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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
114/211

102話 珠実とココノエ タコ焼きと学校

にゃるろって「うにゃにゃ~ん(’-’*)♪」

アリサ「あいあい(*´∇`*) やりますよぉ~♪(ノ≧▽≦)ノ」

アルティレーネ「皆さんのお陰で先日、ユニークアクセスが四万を越えました(^ー^)」

レウィリリーネ「ん……更に連載も二周年をむかえることになる( ・-・)」

フォレアルーネ「いやぁ~早いもんだよねぇ~( ゜□゜)」

ティリア「もう二年経ったの!?Σ(´□`ノ)ノ ってびっくりよ( ̄▽ ̄;)」

にゃるろって「にゃう~♪ヾ(・ω・ヾ) そんなわけで今日から三日間(´・∀・`)」

アリサ「本編→閑話→閑話と連続投稿しまーす!ヽ(*´∀`*)ノ」

ユニ「それではまず本編の続きをどーぞヾ(・◇・)ノ」

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【出会い】~なんじゃコヤツは?~《珠実view》

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「なんじゃお主は? 何故このような場所におる?」

「…………? わからない……なにも……自分は……誰? ここ……何処? あなた……誰?」


 あれから……一体幾日の月日が流れたのじゃろうか……女神共が顕現することを封じられ、アーグラス達が魔神と相討って……妾は今日も勇者達の墓を参ってきた。

 麗しく咲き誇る花も、生い茂る木々も草原も、清涼なせせらぎを見せていた河川も……今や総て度の超えた魔素に冒され禍々しい瘴気を放つまでに毒々しく変貌してしもうた。

 『四神』も『懐刀』も……他の者達も負った傷は深く、療養のため、自分達の棲処等に身を潜めひっそりと暮らしておる……中でも鳥達は苦労しとるようじゃ。そもそもが空を駆ける事を生業とする者達であるにもかかわらず、一度空に上がれば、呪われた『世界樹(ユグドラシル)』から容赦ない攻撃に曝されてしまうのじゃ。


「地上でも目立つ動きを見せれば、あの葉に貫かれるぞ? とりあえず妾の棲処に案内してやるでな、着いてくるがよい」

「……呪われた……『世界樹(ユグドラシル)』……? 全然……わからない……」


 妙な娘じゃ。なりは『狐人(フォクシズ)』の幼子でありながら、その瞳には深き知性の光が宿っておる。奇怪なのは妾にも読めぬその心情、何故か其奴を避けて行く魔素霧。


「貴女は……?」

「妾は『九尾』この世界の創造主たる女神共の『懐刀』の一人じゃ」


 そう妾が答えてやると其奴はやはりわかっておらぬようで、きょとんとした顔を見せよる。


「……私? あたし……? 違う……んん? 『僕』? ……は、誰だろう? 九尾ちゃんはわかる?」

「なんじゃぁ~? そんなもん妾が聞きたいわ! それに馴れ馴れしいぞ無礼者が、『九尾様』と呼ばぬか!」


 人懐っこい……なんなのじゃこの小娘は? 初対面の妾に臆する事なく「九尾ちゃん」などと呼びおってからに! じゃが、中々に興味深い娘じゃ。なにゆえその心が読めぬのか、魔素霧が避けるその秘密は何か? 妾は気になって仕方がない。


「まぁ、よいわ。お主、記憶を無くしておるようじゃのぅ? では行く宛もあるまいて? どうじゃ、妾と共に来るか? 多少の世話なら焼いてやろう」

「わぁ! いいの!? ありがとう九尾様! すっごい助かるよぉ~♪」


 まったく……呼びは改めたようじゃが、馴れ馴れしいのはそのままじゃな。……しかし、不思議と不快感はないのぅ、それに妙な感覚じゃが、どうにも他人とは思えぬ。はて? 妾の知らぬ内に何処ぞで出会っておったのかのぅ? なんにせよこやつの明るさの前でなら沈んだ気持ちも前向きになりそうじゃ。


「して『狐人(フォクシズ)』の娘よ、記憶のないお主に訊いても詮なき事やも知れぬが、一応訊こう……名はあるのかえ?」

「九尾ちゃんて難しい話し方するね?」


 あ! こやつ、また妾をちゃん付けしおった! うぬぬ、しょうのない奴じゃ! 叱ってやらねばならん!


