95話 聖女と『聖域』の記憶
アリサ「あい(´・ω・) 今回ちょっと残酷な描写がありますよ(>_<)」
アリス「これ大丈夫でっす?( ; ゜Д゜) 後で文句言われたりしまっすかね?(;´゜д゜)ゞ」
アイギス「う~ん(ーー;) 私が登場した時と似た感じですが、どうでしょうか?(^_^;)」
レイリーア「まぁ、なるようになるわよ!(°▽°)」
サーサ「取り敢えずシリアス注意報出しておきますね(o゜з゜o)ノ」
ゼルワ「今回のシリアスは何話続くかな(´・ω・`)?」
ドガ「どうせ直ぐに笑い話に変わるワイヽ(*´∀`)ノ」
ユニ「あはは(^o^;) 取り敢えずえつらんちゅーいでお願いしまーすm(_ _)m」
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【今日の晩ごはんは】~お鍋です!~
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「ウッキーッ!!」「ウッキャーッ!!」
「おー、いつぞやのどんぐりモンキー達じゃねぇでっすか? な~んか懐かしいでっすねぇ♪」
ビュオンッ!!
パシィッ! って、今アリスが声に出したどんぐりモンキーがプレゼントしてくれたどんぐりを受け取って、そのお礼にミーナの遊び相手になってもらうべく、ミーナをご紹介。
「にゃんにゃーん♪」
「ウキィッ!」「ウキャーッ!!」
ササササーッ!! あれま、あっという間に逃げてっちゃったよ? なんでだべ?
「あらら? ミーにゃん大先輩を見て逃げやがりまっしたよアイツ等?」
「いや、あんな魔力込められた弾丸みたいなどんぐりをあっさり受け止めて、ミーナちゃんけしかけられたら、ねぇ?」
「にゃあぁ~ん?」
きょとんとするアリスをよそに、レイリーアが少しあきれたように私とミーナを見てる。ミーナもなんで~? って一鳴きだ。お友達になれなくて残念だったね?
はい、皆さんこんにちは! 聖女なアリサです。
今、私達は『白銀』の五人と私の『聖霊』達で、失われた『神器』を求めて、この『聖域』を探索しているところです。
なんだかんだ言っても結構広いこの『聖域』だからね、武器一つ探し出すなんて大変だと思うだろうけど、そこは大丈夫! なんていったって『聖域』の意志の具現たる……
「ユニちゃん先輩、ホントにマスターみたいになりたいんでっす? あんな強烈などんぐりを難なく受け取っちゃう~でんじゃらーすな存在! みたいになっちゃいたいんでっす?」
「あっはっは♪ アリスちゃんだってあんなの簡単なクセに何言ってんの~?」
「聞こえたわよアリス~! 何を人を化け物みたいに言ってくれてんのかなぁ~?」
うひゃーっ!! ごめんなさ~い♪ ってテヘペロするアリスがいるからね。
アリスは今レイリーアと私に寄ってたかられてるけど、ユニの護衛も兼ねる為、基本ユニから離れないよう、離さないように注意を払い、この『聖域』の森の中を歩いている。私はミーナの護衛ね。
「ははは、あの猿相手に必死こいてたのが懐かしいぜ」
「そうですね……あのキノコいませんか? ふふふ……あの時の恨み、ギッタンギッタンにして晴らしてやりたいんですけどね♪」
あはは♪ ゼルワとサーサが言ってるのは爽矢と一緒に『聖域』の東を冒険したときの事だね? あの頃は『白銀』のみんなはまだまだ未熟だったから、お猿さんとか猪にお化けキノコ相手に四苦八苦してたっけ。
ふふ、な~んかサーサの気持ちもわかるなぁ~いや、またまた前世でやってたゲームの話なんだけどさ、RPGやってて、どんどんお話を進めて行くと強い魔物が現れて、あわや全滅! なんて目に会って、レベル上げしたり、お金集めて装備を見直したりして、「よっしゃ! リベンジしたる!」なんて事をね? みんなも経験あるかな? その後潜ったダンジョンの宝箱の中に、必死でお金集めて買った武器が入ってたりして、「おおおぃ!?」ってなるまでが、あるあるなんだよねぇ~♪
「アリサ様~活きの良い猪を仕止めたんじゃが、コイツ食えんかのぅ?」
ドスーンッ!!
