93話 聖女と不思議な絵画
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【『言霊の石』と】~驚く諸侯~
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「「ガルディング公が御存命なのですか!!?」」
はい、みなさんこんにちは。聖女のアリサです。私達……私とティリアに三女神は今、『ルヴィアス魔導帝国』にお邪魔して帝国の諸国の代表者達に魔王復活の兆しがあること。その対策に私達が動いていること。また、元々神だった連中が魔王となって迷惑をかけたこと。まぁ、諸々を話してごめんなさいするとともに、理解を得られるように懇切丁寧に説明して、お詫びの品に料理とそれのレシピ。色々なお薬とそのレシピ。オシャレな服のデザイン集等を渡したの。
結果的にとっても喜ばれたのは嬉しかったね! 魔王問題についても全力で協力してくれるってことだし、心強いことこの上ないよ♪
それが済んだ後、以前ルヴィアスから依頼を受けた『言霊の石』の改良品が完成したので、試運転みたいな事をしてもらったんだよね。
『言霊の石』ってのは簡単に言っちゃうと電話だ。ノイズが酷かったり、タイムラグがあったりと、便利って言えば便利なんだけど、もうちょっとどうにかならない? ってのが目立つから改良して欲しいって言われたの。
私の映像通信のようにしてやろうかなって、最初思ったんだけど……何分この『言霊の石』って小さいんだよ。道端に落ちてる小石くらいのサイズしかない。見た目もまんま石ころだしね。
さて、そうなってくると映像通信として再現させるための術式を組み込むには全くもって容量が足りない。回路は圧縮積層型にしたとしても、肝心要のカメラとマイクになる部品が付けられないって問題が出てきた。
そこでレウィリリーネが代案として、相手の人物のみをスキャンして映像として出力できないかと言ってきたので、路線を変えてみた。
そうして出来上がったのが『立体映像通信』ってわけだ。この依頼について、実はアイギスのお父様のガルディング様にも相談にのってもらっていて、先のアドバイスを活かすようにしたの。
「あー、生きてるつーか……まぁ、事実上故人扱いだぞ? 今は女神達に保護されて『聖域』にいるからな」
「おおお……なんと言うことだ。私は公には大変世話になったのです……」
「旧くからの朋友が生きて……朗報だ!」
私がついぽろっとガルディング様の事を口にしたら、途端帝国諸侯のみんなが驚いたんだよ。ガルディング様が治めていた『ランバード公爵領』ってのは、この帝都の北に聳える『勇者の山脈』を越えた先にあり、ただでさえ寒いこの北方の中でもより寒いと言う、厳しい環境。その劣悪な環境にもめげず、ガルディング様は身を粉にして働いて凄く住みやすい領地にしていったんだって。
その手腕に感動した諸侯達は、ガルディング様の教えを請うため何かと相談にのってもらったりしてたのだそうだ。やっぱりアイギスのお父様は素敵だね!
「折角だしお話する? この『言霊の石』による『立体映像通信』と、私の映像通信での違いってのも見せたいし」
「そいつはいいね! こいつらも喜ぶよアリサ様!」
「うむ! 十年振りに公と心行くまで話したいものです!」
是非是非! お願い致します! って、みんなが言うので、私は勿論了承。『聖域』に再建した『ランバード公爵家』に映像通信を繋いだ。
「にゃあぁ~ん♪」「あはは! ミーナちゃん待ってぇ~♪」
わーいわーい♪ パタパタパターっ!
