111話 『偵察部隊』と広い世界
────────────────────────────
【話を聞きなさいな】~怒りますわよ?~《ルロイヤview》
────────────────────────────
ビュオンッ! ヒュンヒュンッ!
「おいおい! どーいうことだってばよ?」
「少しはお話を聞いて頂けませんこと?」
ドオォーン!
「黙れ! 盗人の仲間の言葉など聞く耳もたん!」
剣を振り、魔法を放ち、弓を射って、私達を襲うエルフ達に、ウノが戸惑い、私がどうか話を聞いてと呼び掛けるものの、問答無用でまったくお話できませんわ。まぁ、彼等の攻撃など今の私達にとっては、頬を撫でるそよ風程にも感じませんけれど……このままではお使いになりませんわ。どうしましょう?
「わーかった、わかった! 抵抗しねぇから、とりあえず俺っち達を拘束でもして、お偉いさんのとこに連れていったらどうよ?」
「なにぃっ!?」「いや、待て! どのみちただで帰す訳にはいかんのだ」
「あまり騒ぎを大きくして、この里の場所を知られるのは避けたい。ここは、コイツ等の言う通り拘束して、長老に裁いてもらおう?」
埒が明かない。そう感じたのは私だけでなく、翼もそうだったのでしょう。襲い掛かるエルフ達にそう言い放ちました。勿論私もウノとドゥエも異論はありませんから、黙って成り行きを見届けます。すると、相手も理解できたようで、私達の処遇を長老さんと言うお方に任せようとしてくれます。
「……いいだろう。おかしな動きをするなよ?」
「ちょっとでも妙な動きをしてみろ! この剣で斬り捨ててくれる!」
「さぁ! さっさと歩け!」
はいはい。ご苦労様ですわ。でも、この待遇はちょっと酷いですわねぇ、後でゼルワさんとサーサさんには文句の三つや四つ、グチグチとねちっこく垂れて差し上げましょうかしら!
私達四人は武装したエルフの集団に囲まれたまま、森の中を暫く歩かされたのですが、どうにもこの森のエルフ達は野蛮と言いますか、粗野ですわ。一応、私レディでしてよ? もう少し丁重に扱って下さってもバチは当たらないと思うのですけれど!?
「着いたぞ。これから貴様達を我等の長老様が裁いて下さる!」
「そのまま里の中央に進め!」
私が内心ブーブーと文句を垂れ流していると、鬱蒼とした木々で覆われていた視界が開け、小さな集落が見えてきました。へぇ~ここがゼルワさんとサーサさんの生まれ故郷なのですね? 私達を襲撃してきた連中のリーダーらしき、青年エルフに促され、その集落を見てみると、ぽつんぽつんと点在する家に、それぞれ小さな畑が付属して、自給自足の生活の様がわかります。あら? あの家の窓から女性と子供がこちらを覗いていますわね? 子供は好奇心からか、興味深そうに。女性は怯えや恐怖からか、険しい表情ですわ。
「ふーん、自給自足の生活かい? この小さな集落で退屈しねぇの?」
「黙れ! 無駄口を叩くな!」
翼もこの集落の様子を見て、感じたことを口に出しますが……やれやれですわね。取り付く島もないとはよく言ったものですわ。ここまで余所者に対して苛烈な対応を取るエルフ達に、私は少し憐れみを覚えてしまいます。エルフと言えば、妖精に属する長命種の代表格とも言える存在ですのに、その生をこんな小さな集落の中だけで終わらせるのは、あまりにも勿体ない。
(とは言え、そのようなこと彼等にとっては大きなお世話なのでしょうけれど……)
己が生、己が命。どう生きようが、どう使おうがその者の自由ですものね。
さて、そうこうしてる間に私達は里の中央。少し開けた様子から広場かしら? おそらくここで里のエルフ達が集まって集会等を開いたりしているのでしょうね。その広場に連れてこられた私達の前に、他の家と比べ、屋敷と呼べるような大きさの家から、年老いたエルフが扉を開けて、現れました。この方が長老かしら? 少しは話が通じるとよいのですけれど。
「其方達が侵入者か……ふむ。里の若い者が失礼をしたようで申し訳ない」
ぺこり。ザワッ!!?