おっと、話が少し脱線しかけたところに、ドガがでっかい猪を背負って私達の前に降ろした。コイツもあの頃アイギスとドガの二人がかりでやっつけたビックリノッシーだね。見たところ猪に外傷はないから、パンチでもかましたのかね? うむ、成長を感じるのぅ~♪
「おお、こいつは大物だな!」
「アタシ達だけで食べるのは量が多いんじゃない?」
その猪を見て感嘆の声を挙げるアイギスとレイリーア。確かにこの猪はでっかいね、持ち帰ってネハグラに解体してもらおうか? そして夜にお鍋にでもしてみんなで頂きましょう♪
「おっほぅ! 楽しみじゃわい! 爽矢殿やシドウ殿と一緒に清酒でこうくいーっと!」
「たまんねぇなぁ~♪ 俺、今からヨダレ出てきたぜ!」
「私も鍋は好きだな。皆で囲むあの温かな食事は何よりのご馳走だと思う」
「ユニもお鍋大好き~♪ みんなでつっつくお鍋は美味しいよね!」
そのひげもじゃの顔を嬉しそうに破顔させてにっこにこのドガに、手の甲で口元を拭う仕草をするゼルワもちょっとニヤケ顔。アイギスはうんうんって頷いて、やっぱり嬉しそう。ユニも大好きなお鍋にわーい! って喜んでるし、うにゃぁん♪ ってミーナも嬉しそうに声を挙げる。ふふ、私も楽しみだよ。帰ったら一丁腕をふるって美味しいお鍋作りましょうかね!
「ドガさんグッジョブでっすよぉ~♪ こりゃ帰ったらノッカーに頼んでいい野菜用意してもらわにゃーいけまっせんよぉ♪」
「私もお手伝いしますねアリサ様♪」
「アタシも~! 魔女のアリサ様に頼んで『セリアベール』のダーリンに届けてもらっちゃおうっと!」
うむうむ。アリスもサーサもレイリーアも嬉しそうだ。じゃあ、アリスに野菜の調達任せて、サーサとレイリーアに手伝ってもらいながら、〆に食べるうどんでも打とうかな♪
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【ミーナのお友達】~荷が重い~
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「大分進んで来たね。マップにマーカーつけたのはこの辺りだよ?」
「はい、マスター。そこに見える大樹の幹がそうでっす」
そうして『聖域』の森の中を、予めアリスと一緒に探し当てたポイントに歩き続けて、今しがた到着。
因みにだが、ここに来るまでの道中に色んな魔物と出くわしたんだけど、残念なことにミーナのお友達になれそうな子はいなかった。途中の小川で寛いでいた三つ目ワニのイビルアイゲーターは私達を見ると、そそくさと川に入って、ピューンって逃げちゃったし、羽根生えた蛇のミッドルとその親分のミッドレイダーが水を飲んでたんだけど、やっぱり私達を見た途端に「ギャーギャー!」って騒がしくなって、ピューンって飛んで逃げちゃったし……
「ホーンライガーはいけるって思ったんだけどねぇ~」
「あはは、気絶しちゃってたもんねぇ」
私とユニは、ついさっきの出来事を思い出してお互いに苦笑い。
私達はホーンライガーがいるってわかってたけど、まぁ、みんなそんなのワンパンでやっつけるので別に警戒もしてなかったんだ、でも向こうは私達に気付いてなかったみたいでさ。な~んか、こう、バッタリ出会っちゃった! って感じで凄いびっくりしてたんだよね。
「お、いたいた。ホーンライガーだぜ?」
「固まってるようだが……?」
「ほっほっ♪ 蛇に睨まれたカエルのようじゃのぅ」
