98話 聖女とヨダレと呪い
ティリア「ユニークアクセスが四万超えそうなんだけど!?Σ(*゜д゜ノ)ノ」
アルティレーネ「記念の閑話は用意できているのでしょうか?(^_^;)」
アリサ「今も執筆中だってさ( ̄▽ ̄;) 投稿するのはちょいと遅れるかもしれないらしいよ?(゜-゜)」
フォレアルーネ「なーんだ直ぐには公開できないのか( ´△`)」
レウィリリーネ「ん(ーωー) ここに言い訳綴った手紙がある(*゜∀゜)=3」
アルナ「どれどれ?(・_・) 『汗だくで帰宅し、シャワー浴びて涼んでいると、いつの間にか眠ってしまっています。ワタシ悪くナイネー。暑いのが悪いネー』……だそうですヽ(;´ω`)ノ」
ティリア「よし( ・`ω・´) アイツ蹴っ飛ばしに行きましょう!ι(`ロ´)ノ」
ヴィクトリア「あらあら(σ´・v・`*) でも、実際猛暑が続いていますからね、気を付けてもらいませんと(゜∀゜;)」
私「……夜中に目を覚ますんですが、体の火照りと頭痛で悩まされます。聞けば熱中症は帰宅後にも油断できないとのこと。皆様もどうぞお気をつけ下さいませ」
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【神界でも噂の】~アリサさん~《ヴィクトリアview》
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「ふふふ、とても仲の良いご夫婦なのね?」
「「えぇっ!!?」」
あら? 違ったのかしら?
ああ、みなさんどうも初めまして。私はヴィクトリア。『神界』で『勝利』を司る女神です。主神のティリアと、その妹達や部下であるシェラザードにルヴィアス達とはとても仲の良い間柄ですよ。以後お見知り置きをお願いしますね。
さて、今回この『ユーニサリア』で起きた魔神による一連の騒動については、『神界』でも大きな問題として取り上げられているのですが、その中で私の旧友でもある『幼女神』アルナとポコの内、ポコが魔神に拐われて魔王と成り果てたのには衝撃でした。
階級と言う言葉はみなさんも聞いたことがあるとは思うのですが、『神界』にもそれはありまして……いいえ、寧ろ『神界』の方がとても厳しく定められていると言えますね。詳しく説明するととても長くなってしまいますので、割愛しますが……最近は新勢力でもあるティリア達によって少しずつ緩和されてきてはいるものの、『幼女神』の立場はその階級の中でも底辺です。その理由の大半は文字通り「幼い」が故。見目も思考も「幼稚」であると思われてしまっている。そんな先入観で軽んじられてしまっているのです。
それでも、アルナは『幼女神』の代表格として今まで頑張っていました。唯一無二の親友であるポコの支えも大きく、健気に。そんな姿に感銘を受けた私は勿論、ティリア達も協力を惜しまず、旧い神達の意識を改革しようとしていたのです。
ですが、そんな時に魔神による騒動が起きました。
その騒動でポコがいなくなり、アルナはそれをティリアのせいであると断じ、彼女を信用できなくなってしまったのです、私に対しての態度も一変してしまい……アルナはどんどん孤立してしまいました。
ポコと一緒に花やぐような素敵な笑顔を見せてくれていたのも、過去に置き去りにされてしまい、私はとても悲しんだのですが、今回そのアルナから「『ユーニサリア』に行くので従者として同行してほしい」とお願いされました。
『朋友』ではなく、『従者』としてです。その事にアルナの頑なな拒絶の意志が感じられましたけれど、それでも、ポコを思う心が私を頼ると言う選択を導いてくれたのですから、私は二つ返事で引き受けました。『ユーニサリア』でポコが無事に保護されればきっと、またあの笑顔を向けてくれると信じて。
そして……
「ちち、違っ! ヴィクトリア様。私はアリサ様と夫婦ではなく……そのっ!」
「ななな何言い出すんだねチミはぁーっ!? そんなアイギスとふふ、ふーふだって!? いやぁ~ん♥️ も~ホント何言うの~♪ あ、ケーキ食べる?」
