105話 守護者と世界樹の栄光
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【あるちぃちゃんは】~『守護者』~《ミストview》
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「でもさ~こーんな大きいの、一体どうやって街の護りにつかせるの?」
「街中でこの『守護者』が戦闘なんて事をすれば、建物が軒並み崩壊しますよね?」
話はちょっと遡って、アリサ様の『無限円環』内の回想。『技工神ロア』の呼び出す『魔装戦士』に対抗するためにレウィリリーネ様とアリサ様の合作、『守護者』がお披露目されたんですけど……ふわぁ~やっぱり大きいよぅ。ティリア様が言ったけど、こんな大きいのどうやって街に配置するんだろう? それにアルティレーネ様も心配されているけど……少し動いただけで色々踏み潰したりして、壊しちゃいそうだよね?
「まぁ、この子が動く時は本気でピンチの時だからね? 『セリアベール』には私が用意した新しい結界を張って、その上で……」
「ん。『あるちぃ』を使う。あれはアリサお姉さんのオプションだから」
「へぇ~いいじゃーんそれ! 要はこの『守護者』はアリサ姉のオプションの装備品って思えばわかりやすい?」
簡単に言うとそうね~♪ って、フォレアルーネ様を褒めるアリサ様です。『あるちぃ』と言うのは以前にゼオンさんの護衛として用意したアリサ様のオプションで、アルティレーネ様を模した可愛らしいぬいぐるみ人形ですね♪ 私もほしいなぁ~シェラザード様やリールさんとフォーネさんからお裁縫を教えてもらって、いずれ『黒狼』メンバーのぬいぐるみ人形を作ろう!
「今は私の神気で操ってるけど、オプションの『あるちぃ』を『核』にして、自律させようっておもうの」
「なるほど、『あるちぃ』の装備品としてこの『守護者』を呼び出すって感じにすれば、場所取らずに済むわね。ただ、呼び出す場所は考えないといけないだろうけど」
ああ、いけない脱線しちゃった。なんでもアリサ様のお話だと、この『守護者』さんは普段この『無限円環』の地下倉庫に安置されてて、『あるちぃ』ちゃんが呼び出すことで、私達の世界に現れるんだって! はわぁ~すごいなぁ。
「それでしたら冒険者ギルドのあの訓練場を利用すればよいと思います。吹き抜けで、広いですし、呼び出しても建物を壊す事もないでしょう」
あ~うんうん。そうですよね、ティリア様が仰る通り、お部屋で呼び出したら建物壊しちゃうもん、お外で呼び出さないと、冒険者ギルドの訓練施設なら大丈夫ですね! 流石アルティレーネ様です!
「ねぇねぇアリサ姉~実際この『守護者』の性能ってどんなもんなの? さっきの『魔装戦士』を一蹴したところ見るに相当だよね?」
「そうね、結構凄いと思うよ? 今までのオプションだと剣なんて使えなかったからね。それに『神の護り手』も標準装備だから攻守共に隙がない感じ?」
フォレアルーネ様がアリサ様に聞いた『守護者』の性能は、聞けば聞くほど凄いです……まるでアリサ様のような戦い方ができちゃうんですね!
「うふふ、『あるちぃ』も立派になりましたね」
「う~ん、『守護者あるちぃ』って、いまいちしまりがないわね? もうちょっとかっこよくできないかしら?」
「ん~? ちょうど三神国の護り手としての象徴みたいなイメージで作ったし、名前もそれに合わせてみようか? 『守護者セリアルティレーヴェ』なんてかっちょよくない?」
おー! それはカッコいいです! アルティレーネ様が『守護者』を見てニコニコしてる横でティリア様が見た目に名前が合ってないって言えば、即座にアリサ様が素敵な名前を提案してくれました。『守護者セリアルティレーヴェ』はきっと『セリアベールの街』をしっかり護ってくれる事でしょうね!
「──と、言うわけ。ユグライアは反省して?」
「は、はい……スンマセン」
「お前って意外と人の目を気にするよな? 俺達は別にその可愛いぬいぐるみ人形を持っていても笑いはせんぞ?」
「豪快に見えて、変に恥ずかしがり屋なんだから……」
フリフリ~♪ そしてお話は今に戻るんですけど、お部屋から『あるちぃ』ちゃんを持って、戻って来たゼオンさんは、レウィリリーネ様に叱られて、各ギルドの代表者さん達からもちょっと呆れられちゃっていますね♪ 『あるちぃ』ちゃんはそんなみんなに可愛く手をフリフリしてて可愛いです!
