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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
111/211

99話 魔女さんママになる!

────────────────────────────

【心満たす】~美味しいご飯~

────────────────────────────


「……では、改めまして。私の同朋のポコを助けて下さり、本当に有り難うございます!」

「私もまさかこれほどの結果になるとは思いもよりませんでした。有り難うございます……ポコを助け出してくれて、アルナの心を救ってくれて……」


 うまいこと『神剣レリルティーネ』に封じられていた『幼女神ポコ』を、その呪いだけを置き去りにして解放することに成功した私達は、『聖域』の私達のお屋敷で改めてアルナとヴィクトリアを交え、今後の事を話し合っていた。


「あはは♪ おひーげおひげ! シドウのおひげは立派なのです~♪」

「ほっほっ♪ そうかのそうかの!? たーんと撫でると~って、アイタタ! ぽ、ポコちゃんや! 引っ張らんでくれ~!」


 きゃっきゃ! わーい、あははは~♪ って如何にも楽しそうにシドウと遊んでいるのは、封印から解放されたポコちゃんだ。

 ヴィクトリアから「ポコは黄龍に好意的」と聞いた時は耳を疑ったんだけど……実際にシドウに抱っこされるポコちゃんはとっても嬉しそうに笑顔を振り撒いているので信じるしかないわ。

 はい。みなさんこんにちは♪ 魔女の方のアリサです。アルナとヴィクトリアも急遽駆け付けた『神剣レリルティーネ』から『幼女神ポコ』の解放するっていうイベントの最中に、私は一度この『聖域』に『転移(ワープ)』で戻って来ていたんだよね、ガルディング様が募ってくれた使用人のみんなを『セリアベール』に連れてくためにさ。

 で、その使用人さん達を『セリアベール』に送って、商業ギルドに集まってた飲食店の店主や料理人達の指導をお願いして、暫くその様子を監督しててさ……大丈夫そうだなって判断して、ディンベルのおっちゃんやゼオンに挨拶して……折角なので設置した『転移陣(ワープポータル)』を試そうって思い……


「か、感動です! 創世の三女神様達だけでなく、主神ティリア様に、『勝利』を司るヴィクトリア様! 子の成長を見守って下さる『幼女神』のアルナ様! ポコ様にまで御拝謁できるなんて!!」

「エミるんってばテンション高っけーってばよ♪ うち等なんて大したことないんだから、もっと気楽にいこ~?」


 約束もあったので、ゼオンと入れ替わりってかたちでエミルくんを連れてきたのだ。


「ふふふ、フォレアの言う通りですよエミルさん。私達等、まだまだ未熟な身です。そんなに畏まらず楽になさって下さいね?」

「折角来てもらったのに、あんまり構ってあげられなくてごめんなさいね? 今ちょっとお話し中だから」


 妹達にヴィクトリアとアルナ、ポコと出会えたことが余程嬉しいのか、エミルくんは瞳を爛々と輝かせ感動してるんだよね。そんな彼を放置するのは忍びないんだけど、今はポコの処遇をどうするかっていう大事な話し合いの最中なので、せめてオヤツとお茶を用意してあげようと思う。

 ちなみに、聖女の方の私は『無限円環(メビウス)』に『呪われた神剣レリルティーネ』を持って行って、その呪いを完全に解呪してるところ。シェラザードとゆかりにも状況を説明してあげたりしている。


「はいはい、んじゃケーキでも食べて話し合いを続けましょうか。はい、アルナちゃん、ヴィクトリアもどうぞ~♪」

「ありがとう、アリサさん」

「ありがとうございます……ですが、私達神には食事の必要はないので……あまり気にせずに……」


 それぞれが座るテーブルの前に、ミーにゃんポーチから作りおきしておいたイチゴのショートケーキを取り出し並べていくと、ヴィクトリアとアルナが感謝してくれる。勿論妹達もエミルくんも大喜びだ。やっぱりケーキは嬉しいよね~♪ でもアルナはなんかいまだに遠慮気味みたいで、目の前におかれたケーキを見つめるだけで、フォークに手を伸ばそうとしない。


