96話 勇者達と『神器』そして『神域』へ
アリサ「いやぁ~暑いねぇ(×_×)」
ティリア「こっちじゃ季節は冬だけどね(^_^;)」
アルティレーネ「世間じゃお盆で夏休みですか(*´∇`)」
レウィリリーネ「夏休み……なんていい響き( ´ー`)」
フォレアルーネ「ぷふふ( *´艸`) みんな満喫してね!(ノ≧▽≦)ノ」
アリサ「私は暫く引きこもります!( ・`ω・´)」
ティリア「(-ω- ?) あー(・о・) あのホラーゲームが遂にβ版リリースされたからね!?( ・∀・)」
レウィリリーネ「ホラー!?Σ(゜ロ゜;)」
アリサ「ウヒョヒョ♪(゜∀゜) 楽しみでしょうがないのだよ!ヽ(*≧ω≦)ノ」
フォレアルーネ「怖いゲームって面白いのかな?(,,・д・)」
私「ふふふ( ̄ー ̄) 新たにゲームコントローラーも買ってしまった。:+((*´艸`))+:。 キーボード操作苦手なもので( ̄▽ ̄;)」
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【悲しき骸】~英霊の眠る地~
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「落ち着かれたかの、アリサ様や?」
「うん、うん……ごめんね珠実、ユニ……みんなも。取り乱しちゃったね」
アイギスたち『白銀』の前世の姿であるかつての勇者達。その彼等に授けられた『神器』を探すため、アリスから案内された場所で『聖域』の記憶を垣間見た私は、そのあまりにも壮絶な、あまりにも悲劇的な内容に我を失ってしまっていた。
そんな放心状態の私の前にいつの間にかやって来ていた珠実の姿を見て、私は泣きじゃくってしまったのだ。
「妾の願いを聞き届けてくれたことに感謝するのじゃアリス。よう今まで護ってくれた」
「いいんでっすよぉたまみん。アリスも彼等をゆっくり休ませてやりたかったでっすし……たまみんが願わずとも、こうしてまっしたよ」
どうも珠実は『神器』の在処を最初から知っていたのだそうだ。いや、と言うよりも、珠実こそが『神器』をこの場に安置したのだと言う。最初は「知らぬ」と嘘をついていたのは、『神器』を得るには『聖域』の過去を観る必要があったため。その凄惨な内容に観る者の心が潰れてしまわないようにと、心配をしての配慮だった。
アリスに感謝している珠実が「護ってくれた」と言っているのは、はじめこの「場所」の事を指しているのかなっておもったけれど……アリスの口振りからもしかしたら違うのかな?
「場所も勿論なのじゃが……そうじゃな、ここまで来たのであれば、皆にも一つ祈りを捧げてもらおうかの……?」
「でっすね、ご案内しますよマスター。この大樹はユニちゃん先輩程じゃないんでっすけど、『神器』が奉られたことで聖樹に成長して、永い時の流れから今まで彼等を護って来たんでっす」
気を持ち直し、立ち上がる私に珠実とアリスがそう言って振り向いた。二人の表情は優しいけど、どこか悲しそう。肩に乗るミーナをそっと撫でて、隣のユニの手をぎゅっと繋ぐ。そして、アイギス達『白銀』と目を合わせて、みんなで頷いた。
それを確認した珠実とアリスも頷き、目の前の巨木にひざまづき……
「聖樹よ……今までよう護ってくれた……」
「永い間お待たせしましたねぇ~ようやく彼等が還って来てくれたんでっすよぉ?」
瞳を閉じて、静かに手を合わせ祈る珠実とアリス、二人の後ろ姿を静かに見守り、大樹を見上げる私達。
「返還の時が来た……さぁ、聖樹よ。妾達に見せとくれ……」
フワアァァ~……
大樹から広がる光輪が天から降りてくる……正確には大樹の頂からか?
