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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
124/211

110話 『偵察部隊』と鰻とエルフの隠れ里

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【二日目の『偵察部隊』】~優雅な朝食~《ウノview》

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「ふわあぁ~あー、よく寝たわぁ~即席の寝床だったとはいえ、中々にいい感じだったじゃねぇの?」

「おはよ、ウノ~いい朝だなぁ? 朝日がまぶしー!」


 おぅーっす翼。お前もよく眠れたみたいじゃん?

 『聖域』から飛び立った俺達『偵察部隊』は遥か西、『ルーネ・フォレスト』と『ゲキテウス』の国境ともなる、高い岩山に作られた海峡の岩壁を一部ぶち抜き、即席の寝床として、一夜を明かした。これが思いの外居心地がよく、一晩寝てみたが、これがまた結構な熟睡よ。


「予想外にグッスリ寝れたわ~昨日のお好み焼きもうまかったし、上々なスタートじゃね?」

「おー、そだな! んで、ドゥエとルロイヤは? まだ寝てんの?」


 ガシュガシュ。寝起きに一番濡れ布巾で顔を拭いて、翼と二人歯磨きだ。しかし、ドゥエとルロイヤの姿が見えねぇのはなんでだ?


「あーどっか散歩でもしてんじゃね? ちょい呼んでみっか?」

「だなぁ、朝飯もどうすっか決めなきゃだしよ」

「ちゃんといるぞ? まったく、ようやく起きたか? 寝坊助共め!」


 おわぁっ!? びっくりした! なんだよドゥエ起きてたのかって、なんで下から登ってくんの? なんかドゥエの怒った声がこの海峡の寝床の下の方から聞こえてきて、俺達はちょっと驚いた。そんなに朝から怒んなよ~血圧上がるぞ?

 だったらもう少し早く起きろ。とか文句垂れつつ、『飛行魔法(フレイ)』でふわふわとこの寝床まで登ってつーか、浮上? してきたドゥエに何してたのか聞けば……


「海の魚を捕っていたんだ、アリサ様から預かった『魔法の鞄(マジックバッグ)』に入れておけば、鮮度を保てるだろう? 今夜刺身にして食うんだ」


 はぁ~マジか朝っぱらからご苦労なこって……って? うおおぉぉっ!?

 働き者だなぁ~なんて、あんま興味無さげにドゥエの話を聞いてると、「釣果だ」っつって、捕ってきた魚を俺達の前に見せびらかしやがった! その魚を見て、俺は一瞬で気が変わったぜ。


「うっほ!? こりゃでっけぇ鮪だな! 俺っち達も食いてぇよ!?」

「ふん。明日からもっと早くに起きると約束するなら分けてやるぞ?」

「します! 俺早起きすんの苦手ってわけじゃねぇし。余裕だぜ!?」


 ニヤリと笑うドゥエに楽勝だぜって笑顔で返事だ! 刺身は美味いからな! あの少し濃い目に作られた醤油も、勿論『魔法の鞄(マジックバッグ)』に入ってるのは確認してるし、ワサビもあった。あのツンと鼻に抜ける辛さで食う鮪の刺身!


「俺っちも早起きしよーっと! ドゥエみたいにうまそうな食材採りに出るのもいいし、普通に散歩すんのも気持ち良さそうだもんなぁ♪」

「はは、俺はもう鮪の刺身が楽しみですしょうがねぇよ! って……ルロイヤはどうしたんだ? ドゥエと一緒に魚捕りしてたんじゃねぇの?」


 んーっ! って伸びをして、朝日の眩しさに目を細め、手を掲げてその光を遮りながら、翼がその爽やかイケメンっぷりを無駄に発揮するが、そんなことは当然どうでもよく、俺は今から鮪の刺身で頭がいっぱいになりかけてる。しかし、そこで、ルロイヤが姿を見せないのが気になった。ドゥエと一緒になって海の魚を捕ってたのかなって思ったんだけど、それならドゥエと一緒に姿を見せるはずだし……何やってんだ?