「そう? アルナちゃんや、それは間違いだよ? 確かにエネルギーを取るって意味でなら、食事する必要はないけどさ……心がお腹空かせちゃうでしょ?」

「え、心が……ですか?」


 そう、私達は食事でエネルギーを取る必要はないんだけど、美味しいご飯ってのは何もそれだけが目的じゃないんだよね。色とりどりの食材が使われた美味しいご飯ってのは、それだけで心が豊かになっていくものだ。


「力ある私達だからこそ、いつも心豊かに、穏やかに過ごしたいなって思うんだよね」

「仰る通りですアリサ様。神様方がピリピリしていらっしゃると、僕達のような下々の者達は気が気じゃありませんからね。いただきます!」

「はぁ……そういうものですか……あの、今の「いただきます」と言う言葉は?」

「ん。感謝の言葉。いただきます」


 私の言葉にその通りだと頷くエミルくん。ぶっちゃけてしまえば私を含めて神だの魔王だのは、一般人から見ればいつ爆発するかわからない危険物そのものだ。そんな危ない連中が神経尖らせてピリついた空気を醸し出してれば、正直おっかないことこの上ないだろう。そんな風にならないためにも、常日頃から心を豊かにして、のんびりと暮らすべきなのだ。……決してだらだらしたいための言い訳ではない。

 そんな私達のやり取りに納得したのか、アルナはほえーんって感じで聞いていたけど、エミルくんが言った「いただきます」って言葉に反応して聞き返してきた。


「食材になったものや、提供してくれたもの。そして料理を作ってくれた人に対して、「ありがとう」と言う感謝の思いを込めた一言ですよアルナ」

「まぁ……素晴らしいわね。正直必要ないのに食事を頂くなんて、神の傲慢かしら? なんて思ったけれど……そういうことなら、私達の心の安寧のため、感謝を込めて「いただきます」しましょう。ね? アルナ?」

「は、はい。それならば私も……「いただきます」……あむ、んんっ!?」


 それの意味をレウィリリーネと、アルティレーネが説明してあげると、ヴィクトリアがいたく感動した様子で、アルナも一緒にと誘った後、「いただきます」してケーキを口に運んだのだった。


「これは……! なんて素晴らしいのかしら!?」

「うんうんうんっ!! 凄いです! こんな美味しい食事初めてです!!」


 うむ。どうやら二人にもお気に召してもらえたようで、なによりなによりだね!


────────────────────────────

【ヴィクトリアと……】~アルナ~

────────────────────────────


 さて、それじゃこの辺りで新しいお客さんをまじまじと見ていこうかな。ヴィクトリアにアルナ。そして復活したポコの三人。


「貴女達狡いじゃない! こんなに……こんなに美味しい物を毎日食べているのね!?」

「毎日じゃないよ! アリサ姉のケーキは時々だよ、うちももっと食べたい!」


 お、ちょうどヴィクトリアがケーキ食べて妹達に文句いい始めたので、ちょっと見てみよう。

 ヴィクトリアについてはちょいと触れたけど、スレンダーな女騎士って感じ。白に近い金髪をポニーテールにまとめ、頭に白鳥の翼を模したティアラ、プラチナの軽鎧に純白のマント、豪奢な装飾の剣に盾……は、どっかにしまっているのか、今は見当たらないので、おそらく収納魔法とかなんかで邪魔にならないようにしてるんだろう。


「あんたも分け身の一体くらいこっちに置けばいいんじゃない?」

「ん。賛成する。残る魔王との戦いに少しでも験を担げれば、みんなの士気も高まる」

「あら、いいの? 過干渉にならないかしら……?」

「今更ですよ。既にこの『ユーニサリア』はイレギュラー扱いされていますからね」


 うむ。丁寧な口調に、おっとりとした優しげな顔つきなのに、燃えるような赤い瞳は勝負事に関わるがゆえか? 聞けば『勝利の女神』と言えばヴィクトリアと、もう一人二人くらいしか存在しておらず、彼女達はティリアの『遍在存在』にも似た『分け身』を用意する事ができるらしい。『遍在存在』>『並列存在』>『分け身』と言う序列らしいね。ティリアの提案にレウィリリーネが賛成してるけど、ヴィクトリアは掟を破る事になるのではないかと不安そう。でもアルティレーネが既にこの世界イレギュラー扱いされてるので大丈夫だと言う。


