113話 不安になるティリアさん
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【一抹の】~不安~《ティリアview》
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……みんな行ったわね。アリサ姉さん達。偵察部隊。冒険者候補。『白銀』……レウィリとフォレアは明日の出発。ルヴィアス達『帝国組』は自国に戻ったし……
みんな、久し振りね? ティリアよ。私は今、残る魔王達の対策のために動き出した『聖域』のみんなを見送ったところ。この作戦が成功すれば、永くに続いた魔神騒動がようやく決着するわ……そのためにやれることは総てやってきたつもりなのだけど、どうしても拭えない不安があるのよね。
「ティリア。真剣な顔をしてどうしたの? やっぱり不安?」
「アリサお母さん達ならきっと総て解決して、帰って来てくれます! 信じましょう?」
「あはは、ありがとうヴィクトリア、アルナ。その点は私も信じてるし大丈夫だって思うわ」
「ん~? じゃあどうしてそんなむつかしいお顔されてるのです? ぶちゃいくなのです!」
ちょ、ポコ! ぶちゃいくとはなによ! ホントあんたは遠慮ないわね!
私の真剣に悩む様子を見て、気にかけてくれるのは『幼女神』アルナと一緒にこの『ユーニサリア』にやってきた『勝利の女神』ヴィクトリア。彼女とは『神界』でも長い付き合いだから、私の表情を見るだけで、察しちゃうのよね。
そのヴィクトリアと一緒に、アリサ姉さんならきっと大丈夫と励ましてくれるのは、件の『幼女神』アルナだ。この子は親友のポコのため、ヴィクトリアを伴いこの『ユーニサリア』へとやってきた。最初こそトゲトゲした態度をとって、私達の怒りを買ったけれど、アリサ姉さんとアイギスに諭されてから……アリサ姉さんの優しさに触れてから、とっても素直に笑ってくれるようになったわ。
不安に悩んでいるのは確かだけどね、アリサ姉さん達の勝利を心配してるわけじゃないわ。姉さん達に任せておくならまず間違いない結果を出してくれるって信じてるし。私が悩んでいるのはもっと先のことなのよ? ってなこと言えば、ポコがもー遠慮無しの一言ぶん投げてくるしーっ!
「しょうのない子ねポコポコぽんは~」
「二つほど余計なのですーっ!」
「私が悩んでるのは、アリサ姉さんの力のことよ。ほら、アルナに対してみんなが怒った時、アリサ姉さんは『言霊』で止めたでしょう?」
ぷーっ! って頬を膨らませてぷんぷんするポコの頭をグリグリして、やーんなのですー! とか言わせた後、ヴィクトリアとアルナに説明する。それはアルナがこの世界に来て、アリサ姉さんを貶した発言をし、みんなの怒りが爆発したあの時だ。
「貴女も止まったんじゃない、ヴィクトリア?」
「ええ、驚いたわ。一歩も動けなかった。あの時動けたのはティリアだけだったわね」
「わ、私も……でした。「ヴェーラを発見し、異界からその身動きを止めた」と言うあの噂は本当だったんだって、あの時確信しましたよ」
そう、そうなのよ。あの時動けたのは私だけ。ヴィクトリアもアルナも、アリサ姉さんの『言霊』に勝てなかったのだ。『神界』で私が流したアリサ姉さんの噂は、アルナにも届いていたようで、あのクソババァことヴェーラに関しても聞いていたみたいね。
「でも、それは貴女がアリサさんに『無限魔力』を加護として与えたからでしょう?」
「それはつまり、アリサお母さんはティリアと同等の力を有するって事ですもの、私達にもその力が及ぶのは納得ですが?」
「はわぁ~主神のティリアと同等って、アリサママ凄いのです!」
そう、いま三人が言ったようにアリサ姉さんのあの力の大元は私が授けた加護に寄るところが大きい……その筈なのだけど……あの時アリサ姉さんが発した『言霊』……
「……私にも届いたのよ?」
「届いた……って、えっ!?」
察しの良いヴィクトリアが私が言わんとしている意味を理解したみたい。一瞬きょとんとしたけれど、その顔は直ぐに驚愕のそれに変わった。
そう、あの時のアリサ姉さんの『言霊』は私にも届いた。アルナに姉さんを貶されたことで激昂した私は本気でアルナを『根源の核』にまで還すつもりでパンチを繰り出したのだ。それが一瞬だけど止められた。
「でなきゃ今頃あんたを庇ったアリサ姉さんは『根源の核』になってたところなのよ?」
「う……それは、本当に申し訳なく思っています……」
ああ、ごめんアルナ。別にあんたを責めてるわけじゃないのよ?