やって来た『ユーニサリア』で出会った『機械仕掛けの神』の世界からの転生者、アリサさん。彼女はアルナの精一杯の強がりに激昂する『ユーニサリア』の住人と、ティリア達を体を張って止めて、かの勇者アーグラスの転生体である、アイギスさんと一緒にアルナの頑なだった心をほぐしてくれた。
それはまるで我が子を厳しくも優しく諭す父親と、総てを包み込むような慈愛に満ちた包容力で優しく子を抱き締める母親のように、私の目に映ったのです。
「あーっ! もぅアリサおねぇちゃんったらすーぐ甘やかすんだから!」
「そうじゃそうじゃ! まずは妾達がけぇきを食べるのじゃー!」
「やめんかユニに珠実よ。この『幼女神』は素直に謝罪したのだ……次は余達が謝らねばなるまい?」
「そうですね……リンの言う通りです。……アルナ、ごめんなさい。アリサお姉さまを貶されたことで頭に血がのぼってしまいました」
ケーキとはなんでしょう? アリサさんと『世界樹』に九尾の口振りから食べ物だとは思いますが……ああ、いえいえ、それは後で詳しく教えていただくとして。
ふむ、どうやらアリサさんとアイギスさんは夫婦ではないようですね? 恋人同士かしら? なんにせよ反応が初々しくてついつい頬がにやけてしまいそうになりますね♪
そして、フェンリル……『神界』にいた頃よりも更に強大な力を感じますね……いえ、フェンリルに限らず、この場に居合わせているみなさんが凄まじい力をお持ちのようです。この機に私もアルティレーネ達の力になれれば。と、思っていたのですが……もしかすると出番はないかもしれませんね。
そのフェンリルの言葉が切っ掛けで、みなさんがアルナに対し、真摯な謝罪をしてくれています。
「まったく、反省しろよティリア? 俺達がどんだけアリサ様に世話になって、救われてて、慕ってるかってのを『神界』の連中に話しておかないと駄目だろ?」
「うっさいわねぇアホぽん! ちゃんと言ってるわよ! それでも理解しない石頭ばっかなんだからしゃーないでしょ!?」
あのルヴィアスまでもがアリサさんを様付けで呼ぶ程とは……確かに『神界』ではアリサさんの噂が多く流れていて、私も耳にしています。ですが尾ひれがついているとしか思えない内容ばかりでとても信じられなかったのですが……
「『神界』でのどーのこーのとかどーでもいいぜ? それよかごめんアリサ姉ちゃん! 俺達がキレて考えなしにアルナを攻撃しちまったせいで……」
「アリサ様に無茶な行動させちゃいました……ぐすっ……本当にごめんなさい!」
ブレイドと呼ばれた少年と、ミストと呼ばれる少女がアルナに謝った後、直ぐにアリサさんにも深々と頭を下げて謝っています。いいえ、彼等だけじゃない、アルティレーネもレウィリリーネも、フォレアルーネも……そしてティリアさえも、全員がアリサさんに頭を下げているのです。
その光景を見て、私は『神界』の彼女の噂は本当なのだと確信しました。
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【お友達と】~ひぃっ! 黄龍!?~《アルナview》
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「あはは、いいよいいよ~? みんなそれだけ私のこと思ってくれての行動だったんだもんね? そんなに思われて私は幸せ者だよ。ありがとねみんな!」
そう言って満面の笑顔を集う皆に向けるこの人……『神界』で何かと噂のアリサ。その噂のひとつに襲い掛かる悪魔ですら屈伏させる神気を持ち合わせ、魔王に堕ちたシェラザードの呪いも解呪し、慈愛の心をもって彼女を救った。なんて言うのがありました。
大袈裟に吹聴するものですね……なんて少々あきれてその噂を聞きましたが……主神のティリアの流した噂だと知り、まったく信じられないと思っていました。