「「長老!? 何故侵入者に頭を下げるのですか!?」」
まぁ! この長老と呼ばれた年老いたエルフは他の者達と違い、礼節を弁えている様子ですわね。しかし、その他の者達には納得できるものではなかったようで、私達に頭を下げた長老の行動に異を唱え始めましたわ。まったく……このエルフが頭を下げた理由にすら気付かないのですね?
「この者達は我等の里の場所を知った! 生かしてはおけん!」
「元はと言えば長老があの娘サーサと、穢れたハーフエルフの盗人、ゼルワを見逃したが故だ! 責任を取ってもらおう!」
そうだそうだ!! この里の場所が漏れた! どうしてくれるのだ!?
ギャイギャイと、まぁ~やっかましいですわねぇ? 私もそろそろ我慢の限界なのですけれど!? 彼等の勝手な言い分にイライラしつつ、私は仲間達と顔を見合わせます。すると翼もウノもドゥエも同じように苛ついた様子……ここはいっそのこと私達の力を見せ付けて、強制的に黙らせて差し上げましょうか? と、互い互いにアイコンタクト。
「静まれ愚か者共!!」
「「「!!?」」」
ビリビリビリーッ!!!
私達がちょっと神気を解放して、この無礼者達に力の差を見せ付けて黙らせてやろうとしたその時。長老が一喝。言葉に魔力がこめられていたこともあって、ピタリと騒ぎが止まりましたわ。ふむ、中々やりますわね。
────────────────────────────
【ちょっ!】~何連れて来た!?~《長老view》
────────────────────────────
スン……
む? これは……ほんの僅かだが結界に反応があるな。さては侵入者か?
「はて……この小さい反応。小動物か、弱い魔物かそれとも、迷い人か?」
私はこのエルフの隠れ里を治める長老。今日も今日とて何も変わらぬ日常が送られる事と思っていたその矢先。ふとした変化が訪れた。この隠れ里を覆う二つの結界に僅かながら反応があったのだ。これまでにも稀に同じような小さい反応を示した事はあるが、それらはいつも迷い込んだ小動物や、小さき魔物程度であった。
しかし、今回のこの反応は前例とは少し違う気がする。私の勘でしかないが……この小さく見える四つの反応は、何か抑えているようにも感じるのだ。
ワーワーッ!!
ふむ。外が騒がしい、と言うことは警備の者がこの反応を発見したと言うことか。こうも早くに発見されたのであれば、やはり小動物の類いか? いや、それならばこんなに騒ぎ立てはすまい。何だ? 一体何が起きている?
「長老! 侵入者だ! 若い『人間』が四人、森に侵入してきたぞ!」
「むぅ……『人間』とな? 女子供を家に隠れさせよ。その侵入者は何のために来たか問いたださねばならぬ。何か申しておったか?」
ドタドタと警備の者が私の家に駆け込んで来て、そう報告をあげてきた。まさか『人間』が森に侵入してくるとは。私は里の女と子供を護る為、報告に来た者に指示を飛ばし、侵入者が何の目的で来たのかを考える。知らぬうちに『人間』達の国が興り、侵略目的で来たと言う可能性もあり得る話だからな。
「それが、ゼルワとサーサから手紙を預かったと言っているのだ。だが、問題はそこではない、あの二人がこの里の場所を他者に知らせた事が問題なのだ!」
ほう……これはまた懐かしい名前が出てきたものだ。あのやんちゃ坊主であった小僧と、お転婆娘が手紙とな?