なんて男衆がホーンライガーに「よっ♪」って感じで挨拶かますと、ホーンライガーはお腹を見せて「アオオォアオオォ」って鳴き出したんだよね。もしかして降参のポーズ? あんた猫科じゃないんかい? ってツッコミたくなったんだけど、その時ミーナがホーンライガーのお腹に乗っかって、顔まで歩いた後、ホーンライガーの顔を「にゃんにゃん♪」って軽くパンチしたの。
そしたらホーンライガーってば白目むいてパタンって気絶しちゃったんだよね。ミーナも不思議そうに「にゃあぁ~?」って言って首をかしげて、追加で二三回パンチした後、反応ないので私のとこに戻ってきた。
「残念残念~モコプー達やケットシー達で我慢しようねミーにゃごん?」
「えへへ、ユニもアリアちゃんもいるからねミーナちゃん!」
「ん~にゃん!」
まるで「しょうがないな~」とでも言わんばかりに、私とユニに返事するミーにゃんでした。
「さて……それでは今からアリスがみなさんを『神器』の納められたある空間に案内しまっする」
「別空間って事? 私の『隠蔽破壊』でも露出しなかったのはなんでなのアリス?」
マーカーに印されたポイント、大樹の幹に手を触れて話すアリスに、ちょっと不思議に思った事を訊いてみた。
「簡単に言っちゃえばあのお屋敷と同じなんでっすよぉ~♪ 隠してるんじゃなくて~別空間に隔離してるんでっす!」
それに答えたアリスが言うには、私達の寝泊まりしているあのお屋敷と同じ仕組みらしい。なるほど、聖域の意志を認識しない限り、その隔離された空間は認識されることはないってわけか。アリスが認めた者のみが、その空間へ足を踏み入れる資格が与えられる訳で、私の『隠蔽破壊』に引っ掛からなかったのはこれが理由らしい。
「空間に入れば、アリスの……『聖域』の記憶を見せられる事になりまっす。だーれにも拒否権はありゃーせんよ?」
改めて私達に対して、『聖域』の記憶を見る事になるけどいいのか? って確認してくるアリス。特に、ユニに対しては念を押してきた。
「いっちばん辛い思いをするのがユニちゃん先輩でっすよ? 覚悟、できてまっすか? 今なら戻れますよ?」
無理しないで下さいねって、優しくユニに問い掛けるアリス……無理もない。この中でユニはその時代を生きた当事者なのだ。私は言うに及ばず、アイギス達『白銀』にとっても、言ってはなんだけど、前世での話にすぎないので客観的な視点で見れるだろうからね。
「……アリスちゃん。心配してくれてありがとう。でもね、ユニは大丈夫だよ。だって、あの頃の事なら一日も忘れた事ないもん」
「ユニ……」「ユニ殿……」
答えたユニの言葉に私とアイギスの声が重なった。……正直、凄いって思った。嫌な記憶、辛い過去ほど早くに忘れたいって思うだろう、だけど忘れたくても忘れられないって感じでずっと残るものだよね? だから目を背けて、誤魔化しながら生きていくってのが普通じゃない?
でも、ユニは違う。辛いことにも、苦しいことも、悲しくてもしっかりと正面から向き合って見つめてる。……本当に凄いよ。その強さはユニだけのものだ、到底真似できない。
「……なんだか私、ユニの笑顔が眩しい理由がわかった気がする……ユニは知ってるんだね? 今って言う時間がどれだけの奇跡の上にあるのかって事を」
「えへへ~もちろんだよぉ~♪ あのねあのね! 今はたーくさんの人達が、いーっぱい頑張って頑張った結果なんだよぉ~? だからユニはね、そんな人達に「ありがとう!」って感謝でいっぱいだからニコー! ってなるの♪」
うおおぉっ!! なんちゅうええ子なんでしょこの子ってば! おねぇちゃん嬉しすぎて、涙出そうなんですけどぉーっ!!