「これっ! 様と呼べと言うたじゃろうが? いいんじゃぞ~このままお主を放って置いて帰ってしもうてもなぁ~?」

「やぁだぁーっ! そんな意地悪しないでよぉ~! ちゃんと謝るから、ごめんなさい九尾様!」


 妾がちょいと叱ってやれば、わぁーんと喚き散らして泣きついてきよる童じゃ。まったく、注意されたらちゃんと直さんか。


「だってぇ~九尾様だって小さいじゃない? 僕より背低いし~?」

「たわけ者! 見た目で人を判断するでないわ! 妾はあえてこの姿でおるのじゃ」


 おのれこの小娘、背丈など妾と大して変わらぬクセに生意気を抜かしよる! まぁ、妾も誤解される容姿じゃから仕方のない事ではあるが、何故かこやつに言われるとイラっとくるのぅ!


「そ、そうなんだ……えへへ、ごめんなさい。それで、僕の名前だっけ? さっきから思い出そうとしてるんだけど、やっぱりわかんないや」

「ふむ、まぁ焦る事はあるまいて。名を付けて区別するのは『人間(ヒューマン)』共が主じゃし、人里で暮らす『亜人(デミヒューマン)』ならともかく、それ以外は稀じゃぞ?」

「え~? でもでも、やっぱり名前がないと不便だよ! よーし、じゃあね~九尾様の尻尾にあやかって、『ココノエ』って名乗るよ!」


 よろしくね九尾様! ……なんとまぁ、無邪気に笑いよる娘じゃ。

 なにゆえ妾の尾を見て『ココノエ』となるのか? 結局聞かず終いじゃったが……

 ともかく、妾とココノエの出会いはこんな感じで始まったのじゃ。


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【タコパ♪】~ココノエって何者?~《アリサview》

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「それから長いことココノエの奴には何かと仕込んでやったのじゃが……ちと不思議な事があってのぅ……」


あむちょ! あふあふっあちち! あむちょあむちょ……あっちっちぃーっ!


 ここは『セリアベール』の街のスラム街。私とにゃるろっては、冒険者ギルドで上手いこと黒フードの一味と思われる『虎人(ワータイガー)』のガッシュを、にゃるろっての『ゲキテウス王国』行きの護衛につかせる事に成功して、明朝の出発ってとこまで漕ぎ着けた。

 同行する『猫兎(キャットラビット)』の面々は旅の準備をするため、この『セリアベール』の街のお店を回っているだろう。それで、私達は先にスラム街に来ていたアルティレーネと珠実に合流し、ゲンちゃんを始め、スラムの子供達とその住人達から厚い歓待を受け、たこ焼きパーティーの最中だ。


「すげぇぇーっ!! この木屑動いてる!!」「わぁぁーっ!? なにこれぇー!?」

「まさか生きてるの!?」「あぁ~でもでも凄くいい香り!」


 あむちょ! あふあふっ! んーっ! うまい!!

 外はカリっと、中はとろ~りふわふわに仕上がったたこ焼きのうまいことうまいこと!!

 スラムのお子ちゃまや住人達はさっきから何を騒いでるのかと言うと、熱々のたこ焼きに乗せられたかつおぶしが熱でへにょ~んってなるのを見てるからだ。


「このソースの香ばしい匂いがまた食欲をそそりますね! 馴れればこのかつおぶしも面白い!」

「ふふふ、お嬢さん(フロイライン)の作る料理はどれも素晴らしいね!」

「この専用の鉄板、俺達にも作ることが出来れば……鍛冶屋共の伝手を巡って見るかぁ~?」

「ん~? ディンベルのおっちゃん、たこ焼きプレート作らせるの? なんなら見本で一つあげようか?」


 でもって一緒にたこ焼きを楽しむのがスラム街の代表者の『人狼(ワーウルフ)』のゲンちゃん、アイギスとバルドくんの先生だったデールのおっちゃんに、商業ギルドを束ねるディンベルのおっちゃんだ。