「ああ、ルロイヤなら。「折角の美しい朝日ですわ! よりよい景観を臨みながら優雅な朝食と致しましょう♪」……とか言ってな? おそらく今頃場を整えていると思う」


 はぁ……なんだそりゃ? 確かに朝日綺麗だなぁ~なんて寝ぼけた頭で一瞬思いはしたけどよ。


「あ、いや。ちょっと待ってみ? んじゃなに? ルロイヤってば飯作ってくれてんの?」

「そりゃやべぇ。任せきりにしちゃ悪いな? 急いでルロイヤのとこ行こうぜ!」


 今更ながら二人が早起きして色々動いてくれてんのに、俺と翼はグースカ寝てたって事に反省だ。それは翼も同感してるようで、俺がルロイヤのとこ行こうって言うと、直ぐに頷いた。


「確かこの辺りに……ああ、いたな。おーい! ルロイヤ!」

「あら、ドゥエに寝坊助二人組じゃない。待ってたわよ?」


 俺と翼、ドゥエの三人は寝床にした岩山の上。ちょっと窪んだ小さく盆地になっている箇所に飛んで行くと、そこに丸テーブルと椅子を四つ並べて紅茶飲んでるルロイヤがいた。


「待たせた分、いいものが捕れた。今夜は鮪づくしと行こう」

「ごめんなぁルロイヤ~起こしてくれてよかったんだぜ~?」

「朝飯作ってくれたんだって? 済まねぇな、明日からはもっと早く起きるようにするぜ!」


 にこやかに微笑みながら朝日をバックに優雅にお茶するお嬢様か。絵になるねぇ~♪ まぁ、周りが殺風景なのはしょうがねぇが。俺達はそれぞれにルロイヤに挨拶を交わし、席につくと、ルロイヤは『魔法の鞄(マジックバック)』から、四つのホットケーキを取り出し、テーブルに並べてくれた。


「さっき焼き上がったばかりのほっかほかでしてよ? ありがたくお召しなさいな♪」

「サンキュー! バターにハチミツ~っと! いっただきまーす!」


いただきまーす!


 ん~うめぇ~♪ 翼の「いただきます」に合わせて俺達も続き、ルロイヤが作ってくれたホットケーキをいただく。いや、マジ感謝。


「美味い! ホントありがとなルロイヤ♪ んでも、お前さん『無限円環(メビウス)』でもこんな朝早くからみんなに飯作ることなかったじゃん?」

「やっぱアレ? 旅に出て気分乗っちゃった的な?」


 翼がホットケーキを頬張り、ホクホク顔でルロイヤに感謝しつつ、どういう風の吹き回しかと聞いている、俺としてはテンション上がっちゃったからじゃねぇのかなって思うんだけど、そこんとこどうなんだろうな?


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【いい女とは?】~ちょっと回想ですわ~《ルロイヤview》

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「アリサ様、いつも朝はアリサ様が食事をご用意くださっておりますけれど……大変ではありませんの?」

「ん~? なんだねルロイヤくん、進化したことで殊勝になった?」


 ある日の『無限円環(メビウス)』での一日。私はその日、たまたま朝早くに目が覚めまして、訓練が始まるまで散策でもしようと、アリサ様の『引きこもりハウス』の二階から一階に降りてきました。

 その一階にある食堂では、既にアリサ様がみんなの朝食の準備を進めている姿があったのです。誰もがまだお部屋のベッドでスヤスヤと寝息を立てているというのに。考えてみれば、朝の食事はいつもアリサ様が配膳してくださっていました。ということは、朝食は他の誰でもなく、アリサ様がご準備なさっていらしたのではないかと思い、お声掛けしたのですが。


「うぷぷ♪ 他のグリフォンと一緒に、「ぐわぐわ」言ってたあんたも、変われば変わるもんよね?」

「お、お恥ずかしいですわ! お忘れ下さいませ!」

「あはは! ごめんごめん。んで、朝ごはん作るの大変か? って、話だよね? ん~まぁ、大変っちゃ大変かなぁ?」


 もう~私の進化前のことでからかわれるアリサ様に、私は思わず赤面してしまいました。ですが、やはり朝食の準備は大変なのですね? 無理もありませんわ、何せ人数が人数ですし、みなさんよく食べますからね……


「ふふ、でもね。嫌だって思ったことは一回もないんだ」

「ど、どうしてですの? こんな早朝からお一人であの大人数の食事をご用意するなんて……私だったら一日で嫌になりますわ!」


 驚きましたわ! 私はてっきり、みなさんが訓練に集中できるようにとの、アリサ様なりのお優しいご配慮と思っておりましたのよ? 「みんな訓練頑張っているんだから、このくらいは私が」とでも仰るのかと思ってましたのに……


「それは二の次。一番はやっぱり「楽しい」からだよ? 「みんなはこれ好きかな?」「アレ作ったら喜ぶかな?」とか、色々考えて料理するのは凄く楽しいし、時間なんてあっという間に過ぎちゃうんだ♪」


 まぁ! なんと言うことでしょう……アリサ様は心からお料理を楽しんでいらっしゃるのね、その上で、私達を気遣って下さいますの? なんて素晴らしい御方なんでしょう!


