112話 『偵察部隊』と『冒険者候補』達
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【ゲキテウスの港町】~『ハンフィリンクス』~《翼view》
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「はぁーっ! すっげぇ~滅茶苦茶人がいっぱいじゃねぇか!」
「これが街か……随分賑わっているのだな?」
いやぁ~びっくりだわ。『聖域』から旅に出て、北の『ルーネ・フォレスト跡地』からゼルワっちとサーサの生まれ故郷の里、そっから南下して『ゲキテウス王国』を観察した後に、陽も暮れてきて、腹減ったんで、泊まるとこ探しに近くの海沿いの……港町ってーの? に、入って見たんだけどさぁ。
「らっしゃいらっしゃい! そこな道行く冒険者! 土産物はどうだい?」
「外に出るならポーション買って行きな~♪」
ワイワイ、ガヤガヤ……
ウノもドゥエもほへーって口開けて、その賑やかな光景にびっくりしてるぜ。俺っちもルロイヤもそうなんだけどさ。
あっち見ても人人人……こっちもそっちも、どこ見ても人が大勢いるんだよな。すげぇなぁ~これが街なんだなぁ~『セリアベール』の防衛戦じゃこうしてじっくり見ることなんて出来なかったから、つい、物珍しくてキョロキョロとしちまうな。ははは、田舎者丸出しだわ俺っち達♪
「折角ですしお土産でも買っていきませんこと? 『聖域』のみなさんに配ったり……」
「待てルロイヤ。一体いくつ買うつもりだ? まさかと思うが、『聖域』にいる全員の分を買おうとか言わんだろうな?」
「わはは! そりゃすげぇ数になっちまうぜ? 「大切に使うのよ?」ってご主人に言われただろ~?」
町人の話を聞くに、この街は『ハンフィリンクス』って言って、『ゲキテウスの玄関』とか呼ばれてる港町なんだってさ。入るときに入場税とかで、一人銀貨一枚が必要なんだけど。でも何かしらのギルドってのに加入してて、その証のカードを見せればタダになるらしい。
んで、俺っち達が金なんかもってんのか? なーんて疑問に思う人もいるかもしんないけど、旅に出る前にアリサ様から結構な額の「おこづかい」もらってんのよ。
そのおこづかい握りしめたルロイヤが、呼び込みしてる土産屋を覗いてて、『聖域』のみんなにお土産買おうとか言うんだけど、ドゥエとウノが待ったをかけた。
「お金の使い方ってのもちゃんと教わったじゃんルロイヤ~? ここは記念になるような飾り物でも一個買ってアリサ様に飾ってもらおうぜぇ~?」
元々人じゃない俺っち達が金の使い方なんて知る由もないわけで……まぁ、受けたよね? 『無限円環』でさ、ラグナースを中心にゼオンやバルドっち達冒険者が受け持つ授業。一般常識ってのをさ。
「わ、わっかってますわよ……残念ですけど、仕方ありませんわね!」
「ふっ、ラグナースや冒険者から色々教わっていてよかったな? こうして人里に降りても、トラブルなく過ごせそうだ」
「ホントそれな! 真面目に聞いておいてよかったぜ。この人混みの中なんにも知らねぇでいたら大混乱しちまうとこだった」
おーおールロイヤってば顔赤くして、プイッてそっぽ向いちゃって~可愛いじゃねーの? 俺っち達が注意したことで、ちょっと浮かれちまった自分に気付いたのかねぇ~♪ んでも、マジにドゥエとウノの言う通り、勉強しといて良かったわ。この土産物屋もそうだけど、他の店からも呼び込みが多いし、並ぶ商品もなんか魅力的に見えてくるから、下手すりゃ散財しちゃうって! まだ、街の入り口だってのにな?
「ほらルロイヤ~これなんていいんじゃね?」
「あら? 素敵な壁飾りね。アリサ様に献上して、お屋敷に飾って頂きましょうか♪」
ま、確かにルロイヤの言う『聖域』のみんなにお土産。ってのはいいと思うから、俺っちもこの土産物屋の商品を物色して、なんか良さげな壁飾りを見繕う。なんかこう、三角形の旗みたいなやつで、この街『ハンフィリンクス』の灯台が描かれた布織物。お値段も銀貨五枚とお手頃だ。それをルロイヤに見せれば中々にいい笑顔を反してくれるんで、土産はこれで決まり。
「あいよ! 毎度あり! この街を楽しんでくれよな、似合いのカップルさん!」
「うぇっ!? ちょっとからかわないでくれよ~おっちゃん!」
「そ、そうですわ! もう、誰がこんなそこつ者と!」
わはは!