ゆっくりと降りるその光輪は徐々に地に降りて霧散した、そして目の前には……
「あ、あれは……!」
「そんな、なんて事!?」
アイギスとレイリーアがその光景に思わず息を飲む。それは、眼前にたゆとう四つの『神器』を見て……ではない。
その下。大樹の根元。そこに現れた物に対しての驚愕である。
「ラインハルト……」「サーニャ……」
ゼルワとサーサが呟いたその目線の先。二つの白骨……下半身のない骸を右の上半身のない骸が抱き抱えるように……仲睦まじい恋人が寄り添うように……そこに佇んでいた……
「……っ!」
私は思わず、口に両の手を当て、溢れ出す感情を押し殺していた。涙が止まらない……止められない。そのあまりにも悲しい光景に……記憶で観たあの二人の姿が重なって、気を抜けば泣き崩れてしまいそう!
「そっか……ずっと、ここにいたんだね……ラインハルトお兄ちゃん、サーニャお姉ちゃん」
「ユニ殿……」「ユニちゃん……」
気付けばユニがその二人の骸の前に立ち、そっと優しく撫でた。そんなユニを目で追って思わずと言った感じで呼んでしまうのはドガとレイリーアだ。ううん、その二人だけじゃない、言葉には出さないけど、みんながユニから目が離せなかった。
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【『想い』を拾って】~感謝~
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「ごめんね……お兄ちゃん、お姉ちゃん……ユニとこの世界を守ってくれてありがとう……」
「……私からも、感謝するわ。貴方達が命懸けで戦ってくれたから、今こうして私達は一緒にいられる……いくら感謝しても足りないよ……本当に……本当にありがとう」
ありがとう……この世界を繋いでくれて……貴方達が紡いでくれた今を、私は精一杯守り通して見せるよ。そう、心からの想いを乗せて、ユニの隣にひざまづいて私はこの偉大な二人の骸に祈りを捧げた。
「私も誓おう。貴方達が成した偉業、その信念を受け継ぎ、今再び始まろうとしている戦いに勝利することを!」
「へっ! それなら俺はお前みてぇにヘマ打たねぇって誓っとくかな! サーサも世界も守り通して、最後は大団円で終わらせてやるから、ちゃんと見とけよ!?」
「ふふっ! そうですね♪ 私も誓います。全部終わらせてアリサ様達とのんびりだらけた日々を過ごすんです!」
アイギスを皮切りに『白銀』のみんなもひざまづいて、思い思いに宣誓の言葉を告げていく。力強くアイギスが彼等の思いを引き継いでこの先の戦いに勝つぞ! って言えば、ゼルワはラインハルトに対して啖呵を切って、サーサと笑い会う。
「ナーゼはホントにハイエルフなのが嫌だったのねぇ~まぁ、お陰で自由気ままなダークエルフに転生できた訳だし、一応お礼言っとこうかな? ああ、そうそう。私達が負けるなんて事ありえないからね? 安心して寝てていいわよ♪」
「まったく、ジドルは肝心な時に役に立たんのぅ~? まぁ、見とれお主等。今度の戦には最後まで儂がおるでの!」
暫し瞑目しての黙祷を捧げた後、レイリーアとドガは笑ってズゲズゲと言いたいことを言いまくっている。ワハハハ! っていうドガの元気な笑い声に自然と沈んでいた気持ちが浮上してくるのがわかる。
「みなさん……まったく、気が早いのなんの~ったら、ありゃーしませんねぇ~♪」
「おのれらは~あれだけアリサ様にこてんぱんにのされておいて、まーだ調子に乗りおるか?」
そんな『白銀』達に苦笑いを見せるアリスと珠実、「いやいや! 調子に乗ってるんじゃなくて気合い入れてるんですって!」って弁明するゼルワ達を見てたらなんか、私も可笑しくなってきちゃった。
「あははは! もう~さっきまで凄くしんみりしてたのに、あんた達ときたら、しょうがないんだから♪」