「じゃあ実際に『セリアルティレーヴェ』を呼び出して見よう~♪ 訓練場ってのは何処なのユグラっち?」
「ああ、はい。案内しますぜ、でも結構なデカさありますよね『セリアルティレーヴェ』って? 住人が騒がねぇかな?」
「ん。大丈夫、隠蔽かけるから」
おお~! 実際に呼び出すんですね? ゼオンさんはフォレアルーネ様に言われて訓練場に案内しようと席を立ちますけど、街の真ん中にあんなに大きな『魔装巨人』が出てきたら住人達がびっくりしちゃうんじゃないかって、ちょっと不安気です。でも、レウィリリーネ様が隠蔽魔法をかけてくれるそうなので、一安心。私達は全員で、冒険者ギルドの訓練施設へと向かいました。
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【不思議な踊り?】~呼び出し方~《ゲンview》
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凄い……凄すぎる……俺は促されるままに、冒険者ギルドの廊下を訓練施設に向かって歩いているのだけど……沢山の情報が一気に入ってきて、正直理解が追い付かない! 女神様だけでなく、『神狼フェンリル』様に、『黄龍』のシドウ様にお会いできただけでもとんでもない事なのに……
北の広大な大陸を治める『ルヴィアス魔導帝国』の皇帝ルヴィアス様が実は魔王であった事とか、そのルヴィアス様が陰ながら女神様達を助け、『セリアベール』との友好の礎を築いた事とか、他の魔王が近々復活する事、それに対抗するべく皆さんが動かれていること。何もかもが寝耳に水で、終始驚愕しっぱなしだ。そして今……
「おぉ、十分な広さだね! ここなら問題なく『セリアルティレーヴェ』を呼び出せるよ!」
「ん。じゃあ早速隠蔽かける」
到着した冒険者ギルドの訓練施設。フォレアルーネ様はその広さを見て、『守護者』を呼び出すのに十分だと微笑まれておられる。レウィリリーネ様は淡々と隠蔽魔法を行使し、他者に感じ取れないようにした。
「あの映像の『守護者』を実際に目にすることが出きるのだな……」
「私、なんかワクワクしてきちゃった! ほら、ゼオン早く!」
「ああ、それでこの『あるちぃ』をどうすればいいんです女神様?」
各ギルドの代表の方々は、皆さん少し興奮気味で、『守護者』を実際に見れる事が嬉しいようだ。呼び出す方法を女神様に訊ねるゼオンさんも、やや瞳が輝いているから、結構楽しみなのだろう。
「ふっふっふ。『守護者』を呼び出すには、ユグラっちがある儀式をしなくてはいかんのだよ!?」
「ぎ、儀式ですか? フォレアルーネ様、そいつは一体……?」
レーネ様を模したぬいぐるみ人形『あるちぃ』を手に、ゼオンさんがフォレアルーネ様の言う儀式とは何かを問う。
「それはね、『あるちぃ』をこう置いて~いい? よく見ててよ?」
フォレアルーネ様はゼオンさんからその『あるちぃ』を受け取り、地面に置くと俺達に真剣な目を向けてくる。それだけ重要な儀式なんだろう、皆固唾を飲んでフォレアルーネ様の動向に注視している。
「あ、そーれ! あるちぃあるちぃラブリーラブリー♪」
……え?
「きゃわわきゃわわ♪ まちーがピンチだたっすけてYO♪」
ポカーン……あ、あのぉ~その不思議な踊りは一体……?
「ハート贈るよ♪ 受け取ってぇ~ラブリーあるちぃきゃわわの、わっ!!」
ぺカーン。
地面に置いた『あるちぃ』と向き合い、ゆらゆら身体をくねらせ踊るフォレアルーネ様は、仕上げの掛け声と一緒に手でハートを作り、とても満足そうなお顔をされておられるのですが……
「さ、ユグラっち。同じようにやってみ? ちゃんと魔力とアルティ姉だーいすき♥️ って気持ちと、街を護りたいって気持ちをこめて踊るんだよ?」
「……う、ウソだろ?」
ダラダラダラと、フォレアルーネ様の説明を聞いたゼオンさんの脂汗が凄い……バッと、この場に集まった他の各ギルドの代表者の方々に顔を向けるものの、サッと誰もが顔を逸らして目を合わせようとしなかった。すみませんゼオンさん……俺も無理ですから! 手が狼のそれなんでハートが作れません!