「アルナ様!? ううん! アルナちゃんって呼ぶよ! ユニはアルナちゃんに様を付ける気になれないもん!」
「え、あ……『世界樹』……そう、ですね。私はとんだ無礼を働いてしまいましたし、そう呼んでくれて構いません」
しかし、今ですとその噂は本当だったのだと信じられます……
私の不遜で無礼極まりない言動に怒りを顕にした『ユーニサリア』の女神達、住人達……さらにはティリアまでが、私に向けて強力な攻撃を放ってきました……受けてしまえば一瞬で『物質体』『精神体』『星幽体』までもが吹き飛び、『根源の核』へとなってしまいそうな攻撃だったと思います。ですが、それをアリサはその身を挺して私を庇ってくれたのです。
そしてアリサは、かの気高き勇者、アーグラスの転生体であるアイギスと呼ばれた青年と一緒に私の過ちを諭し、この『ユーニサリア』では神としての立場は要らないのだと……素直な自分の気持ちを伝えてくれて良いのだと、優しく……慈しむように抱きしめてくれました。私はそんな彼女の深い慈愛に感極まってしまい、積もり積もったわだかまりを吐き出すように、沢山泣いてしまいました。
私の涙や、その他諸々で服がぐしゃぐしゃになるのも構わず、落ち着きを取り戻すまでずっと抱きしめてくれていて、優しく頭を撫でてくれて……
そのように、アリサの大きな思いやりの心を振り返り、反芻して感じていると、『世界樹』が私に声をかけてきました……私を「様と呼べる気になれない」そういう彼女に、あれだけ侮辱したのだからそれも当然だと、受け入れます。
私の頬を叩き、その瞳に大きな涙の粒を浮かべ叫んだ彼女の姿は、ポコを想う私を鏡に映したかのようでした……それにすら気付けなかった……
「えっと……さっきは叩いちゃってごめんなさい! その事はしっかり謝ります。そしてどうか約束してほしいの! もう人を傷付けるような事言わないって!」
「……ええ。勿論、勿論です『世界樹』……約束します」
「えへへ~♪ 良かった! あ、それとね、ユニのことは「ユニ」って呼んでほしいよ? アリサおねぇちゃんがポコちゃんを助けたらユニ達三人、お友達になろうよ!?」
わぁ! まさかこの子まで私に謝ってくるなんて思いもしませんでした! 私は『世界樹』の……いえ、ユニの謝罪を素直に受け止めて、しっかりと約束をしました。そして……
「……はい、ありがとうユニ……不束でまだまだ未熟な神の私ですが、どうか末長くお友達でいてください」
ユニの差し出す手をしっかりと握手して、そう思いを告げました。
わぁぁ~♪ おめでとう! 良かったね!
そうすると集まった皆がこぞって私達に祝福の言葉をかけてくれました。それがなんだかとても嬉しくて、さっきあんなに泣いたのにまた涙が溢れてきてしまいます。
「良かった……本当に。有り難うアリサさん、『ユーニサリア』のみなさん……アルナのこんな笑顔はいつぶりかしら……? 私からも感謝を」
《ふふふ、避難中のシャフィーやネーミャとも、どうか仲良くしてあげて下さいねアルナ様?》
(ぷっぷぅ~ワタシの同朋達とも遊んであげてほしいです~♪)
その様子を見守ってくれていたヴィクトリアも少し涙ぐんでいます。彼女にも今まで辛辣な態度を取ってしまっていましたね……後で改めて謝罪と感謝を伝えなくてはいけません。
フェニックスとモコプーがシャフィーとネーミャと呼ばれる者と、モコプーの同朋とも仲良くしてほしいと言ってきますので、勿論そうするつもりです。この『ユーニサリア』では素直な気持ちで過ごしていいのですから!
「ホッホッホ♪ いやはや良かったのぅ良かったのぅ~血気盛んな皆の衆がアルナちゃんに攻撃を仕掛けた時は儂もヒヤッとしたもんじゃが、聖女よ、よくぞ庇ってくれた!」
「うぅっ!? あ、貴方まさか、黄龍ですか!?」
私が皆さんの心遣いにニコニコ笑顔で応えていると、一人の老人が、なんだか……そこはかとなくいやらしい、ホクホク顔で近付いて来たのです! 既視感を感じた私は『神界』でのとある記憶が甦り咄嗟に跳び退きアリサの背後に隠れました!