話を聞いてしょんぼりしてしまったアルナに、そう優しく声をかけて頭を撫でてあげる。
「……えっと~つまりはアリサママはティリアより強くなってるって事なのです?」
「そう! ポンポコポン正解!」
ポンが二つ余計なのですーっ! って、私がビシッ! と、指差したポコが喚くのを華麗にスルーして、話を進める。そうなのだ、アリサ姉さんは私の『庇護下』にいるはず、にもかかわらず、庇護者の私にまでその力を及ばせる程になっていると言う事実!
「な、なんと言うことでしょう! それがティリアの不安なのですね!?」
「大変ね……もしアリサさんが魔神のようになってしまったら、誰も止められなくなってしまうわ」
「でも~アリサママが魔神みたいに暴走するとは思えないのです!」
三者三様に反応を返してくるアルナ、ヴィクトリア、ポコ。私が懸念しているのが正にアリサ姉さんの暴走なのよね。
「いいえポコ。アリサさんは誰よりも優しく慈愛に満ちた方よ? もし、今回の魔王達との戦いで、親しくしている誰かが命を落としたとしたら? それこそ、アイギスさんを喪いでもしたら……」
ヴィクトリアの言葉の意味を理解したんだろう、ポコの顔がみるみる青ざめていく。
「たた、大変なのです! アリサママはアイギスパパが大大大好きなのです! もしそんなことになったら……あわわっ!!」
「おおお、落ち、落ち着きましょう! ティリア、お母さんの履歴書を確認して、本当に貴女以上の力を持っているのか確認して見てください!」
「そ、そうね……事実確認は大事だわ。ティリアお願い」
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【なによこれ?】~履歴書~《ヴィクトリアview》
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「え~でも、私ちょっと前にアリサ姉さんの履歴書の、個人的な情報載ってる部分を間違えてみんなの前で開いて見せちゃってからさぁ、姉さんに怒られちゃったのよね」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょう? 私達も後で一緒に謝ってあげるから、ほらっ!」
まったく! そういう大事なことはもっと早くに言いなさいよティリア! アリサさんが貴女以上の力を持っているかもしれないなんて、とんでもないことよ?
突然のティリアのカミングアウトに私、アルナ、ポコの三人はとても驚いてしまったわ。主神のティリアは『神界』でも唯一無二である、『無限魔力』の持ち主であり、そこに、主神に至るまでの経験が合わさって、並みいる神々を蹴散らし、その頂点に登り詰めた神だ。
そんなティリアを上回るなんてこと、そうそう出来るものじゃない。そんな存在がいるとしたら、彼女の夫である『闘神』のTOSHIくらいなものだろう。『竜神』のバハムートすらものともしない彼は、妻であるティリアを立てて一歩引いているのだが、『神界のジョーカー』と呼び称される程の実力者なのだから。
そんな『第二のジョーカー』となる可能性を秘めたアリサさんの事実を確認するべく、「彼女の履歴書を見てみるべき」と、アルナが提案するのだけど、ティリアったらしょうもない理由で履歴書を掲示するのを躊躇っているのよ?
「悠長なことって簡単に言わないでよヴィクトリア! 私一人だけご飯抜きにされたあの日を忘れるなんてできないのよぉ~!」
「ええい! もうっ! つべこべ言わずにさっさとママの履歴書を出しやがるのですーっ!」
「あの、私達も一緒にご飯抜きの罰を受けますから、確認しましょう?」
はぁ~なんかもう、頭を抱えたくなってきたわ……確かにアリサさんの作るお料理は美味しかったわよ? だけど、それを『神界』が揺るぎかねない事態と天秤にかけないでちょうだい。ポコも怒鳴ってるし、アルナも呆れてるわよ?
「わ、わっかたわよぉ~あんた達ちゃんと後で一緒に姉さんに謝ってよね?」
「「「わかったから早く見せなさい」見せるのです」見せて下さい」
しょうがないなぁ~って、私達の説得にようやく首を縦に振るティリアは、手をかざし、私達の前にアリサさんの履歴書を掲示した、その気になる内容なのだけれど……
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名前[アリサ]
種族[人間(転生者)]→[亜神]→[???]