「ほ! 他に方法はないんですかい!? 今の踊りを俺が……!? 無理でさぁ! 死刑宣告に等しいですぜ!?」
「ゼオン、口調が『誉』時代に戻ってるぞ?」
「うるせぇディンベル! オメェ代わりにやれ!」
嫌に決まっとろうが! ギャーギャー!! と騒ぎ出すゼオンさんとディンベルさんです。気持ちはわかります、先の踊りは俺達にとってハードルが高すぎる……
「あっはっは!! いやぁ~おっかしいったらありゃしないねぇ~プフフ♪」
「フォレア、その辺にして。みんなも静かに。ん、今のは妹の悪ふざけ」
ええーっ!!?
「ごめんごめん! みーんな真面目くさった顔して聞くもんだから、ちょーっとオチャメしたくなっちゃったんだ~ゆるしてね☆」
テヘペロ~♪ と言って、ご自分の頭を軽く小突くポーズをして、ウインクしつつ小さな舌をお見せになるフォレアルーネ様。レウィリリーネ様の仰ったようにちょっとしたイタズラだったそうです。
「ひ、人が悪いですぜフォレアルーネ様! 危うく俺はなんかを失うとこでしたよ!?」
「フォレアルーネ様ったら、即興の踊りまでして~どれだけイタズラするのに余念がないんですかぁ?」
救われた! と、言わんばかりに表情を明るくするゼオンさん。フォレアルーネ様のイタズラ好きにやや呆れ気味のリールさんを始め、皆がはぁ~っと大きなため息をついたのでした。
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【セリアルティレーヴェ】~三人合流~《デュアードview》
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ブウゥンッ!! ビュオンッビュオンッ! ジャギィンッ!!
身の丈十七~十八メートルはある巨体の騎士が、剣を振り、盾を構える。その動きは熟練の騎士……いや、かなりの達人のそれとわからせるものだ。やや、その動きにアイギスの影が見え隠れするのは……この『セリアルティレーヴェ』の作者がアリサ様だからだろう。
「「「うおおおぉぉっ!! す、凄いぞ!」」」
「「これは正に『守護神』に相応しいわね!」」
各ギルドの代表者達もこれには大興奮だ。ああ、確かにこの『守護者』が『セリアベール』を護ってくれるなら、俺達も安心できる。
「なるほど、『あるちぃ』に魔力をこめて呼び掛けるだけでいいのか。んでも、こいつは秘密兵器って扱いにした方が良さそうですね?」
「ん。基本の護りは『聖域』から来る冒険者候補達と、ビット。手が足りないようなら指揮をエミルか貴方、そう、ディンベル。に任せてラグナースとユグライアが出ればいい」
改めて、『セリアルティレーヴェ』の呼び出し方を女神様に教えてもらったゼオンが、その運用についての考えをレウィリリーネ様に確認しているな。確かに……いくら頼もしい『守護者』とはいえ、使わずに済むならそれに越した事はないからな。
「よーし! 元に戻ってくれ、『セリアルティレーヴェ』!」
ピタッ、ササッ!
ゼオンが呼び掛けると、『セリアルティレーヴェ』はピタリと動きを止め、剣を鞘……にもなっている盾に納め、俺達に対して敬礼をしてシュウゥンッと光を放って収縮し、元の『あるちぃ』の姿になった。……ううむ、アリサ様とレウィリリーネ様の魔装具技術は簡単に俺達の理解を超えて行くな。一体どういう仕組みだ?
パチパチパチパチーッ!! わーわー♪
いいもの見せてもらったと各ギルドの代表者達も拍手喝采だ。やれやれ、浮かれてばかりもいられないだろう? まだ『魔装戦士』の襲撃に対する策は半分なんだぞ?