「相変わらずあんた達は大袈裟に人を持ち上げるわねぇ……そんな大層なことしとらんがな。あ~そうそう、ルロイヤは甘いの好きよね? ちょいとこのクッキー試食してみてちょうだい?」


 私がアリサ様のお考えに感動しておりますと、当の御本人様はやや呆れ気味なお顔を見せますのよ? 何処が大袈裟なものですか!? 私はこんなにも感激しておりますのに、アリサ様ったら謙虚が過ぎますわ! いえ……きっと、その謙虚さもまた、アリサ様の美徳ですわね。私も倣わなければいけませんわ!

 そうして、アリサ様と楽しくお話ができたことに、早起きもいいものですわね♪ なんて内心思っておりますと、試作品というクッキーを渡されましたの。


「クッキー……ですわね? 試作品ということは今までのとは違いますの?」

「なんかあんた、ティターニアと組むこと多かったせいで口調までお嬢様になってるわね?

 そ、今までのクッキーとは違う作り方してるやつなの。とりあえず食うてみい?」


 訓練で妖精女王のティターニアと同じ組になることの多かった私は、『人化の術』を覚え、人となった姿の見た目も中々に高貴らしく、そのままティターニアに相応の作法等も叩き込まれましたの。この口調はそれ故に、ということですわね。

 しかし、このクッキー。見た目は今までアリサ様がお作りになられる物と大差ないように見えますが……はて、何が違うのかしら? 強いて言うなら、少し厚みが薄いかしら? とりあえず言われるままに食べてみましょう。


「!? まぁーっ! これは! なんて軽い食感でしょう! 口の中で溶けますわ!」

「お。中々いい反応してくれるじゃない? 『ラングドシャクッキー』っていうのよ? サクッとした軽い食感と口溶けが特徴的よね?」


 『ラングドシャクッキー』!! 素晴らしいですわ! 勿論普段のクッキーも美味しいのですけれど、私はこちらの方が断然好みです!


「とても、とても美味しいですわアリサ様! 一体どうやって作られておりますの!?」


 是非ともご教授いただきたいですわ! そしてもっともっと食べたいですわぁーっ!!


「ふふ、慌てないの。ちゃんと教えるから♪ はい、んじゃもう一枚」

「わぁぁーっ! んん~美味しいですわぁぁ~♪」


 はしたなくもおねだりしちゃいましたのよ、私ったら。でも、そんな私を見てアリサ様はこう、仰ったの。


「「そうそう。あんた達が美味しいって食べてくれるのがなによりのご褒美なのよ」って! 私、その時に確信しましたの!」

「は、はぁ……なにを?」

「『いい女』と言うのは、人を心から笑顔にできる女性なのですわ!」


 そう! 私が目指す理想像。それこそがアリサ様なのですわ! 故に、今回はアリサ様に倣い、あなた達の分の朝食を作ってみた。というわけですの!


「は~長ぇ回想始めたから何かと思えば……なるほどなぁ」

「いいんじゃね! 実際に俺っち等助かってるし、嬉しいし、マジ笑顔になるって!」

「ああ、感謝するルロイヤ。しかし、そう急いでアリサ様のようにならなくてもいいだろう? 朝食は当番制にして、自分の番が来たら頑張ればいい」


 如何ですの? って、話を聞かせた三人をみれば、ええ! 笑顔ですわ! ふふ、大成功でしてよ♪ ウノも翼もニコニコですけれど、ドゥエだけは当番制にしようと、提案も一緒にしてきました。


「いいね! 俺っちはさんせ~!」

「俺もいいと思うぜ? ルロイヤにばっか任せんのも悪いしな」

「そうですわね、流石にアリサ様のような手際は身に付いておりませんし、私も賛成ですわ」


 こうして、私達の朝食は当番制で交替交替で作っていくことになりました。何はともあれ、私達『偵察部隊』の旅は二日目をむかえたのです。


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【ご主人の気配】~なんかいる!~《ドゥエview》

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《しかし、その『ラングドシャクッキー』、卵黄を使わず、卵白から作られているとはな……》