職業[聖域の魔女][聖域の聖女][???]New
加護?[???][???][???][???][???]??中
能力 ─閲覧権限無し─
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はああぁぁぁーっっ!!!?
「いやいや待ちなさいティリア! これはどういう事なのよ!?」
「わ、私が聞きたいわよ!! どーいうことだってばよヴィクトリア!?」
「おおお、落ち、落ち着きましょう!」
「なーんもわかんないのです! なんですかこれ?」
な、なんなのこれは!? 渋々といった感じでティリアが見せたアリサさんの履歴書なのだけど、訳がわからないわ! だってそのほとんどが「?」で塗り潰されているんですもの! こんな前代未聞な履歴書を見た私達は揃って大声で叫んじゃった。どういう事かをティリアに聞いても、わからないって言うし、アルナは軽くパニックになってるし、ポコは事態を掴めていないし、あぁ~もうっ! 誰か説明してちょうだい!
「ですから落ち着いて下さい。この「?」の羅列から察するに、アリサお母さんは最早ティリアと同等、若しくはそれ以上の力を身に付けていると考えていいでしょう」
「あ、アルナ……そ、そうね……「閲覧権限無し」って出てるって事は、私の力が及ばないって事でしょうし……そうなると……」
「……『人間』→『亜神』ときて、『???』になってるわ。普通に考えればアリサさんの位階が上がったって判断できるんでしょうけど、ティリアにも閲覧できない位って……」
慌てる私達の中で、アルナがいち早く冷静さを取り戻したわ。彼女に続いて、ティリアも私も落ち着いてきたの。そう、冷静になって考えると、『神界』の頂点に立つティリアでも見ることの叶わない情報と言う事実から、アリサさんはティリアと並び立つ……いえ、もしかしたらそれ以上の力を手にしているのかもしれないわ。そして、私が気になるのが種族の項。
人が偉業を成し遂げ、その位階が上がり、『亜神』に至る。ええ、これはわかるわ、前例だってあるし、だけど『亜神』から『???』とは何? 以前にも説明したけれど、『神界』における階級で見るなら『亜神』は下の下に位置するわ。普通ならそこから気が遠くなるような時間を経て、神々に認められ、ひとつひとつその階級が上がって行くもの……
「加護も全部『?』になってるし、最後の『??中』って何よ?」
「さっぱりわからないのですけど、つまりアリサママはティリアより上の神様になったってことなのです?」
!!!?
ポコの言葉に私達は揃い息を飲んだ。「あり得ないそんなこと」と、口に出かかったけれど、この履歴書を見て考えを巡らせた今、その可能性も大きいと感じてしまって声が出せない。
「……大変だわ、これはなんとしてもアイギスを護らないといけない! リドグリフとの戦いでもし彼が命を落とすようなことになれば……」
「悲しみに暮れた彼女はきっと、闇に飲まれて悪神になると……?」
ティリアの想像はあくまで可能性の話だけれど、先に見たあの二人の仲睦まじさ、アリサさんの恋する乙女のような反応からして、例えもし本当にアイギスさんを喪ったとしたら、彼女は自棄を起こして悪神となってしまうかもしれない。
そうなれば魔神以上の脅威になってしまう、そう考えて私は身震いした。
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【え?】~そんな理由!?~《アルナview》
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「当然、皆さんが無事に帰って来てくれることがなによりですけど……ティリア。彼を護ると言ってもどうするのです?」
「なのですよ? アイギスパパだけ特別扱いするのはどうかと思うのです」
「特別扱いなんて今更よポコ? 誰もがアリサ姉さんを、そして姉さんの心を射止めたアイギスを特別に思っているんだから」
ポコの質問にそう答えるティリアは真剣な表情で私達に向き直りました。特別……ええ、確かにそうです。私達神が最も優先するべき事は世界の安寧。この『ユーニサリア』は只でさえ魔神達によってその安寧を乱された世界。そしてアリサお母さんはティリアに遣わされた一条の光。特別なのは当然。となれば、その伴侶たるアイギス父さんもまた、特別なのですね?