「マジか!? 有難い、是非頼む! ははは、これでミリアにどやされずに済むってもんだ!」


 どうやらディンベルのおっちゃんは仕事を秘書のミリアさんに押し付けて来たらしい。

何しとるんじゃい? 後でこっぴどく怒られてしまえ。


「……おぉぉーい? アリサ様や~聞いとるのかのぅ~? 妾今結構大事なこと話したと思うんじゃがなぁ~?」

「にゃん! ちゃんと聞いてるにゃよ?」

「あらあら~♪ 『にゃるろって』ちゃんはちゃんとお話が聞けて偉いですね? ね、『にゃるろって』ちゃん?」


 なんぞ珠実が私に向かって、「ココノエの話してたのちゃんと聞いてたのか?」って、確認してくるんだけどさ。にゃるろっての方でしっかりと聞いていたから、私はおっちゃん達の相手してたのよ。たこ焼き焼きながらね。

 ほら、『並列意思』があるし、にゃるろっては『遍在存在』の私なわけだし、ちゃんと話は聞いてたし、理解もしてるんだけど、それをにゃるろっての方で返事すると、珠実はちょっとあきれた顔になり、アルティレーネはやたらと『にゃるろって』を強調してくるんだよね。なんなの一体?


(アリサお姉さま……今はにゃるろってちゃんと同一人物であることは伏せているでしょう?)


 あっ! やべ……そうだった……すっかり忘れてたよ! そうだった、念を入れてデールのおっちゃんやディンベルのおっちゃん達にも内緒にしておこうって打ち合わせしといたんだった。何処から情報が漏れるかわかんないからね。


「ごめんごめん、ちゃんと聞いてたわよ珠実。おそらく『ココノエ』ってのはこう、『九重』って書くんだと思うわ。九つに重なる貴女の尾からそう名付けたんでしょうね。

 それで、不思議に思うことってのは何かしら?」

「ほう、知らぬ文字じゃな……なるほどのぅ~故にあやかってと言うておったのか。

 ああ、それで、不思議と思うた事はじゃな、あやつの寿命じゃよ」


 書けるかなって思って地面に木の枝使って、前世での文字を意識して書いてみたらちゃんと書けた。私がこの『ユーニサリア』に転生して、妹達が気を利かせて自然と『共通言語(コイネー)』を書けるようにしてくれたけど、意識すれば前世の言語もちゃんと書けるらしい。


「勇者と魔神の戦いは今じゃお伽噺として伝わってるくらいの、謂わば『伝説』とも言えるほど大昔の話だよお嬢さん(フロイライン)?」

「うむ。『エルハダージャ王国』を治める女王『ココノエ』と、珠実様の仰る『ココノエ』が同一人物と考えるには時が経ちすぎてはいまいか?」


 デールとディンベルのおっちゃんズも話を聞いていて、『エルハダージャ王国』の女王も『ココノエ』と言う名前なのは知っていたんだよね。まぁ、デールのおっちゃんはゼオンやその『ココノエ』と一緒に『誉』ってパーティー組んでたから知っててもおかしくはないか。


「……どうかしら? 私達の間じゃ『不死』とか『不滅』持ちってそう珍しくないのよ? 珠実が不思議がっているのは『ココノエ』がどうしてそれを持っているのかってことでしょう?」


 おっちゃんズは珠実の言う『ココノエ』と、『エルハダージャ王国』の『ココノエ』は流石に別人だろうと、年月の流れを根拠に言うけど、必ずしもそうとは限らない。


「うむ。その通りじゃ、先にも言うたが、あやつにはそれなりに仕込んでやったのじゃが、長いこと老いもせず、小娘の姿を保っておったでな、『不死』か『不滅』持ちであるのはわかったのじゃが……」

「問題は何処でそれを身に付けたのか? と言う事ですか珠実様?」


 そうじゃ。と、ゲンちゃんの言葉に頷く珠実だ。ふむ、確か聞いた話だと『亜人(デミヒューマン)』達の寿命は種族にもよるが、総じて『人間(ヒューマン)』のそれよりも遥かに長いと言う。『狐人(フォクシズ)』であるなら、五~六百年は生きるらしい。

 珠実が出会った『ココノエ』は幼子らしい事を考えれば、おそらくだけど「身に付けた」というよりは、「身に付いていた」のが正しいのではないだろうか?