「待て待て、静まれ皆の者。これがアリサ様のお考えになられた策の一つである」
「うむ。ラグナースの奴が共を連れて今一つの策を設置しておると言うたじゃろう? そちらも忘れてはならんぞい?」
リン様とシドウ様も沸き立つ皆に、策はもう一つあるのだと、思い出させるように告げると、皆「そうでした」と、落ち着きを取り戻した。
「そろそろ戻って来る頃かもしれん、どうする? 部屋に行くか?」
「あー、今の『守護者』の呼び出しで、ラグナースがここだって気付いてんだろ? ここで待ってりゃすぐ来るんじゃねぇかな?」
バルドがさっきまでの部屋に戻るかどうかを聞くが、セラがラグナースならレウィリリーネ様の隠蔽魔法の発動を感じて、この訓練施設に来る筈だと予測する。ああ、確かに俺達と一緒に『無限円環』での訓練を乗り越えたアイツなら感付くだろう。
「そうだな、ラグナースは人一倍魔力の動きに敏感だしな。ちっと待ってみっか」
そうなのだ、なんせ誰よりも早くに『死の悟り』を発現させたのが、他でもない、ラグナースだったからな。それからはやたらと魔力の動きに対し反応を反すようになり、果てにはシェラザード様やアリス殿の隠蔽静謐魔法すら見破り回避するほどだ。
「ラグナっちは万能型になったけど、やっぱその危機感知は秀でてるよね~?」
「ホントですよ……彼が模擬戦の相手に回った時は私達スペルユーザーの全員が「うわぁ~」ってなりましたもの……」
「白兵戦、でも……ラグナースに攻撃を当てるの、苦労する……」
アリサ様の『無限円環』内で俺達全員が模擬戦を行っていたのは、知っていると思うが、その中で皆に、「敵に回したくない」と思われてた者が数人いた。
ラグナースはその中の一人で、ゼオンが言ったように、魔力……魔法に対し特に敏感で、他にも今フォレアルーネ様の指摘通りとにかく危機感知能力が高く、魔法を避けシェリー達魔法主体のスペルユーザーを泣かせ、俺達フィジカルアタッカーの攻撃もやたらと避ける。終わって見れば最後まで生き残っていたりして、そのダークホースっぷりを見せ付けたのだ。
「お前達、一体どんな訓練してきたんだ?」
「まったく、数日離れた一介の商人が、どうやったらそんな力を持つに至るのだ?」
はは、まぁ……理解はできないだろうが、事実だから仕方ない。話を聞いていた各ギルドの代表者達も信じられない面持ちだ。その気持ちはわからなくもない。
「あ、ほらエミルさん、デールさん! 皆さんいらっしゃいましたよ?」
「ほ、本当だ! ら、ラグナースさんの言った通り訓練施設に皆さんが集まってますよ! デールさん!?」
「はぁはぁ、ちょっと……君達、待ってくれたまえ。私はそんなに体力がないんだよ……」
おお、来た来た。セラの予想通りだったな、流石ラグナースだ。エミルの口振りからして、やはりラグナースがレウィリリーネ様の隠蔽魔法を感じ取ったんだろう。後ろで息を荒くしているデールは……まぁ、仕方ないか。
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【すいっちょんくん】~無敵♪~《ラグナースview》
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「……どんなに小さかろうが、どんな感情だろうがさ? そこには必ずエネルギーが発生するじゃない?」
ある日の『無限円環』での一幕。僕達にちょっとした世間話のような感覚でアリサ様は話されました。
「ちょーっと歩く。ちょーっとしゃべる。ちょーっと怒る、笑う、泣く。行動から感情の発露まで、そこにはエネルギーが発生してるんだよねぇ」
「ええ、そうね。「走り疲れた」「泣き疲れた」なんて言葉はそのエネルギーが使われたからだものね?」
「シェラザードもゲームのボスにこっぴどくやられて叫び疲れてたもんな?」
ちょっとゆかり! 余計なこと言わなくていいの! と、一緒にお話を伺っていらしたシェラザード様にゆかり様のやり取りがあったりもしましたけどね。
「そこで私はこんなの造って見ました! 『すいっちょんくん』だよ!」
「アリサ様……どうして我等の名はまともにつけるのに……いや、なにも言うまい」
そうしてアリサ様がミーにゃんポーチから取り出したのは、一枚の皿。その名を『すいっちょんくん』と言うのだそうです……ユナイトさんが呆れていますが、僕は面白いと思いますよ? 独特のセンスで名前がつけられた商品は人の目にも留まりやすく、印象に残りますからね。アリサ様はひょっとすると商売の才能もおありかもしれません。
「はい、今のシェラザードの怒りのパァワァーもほれ、この通り『すいっちょんくん』はしっかり受け取ってくれるのだよ」
キラキラー☆
アリサ様の言葉に僕達はその皿、『すいっちょんくん』を覗きこみました。そこにあるのは小さな光の粒子でしょうか? キラキラと輝いていて綺麗ですね。