「アイギスを護るのは『白銀』のメンバー達。でも、そこにもう一手ほしいかなって思うのよアルナ?」
「陰から彼等をサポートする。そんな人材が必要って言いたいのね?」
アイギス父さんとそのパーティーメンバーの皆さんとは、私が粗相をしたときにその力の一端を見ましたが、相当な実力者であると即座にわかりました、いえ、わからされた。と、言った方が正しいです。
そんな実力者の仲間達の他にもう一手とは一体? そう聞き返そうとしたらヴィクトリアが答えました。なるほど、陰ながら彼等を支えるサポートメンバーですか。
「そう。そのサポートにあたる者が優先するのはアイギス。彼が命を落とすような事態になったら形振り構わず助けに入ってもらうのよ! ガウス! ムラーヴェ!」
「え? あ、はーい? 呼びましたかティリア様」
「何か御用命でしょうか?」
ぐっと拳を握り締め、力強く私達にそう言うティリアは、そのままとある二人を呼びました。ムラーヴェさんとガウスさんです。このお二人とは先日のパーティーで、とても美味しいイチゴ牛乳をお酌してもらった時に二~三お話しましたからよく覚えています。元々は『セリアベール』の冒険者ギルドの職員で、アリサお母さんとアルティレーネの力になりたいがために、職を辞してこの『聖域』にやって来たそうですね? 見事な心意気です、私は素直に感心しましたよ。
「わかっているわね二人共!? 頼んだわよ!」
「「……いえ、何がなんだかさっぱりわかりませんが?」」
……って、そりゃ説明も何も無しにいきなりそんなこと言われても通じる筈ないでしょう!? 何やってるんですかティリア? 「えー?」じゃないんです! ちゃんとお話してあげて下さい!
「──なるほど、そういうことですか」
「ティリア様方の懸念、至極納得できました、しかし……」
お断りしまーす!!
って、ええぇーっ!? そんなどうしてですか!? ティリアもまさか断られるとは思っていなかったようで、お二人の息の合った、妙なポージングをしつつの返事にびっくりしています。
「お忘れですかティリア様!」「俺達二人がこの『聖域』に来た理由を!」
「はっ! それは……」
「「それは、『聖域』の美女とお近づきになりたいからなのだぁーっ!!」」
(  ̄- ̄) ……はっ! 思わず遠い目をしてしまいました……いえいえ、ちょっと待って下さい! お二人はお母さんと女神の力になりたいがためにこの『聖域』にまで、わざわざ職を捨ててまで来たんでしょう!?
「然り! それも嘘偽りなき俺達の心です!」
「しかぁーしっ! それ以上に俺達はきゃっきゃうふふ♥️ なイチャラブに焦がれているのです!」
「然り然り! アイギス殿のサポートではそれは叶わんのです!」
「あ、あんた達ねぇーっ!? もうっ! 『無限円環』行く前の態度はどこ置いてきたのよ!?」
そんなものアリサ様の『貯槽』に放り投げて来ましたよ、うひゃほーい♪ って叫んで妖精の女の子達の輪に入って行くお二人です。
「……まぁ、うん。定命の若い男性ですものね、仕方ないわよティリア?」
「あの二人面白いのですー♪ あ、何だかんだで妖精の女の子からもキャッキャされてるのです!」
「う~ん……見方を変えれば、あのお二人はお母さんからこの『聖域』を託された。とも言える立ち位置のようですし、別の方はどうなんですか?」
そんなお二人の姿を苦笑いで見ていたヴィクトリアが、ぐぬぬーっ! って唸るティリアの肩にポンっと手を置いて、まぁまぁってしてます。ポコはポコで面白そう~っと、妖精の女の子達と談笑する姿を見て笑っていますね。きっと、あのお二人はアリサお母さんから『聖域』を守ると言う事をなにより優先しているのでしょう。お母さんにとって、『聖域』に住まう皆さんは家族も同然ですから。
「アハハ♪ 見てたよ聞いてたよ~? 女神様達、お困りのようだね!?」
「だ、誰!?」
主神の頼みを断るなんてぇ~って、恨めしそうにガウスさんとムラーヴェさんを見やるティリアを宥める私達の背後から突然の笑い声です! ヴィクトリアがハッとなって振り返り、誰何するのですが、誰もいません。しかし……
「フフフ……隙だらけだよヴィクトリア様? 分け身とはいえこのくらいの穏形見抜けないんじゃ危ないなぁ~?」
「わっ!? き、君はパルモーくん!」
「パルくんだったのです! すごいのです、ポコは全然わからなかったのです!」
「わ、私も……貴方が敵でなくてよかった……」
背後に誰もいない事を確認した私達が向き直ると、目の前に『聖魔霊』のパルモーさんが驚く私達を見てクスクスと笑っていたのでした。
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【互いに】~気の合う~《ポコview》
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「ふふ、少し過保護かなって思うけど、アリサ様の悲しむ顔なんて見たくないからね……ティリア様? 僕がそのお役目を引き受けるよ」
す、凄いのです……アルナちゃんとヴィクトリアは分け身。ポコはポコでペナルティによって力が半減しているとは言え、まったく気付かれる事なくここまで接近してくるなんて!