「にゃあ~ん♪」「あはは、ホントだね!」
ふふっ、きっと私達を気遣ってくれたんだよねみんな? ありがとう……その気持ちがとっても嬉しいよ。しんみりとした空気はみんなの笑い声に掻き消されて、私もミーナもユニも笑顔で笑い合った。そして……
「うん。そっか、少しだけど残ってるね……任せて。この聖樹を媒介に少し増幅してあげれば、大丈夫。でも、流石にこの場から離れるのは難しいかな?」
「アリサ様? どうされたのですか?」
ラインハルトとサーニャの亡骸の前で、なんかブツブツ言い出した私は端から見ればさぞや、やべぇ女なんだろうけど、ここにいるのはみんな身内だから大丈夫。アイギスが不思議そうに私を見つめてきたのでお答えしましょうね。
「残ってるんだよ。ちょっとだけね……この大樹と『神器』のおかげだろうね」
「「「…………え?」」」
みんなが一瞬「何のこっちゃ?」って顔するのがちょっと面白い。そして、察したのだろう。揃って、バッ! って勢いよく二人の骸に顔を向けて驚いた表情を見せた。
「ぷふふ♪ さっきのあんた達の啖呵に一体どーんな反応返してくれるんだろうねぇ~?」
ちょっと楽しみだなって思い、私は彼等の微かに残った『想い』を拾って、みんなにも見えるように働きかける。私の神気と、聖樹とまで言われたこの大樹の助力があれば、希薄な存在になっていようと具現化できるだろう!
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【きゃああーっ! オバケ!?】~ちょっとホラー~
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「……おや? アリサ様……別に何も起こらないようですが……?」
「やや、やっぱり! ほら! 流石に時間が経過し過ぎてて、アリサ様でも彼等の『想い』を拾いきる事が出来なかったんですよ! あー、びっくりしたぁ」
ちょっと前に『セリアルティ王城跡地』で、『白銀』のみんなは、私が残された『想い』を拾い上げて、具現化し、その主との会話を可能にした事を覚えているから、私が今、何をしたのかというのも察する事ができたんだろう。
しかし、アイギスとサーサは「現れる」と身構えていたぶん、何も起こらない現状に、片やポカーンとした感じで呆け、片や身構えて、ちょっとビビってたのを隠すように、思いついた理由を並び立てる。
「……ホントにそう? サーサ、よく目を凝らして、耳をすませてみなよ?」
「え? あ、はい……えっと……何か……聞こえる……ような?」
私の言葉にサーサが、他のみんなも注意深く周囲に気を配り始めた。
ねぇ~?
「あっ! き、聞こえました!」「うん、確かに聞こえたわ!」
「なんか……微かに聞こえたな……」「うむ、しかし何処から聞こえてきたんじゃ?」
サーサとレイリーア、そしてゼルワと珠実も気付いたらしい。流石はエルフ族に狐っ子、耳がいいねぇ~♪ キョロキョロと辺りを見渡す『白銀』とアリスに珠実にユニ。
ねぇぇ~ってばぁ~? 貴女のその下半身~……
「え? え? なになに!? はっきり聞こえるよぉ~!」
「ちょちょっ!? マスター! これってなんなんでっす!?」
「あああ……サーニャじゃサーニャが妾達を恨んどる! 許してたもれ許してたもれ!」
キョロキョロがおろおろ、あわわっ!? って変わったね。聞き取りづらかった声は次第に大きくなって、今や誰の耳にも、その恨みがましいサーニャの声が聞こえている。ユニはともかく、アリスと珠実まで顔面を蒼白にして凄く焦ってるよ。
ガシィッ!!
「ひいぃっ!? あ、あああ……足、足を、誰かに掴まれました!!」
「サーサ!? って、うおおぉっ!?」
頂戴、ちょうだーい……私に頂戴よぉぉーっ!!
