいね?』
「絶対! 絶対よアリサ姉さん! 普通に焼いて食べるのも、出し汁かけて食べる明石焼き風にするのも、揚げてるのも大好きなんだからね!」
「ティリア様、話が脱線しておりますぞ? 今は食べ物の話ではないはずですが?」
「然り然り。誠ティリア様は、食い意地の張った主神様であらせられますな?」
そーだそーだ! しっかりしろ主神様~! と、開口一番に自分もたこ焼き食べたい等とぬかすこの主神様に皆さんからの熱いブーイングが飛びますわ! まったく、本当に困った主神様ですわ。ムラーヴェさん、ガウスさん。もっと言っておやりなさい! と言うか、貴方達もだいぶ遠慮がなくなってきましたわね?
「ご、ごめんってば! それでねアリサ姉さん、ちょっと相談したいんだけど……」
『……ほうほう、なるほどね。んじゃとりあえず、私がいつも見てるマーカーついたミニマップを、みんなにも見れるようにするかね?』
気を取り直してアリサ様に先程の対策について説明をするティリア様。それをお聞きになったアリサ様も納得されたようで、『ミニマップ』なるものを見られるようにしてくださるそうですわ。
『ちょっと待ってね、『イメージ魔法』のミニマップを、みんなのバングルに……『聖域』全体で限定して……』
「時にアリサ様。先程の『にゃるろって』というお方は何方の事なのでしょう?」
『……これで、インストールっと。ああ、リリカさん、にゃるろっては猫魔女の私ね? 大地のとこの住人って設定しておいたから』
「ほら、やっぱ姐御だったじゃねぇか? わかったぜ姐御。形は俺の部下ってこったな?」
おそらく向こうで何かしらの作業をされているのでしょう、カチャカチャといった音が聞こえてきますわね。その間にリリィが先程の『にゃるろって』と呼ばれた人物について訊くと、大地さんの予想通り『人猫』に変身した、魔女の方のアリサ様の事のようですわ。『白虎』の大地さんの棲処には多くの獣人達が暮らしておりますから、違和感ありませんわね!
「ほう、これは凄い! この青丸が集まっているのは我々だな?」
「これは分かりやすいわ! 平面から立体図まで……アリサ、これ敵対する相手はどう表示されるの?」
『敵対する相手は赤丸で表示されるよ~? 敵か味方かわかんないのは黄色ね。後、誰かってのも表示できたりもするから試しといてね?』
「わぁ! 名前表示したらぐちゃぐちゃで分かりにくくなっちゃった! う~ん、今はみんな密集してるからしょうがないかな」
爽矢さんと朱美さんが早速アリサ様が用意してくださった『ミニマップ』をバングルから起動させたようですので、私も試してみましたわ。それは確かにお二人が驚かれるのも納得ですの! この『聖域』全体の平面と立体図が表示されて、私達のいる、この神殿部分に青丸が集中しているのが一目でわかりますのよ? 敵意を持った相手が現れると赤丸、判別不明の場合には黄色い丸が表示されるのですね……そしてここをこうすると、丸印が誰なのかわかるよう名前が表示されると……ですが水菜さんが仰ったように密集している場合、名前が重なってわかりづらいですわね。
────────────────────────────
【聖女さんは】~タコパ中~《アリサview》
────────────────────────────
「いやぁ~それにしても美味いなこのたこ焼きは!」
「ああ、味を変えることで飽きることなく食べ続けてしまうね。ディンベル、是非ともこの街に広めてくれたまえよ?」
「ははは、デールさんそれはアリサ様の協力が不可欠ですよ? 暫く辛抱しましょう」
はふっはふっ! ん~♪ うまぁーい! ってさっきからバクバクとたこ焼きを食べまくるおっちゃんズこと、ディンベルとデールにゲンちゃんの三人に……
「あら! 珠実、見てくださいこちらはお肉が入っています!」
「ほほう~? 妾の物には海老が入っておったぞ、プリプリとして美味いのじゃぁ~♪」
「にゃんにゃ~ん♪ 私のにはチーズが入ってたのにゃぁ~おいちぃ~♥️」
定番のタコだけじゃ、いくら明石焼き風にしたり、油で揚げてみたりと、食べ方、作り方を変えても飽きがくるだろうと用意した数々の具材が入ったたこ焼きを美味しそうに、楽しそうに食べる、アルティレーネ、珠実、にゃるろっての三人。
あい。お察しの通り、ここは『セリアベール』のスラム街……だった場所。話ではスラム街を改め、『学区』となるのだとか。そんな希望ある未来の実現のためにも、私達頑張らなきゃね!