「うふふふ♪ もう~それならそうと早く言ってよ! 私ね、貴女達と一緒に色々と面白可笑しいイタズラをするのを楽しみにしていたのよ?」

「なはは♪ 変わってないねぇヴィクトりんは!」


 彼女の背丈は私よりちょいと高いから一六五センチくらいだろうか? 腰の位置が高く、長くスラリと伸びる美脚は素直に羨ましい。


「そういうことなら歓迎するよ♪ よろしくお願いしますヴィクトリア様。でも、イタズラはほどほどにね?」

「うふふ、そんな様なんていらないわ。こちらこそよろしくお願い致しますアリサさん!」


 な~んか、ヴィクトリアは成長したアルティレーネって感じを受けるのは、その丁寧な口調と雰囲気のせいだろうか? まぁ、何はともあれ、また新たな仲間が加わったのは嬉しい限りだ。


「……ぁぅ」


 ん? ちょっと小さい声が聞こえたので、その方を見ると、なんかアルナが空になったお皿を悲しそうに見ているのに気が付いた。


「アルナ。食べ終わったら「ご馳走さま」よ? にしても、一心不乱に食べてたわね? そんなに美味しかった?」

「あ、はい! 「ご馳走さま」でした……こんなに美味しい物を食べたのは初めてで、お恥ずかしながら夢中になってしまいました」


 あら! まぁまぁ~なんて嬉しいこと言ってくれるんだろうこの可愛い子ちゃんったら♪ アリサさん嬉しくなっちゃう! ティリアに教えられて、しっかり「ご馳走さま」も言えたし、とっても素直な子だね!


「そんなに喜んでもらえると、もっともっと甘やかしたくなっちゃうな♪ も一つサービスでチョコレートケーキをご馳走しちゃおう! はい、アルナちゃんどうぞ~♪」

「わぁっ! いいんですか!? 嬉しい……ありがとうアリサ様!」


 おう? なんぞ様付けされてしまったぞ? ま、そんなのどうでもいいや。このニッコリ笑顔の前に私はどうしても頬が緩むのを止められなくて、沢山おもてなししたくなっちゃうんだよね。

 そんなアルナは『幼女神』の名の通り、ユニくらいの小さな女の子。『聖域(うち)』のちびっこ達と同じくらいの子だ。背の真ん中くらいまで伸ばした綺麗で艶のある黒髪はちょいと私に似てるかな?


「あー! いいないいなぁ~アルナ! アリサさん私も食べたいわ~♪」

「アリサお姉さま私も!」「ん、あたしも」「うちも~♪」

「僕も!」「当然私も!」


 あーはいはい……まったくしょうのない妹達にヴィクトリアお姉さん……ちゃっかりエミルくんまで~いいよいいよ? たーんとお食べなさいな。


「んぅ……美味しい……うぅ……とっても、優しくて……うぅぅ……」


 ぽろぽろ。あれ、あれれ!? えっ!? どど、どうしちゃったのアルナ!?

 チョコレートケーキを一口食べてみたアルナが、どうしたことかその大きな瞳に涙を浮かべて、ぽろぽろと泣き出してしまったではないか。


「アルナちゃん、大丈夫? ケーキ美味しくなかった?」

「いえ……いいえ、そんなこと、ありません……ただ、ただ……私、『神界』じゃずっと気を張ってて……うぅ……美味しいです……」


 そっと静かにアルナの隣の席に座り、彼女の涙を優しく拭って、慌てさせないよう注意しつつ声をかけると、アルナはぽつぽつと、静かに思いを口にしてくれた。彼女の緋色の瞳に涙がキラキラしてて、綺麗だなぁ~なんて思ったりしたけども。


「そっか……アルナちゃんは『幼女神』の代表格としてずっと頑張って来たんだもんね……それこそポコちゃんがいない間もさ」

「はい……ぐすっ……」


 おーよしよし……きっとめちゃくちゃ大変だったんだろうねぇ~相当長い間頑張ってきたに違いない。アルナが流す涙がその証明だ。


「せめてさ、この『ユーニサリア』にいる間だけでも、そういったお役目の事忘れて、のんびり羽休めしてね? 私も頑張って美味しいご飯沢山作るし、ポコちゃんやユニ、他にもお友達いっぱい作って、楽しく遊んだりしてさ……ね?」


 なでなで……くすんくすんって静かに嗚咽を漏らすアルナの頭を撫で撫でしつつ、この疲れはてた女の子に癒しのひとときを提案してあげるのだ。たまには羽伸ばして思い切りお休みしてもバチは当たらないでしょ?