ちょっ、なんだよ~? 俺っちとルロイヤが恋仲だって勘違いされたんですけど~? って、そこつ者ってルロイヤひどくない!?
「おい、いちゃついてないで宿を探しに行くぞ?」
「そーだそーだ、似合いのカップルさん。早くいくぜ~?」
「お前らまで~ちょっと待ってくれよ~?」
「もうっ! 貴方のせいですわよ、責任とりなさいな!」
ドゥエもウノもそんな冷めた目で見なくてもいいじゃーん? ただの社交辞令だろぉ? 責任ってどうすりゃいいのよルロイヤ~?
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【今日も野宿……】~あら、通信ですの?~《ルロイヤview》
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「……参ったな」「参りましたわ……」
「どの宿も満員とはな……」
「空いてても他の客が多すぎるし、そんな中でケーキなんて焼けねぇよなぁ?」
もーっ!! 結局今日も野宿になってしまいましたわーっ! 翼みたいなそこつ者と恋人だとか勘違いされるわ、どの宿に行っても満員か、厨房の貸し出し不可の宿ばかりで、たまにそれもオーケーな所も、客から丸見えの厨房で、とてもケーキなんて珍しい料理を作るわけにもいかずで、散々ですわ!
翼、私、ドゥエが項垂れる理由はそういう事で、ウノの言うように、他の宿泊客が多すぎたのですわ。宿探しした時間が悪かったみたいですの。もっと早くに探していれば、客も少なく、人目につかない厨房のある宿もあったかもしれませんのに。
「はぁ~いっそ目立つの覚悟で他の客の前でケーキ焼くべきだった?」
「いや、それはマズイだろう。絶対に興味を持つ者が出てきて、食わせてくれってなるぞ?」
「そこで一つでも食べさせたら、もうアウトですわよね?」
「多分……いや、間違いなく大騒ぎになっちまうよなぁ~?」
それで結局、どうしたかと言うと、わざわざ街の外に出て、少し離れた所にある街道のキャンプ地まで移動して、ようやく夕食作りですのよ? これには流石のみんなもため息が出ておりますわ。幸い、このキャンプ地の利用者が他にいないのが救いですわね……もう、沢山ホットケーキを作って食べますわ!
私達が作るケーキはアリサ様直伝の逸品。外の世界の食文化が発展していない事は冒険者のみなさんからお聞きしておりましたからね。下手に大衆の前でおおっぴらに調理したら、騒ぎになって、無駄に目立ってしまいますからやむを得ませんね。
「ん? おい、翼。お前のバングルが光ってるぞ?」
シュウゥゥ~と、小気味良いホットケーキの生地が焼ける音を鳴らすフライパン。それを見守る翼の腕に装着されているバングルが、何やら光っているのをドゥエが見付けて、本人に伝えます。これは誰かが連絡を取ろうとしているのでしたかしら?
『翼殿、聞こえますか? こちらアイギスです』
続いて、最早聞き慣れた男性の声が翼のバングルを通して聞こえてきます。やはりさっき光ったのは通信の合図でしたね。
「おー? アイギスか、聞こえてるぜ~どったよ? なんかあったか?」
「おいおい、ホットケーキ焼いてる途中だぜぇ? 話に夢中になって焦がすんじゃねぇぞ翼?」
お相手はアイギスさんですか。何かあったのでしょうか? でも、遠く離れていてもこうして会話ができるなんて、このバングルは素晴らしく便利ですわ、流石アリサ様とレウィリリーネ様の合作!