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【時の流れ】~目まぐるしい~《アルティレーネview》

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「ふむ、アリサ様はそう考えなさるか? 生まれながらにして『不死』または『不滅』持ちであると……では一体『ココノエ』は何処の生まれなのじゃろう?」

「……珠実は随分とその『ココノエ』が気がかりなのですね?」


 少し『ココノエ』に対する珠実の思い入れようは、悪く見ると執着のようにも見えてしまいますね。話を聞くに、確かに不可思議な出会いだとは思うのですが、そこまで固執するのはどうしてなのでしょう?


「それは……妾もよくわからぬ。じゃが、気になるのじゃよ。長年あやつの世話を焼いていたせいかのぅ、とても他人とは思えぬし、『狐人(フォクシズ)』と言うのもあってか我が子のように感じるのじゃ」

「にゃぅ? 『四神』のみんなみたいに感じるのかにゃ?」


 ふぅむ~です。たとえとうの昔に離れたとしても気にかけてしまうのですか? 珠実が情に深いのは知っていますけど、我が子のようにとは相当ですね。


「そう言えば『四神』達は珠実が小さい頃から育てたんだっけ?」

「ははは、なぁに、少しだけじゃよ? あの童共にはちゃんと先代……親御がおったでな。まぁ、水菜の奴は知っての通り『四凶』の攻撃から皆を護り、果ておった故、妾も気にかけておったがな」


 にゃるろってちゃんとアリサお姉さまに、そう苦笑いを返す珠実が少し寂しそうに見えるのは気のせいではありませんね。もしかして珠実は……


「珠実様がそこまで『ココノエ』様を気にかけるのは、単純に便りを寄越さないからですよね?」

「アイツは結構自分勝手だからねぇ~『誉』の時もアイツはイタズラばかりやらかして……」

「なんにせよ、『エルハダージャ王国』に向かわれるのであろう? そこで女王ココノエに会って真意を確かめなさるのがよろしかろう?」


 あはは、やっぱりゲンさんの言った通りですよね? 「元気にしているなら便りの一つくらい寄越してくれてもよいではないか?」と言うのが珠実の思うところと言うわけですね。

 デールが昔を思い出して、やれやれと肩を竦めますが、それはどこか、はしゃぐ子のイタズラやわがままをあたたかく見守ってきた親のそれのようにも見えます。

 珠実の知る『ココノエ』と『エルハダージャ』を治めていると言う『女王ココノエ』が同一人物なのかどうかは、ここで論議を交わしても答えは出ないでしょう、ディンベルさんの言葉通り、実際に『エルハダージャ王国』に赴き、会って話してみるしかなさそうですね。


「それにだ、便りと言っても、『魔の大地』との連絡する手段がなかったのではないかな? 当時、いや……何せつい先日まで『聖域』は魔素霧に覆われ近付く事もままならなかったのですからな」

「そーいや連絡手段って主に鳥使うんだっけ? そりゃ当時の『聖域』に近付くことなんて無理だわね。なんにしても『エルハダージャ』に行って見て確かめようよ? ほら、たこ焼き食べて元気出しなよ珠実♪」


 あーんむちょ。ディンベルさんが続けた言葉に相槌を打ったアリサお姉さまが差し出すたこ焼きを、珠実は一言「そうじゃな」と呟き、あーんして口に運んでもらい、「あちち! へもおいしゅいのじゃぁ♪」と頬張って、ようやく笑顔を見せてくれました。

 ……『エルハダージャ王国』と『ゲキテウス王国』の二大国家……私達女神の知らぬ間に立ち上がった二つの大国、ですか。本当に人の営み、その移り行く速さは私達悠久の時を生きる者にとって激流の如しです。


「ふふ、じゃあそろそろこのだし汁で食べてみるかね、皆の衆?」

「だし汁ですか? はて、ソースとは違うのですかアリサ様?」


 さてさて、ココノエの話はとりあえず置いておくとしまして、周りにも目を配って見ましょう。私達がいるのは『セリアベール』のスラム街ですが、以前『氾濫(スタンピート)』を解決するために訪れた時と違い、一つ大きな違いが見受けられました。それは住人達の服装です。お世辞にも衛生的とは言えない……言ってしまえばみすぼらしい服装だったスラム街の皆さんでしたが、今やそんな服を着た者は一人もいません。


「ほほう、このだし汁にたこ焼きをつけて食べるのか、どれ……ほう! これは、また美味いな!」

「本当だ! 同じ料理でもこうして味を変えて食べれば飽きにくくていいね!」

「うっまーいぃ!」「サイコー♪」

「私も作ってみたいなぁ~!」

「早く学校できないかな~? 俺アリサ様から料理教えてもらいたいぜ!」


 ふふふ、そんな今や普通の町人と変わらない服装のスラム街の住人達が、ゲンさんを始め、アリサお姉さまの振る舞うだし汁にたこ焼きをつけて食べると、それはそれは美味しそうにしています。ディンベルさんもデールもたこ焼きの味変を堪能して嬉しそうですね!


