94話 『神器』を求めて……
アリサ「あいあい(*´∇`) ちょーっと前回のお話から時間が戻りますよ~(^o^)/」
ティリア「私達が『ルヴィアス魔導帝国』に行く前よ~(^-^)」
アルティレーネ「それにしても最近暑い日が続きますね(×_×)」
レウィリリーネ「ん……しんどい(*T^T)」
フォレアルーネ「だよね……(; ̄ー ̄A みんなは大丈夫かな?(;´Д`)ハァハァ」
アリサ「この時期は熱中症が心配よね(´ヘ`;) 作者もヤバイって言ってた(-""-;)」
ティリア「何でも仕事から帰宅して執筆中に足がつったり、全身が熱を持って発汗が酷くて執筆できなくなったり……Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)」
レウィリリーネ「Σ(゜ロ゜;)それ、本当に危ないやつじゃ?(゜A゜;)」
アリサ「流石にそう頻繁してるようではないらしいけどね( ̄0 ̄;)」
アルティレーネ「最悪の場合週一の投稿が叶わなくなるかもしれないですね(つд⊂)」
フォレアルーネ「もし投稿されてない日が来たらお察し下さいませ~(-人-;) あーホントあっついぃぃ~。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」
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【心を白銀の如く】~授かった武器~《ゼルワview》
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ぐっと手にしたナイフのグリップを握り締める。
アリサ様が用意してくれた俺の新しい武器『フォトンナイフ』……俺の思い一つでいくらでも切れ味が増す……思い一つでいくらでもナマクラになる……俺だけの武器。
「ゼルワ。貴方はサーサを『想い』アイギスを思い、そして仲間を誰よりも思う事の出来る、傷を持ったハーフエルフ。その二振りのナイフは貴方の思いが強ければ強いほど切れ味を増す。同時に、貴方の心が折れる時、そのナイフも崩れ去るでしょう……」
貴方にこの武器を持つ覚悟はあるかしら?
今もあの時のアリサ様の言葉が頭に響いてる。勿論だと自信満々に受け取ったこのナイフ。サーサを守り、アイギスとの義理を果たす。ドガとレイリーアとの揺るがねぇ信頼、友情を貫き通す! 俺にピッタリの武器だって思った。
「仲間を思う本当の強さ……借り物なんかじゃない、最強の強さ……か」
一年に渡る『無限円環』での訓練の果て、俺達は正直強くなった。最初にルヴィアス様が言っていた、ラインハルトは重武装でいながらも俺の三倍は速かった。ってのも飛び越え、速さならルヴィアス様もアルティレーネ様も追い越し、大地さんやリン様に並べる程になったぜ! その時俺達はみんな、前世だったっていう勇者達の力量すら超えたって確信したんだ。実際、夢の中で会った俺の前世、ラインハルトもそう認めてくれてた。
でもよぉ……俺達の武器を作る参考にするからって、アリサ様が俺達『白銀』全員を集めて、まとめてかかって来いって言うんだぜ? アリサ様自身、何か試したい事があるから、本気の全力出してほしいって……いや、そりゃあ、アリサ様の強さってのは俺達もわかってるつもりだったぜ? でも、いくらアリサ様でも、今や女神達に並ぶ程強くなった俺達五人を一人で相手するって言葉に……こう言っちゃなんだが、少しイラってしたんだ。調子に乗りすぎじゃねぇのか? って……
「そうかな? 寧ろ私には貴方達の方が調子に乗ってるように見えるんだけど……?」
返された言葉に俺達五人全員がキレた。んで、おっぱじまる一対五。
結果。アリサ様が正しかった……
レイリーアが放つシェラザード様の多重防壁の結界を、シェラザード様もろとも貫通させた渾身の矢を人差し指と中指で挟み込み、手首のスナップでそっくり返して、サーサのルヴィアス様も避けることで精一杯だった魔法を打ち消し、それに驚いてるほんの一瞬にレイリーアとサーサがなんかされて倒れた。
俺、アイギス、ドガが連携を仕掛けるも、何一つ当たらなければ掠りもしない。背後からの奇襲も背を向けたままに防がれるんだぜ? なんかまるで最初からそこに攻撃がくるって、わかってたみてぇに、俺達の攻撃が総て通じない!