『ああ、申し訳ない。夕食の準備中でしたか? なんでしたら時間をおいてまた改めますが……』
「いんや、大丈夫だぜ~? ルロイヤ手空いてんだろ~ちょっと頼むわ」
「はいはいですわ~アイギスさん達は今どちらにいらっしゃるのです?」
アイギスさん達との会話に集中するのでしょう。翼がホットケーキの番を代わってくれと言うので応えましたわ。でもアイギスさん達って今どちらにいらっしゃるの? 確か『セリアベール』を越えて、ドワーフ達の国に向かうのではなかったかしら? そう疑問に思っていますと、アイギスさんから、そのドワーフの国である『ジドランド』行きの船に乗るため、『リージャハル』という港町で宿をとったそうですわ。う~ん、やっぱり旅馴れていらっしゃいますね。
『リージャハル』はなんと、私達のいる『ハンフィリンクス』の向こう岸に位置する港町なのだそうですわ。
「ほう、なんだ? この海のすぐ先の街にいるのか? 俺達は『ハンフィリンクス』って港町だ」
「そうそう、『ゲキテウス』って国も空から見てきたぜ? でっけぇ国だなありゃ。んで、そっから南下して、今に至るのよ」
ドゥエが意外と近くにいるんだなと苦笑しつつ、翼と一緒に私達の今までの行動をアイギスさん達に伝えておりますわ。ええ、『ゲキテウス』の広大さには本当驚きましたわね。それから忘れてはいけないのが、あのエルフの里でしてよ?
「あーゼルワとサーサに頼まれた手紙も渡して来たぞ? マジに攻撃して来やがったからちーっと力の差ってのを見せ付けてやったわ」
『はは、悪い悪い! 怪我しなかったか?』
ふむふむ、よかった。しっかりゼルワさんも話を聞いているようですわね? でも、本当に攻撃されるなんてねぇ……今ちょっとここで文句を言ってやろうかしら? なんても思ったりしましたけれど、ホットケーキを仕上げなくてはいけません。代わりに翼達が文句言ってくれるでしょう。
「当然。でもよぉ~エルフってなあんな攻撃的だったか? 俺っち達、一応お前達の里の前で人化して友好的に近づいたんだぜ?」
「お前達からの手紙を届けに来たっつっても聞かねぇで、矢を射ってくるわ、魔法ぶっぱなしてくるわ、剣で斬りかかってくるわで散々だったぜ~ゼルワ、サーサ! お前ら後でなんか俺達に奢れよ?」
そうですわそうですわ! いいですわよ、もっと言っておやりなさいな! うふふ、お詫びに何をしていただこうかしら~?
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【セルフィ様発見】~ケーキ屋やる?~《ウノview》
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『局所の『亜人』には、よくみられる光景ですけどねぇ~? 小さな集落に寿命の長い種族が集まると、大抵排他的になります。ましてやこの世界では過去に酷い亜人差別がありましたからね?』
「いんや? それもあんだろうけど、一番の原因は、ゼルワっち! お前が『魔導船』とか言うもんかっぱらったからみてぇだったぞこの野郎!?」
お? なかなかわかってんじゃん……って、今の声誰? なんか女の声だったけど、サーサでもレイリーアでもなかったな。
『いや、そりゃあとんだ迷惑かけちまった! マジに済まねぇ! ホント、今度奢るから勘弁してくれよ、なっ?』
「仕方ありませんわねぇ~でも……貴方達、何方と一緒されておりますの? 先程の声、サーサさんでもレイリーアさんでもありませんでしたわよ?」
翼がバングルに向かってゼルワの野郎に文句言えば、ゼルワの申し訳ねぇっていう謝罪が聞こえてくる。ま、確かにその『魔導船』とかいう、お宝盗んだのが一番の切っ掛けかもしれねぇけど……どっちかってーと、里の場所が外部に漏れたってことの方が重大っぽかったな。その辺りは正直俺達には預かり知らんこったし、ゼルワには一言「しょうがねぇなぁ~」って言って許してやるぜ。
そしてやっぱりルロイヤも気になったんだろうな? さっきの声。あの聞いたことのねぇ声の主は誰なんだ? って聞いたルロイヤの問いに返ってきた答えはそりゃびっくりするのもんだった。
『ふふ、何を隠そう。その声の主は翼殿達がお探しのセルフィ様だ』
『はーい♪ うふふ、初めまして鳳凰さんとグリフォンさん達!』
「「「マジかよおぉぉーっ!!?」」」
はぁぁぁーっ!!? いやいや! マジでなんで!? まさかご主人の弁当の届け先のセルフィ様がさっきの声の主だったなんて、一体どういう事だ!? なんか腹立つくらい得意気に答えるアイギスの野郎にイラっとしつつ、俺達はそのセルフィ様のお声を聞いてみんなびっくりこいたぜ!