「……実はですな、『氾濫(スタンピート)』が解決したことにより、今まで防衛に割いておった予算が大きく浮いたのですぞレーネ様」

「まぁ、それは良いことですね!」

「ゼオンからの推薦もあってね……なんと、新設される『教育ギルド』のマスターとして私が任命されてしまったんだよ」

「おー! すごいじゃんお尻好きーのおっちゃん♪」


 素敵なお話です。ディンベルさんとデールから詳しく伺うと、この『スラム街』を改め『学区』として再建するのだそうですよ! 『氾濫(スタンピート)』のためにどうしても予算が回せず、必要最低限の支援しか受けられずにいたゲンさん達が綺麗で清潔な服装となったのも、その大幅に浮いた予算で新たに設立される『教育ギルド』の活動の第一歩なのだそうです。


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【愛弟子との誓い】~『セリアロッド学園』~《デールview》

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「デール。あの時ロッドに誓った言葉をここでもう一度言え」

「ああ。何度でも言おうじゃないか。私は亡き愛弟子ロッドの名に誓い、『一人でも多くの人を導いて見せる』!」


 ある日のことだ。私はゼオンに連れられ、各ギルドの代表者達の会合……言ってしまえばこの『セリアベール』を運営しているお偉方達の集まりに参加させられた。

 そこで私はまるで法廷の被告人の如く、各ギルドマスターの険しい視線に囲まれ、真剣なゼオンの声に、あの時の墓参りで邂逅した愛弟子、ロッドに誓った言葉を大きな声で重圧に負けず、高らかに宣言したのだ。


「……ふむ、嘘偽りなき強い意志を感じる」

「ええ、とてもあの『お尻撫デール』とは思えませんね」

「これは……決まりですな」


 そんな私の姿を見ていた各ギルドマスター達から、納得するような、頷くような仕草が見られた。ふむ、これは……何かしら新しい事を始めようとしているのか? そこに私が呼ばれ、まるで試されるかのような理由はおそらく……


「よし! 全員いいな!? 今後新設する『教育ギルド』! そのマスターをこのデールに任命する!」

「「「異議なし!!」」」


 っ!? やはりか! いやはや、予想できてはいたんだが……やはり驚きが勝ってしまうね。だが、臆する事はなにもない、寧ろロッドとの誓いを果たすための大いなるステージが与えられたのだから喜ばしいことだ! 否が応にも気分が高揚するじゃないか!


「最近は貴方にお尻を撫でられたと言う苦情も聞かなくなったわ」

「その裏には愛弟子との邂逅があったのだな……」

「デールが冒険者達に色々と師事してくれたお陰で、被害が少なくなった事は各方面から評価されているのだぞ?」


 これは耳が痛い……私の悪癖のせいだから自業自得なのだが、確かに最近は新人冒険者は勿論、スラム街の皆に基礎的な教育を施すため、自分自身の勉強に精を出す毎日なんだ。

 女性のお尻は当然大好きだが、それよりもロッドとの約束を果たす事が私の一番の生き甲斐となっているのでね。


「まず手始めに『スラム街』を『学区』と改め、『学校』の設立を目指す! そして第一段階として住人全員、子供を優先に九年間に渡る基礎教育を義務化するのを目標とするぜ!」

「おおっ!! 住人が知恵を身に付ければ『セリアベール』は益々発展するだろう!」

「今までゲンさん達『スラム街』の皆さんには苦労ばかりかけてしまっていたけれど……」

「ようやく彼等の街への貢献に報いる事ができますね!」


 こうして、各ギルドから教師となるべく人材が選考されることになり、その希望者も殺到しているとかなんとか。私も先に述べた勉強に、『スラム街』……いや、『学区』の皆とこうして交流を図りと、実に充実した日々を過ごしている。