《あのご主人が作ってくれたチョコレート挟んだやつだろ? すげぇ人気で速攻品切れになっちまってよぉ~俺一枚しか食えてねぇよ?》


 ルロイヤが用意してくれた朝食のホットケーキを食べた後、即席の寝床を片付けて、俺達は再び飛び立ち、進路を『ルーネ・フォレスト』に向けて進んでいた。目的地はゼルワとサーサの故郷であるエルフの隠れ里だが、『ルーネ・フォレスト』の近くに位置していると言う話なので、ついでに『ルーネ・フォレスト跡地』も見ておくことにしたのだ。

 その道中、先のルロイヤの話を思い出したので口に出してみると、ウノのヤツが乗ってきた。うむ……確かに『無限円環(メビウス)』でご主人が「新作のお菓子よ?」と言い、『ラングドシャクッキー』でチョコレートをサンドした美味な菓子が供された事があった。


《無理もありませんわ。チョコレートだけでも、『ラングドシャクッキー』だけでも美味ですのに……それが、合わさってしまうなんて!》

《やっべ……思い出したらめっちゃ食いたくなっちまったよ! アリサ様に頼んだら送ってくれねぇかなぁ?》


 う、なんだか変に思い出させてしまったようで済まない……俺もあの美味な菓子を食えたのは一枚だけだったから、また食べたいと言う皆の気持ちがわかる。


《ルロイヤはそのレシピ聞いたんだろ? 挑戦してみたらどうだ?》

《残念ですけれど、チョコレートが希少ですの。チョコレートなしじゃ画竜点睛を欠くと言うものですわ》


 そうか、残念だ。チョコレートはカティオ豆を原料に、丹念に作られる高級菓子と聞く。それも、一部の者しか知らないという希少っぷり。世に広まるのはもう少し先の話になるか?


《っと! おい、みんな魔素が濃くなってきたぞ、警戒だ!》

《応よって、なんかご主人の気配感じねぇか?》


 無駄話に興じていた俺達だが、『ルーネ・フォレスト』近辺上空に差し掛かるにつれ、周囲の魔素が濃くなってきた、翼も気付いたようで、俺達に注意を呼び掛ける。その言葉に従い、無駄話を止め、警戒を強めるとウノが何かを感じ立ち止まった。


《ちょっと待ってくれよ……》

《ご主人の気配だって? ご主人は今頃『エルハダージャ』と『ゲキテウス』に向かっているはずだが……?》


 俺達のご主人は『遍在存在』という離れ業で『人猫(ワーキャット)』と、聖女様に分かれ、二方面に赴いている。こちらにいるはずはないのだが……


《いや、間違いねぇ……あっちだ! 行ってみようぜ!》

《了解ですわ、なんにせよ放って置けませんものね》


 立ち止まり、滞空してその気配を探っていたウノが感じ取った方角を示す。ルロイヤが言うように、放っては置けない。俺達は頷き合い早速向かうことにした。


《おお! マジだ、マジにアリサ様の気配感じるぜ! ウノの探索能力はすげぇなぁ?》

《へへ、ゼルワとニュイ、ププルにニャモって言う『斥候(ローグ)』達から散々仕込まれたからな!》

《見えてきましたわ! あの光がそうではなくて!?》


 先頭を行くウノについていく俺達。進むにつれ、俺達にも確かにご主人の気配がはっきりと感じ取れるようになってきた。確かに間違いないようだ、翼がウノの探索能力を称賛すると、ウノは嬉しそうに、『聖域』が誇る『斥候(ローグ)』の面々に鍛えられた成果だと、鼻を高くする。

 その気配を頼りに進むこと数分。前方に浮かぶ小さな光を放つ球体? のような物が目に入り、ルロイヤが声をあげた。どうやらあの光がご主人の気配を放っているらしい、更に近付いてみると……