「「「ぎゃあぁぁーっ!!!?」」」「「「キャアァーッ!!??」」」
地面からニュッと生えた腕がサーサの足首をガッと掴み、次いでゆっくりと頭が、顔がせりあがってくる。その目は血走って狂気が溢れ、更にせりあがった口は口避け女のように耳元まで裂けており、浮かべた笑みがおぞましい! そのあまりに唐突で急な事態の変容に、みんなが叫び声を挙げた。
そんなに怖がるなよぉ~傷付くじゃないか……
「ひっ!? な、何よ今度は!?」
「ベベ、別の声でっすよ!?」
サーサに起きた恐怖体験を目の当たりして、ガグブルしてるみんなの背後から、また別の声がかけられる。咄嗟に振り返ったレイリーアとアリスが目にしたのは……
「「キャアアアアーッ!!!」」
全身を血に染め、右の上半身から今も尚流血している男の姿だった。
ケタケタと言うのが適切だろうか? 焦点の定まらない虚ろな目に、薄気味悪い笑い声を挙げて、その男はふらりふらりと、体を揺らしながら、時折、首をガクンガクンと前後左右に極端に曲げながら近付いて来る。
「ららら、ラインハルトっ!? い、いやじゃいやじゃ! 後生じゃから許してたもれ!」
「うう、わぁぁーんっ!! 怖いよぉぉーっ!!」
許さな~い……許さな~い……お前達の体~俺達にぃ~アタシ達に寄越せぇぇ~……
寄越せ~寄越せ~……
更には追加とばかりに、ボウッと左右に浮かび上がる二つの生首。髪の長い女と、前髪で目元を隠した男が抱き合ってわんわん泣く珠実とユニに迫って来ていた。
「あ、アーグラスとナーゼか!? お前達ユニ殿と珠実様に何をする気だ!?」
「おのれ! 主等化けて出おったか!? かつての誇りも失いおったようじゃな!?」
泣きじゃくる珠実とユニの姿を見て恐怖を振り切ったのか、アイギスとドガが身構えた。うん。こりゃ流石にやり過ぎだね。私もちょっと反省だ。
「はい。いい加減にしなさい馬鹿共! なに可愛いユニと珠実を泣かせてくれてんのよ!?」
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【勇者達】~お茶目な連中~
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《あはは♪ びっくりした? びっくりしたでしょ? ねぇ~?》
《はははっ! いやいや久し振りに笑わせてもらったぜ!》
《あんた達ビビり過ぎでしょ?》
《情けないぞ! 屍鬼や幽鬼との戦闘経験はないのか!?》
はい、そんなわけで種明かしです。この馬鹿勇者達の微かに残った『想い』を具現させるって決めた時に、こいつ等からちょっとした注文が入ったのだよ。言い出しっぺは最初に笑ってるサーニャね。内容は「ちょっとおどかしてやりたい」っていうもの。
してやったり~♪ とか喜んでるテケテケ女ことサーニャに、快活に笑いながら右の上半身からピュッピュと血を撒き散らす迷惑なラインハルト。あきれた表情のナーゼと、プンスカコラーって怒ってるアーグラスの生首ーズだ。
「バカ野郎! ふざけたおどかし方すんじゃねぇよ! 趣味悪い!」
「そうですよ! 足首掴まれて貴女の顔見たとき失神するかと思いましたよ!」
その事実を聞いたゼルワとサーサが真っ先に怒って文句を言うんだけど、サーニャは「なにおーぅ!?」とか叫んで、急に逆立ちして逆ギレし、ラインハルトも「こんなんでビビってんじゃねぇよ?」と、血を撒き散らしながら言い返して、ゼルワと睨み合う。
「急に逆立ちとか普通にキモイんでっすけど~? なんなんでっすこの足無し女!」
「アリサおねぇちゃん! こんなお兄ちゃん達ヤダー! 気持ち悪いよぉ~!」
《何ですってーっ!? アタシ達の何処が気持ち悪いのよオチビちゃん!》
《おい、アリサ! この無礼な女は誰だ!?》
そんな様子を見てたアリスとユニから大ブーイング。まぁ~そうだよね、私もキモいって思うし。おーヨシヨシ♪ 大丈夫よユニ~怖くないからね~?