悪い夢でもみてんのかって気持ちだったぜ……『神の護り手』を使われた訳でもねぇのに何でだよ!? なーんて内心びびっちまったんだよな俺達……そしたらあっという間に三人とも武器を弾き飛ばされて決着だった。
「貴方達は確かに凄く強くなったよ? でも、だからこそ慢心しないでほしいの。
私みたいに借り物の力じゃ最強になんて至れる事はないけど、みんなは違う。たった一年でこんなに強くなれたんだもの、絶対誰にも負けない強さが身に付く筈だから。ね?」
沁みたぜ……アリサ様の言う通り、調子に乗って自惚れてたのは俺達の方だった。アリサ様は俺達の武器を創るって理由で、俺達の目を覚まさせてくれたんだ。
「これはそんな俺達の心を戒める為の武器ってわけだ……」
「曇った心で振るうても、その辺のナマクラ以下の武器にしかならん」
「己の心を『白銀』の如く磨け……か、耳が痛いお言葉だったな……」
いつの間にか俺の側に仲間達が来てた。なんだよ、ドガ、アイギス。盗み聞きすんじゃねぇよ?
「でも正直ショックよね……アタシさ、これならアリサ様の隣に立てるわ! って……そう、思ったのになぁ……」
「レイリーア……私だって同じですよ……『悲涙の洞窟』の時みたいに足を引っ張らずに、堂々とアリサ様のお隣に並べるって思ったんです」
どうやら盗み聞きしてたのはレイリーアとサーサもらしいな。
俺達『白銀』五人揃って、『聖域』の女神様の屋敷の庭に流れる小川のほとりに座り込む。
ああ、ごめん。言い忘れてたけど、今俺達は『無限円環』から戻って来て、『聖域』にいるんだ。予定だと、この後アリスさんとユニちゃん、ミーナを連れて俺達『白銀』とアリサ様で『神器』を探しに出るとこなんだよ。まぁ、アリサ様が先にゼオンとビットさんとラグナースを『転移』で『セリアベール』まで送って、ゼオンの執務室の隠し部屋に『転移陣』を設置しに行ってるから、俺達は待機中ってわけ。
もう一人のアリサ様は何か女神様とルヴィアス様とで話してるから、『ルヴィアス魔導帝国』の方に設置予定の『転移陣』について相談してるんだと思う。
「じー……」
「え? あ、あの……ユニ殿?」
そんな風にサラサラと澄んだ綺麗な小川を、ぼげ~って眺めて落ち込む俺達の前に、いつの間にかユニちゃんが側にやって来ていて不思議そうに見ていた。アイギスがちょっと戸惑いながら、どうしたのかって訊くと……
「……ん~? おにぃちゃん達なんでそんな、うにゃぁ~って顔してるの~?」
うにゃぁ~って、どんな顔だよユニちゃんや?
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【ただいま!】~帰ったど~!~《魔女view》
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「あ、お帰りなさ~い皆さん♪」
「おう! お帰り! どうだったんでぃアリサ嬢ちゃんの棲処はよ?」
「ティターニア様が迷惑かけませんでしたか~?」
ふわぁ~……眠い。
あらやだ! 私ってばのっけから大きなあくび見せちゃったよ!
あい、みなさんおはやふございまする~♪ 魔女なアリサさんですよ。『聖域』にある私達のお屋敷前からお届けしております。
一日が明けて、今日は『無限円環』からみんなが帰ってくる日。人数が多いからお庭に『無限円環』との出入口である『∞』を展開させて、みんなの帰りを待っていたの。
「ただいま~♪ アリサおねぇちゃん、ノッカーくん、ヘルメットさん、ブラウニーちゃん!」
「おぉ~一年振りの『聖域』じゃな~♪」
最初に帰ってきたのはユニと珠実。ノッカーくん達にはつい昨日振りだけど、ユニ達にとっては一年振りの再会になる。私は聖女の方が『無限円環』にいたから別に違和感とか感じないんだけどね。
「なんかすげぇ久し振りって感じだぜ!」
「ほ、本当に一日しか経ってないのかな?」
「ま、一度棲処に戻って見ましょ?」
「うむ。候補者達も連れて、部下達に説明せねばならんな」
フワーンフワーンって次々に発光する『∞』から、続々とみんなが姿を見せる。続いては『四神』達だ。やっぱり感覚が少しズレてるんだろう、こっちじゃ一日しか経過してないことに戸惑った様子を見せた。でも、直ぐに切り替えて私達に候補者達を連れて一度それぞれの棲処に戻り、部下さん達に説明してくるって挨拶してから移動して行った。
「どれ、では儂等もそうするとしようかの」
「へっへっへ~♪ オイラのこの姿見たら舎弟もびっくりするぞ~!」
「ふっ、そうだな。今から部下共の驚く顔が目に浮かぶようだ」
そして『懐刀』達も同じく棲処に戻るようだ。ふふ、ジュンとリンの人化した姿見たら部下さん達、どんな反応するかな? 私の横であんぐり口開けてるノッカーくんとブラウニーちゃんみたいになるかもね♪
「冒険者候補達は明日に『セリアベール』に移動だからね? ちゃんと朝からここに集まるのよ?」
はーい!