因みにだが、バルガスとネヴュラの二人は私達が明日から赴く『エルハダージャ王国』について、色々と情報を集めてくると言い、別行動中だ。にゃるろってと行動を共にする予定の『猫兎』達も、明日の旅支度のために、この広い街を練り歩いてお買い物とかしてるんだろう。私達は大抵の物がミーにゃんポーチに入ってるし、宿に関しても『中継基地』があるので、特に準備も必要なく、こうしてのんびりとおっちゃんズや、『学区』の住人達とタコパを楽しめているのだ♪
「お嬢さんがいれば冒険がとてつもなく楽になりそうだねぇ?」
「そうだ嬢ちゃん。今度俺の行商に同行してもらえんか? 俺も一度空の旅を経験したいぜ」
「あっはっは♪ こればっかりは私の特権だからね。妹達にもらった能力だし、存分に使わせてもらうよ? んで、ディンベルのおっちゃん、今抱えてる問題を片付けたらさ、私達も冒険者としてやってくつもりだから、そん時に依頼出してよ?」
これから旅に出るのに手ぶらの私達を見ておっちゃんズがちょっと疑問を感じたみたいだったので、その辺を話したら、ゲンちゃんはしきりに感心して、デールのおっちゃんは心底羨ましそうにして、ディンベルのおっちゃんは行商に付き合ってもらいたいとかちゃっかりぬかしよる。
「ははは! 了解だ、その時にはご指名させてもらうぜ!」
「うむうむ、妾もその時には一緒に冒険者となって、世界を見て回りたいものじゃな」
残りの魔王達をぶっ飛ばすのは勿論のこと、遥か昔に遺された魔神達との戦いの爪痕を癒して回らなきゃいけないからね。そのついでに冒険者として活動するのもよかろうなのだ。珠実もそうだけど、妹達や、ゆかり、シェラザード達……『白銀』や『黒狼』に『猫兎』達とも一緒に旅してみたいな。
「あもあも、んぐんぐ……ふはぁ~! たこ焼きウマにゃぁ~ん♪」
「ほれ、にゃるろって、口の周りに青のりがついておるぞ~ちゃんと拭くのじゃ」
「しょうがない子猫ちゃんねぇ、と、ちょっと待ってておっちゃんズ、『聖域』から通信だわ」
にゃるろってに珠実、アルティレーネとおっちゃんズ達みんなと一緒にたこ焼きを頬張りつつ、談笑に耽っていると不意に私のバングルが光る。これは各地に飛んだ仲間達からの連絡の合図だ。誰からだろ? って思い、私はたこ焼きを焼くのをいったんやめ、みんなからちょっと離れて通話に出た。
連絡の主はティリアであり、『聖域』を効率的に防衛する手段についての相談みたい。なので、取り敢えず私が普段から見てるミニマップ機能をバングルに追加しておいた。まぁその際に「私もたこ焼き食べたい!」とか騒ぐティリアがみんなに怒られてたから、今度『聖域』でもタコパをやろう。
『おぉ、この屋敷付近にいるのは『黒狼』達ね! わかりやすい!』
『私の領域にいる十人は、『ハンバーグ』と『フライドポテト』達かぁ~』
『ウェズやニュイ、ププルあたりが熱さでへばってたりしそう、大丈夫かな?』
おー♪ って、なんかティリアが新しいおもちゃを与えられた子供みたいにはしゃいどるわ。朱美と水菜は徒歩でこの『セリアベール』に向かう冒険者候補達を見つけそれぞれで心配したりしてるみたい。
『ありがとうございまっすマスター! これなら何処から敵が来てもすーぐに対応できまっするよぉ~♪』
「あいあい、どういたしまして。大抵の隠蔽でも拾ってくれるけど、油断しないでねアリス? 何事も頼りすぎちゃ駄目よ、「かもしれない」を心掛けよう、みんなもお願いね?」
はーい!