「これは驚きましたわ! 一体どうしてセルフィ様が『リージャハル』で貴方達と一緒に行動してますの?」
その理由をルロイヤが聞けば、事の次第を細かに話すアイギス達だ。ほぉぉ~なるほどなぁ……中々複雑な事になってんのな?
それからバングルの機能で、実際に映像でそのセルフィ様のご尊顔を拝見して、明日には俺達も『リージャハル』に向かい、セルフィ様にご主人の弁当と、お望みのケーキを献上するって約束して、通信が終了。
「驚いたな。まさかセルフィ様が街の宿屋の看板娘をやっているとは……」
「だなぁ~んでも、やっぱ優しいお方だぜ~? 一人のおっさんの心を救うために娘さんの代わりを務めるなんてなぁ~?」
もぐもぐ……あ~うめぇ♪ ホントは生クリームたっぷり使ったイチゴのショートケーキな気分だったんだけど、それは明日のお楽しみだな! 今日は一日中飛び回って疲れたからよ、このホットケーキの甘さが沁みるのよ。
そんで、当然食事中の話題はさっき見たセルフィ様のことで、アイギスに聞いた、セルフィ様が街の宿屋で働いてる理由についてだ。まさか女神様ともあろうお方が……ってな感じで驚いてるドゥエ、その理由に優しい方だって、翼が感心してるぜ。
「うふふ♪ とても楽しそうな御方でしたし、お会いするのが楽しみですわ!」
「だな! めっちゃ笑顔だったもんな。明日は腕によりをかけてケーキ作ろうぜ?」
さっきの映像で話したセルフィ様との会話で、ケーキの話が出たんだよな。詳しく聞けば、セルフィ様は、どうもティリア様からご主人の作るケーキの美味さについて散々自慢されたらしい。そんなに美味いなら食ってみたいって思ってるらしくてな~♪ すげぇ楽しみにしてる様子だったんだ。終始ニコニコ笑顔でルロイヤが感じたように、楽しそうな女神様だって思えた。
「ふっ、そうだなウノ! 気合い入れてお作りし、セルフィ様にご満足いただこうか!」
「へへ♪ どうせだし、しばらく滞在してケーキ屋紛いみてぇなことすんのも面白いかもなぁ♪」
「あら! それは楽しそうですわね! でも、フィーナ様もアリサ様のお弁当を楽しみにされていらっしゃるでしょうし、その後になさいな翼?」
やっべ♪ 何それめっちゃ面白そうじゃねぇかよ! 俺がみんなに美味いケーキ作ってセルフィ様にご馳走してやろうぜって言うと、ドゥエが頷いて賛同して、翼が面白そうな提案してきたぜ! ルロイヤも楽しそうだって言うけど、まだ俺達にはやることあるから後にしようって、提案した翼に注意してる。
でも、各地を渡り歩くケーキ屋ってな面白いぜ。客から色んな話も聞けそうだし、俺達『偵察部隊』にゃうってつけかもしれねぇや!
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【朱美の領域】~冒険者候補達~《ルルリルview》
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「ドランド~折角ですし、『セリアルティ王城跡地』まで競争しない?」
「ほぉぉ~? 我が『ハンバーグ』に勝負を挑むのかルルリル?」
はい、皆様こんにちは! 覚えていらっしゃいますか~? 私は『聖域』から冒険者となるべく、選ばれた『龍人族』のルルリルです! ええ? 「そういやいたなぁそんな奴」ですって!? もー! 確かに私達影薄いですけど、これから大活躍するんですから、しっかり覚えててくださぁーい! ……活躍、しますよね? ね?
はい、そんなわけで! 私達はそれぞれの上司からと、『聖域』の皆様から厚い激励を受けて、冒険者となるために『セリアベール』へと向かうべく、この『聖域』を旅立ったのです!