「……特にここは珠実様が結界を張って下さった、ある意味神聖な場所ですからな。将来この『セリアベール』を……ひいては『セリアルティ王国』の未来を担う若者達の成長の場として相応しく思いました」

「なんじゃなんじゃ~♪ そう手放しで褒め千切られてはこそばゆいではないか。しかしそれならば結界を張ると言う案を出してくれたのはアリサ様じゃ、妾ではなくアリサ様に礼を言うべきじゃぞ?」


 ちょっとした回想をお嬢さん(フロイライン)と、珠実様、レーネ様にその身内の『人猫(ワーキャット)』の少女に話し、ディンベルがこの『スラム街』が選ばれた大きな理由の一つを伝えたところ、珠実様はお恥ずかしそうに照れながら、礼を言うならお嬢さん(フロイライン)にと言うので、私達は改めて頭を下げたよ。


「そんなの気にしなくていいよ? 実際に結界張ったのは珠実なんだし、もっともっと珠実を褒めてあげて?」


 ふふ、相変わらず謙虚な姿勢だね。私も今後人を導いていく立場の者として、彼女のこの謙虚さは見習わなければいけない。「いやいやアリサ様こそ!」「なんのなんの、珠実の方が!」と、互いに譲りあってる二人はどちらも笑顔だ。まったく、この精神を欲の皮を被った冒険者や貴族にも見習わせたいものだね。


「あはは♪ なんにしても喜ばしいことだわね! 私も臨時講師ってことでお願いされてるし……実際、その校舎の設立に向けての計画ってのはどんな感じなの?」

「それはな、この広場を上手く使い、近くの家に住んでる者達に声をかけ、俺達が用意した家に転居してもらい、大きな学舎を建設する運びだぜ!」

「新しい家を用意してもらえるってことで、俺も、他の該当者も喜んでいます」


 お嬢さん(フロイライン)は主に料理や、ポーション等の簡単な医療品の調合術等の授業を臨時で受け持ってくれると言う話だし、学舎の建設にあたり気にかけているようだね。その件はディンベルとゲンが簡単に説明をしてくれたよ。


「ふぅん……思ったんだけど、この区画って結構広いわよね? どうせなら学生寮とか建てたらいいんじゃないの?」

「学生寮? お嬢さん(フロイライン)、それは……何なんだい?」


 顎に手をあて、少し考える素振りを見せたお嬢さん(フロイライン)が『学生寮』なる物を提案してきた。聞けばそれは学生の為の集合住宅だと言うじゃないか。


「にゃん♪ きっと地方からもこの学校に通うのは大変だし、寮があれば便利だにゃ!」

「うむ。将来職に就く為の知識を学べるとあれば、入学を希望する者も多かろう。中には遠く離れた地からの希望者もおるやも知れぬ」

「なるほど……俺達は『セリアベール』内でしか考えていなかったが……」

「そうだね。少し視野を広げれば将来的にそうなる可能性が大きいか」


 今でも読み書き、計算ができる人材は重宝され、仕事先でも優遇されているのは誰もが知ることだ。勿論今日明日にと言うわけではないが、この学校に通う生徒が皆その学を修めたとすれば……ふむ、にゃるろってちゃんと珠実様の意見は正鵠を射ることとなるだろうね。

 私はディンベルと顔を見合せ計画の見直しが必要であることを暗に察した。


「貴重な意見に感謝します。流石は『聖域の魔女』様と言ったところだな、アリサの嬢ちゃん!」

「うふふ♪ 自慢のお姉さまです。それで、この学園はどんな名になるのですか?」


 ディンベルの感謝に「大したこと言ってないよ」と、お嬢さん(フロイライン)は手をヒラヒラさせて謙遜する。そんな様子を嬉しそうに見ていたレーネ様が、建設予定の学校の名前はどうなるのかと聞いていらした。ふふふ、よくぞ聞いて下さった! 実は私も言いたくて仕方がなかったんだよ。


「はい! レーネ様。この学校の名は『セリアロッド』と名付けられます。私の愛弟子……ロッドの名を冠し、彼との誓いを私の生涯……いえ、たとえ世代が変わろうと、末長く忘れる事の無いようにと、『想い』を込めて……」