「あぁんっ!? おいぃ? こら、こんの生首勇者! アリスのマスターを何馴れ馴れしく呼び捨ててくれてんでっすかぁ~? 様を付けやがりなっさいよ? 様をぉ!?」
「まったくもってアリス殿の言う通りだな。おい、貴様達。アリサ様とユニ殿への無礼は許さんぞ?」
ガシィッ!! って、アリスがアーグラスの。アイギスがナーゼの頭を掴んで、凄い剣幕で怒りを顕にしてメンチを切っている。二人とも女の子とヒーローがしていい顔じゃないでしょそれ?
《《あ、すいません……》》
《うきゃー! やめてよーっギブギブ!》
《うおぉぉーっ! やめろぉ~土を塗り込むなぁ!?》
さっきまでの勢いは何処へやら? アリスとアイギスに凄まれた二つの生首はシュンとなって、情けなく謝ってきた。首だけで何を粋がっているのやら……そして、逆立ちなんかしてサーサに取ってかかったサーニャは、サーサの脇で首を絞められて拳骨をこめかみにグリグリされて、たまらずサーサの腕をタップして降参宣言。ラインハルトはゼルワとドガから傷口に土を塗り込まれて騒いでる。
「うるせぇよ! 汚ぇ血を撒き散らすオメェが悪い!」
「そうじゃそうじゃ! 止血してやっとるんじゃ有り難く思わんか!?」
ギャーギャーワーワー!! いやいや、もうやかましいのなんの。私はそんな風に騒ぐみんなを見て思わず苦笑いしちゃう。ふふっ、さっきまで重く受け止めてたアーグラス達の成した偉業も、こうなっちゃうとだいぶ軽く感じちゃうね。
「ぷっ! ふはは♪ 何やらしんみりとしておった自分が馬鹿らしくなってきおったわ!」
「あはは♪ ホントだねたまちゃん! 気持ち悪い見た目になってもやっぱりお兄ちゃん達は変わってなかったよ」
私の後ろに隠れてた珠実とユニもみんなの馬鹿騒ぎを見て笑い出した。どうやら口振りから察するに、アーグラス達も基本的に明るく楽しい連中みたいだね。どうしても悲劇的な結末を向かえたとこに目が行きがちだけど、実際の彼等はこんなに面白いんだってわかったよ。
《あー、ヒデェ目にあったぜ……まぁ、おどかしたのは悪かったけどよ……
改めて挨拶しよう。俺はラインハルト。『神槍アルティリオン』とその骸にほんの少しだけ残された思いの残滓だ》
《同じくサーニャです。サーサとは夢で会ったりしてたけど、他のみんなとは初めてだったりするよね?》
《あ、アタシはナーゼよ! 九尾ちゃんが珠実ちゃんで……え? 『世界樹』の『核』? へぇ~こんなに可愛い女の子だったのね♪》
《アーグラスだ。九尾は久し振りだが、アリスは『聖域』の意志で、ユニとその猫と一緒でアリサの『聖霊』なのか……なんだか凄い事になっているな!》
さて、ぎゃいぎゃい騒ぐのも落ち着いたところで、改めて挨拶だ。今ラインハルトが言ったように、彼等は『神器』とこの大樹に保護されていた勇者達の想いの残滓。各々が転生を果たしている以上、そう長くは留まってはいられない存在だけど、さっきのように少しくらいの馬鹿は許されているので、少し話を聞こう。
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【『神域』】~友に会うまで~
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《話と言ってもだな……大体の事は夢の中で伝えた通りだ》
《だな。今じゃお前達は俺達の力を凌駕して、遥か先にいる。アドバイスも何もないだろう?》
ふむ、やっぱり『無限円環』内での訓練でアイギス達『白銀』は、既にアーグラス達を超えていたようだ。アーグラスとラインハルトが揃いそう言うのだから間違いないんだろう。
《ただ一つ気掛かりなのが、私達が倒した魔王達は、もしかすると本調子じゃあなかったかもしれないの》
《そうね……あのリドグリフが最後に「馴染んでおらぬとはいえ、我を退けるか……見事。汝等と再び相見えるのが楽しみだ」とか言って消えてったのよ?》
サーニャとナーゼの台詞に私はなるほどって思った。と言うのも、強くなったみんなを見て、ティリアが「まだ不安だ」と言っていた意味がわかったからだ。