って、私の呼び掛けに元気な返事をして、候補者達も上司と一緒にそれぞれの棲処に戻っていく。
「よし、『ランバード使用人』帰還です! たった一日とはいえ、一日お屋敷を放置しましたからね、総出でお掃除に取りかかりましょう!」
おおーっ!!
次に帰って来たのはリリカさん率いる『ランバード使用人』のみんなだ。彼等は一日たりともお屋敷の掃除を欠かした事がないため、『無限円環』ですごしてた間放置されていたお屋敷の掃除を全員総出で行うそうだ。そのプロ意識に感心しちゃうね!
「おお、ヘルメット殿。『神殿』の完成、私からも謝辞を述べさせて頂きたい」
「お疲れ様でございますわ。それで、申し訳ありませんがご相談を……」
「応応! なんでいなんでい!? むず痒いぜ! 俺様に相談だと? 何でも言ってみな!」
ガルディングお父様とセレスティーナお母様もお戻りだ。二人はヘルメットさんの姿を確認すると、深々と頭を下げて、『神殿』の完成をお祝いして、一つ相談を持ちかける。それは『ランバード』の屋敷を冒険者ギルドとして改装する計画についてだね。『無限円環』内でゼオンや、『白銀』、『黒狼』達から冒険者ギルドに必要な設備等を聞いて、屋敷を改装する事にしたから、『建築班』のティリアに話して、ヘルメットさんと相談してみましょうってなったの。
「なんか慌ただしかったが、今日で『セリアベール』を出てからまだ四日目だぜ……?」
「普通なら考えられませんよね、『セリアベール』から『セリアルティ王城跡地』まで、急いでも二日、そこから海を渡り、この『世界樹』まで二~三日はかかるでしょうから……」
「エミルにはどのくらい空けるつもりで話してあるんだ、ゼオン?」
「あ~一応一週間くれぇだろっては言ってあるが……」
そして『セリアベール組』のみんな。ゼオンとラグナースが街を出てから今日までの事を思い返しては、まだ四日しか経ってない事にちょっとびっくりしてる。ラグナースも普通の行程を踏んだら、とても信じられないってさ。そりゃ空飛んで来たからね。
んで、アイギスがゼオンに聞いてるのは、冒険者ギルドのマスターが、どのくらいの期間不在なのかってこと。
「ちぃと早目に戻るか……街の様子も気になるし」
「そうですね、僕も早くディンベル先生に報告して、動きたいです」
ふむ、ゼオンとラグナースは街に戻る事をお望みのようだ。まぁ、数日間サブマスターに任せきりってのも悪いって思ってるみたいだね。ラグナースはちょっと興奮気味なところを見るに、『聖域』の御用商人になれたことや、『ルヴィアス魔導帝国』との取引に向けてワクワクが抑えられないって感じだね♪
「話に聞く『セリアルティ王国』の子孫達が築いた街ですな? 私もこの目で見とうございます」
「ええ、案内しますぜビットさん!」
「はい、共に参りましょう!」
つー訳で、嬢ちゃん。いっちょ『転移』で運んでくれるか~? って言うので、それならそれで、ササッと『転移陣』も設置して、直ぐ戻ってくればいいね。
なんて……考えてたんだけど、それが甘い考えだったってのを、この後に思い知らされる事になっちゃったんだ。
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【守りし民達の築いた街】~セリアベール~《ビットview》
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ブゥゥンッ……
「うおおっ!? な、なんだ一体っ!?」「いや、待て! ゼオンさんだ!」
アリサ様の『転移』にて私と陛下、ラグナース殿は『セリアベール』の街の北門の前へと転移した。
そこには衛兵と思われる二人の兵士が一人は槍を持ち、もう一人は剣と盾を持っている。