「……流石、『無限円環』の訓練でも『相手したくない奴』って言われた奴等の代表格ね?」
「ふふん♪ 主神様のお褒めにあずかり光栄だね。それで、どうかな? 僕ならアイギス兄ちゃんのサポートにはうってつけだと思うんだけど?」
ティリアはパルモーくんの接近に気付いていたようで、動じないのです。冷静に反応を返しています、それを見ると何だか慌てちゃったポコ達が恥ずかしいですね。
「確かにあんたなら『斥候』顔負けの隠密さだから適任だろうけどさぁ……結構お調子者だし、お目付け役いないと不安なんですけど? せめてフェリアも一緒に、とかは?」
「あ~酷いなぁもうっ! 僕だって『無限円環』で成長したよ?」
あはは♪ パルモーくんはお調子者なのです? 聞けばティリア達とティターニア達妖精と一緒に色んなイタズラを考えたりしてるとかなんとか。とっても楽しそうなのです! ポコもいずれまぜてもらっちゃうのですよ♪
「パルモー? 何処だ~? って、いたいた。っと、これは女神様方! ご機嫌麗しく」
「それにね、姉ちゃんはこの通りの堅物だから今回のミッションには絶対向かないと思うよ?」
ティリアの指摘に苦笑いするパルモーくん。丁度その時、彼のお姉ちゃんであるフェリアちゃんがこの場にやって来ました。どうやらパルモーくんを探していたようですね。彼女はパルモーくんとポコ達の姿を認めると、恭しくポコ達に挨拶をしてくれました。そんなお姉ちゃんの姿を見て、「ね? お堅いでしょ?」ってパルモーくんが言います。
「むっ? コラ、パルモー? 姉に向かってなんなのだいきなり?」
「あはは♪ ごめんごめん姉ちゃん、実はこれこれ、こういうわけで~」
自分そっちのけでティリアと話す弟くんにちょっとムスッとしたフェリアちゃんが、パルモーくんに「なんなのだ?」と詰め寄ると、パルモーくんが事情を話し出しました。それを聞いたフェリアちゃんは、フムフムなるほど、と頷いて納得した様子なのです。
「──そういうことですか。わかりました! 確かにアリサ様の心の安寧にはアイギスの奴が欠かせないでしょう。陰ながら奴を手助けするのなら、パルモー程の適任はいないでしょうから、遠慮なく任命してやって下さい!」
「あら、意外。私はてっきり「弟だけじゃ不安だから私も行く」とか言うのかと思ったのだけれど?」
フェリアちゃんのパルモーくんを推す言葉にヴィクトリアが少し目をまるくして驚いています。ヴィクトリアはきっと、ティリアの目には彼が「お調子者」って映るようですから、身内のフェリアちゃんにもそう見えてるのかな? って、思っていたんでしょう。だから、フェリアちゃんの答えを意外に感じたんでしょうね?
「正直それは否めませんが……この弟、本当に隠れるのが上手いのです。アリサ様の『無限円環』での模擬戦でも、お恥ずかしながら何度も煮え湯を飲まされました」
「なるほど、実際私達も貴方に気付けたのはティリアだけでしたものね……」
「それは凄いのです! かくれんぼしたらパルモーくん圧勝なのです!?」
心底悔しそうに、パルモーくんのそのかくれんぼの才能を褒めるフェリアちゃんなのです。うん、アルナちゃんの言うようにポコ達も全然近付かれた事に気付きませんでしたから、陰ながらアイギスパパを助けるこのお役目にはパルモーくんが適任に思うのです!