アリサ様は『セリアベール』まで『転移』で送ると仰って下さったのですけれど、最初からアリサ様の御力に頼ってしまっては、「一から始めた冒険者」とは言えなくなってしまいます。
その志を共にする私達は今『朱雀』の朱美様の領域を南下して、『セリアルティ王城跡地』に向かい歩を進めているところ。
「おー……いいぜぇ~? 朱美様の領域は熱くて、魚の俺にはきっついからなぁ~早く抜けてぇぜ」
「あはは! ウェズは『魚人』だもんね。火の力の強いアタシ達の領域は辛いでしょー?」
「ボク達もキツイにゃぁぁ~」「ハッハッハ……熱いワーン」
ただ単に『セリアベール』に向かうんじゃつまらないです! 折角の旅路なんですから、楽しんで行きませんとね。なので、早速思い付いた事を『ハンバーグ』率いる、『黄龍』シドウ様の部下の『龍人族』であるドランドに提案してみました。
それに不敵な笑みを見せるドランド、ふふん! 私達『フライドポテト』を見くびらないで下さいよ~?
ドランド率いる『ハンバーグ』のメンバーの『魚人』のウェズは、この領域の熱さにひぃひぃ言って辛そうです、逆にレイは朱美様の部下の『虹の鳥』だけあって、余裕そうにウェズを心配しています。……心配してるんですよね? そして同じく辛そうにしてるのが『ケットシー』と『クーシー』のニュイとププルです。彼等は毛皮着てますからねぇ~、熱いのは苦手なんでしょう。
「ふむ、大丈夫か? 話を聞くに、火山や雪山等と言った場所にも、冒険者は依頼の為に赴く事もあるらしいが?」
「このくらいの熱さで参ってたら冒険者として認められないかもしれないんだぞ~? 頑張れ~お前ら!」
「冒険者達って、何気に凄いですよね……過酷な環境の地でも、様々な道具や、知恵を用いて踏み込んで行くんですから……」
早くも熱さにへばる彼等に心配そうな目を向けるのは、『神狼フェンリル』こと、リン様の部下。『千年狼』のザウル。そして、『天熊』のジュン様の部下。『白灰熊』のアッシュ。『九尾』の珠実様の部下『狐人』のルーナです。
「……だから競争ってカタチで急いで抜けようとしてる?」
「あはは、そこまで考えてないよノア。私は単に、楽しみたいってだけだよ~?」
「なるほど……ルルリルの意図はそこにあったか、流石によく観ているな。済まんウェズ、ニュイ、ププル……私はルルリルほど察せなくてな、辛いときはそう言ってくれると助かる」
え? ちょ、ちょいと? なに勘違いしてんの!? いやいや! 私だって言われるまでウェズ達がへばってるのなんて気付きもしてなかったって!
『白虎』の大地様の部下、『黒王虎』のノアが深読みしすぎて、「競争しよう」って私が言ったのは、皆を気遣ってのことだ! とか、勘違いしたので、きっぱりそこまで考えてないって言ったのに、ドランドまで「そうだったのか!」とか驚いて、へばってる仲間に謝ってるんですが?
「うえぇ~困るんですけどぉぉ~? 止めてよ、その勘違いがいつか命取りになるかもしれないんだからね!」
「……そうね、ルルリルそんなに頭良くないもんね?」
わははは!!
ちょっとぉぉーっ!! なによノア! あんたからかったわねぇっ!? 皆も笑うな!
「どーでもいいから早く行こうぜぇ~? 俺、熱さで蒸し焼きになっちまう」
「仕方ないわね、『猛威防ぐ領域』っと。さぁ、これで幾分かはマシになったでしょう?」
フワワーン……
「おぉ! たすかったのにゃルーナ! ありがとにゃーん♪」
「わんわーん! ありがとだワン! この魔法ってアリサ様の魔法ワン?」
私が皆にプリプリ怒ってると、ウェズが虚ろな目をして、いよいよヤバい~って状態になっちゃってました。ニュイとププルもひぃひぃと息を荒げて、それを見かねたルーナが一つの魔法を行使すると、優しい光の幕が私達を覆います。
「ええ、『無限円環』で教えてもらったのよ。まぁ、当然アリサ様ほどの効果はないけど、このくらいの熱さになら十分耐えられるわ」
ふはは! 流石は我が『フライドポテト』が誇る『狐人』ですよ! ニュイもププルも嬉しそうにお礼を言ってます! ウェズも助かったと感謝。リーダーの私も鼻が高いです! うーん、でもこうなると競争は無理かなぁ~?