突然に現れた私達を見て、咄嗟に身構える二人だが、陛下のお姿を確認すると、直ぐ様武器を納めたのだった。
私達の今回の目的は黒フード対策ではなく、陛下とラグナース殿の帰還と、陛下を護衛する私の案内だ。アリサ様は『転移陣』を設置し、直ちに『聖域』へと戻り、アイギス殿達の『神器』探索に赴かれる。いやはや、なんともお忙しいお方だ。
「応。二人ともお疲れさん! 異常ないか?」
「うむ。中々の練度ですな。日々の鍛練の賜物。といったところとお見受け致す」
「これが……『転移』ですか。驚きました!」
「ギルマス! ラグナースさん! お帰りなさい! よくぞご無事で!」
少しばかり衛兵の二人を驚かせてしまったが、労いのお言葉をかける陛下と、咄嗟に身構え、不測の事態にもしっかり対応を取る姿勢に感心する私。『転移』を体験して、驚いてるラグナース殿の姿に気付いたようで、安心した表情を見せ、構えた武器を降ろし、駆け寄ってきた。
「アリサ様もよくぞお越し下さいました! そちらの御方は客人とお見受けしますが……?」
「おはようございます門衛さん♪ 驚かせちゃってごめんなさいね?」
「失礼をした。私はビットと申します。この度、ゼオン陛下の護衛として同伴させて頂きました。以後お見知り置きを」
これはこれは、ご丁寧にと、私達に一礼する衛兵の二人。その表情はまるで自分の事のように、陛下とラグナース殿が無事に帰還したことと、アリサ様と私の来訪に喜び、安心した様子であった。心配だったのだろう、陛下とラグナース殿が『聖域』と渡ると知り、その安否を憂い、気が気ではなかったのやも知れぬな。『魔の大地』と称される程に『聖域』の魔物達は中々に手強い故に。
「ご無事で何よりでした! ビット殿もギルマスの護衛、感謝します!」
「『セリアベール』に異常はありませんが……ふふ、少しばかり食事処が騒がしくなっております」
ふむ? 一体何事かと話を聞いて見れば、どうやら『氾濫』終息の祝いの祭りで、アリサ様が供した料理の事についてのようだ。「あの祭りで出たメニューはないのか?」とか、「今までの食事じゃもう満足出来ないぞ!」等の意見や質問で、早くも食に対する意識が変わりつつあるのだそうだ。それを聞いたアリサ様は……
「あちゃー……こりゃ、『転移陣』設置したら商業ギルドに顔出しておかないと駄目そうだね」
と、頭を抱えたのだった。
「なるほどな、わかったぜ。とりあえずディンベルと各ギルド代表と話しねぇとなんねぇな」
「よろしくお願いします、ギルマス、アリサ様!」
私達は衛兵に『セリアベール』のそんな現状を軽く教えてもらい街に入った。
見事……街に入った私が最初に感じた感想がそれだった。しかと区画整理され、規則正しく軒を並べる家々に、しっかりと舗装整備された道。街の中央には陛下がマスターを務めると言う『冒険者ギルド』を始め、各ギルドが集まっていると説明を受けたが、それらがこの北門からでもわかる。
ギルドに向かうメインストリートを、道行く人達の「お帰りなさい!」「待ってましたアリサ様!」等、様々な歓声を挙げる民達の表情は皆明るい笑顔だ。
「……活気溢れる街ですな。ふふ、『セリアルティ』の気質そのままで、なにやら懐かしくも感じます」
「ええ! 『セリアルティ王国』から脈々と受け継がれて今に続く奴等です! こいつらと一緒なら、『セリアルティ王国』の復興も夢じゃあありませんぜビットさん」
右を見ては頷き、左を向いては微笑み、正面を見てはどこか遠い目をしてしまう。なんとはなしに呟いた私に、陛下が力強く答えて下さった。うむ。必ずや『セリアルティ王国』を復興させましょうぞ! この民達の笑顔を守る為、民達に更なる安寧をもたらすために!