うむうむ。みんなの元気な返事がとても嬉しく、心強いね! 『聖域』の守りは彼等に任せておけば心配いらないだろう。さあ、タコパの続きと行こう。ちゃんとバルガスとネヴュラの分も用意して、ミーにゃんポーチにしまっておかないとって、あの二人何処まで聞き込みに行ったんだろ? なんか面白い情報持ってきてくれるかな?
────────────────────────────
【行ってきます!】~『聖域』に敬礼!~《ウェズview》
────────────────────────────
「よっ! ほっと! おぉ、海だ! 内海に出たぜ皆~♪」
「にゃんにゃん!」「ワンワン!」
「ちょっと待てー、お前ら登るの速いぞ~」
ヒョイヒョイヒョイっと。『聖域』を取り囲む高い岩山を軽快に登る俺と、ニュイ、ププル。ようやく朱美様の領域の最南端。聳える山脈を越えれば、その先に新しい世界が広がっている。
俺達冒険者候補はそんなまだ見ぬ世界にワクワクしながらようやくここまで来たぜ!
「頑張れアッシュ! もう少しだよ!」「焦ることないぞ、慌てず登るんだ!」
その岩山の山頂。身軽な俺とニュイとププルが先んじて登頂し、次いでルルリルとドランドが登ってくる。一番遅れてしまっているのがアッシュで、その大きな体躯も手伝って、こういう縦方向の移動は苦労するようだ。足場も狭いから尚更だな。ルルリルとドランドが応援してるし、俺も声援送っとくか!
「最悪『飛行魔法』使って飛んでもいいのよアッシュ?」
「ひゃぁ~♪ マジに広いじゃーん! この海原の先に『セリアベール』があるんだね!」
「楽しみ!」「ああ、早く街を見てみたいな!」
そんなアッシュを気遣いながら、ルーナが。そしてレイ、ノア、ザウルが続いて登って来たぜ。頂から臨む眼下の大海原に皆、先に広がっているであろう広大な世界に思いを馳せる。
「ふぅふぅ~やっと登れたんだぞ~! おー! 凄いな凄いな! 一面水だぞ~♪」
「ははは! 海って言うんだぞアッシュ!」
「このまま真っ直ぐ南下すれば『セリアルティ王城跡地』があって、更にその先に目指す『セリアベール』があるんだな!」
「うん! 先ずはここから降りて、『聖域の水蛇』の背中に乗って海を渡ろう!」
おぉーっ!!
いよいよだぜ! 俺達の冒険者としてのスタートが切られる瞬間だ! ドランドとルルリルの言葉に皆が手を挙げ叫ぶ! この興奮、暫く収まらねぇかもしれねぇな!
「待って待って、みんな『聖域』の方にも目を向けてみなさいよ?」
よっしゃ! んじゃ行くか! って意気込んだところに、ルーナが待ったをかけてきた。なんだよ一体? 俺達めちゃめちゃのってたってのに……んで、ちょいと水をさされた気分になったけど、言われるままに振り返って、『聖域』を見てみたんだ。
「お? おぉ、こうして高所から見渡す我等の『聖域』……」
「……うん、綺麗。『世界樹』もキラキラ輝いてる……」
おぉ……すげぇ~俺と同じく「なんだ?」って感じで振り向いたザウルもノアも、いや、他の皆も、その絶景に目を奪われた。
この岩山の頂からもはっきりとわかる『世界樹』、緑に溢れた肥沃な大地、透き通るような美しく澄んだ水の流れる川の水面は陽光を反射してキラキラと輝いて、『待ち望んだ永遠』のオーロラが更なる彩りを与える。
……俺達の『聖域』って、こんなにも綺麗で、素晴らしかったんだな。
「うむ。行って参ります女神様方」
ビシッ!