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【シリアス注意】~ラインハルトとサーニャ~
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……目を開けると、そこは遥か上空。しかし足にはしっかり感じる地面の感触。ああ、これがアリスの言った『聖域』の記憶なんだね? そう納得して辺りを見渡そうとするけど、どうにもちゃんと体が動かない。いや、動くんだけど、視界が変わらないのだ。瞼を閉じても強制的に映像を見せられる。「余所見なんてしてないで、ちゃんと向き合え」ってことだろう。
(それなら、しっかり見届けようじゃないの……ここは、過去の『聖域』なのかな?)
視界に映る『聖域』とおぼしき場所。その空は酷く濃い霧……魔素霧に覆われており、非常に暗い。再生する前の状態に類似していた。
《聞こえますかみなさん? まぁ、アリスにはみなさんの声が届かないので、こちらから一方的に話すだけになっちゃうんですけど、ごりょーしょー下さいね?》
そうして過去の『聖域』の空を見つめていると、不意にアリスの声が聞こえてきた。
《お察しの通りみなさんが今見ているのは過去の『聖域』の姿です。そして、先に話した『四凶』を打ち倒した勇者達は、魔神との決戦に挑むのです》
アリスの言葉と同時、映像が切り替わる。そこには『世界樹』を背に、強大で禍々しい神気を纏う黒マントの男が中空に浮き……
(シドウ!? アーグラス! アルティ、レウィリ、フォレア!!)
そいつの眼下に、傷付き息も絶え絶えのシドウ。額から血を流しながら『神剣レリルティーネ』を構えるアーグラス。そしてなにかを叫ぶ妹達の姿があった。
間違いなくこの黒マントの男が魔神なのだろう。その顔はよく見えないけど、アルティレーネの手によるものか、魔神も所々に傷を負っているのがわかる。
そして、その場にアーグラスの仲間達が駆け付けた。砕けた鎧と盾、焼けた法衣に、破れた聖衣をそのままに、全身を傷だらけにしながらも、ラインハルトが、サーニャが、ナーゼが、負けるものか! 諦めるものか! と、その確固たる意志を宿した瞳でそれぞれの『神器』を持つ手に力を込める!
(アーグラス達だけじゃない! 爽矢、大地、朱美! リン、ジュン、珠実! 貴方達もそんなにボロボロになりながらっ!!)
『四凶』との激しい戦いの結果なのだろう。魔神の前に現れた『四神』と『懐刀』も全員が傷だらけのボロボロだ。その彼等の姿を見て、私は知らず拳を握り締めていた。
(わかってる……! これは過去の出来事だって……わかって、いるけどっ!!)
どうして私はその場にいなかったんだろう? って、思ってしまう! 癒してあげたい! 今すぐ飛んでいって傷付いた家族を助けてあげたい! そんな風に思ってしまう!
その時、ついに魔神が動きを見せた。両の手を広げ、何やら眼下のみんなに話しかけると……背後の『世界樹』がどす黒い煙に包まれた。するとどうだ、みるみる妹達の姿が希薄になっていく! 『反転の呪い』がユニに掛けられたのだ。『神界』と『ユーニサリア』を繋ぐ門がその呪いによって閉じられようとしており、妹達……創世の三女神は、その姿を留めておくことができなくなってしまっている。
ドオオォォーンッッ!!!
大きな音と、閃光を迸らせて、三つの大きな光の柱が立ち昇り、『ユーニサリア』の空を包み込むようにして霧散した。これは、現世から消える直前、未来へと希望を託した妹達の願いの光だ。それぞれが司る権能を、自分達が消えた後も続くように世界に託した。
しかし、絶望は加速する。『反転の呪い』をかけられた『世界樹』は、『世界樹』を護るべく集結していたユナイト達、セイントビートル、ゼーロや、レイミーア、レイヴン、グリフォン達にその牙を向いたのだ。
次々に撃ち落とされる空の戦士達に、嗤う魔神。更にはその隣に魔王へと堕とされた『剣聖』メルドレード。
(絶望的すぎる……! こんなの、一体どうすればいいのよ!?)