 万感の『想い』を込めて名付ける……『セリアロッド学園』。私がその事を話せばレーネ様もお嬢さん(フロイライン)も、皆が微笑んでくれたのだった。


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【伝えねば】~朗報ですぞ!~《バルガスview》

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「──そうですね、『エルハダージャ王国』は冒険者ギルド発祥の地。と言うことも相まって、多くの冒険者が集う国です、そして……なんと言いましょうか、ヘルメット殿のような人物が多いのが特徴、ですかね?」

「ははは、バルガスさんだったら多分気が合う連中だと思いますよ?」


 旅立つ前、『聖域』にて、アイギスとバルドに『エルハダージャ王国』とはどのような国なのかを少し聞いてみたのだが……ふぅむ、ヘルメット殿のような人物が大多数とはな。ヘルメット殿と言えば、やはりあの気風の良い特徴的な口調だろう。アリサ様曰く『べらんめぇ口調』とのことだが、我としては歯に衣着せぬその物言いが好ましく感じている。「俺の言い分に裏など無い!」とはっきりとわかるが故に。


「あっはっは! そのアイギスさんとバルドさんの言ってること大体合ってますよバルガスさん!」

「アイツ等面白いよなぁ~? 「てやんでぃ! 魔物が恐くて冒険者なんかやってられっか!?」ってな感じでな?」

「あら♪ うふふ、ヘルメット殿そのままですわね!」


 さて、我とネヴュラは今、『セリアベール』の酒場にて目的地である『エルハダージャ王国』についての情報を集めている最中である。このような些事にアリサ様とアルティレーネ様のお手を煩わせる訳にはいかぬからな。

 我等の事は先の『氾濫(スタンピート)』における防衛戦にて住人達にも知れ渡っていたようで、街を歩いて見ても、この酒場に入って見ても、皆が歓迎してくれたことに、柄にもなく嬉しいと感じてしまったな。

 その酒場のカウンターに空いている席があり、ネヴュラと共に座り一杯を注文。隣に座る二人組の冒険者に『エルハダージャ王国』についての情報がほしい旨を伝え、彼等の分も追加注文をすると、彼等は素直に喜び、「何でも聞いて下さい!」と快く応じてくれた。


「ありがたくいただきます!」「へへ! 今度俺等からも奢らせて下さいね!」

「うむ」「うふふ、また来ますからその時は是非に」


 ふふ、こうしたやり取りもまた楽しいものよな。さて、話の続きと行こう。


「そうですね、バルガスさんなら問題ないとは思いますけど……ネヴュラさんとかアリサ様にレーネ様のような女性には……何て言いますか、その……」

「あ~滅茶苦茶暑苦しく感じるかもしれませんね……特に冒険者ギルド行くなら注意して下さい」


 ふむ? 我のような男ならば平気でアリサ様方には暑苦しく……? よくわからぬな、まぁ、話を聞くに、冒険者ギルドにその傾向が強いようなので、あまり近付かぬよう進言しておくとしよう。


「それはそれでとても気になりますが……他に特徴はございますかしら?」

「あ、山多いから山菜が美味いですよ! 特にキノコなんて絶品です!」

「ああ! エルジャダケな!? あれはマジ美味い! ただ焼くだけでもかなりいけますんで是非食べて見てくださいね!」


 ほう! かようなキノコがあるのか? それは是非ともアリサ様に献上しご賞味頂かねばならんな。それに、アリサ様にかかればきっと……


「まあまあ! それはアリサ様がお喜びになられるわ! どんなお料理になってしまうのかしら♪」

「おおっ! そうですね! アリサ様ならきっと滅茶苦茶美味い料理に仕上げてくれそうですね!」

「うわぁーっ! バルガスさん達がめっちゃ羨ましいぜぇ~!」


 ふふふ、そうであろうそうであろう! 我も今から楽しみで仕方ないわ! さあさあ! 他には無いのか? どんな情報でも構わんが、できれば食材をだな。


「あなた……もぅ~食いしん坊なんですから……」

「何を言うか? アリサ様が一番お喜びになられるのはやはり食材であろう?」

「ははは! 本当にアリサ様は料理が好きなんですね」


 我が冒険者に更に聞き込もうとすると、あきれたようにネヴュラが苦笑いを浮かべおるが、仕方なかろう? アリサ様ならばその国の地理地形等の情報なぞ、その『神眼』で一目で見通されるのだから。我等が得るべき情報はその国の情勢や、人々の気質、そして食材である。