フリフリ~♪


《おあっ!? これフォレアルーネ様か?》

《まぁ~可愛らしいですわね♪》

《……これは。ゼオンが持っている『あるちぃ』と同じやつか?》

《するってーと……アリサ様の『オプション』じゃね?》


 そこに浮いていたのはフォレアルーネ様を模した、愛らしいぬいぐるみ人形だった。ウノはそれに驚き、ルロイヤはその愛らしい姿に頬を緩める。俺も多少驚いたが、ゼオンがアルティレーネ様を模したこれと同じような人形を持っていたことを思い出した。それを口に出すと、翼が直ぐにこれはご主人の『オプション』であることを見抜いたのだった。


《……もしかして、『ルーネ・フォレスト』を見守っているのか?》

《これ、呼び掛けたらアリサ様に繋がるよな? 『ラングドシャクッキー』頼んでみっかな?》


 フォレアルーネ様を模したこのぬいぐるみは、一度俺達に反応を返した後、目線を下げ、『ルーネ・フォレスト跡地』を見つめ続けている。この地は『獣魔王ディードバウアー』が眠りについているだけあって、魔素濃度も濃く、魔物も狂暴だ。もしこの魔王が復活を果たせば、この辺り一帯の魔素濃度は今よりも更に上昇し、人が住めなくなるだろう。だから翼よ、そんなのんきな話ではないんだぞ?


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【鰻でヒャッホイ♪】~久し振りの~《アリサview》

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「ん~? 『ルーネ・フォレスト』にいる『ふぉれやん』からなんか反応あるなって思ったら……翼達かね?」

《おわぁっ!? び、ビビったぁ~! アリサ様俺っち達に気付いてたんですか!?》


 あいあい。みなさんこんにちは♪ 聖女の方のアリサさんですよ、なんか久し振りだねぇ?

 さて、私達……私、アルティレーネ、珠実、バルガス、ネヴュラの五人は『セリアベール』を出発して、『エルハダージャ』へと向かう道中にいるんだけど。その途中、『ルーネ・フォレスト跡地』の『龍脈の源泉(レイライン)』を監視している、私のオプション。フォレアルーネをモチーフにした『ふぉれやん』に何者かが接触してきた。

 因みにだが、この『ふぉれやん』はゼオンの護衛につけた『あるちぃ』と同様、『守護者(ガーディアン)』となる事も出きる。来る『獣魔王ディードバウアー』との決戦時には、存分に力を振るってもらおう。

 んで、その『ふぉれやん』に接触してきたのは誰ぞ? って思い、映像通信(ライブモニター)を『ふぉれやん』越しに展開して見てみると、なんともまぁ、見馴れた鳥達の姿があったのだ。『鳳凰』の翼率いる『偵察部隊』の面々だね。


「ぷふっ! なんじゃ翼よ? その間の抜けた面白い顔は~♪ 妾達は食事中ぞ? 笑かすでない」

《マジに繋がっちゃったぞ! うぇぇーい! 千切りキャベツに顆粒出汁。あざぁーしたっ!》

《うふふ♪ 夕べはお好み焼きで、今朝はホットケーキを食べましたの!》


 突然目の前にモニターが現れて驚いたんだろう、翼が目をまるくして、あんぐりと口をあけて呆けてるのを、珠実が可笑しそうに笑ってるよ♪ その後に続いてウノとルロイヤが嬉しそうに食べたご飯の報告をあげてきた。ほうほう。用意した千切りキャベツに顆粒出汁を早速使ったのね? よきかなよきかな。


「まぁ、お好み焼きも美味しいですよね♪ ホットケーキも素敵です!」

「ふふふ、しかし我等もまた美味なる食事を頂いておるところよ」

《……バルガス、その飯はなんだ? 見たことないぞ?》


 そんな報告を聞いたアルティレーネは「それも美味しくて良い」とにっこり。その横でバルガスが、こちらも負けていない! と、でも言わんばかりに、食べてるご飯を『偵察部隊』に見せびらかす。それを見たドゥエが興味深そうにモニターを覗きこんできたね。


「ふっふっふ……『無限円環(メビウス)』でも出さなかった料理だからね。そりゃ見たことないでしょうよ? 何を隠そう鰻のひつまぶしであーる!」


じゃじゃーん!