正直に言うと今現在、我々『聖域組』の強さは、アーグラスが戦っていた『魔神戦争』の時代を遥かに凌ぐ戦力が整えられている。しかし、その戦力を見てもティリアは不安だと言う……それはつまるところ、復活する魔王は以前より強くなって現れるからだ。
「後でルヴィアス様あたりに確認してみましょうか……私達も油断するつもりは毛頭ありませんが、情報はあっても困りませんし」
「そうじゃな。十分有意義なアドバイスじゃの……感謝するぞい!」
それに応えるサーサとドガだ。今の彼等には傲りや慢心は微塵もない。一度私を相手に全力でかかって来たのを、ちょっと目を覚まさせてやるつもりで負かしてやったからね。
まぁ、それ以来『白銀』だけでなく、『黒狼』に『猫兎』に『偵察部隊』に『冒険者候補』、果ては『四神』も『懐刀』達までもが気持ちを改めた様子だった。
《それはよかった。今のお前達なら安心して任せられる……》
《ああ、だが……消える前に、どうか一つ頼みを聞いてもらえないか?》
そんな情報にも動じる事のない私達に対し、少し驚いた顔を見せた勇者達。でも、直ぐに安心したような安らかな表情に変わり、頼み事をしてきた。
《アタシ達の仲間……ジドルに会わせてほしいのよ》
「……ジドルか。さっきの話に出たリドグリフとの戦いで果てたのよね?」
《はい、『聖域の魔女』アリサさん。どうか私達を全員揃えて天に還してほしいのです》
ナーゼの願いに確認をとれば、サーニャが答える。どうやら彼等は再びジドルと……仲間と全員揃って還りたいのだと言う。
《いくつかに別れ、残された思念も、もはやこれだけだ……》
アーグラスの言う思念ってのは、あれだ。私がメルドレードの影と戦った時に現れた光の玉状態のアーグラスだろう。アイギスの夢の中に出てきたのはアイギスの魂の記憶から引っ張り出しているのでノーカン。
《『神器』は好きに使ってくれ。それで、俺達の代わりに女神達に返却してくれると助かる》
《アタシ達ここで待ってるからさ、お願い! ジドルを連れて来て!》
ふうむ、なるほど……アーグラス達のお願いはよくわかったけど、どうしたものか。先にも説明したが、彼等がこうして残っていられるのは『神器』とこの大樹が保護してくれているからだ。そして私達はその『神器』を求めてここにやって来た。
つまり、『神器』を私達が回収してしまうと、その保護を失った彼等は有無を謂わさず消滅してしまう事になる。それなら、私の『無限円環』で保護出来ないか? 否。『∞』を通過する際に保護が切れ、たどり着く前に消滅するのがオチだ。
「うん! わかったユニにお任せだよ♪」
「え? ユニ、どうにかできるの!?」
私が、「はて、どうしたもんかしら?」って考えを巡らせていると、ユニが自信満々に彼等に答えた。そんなユニを驚いた表情で見るのは私だけじゃなくて、みんなも一緒だった。
「えへへ~♪ 『世界樹』にはね、『神域』ってお部屋があるんだよぉ~? そこはね、神様達の通り道にもなってて、『神界』との『門』もあって~」
とりとめのないユニの説明を要約すると、『世界樹』には神達が『世界樹』が植えられた世界……今回の場合『ユーニサリア』だけど。その世界に顕現するにあたって、その意識を飛ばし、『世界樹』に対し、『門』を開くように申請する場所があるのだそうだ。
「ほう、ではその『神域』で『世界樹』に申請し、許可が得られれば神が世界に顕現するための『門』が開かれるのじゃな?」
「うん! その『神域』にある門を『神域門』って呼んでて、実際にこの世界に現れる門が『顕現門』って呼ばれてるよ~♪」
や、ややこしい……今の珠実とユニの会話をもうちょっと簡単に考えてみよう。つまりは『神域門』ってのは、アクセス許可を通すかどうかを判断する仮想的なセキュリティか? その許可を得て初めてこの世界に顕現するための『顕現門』……『聖域』を再生するため、ティリアを呼んだ時に妹達が開いたあの『門』が開くって事らしい。
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【星空の大地に】~零れる涙~
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「おいでおいでユニの葉っぱ達~♪ お兄ちゃん達を『神域』にごあんな~いだよぉ!」
サワサワサワーッ!