「それにですね、この弟。変身魔法まで覚えまして……」
「あれねぇ~おかげであの時の模擬戦はしっちゃかめっちゃかになったわよね?」
「アハハ♪ あれは楽しかったなぁ~みんなして「あれ? あれ?」って戸惑っちゃってさぁ~」
わぁ~それは凄いのです! フェリアちゃんとティリアが手でこめかみを抑えるようにして、大きなため息をつくので、詳しくお話を聞くと。アリサママの創造した小世界で二組に分かれて、模擬戦をしてたそうなのです。そこでパルモーくんが相手方の人に変身して、敵陣を掻き乱したらしいのです!
「えへへ、因みに……アリサ様にさ、アイギス兄ちゃんに変身した姿で騙せるか試した事もあったんだけどね? 「いくら見た目や口調に仕草まで模せても魂は誤魔化せないわよ?」……って、うふふ♪ 一瞬で見抜かれちゃったわ」
「おぉー! ヴィクトリアなのです! そっくりなのです!」
「わ、私だわ! 凄いわね……分け身の私じゃ違いがわからないレベルの再現度じゃない!」
ボフンって、得意気に話すパルモーくんがお話の途中で、実際にその変身魔法を使ってヴィクトリアの姿になったのです! すごいのです! そっくりなのです! ママのアドバイスを聞いて練習したのです? 魂まで似せているみたいでポコ達には全く見分けが付かないのです!
「くっ……これのせいで、どれだけ苦渋を……故にパルモーは模擬戦でも、「敵に回したくない相手」の筆頭になりました!」
「そーお? 見分け方なんて簡単じゃない? ほら~? ヴィクトリアはこんなに胸ないでしょ?」
「ティリアーっ!! 貴女なんてこと言うつもりなのよ!? あります! ありますから! 軽鎧で目立たないだけでちゃんとあります!」
うっそだぁーっ!? むきぃーっ!! って、なにやってるのです? ティリアとヴィクトリアは? 楽しそうな事ならポコもまぜるのですよ!?
「あはは……あの二人は相変わらずなんですから……」
「ふふふ、楽しそうな二人ねぇ。それでフェリアさん、私に何か御用だったのかしら?」
「イラァ……それを話す前にその無駄に完成度の高い変身を解けパルモー! ムカってきたぞ!?」
アルナちゃんと一緒にはしゃぐティリアとヴィクトリアをあははって笑って見ていると、ヴィクトリアに変身したパルモーくんが、ヴィクトリアの口調そのままに何か用事があったのか? って聞いています。だけど、そんな彼の態度に怒っちゃったフェリアちゃんなのです! これはその模擬戦で相当やられたんでしょうねぇ~やれやれなのです。
「ハイハイ。ごめんね姉ちゃん、それで僕に何か用事があったの? 話の通り、これから僕はアイギス兄ちゃんの後をつけたり、場合によっては先回りしたりと忙しくなりそうなんだけど?」
「ああ、それは理解した。私の用事は『四神』の皆様と、アリス様を交えて『聖域』の防衛について話し合おうと言うものだ」
ボフンッ! 流石にパルモーくんもこれ以上からかっちゃいけないって思ったのです? 素直に変身魔法を解いてごめんなさいしましたね。ふぅむ、フェリアちゃんの用事はパルモーくんにもこの『聖域』の防衛についての話し合いに参加してもらうことだったのですね?
「なるほど、それならば私達も参加させて下さい! 私とポコは誇りあるアリサお母さんとアイギス父さんの娘。両親の留守を預かり守るのも娘として当然の事!」
「おお! アルナ様、なんと言うご立派なお考え! このフェリア感服致しました!」
「なんだかアルナ様って姉ちゃんと気が合いそうだねぇ~? 真面目ちゃん同士さぁ~♪」
「まったくなのです! アルナちゃんは昔からああなのですよ? もっと肩の力を抜けばいいのに~?」
フェリアちゃんのお話を聞いて、アルナちゃんが「おぉー!」って感じでやる気いっぱいなのです。フェリアちゃんの手をぎゅっと握ってすっかり意気投合してますよ? そんな二人を見てたポコとパルモーくんは似た者同士だなぁ~って心底思いました。
「ふふ、逆にあんた達二人は二人で気が合うんじゃないかしら?」
「はぁはぁ……わ、分け身じゃやっぱり駄目ね……はぁ~二人共に仲良くなれそうでいいんじゃないかしら?」
あ、ティリアとヴィクトリアが戻って来たのです! というか……ヴィクトリアは大丈夫なのです? 息切れしてますけど? ふんふん、大丈夫ですか。ちょっとおいかけっこしただけなのです? だからポコも交ぜろと言ったのです~!