「相変わらずみんな元気なようで安心するね~♪ でも、こんなに早くご飯の影響出るなんて思わなかったよ」
「あー、俺も甘く見てたぜ……」
「お祭りと言う時に食べられる美味しい食事。と言う特別感なら……と言うにはインパクトが大きすぎたのでしょうか?」
「ふむ、それほどまでにアリサ様の料理は美味と言う事でしょうな、私も最早以前の食生活には戻れそうにありませぬ」
ギルドに向かう道を歩きながら、人々の視線と歓声を聞きながら、アリサ様は少々複雑な表情をしておられる。どうやら元気な皆の姿に安心すると同時、やや半端に広めた料理の反響に戸惑っておられるご様子だ。
陛下とラグナース殿もそんなアリサ様のお言葉に、見通しが甘かったと困り顔を見せる。少しだけ広めた美味な食事を体験した街の人々の期待が凄いようだ……「祭りの時にだけ食せる特別な料理」と、割り切るには、普段の食事があまりにも味気ないものなのだろう。私もあれほど美味な食事は初めての事故に、民達の気持ちがよくわかる。
「お願いしますアリサ様! どうかあの料理を広めて下さい!」
「俺達も倣って色々試してはいるんだけど、どうしても上手くいかないんです!」
「またあの料理の数々を食べたくて仕方がないんですーっ!」
と、言うような懇願を飲食店の店主や、その店員から何度も聞かされてしまったのだ。それを聞いたアリサ様は、「これは早急に解決しなくてはいけない!」と、意気込んでおられるご様子。
「幸い『無限円環』内での訓練で料理が出来る方が増えていますし、何人か回せないでしょうか? 勿論、僕も協力しますから!」
「そうだね、ガルディング様に話して使用人を数人借りようか。それと『記憶の宝珠』も沢山用意しなきゃいけないなぁ」
今ラグナース殿が言ったように、ラグナース殿本人も、『ランバード公爵家』の使用人達も全員、『無限円環』内の訓練で料理が出来るようになった。
アリサ様は『聖域』での『神器』の捜索に、黒フード対策、『エルハダージャ王国』を経由して、『リーネ・リュール王国跡地』への遠征も控えている為、そう時間は取れないのだ。
それ故、映像通信で『聖域』のガルディング殿に連絡を取り、使用人達を何人か派遣できないか相談をするアリサ様。ガルディング殿も状況を理解してくださったようで、使用人達に声をかけ、有志を募って下さるそうだ。
その事に安堵しつつ、私達は冒険者ギルドに向かったのだった。
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【探索は延期?】~ううん行くよぉ~《ユニview》
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「ってわけで、魔女は暫く『セリアベール』に留まる事になっちゃったんだよね」
ぶわーっはっはっはっ!! マジかよ!? なんだそりゃぁ~♪
あっはっは♪ もう~しょうがないなぁ~『セリアベール』のみんなは!
聖女のアリサおねぇちゃんがユニとアリスちゃん、『白銀』のみんなの前にやって来て、「おぉ、そろそろ『神器』の探索に出るのか?」って思ってたんだけどね、ぷふふ♪ なんでも『セリアベール』にゼオンのおじちゃん達を送ったら、街の人達に「料理~料理教えて~!」って泣き付かれちゃったんだって! アリサおねぇちゃんは『転移陣』を設置して、直ぐに帰ってくるつもりだったから、困っちゃってね、『ランバード』の使用人さん達も協力してほしい~って言って来たんだって~♪
これには、なんかくらーい顔をしてたアイギスおにぃちゃん達も、思わず大笑いしちゃってね! ユニもなんだか可笑しくなっちゃっていっぱい笑っちゃった♪
「あはは♪ まったくもう~みんなしょうがない連中ね!」
「わっはっは!! そりゃ無理もあるまいて、アリサ様の料理を知ったらもう、今までの飯で満足はできんわい!」
「うんうん! まったくもってその通りですね! 私達もあの味気ない食事じゃ我慢できませんもん♪」
レイリーアちゃんもドガのおじいちゃんもサーサちゃんも、笑って「そりゃしょうがない!」って口々にいってるの! むふーん♪ それだけアリサおねぇちゃんの料理は美味しいんだって証明されてるみたいで、なんかユニも嬉しくなってきちゃった!
「あ~でも、それだと……『神器』の探索は暫くお預けって事になるんですかアリサ様?」
「魔女のアリサ様が『セリアベール』に付きっきりで、聖女のアリサ様は『ルヴィアス魔導帝国』へと赴かれるのですよね?」
「あ、それがね~ルヴィアスが養子のルォンくんに連絡をとったらさ、何でも帝国の問題を解決したのは誰だとか、どうやってとかで、国々の代表者さん達から質問攻めに合って困ってるらしいんだよ……」
あらら、ゼルワお兄ちゃんとアイギスおにぃちゃんが、『神器』の探索もお預けですか? ってアリサおねぇちゃんに聞くとね、ルヴィアス様のてーこくじゃ、王様達? が誰がどうやって問題を解決したの!? って、ルヴィアス様の息子さん? にいっぱい質問してるんだって!
「まったく、あんたは息子に迷惑かけんじゃないわよ?」
「ティリアはいっつも理不尽だよな!? アイギスくんもそう思うだろ?」
うっさいわよ! このアホぽん! ベシーンッ!!
そうして、聖女のアリサおねぇちゃんの後からやってきたルヴィアス様とティリア様。ティリア様にひっぱたかれて、「ほらぁっ! 理不尽だるぉーっ!?」ってユニ達に詰め寄ってきたよ!