「ならば会わねばなるまい。ここに連れて参れ。裁きは私が下そう!」
あの子供二人も、今では立派な成人となっているだろう。無事生きていてくれたか……ゼルワが実は『人間』と同胞の間にできたハーフエルフと発覚し、『人間』を毛嫌いする里の者達の大多数から、「その穢れたハーフエルフを里から追い出せ!」との声に、私は不本意ながらも、ゼルワをこの里から追い出してしまった。そして、アヤツを慕っておった里の娘、サーサも後を追うように、この里を離れていった。
「……その二人が今になって何故、『人間』に手紙を託したのか?」
騒がしい喧騒が徐々にこの里に近付いて来るのを感じながら、私は思案する。いままでは里の場所を漏らさぬ為、一切の連絡を絶っていたあの子等が使い魔でもなく、伝書鳩でもない、よりによって『人間』に手紙を託した事が気掛かりだ。侵入してきた『人間』を信じているのだろうか? それとも利用されているのではあるまいな?
「噂ではかの『破壊神』を崇拝する教団が存在すると聞く……あの二人とて私達に迫害を受けた身……あり得ぬ話ではない……」
なんにせよだ。その四人の『人間』から詳しく話を聞かねばなるまい……私の『妖精の眼』の前に虚偽は通じぬ。もし、害を成す者達であれば、即刻断じてくれる!
「黙れ! 無駄口を叩くな!」
む、警備の者が怒声をあげている。どうやら侵入者達を連れて来たようだな……どれ、それではその者達を見定めてくれようか!
ザッ! と、私は立ち上がり、家の外に出る。目の前の集会場を見れば、警備の者がズラリと並び、その中央に件の四人……が、え? ちょっと待て!? この四人……確かに『人間』の見た目だが、違う!?
感じる魔力も違和感が……まるで超高密度に圧縮されたような……はっ!!? こ、ここ、これは『神気』ではないか!!?
け、警備の者は何故にこの気配に気付かぬ!? いやいや! それよりもだ! ゼルワとサーサは一体何に手紙を託したっ!?
いかんいかんっ!! これは下手に刺激してはこの里どころか、周辺の森が総て消し飛ぶぞ!? 見れば四人共にだいぶ苛立っている様子! マズイ……この上私まで彼等を苛立たせては、本当に消されてしまう! 先ずは里の者達の無礼を謝罪せねば!
「其方達が侵入者か……ふむ。里の若い者が失礼をしたようで申し訳ない」
「「長老!? 何故侵入者に頭を下げるのですか!?」」
「この者達は我等の里の場所を知った! 生かしてはおけん!」
「元はと言えば長老があの娘サーサと、穢れたハーフエルフの盗人、ゼルワを見逃したが故だ! 責任を取ってもらおう!」
私がこの四人の侵入者……いや、来訪者と改めよう。その来訪者に対し、里の未熟な若者が無礼を働いた事を、頭を下げ詫びると。里中からどよめきの声と、怒りの声。はたまた、昔の事をここぞとばかりにほじくりかえす輩まで出る始末。
「静まれ愚か者共!!」
「「「!!?」」」
まったく! 私はお前達がこの来訪者の怒りを買わぬように頭を下げたのだぞ!? それを好き勝手言いおって。相手の力量も測れぬか!?
私が魔力を乗せて怒鳴る言葉に萎縮するような者では、到底この来訪者に敵うまい! 貴様等は口を挟まず成り行きを見守っておれ!!
────────────────────────────
【信じられん!】~『聖獣』だと!?~《警備エルフview》
────────────────────────────
お、驚いた……あの温厚な長老があれほどの怒気をはらませ、我等に怒鳴るとは……私は、この里の生まれのエルフの青年。幼少の頃より、里を守るため鍛練に明け暮れ、警備を任されるに至った。
そして今、なんらかの拍子にこの森に迷い込んだであろう、四人の『人間』を拘束し、話を聞いてみれば、よりによってあの穢れたハーフエルフからの手紙を預かったなどと……なんにせよ、我等の居場所を知られたからにはそう簡単に帰す事はできん。里に連行し、長老の裁きを受けてもらわねば。
しかし、長老はこの四人を見た途端、やや驚いたような顔をして、頭を下げたのだ! 我等が無礼を働いたとして、四人の『人間』に頭を下げる長老に、当然我等は反論するが、一蹴されてしまった……なんなのだ一体!?