黄龍です! 『神界』でまだポコと一緒に無邪気に過ごしていた頃に、「アルナちゃぁぁーん! ペロペロさせとくれぇ~♪」とかのたまいながら私を執拗に追いかけてきた、あの変態龍です!
「おっほうぅ! 覚えてくれておったんじゃな!? 儂ゃ嬉しいぞい! どれ! 『神界』ではついぞ叶わんかったが、改めてペロペロさせてもらうかの!!」
「いやぁーっ!! た、助けてアリサ! ヴィクトリア!?」
ドッゴオォォーンッッ!!!
「ぷげらっ!!?」
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【じいちゃんいい加減にしろ】~待ちたまへ~《アリサview》
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「何しようとしてんのよ? この変態ジジイ!!」
久々の極大ハンマーをシドウの脳天に叩き付ける! 今回のは前回と違い魔力ではなく私の神気で編み上げたパワーアップ版だからね? 強烈でしょ?
まったく、みんながアルナに襲い掛かった時に、シドウだけは一人冷静に成り行きを見守っていたからすっかり油断してたよ!
「お、おのれこの性悪女め! どこまでも儂の愛情表現を邪魔しおるかぁーっ!?」
「やかましいわ! あんたシェラザードから聞いてるわよ! 『神界』でも今みたいにアルナちゃんに迫ってたんでしょ!? まったく! ユニの時といい、アリアの時といい、猫幼女の私の時といい! 反省しなさい!」
そーだそーだ! いい加減にしろこの変態ジジイーっ!!
ほれ見ろーっ! みんなもこう言ってるじゃないの!
「はいはい、アルナはこっちいらっしゃい。あの変態には近付いちゃ駄目よ~?」
「折角アルナが心を開いてくれたのに、貴方のその奇行のせいでまた閉ざしてしまったらどうする気なんですか!?」
私の後ろに隠れたアルナをティリアとアルティレーネが手厚く保護して、しっかり変態からガードだ! まったくまったく! アルティレーネの言う通りやっとアルナの可愛い笑顔が見れたのに、また不安がってるじゃんか!
「むぅぅ~じゃってじゃってぇ~儂かて可愛い子ちゃんとちゅっちゅしたいんじゃも~ん!」
「うぅわぁ……いい歳したジジイが何言ってんだよ?」
「兄者……頼むか自制してくれ……」
ドン! 引きぃぃ~……何言ってんだこのジジイ……これには普段怒鳴る大地もかなり引いたみたい。爽矢はもう顔面を両手で覆って俯いちゃった、身内のあまりにも……あまりのなさに恥ずかしくて仕方ないんだろうね、ホント苦労するねあんたは。
「それならば、なおのことポコを封印から解いて、呪いから解放してあげないといけないわね?」
「おんやぁ~? ヴィクトリャー様~な~んでまたそこにポッコしゃんの解放が絡むんでっす? アリス達にもわっかるよーに一行で教えてくだぁ~さいよぅ」
「ヴぃ、ヴィクトリャーって……まぁ、いいわ……ポコは黄龍に好意を持っているのよ」
ウッソでしょ!!? この変態に好意をよせる相手だとぉ~!? 私が言葉なく驚いていると、他のみんなも一様に驚いているよ。「あり得ない!」「この変態に好意をよせるのか……?」
「いやいや、もしやポコ様も既に魔神の呪いでおかしく!?」等々、大部分がポコちゃんが何かされてしまった被害者のような扱いになってしまうほどだ。
「お、お主等……あんまりじゃぞ!? 儂をちゃんと好いてくれる者がおっても良いではないか!?」
「みんなの反応で、如何に貴方の日頃の行いが悪いかがわかるわね……みんな、驚くのは無理もないでしょうけど、事実よ?」
「そそそ! そんなの初耳ですよ!? 本当なのですかヴィクトリア!?」
「本当よ? ポコはね、「アルナちゃんばっかり、いっつも黄龍と鬼ごっこして遊んでもらっててずるーい!」って羨ましがっていたわ」
ズーンって落ち込むシドウを横目にヴィクトリアがそれは事実なのだと言う。そこに続いてアルナが信じられないって感じでその詳細を聞けば、なんともはや……シドウの魔の手から必死に逃げ回る様が鬼ごっこに見えていたらしい。これには、アルナも「え~?」ってガックリだ。ポコちゃんの目にはいつも楽しそうに遊んでるように映ったようだね。