正直見てる私は形振り構わずに逃げ出したくなってくる。そんな最悪の状況でみんなは戦い始めた。メルドレードの相手をアーグラスが、魔神を相手に残りのメンバーが文字通り死に物狂いで戦った!
サーニャの協力な強化魔法を受けたラインハルトの槍が、ナーゼの矢が幾度も魔神に襲い掛かり、大地と爽矢の渾身の一撃とブレスも追加されるんだけど……決め手に欠ける!
当然、魔神も黙っておらず、パーティーを支えるサーニャに狙いを定め極大の魔法を放って来た! それは極光と呼ぶに相応しく、あまりにも広範囲過ぎた。
その時、ラインハルトがサーニャを庇う! 避けられないと悟ったのだろう、サーニャも瞬時の内にラインハルトと自分にありったけの魔法防御を展開させる! しかし、相手は魔法を司る神。魔神! サーニャとラインハルトの防御を打ち砕き、二人を彼方へ吹き飛ばした。
──映像が切り替わる。映し出されるのは吹き飛ばされた二人だ。ラインハルトの盾を持っていた右腕は……否。右腕、どころではない。……右半身である。魔神の極光魔法に吹き飛ばされて、右半身を失ったラインハルト……最早死に体で、しかし、残る力を振り絞り、ズズズッズズズッと這う……自分と同じく吹き飛ばされた愛しい女。……下半身を失ったサーニャの側に……!
サーニャも同じだった……自分がもう助からないとわかっている。だからこそ、最後の瞬間こそ、愛した人の側に……
そして、二人の手が重なった。ラインハルトとサーニャは互いに微笑み、少ない言葉を交わすと、戦っている勇者を見上げ呟き……肩を寄せあい瞳を閉じたのだった……
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【ナーゼとアーグラス】~そして珠実~
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戦いは続く……もう、戦士達は息も絶え絶え。満身創痍……彼等を動かしているのは最早意地と意志。しかし、それは魔神も同じのように見える。いや……魔神に彼等程の意地も意志もない、単純に余力を残しているだけか?
『世界樹』から飛んでくる攻撃をかわし、魔神に肉薄する大地とリン。放たれる魔法を珠実が打ち消し、ジュンが彼女の盾となる。爽矢と朱美は隙を見てブレスや魔法を魔神に撃ち込むも、厄介なのが『世界樹』の枝。ブレスや魔法を放つその瞬間、どうしても動きが止まるその一瞬を突かれるのだ。
故に朱美が『世界樹』の攻撃から爽矢を護り、爽矢はその間に全霊を賭した極大の電磁粒子砲のごときブレスを放つ!
しめしあわせたかのように飛び引く前衛の戦士、その瞬間、爽矢の強力なブレスは確実に魔神を捉えた! やはり白兵戦には馴れていないのだろう。魔神は飛び退いた前衛達の行動に、ほんの一瞬だけ反応が遅れ、ブレスの直撃を受けた。
その機を逃さなかったのがナーゼだった。彼女の手によって振り絞られる『神弓フォレストスノウ』が、ハイエルフである彼女の余命をも魔神を穿つ為の神気に変換し、莫大なエネルギーとなって放たれる!