「普通ならエネルギーなんて目に見えないし、あっという間に霧散しちゃうから、ゆかりがシェラザードに怒鳴られても私達に影響なんて及ばないよね?」
そんな僅かな。ですが何処にでもある小さなエネルギーも、そして、戦いにおいて周囲に及ぼすであろう大きなエネルギー。それを総て利用してすんごい結界を作るのだ! と、アリサ様は教えてくれました。
「でもアリサ、その回収されるエネルギーには、指向性がついてしまっている筈だわ、最初に言った喜怒哀楽の感情による、ね? これは魔法で言うところの属性みたいなものでしょうし、そのままじゃ使い道は限られるんじゃないかしら?」
「そうなのよシェラザード。そこで登場するのが私の『貯槽』ってわけ♪ ほい」
怒りのパワーとか、哀しみを力に~とか、ふむ……確かに耳にした事がありますよシェラザード様。それが指向性と言う訳ですね? それにお答えするアリサ様は魔法で「携帯ゴミ箱」と言っている、『貯槽』を発動させて、『すいっちょんくん』に受けた先程の光の粒子をポイっと入れました。
「知っての通り、この『貯槽』に物入れると、なんでもかんでもぜーんぶ純粋なエネルギーになるんだよね。だからさ、『すいっちょんくん』で受けた指向性を持ったエネルギーも、まっさらにしてくれるの。……これ、結界にしたら凄くない?」
「それは凄いですアリサ様! どんな攻撃も無効にしたうえ、そのエネルギーも吸収してしまうなんて! え? これ、無敵では?」
と、とんでもない! これはとんでもない事ですよ!? もし実現できれば……ゆかり様も驚いていらっしゃるように、正に無敵です!
「……はぁ、アリサ様は、どうしたらそんなとんでもない事を思い付いてしまうのだ? 我には思いもよらぬのだが?」
「ん~着想は最初からあったのよ? 覚えてるユナイト? あんたが私の『神の護り手』を破る手立てがない~って言ってた時、私はその他に二つの護る手段を考えてたんだ。一つはアルティと同じ『因果関係の書き替え』、そしてもう一つがこの『すいっちょんくん』で吸いとっちゃえ! って考えね? まぁ、その時は形にできてなかったんだけどさ」
「そんな以前からか……いや、まったく恐れ入る……」
ユナイトさんとアリサ様が出会ったのは、アリサ様が転生してまだ間もない頃と、伺っていますが、そんな初期の頃から考えていらしたとは、その慧眼に頭が下がる思いです。
「そんな大層なもんじゃないって。単にさ、こわいのイヤだなぁ~って、臆病な面が出てるだけだよ。特に最近は大事な人達も増えて、守りたいって気持ちが大きいし……傷だらけの『ユーニサリア』も癒したいから、この『すいっちょんくん』をもうちょっといじってしっかりした物にするよ」
臆病……確かに見方によってはそう見えるのかもしれません……ですが、僕達は誰も、アリサ様を臆病者だなどと思いませんし、思えません。それは、今、アリサ様が仰ったように「誰かのため」に動かれているから……「守りたい」と言うお気持ちが汲み取れるから。それをどうして臆病などと言えるものですか。
「……そうして、完成したのが、『栄光の世界樹』です」
「「「『栄光の世界樹』!!?」」」
そう、皆を想い護ろうとするアリサ様のお心が、遂にこの究極の結界を完成させました。それはとても優しさに溢れたもので、アリサ様の慈愛の心を体現したかのような効果なのです。
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【世界樹に】~栄光を~《ゼオンview》
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「ん。簡単に言うと……『すいっちょんくん』で吸収したエネルギーを『貯槽』に送り込んで、純粋なエネルギーに変換して龍脈に流すって仕組み」
「龍脈に流されたそのエネルギーは『世界樹』……ゆにゆにの元に流れていって~『世界樹』の持つ自浄作用を強めてくれるんだ」
はは、こいつはすげぇ……乾いた笑いしか出ねぇぜ。確か、アリサの嬢ちゃんは『魔神戦争』で受けたこの世界の爪痕を癒すって事も、アルティレーネ様達、女神様から依頼を請けたとは言ってたが……俺はてっきり、これから復活するだろう魔王共との決着を着けた後に、ゆっくりと時間をかけてやってくもんだと思ってたんだよな。しかし、今のラグナースとレウィリリーネ様、フォレアルーネ様の説明でわかった。
「戦では大きな力が動く。さすれば当然世界が受ける傷も大きくなろう……」
「あの魔女めはそれを良しとせなんだ、少しでも傷を和らげ、少しでも癒そうとする、慈愛の心が見えよう?」
リン殿とシドウ殿の言葉を俺達は全員真剣な面持ちで聞く。本当にお優しいこったぜ……ここまでされちゃあ是が非でも『セリアベール』を護りきらねぇとなんねぇな。でねぇとアリサの嬢ちゃんに顔向けできなくなっちまう!