「ほっほっ♪ なんじゃなんじゃ~? それならばささっと解放して遊んでやらねばならんのぅ~ホレ、聖女よ! 今すぐポコちゃんを封印から解いてやるのじゃ!」
ったく~このジジイは、ホントにしょーのない……んでも、ポコちゃんがシドウを好いているのなら、ちゃんと再会させてあげたいね。そして、ちゃーんとポコちゃん自身に今の話が本当かどうかを確認して、出来ればシドウのお目付け役になってもらえたら嬉しいんだけど……単に遊び相手が欲しかったってだけかもしれないし……
「わかったわ。じゃあ、これからポコの封印を解くから、みんなは備えていてちょうだい!」
「了解ですティリア姉さま!」
「ん。アリサお姉さんは呪いの解呪の準備を」
「できるだけポコぽんを傷付けないようにしないとね!」
そうして、ティリアが右手に『神剣レリルティーネ』を持ち、左手を突き出して全員に指示を出すと、妹達を始め、みんなが改めて臨戦態勢を取った。
「あおおーっ! 任せるんだぞーっ! オイラ達が壁になって守ってやるからなー!」
「騎士としての本懐、ここにご覧いれましょう!」
「……任せ、ろ! どんな攻撃も……通さん!」
「真・玄武となった私の力! 存分に使いましょう!」
最前線に立ち、私達を背に名乗りを挙げるのは各々のパーティーの盾役達だ。『懐刀』からジュン、『白銀』からアイギス、『黒狼』からデュアードくん、『四神』から水菜と、そうそうたる顔ぶれが立ち並ぶ。
今回の戦いは如何に相手を傷付けずに、呪いのみを解呪するかが重要なので、攻撃を防ぐ役目の者が頑張らなくてはいけないのだ。
……でも、ちょっと待ってほしい。シェラザードの時もそうだったけど、『精神体』に『星幽体』までもが呪いの影響を受けていたとしたら、『神を縛る鎖』でふん縛って動きを止めてやらないといけなくなる。正直アルナのような幼い子を鎖でがんじ絡めにするなんてことやりたくないんだよね。
「ちょっと待ってティリア。その『神剣レリルティーネ』なんだけど、私に見せてくれない?」
なので、ティリアにそう声を掛けて、ポコが封印されている『神剣レリルティーネ』を見せてもらうことにする。もしかしたら上手いことできるかもしれないからね。
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【ヨダレ】~嫌よそんなの!~《ティリアview》
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「ちょっと待ってティリア。その『神剣レリルティーネ』なんだけど、私に見せてくれない?」
さあ、ポコの封印を解除するわよ! って時に、アリサ姉さんから待ったがかかった。なんでもこの『神剣レリルティーネ』を見せてほしいってことなので、ちょっと興が削がれた感じだけど、アリサ姉さんのことだから何かしら考えがあるんだろうって思って、素直に渡してあげる。
「どうしたんじゃアリサ様? なんぞ気になる事でもあったのかのぅ?」
「あぁ~ごめんねドガ。みんなもやる気を削いじゃってごめん。あのね、私ってこう見えて結構面倒くさがり屋さんなのよ~だからね……ふんふん、なるほど」
てっきり封印から解かれた呪われた状態のポコと戦闘になる! って身構えてたみんなも、なんだなんだ? どうしたんだ? と、それぞれに顔を見合せたりしてちょっとどよめいている。そんなみんなを代表するように、ドガがアリサ姉さんに何事かと聞くけど、アリサ姉さんは軽く謝った後、マジマジとレリルティーネを観察している。
「アリサ様が面倒くさがり屋と言うなら、我等は皆そうなってしまうのではなかろうか?」
「料理の工程の一つ一つ見てもそうだよね?」
「私達から見たらあれってとんでもなく面倒くさいよアリサちゃん?」
うんうん、そうよねそうよね! ユナイトとリール、フォーネの言う通りだわ。あんなに複雑そうに、面倒くさそうに見える料理を難なくこなすアリサ姉さんが面倒くさがり屋ってなら私達どうなっちゃうのよ?