『生命を賭けた一矢』
先のラインハルトとサーニャを吹き飛ばした魔神の極光にも勝る、最大で最強の一矢! それが魔神を穿った。魔神の防御結界を薄紙の如く引き裂き、貫いたその矢は、一時的に『聖域』を覆う魔素霧を吹き飛ばし、虚空の彼方へと一条の閃光となって消えて行く。
ナーゼは……文字通り、その命すらもこの一矢に賭けたナーゼは……最後に、アーグラスに後は任せたとだけ呟き……その身を灰と化し、風にさらわれて……消えていった……
カランッ……
主を失った『神弓フォレストスノウ』が地に落ち、その乾いた音が残された戦士達の耳に残される。
ラインハルトとサーニャだけでなく、ナーゼまでも……慟哭に嘆く戦士達の絶叫が『聖域』を、『世界樹』を震えさせる。しかし、それでも尚、魔神は未だ彼等を見下ろしていた。
されど、その身は酷いものだ。ナーゼの放った一矢は確実に魔神を貫いていた。彼は右の上半身を失い、その瞳を憎悪に染め上げ、残す左手に怒り心頭の破滅の力を集束させて行く。
その力はこの『ユーニサリア』を破壊し消滅させるに十二分の力だ。あの力が解き放たれれば、『聖域』はおろか、世界が星ごと消滅してしまうだろう。魔神にとっての狙いはティリアの持つ『無限魔力』でしかなく、この世界がどうなろうと知ったことではないのだ。
怒れる魔神の手によって破壊の鉄槌が振り落とされんとする瞬間。戦士達の顔が諦念に染まる。『ルーネ・フォレスト』でフォレアルーネと共に『獣魔王ディードバウアー』と戦い、その傷も癒えぬまま『四凶』と、そして魔神との連戦でリンが。同じく『リーネ・リュール』でレウィリリーネと共に『技工神ロア』率いる『魔装戦士』達との激戦の後に、ジュンと合流し魔神の攻撃の矢面に立っていたシドウも……『四神』を率い、『四凶』から『聖域』を護り抜いた珠実も……誰も彼もがその力を使い果たし思うように動けない。
「終わった……」
と、誰かが呟いたその時だ!
ズドオォォォーンッッ!!!!!
凄まじい轟音を鳴り響かせ、アーグラスが閃光となって魔神に『神剣レリルティーネ』を突き刺した!!
思わぬ奇襲に魔神はその胸を貫かれながら、アーグラスと一緒に地面へと激突し、爆煙を立ち上らせて巨大なクレーターを作り上げる。その衝撃故か、魔神の集束させていた破壊の力は霧散し魔素霧に溶けて行く。
立ち上がる両者。メルドレードとの戦いで負ったのであろう、アーグラスの傷は深い。かつてのアイギス同様に左腕を斬り落とされ、足にも立てているのが不思議な程の深い斬痕。その鎧は最早見る影もない程に砕かれ、常人ならばとうに失血死しているであろう、夥しい流血。
一方で魔神もまた死に体だ、戦士達の攻撃は無駄ではなく、その全身に確実なダメージとして刻まれ、無尽蔵とも思われていた彼の魔力を空にして、ナーゼの命を賭けた一矢により失った右上半身を復元することもできず、更にはアーグラスに貫かれた胸は『神剣レリルティーネ』によるものであり、致命傷となった。
互いの息も荒く対峙する二人。睨み合い、一瞬の隙も逃さんとするその瞳は鋭く、意地と信念のぶつかり合いか? 交差する視線に火花が散る幻想まで見えてきそうだ。
しかし、勝負は一瞬の内に終わる。
アーグラスがよく口にしていたという「魂燃やして熱く吼えろ」と言う言葉をそのままに、アーグラスの全身が発火し魔神にぶつかって行く。そのアーグラスの魂を賭けた特攻に、抵抗虚しく、魔神はその胴体に風穴を空けられ、『物質体』を維持できなくなって霞のように消えていった。
当然アーグラスも無事ではない。魔神を討つための最後の特攻は、嘘偽りなく、魂を燃やしたのだろう。放った一太刀の残心そのままに絶命し、ナーゼ同様その身体は灰となって崩れ落ち、残された『神剣レリルティーネ』が、カランッと空しい音を立てて地に転がったのだった。
傷深く、動けぬ戦士達もまた意識を失い、その場に倒れて行く……そんな中、珠実だけはかろうじて意識を保っており、わなわなと震えていた……
(珠実……っ!)