「いや、ホントにさぁ~アーグラスとか言う勇者ってばなーんで、ティリア様に惚れたのかしらねぇ?」
「ほっほっほ! どうせ見た目に騙されたんじゃろうて!」
「あ~そうかもしれませんね。ティリア様って白くて、透明感があって、黙ってれば儚げな美少女ですし!」
「私と違い単純で熱血馬鹿のようだったからな。まんまと見た目に騙されたんだな……」
「蓋開けてみればこーんなにおっかねぇのになぁ~♪」
あははははっ!!
「あんた達ぃーっ!! さっきから黙って聞いてれば言いたい放題言ってーっ!!」
わーっ!! 逃げろ逃げろーっ!
わーい♪ ティリア様が怒ったぁ~♪ ホレ逃げろ! やれ逃げろぉ~♪
「ハイハイ! 遊んでないで集合集合~ティリアもそう思われたくなかったら、少し自分を省みようね?」
はーい!
アリサおねぇちゃんになでなで~ってされて、ようやくティリア様も落ち着いて、蜘蛛の子を散らすようにササーって逃げて行った『白銀』のみんなも戻ってくる。えへへ、『無限円環』で一年一緒に過ごしたユニ達の間にはもう遠慮なんてないから、こんなやり取りは日常茶飯事だったりするんだよぉ♪
「まぁ、そんな訳で帝国の諸侯を帝都に集めて説明するように、ルォンに予定組んでもらうからさ、『転移陣』の設置はその時にお願いすることになったんだよ」
「だから、その間に『神器』探しに行きましょう」
おーっ! やったよ~♪ アリサおねぇちゃんと冒険だぁーっ! ルヴィアス様が苦笑いで、諸侯が帝都に集うのは早くても多分二、三日はかかるだろうから、先に『神器』の探索を済ませておいてほしいって事を話したんだって!
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【刻まれた記憶】~『神器』~《アリスview》
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「マスター、ちょいとおさらいでっすけど。『四凶』って覚えてまっす?」
「あー、あの気持ち悪い化け物達よね?」
さてさて~なんだか久し振りにマスターと『白銀』の皆さんと『聖域』探索のはっじまり~♪ でっすよぉ! むほぉ~♪ テンションあがっちゃいまっするねぇ~!
しーかーも! 今回はユニちゃん先輩とミーにゃん大先輩もご一緒でっす! うれすぃ~ですね!
「でっす! あのキモさに全振りのうへぇ~な奴等でっすね」
「私達は以前にティリア様からお見せ頂けた映像でしか知り得ませんが……」
「確かにアイツ等気持ち悪かったわねぇ~」
アリスの話にむっつりんさんとレイリーアさんがうんうん頷いとりまっする。
それじゃ早速探しに行きまっしょい! って、まぁ~そんなわけには行きません。闇雲にこの『聖域』を探し回ったって見つかりはしませんからね。
お屋敷のお庭でアリス達は集合して、『神器』がこの『聖域』の何処にあるのかって、当たりをつけるってとこからスタートでっす。
『神器』とは、この『ユーニサリア』に降り立った魔神と魔王達に対抗するべく、主神ティリア様に召喚された勇者一行に女神様達がお与えになった武器の事を言います。すなわち……
アルティレーネ様がラインハルトに授けた『神槍アルティリオン』。
同じくジドルに授けた『神斧ヴァンデルホン』。
レウィリリーネ様がサーニャに授けた『神杖リーネリーネ』。
フォレアルーネ様がナーゼに授けた『神弓フォレストスノウ』。
そして、ティリア様がアーグラスに授けた『神剣レリルティーネ』の五つの武器でっす!
「『聖域』再生の戦いで現れた『四凶』達は、謂わば劣化コピーでっしてね? 大分弱っちくなってたんでっすよぉ~でもでも、当時の、勇者さん達が戦った『四凶』はそれこそ魔王達に匹敵するほどの強さを持ってたんでっすねぇ……」
「……なるほど、だから『四神』達も『懐刀』達もボロボロに……」
「水菜さんのお父さんもその戦いで『四凶』の一体から、皆を守り、亡くなられたって言いますものね……」
今じゃ『魔神戦争』なんて語られる当時の決戦。そのクライマックスの舞台は何を隠そう、この『聖域』でっしたからね……その『聖域』の意志たるこのアリスちゃんは、当時をよぉぉっく覚えてまっするよぉ~?