「ああ、いや……まぁそれは好きだからであってだね……簡単に言っちゃえばさ~わざわざバトルせんでもなんとかならんかね? って、思っとるんですよ~アリサさんは~」
「え!? それってどういうこと……になるんですかぁ~? ワタシちょっとわかんないですけど……」
おおっ!! それは良いわね! 私も正直『幼女神』を傷付けるなんてしたくないのよね。あの子達みんな可愛いし、だからアーグラス達も封印って手段を取ったんだろうし。ミュンルーカがアリサ姉さんの意図を掴めず、頭に?を浮かべてるわ、ちょっと説明が必要みたいよ、アリサ姉さん?
「簡単に説明するとね、この『神剣レリルティーネ』には、『呪いを受けたポコ』が封印されてるんだ」
「然り。故に封印を解き、俺達総出でポコ様を抑え、アリサ様にその呪いを解呪していただく。と言うのが今回の作戦ですな!」
うん。私もさっきレリルティーネを手にとって確認したからそれは間違いないわ。そして今ガウスが言った作戦を実行するとこだった。
「そこで、アリサさんは考えたのです! なんとかしてポコちゃんだけを封印から解いてあげられないかなって。そうすりゃわざわざバトルせんでもよくない?」
はああぁぁぁーっ!? いやいや待ってよアリサ姉さん! 普通に考えてそんなの無理じゃない!? 呪いとそれを受けた者は一心同体というかセットというか、そういうもんじゃん? ほら、みんなもポカーンって顔をしてるんだけど?
「オーケーオーケー。予想通りの反応だね。『呪いはかけるもの』『呪いは解くもの』って言う先入観は私にもあったからよくわかるよ。でもさ、私ってば一回やってんだよね……ネハグラとジャデークの時にさ♪」
「あ! そう言えばそうじゃったな! あの時アリサ様はあの二人に掛けられた呪いを椅子に移しておった! では、それを応用すれば今回も!?」
はへーっ!? マジで!? 確かに私達は「呪い」って聞けば真っ先に「解呪方法」とかが思い付くけど……あ、いや……待てよ? そんなに詳しくないから知らないけど、確かに「呪いを移す」って手段は結構取られたりするわね。なんか身代わりの御守りとか、人形とかだったかな?
珠実が嬉しそうな声を挙げると、みんなもなるほどと言った風に感心しているわ。うん、私もそう。流石はアリサ姉さんね! 柔軟な考え方だわ!
「うんうん♪ じゃあ、そんな訳だからティリア、ちょこーっとヨダレちょうだい?」
「は……? え? よ、ヨダレ!? い、イヤよ!! アリサ姉さん急に何言い出すの!?」
感心してすごいすごい! なんて思った矢先に変なこと言い出すこの姉である! ヨダレって何よ!? こんなみんながいる前で汚い真似出来ないわよ!
「いいじゃないティリア。ヨダレくらい出してあげなさいよ?」
「そうですよ! ポコを救うためです! 主神様ならそのくらいやって下さい!」
私が嫌だって言うと、クスクスって笑うヴィクトリアに、真剣な顔でお願いしてくるアルナが迫ってきた。いや、私だってポコを助けたいけど、だからってヨダレはないでしょ!?