「あ~いいよ、いいよ? 俺っち達そんな腹立ててねぇし。さっきから言ってるように手紙届けに来ただけだしさぁ」
「済まぬ。そう言って頂けると助かる……この里の者達は大海を知らぬ、故に其方達の力にも気付けぬ者が大半だ……」
なんだと!? 翼と呼ばれた若者の言に再び頭を下げる長老だが、我等が井の中の蛙だと? くそっ! 確かに我等は長老には敵わぬが、こんな飄々とした小僧共に及ばぬわけがあるまい! そう反論したいのを業腹の思いで飲み込み、成り行きを見守る。あの穢れたハーフエルフが寄越したと言う手紙の内容が気になるからな。
「こちらがそのお手紙ですわ。お納め下さいな」
「ありがとう。感謝する。時に、あの二人は壮健であろうか?」
「ああ、仲間にも恵まれ、実力も付け、冒険者として名を馳せているぞ?」
「そーそー、『白銀』って冒険者パーティーの名前知らねぇ? それなりに有名らしいぜ?」
ルロイヤと呼ばれた娘から手紙を受け取り、あの盗人と、それについていった娘が今どうしているのかを問う長老に、ドゥエとウノと呼ばれる青年が答えた。ふん、『白銀』だと? 知らんな。冒険者など、粗野で品のない無法者の集まりではないか? あの二人には似合いだな。
「詳しくはその手紙に書いてあると思うぜ~? 読んでみたら?」
「うむ。そうだな、其方達にも話を伺いたい故、暫し待っていてもらえるか?」
頷く長老に、四人の『人間』は首肯で応えた。さて、あの二人は一体何と言ってきたのか? 長老が手紙を読み終えるのを、我等は静かに見守って待つ。
「──な、なんだと……馬鹿な、信じられん! それでは其方達、いや! 貴方様方は!?」
「長老? 如何されたのですか? 手紙にはなんと!?」
手紙を読む長老を見守っていた我等だが、読み進めるにつれ、みるみるとその表情が驚愕に変わっていき、ついにはそれが叫びとなった。何だ一体!? どうしたと言うのだ? ただ事ではないと察した我等は長老の側に駆け寄り、手紙の内容はどのようなものであったかを問うた。
「す、総て驚くべき内容だ……待て、順を追い話そう。皆心して聞くがよい」
わなわな震え、側に集う我等に落ち着くよう話される長老の様子から、余程の事が書かれていたのだろうと推測される。そうして、長老の口から語られるその手紙の内容を聞いて、我等は言葉を失った。
「……はっ! 荒唐無稽な話過ぎて信じるに値せんな!」
「女神だ魔王だ『聖域』だなどと……お伽噺じゃあるまいに、馬鹿馬鹿しい!」
その内容はにわかには信じられないようなものばかりであった。創世の三女神の復活、神獣や、聖獣の集う『聖域』……それが『魔の大地』であったこと、今後復活するであろう魔王が被害をもたらす前に避難せよ。だの……
「極めつけはこの『聖域の魔女』たる者の話だ。何をどう聞いても作り話にしか聞こえん」
「まったくだ! 長老、こんな手紙を真に受ける事などありません。早々にこの者達を裁き、あの二人も捕らえるべきです!」
手紙の内容を聞いた同胞も私と同じ思いだ。こんな明らかに嘘っぱちな手紙など放っておいて、これ以上あの二人に里の場所を話されぬように追っ手を差し向け処分するべきである!
「本当にお話になりませんわねぇ……別に信じる信じないは貴方達の勝手ですけれど、これ以上私達に剣を向けると言うならば、相応の覚悟をなさいな?」
「あ~こりゃ、人化とかしねぇで、最初から本来の姿で来た方が早かったか?」
なっ!? 何だこの強大な力の奔流は! 馬鹿な! あの四人の『人間』はこれほどの力を隠していたと言うのか!