「ううぅぅ、いいんですか……私、私もみんなと楽しく、過ごしても……?」


ぎゅっ。


「いいよ♪ 誰にも文句なんて言わせないし、もし、そんなこと言うやつがいたら私が護ってあげるから。だから安心してねアルナちゃん?」

「あぅ……ありがとう……ありがとう……お母さん」


 ふぁっ? 今なんて?

 本当に役目を忘れて休んでもいいのかと、不安気に聞き返してくるアルナを安心させてやるためにぎゅっと抱きしめてあげたら、なんぞ変なセリフが聞こえたんだけど?


────────────────────────────

【遂にママになる】~もうしょーがない!~

────────────────────────────


「「「アリサお母さん」」」


 はい、そこ! ティリア、アルティレーネ、フォレアルーネの三人! わざわざ声を揃えんでもよろしい!


「おやおや、アリサお母様がこう言うのよティリア? 私達も頑張って『幼女神』達の立場改善に尽力しなくてはいけないわね!?」

「ん。アリサお姉さんがアルナの母親になるなら、あたしとママ友♪ ふふ……ティリア姉さん達より一歩リード!」


 私がアルナから「お母さん」って呼ばれた途端、おおーっ! とか言って騒ぎ出すコヤツ等である! まぁ、ヴィクトリアとティリアで『幼女神』達の立場をもっと良くしようってがんばるきっかけになるって言うなら、仕方ないけど受け入れよう。んで、レウィリリーネの言う「ママ友」ってのは、アリアの製作者(ママ)がレウィリリーネだからだろう。


「あ……ご、ごめんなさい……ご迷惑、ですよね……?」


 むわあぁぁーっ!!? もーっ! そんな泣きそうな顔で言われて無下に出来るわけないでしょぉぉーっ!? ええいっ! こうなりゃママだろうがお母さんだろうがなってやるわよぉ! っていう、内心の葛藤をおくびにも出さず、アルナににっこりと笑顔を向ける私はエライと思うので、みんなほめて?


「いいよ、アルナちゃんがそう望むなら私がお母さんになるからね! どーんと甘えてちょうだいね♪」

「~!! お母さん! おかあさーん! わーんっ!!」


 あらら、私がアルナのお母さんになるって宣言を聞いた途端、アルナが私に抱きついて、嬉しそうに頬を私の胸にスリスリしては、顔を埋めてきて泣き出してしまったじゃないか。


「おおお、ついにアリサママが爆誕してしまったわ……って、アルナはよっぽど嬉しかったのね~? 私もアリサ姉さんに抱きしめてもらった時はホントに嬉しかったからよくわかるわ」


 よかったねって集まってるみんなが私達を祝福してくれるのがちょっと気恥ずかしいけど、この子の母親になるって断言した以上は頑張ってみようって思う。ネヴュラや、セレスティーナ様、ファネルリアやナターシャと言った、お母さん先輩達にも色々相談して、アルナに自慢のお母さんって思ってもらえるように努力だね!


「おぉ~い魔女やぁ~ちと助けてくれんかのぅ~? 儂、もう体力がもたんわい、はぁ~」

「シドウじぃじ! だらしないのですー! ポコはまだまだ元気いっぱいなのですよ!?」

「はぁ、ポコはすごい元気……あ、あるじ様っ!?」

「ああーっ!! アリサおねぇちゃん! またアルナちゃんとくっついて! うーあーきーもーのー!!」


 バタバタバターっ! ってお庭で楽しそうに遊んでたちびっこ達とシドウじいちゃんが、お屋敷に戻ってきた。ポコちゃんに気に入られてるシドウは初めこそ嬉しそうに一緒になって遊んでたようだけど、あはは♪ 子供達の体力を甘く見ていたんだろう? へとへとに疲れ果てて、ヨロヨロ~って戻ってきたよ。


「こら、あなた達! お屋敷の中を走っちゃ駄目でしょ? ユニもアリアもお話があるから、ポコちゃんと一緒にこっちいらっしゃい? じいちゃんは座って休んでなよ、いま緑茶用意するから」