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【外の世界へ!】~手土産持って~《ドランドview》
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「にゃにゃーん! ニュイの投げナイフを食らうがいいにゃカトンボ!」
「ワンワン! ニュイあんなのにナイフなんて勿体無いワン! この石ころで十分だワン!」
ヒュオォォンッ!! ザシューッ!! ドゴォッ!! キュエェェーッ!! ドサドサッ!!
「ふんっ! 熱ささえ防げりゃ俺は元気いっぱいなんだぜ!?」
ドシュウッ!! グオオォォーッ!!
朱美様の領域である『聖域』の南側は、囲む内海を活火山が隔て、冬の今でもかなりの熱気を帯びた大気に包まれている。豊かな水源にも恵まれて、木々や草花も生い茂り、非常に湿度が高い亜熱帯地域でもある。アリサ様は「ジャングル」と称していたな。
そんな中、我等に襲いかかる命知らずな魔物もおり、今しがたニュイの投げナイフと、ププルの投石によって撃ち落とされたワイバーンとミッドレイダー。ウェズの槍に貫かれたデーモンコングが断末魔をあげて倒れ付した。
「お見事、と言いたいけど……もっと綺麗に倒そうよ?」
「確か魔物の素材はギルドで買い取ってもらえるんでしょう?」
皆様、お久し振りで御座います。私は『聖域』出身の冒険者となるべく結成された『ハンバーグ』と言うパーティーのリーダーを務めるドランドです。アリサ様の『無限円環』での厳しい訓練を経て、今、『冒険者の街』と称される『セリアベール』へ向かう途中で御座います。『セリアベール』で冒険者登録をして、『聖域』の名を汚さぬよう、精一杯努力する所存です!
「あ! そうだったぜ……悪い、つい熱さでむしゃくしゃしちまって……」
「ウェズの仕止めたデーモンコングは心臓一突きだからいいと思うぞ~でも~」
「ニュイの投げナイフはワイバーンの頭を貫通して、ププルの投げた石はミッドレイダーの頭を粉砕しちゃったわね……」
襲いかかってきた魔物は結構な強さを、いや……今となってはこの『聖域』の魔物も我等の前では赤子も同然。仕止めた三人に称賛を贈るべきだが、ノアはもっと綺麗に倒すべきと、酷評する。その理由はルルリルの言う素材としての価値故だ。その事を指摘されたウェズは済まんと謝罪するが、アッシュの言うように、デーモンコングの心臓に綺麗な風穴が空いたくらいだからまだいいだろう。しかし、ニュイとププルの仕止めた二体の魔物は共に頭部の破損が酷く、価値の高そうな角や牙等が台無しになってしまった。
「し、しまったのにゃっ!!」「や、やってしまったワン……冒険者ギルドへの手土産がぁ~」
ルーナがボソッとその事を呟けば、ニュイとププルもその価値に気付いたようで、ガックリと肩を落としている。
「いいじゃーんべっつにぃ~? ゼオンも言ってたじゃん? 『聖域』の魔物は街の冒険者達にとって手強い相手が多いから、素材は高く買い取ってるって!」
「レイの言う通り、落ち込むことはないぞ? こんな奴等他にも沢山いるしな」
そんな三人に気にするなと声をかけ、励ますのはレイとザウル。うむ、今はそんな失敗に落ち込むより、『セリアベール』での冒険者生活に思いを馳せようではないか?