ゴオオォォォーッ!!!
大人しく我等の話を聞いていた捕らえた筈の『人間』四人から、凄まじい魔力にも似た大きな力が放たれる! そのあまりに巨大な力を目の当たりにした我等は誰一人として身動きが取れず、ただただ、その四人から放たれる光に茫然自失するしかなかった。そして我に返った時、目の前には……
《……愚かなるエルフの子等よ。我は『鳳凰』……『聖域』を守護せし、『四神』たる『朱雀』が弟である》
《同じく、『聖域』を守護する『神獣ガルーダ』の眷属たる『グリフォンロード』ですわ》
《我等誉高き『聖域』の『偵察部隊』なり》
《此度は朋友の頼み故、この地を訪れた》
神々しい輝きを持った四羽の『聖獣』達の姿があったのだった。
────────────────────────────
【あきれたエルフ達】~もう知らんがな~《翼view》
────────────────────────────
ぶはは♪ 元の姿に戻って、それっぽい口調で軽~く威圧してやったら、このエルフ共ってばえれぇびっくらこいて、みんな腰抜かしてやんの! 笑える~♪ ってか、こんなら最初から元の姿でくりゃよかったなぁ……無駄に腹立つ思いしただけだったわ。後でゼルワっちとサーサに文句言って、何か奢らせてやろーっと!
「あああ……ほ、『鳳凰』様に『グリフォンロード』、『ハイグリフォン』……な、なんと言う力だ。あの二人はこんな強大な力を持つ者達に朋友と認められたと言うのか?」
「かっ! 重ね重ね! 我等の度重なる無礼、どうか御許し下され!」
ははーっ!!!
《あらあら? 少しばかり力を見せただけでこの有り様ですか……先程までの威勢は何処に飛んでいったのかしら?》
《そう苛めてやるな、ルロイヤ。この者達はただ単に未熟なだけだ》
おうおう? 今度は長老とか呼ばれた小僧を中心になんか喚いて土下座までかましてきやがったぞ? まぁ、ここに連れてこられるまで散々攻撃受けたしなぁ~いや、にしたって……変わり身速くね? そんだけ自分達の非を認められるって前向きに思えばいいのか、どんだけ我が身が可愛いんだよ? って、呆れるべきかで迷うなこりゃ。
《別にいいぜ? お前らの攻撃なんぞそよ風だし、最初に言ったよーに、手紙届けに来ただけだし》
《そうだな。ウノの言う通り、義理は果たした。長老とか呼ばれた坊主。話が聞きたいなら手短にな?》
《こう見えて私達も暇ではありませんの。質問があるなら早くなさいな?》
ありゃ、俺っちがちょいと悩んでる間にグリフォン達で話進めちゃったよ。ま、いっか。確かにフィーナ様とセルフィ様にアリサ様の弁当届けてやりてぇしなぁ。
「わ、私が子供扱い……いや、それも当然か。
ではお聞かせ下さい、この手紙にある「近々復活する魔王」とは?」
《かつての『三神国』の一つ『ルーネ・フォレスト』の跡地が近くにあるのは知っているな? そこに『獣魔王ディードバウアー』は復活するであろうとの女神様の仰せだ》
ざわざわ! 『ディードバウアー』だって!? 里の伝承にある魔王だ! ……だのなんだのと、長老の質問に俺っちが答えてやると、こいつら顔面蒼白にして、「何てことだ」「もうおしまいだぁ~」とか言って、絶望してやがるんですけど?
《おいおい? ゼルワとサーサの手紙にゃ「避難しろ」って書いてあったんだろ?》
《素直に避難すればよろしいのですわ。まぁ、故郷を捨てられないと言うなら止めませんけれど?》
「そ、その気持ちも確かにあるが……何より排他的な生活を続けてきた我等が、今更他の地で暮らせるわけが!!」
何だよ? 自分等が排他的だって自覚あんのか? まぁ、確かにいきなりこんな話されても直ぐには動けねぇわな……だからってこれ以上俺っち達がコイツ等に助け船出すつもりはねぇぜ~? どうするかはお前等でよく話し合って決めな~?