ユニが両腕をばんざーいってしたあと、グルグルと回し始めた。すると、木々の葉擦れの優しい音色が近付いて来るではないか。気付けば辺り一面を『世界樹』の葉が取り囲んでいる。
「おぉぉ~! ユニちゃん先輩ってばいつの間にこんな事出来るようになったんでっす!?」
「えへへ~凄いでしょ? 『無限円環』でぱわああっぷしたのはみんなだけじゃないんだよぉ~♪」
話を聞くと、私の『転移』ほど利便性はないが、この世界樹の葉でユニはいつでも何処からでも『世界樹』への帰還が可能なのだそうだ。アリスと同じく私もユニがいつの間にこんな芸当を身に付けたのか気になったけど、どうも『無限円環』で色々お勉強したらしい。
「ユニちゃん凄いわ! 流石アリサ様の妹ね!」
《この葉には随分手を焼かされたからちょっと複雑だけど、ふふっユニちゃんの笑顔見てたらどうでもよくなっちゃうわね!》
「ふぅむ、神の通り道ともなればこの場より強い保護が得られるのじゃな?」
レイリーアとナーゼがユニを褒めて、珠実もなるほどと頷く。いや、ホント凄いやユニは! 以前に妹達がユニはこの世界の力を使えるようになる。ような事を言ってたけど……その片鱗を見てる気分だね!
「うんうん! アリサおねぇちゃんにはまだまだ及ばないけど、ユニも頑張っちゃうからね♪ じゃあいっくよぉ~? え~い!」
サアァァァーヒュオォォンッ!!!
ユニの声に応えた世界樹の葉が、その回転を速くして行くと同時、優しい緑色の光を放ち私達を包み込んだ。一瞬目に映るすべてがホワイトアウトして、視界が変わる。うん、この辺は『転移』と同じのようだね。
「おおぉ? これは……夜空って言えばいいのか?」
「じゃが、しっかりと足が地に着いとる感覚があるぞい?」
「素敵……星空に立っていますよ私達!」
視界の開けたその先は満天の星空……まるで宇宙空間のような場所だった。見慣れた土や草、岩場等と言った大地ではなく、右も左も上も下も星が煌めく夜空だ、ゼルワとサーサはしきりに驚き、ドガはそんな星空の大地にも、しっかりと足に感じる踏みしめた感覚を確かめている。
「着いたよ~『世界樹』へようこそ~♪ ここがさっき言った『神域』っていう……ん~お部屋? ここでなら勇者のお兄ちゃん達もあんてーしたじょーたい? でいられるんじゃないかなぁ?」
「うん……確かに『神域』って名前だけあって、凄い神気に満ちてる……ここでなら『神器』を介さなくともアーグラス達を留まらせていられると思う」
《そうか! ジドルと再会するまでで構わない……アリサ、頼めるか?》
ユニのほわわ~んってした歓迎を受けて、私は改めてこの『神域』に満ちている『神気』の質……? なんて言えばいいだろう? 大きさというか、濃さというか……それらを感じ取り、これなら希薄な存在のアーグラス達勇者一行をなんとか繋ぎ止める事が出来ると確信した。
この『神域』に満ちる『神気』を勇者達の存在の保護にあてるようにして、彼等の『想い』を組み直す。ビットのように、転生もせず留まっていたのなら同じ方法で『疑似体』を用意してあげられたのだけど……
《十分だ、ありがとうアリサ様。俺達は実態のない思念だからな……》
《そうなの、アタシ達って『根源の核』すら持たない『想い』だけの存在にすぎないの》
《そんな曖昧で不安定なものですし、転生も果たしていますから……》
《ああ、だから……泣くな、妹弟子よ》