「ふふん、それは嬉しい♪ そう言うティリア様も楽しそうだよね? ヴィクトリア様と仲良くしてるんだ?」
「なのです! この二人も昔から仲良しさんなのですよ?」
「そういうこと。昔からの旧友だもの、一緒にアホぽんや妹達をからかって遊んでたわ!」
「はぁ~昔話はもういいから、今はその防衛についての話し合いに参加しましょうよ?」
おやおや~? パルモーくんってばポコと気が合う~って、ティリアに言われて嬉しいのです? むふふ! ポコも一緒に遊べるお友達が増えるのは歓迎ですから嬉しいですよ!
ティリア「ううぅ(*T^T) これでまたごはん抜きにされちゃう(>_<)」
ヴィクトリア「泣かないでよ( ´Д`)」
ポコ「情けない主神様なのです~(((*≧艸≦)」
ティリア「なによポコぽんぽん!(≧□≦) あんただって一緒に見たんだから同罪よ!(。・`з・)ノ」
ポコ「だーかーらー!(*`Д´*) 二つ余計なのですーっ!(`ε´ )」
ティリア「ええぃっだまらっしゃい!(`□´) あの美味しいケーキも沢山の料理も、みんなみ~んなお預けなのよ!?。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」
アルナ「ハンバーグ……ピザ……唐揚げ、グラタン……うぅ、食べ、られない……んですね?o(;д;o)」
ヴィクトリア「ちょ(・д・`;) アルナまで一緒になって泣かないで!Σ(゜Д゜ υ)」
ポコ「そんなの嫌なのです!Σ(゜Д゜) そうなのです、ティリアが代表として責任を取ればいいのです!(*゜∀゜)」
ティリア「なんですってぇーっ!?ι(`ロ´)ノ このぉ~ぽこぽこぽんぽこぽこぽんぽーん!!ヽ(#゜Д゜)ノ」
ポコ「ちょっと!Σ(´□`ノ)ノ 何回言うんです!?Σ(;゜∀゜)ノ って、グリグリしないでほしいのですーっ!Σ(>Д<)」
フェリア「御二人とも落ち着いて下さいよ!(;´゜д゜)ゞ アリサ様ならきっと笑って許して下さいますから!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」
パルモー「あはは♪(*´∇`*) 別に黙ってればバレないんじゃないの~?(´∀`*)」
ヴィクトリア「そんな不誠実な真似出来ないわ(-_-;)」
アルナ「うぅ、そんな誤魔化し方をしたら後ろめたさでお母さんと向き合えなくなってしまいます!(つд⊂)」
パルモー「……ほーんと、姉ちゃんにそっくりだなぁ( ̄▽ ̄;)」
フェリア「お前は~ちょっとは見習ってもっと真面目になれ!(ノ`Д´)ノ」
パルモー「やだなぁ~僕はいつだって真面目だよ(´・ω・`)? 今回の履歴書だって、緊急事態だったから仕方なくだったんでしょ?(^-^)」
ティリア「そ、そうだけどさぁ~(;´д`)」
パルモー「大丈夫大丈夫♪( ・∀・) 別にアリサ様のおっぱいのサイズとかそーいうとこ見てなきゃヘーキだって!(°▽°)」
フェリア「おっぱって!Σ(゜ω゜) お前はなんてことを言い出すんだ!?ヽ(゜Д゜)ノ」
アルナ「うぅ、確かに私達が見たのは職や能力と言った箇所でしたけれど……(;゜゜)」
ティリア「……((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル」
ヴィクトリア「ティリア?(゜A゜;)」
ポコ「……見たのです?(ーωー) ママのおっぱいいくつだったのです?(〃ω〃)」
ティリア「あああ!Σ( ̄ロ ̄lll) 開くときにチラッと見ちゃったぁぁーっ!ヾ(;゜;Д;゜;)ノ゛」
みんな「あ~あ……アウトだわぁ~Σ(>Д<)」