 うへへへ。そうなのだ! 遂に、念願の鰻が手に入ったのだよ! バルガスが『セリアベール』の酒場のマスターから情報を持ってきてさ! これはいてもたってもいられーん! と、この『エルハダージャ』のある、東大陸にすっ飛んできたんだ。途中に港町があったみたいだけど、無視して来ちゃった。覚えてたら帰りにでも寄ってみよう。


《鰻~? あの二つ頭の魚のことですかアリサ様? アイツなら『聖域』にもいなかったっけ?》

《いや、翼の言ってる鰻は『ツインヘッドイール』だろう? 『聖域の(サンクチュアリ)水蛇(サーペント)』に進化する前のやつだから、アリサ様も食おうとは思わなかったんだろう?》


 おう……やっぱあんたらは鰻と言えばあの二つ頭の奴等が真っ先に浮かぶのね? ぶっちゃけ、『聖域の(サンクチュアリ)水蛇(サーペント)』に進化してなかったら、食用にしてたかもしれない……ってのは黙っておこう。ドゥエがいい感じに勘違いしてくれてるし。

 そんなわけで鰻を求めて空を飛び、海を越え、東大陸の山の中。

 綺麗な川が流れる山林をちょこっとだけ切り拓いて、『中継基地(サテライトハウス)』をドンと置き、ヒャッホイしてたのだよ。

 山地ということもあってか、サンショウも自生しており、時期的にいい具合に実が熟していたので山椒も容易にゲットできたのは幸運だったね!


《え、鰻ってそんなに美味いのご主人?》

「調理法次第のようですね。夫と一緒に聞いた酒場の店主の話では、とても食べられた物ではなさそうでしたのに……」

「アリサお姉さまの手にかかれば、それも至高の料理となるのです! あぁぁ、昨夜の蒲焼き祭りは本当に最高でした♪」


 私の代わりにウノの質問に答えるのは、ネヴュラとアルティレーネ。二人は昨夜に作った鰻の蒲焼きの味を思い出したのか恍惚とした表情だ。

 前世での人気っぷりを知る私としては、鰻はちょいとお高いイメージがあったけど。この『ユーニサリア』では食べる方が珍しいのだろう、探さずとも川に行けばビッグで活きの良い鰻が我が物顔で泳いでる。


「肉厚でいて、ふっくら……最高だったわ。私もめっちゃ張り切っちゃったのよね♪」


 久々に食べた鰻の蒲焼きの美味いこと美味いこと! もうアリサさん大満足♪


《そ、それほどですの!? 是非とも食べてみたいですわ!》

《俺達にも作れますか? 今朝海で鮪捕ったんですが、鰻はいなかった。もしかして、川? 海にはいないんですかね?》

《食いてえーっ! ちょっとバルガスそこ代われ!》


 うひょひょ♪ 『偵察部隊』め、めっちゃ食いついてきたぞ! だが、残念ながら鰻の蒲焼きは料理覚えて間もない者が一朝一夕で作れる代物じゃない。厳しい修行を経て初めて美味しい蒲焼きが焼けるのだ。私もそんな修行なんてしたことないけど、『イメージ魔法』を駆使して解決している。


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【エルフの隠れ里】~……隠れ里?~《翼view》

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「魔王の問題だのなんだのと片付けて、落ち着いたらみんなにも振る舞うからさ。それまでは我慢してちょーだいね?」

《むわぁぁーっ! 残念だぁぁーっ! 技術や知識が要るんじゃ仕方ないけどさぁ~!》

《くっ……こうなれば一刻も速く問題が解決するよう、俺達も尽力するしかないか!?》


 そんなぁ~! あんなにうまそうな飯なのに、俺っち達には作れねぇのかよぉぉーっ!? アリサ様が無情な現実をズバリ突き付け、ウノが今の俺っち達の心情を代弁するかのように叫ぶ。……くぅ……しょうがねぇ、ドゥエの言うように、さっさと魔王問題を解決して、アリサ様が自由になれる時間を作らねぇ事には、教えてもらうこともできねぇか……


「あー因みにさっきのドゥエの質問だけど、鰻は降河回遊魚だから、沿岸沿いにならいるかもだけど、やっぱり河川に生息してる事が多いと思うよ?」

《なるほど! でしたら、旅の途中に捕まえて手土産といたしますわ♪》


 降河回遊魚ってなんだ? よくわかんねぇけど、川見付けたら探して捕まえてみるのも確かにいいな! アリサ様に調理法教わって俺っち達でも作れるようになれば……うしし♪


「捕り過ぎないようにね~? で、あんた達『ルーネ・フォレスト』に来たってことは、ゼルワとサーサの故郷探してるんでしょ? ここから少し南西に行けば妙な結界張られた森があるから、多分そこだと思うよ?」


 おー! マジっすか? 情報感謝しますアリサ様!