「……それに、他の地には『人間』もいるんでしょう? 私達の祖先は酷い迫害を受けたのよ?」
「そうだ、『人間』共と一緒に暮らすくらいなら、俺はこの里に残るぞ!」
おーおー? 成る程なぁ、やっぱコイツ等も話に聞いた『亜人差別』だの受けてきた連中って事か。更に遡ればネヴュラにボコされたっつー『人間』の国に攻め滅ぼされた『亜人』の国の生き残りが先祖にいるのかもなぁ?
《下らん。己を棚に上げよく『人間』ばかりを「悪」と断じるものだな?》
《ゼルワさんがハーフエルフと発覚してから、彼に対して貴方達は何をしたのかしら? 胸に手をあててよぉく思い出してごらんなさいな?》
そ、それは!?
ドゥエとルロイヤの指摘にどもりやがるエルフ共だ。そーいうこったよなぁ~? 結局コイツ等自分勝手なんじゃん? もう付き合ってらんねぇや、さっさと次に行くかぁ。
《一度自分達の行いを振り返って見てみる事だ。行くぞグリフォン達よ! 我々には女神様とアリサ様から託された使命がある》
《ええ、参りましょうか》《了解だ》
《どーでもいいけど、翼のその口調何だよ? 似合わねぇぞ?》
バサッバサッバサッ! 話は終わりだって感じに、俺っちは翼をはためかせて、上空に舞い上がる。それにルロイヤとドゥエ、ウノも続きって、ウノは余計な事言わないの! 演出よ演出! 俺っち達これでもマジに女神様の使いなんだからさぁ~それっぽくしとかにゃ示しつかんでしょー?
「お、お待ち下され! 今少し! 今少し話をぉーっ!!」
あーうるせぇ長老だなぁ? 知らん知らん! 後はお前等で考えて判断しろってーの!
俺っち達は真下で騒いでる長老とエルフ共をガン無視して、次なる地へと飛び立つ。このまま南下して、『ゲキテウス王国』とやらを覗きに行くぜぇ~♪
────────────────────────────
【広い世界】~『ゲキテウス』~《ドゥエview》
────────────────────────────
《ひょぉ~! すげぇーっ!! これ全部街なのかよ!?》
《凄まじいな……『セリアベール』とは比較にならん広さだ……》
俺達はゼルワとサーサの故郷である、エルフの隠れ里を後に南下を続けたのだが、暫くすると前方に街道と、街並みが見え始めてきたのだ。いよいよ『ゲキテウス』か。と、皆思い、『セリアベール』と比べてどのようなものだろう? と、上空からゆるり観察し始めた。そして驚いたのだ。予想通りの縦長の大陸に、しっかり整備された街道。それを繋ぐ数々の街も、区画が整理され綺麗な建物が並ぶ。勿論、まだ手が加えられていない、自然も見られるが、兎に角、街や村が多い。
それがいくつか続いた先に、一際大きな壁に囲まれた、とりわけ広大な面積を誇る大都市が見えてきたではないか! それを目にした瞬間、ウノが驚きの声をあげ、俺もそのあまりの広さにため息が出た。
《ゼオンさん達が『ゲキテウス』は世界で一番住みやすい国だと言ってましたけれど……》
《いやぁ~こんだけ広けりゃ、自分に合った土地ってのも見付かるだろうし、しかも国が守ってくれるってんなら、そう言われるのも納得だよな?》
うむ。ルロイヤの言に付け加えると、確か治安も悪くないとの話だ。更に北は涼しく、南は暖かいという気候の変化から、翼の言う自分達に住み良い地域も選ぶことが出来、その暮らしを国が法で保護してくれる。ふむ、なるほど。誰しも安定した暮らしを求めるものだし、『ゲキテウス』でなら、それが叶うと人が集まるのか。