「そ、それでいいんですか? いや、すげぇなアリサ様……」

「ふぅむ……食材……それでしたらあれも含まれるでしょうかねぇ?」

「ほう? 店主よ、何か心当たりがおありか?」


 話を聞いていた冒険者もアリサ様の偉大な一面を知り、畏敬の念を抱いたようであるな。して、同じくカウンターで酒を作り、振る舞ってくれている店主が口を挟んできおった。何やら複雑な表情だが?


「ええ、私が以前仕入れに『エルハダージャ王国』に行った時に、立ち寄った食事処で出された魚料理があまりにも印象的でしてね?」

「あー、マスターそれってウナギじゃね? 輪切りにして茹でただけのやつだろう?」


 なんだと!? ウナギとはアリサ様が度々「ウナギ食べたいなぁ~」と、口にされておられたあのウナギか!? これは朗報ではないか! もっと詳しく話を聞かねば!

アリサ「ああ、そうそう(*´∇`*) 『聖域』から近い内に二グループの冒険者候補が来るから、その時は色々教えてあげてね?( *´艸`)」

デール「んなぁっ!?Σ( ̄□ ̄;) なんだってぇーっ!?((゜□゜;))」

ディンベル「おいおいおい!(゜A゜;) 『聖域』出身の者達に俺等が教える事なんてあるのか?(´゜ω゜`)」

アルティレーネ「大丈夫ですよ(^-^) 皆いい子達ですからね(*゜ー^)」

にゃるろって「う~んとねぇ……「一人一人がSランクの冒険者、数百人いても敵わない実力」だってアイギスやバルドくんが言うくらいだにゃ( ´~`)」

ゲン「すっ!(; ゜ ロ゜) 数百人!?((( ;゜Д゜)))」

珠実「そうじゃなぁ(  ̄- ̄) あながち間違いではないのぅ( ̄▽ ̄;) その正体は妾達の部下じゃからな(_ _)」

デール「まままま、待ってくれたまへよ?(;>_<;) その彼等は何を学びにこの『セリアベール』へ来るんだい?(;゜0゜)」

アリサ「だから~「冒険者としてのうんたん」だよ(’-’*)♪」

アルティレーネ「うふふ(*´艸`*) 彼等は冒険者として初心者ですから、貴方のような素晴らしい教育者による指導を受けられれば、将来立派に成長すると思うのですヽ(・∀・)ノ」

ディンベル「うおおお……な、なんと言う責任重大な(゜Д゜ ||) 長く商売やってたがここまで緊張感のある取引は初かもしれん!(;゜Д゜)」

にゃるろって「大袈裟だにゃ(ーωー) 特別扱いせずにふつーの新人冒険者として扱えばいいのにゃんщ(´Д`щ)」

珠実「そうじゃそうじゃ( ̄0 ̄)/ リンとシドウ……( -_・) 『神狼』と『黄龍』も遊びに来るでな、よろしゅうしてやってくれ(*゜∀゜)」

ゲン「あばばっ!(*゜Q゜*) 『神狼』フェンリル様がおいでになられる!?Σ( ̄ロ ̄lll)」

デール「たたっ大変じゃないか!?Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)」

ディンベル「おおお落ち着け馬鹿モン!ヽ(;゜;Д;゜;; ) 直ちに全ギルドに通達してだな!Σ(;゜∀゜)ノ 住人が粗相をしでかさんように注意をして! それからそれから!!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」

アリサ「ありゃ(・д・`;) なんか大パニックになっちゃった感じ?(´∀`;)」

アルティレーネ「うふふo(*゜∀゜*)o とても良い反応ですね(^∇^) 私こう言うイタズラ大好きです(σ≧▽≦)σ」

にゃるろって「ちょっとしたサプライズが大事件みたいになっちゃったのにゃ( ゜□゜)」

珠実「やれやれじゃな┐(´д`)┌ ほれ、ゲンよ気を失っとる場合ではあるまいてヽ(´o`;」

ゲン「きゅうぅ~(×_×)」

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