残ったのは……呪われた『世界樹』に、穢れた『聖域』……そして倒れ伏す同朋と、夥しい骸の山……珠実の瞳にみるみる大粒の涙が溢れ出す……
うわあああぁぁぁぁーっっ!!!!!!
魔素霧渦巻く『魔の大地』と化した『聖域』に珠実の慟哭の嘆きが響き渡った……
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【ショック】~泣いちゃうアリサさん~
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「──様!! アリサ様!」
誰かが呼ぶ声に、私はハッとなって我にかえった。
目の前には『聖域』の地面がすぐ近くにある。……どうやら、アリスが見せた『聖域』の記憶が終わったらしく、私はorzの姿勢になって放心していたようだ。
正直……キツイ……話で聞いて過去に何があったってのは知ったつもりでいたけど、「聞く」のと「観る」のとではこうもインパクトが違うものかと改めて思い知った。前世でもファンだった作家の小説が映像作品となった時は、そりゃ感動したものだけど……これはキツイ。
「大丈夫でっすかマスター?」「アリサおねぇちゃん、しっかりして!」
「あ……うん、ご、ごめんアリス、ユニ……」
心配そうなアリスとユニの声が直ぐ近くでする。いけないいけない、言われた通り、しっかりしなきゃって思うんだけど、ショックが大きすぎて体に上手く力が入らない。
「アリサ様は人一倍感受性が豊かなご様子。私達も皆あの記憶を観ましたが、貴女程ショックを受けてはおりませんよ」
んぅ……私の前に屈みこんできたアイギスがそう、優しく微笑んでそっと私の涙を拭ってくれた。どうやら私は知らない内に泣いてたみたいだ。いやさ、だってあんなの見せられたら泣いちゃうよ? 特に最後の珠実の叫びが強烈に印象深くて……
「アリサ様や……」
「え? 珠実!? いつの間に来てたの?」
涙を拭ってくれて、立ち上がるのにも手を差し伸べてくれたアイギスにお礼をして、改めてみんなを見てみたら、いつの間にか件の珠実がちょっとしょんぼりした顔をして、私に呼び掛けていた。
「アリサ様が放心していた間にいらっしゃいましたよ?」
「アタシ達はそんなにショック受けてないから安心してアリサ様。『無限円環』での夢の中で本人から話は聞いていたからね」
そう私に答えるのはサーサとレイリーアだ。二人とも……ううん、どうやらアリスとユニも含めてみんなどどーんとしたショックは受けておらず、まぁ、ちょっと暗い顔ではあるけど、結構平気そうだ。
「その、済まぬ……妾は嘘をついておったのじゃ……本当は『神器』の在処を知っておったんじゃが……」
「……あの後、珠実が傷付いて意識を失った皆をそれぞれの棲処に戻して、部下達に療養させるように指示を出したんでっすよぉ」
「うむ。そして勇者達の『神器』を集め、この場に安置したのじゃ……「『聖域』よ、この者達が安らかに眠れるよう護ってたもれ」と願って……」
そう……だったんだ……その願いをアリスが聞き届けたんだね……今のように『聖霊』として姿を形取っていなくても、その切実な願いに応えてあげたんだ。偉いねアリス。そして、珠実が嘘をついたのは、きっと私達を思ってのことだろう。生半可な気持ちであの記憶を観るのは辛すぎるから……
「珠実っ!」
「あ、アリサ様!?」
ぎゅう~って、私は珠実のその小さな身体を抱き締めた。どうしてもそうせずにはいられなかったんだ。だってこの子はどれだけ辛い思いで勇者達の最後を見届けたのか? どれ程の思いで『懐刀』と『四神』達を棲処に連れ帰った? 玄武に至っては帰らぬ人となってしまったのに! 一体どんな気持ちで『神器』をこの場所に運んだの!?