《民が増えれば国も潤う、国は人を受け入れるため環境を整える……確かご主人が言うには「いんふら整備」だっけか?》
《ええ、確かそう仰ってましたわね。ここまで来る間に見てきましたけど……どこの街や村もしっかりとした街道上にありましたわね?》
《うんうん。建物も綺麗に並んでたな、確かに住みやすそうっては感じたぜぇ~?》
いつだったか、ご主人とゼオン、ラグナースやルヴィアス様達が茶をしてるとこに通りかかった俺達は、ご主人の「復興するなら今以上に街道だの橋だの、インフラを整えてあげなきゃね?」っていう台詞をご主人が話してたのを聞いた覚えがある。ウノとルロイヤ、翼もその事を覚えていたんだろう。眼下に臨む広大な都市に感心しつつ、話し合っている。
《んで、やっぱ目立つのがあの城だよなぁ? あれが『ゲキテウス城』ってわけか》
《街の中央にどどーんとおっ建ってるもんな、つまりここが王都ってこったな?》
翼とウノが注目するのはこの街の中央に聳える大きな城。いくつもの尖塔を携えた高い城壁に囲まれた、それは立派な城だ。街はその城を中心に円を描くように成り立っている、『ゲキテウス』の中枢、王都と言うわけだ。ジャデークとネハグラの二組の家族もこの王都から『セリアベール』に渡ったのか? ふむ、今度聞いてみよう。
《降りて街並みを見て回りたい気もしますけど……あちらも私達が気になるご様子でしてよ?》
《あーん? 後ろから妙な鳥が追っかけて来てんな? ありゃ、使い魔ってヤツじゃねぇの?》
《ふむ、俺達の神気でも察したか? 取り敢えず調べておけ。とでも指示を受けたんだろう》
《なんか面倒くさそ~元々どんなもんかって見るだけの予定だったし、振り切っちまおうぜ?》
のろのろとゆったり、上空から『ゲキテウス』の王都を観察していると、ルロイヤが俺達の後方に一羽の鳥の姿を見付けた。普通の鳥と違い、魔力によって動くその妙な鳥を、ウノが誰かの使い魔だと看破し、俺は恐らく城の者が俺達の様子を探るために放ったのだろうと言えば、翼が振り切ろうと心底面倒くさそうな顔をして提案した。
うむ。確かに、あのエルフの里での面倒事の後だ、あの使い魔を相手して「城に来い」とか言われたら正直遠慮したい。それはウノとルロイヤも同じ気持ちのようで、直ぐ様翼の提案を飲み、加速する。
ビュオオォォンッ!!
風を切り、南へ南へと飛ぶ俺達に、件の使い魔はついて来ることが出来ず、遂にはその気配が感じ取れなくなった。どうやら振り切れたようだな。
《お、見ろよみんな~また海が見えてきたぞ?》
《やっと、ですわね。随分飛びましたわ、本当に『聖域』の外とは、大きいし広いのですね》
《そうだな、『ゲキテウス』の王都をゆっくり眺めていたことを入れても、ここに来るまで相当時間がかかったぞ? 陽も大分傾いてきている》
《腹減ったよー! 俺達昼飯食ってねぇじゃん? 近くの街で宿屋ってとこに泊まろーぜ!》
使い魔を振り切り、通常の速度で飛ぶ俺達の視界の先に、再び海が見え始めた。その事に翼が喜ぶと、ルロイヤはため息をついて外の世界の広大さを改めて感心している、俺もそうだ。『聖域』がまるごと二つ三つはすっぽり収まってしまいそうな、この広大な大陸に呆気にとられてしまう。気が付けば大分陽も傾いており、ウノが思い出したように空腹を訴え始める。エルフの里を出てからここまで、ずっと飛びっぱなしで昼食をとることも忘れていたからな、無理もない。
《いや、宿屋に泊まるのは別にいいけどよ~? 飯はどうする? アイギっち達の話じゃ不味いらしいじゃん?》