「「はーい!」」「むぅ~わかった……」

「おお、済まんのぅ、助かるぞい」


 早速お母さんらしいところを見せようって思って、バタバタ走りこんで来たお行儀の悪いところを注意。ポコちゃんとアリアは素直にお返事するけど、ユニはなんかむくれちゃってるね? 大丈夫よぉ~ちゃんとお話するから、無視してるわけじゃないからね? んで、シドウのじいちゃんにはお茶出して放っておこう、だいぶ疲れてるみたいだし。


「はい、ケーキをどうぞ♪ あのね、急な話なんだけどさ、私アルナちゃんの母親代わりになったから」


ええええぇーっ!!!?


 私の唐突な爆弾発言に一度席についたちびっこ達がハネ上がり、大きくその目と口を開いてビックリした表情で叫び出した。シドウは驚く気力もないのか? はじっこでズズズとお茶をすすっては、ほぅ~とため息ついて満足そう。


「そう言うこと。だからねユニ、アリサ姉さんは別に浮気なんてしてないわよ?」

「ユニは少し嫉妬深いようですね、アリサお姉さまが大好きなのはわかりますが……」


 うむ。ちょいと落ち着いたところで、ティリアとアルティレーネがナイスなフォローをいれてくれるのがありがたい。捕捉で私からかくかくしかじかと、その経緯を説明しておいた。


「それならポコにとってもアリサ様はお母さんなのです! わーい♪ おかあさーん! ポコを助け出してくれてありがとうなのです~♪」


 おおっと、話を聞いたポコちゃんもアルナに負けじと私に抱きついてきたよ! はいはい、いい子ね~♪ どうもこのポコちゃんは幼女の見目相応に、とっても無邪気で素直な可愛い子だ。

 空色のちょっとくせ毛はツインテールにして、肩にかかるくらいに伸ばし、少しカールがかかっている。まぁるく可愛いお顔はとてもぷにぷにしていて柔らかく、シャープな小顔のアルナとは対照的に見える。くりくりの円く大きな瞳はほんわかとした垂れ目で、山吹色のお目々も彼女の可愛さを引き立てているね。

 ポコちゃんもアルナもお揃いの、一見シンプルに見えるけれど、よく見ると事細かに刺繍が施された白いワンピース。手首足首にはシュシュ、足には可愛いリボンのついたサンダルと、どれも白い。聞けば、幼子の純真で無垢な心を表しているのだとか。


「うぅ……そう言うことならユニもなっとくだけど~」

「また……あるじ様に甘える同盟のライバルが……」


 いつの間にか同盟が組まれていたのか……一緒に経緯を聞いていたユニとアリアが、なんだか不満そうな顔をしているのは、納得はできたけど私に甘える機会が減ってしまったかららしい。


────────────────────────────

【ユニとアリアは……】~お姉ちゃん!~

────────────────────────────


「しょうがない子達ねぇ~んじゃ、ちょいとアルナちゃんとポコちゃんに魔法の言葉を教えちゃおう! いい、二人共? この言葉をユニとアリアに言ってあげてね」

「え、ふんふん……はいお母さん」「わかったのですママ~♪」


 ちょーっと拗ね気味なユニとアリアを笑顔にすべく、私は一計を案じた。今アルナとポコちゃんに教えた魔法の言葉を聞けばきっと二人共ニコニコになるに違いない! さぁ行くのだ私の可愛い娘達!


「「どうか私達と仲良くして下さい! ユニお姉ちゃん! アリアお姉ちゃん!」」

「「──っっ!!?」」


ガガーンッッ!!!


 二人のその言葉を聞いたユニとアリアは、まるで「うおおぉぉーっ!?」とか叫び出しそうな程に目と口を大きく開けて、めっちゃビックリした様子を見せる!


「なななな……そ、そんな……お、お姉ちゃんだなんて! いやぁ~ん♪ ユニ困っちゃうなぁ~えへ、えへへ~♪」

「おおお、あ、アリアが……アリアが、お姉ちゃん……お姉ちゃんですか……!」


 照れとる照れとるぞ! よっし! わかりやすく手応えがあった! さぁ、追撃して畳み掛けなさい!