《……しかしよぉ、ここがかつての『三神国』の一つ、『ルーネ・フォレスト』かよ……》

《僅かに王城の遺構の跡があるが……酷いものだな》


 『ルーネ・フォレスト』の上空で、その跡地を見下ろす俺っち達だけど、かつて栄華を極めたであろう、『三神国』の面影は見る影もないほどにぶっ壊されて、かろうじてここに、「昔は城があったんだろうな」って思わせる程度の遺構が残ってるくらいだ。


「……フォレアやリールが見たら、悲しむわね。でも、私達はそれを繰り返さないために動いてる」

《ええ、傍迷惑な魔王共をやっつけて、この世界に安寧を!》

《だな! さっさと片付けてアリサ様達とみんなで楽しく暮らそうぜ!》


 それを見て俺っち達は改めて決意を新たにする。こんな破壊をもたらす魔王共に好き勝手されちゃ、ちっとも楽しくねぇからな! ルロイヤと俺っちの言葉にウノとドゥエも力強く頷いた。


《んじゃ、俺達はエルフの里に行きます。その後、『ゲキテウス王国』をチラ見して、セルフィ様に弁当届けますね!》

「あいよ~今のあんた達なら大丈夫だろうけど、道中気を付けて行くんだよ~?」


はーい!


 映像通信(ライブモニター)の向こうのアリサ様に、ウノが俺っち達の予定を話して、アリサ様からありがたい激励と注意をもらって俺っち達は、南西の森に向かう。因みに、『ラングドシャクッキー』とか、『鰻の蒲焼き』とか送ってもらえないかな~って話は、無いなら無いで、どうにかするのも、また旅の内ってことで却下されたよ、トホホ……


《エルフ共の隠れ里ってのは~あ~もしかしてあの森か?》

《……? 『隠れ里』ですわよね? わかりやすすぎて、隠す気あるのかと問いたいですわ》


 『ふぉれやん』の元から飛ぶこと程なくして、話に聞いた『妙な結界』が張られた森が見えてくる。何の結界かは知らないが、それが張られていることで逆に見付やすかったくらいだ。ウノとルロイヤも直ぐに見付けたようで、やや拍子抜けしてる様子だなぁ。


《う~む、恐らくだが、一般の者にはあの結界が見えないんじゃないか? ルロイヤ、解析してみてくれ》

《ふむ……どうやら、『不可視』と『迷い』の結界のようですわね。アリス様の『待ち望んだ永遠(アルカディア)』とか、アリサ様の張る結界と比べると、その差は天と地以上の開きがありますけれど》


 あーそら、比べる対象が規格外だわぁ……ドゥエの頼みで、ルロイヤがその森に張られてる結界を分析すると、そんな答えが反ってきた。『不可視』とか言うけど、俺っち達には普通に見えてて、その分違和感すげぇのよ? だって、森の一部分がその結果で、ドーム状に覆われてんだもん。


《ま、とりあえず行ってみようぜ?》

《そう言えば、近付くと攻撃されるとか、ゼルワが言ってやがったっけ~?》

《ふん、その時はその時だ》

《まぁ、みんなして血の気が多いですこと。仮にもゼルワさんとサーサさんの故郷なのですから、友好的に接しましょう?》


 はい、ってなわけで再び人化して、その森の前に降り立ちましたよ俺っち達。『魔法の鞄(マジックバッグ)』からサーサとゼルワに預かった手紙もちゃんと準備したし、入らせてもらいますかね。まー攻撃されたらされたで、どうとでも対処できるし。んでも、ゼルワ達はもう俺っち達の仲間だから反撃はしないでおくか~?


ビュオンッ!! ひょい、カカッ!!


「何者だ!? 我等エルフの森に何をしに来た!?」


 おーおー……早速かよ? なーんかやたら遅ぇ矢が飛んできたんで首を捻って軽く避けると、その矢は後ろの木にぶっ刺さった。んで、続く怒声。


ザザザッ!!