《厨房を借りる訳にはいかないかしら?》
《まーまー! 取り敢えず街に入って見ようぜ!》
一度思い出すと、空腹というのはそう簡単に忘れられないものだな。ウノは翼とルロイヤの話を一蹴し、直ぐにでも街に入って休みたい様子だ。まぁ、俺達も飛び続けて、空腹で、と。いい加減羽を休めたい。故に、眼下に見える海沿いの街の近くに降り立ち、再び人化して、宿をとることにしたのだった。
エルフA「い、行ってしまわれた……(゜A゜;)」
長老「おお……なんと言う事だ(。・ω・。)」
エルフB「私達……これからどうすればいいのかしら?(*T^T)」
エルフC「「己の行いを省みよ」か……思えば、ハーフエルフと発覚するまで、ゼルワとは仲良くしていたな……(´・ω・`)」
エルフD「……そう、だね……(>_<) お似合いの二人ってみんなで囃し立てたっけ(-_-;)」
エルフ達「(´・ω・`; )」
長老「うむ……(_ _) 先人達が受けた迫害を私達はあの二人にしてしまった……(>д<*) しかし、あの二人は見限った私達にこうして手紙を送り、気にかけてくれたのだ!( ・`ω・´)」
エルフ達「Σ( ̄□ ̄;)!!」
長老「さて、皆に問う……( `ー´) この事実をどう受け止める?(。-人-。)」
エルフ達「…………(>_<)」
エルフ警備隊長「……避難致しましょう!( `□´)」
エルフ警備隊員A「賛成です(゜ω゜;) あの『鳳凰』様方の力、並々ならぬもの……((( ;゜Д゜)))」
エルフ警備隊員B「あの力の前には我々等吹き飛ばされましょう……((゜□゜;))」
エルフE「で、でも!(;゜0゜) 避難するって、何処に行けばいいのよ?(。>д<)」
長老「うむ、手紙には『ゲキテウス王国』か『セリアベール』、もしくは『聖域』にでも逃げろと書かれている(_ _) いずれも『亜人』も『人間』も平等に暮らす土地らしい(^ー^)」
エルフ達「うう、正直不安( ̄0 ̄;) だけど命には変えられない!(>o<")」
ゲキテウス王国魔導師団長「……そんな!( ゜Д゜) 私の使い魔が振り切られた!?。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」
ゲキテウス王国騎士団長「なんだと!?Σ(゜Д゜ υ) いかん!(。・`з・)ノ もし近隣の街や村が襲われでもしたら一大事だぞ!?ヾ(゜д゜;)」
ゲキテウス王国魔導師団長「はい!o(`Д´*)o あんな強力な力を持った魔物に襲われたら、例えこの王都の守りでも防げるか……(ノдヽ)」
ゲキテウス王国騎士団長「急ぎ陛下にお知らせし、騎士団を派遣する手続きをせねば!ι(`ロ´)ノ」
ゲキテウス王国魔導師団長「うわーん!。゜(゜´Д`゜)゜。 『ジスオウフェル』のクラーケンといい、今回の魔物といいどうなってるの最近!?(≧□≦)」
ゲキテウス王国騎士団長「ええいっ!(; ・`д・´) 泣き言を言うな!ヾ(;゜;Д;゜;)ノ゛ 俺だって泣きたいわ!Σ(>Д<)」
ゲキテウス王国魔導師団長「ふえぇ(´;ω;`) でもあの魔物達、北から飛んで来たなぁ~( ̄~ ̄;) 里の同胞達大丈夫だったかな?(´ヘ`;)」
ゲキテウス王国騎士団長「何してる魔導師団長!(`□´) 速く来い、エルフの名が泣くぞ!?( `Д´)/」
ゲキテウス王国魔導師団長「もーっ!(; ゜ ロ゜) 名前じゃなくて本体が泣いてるんですけどーっ!?(つд⊂)」