ラインハルトが、ナーゼが、サーニャがそしてアーグラスがそれぞれに優しく声をかけてくれる……わかってる。彼等は一時的な存在だってわかっているんだけど、やっぱり悲しい。
私の魔法で組み直されて、首だけだったアーグラスも、うっすら透けてしまってはいるが、全身を取り戻して、その手を私の肩にポンって置く。
《ありがとう。ここまでしてくれて本当に感謝する》
そんな兄弟子の感謝の言葉に、私は頷いて涙を一つこぼした……
サーサ「それにしてもなんですかサーニャ(ーー;)? 逆立ちとか意味わかりませんよ(。・`з・)ノ」
サーニャ《え~(・д・`;) だって私足ないからズリズリ這って移動しなきゃいけないのよ?(・о・)》
ラインハルト《っていうかゼルワは何で斥候なんだよ!?(゜Д゜#) 槍使えねぇだろお前!(`□´) どーすんだこのアルティリオン!ヽ(´Д`;)ノ》
ゼルワ「別に使えなくはねぇぜ?( ・`ω・´) メインが短剣とか軽めの武器だからよく誤解されるけどな(・д・`;) まぁ、サブウェポンとして使うさ(゜ー゜)(。_。)」
ナーゼ《レイリーアは相変わらず自由を満喫してるようで何よりね(*´∇`)》
レイリーア「ええ(^ー^) お陰様で堪能してるわ、素敵なダーリンもできたし!O(≧∇≦)O」
アイギス「そう言えば『剣聖剣技』はアーグラスがメルドレードから受け継いだんだったな(・-・ )」
アーグラス《ああ、だからアリサは妹弟子ってことらしいぞ?(;・∀・)》
珠実「なんじゃ~?(^o^;) お主達まるで朋友のようではないか(´・∀・`)」
ドガ「ほっほっ(´∀`) 夢で散々ぶつかり合った仲ですからのぅ(^◇^)」
アリサ「ほらほらあんた達!(; ・`д・´) ちゃんとアリスとユニにもお礼言いなさい( ̄^ ̄)」
英霊達《あ、はーい!ヽ( ・∀・)ノ ありがとうアリス、ユニ!(ノ≧▽≦)ノ》
アリス「あっはっは(*≧∀≦) いいんでっすよぉ~ヾ(^^ヘ) ジドルが来るまでのんびりしててくだぁさいね?( *´艸`)」
ユニ「この『神域』って、なぁ~んにもなくて退屈かもしれないけどねぇ~?(((*≧艸≦)ププッ」
サーニャ《いえいえ~でもあの『世界樹』がこ~んなに可愛い女の子だったなんてビックリですよ♪(≧▽≦)》
ナーゼ《それを言うなら『聖域』の意思がアリスちゃんなんでしょう(´・ω・`)? いいわねぇ~、この子と一緒ならとっても楽しそうよね!(ノ^∇^)ノ》
ラインハルト《九尾も珠実とかいい名前もらえて良かったな♪(o・ω・o)》
ユニ「ユニもみんなと一緒に遊んでみたかったなぁ~(。・ω・。)」
アリス「ま、精々見守っててくだぁさいよぉ(*´▽`*)」
珠実「そうじゃろうそうじゃろう( *´艸`)? もっと褒めて良いのじゃぞヽ(*≧ω≦)ノ」
英霊達《うんうん(゜ー゜)(。_。) でも、やっぱり……(^ー^)》
ミーナ「うなぁ~ん(’-’*)♪」
英霊達《この子可愛い~♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪》
アーグラス《たまらんな(*´▽`*) 撫でられないのが残念だ(>_<)》
アリサ「あはは(´▽`*) ミーにゃんはどこに行っても大人気だわ。:+((*´艸`))+:。」
アイギス「流石はミーナ殿ですね( ´ー`) まさに最強の存在に相応しい( ・`ω・´)」