「ね~いいでしょ~? ポコはお姉ちゃん達ともっともーっと仲良くなりたいのです!」

「どうか、お願いします! 私達に貴女達をお姉ちゃんって呼ばせて下さい!」


 あふぁぁーっ!! とか言って大きく仰け反るユニとアリアである。そのまま床に片手をついて、もう片方の手で胸を押さえて興奮を静めようと頑張っているみたい。少し黙ってその様子を伺っていたのだけど、不意に二人が立ち上がって、がばちょとアルナとポコちゃんの手を、二人でガッシリと握ったのだ。


「お姉ちゃんに任せて! アルナちゃん、ポコちゃん!」

「お姉ちゃんが……色々、いっぱい、教えてあげます!」


 むふーんっ! うむ……今までに見たことのない素晴らしいドヤ顔である。ふんすっ! って鼻息すら聞こえてきそうだ。「お姉ちゃんに甘えたい」って気持ちは、誰よりもこの子達が一番よく知っている事だろうからね、私が教えた魔法の言葉は見事にユニとアリアに響いたようでなによりである♪


「ふふ、勿論ユニもアリアも今まで通り、私に甘えてくれていいからね?」

「はーい♪ えへへ、ありがとアリサおねぇちゃん!」

「んぅ♪ あるじ様、ありがとう♪」


 なでなで~♪ うんうん、新たにお姉ちゃんになったこの二人もとってもいい子で、アリサお母さんは嬉しいわぁ~♪


「ちょいちょい! 狡い狡い! そんならうちの事もお姉ちゃんって呼んでよ~? アルナっち! ポコぽん!?」

「フォレアルーネはフォレアルーネなのです!」

「そう……ですね、ごめんなさい。フォレアルーネを今更、姉とは思えません……」


 そして、そんなやり取りをあたたかーく見守ってくれていた妹達とお客さん達なんだけど、フォレアルーネが物言いをしてきた。その言い分は「自分も姉と呼ばれたい」というものだ。まぁ、フォレアルーネは三姉妹の中でも末っ子で、どうしても妹なので、お姉ちゃんになってみたいっていう願望がどこかにあったんだろう。


「フォレアは……うーん、ちょっと無理じゃないかしら?」

「ん。諦める潔さも大事……」


 ポコちゃんとアルナにごめんなさいされて、姉二人にも無理だと言われる哀れなフォレアルーネは「そんなぁ~!」って、ガックリと項垂れてしまった。


「あっ! いやいや、待てよ! そうだよリルリルに呼んでもらえばいいんじゃん! うっひょー♪ うち天才じゃん! 早速行ってくるーっ!」


バタバタバターっ!


 なんて思った矢先に、バッと身を起こして立ち上がり、そう言い残してお屋敷から飛び出して行くフォレアルーネ。どうやら、リールに自分の事をお姉ちゃんって呼んでくれるようお願いしに行ったんだろう。


「末っ子だから余計にお姉ちゃんに憧れちゃってるのね、あの子」

「それはあるでしょうね。私も妹って立場になってみたいって思ったことあったし……まぁ、好きにさせておきましょ」


 やれやれねって肩を竦めて苦笑いするヴィクトリアとティリア。フォレアルーネは末っ子であるため、どうしても姉になる機会がなくて、逆にティリアは姉であるため妹になれずにいたわけだ。


「……いやいや、待ってよ? それなら私なんて姉にされるわ母親にされるわで、一体どーなってんの!? って、声を大にして言いたいんだけど?」

「あはは、何だか私達の都合で振り回してしまってごめんなさい、アリサお姉さま」


 元々生前は男性でフォレアルーネと同じ末っ子だったのが、今や女性になってるし、長姉になった上に未婚の母親にまでなってしまったのだ。その事をぼやくとアルティレーネがちょっとだけ申し訳なさそうに笑うのだった。


────────────────────────────

【そしてパパは……】~らーんくあっぷ♪~

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「おめでとうございます……と、言うべきなのですよね? この場合……アリサ様がお母様なら毎日美味しい食事が期待できますよ、アルナ様、ポコ様?」