俺達はドランドのその言葉に続き、自然と敬礼をした。それは、この『聖域』に生まれたことに誇りを持てたから。そして改めて、この美しい故郷を守るべく待機してくれている女神様達に対する敬意。更に、この『聖域』という看板を背負うのだと言う決意からだ。
「よし! 行こうぜ皆! 俺、気合い入りまくって仕方ねぇぜ!」
「応! 皆続け! 一気に駆け降り、海岸まで行くぞ!」
「あはは、昂るのはいいけど怪我しないでよみんな!」
「着地するとき『浮遊』かけ忘れて足をボキッ! なんてね~♪」
俺がいてもたってもいられず、皆を促せば、それはドランドも同じだったみたいで、おりゃぁぁーっ! とか威勢の良い叫びを挙げて真っ先に岩山を海岸に向かって降りていく。俺も負けじと続き、他の皆も次々に降りてくるぜ! レイが笑いながら怪我するなよって注意して、ルルリルがやたら具体的なこと言いやがる。
「ふっ、この程度で怪我をするような柔な鍛え方はしていないだろう?」
「当然。『無限円環』での訓練に比べれば、階段を降りるようなもの」
「にゃんにゃ~ん! にゃーが一番だにゃぁ~ん!」
シュタタタターッ!! って、うわっ!? ニュイのヤツ速ぇな!? 流石猫だぜ!
「む。アタシも元の姿だったら余裕……」
「わわーん! 悔しいワン! 次は負けないワン!」
「ふっ、お前達二人は直ぐに張り合うな? 俺も次は参加してやろう」
タン、タン、タタンッ! と、軽い音を響かせて、ノア、ププル、ザウルに俺が岩山から降り立った。ノアは俺がニュイの事を猫すげぇとか褒めたせいか、なんか対抗心出してきた。『黒王虎』としてケットシーには負けられないとでも思ってんのかな?
んで、ププルはまぁ、いつものこったな。ケットシーとクーシーって似た者同士だから、ザウルの言うようにちょっとしたことでも直ぐ張り合うんだよ……って、ザウルも参加すんの?
ズドオォォーンッッ!!
「おわぁっ! なんだぁ今の爆音は!?」
「だっはっはっはーっ!! 落っこちるの面白いんだぞ~♪ 登るのより速くて楽しいぞ!」
「アッシュ~!? あんたなにしてんのさ!?」
「まさかそのまま落ちていくなんて……まぁ、なんともなさそうだしいいんだけど」
突然背後で爆音が響いて、俺達はびっくりして振り返ったんだ、そうしたら土煙を巻き上げたアッシュがすげぇ楽しそうに笑ってやがるじゃねぇの? その後から降りてきたレイとルーナが怒ったような、呆れたような表情浮かべてるとこ見るに、アッシュの奴、降りてきたんじゃなくて、落ちてきやがったな? まったく、何がそんなに楽しいんだよ?
────────────────────────────
【いざ新天地へ】~警戒すべきは……~《ノアview》
────────────────────────────
「海岸まで来たのはいいんだけど、どうやって『聖域の水蛇』を呼ぶの?」
「彼等の主な役目は、この内海のパトロールなのだろう? ここで待っていれば来てくれるのか?」
『聖域』を囲む山脈を越えて、外の世界に旅立つアタシ達。今は、島と大陸を分ける内海を渡るための手段である、『聖域の水蛇』をどうやって呼び出すかを話し合っている。
……あ、アタシはノア。大地様の部下の『黒王虎』です、よろしく。
ルルリルとザウルの疑問に答えられる者は誰もおらず、みんな首をかしげて頭上に「?」を浮かべるばかり。まぁ、『聖域の水蛇』がつかまらなかったら、『飛行魔法』で空飛んで行けばいいだけのことなんだけど……
「いや、待て。気配が近付いてくるのを感じる」
「ホントだにゃぁん! 下から上がってくる感じ、間違いなく『聖域の水蛇』だにゃ~♪」
今ドランドとニュイが感じた気配が徐々に海中から上昇してきて、ザパァァァーッ! と、大きな水音と飛沫を立てて海面に浮上してきた。長い首に綺麗なチョーカーを着けた『蛇』と言うより、『首長竜』と言った方が正しいのではないかと言う『聖域の水蛇』だ。
《よくぞ参られた。『聖域』の冒険者達よ……我等が神、アリサ様より話は伺っているぞ?》
おぉぉ? ちょっとびっくりした。なんか普通に通信魔法で話が出来るようになってたんだ? う~ん、彼等が元々はツインヘッドイールっていう、二つ頭の鰻だったなんて信じられないね?