「あの~アリサ様? なぜティリア様の唾液が、ポコ様の呪い対策になるのでしょうか?」
「アリサ様の事だからふざけているわけではないわよね? それにティリア様をご指名なのも理由が?」
ヴィクトリアとアルナにプレッシャーかけられて、あうう~ってジリジリ後退していると、ムラーヴェとニャモがナイスフォロー! 私に迫る二人もその答えが気になるようで、そちらに注目した。
「うん。それはティリアがこの『神剣レリルティーネ』を創ったからだよ。ヨダレは本人認証として使わせてもらうつもりなの」
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【こんな方法が!】~わかりません~《アルティレーネview》
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「あの~アリサお姉さま? それでしたら『神血』でいいのではありませんか?」
「そうだよ! なんでわざわざヨダレにすんの! バッチィじゃんか!?」
「えー? だって血出すんじゃ痛いじゃないの?」
いえいえ! 絶対ヨダレよりマシですってば! もぅ~アリサお姉さまったらビットの時に使用した秘薬といい、どうして私達女神を辱しめようとするんですか!?
「うふふっ! そうね、『神血』の方が効果も高いし、神々の間では一般的ね」
「な、何よ! それならそうとちゃんと言ってよアリサ姉さん! ヴィクトリアも知っててふざけたわね!?」
私とフォレアがそう、アリサお姉さまに進言すればヴィクトリアが可笑しそうに笑って付け加えます、それにティリア姉さまがプリプリと怒ってますけど……
「だって、貴重な主神様のヨダレダラーの瞬間を見れると思ったんですもの♪」
とか、言い出す始末です。本当にヴィクトリアは人をからかうのがお好きで……はぁ、まったく変わっていませんね。
「いやいや、ヴィクトリアちゃんや。別に貴重でもないさね、この子結構だらしないからね? スイーツ作ってる甘い匂いにヨダレ垂らして今か今かと席に座ってソワソワしたり、昼寝でぐでーってヨダレ垂らしながら寝てたり……」
「きゃーっ! やめてアリサ姉さん!」
追い討ちの如くアリサお姉さまが、ティリア姉さまのだらしないところをつらつらと並べ始めると、いたたまれなくなったティリア姉さまが慌てて止めに入りました。無理もありません、よりによって、からかい好きのヴィクトリアに暴露しているのですからね。
「うぐぐっ……ティリア~! 貴女はもっと主神としての自覚と言うものをですね!」
「うっふっふ! そうなのねそうなのね!? とても素敵な情報を有り難うアリサさん♪」
そしてアルナはちょっと生真面目と言うか、お説教する気質があると言いますか……まぁ、そんなアルナとヴィクトリアに詰め寄られてティリア姉さま、ちょっと可哀想なんて思ってしまいます。
「ハイハイ。んじゃ、ティリア。ちょこっと一滴このレリルティーネにあんたの血を垂らしてちょうだい」
「わ、わかったわアリサ姉さん! ホラホラ、あんた達! もう勘弁してよ? ポコを助け出すんでしょ!?」
「はっ! そ、そうです! その通りです!」
「ふふ、仕方ありませんね。今はこのくらいにしてあげる♪」
わいわいと騒ぐその三人の様子に話が進まないからと、アリサお姉さまの一声がかかり、ティリア姉さまが解放されました。
いつの間に用意したのか、アリサお姉さまの前には台座が用意されていて、そこに『神剣レリルティーネ』が寝かせられています。ティリア姉さまはアリサお姉さまの隣に立ち、指に針を刺して一滴の『神血』を垂らしました。
「アクセス……はい、これでいいのかしらアリサ姉さん?」
「オッケーじゃあ、ちょいといじっちゃいますか!」
フワァァーと『神血』がかけられたレリルティーネが淡く発光し、見つめるアリサお姉さまとティリア姉さまを照らしています。私も側で見てもいいでしょうか? 参考までにどのような手段でポコと呪いを分けるのか興味があります。
「ああ、アルティ。あんたの権能も応用させるからね? よく見てて、『神剣レリルティーネ』に『呪いを受けた幼女神ポコ』がいるよね?」
私の権能も応用って、『絶対命中』の事でしょうか? 一体どのようにするのでしょう? アリサお姉さまの言う通り、ティリア姉さまの『神血』を受けたレリルティーネをじっと見つめます、『神血』が描く魔方陣には確かにポコの姿がありますね。
「これらをまずは書き換えるから。『神剣レリルティーネ』と『呪われた幼女神ポコ』を……こうして、こうすれば。よし、これで『呪われた神剣レリルティーネ』と『幼女神ポコ』とに分けられたわ」
アリサお姉さまの目には、『神剣レリルティーネ』の概要の詳細が書かれた文章でも見えているのでしょうか? 私達には見えない何かが表示されている……と、思われる中空を指でなぞり、それを両の手で交差させました。
「後は、こうして~ふんぬっ!!」
ポポーンッ!!!