「ありがとーなのですエミルたん!」「ありがとう聡明なエルフ」


 さてさて、そんなちょいとした騒動も落ち着いて、フォレアルーネが戻ってくるまでの間、まったりとした時間を過ごす私達。

 この後はポコちゃんの処遇についての話し合いをする予定なんだけど、ポコちゃんは魔神に誘拐されて操られていたって認識で『神界』でも伝わっているので、シェラザードよりも更に罰は軽くなる……と言うか、ほぼ無罪との事だ。


「私も分け身となってしまいますが、この『ユーニサリア』に定住させていただこうかと思うのです……その、ユニお姉ちゃん達とお友達になるという約束のために……」

「アルナちゃん! えへへ、ちゃんと約束守れる自慢の妹だね!」


 そうしてアルナもまた、ヴィクトリアと同様に分け身をこの世界に残し、ユニ達の妹として、ポコちゃんと一緒に暮らして行く事を決めてくれたのだ。


「失礼しますアリサ様、女神様方」

「ふふ、おや? アリサ様。旦那様がお見えのようですよ?」


 エミルくんがノックと声で来客に気付いて、私に教えてくれる。やって来たのはアイギスだ、その声は間違えたりしない。けど……


「だ、旦那様って! な、何を言い出すんだねチミはぁーっ!?」

「ああ、エミル。『転移陣(ワープポータル)』で来たのか? 久し振りだな……何を騒いでいるんだ?」

「ふふふ、僕にとっては数日振りなのですが。実はですね……」


 エミルくんの言った言葉の意味を理解して、気恥ずかしさで照れちゃう私に一礼したアイギスがエミルくんに何事かと問えば、先程までのやり取りを説明してアイギスに聞かせるエミルくんだ。


「そうなのです~♪ アリサ様はポコ達のママになってくれたのですよ!」

「ふふ、素敵なお姉ちゃんもできたんです!」

「そうでしたか! それは良かったですねポコ様、アルナ様。おめでとうございます!」


 アイギスは若干頬を赤らめて照れた様子を見せつつも、ちゃんと目線をポコちゃんとアルナの高さに合わせ、二人に微笑みながらおめでとうって祝福してあげている。


「うふふ♪ アリサさんがお母様になるなら、素敵なお父様も必要ですよね?」

「うんうん! ほらほら~アイギスおにぃちゃーん♪」

「んぅ。……それはお兄さんにしかできないこと。ほら、速くあるじ様の隣に立って?」


 おおお? なんか、いい感じに外堀が埋められていってないこれ? エミルくんの旦那様発言からヴィクトリアもユニもアリアも、なんか揃ってアイギスをお父さん役に仕立てあげようとしている! ユニとアリアに至ってはおままごと感覚かもしれないけど……それでも嬉しい♪ いまだアイギスに告白する勇気のない私にとってこうしたサポートはとても助かる。


「えっと、そのね、アイギス? アルナちゃんとポコちゃんのためにも、お父さん役やってくれないかな? ほら! 折角の親が片親じゃかわいそうじゃない? だから、お願い!」

「え、ええ! 私でよければ喜んで!」


 うっひょー!! やったぜぇ~♪ これで恋人(仮)から夫婦(仮)にランクアップだ! 一瞬きょとんとしたアイギスは、私の言った事の意味を理解してテレテレしつつも力強く頷いてくれたのだ! 嬉しい~♪


「わーい! アリサママにアイギスパパ~♪」

「えへへっ! とても嬉しいです♪ 不束な娘ですけど、末永くよろしくお願いします。アリサお母さん、アイギスお父さん!」


 むぎゅぅ~って私達に抱きついてくる可愛い二人の娘を、ちょっと戸惑いながら受け止めた私とアイギスはお互いに顔を見合せて、ふふって笑いあったのでした♪


「未熟な父親かもしれませんが、よろしくお願いしますポコ様、アルナ様。その……あ、アリサ様も……」

「「ぶぅーっ!!」」

「いやいや、アイギス。自分の子供を様付けて呼ぶかね普通?」


 改めてポコちゃんとアルナにお父さんとしてよろしくってしたアイギスに対して、早速その二人の娘からブーイングが飛んできた。何で? って困り顔するアイギスお父さんに、ティリアがその理由を一言。ふむ、確かに余程特殊な家庭環境でもなければ自分の子供に様なんて付けんわね。