「それでは宜しくお願いする『聖域の水蛇』殿。私達を向こうの岸まで運んでくれ!」
《承知した。ふふ、我が背は少しばかり滑りやすいかもしれぬ。海に落ちぬよう気を付けてくれ?》
「ですってよアッシュ?」「気を付けろよアッシュ?」
「ルルリルもね~♪」「そうだワン。気を付けるんだワン、ルルリル?」
「お、お前らひどいぞ~!」「そ、そうだよ! 私そんなヘマしないよ!」
ぷっ♪ ルーナとウェズがアッシュに、レイとププルがルルリルにまったく同じ注意して、その二人が揃ってブーブー言うのがなんだか面白い。
「にゃぁぁ~それにしてもでっかくなったのにゃ『聖域の水蛇』!」
「ああ、俺達十人全員が乗っても余裕とは、恐れ入る」
《うむ。これも総てアリサ様の思し召しよ。この内海の警備に外界への橋渡し、誠素晴らしい仕事をお与え下さった》
すいぃぃ~……おぉ、凄い……全然揺れない。アイギス達やバルド達から「船は結構揺れるから、酔う人は酔う」って聞いてたけど、『聖域の水蛇』の背中は全然揺れない。心配事が一つ減って安心安心。ニュイとザウルが感心してるように、彼の体躯はとても大きい。その事もアリサ様の計らいであると言うけど、流石にそこまで考えてたとは思わないけどなぁ? まぁ、これは言わなくていいか。
「結構向こう岸まで距離あるんだ? ……日が暮れそう」
《ああ、『セリアルティ王城跡地』に着く頃には夕暮れとなろう》
「ではそこで一夜を明かそう。そして明朝に出発し『セリアベール』を目指すぞ皆?」
アタシはふと空を見上げて、日が傾いて来ていることを知り、未だ向こう岸の影も見えない内海の予想以上の広さを知った。『聖域の水蛇』の話だと、『セリアルティ王城跡地』に着くのは夕方らしい。夜になるよりはいいけど、アタシ達の旅の初日はどうやらそこまでみたい。
「ああ、了解だドランド。ともすれば、寝床の確保に食事の準備とで手分けせねばならんな」
「お料理なら私がやるわね? ルルリル、貴女も手伝ってちょうだい」
「はいはい♪ お任せだよルーナ!」
その『セリアルティ王城跡地』で一夜明かす事にみんな了解し、ザウルがそこでの寝床と、夕食について話をし始める。ルーナが真っ先に食事当番を買って出て、その補佐にルルリル。うん、この二人はアタシ達の中でも特に料理が好きで上手だから文句なし。
「にゃぁ達が良い感じの寝床見つけてやるにゃん!」
「僕ちん達もホントは料理してみたいワーン……今度アリサ様にお願いして、手だけでも人のそれになる魔装具とか作ってもらおうだワン!?」
あはは、ニュイとププルは猫の手、犬の手だからね。流石に料理は難しいね? でもアリサ様はミーナ様のを始め、肉球大好きだから、頼んでも叶えてくれるかな?