「あの矢を避けるとは……貴様達、只者ではないな!?」

「『不可視の迷い』の結界を越えて来るとは! 生かしておけん!」


 たぁ~! いやいや待てよおい? ティターニアのとこのエルフと違って随分攻撃的だな? コイツら何でここまで余所者に警戒すんだよ? 木の上にでも身を潜めてたのか、ゾロゾロとエルフ共が集まり、皆弓を、杖を構えて攻撃体制を整えてやがるじゃねぇの。


「待て。俺達はお前達に敵対する意思はない。ただ、手紙を届けに来ただけだ。用が済んだら、直ぐに立ち去ろう」

「手紙だと? ふん、たとえそれが本当だとして、この里の場所を知られた以上、簡単に帰れると思うな!」

「そう言うなよ? サーサとゼルワから預かった手紙だぜ?」


ザワッ!!


 お? ドゥエが冷静に、今にも矢を射ってきそうなエルフ共に、俺っち達の目的を話しても、里の場所を知られたからって、全然矛を納めねぇんで、俺っちがサーサとゼルワの名前出したんだけど、どうしたんだ? なんかザワザワとどよめき出したぞ? 


「ふざけるなっ!! ゼルワと言えば我等が里の秘宝、『魔導船』を盗んだ大悪党ではないか!! 皆、コイツ等を捕らえろ! 絶対に逃がすな!!」


 うえぇーっ!!? なんか火に油注いだ感じになっちまったんですけどぉぉーっ!?

アリサ「そういやルロイヤ~?( ・∀・)」

ルロイヤ「あら、どうされましたのアリサ様?( ゜ー゜)」

アリサ「あんた男衆にぇっちなことされたりしてないかね?(*´艸`*)」

ルロイヤ「なっ!?Σ(*゜д゜ノ)ノ なななんですのいきなり!?(≧□≦)」

翼「してないよ~アリサ様( ´ー`)」

ドゥエ「俺達はご主人一筋なので!( ・`ω・´)キリッ」

ウノ「そうだぜご主人~♪(ノ≧∀≦)ノ 俺達ご主人以外の女にゃ興味ねぇのよ!(´∀`*)」

アリサ「え~?(*´・д・) あんた達の中から新しいカップルでも生まれんじゃないかな~って期待してるのに~( ̄0 ̄)/」

翼「ははは、ゆかり様とカインみたいに~?(*≧ω≦)」

ウノ「マジレスすると~俺達進化したじゃん?(´・ω・`)」

ドゥエ「それで寿命が伸びた……と言うかほぼ『不老不死』に近いんで( ̄▽ ̄;)」

ルロイヤ「あまり異性に対して意識することがなくなりましたわね( ・-・)」

アルティレーネ「あら(・о・) それでしたらゆかりさんもカインも同じようなものでしょう?(‘∀‘ )」

珠実「お主達はきっとこれからじゃろうなぁ~(’-’*)♪ 『聖域』に戻って来たときどうなっとるかが楽しみじゃぁ(((*≧艸≦)ププッ」

バルガス「夫婦とは中々にいいものですぞ?(´・∀・`)」

ネヴュラ「旦那を立てるのも手綱を握るのも楽しいものです( ̄ー+ ̄)」

翼「え~?(;´Д`) ルロイヤに手綱握られたくねぇなぁ~( ;´・ω・`)」

ウノ「ご主人にならいくらでも握ってもらいてぇけどさぁ~?( ゜∀゜)」

ドゥエ「それに珠実様とて浮いた話など皆無でしょうに?(。・´д`・。)」

珠実「やかましいわこの鳥共め!( ;゜皿゜)ノシ」

ルロイヤ「貴方達~!(#゜Д゜) さっきから好き放題言ってくれますわね!(`□´)」

翼「ウヒョー(゜∀゜) 二人が怒ったぁ~(≧ω≦。) コワイよぉ~♪(*´▽`*) 助けてアリサ様~?(゜∀゜ )」

アリサ「残念だけど私にはもう旦那も娘もいるのよ~?( 〃▽〃) (仮)だけどさぁ(o´・ω・`o)」

ウノ「チキショー!(o;д;)o アイギスの野郎めぇ、いつか勝負して泣かしてやるぅーっ!((ヾ(≧皿≦メ)ノ))」

ドゥエ「既にお前が泣いてるんだが?( ゜Å゜;)」

アルティレーネ「あはは(^ー^) なんにせよ貴方達も良い旅を!(о^∇^о)」

偵察部隊「「「「はーい♪(ノ≧▽≦)ノ」」」」

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