「ああっ! ポコーっ! ポコです! ポコが封印から解かれました!」
アリサお姉さまがおもむろに魔方陣に両腕を突っ込んで、何かを引っ張り上げる様子を見せれば、なんとそこには封印されていた『幼女神ポコ』が引き摺り出されたではありませんか!? これにはアルナも驚きの声を挙げて側に駆け寄ってきます。
「意識はないようだけど、一目見れば安心できる寝顔ね? まったく、とっても幸せそうな顔して……アルナ、ポコをポコポコしてやったらどうかしら?」
「ヴィクトリア。貴女のダジャレはつまらないので少し自重してください」
一緒に駆け付けたヴィクトリアも、アリサお姉さまに引き摺り出され、横になっているポコの姿を確認しています。私もそのポコを見ましたが……ええ、くかーくかーと大口を開けては時折、ポリポリとお腹を掻いて……なんてだらしない寝相でしょう。ですが、これなら心配もいらなさそうですね。まったく呪いによる邪気を感じません。
「でもって、この『呪われた神剣』は取り敢えず、こうして『神々の雫』張った水槽に~ポチャーンしておいて、後で私の『無限円環』に持ってって完全に解呪しとくからね♪」
凄いです! アリサお姉さまのお陰でポコとの戦闘になるかもと思われていたのが、見事に回避できましたよ! うぅ、でも終始見ていましたが、私には何をやってるのかさっぱりわかりませんでした……トホホ。私ももっと頑張らないといけませんね。
アリサ「……うぅ(>_<") 痛い痛いって!o(T◇T o)」
ティリア「ちょっとアリサ姉さん!( `□´) そんなに意識させられたら、ホントに痛いって感じちゃうからやめてよ!(`ε´ )」
ヴィクトリア「ああ~ほらほらヾ(・ω・`。) チクーって! ティリア、チクーって!( *´艸`)」
ルヴィアス「うわ( ; ゜Д゜) なんか言われると見てる方も痛くなってくるような錯覚を覚えるな!?(x_x)」
アルティレーネ「た、確かになんだか私も指先がチクチクしてきたような気がします!( ゜Å゜;)」
ティリア「あ、あんた達までーっ!(≧□≦)」
レウィリリーネ「……( ̄0 ̄)/ ヨダレにしとくティリア姉さん?(´∀`)」
フォレアルーネ「ヤダ~♪Ψ(`∀´)Ψ ティリア姉ってば、ばっちぃなぁ~ヽ(゜∀゜)ノ」
アルナ「もう!(`□´) ヨダレだろうが血だろうがどっちでもいいから早くっι(`ロ´)ノ」
ミスト「あはは( ̄▽ ̄;) でもポコ様がヨダレで復活~なんて聞いたら怒りだしそうです(;´∀`)」
ブレイド「んじゃやっぱティリア様の血か~(・о・) 人差し指をこう~」
ミーナ「にゃむー( ゜皿゜)」
ブレイド「痛てぇーっ!Σ((゜□゜;)) 噛むなよミーナぁ~!(;Д;)」
アリサ「あー(´∀`;) 猫の顔に指近付けるとスンスン臭い嗅いでからのあむちょがくるんだよねぇ~(((*≧艸≦)ププッ」
ティリア「あーもうo(`Д´*)o ささっとやっちゃうわよ!(`へ´*)ノ」