「アルティレーネ様の祝福を受けたかつての『三神国』の一つか、今でこそ廃墟らしいけど、女神様達が顕現したことと、『聖域』の再生でユニ様が元気になったおかげで、『龍脈の源泉』も活性化して『聖地』みてぇになってんだろ?」
「そうらしいぞー? もしかしたら魔物も寄り付かないかもしれないな~♪」
《かもしれぬが、警戒は怠らぬ方がよかろう。魔物が寄り付かずとも、人は来るやもしれぬ。そして、人が皆善人とは限らぬ故な》
今のウェズとアッシュの話はホントは女神様達の内緒の話だったらしいけど、今はそんなこと気にしても仕方ないって、アタシ達にも教えてくれたから知っている。それに例え魔物が寄って来ても、そうそう強いのがいる訳じゃないらしいし、気にしなくてもよさそう……でも、人は別だ。アリサ様も前世では人に嫌な思いをさせられたと言うし、『聖域の水蛇』も言ってる通り、警戒しておこう。
《さぁ、見えて来たぞ! あれが『ユグライア大陸』だ》
先の言葉通り、夕暮れに差し掛かった頃合いになって、ようやく水平線の先に大陸の影が見え始めた。いよいよアタシ達の新天地での冒険が始まるんだ! 楽しみだね!
ティリア「このミニマップ面白いわ♪(*´∇`)」
ヴィクトリア「ふんふん(´・∀・`) この立体図が見事よね(^ー^)」
アリス「おやぁ~?( ´∀`) デュアっちさんとシェリたんが二人でお部屋におりまっすよぉ~♪(*≧∀≦)」
水菜「あらやだ♥️ あの二人って恋仲でしたよねぇ~♪ヘ(≧▽≦ヘ)」
爽矢「おいおい!((゜□゜;)) やめんか水菜、アリス!( `□´)」
朱美「プライベートを邪推するなんてイケナイわ!( ☆∀☆)」
大地「とか言う朱美も嬉しそうにすんな!(*`Д´*)」
ジュン「たた、大変だぞ!(´・ω・`; ) オイラが隠れてハチミツをペロペロしてるのもバレちゃうぞ!(;゜д゜)」
ゼーロ《いや、ジュン殿(^_^;) ちっとも隠れてなかったではないか?( ´ー`)》
レイミーア《大きな体躯のせいでバレバレでしたが?(^o^;)》
ジュン「ガーン!Σ(゜ロ゜;)」
アルナ「これは、今回限りにした方がよいのではありませんか?(゜ω゜;)」
ポコ「アルナちゃんにさんせーなのです!( ゜Д゜)ノ これがあるとかくれんぼが成立しないのです!ヽ(`ω´)ノ」
ティリア「かくれんぼ……確かにそうね、フフフ……( ̄ー+ ̄) これ『神界』でも使えるようにしてもらって、『保守派』の連中の動きとか把握出来るようにしてもらおうかしら?(*゜∀゜)」
ヴィクトリア「あら、いいじゃないそれ(・`ω´・ ) 落ち着いたらアリサさんに頼んでみましょう?(°▽°) 頭でっかち共を思い知らせてやるチャンスだわ(*`艸´)」
ティリア「ふふふ、そうねヴィクトリア(。-∀-) 散々人を未熟だの浅はかだの罵って、自分達じゃなんもしないあの老害共に目にもの見せてやるチャンスね?(*`▽´*)」
水菜「うわぁ~なんかあの二人が怖いこと言ってるよ?( ; ゜Д゜)」
大地「相当ストレスたまってんだろうなぁ~『保守派』って連中はそんなになのか?(;´A`)」
ムラーヴェ「いやいやいや!( `д´) 見ろガウス、妖精の美女達も何処にいるか一目瞭然だ!(ノ≧∀≦)ノ」
ガウス「然り然り!(*^O^*) これで彼女達のピンチに颯爽と駆け付ける事が出来るぞ、気張らねばな!ι(`ロ´)ノ」
ティターニア「下心が丸見えですけれど……(゜∀゜;) 逆に頼もしくもありますわね、しっかり頼みますわよ?(*´▽`*)」
ガルディング「十年前と同じ轍は踏まぬ!( ・`ω・´)」
セレスティーナ「ええ、守り通して見せますわ!(゜ー゜*) 愛する息子とアリサ様のためにも!(*^▽^*)」
リリカ「全員一丸となって頑張りましょう!( ̄0 ̄)/」
みんな「おーっ!!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」