「滾ってきたぜぇ~女神様! その『栄光の世界樹』はどうやって使えばいいか教えて下せぇ!」
「ふふ、僕も気持ちが昂って来てしまいました。魔王の復活何するものぞ! ってね?」
「ああ、私もだ! まるで『誉』時代に戻ったような気さえしてしまう。絶対に護り通そう! 私達の未来のために!」
オオオォォーッッ!!!
へへ! 皆も気持ちは同じみてぇだぜ! エミルもデールも、他の奴等も雄叫びを挙げて気概を示してる。俺達は絶対にアリサの嬢ちゃんの心遣いを無駄にはしねぇ!
「うん! みんなその意気だよ! じゃあ『栄光の世界樹』の起動方法を教えるね? はい、ユグラっちこの紋章彫られたメダル持って!」
「方法は簡単。このメダルに魔力をこめればいい。但しユグライアの魔力じゃないと駄目。メダルに彫られた紋章がユグライアの魔力を感知すると、ラグナース達が街の四方に設置した『すいっちょんくん』が起動する」
皆の気概に機嫌を良くしたフォレアルーネ様が、俺に手のひらサイズのメダルを手渡してきたんで有り難く受け取って見てみれば、それは見事な紋章が彫られたメダルだったぜ。しかもレウィリリーネ様の説明を聞けば……ほっほお~なるほど『守護者』にしろ、この『栄光の世界樹』にせよ、俺のユグライアとしての魔力が鍵になるのか? それなら悪用されることもねぇだろうが……
「ゼオンがかなり重要なポジションにいるな?」
「元より陛下は『セリアルティ』復興になくてはならぬお方。その御身をお護りするために私がおります。どうぞご安心下さい」
そうなんだよな。今のバルドの台詞じゃねぇけど、俺の立ち位置ヤバくねぇか?
いや……ビットさんの言った通り俺は『セリアルティ王国』復興の旗印になるって決めたんだ。こんなプレッシャーなんかにビビってたら偉大な祖先達に笑われちまうぜ。
「頼りにしてますぜビットさん! それと……お前らもな? 一緒にこの難局を乗り越えて、『セリアルティ王国』を復興させようぜ!」
「うんうん。『セリアルティ王国』が復興すればアルティ姉も喜ぶよ! 頑張って『セリアベール』のみんな!」
「ただ、一つ注意。『栄光の世界樹』はその結界内部には影響を及ぼさないから、もし侵入されたら自分達で対処してね?」
うおっしゃあぁぁーっ!! 了解ぃぃーっ!! 任せろゼオン!
ははは! まったく、頼もしい連中に囲まれて俺は幸せ者だぜ。俺のかけ声に、フォレアルーネ様の応援も相まって『氾濫』の防衛戦の時くれぇに士気が高まったぜ! レウィリリーネ様の注意もあるし、これからその結界を発動するタイミングだのなんだのを話し合って決めねぇとな!