「そうだね。取り敢えず折角やっつけたんだから、『魔法の鞄』にしまっておこう?」
「了解だにゃー♪」「任せるワン!」
レイとザウルの言葉にノアも納得したんだろう。頷くと、倒した魔物を『魔法の鞄』に収納してくれるように、ニュイとププルに頼んでいる。
「──そういや聞いたかドランド? 『聖域の水蛇』達が、神殿の泉から内海に出てるって話?」
「ああ、アリサ様が仰っていたな? ザウルも聞いたか。歩いて行くなら彼等の背に乗せてもらうといいらしいぞ?」
そうこうして進む朱美様の領域。ルーナが行使した『猛威防ぐ領域』のお陰で、熱さにへばっていたウェズとニュイ、ププルも元気を取り戻し、順調に歩を進める中、ザウルが私に声をかけてきた。その内容は『聖域の水蛇』が『聖域』の泉から内海に出るようになったこと。『聖域』に女神様が復活なされ、その気配を察した海の魔物が近海を離れ、離れた土地の船を襲うと言う事態が発生したために、アリサ様がパトロール要員として放ったそうだ。そのついで、大陸と『聖域』を繋ぐ橋渡しもしてくれるらしい。
「そっか、普通は空なんて飛べないもんね~?」
「今回はその『聖域の水蛇』に乗せてもらって南大陸に渡るのよね?」
レイが『聖域の水蛇』が橋渡しをする理由についてそう語る。ああ、確かに皆が皆空を駆ける事はできんからな。
空を自由に飛び回る事の出来る魔法『飛行魔法』は、我等皆使えると言えど、一般には広まっていない。私達は折角冒険者としてスタートを切るのだから、様々な経験を積まねばならない。『聖域の水蛇』の背に乗せてもらうのもまた一つの経験となろう。ルルリルの問いに私は首肯して答えた。
「さあ、この山を越えれば内海に出るぞ。海を渡り、『セリアルティ王城跡地』で一夜を明かそう!」
「お~♪ オレ今からワクワクしてきた~何気に『聖域』の外に出るのって初めてだもんなぁ~」
「俺なんて水菜様の棲処から出ることすら稀だったぜ?」
高く聳え立つ山脈の麓に差し掛かり、私が皆に声をかけると元気な返事が返ってくる。いよいよこの山脈を越えれば『聖域』の外の世界だ。アッシュが心踊らせるように、ウェズが少し不安に思うように。私達は皆、胸中に期待と若干の不安を抱きながら歩を進ませた。
翼「そういやさ、ドゥエが捕ったマグロどーすんの(´・ω・`)?」
ウノ「あー(・о・) 朝に取っ捕まえて自慢してたやつ!(*´∇`)」
ルロイヤ「ちょっと魚料理はさすがに、ホットケーキというスイーツには、合いませんわよね?(・・;)」
ドゥエ「ああ、ε=( ̄。 ̄ ) 朝のうちは、「今夜はマグロの刺身で~(*゜∀゜)」って気分でいっぱいだったのにな……(ーー;)」
翼「ははは( ̄▽ ̄;) 疲れたから甘いのがいいよなぁ~?(*´∇`*)」
ルロイヤ「お昼食べるのも忘れて飛び回っていましたからね(^_^;) 脳が完全に甘味を求めておりましたわ(*/□\*)」
ウノ「まぁ、いいんじゃね?(^ー^) 『魔法の鞄』に入れときゃいつまでも新鮮だしよ♪(´▽`)」
ドゥエ「そうだな(´・∀・`) セルフィ様にでも献上するとしようか?( ´ー`)」
翼「生の魚を食うって、俺っち達には普通のこったけど……大丈夫かな?( ̄0 ̄;)」
ウノ「大丈夫だろ?(-∀-) もし「食えない」とか言われたら俺達で食っちまえばいいんだし( *´艸`)」
ルロイヤ「うふふ♪(*´艸`*) それでしたらライスも今のうちに炊いておきましょうかo(*⌒―⌒*)o」
ウェズ「お(・o・) 見ろよみんなトマトが生ってるぜ(*´∇`)」
ドランド「おお、あのチーズと一緒に食うと美味いやつだな?(*´▽`)」
ルーナ「ノッカーが「実が重いから支柱がないと~」って言ってたけれど……( ̄0 ̄)」
ルルリル「なるほど、上手いこと木に絡まって生ってるのね(^∇^)」
レイ「あーf(^_^;) あの時翼様が飛んできて「トマト集めろ」って言い出したのには「なんで?(・・;)」って思ったなぁ~(´▽`*)」
ニュイ「あれは美味しかったにゃぁ~♪(*ノωノ)」
ププル「ミーナ様が夢中になるのもわかるワーン!ヽ(*≧ω≦)ノ」
ザウル「あのピザがまた最高だったな……ああ、いかん(;´∀`) 思い出したらヨダレが(´ρ`)」
アッシュ「わかるぞぉ~♪( ・∇・) あのとろ~り溶けたチーズが乗ったもちもちでいて、カリッとした生地にジューシーなトマト!:*(〃∇〃人)*:」
ノア「あああ……ちょっと!(`ε´ ) 食べたくなるでしょぉーっ!?(>o<")」