「珠実! 珠実~!! ごめん、ごめんねぇ~私、私……貴女達のこと全然わかってなかった! 辛かったよね……悲しかったよね……ごめんねごめんね、一番大変だった時に側にいてあげられなくて!」
「アリサ様……おお、泣かないでおくれ。苦しかったのは確かじゃが、妾達は今こうして共におられるのじゃ」
「そうだよ! アリサおねぇちゃん、ユニも凄く辛くて苦しかったけど、こうして今はみんな一緒に笑えてるんだから。ね! 元気出して!」
あうううーっ! ユニ~珠実~! うわあーんっ!!
二人ともなんて優しいの? なんて強い子達なの! 私なんてあっさり心がメコメコに凹みまくって涙が止まらないって言うのに! 抱き付く私の背を「大丈夫じゃよ~」って優しくポンポンする珠実に、「ヨシヨシ」って頭を撫でてくるユニ。うう、慰めるつもりが逆に慰められちゃってるよ私。
「でも、一番心配されていたユニちゃん先輩が平気で、マスターがこんなにおよよってなるなんて思いませんでっしたよぉ?」
「そんだけアリサ様が優しいってことだよなぁ~」
「アリサ様にとって『聖域』の皆は家族も同然じゃからのぅ、その家族が傷付いて行く様は耐え難い事じゃろうて」
うう……確かにアリスの言う通り、最初こそ「客観的に見れる」なんて思っといて、この様ですよ。ゼルワが私を優しいとか言うけど、ドガの意見が正しいのだ。誰だって大切な家族が傷付いていたら心配するし、悲しむってばよ。
ミーナ「うなぁ~ん♪(*´∇`*)」
アリサ「うぅ、ミーナぁ~(つд;) 慰めてくれるのぉ?(´;ω;`)」
ユニ「あははヾ(≧∀≦*)ノ〃 ミーナちゃん優しいねぇ~ヽ(*>∇<)ノ」
サーサ「ふふ(^ー^) アリサ様の指をペロペロ舐めていますよ、可愛いですね( *´艸`)」
アイギス「アリサ様に似てミーナ殿もまたお優しいのですね( ´ー`)」
レイリーア「うふふ(*≧ω≦) ペットは飼い主に似るって言うもんね♪( ・∇・)」
ゼルワ「思ったより早く着いたし、アリサ様が落ち着くまで一息つくか(^∇^)」
ドガ「うむ(´・∀・`) ここらで一休みじゃな~どっこいせ(^-^)」
アリス「ドガじいちゃんてば、どっこいせって(((*≧艸≦)ププッ」
珠実「ドワーフの男は老けるのが速いんじゃよなぁ(;´∀`) 女子はそうでもないようじゃが(´▽`*)」
ペロペロペロペロペロペロペロペロ……
ゼルワ「……(゜Д゜;) 長くね(;´゜д゜)ゞ?」
サーサ「アリサ様(´・ω・`; ) 指が真っ赤なんですけど?(゜A゜;)」
アリサ「うん((・ω・`;)) ちょっと痛い(゜∀゜;)」
アイギス「猫の舌はザリザリしていますからね(゜ー゜*)」
レイリーア「はーいミーナちゃん、その辺にしときましょうね?ヾ(・ω・ヾ)」
ミーナ「うにゃぁぁ~ん?(・о・)」
ドガ「ぐおぉ~(。-ω-)zzz」
ユニ「ドガじいちゃん、起きて起きて~ヾ(・o・*)シ」
珠実「ふはは♪(*`▽´*) 相変わらずこの場はゆるゆるじゃのぅ(≧ω≦。)」
アリス「本文のシリアスをぶっ壊す後書きパートでっすもん♪Ψ(`∀´)Ψケケケ」
みんな「メタいってば!Σ(;゜∀゜)ノ」