「よっしゃ! これで大体は伝え終わったんだよな女神様? 街に繰り出そうぜ~♪ アタイ案内すっからよ!」
「ああ、『ファムナの村』には明日に出発すればいいだろうからな。どうです女神様方、折角ですしこの街を見てやって下さいませんか?」
おお、そうですそうです! 是非滞在していって下さい女神様方! って、セラとバルドが『聖域』から来た皆さんへの提案に、他の奴等も大手を振って賛成している。『聖域』からこの『セリアベール』に来て、早々に俺達の相手してもらったからな。後はゆっくりと街を楽しんでもらいたいってのは俺も同じ気持ちだな。
「うん! そうさせてもらうね♪」
「アリサお姉さんと珠実、アルティ姉さんも見たって言う「すらむ」に行きたい。ゲン、案内して?」
「は、ははい!! 俺、あ、いや! わ、私でよろしければ!」
タジタジだなぁ~ゲン? 『聖域』でも女神様達はスラム。今は『学区』だけどな? その話をアリサの嬢ちゃんと、アルティレーネ様から聞いて興味持ってたんだぜ? 案内してやってくれ、リン殿とも色々話するチャンスだろうぜ?
「ふふ、スラム改め『学区』に行かれるなら、私もお供しましょう」
「えー!? やだぁ~デールさんよぉ♪」
「きゃー! お尻撫でられちゃーう! レウィリリーネ様、フォレアルーネ様離れて~?」
わははは! なんか懐かしいなこのやり取り♪ 今や『教育ギルド』のマスターのデールが同行するって言えば、リールとフォーネの二人が楽しそうにからかい始めたぜ。この二人もだいぶ過去の傷が癒えてきたみたいでよかったってもんだ。
「ほっほーう♪ キミがウワサのデールくんか! よくもうちの大事なりるりるのお尻を触ったなぁ~?」
「……ん。フォーネのも触ったって聞いた。覚悟、できてる?」
「はっはっは! そうですとも! 私が撫でさせて頂きましたよ。お二人の可愛らしいお尻も撫でさせて下さいますかな?」
デールの野郎開き直りやがった! 女神様二人に睨まれて動じねぇどころか、こんな反しができるあたり大者だよなぁ~? まぁ、睨んでるっつても顔が笑ってるから、女神様二人も怒ってる訳じゃねぇんだろう。
シェリー「デールさんにお尻触られたことなんてもう結構昔だわ( ´~`) なんか懐かしいわね(*´・д・)」
ミュンルーカ「ワタシも『黒狼』に加入する前に触られたことありますよ?( ´ー`) 同じく結構前の話ですねぇ(*´艸`*)」
ミスト「私はつい最近に!(。・`з・)ノ 「将来が楽しみだ」なんて余計なお世話です!ヾ(*`⌒´*)ノ」
フォレアルーネ「ほほーう?( ̄0 ̄) 中々に剛の者じゃないのん、お尻撫デールくんや(*`艸´)」
シドウ「ミストちゃんのような幼子にまで手を出しよるか(;´д`) やりおるのぅ、儂も倣わねばな!(*´∇`*)」
リン「倣うな(´-ω-`) またアリサ様にど突かれるぞ?(-""-;)」
フォーネ「この『セリアベール』の冒険者の女の子は大半撫でられてますよね?( ̄▽ ̄;)」
リール「逆に撫でられたことない人見付ける方が難しいくらい?(*`▽´*)」
レウィリリーネ「まさかと思うけど、アリサお姉さんのお尻も狙ってる(´・ω・`)?」
デール「ははは(≡^∇^≡) いやいや、一度こっぴどい目に会いましたからね(´∀`;) 彼女に触れるのは諦めましたよ┐('~`;)┌」
ゼオン「賢明だぜ?(^∇^) もし今も狙ってるならアイギスがブチギレしてブッ飛ばされるだろうからな(^∀^;)」
フォレアルーネ「うちさ~結構お尻には自信あんだけど(*>∀<*) どーよ?( *´艸`)」
レウィリリーネ「……あたしが叩いてあげる、えいっ!┌(`Д´)ノ」
フォレアルーネ「いたぁーいっ!(>o<") もー! なにすんのレウィリ姉!?o( ゜Д゜)o」
ディンベル「ははは(´▽`) こうして見ると普通の姉妹にしか見えませんな?(^ー^)」
ギルド代表者達「親しみやすい女神様でよかった(´・∀・`)」