現れた魔神に雄々しく立ち向かう勇者とシドウ、そして三女神達。『四凶』を相手に『四神』と残りの『懐刀』に勇者の仲間達……まぁ、この時既にジドルは『武神リドグリフ』との戦いで果ててましたから、勇者達は四人でした。その戦いでは、今ゼルワさんとサーサさんが言ったように結構甚大な被害が出たんです。
「アルティ達も『世界樹』に『反転の呪い』が掛けられたせいで、この世界に留まっていられなくなったのよね?」
「でっす。あぁ~ユニちゃん先輩そんな暗い顔しないでくだっさいよぉ~? 『神器』探すにはちょいと過去をおさらいしとく必要があるだけでっすから! ね?」
「う、うん。だいじょーぶだよぉアリスちゃん。ごめんね、心配かけちゃった」
ほっ……よかったでっす。過去の話はユニちゃん先輩にとってにがぁい記憶でっすからね、どうしてもでりけぇとなお話になっちゃいまっすねぇ~マスターが優しくユニちゃん先輩の頭を撫でて慰めてくれてまっすから、大丈夫そうでっすけどね。
「アタシも夢でナーゼから聞いたわ。ナーゼ達は『聖域』でみんな倒れたから、『神器』もそこに残ってる筈だって」
「その通りですレイリーアさん。んじゃ、なんでわざわざこんな話をするかと言いますとでっすねぇ~御存知の通り、皆さんはその勇者一行の転生体。『神器』を探すってことは、皆さん自身の~前世での死の記憶に直面することになるからなんでっすよぉ」
実は当たりをつける~とか言いましたけど……とある人物によって一つの場所に『神器』は奉られてまっする。もっちろん、その場所もアリスは把握してるんでっすけどねぇ。最初から答えを全部言っちゃうと冒険の楽しさもなくなっちゃいまっすし、なーいしょのしょにしときまっしょい。
その『神器』を手にするってことは、どうしてもその過去に触れる事になるんです……『四凶』を打ち倒し、満身創痍となりながらも、魔神と戦った勇者一行……
「……皆さんはマスターから新たな武器を、ティリア様から新たな防具を与えられました。それでも……『神器』を、自分達の前世の死を……見届けるんですか?」
正直……無理に『神器』を手に入れる必要はないって思うんです。だって、『神器』には彼等の悲劇の記憶が刻まれているんですから……それを手にしたら否が応にも、その記憶に引き摺られるでしょう、最悪精神が崩壊しちゃうかもしれないんですよ?
「……ヘヘっ、なんだかんだ言ってもよ。やっぱアリスさんって優しいよな?」
ふぁっ!?
は、はああぁぁーっ!? なんでっすなんでっすぅーっ!? アリスが優しいとかゼルワさん、いきなり何を抜かすんでっすかねぇ?
「ふふ、アリサ様の『聖霊』ですものね! 言葉の端々に私達への気遣いがつまってます!」
「ありがとねアリスちゃん。でもね、アタシ達、アリサ様からこの武器を授けられた時に誓ったのよ」
ちょいと! サーサさんもレイリーアさんも! アリスはベベ、別にあーた達を気遣ってなんてにゃーでっすよぉぉ~!? 改まんないで下さいよぉ、こっ恥ずかしいでっしょー! って、レイリーアさん? 誓ったってなんですか?
「……『無限円環』での訓練を乗り越え、強くなったと有頂天になった私達が、アリサ様に完膚なきまでに叩きのめされたのは……アリス殿もご覧になっていたでしょう?」
あー、ありましたね~。むっつりんさんの言葉にアリスも思い出しましたよぉ?