「しかし、一介の人間に過ぎない私が女神であるお二方を呼び捨てになど……」

「気にしなくていいのです~♪」「どうぞ遠慮なくアルナとお呼び下さい、お父さん」


 ふふ、二人共こう言ってるんだし、呼べばいいよ。


「どうせですし、アリサ様の事も呼び捨てにされては如何ですかアイギスさん? 仮とはいえご夫婦なのですから、その方が自然でしょう?」

「え、エミル! なな、何を言うんだ!? そんな……大恩あるアリサ様を呼び捨てになど……」


 おお~いいぞエミルくん! もっと言ってやってちょうだい! アイギスってば何でか頑なに私のことを呼び捨てにしようとしないんだよ。仮でも一応恋人なんだから、遠慮しなくていいのにさ。

 う~む。折角夫婦(仮)にランクアップしたんだから、私もアイギスの呼び方を変えて見るか? 例えば「あなた」とか……ってきゃーっ♥️ ちょっとそれ無理ーっ! 流石にこっぱずかしいわーい! それは本当に……(仮)が取れてからでしょー♪


「……そう呼ぶ時は、アリサ様と本当の恋人に、夫婦になれた時に……と、決めているんだ」

「なーにボソボソ言ってんの? まぁ、アリサ姉さんと一緒に二人をよろしく頼むわね!」


 私達からちょっと顔をそむけて、誰にも聞こえないような声量でボソッと呟いたアイギス。ティリアも、他の誰にも気付かれなかったけど……私にはバッチリんと聞こえた! うへへ~ちょーうれしい! アイギスも私と同じように考えてくれていたんだ!

 これはもう、私達は相思相愛って思っていいんじゃないだろうか! な~んて一人、内心でめっちゃヒャッホーイ! ってするアリサさんでした♪

ティリア「それにしても……増えたわね(^ー^)」

アルティレーネ「えっと?(*´・д・) ああ、そうですね(・o・)」

フォレアルーネ「最初はうちらも顕現出来なくて屋敷から出れなかったし(-_-;) アリサ姉しかいなかったもんねぇ~ヽ(;´ω`)ノ」

レウィリリーネ「ユニの呪い解けるまでは他のみんなも隠れてたからね(ーー;)」

ティリア「ああ、そうじゃなくてヾ(・ω・ヾ) 私が言ってるのはチビッ子達のことよ(*´∇`*)」

アルティレーネ「あら( *´艸`) 確かにユニから始まってパルモーさん、ブレイドさん、ミストさん~と、続々加入していますね( ´ー`)」

レウィリリーネ「ん(゜.゜) ノッカーとかブラウニー達妖精も含む(´・ω・`)?」

フォレアルーネ「それ言ったらレウィリ姉も含まれちゃうよ~ん(*`艸´)」

レウィリリーネ「(¬_¬) ちょっとアリサお姉さんにフォレアのごはん抜くように頼んでくる!(*`エ´*)」

フォレアルーネ「わぁーっ!?Σ(´□`ノ)ノ ごめんごめんレウィリ姉!?ヽ(;▽;)ノ」

アルティレーネ「口は災いの元ですよフォレア(*゜∀゜)=3」

ヴィクトリア「世界の未来を担う子供達の笑顔が増えるのは良いことだわ(´・∀・`) ある意味アルナとポコがもっとも必要な世界かもしれないわね(゜ー゜*)」

ティリア「うん(^_^;) それも大事なんだけどさ、私もほら(*ノд`*)σ TOSHIとの間に子ができるかもしれないし?(*ノωノ)」

ヴィクトリア「貴女ねぇ、このタイミングで妊娠なんてしたら『保守派』に狙って下さいって言ってるようなものよ?(。・`з・)ノ」

ティリア「わかってるけどさ~( ;´・ω・`) こうしてチビッ子達のきゃっきゃしてる姿見るとほしくなるのよ~(´_`。)゛」

アルティレーネ「うふふ。:+((*´艸`))+:。 ティリア姉さまが『お母さん』になる日も、もしかしたら近いのかもしれませんね(*´▽`*)」

フォレアルーネ「は~(・о・) となると、早いとここの『ユーニサリア』の魔王問題片付けなきゃいけないね(´∀`)b」

レウィリリーネ「フィーナ姉さんとセルフィ姉さんにも手伝ってもらってるし……(_ _) 早期解決を目指して頑張る(*`エ´)」

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