あの時は確かに『白銀』の皆さんは他の皆さん達より、頭一つ抜けた実力で、称賛されると同時にちょーっとノっちゃってまっした。それをマスターが圧倒したんでっしたねぇ。
正直、その時は『白銀』の皆さんの事より、マスターの強さに震え上がって、一つの仮説がアリスの中で浮かび上がったんで、申し訳ないんでっすけど『白銀』についてはあんまり印象にねぇでっす。
「自分の思い次第でその力を変える、アリサ様から授かったこの『フォトンシリーズ』……この輝きを最大まで引き上げるには、私達の前世を無視する事は出来ません」
「うむ。話に聞いておった魔神の堕ちた理由も忘れ、同じ轍を踏もうとしておった儂等の目を覚まして下さったアリサ様への感謝に謝罪と、そのご期待に応える為にも避けては通れぬのじゃ!」
むっつりんさんだけじゃないでっす、ドガさんも……『白銀』の全員が真剣な表情でアリスを見つめてきまっす。ああ……本当に貴方達は彼等と、いいえ。彼等以上に揺るがない意志をその瞳に宿していまっすねぇ……
「……わかりました。皆さん覚悟完了って事でっすねぇ? それなら案内しまっするよぉ!」
アリサ「そういやファムさんとこはどうなんだろ(´・ω・`)?」
ラグナース「折角ですし様子を見に行きましょうか?(^ー^)」
ゼオン「あ、ビット殿。ファムってのはドガの嫁さんでしてね( ´ー`) 芋使った料理屋やってるんでさぁ( ´∀`)」
ビット「ほう(*^.^*) ドガ殿の奥方ですか、是非とも行ってみたいですな(*´∇`)」
アリサ「うわっ!?Σ(゜ロ゜;) なにこれ! 凄い行列じゃない!((゜□゜;))」
ゼオン「なんだこりゃ?( ; ゜Д゜) なんでこんなに並んでんだ?(゜д゜)」
ビット「それほどの美味と言うことでしょうか?(^_^;) しかし、皆しっかりと列を作って規則正しく並んでいるのは感心しますぞ(´・∀・`)」
ラグナース「ちょっと僕、お話を伺って来ますね(;´∀`)」
住人A「あれ、ラグナースさんじゃん!(о^∇^о)」
住人B「おお!( ・∇・) ゼオンさんも、お帰りなさい!(^∇^)」
冒険者「あ!(*^▽^*) アリサ様もご一緒だ!( ≧∀≦)ノ」
住人C「わあぁぁーっ!(ノ≧▽≦)ノ アリサ様~♪( ☆∀☆)」
わいわいわーわー!゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜
ファム「アリサちゃんが来てるって!?゜+。:.゜(*゜Д゜*)゜.:。+゜ おや! ゼオンにラグナースの坊やもいるじゃないか!(°▽°) ちょうどいい手伝いな!(*`Д´*)」
アリサ「あ、ファムさんって、ハイハイ( ̄▽ ̄;) 察したわ、手伝うね( ´ー`)」
ゼオン「ちょっ!?Σ( ゜Д゜) 俺もかよ!(´ω`)」
ラグナース「仕方ありません(^_^;) 見過ごす訳にもいきませんね(;・∀・)」
ビット「あの、奥方殿(-_-;) 私はどうすればよろしいか(・_・?)」
ファム「あんたはこれ持って列の最後尾に立っとくれ!( `д´) 喧嘩とかする奴いたら止めるんだよ?(^ー^)」
アリサ「『ファム煮込み最後尾』……こんな看板まで(゜A゜;) なんかごめんねビットくん(-_-;)」
ビット「いえいえ、お気になさらず! では、行って参ります!( `ー´)」
ファム「いや~済まないねアリサちゃんや(*´∇`*) アリサ煮が大好評でねぇ~商業ギルドの連中にも助けてもらったりしてなんとか回してるのさ( ̄▽ ̄;) まったく、うちの宿六もさっさと戻って来てもらって手伝わせないと!(*`Д´*)」
ゼオン「嬢ちゃんよ~こりゃさっさと手を打たねぇと身が持たんぜ?(>o<")」
アリサ「だねぇ~(゜ω゜;) ほらゼオン手を動かして!(y゜ロ゜)y」
ラグナース「繁盛しすぎるのも考えものですね( ̄0 ̄;)」
ファム「ふぅ~なんとか捌けたねぇ( ´ー`) ありがとよみんな(´∀`)」
ゼオン「きっつ……(ーー;) なんかアリサの嬢ちゃんが客寄せになってたじゃねぇかよ?(¬_¬)」
ラグナース「はぁはぁ……(・д・`;) アリサ様の料理が食べられるってどんどんお客が増えましたね(>_<)」
アリサ「いや、ごめんて(;>_<;) ビットくんもお疲れ様~(^∀^;)」
ビット「いえいえ、私もお手伝いが出来て光栄です!(°▽°)」
ファム「あんたもいきなり巻き込んじまって済まなかったねぇ(‐人‐) お詫びにこれお食べ( ・∀・)っ旦」
ビット「おお、有難い! 感謝します奥方殿(°▽°) うむ、美味!(*´▽`*)」
ゼオン「しかしまぁ~芋だけでも結構なメニューできるもんだなぁ(・о・)」
ファム「煮込みも揚げもサラダもどれもこれも人気でねぇ(^ー^) これもアリサちゃんの教えのおかげさねヽ(*´∀`)ノ♪」
アリサ「あはは(;゜∇゜) 好評なようで何よりだけど、毎日これじゃファムさんの身が持たないね(´・ω・`; )」
ゼオン「ディンベルに相談して、早いとこなんとかしねぇとなぁ( ´Д`)=3」