繋いだ矢先、モニターに映されたのはミーナのドアップ。ついでユニの楽しそうな可愛い笑顔だった。ふふ、どうやら今日は『ランバード家』のお屋敷で遊んでるみたいだね。
「うふふ♪ ミーナ様もユニ様も本当にお元気でいらっしゃいますね。アリア様もあのように駆ける事が出来るようになりますわ」
「うん。頑張って馴れて、あるじ様と、みんなとあんな風に遊びたい♪」
「アリア様のその心意気なれば、きっと直ぐに叶いましょう。私共もご協力させていただきます」
そしてその後から、人化した姿のアリアと手を繋いで微笑み合っているセレスティーナ様とガルディング様が映し出された。そうしたらさ、それ観てた諸侯達がみんなして……
「「「えええぇーっ!!? ガルディング公にセレスティーナ夫人!!」」」
「「「十年前のままじゃないかぁーっ!!?」」」
ってめっちゃビックリこいてんの♪ いやぁ~いい反応してくれるもんで、私達姉妹もあはははって声を挙げて笑っちゃった♪
「ひゃうっ!? な、何? ビックリした……あ、あるじ様♪」
「あらぁ~アリサ様、女神様方。如何されましたか? なにやら騒がしいようですが?」
「おお、女神様方! ご覧下さい、アリア様がこんなお上手にお歩きになられましたぞ? ん? おや、卿等は……」
そのビックリした叫び声に三人が映像通信に気付いて寄ってくる。アリアは最初驚いてたけど、私の姿を見つけて笑顔で可愛く手を振っている。セレスティーナ様はきょとんとしてるし、ガルディング様はアリアの上手なあんよに、ほくほくの笑顔で嬉しそう。そして、ようやく諸侯達に気付いて、ん? って首を傾げている。
「おお! これは懐かしい! ふはは! いやいや、随分老けたな皆? しかし、いずれも壮健そうで何よりだ」
「「「待て待て待てーぃっ! いやいや公よ! 其方なにゆえ変わっとらんのだ!?」」」
「「「納得のいく説明を願うーっ!!」」」
あははは! まあこうなるよねぇ~♪
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【可愛いからいいや】~クエスト達成~
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「いけませんよ。ユニ様、ミーナ様。屋敷内を走り回るだなんて、そんなことではアリサ様のような立派な淑女になれません!」
「は、は~い……ごめんなさーい」「にゃぁ~ん?」
おやおや? さっきまで元気いっぱいに追いかけっこしてたミーナとユニが、リリカさんに捕まって、両脇に抱き抱えられてお説教をされながら戻ってきた。ふふ、リリカさんは例え私達だろうと、誰であろうと、悪いことしたら「駄目」ってハッキリ言える人だから凄い助かる。私も時々ユニのわんぱく振りに注意したりするけどさ、ユニに注意する者って結構少ないんだよ。
「──と言う経緯があってな、今に至るのだ。私達はもはや『公爵』ではない、この『聖域』に設立予定の冒険者ギルドのマスターとサブマスターにすぎんよ」
横ではガルディング様達が十年前と変わらない姿でいることから、今『聖域』にいる理由を聞いて驚愕している諸侯達と、何故か誇らしげに頷くルヴィアスに、『言霊の石』を興味深く観察しているルォンくんがいる。
「あ、アリサおねぇちゃーん♪ えへへ、リリカちゃんに怒られちゃった~」
「うなぁーん?」
ユニも私達が映像通信で見ている事に気付き、リリカさんの手から離れてモニターに寄ってきてはミーナと一緒になって声をかけてきた。リリカさんに怒られたところを見られて気恥ずかしいのか、ちょっと苦笑いだ。ミーナは映像通信が不思議なのか、モニターに手を伸ばして鳴いている。
「可愛い……」
「なんだかこの子と猫を見てると私の悩みも些細な事に思えるな」
そんなユニとミーナを見てた諸侯達も思わずほっこりとした優しい表情で、ニッコリだ♪
それからガルディング様達と、落ち着いたら『聖域』に遊びに来るといいとか、二~三点お話をして通信を終わらせた。
「しかし想像以上に改良してくれたんだね。アリサ様、レウィリリーネ。満足度百二十パーセントだよ、本当にありがとう!」
「少しばかり報酬に色をつけさせて頂きますね」
改めて私とレウィリリーネが改良した『言霊の石』を試用して、その出来栄えに大満足のルヴィアスとルォンくんが報酬を用意して渡してくれた。今回はお試しのクエストだから、依頼人から直接受け取るんだけど。本来なら仲介したギルドから受け取るのだと、この時教えてもらったよ。その場合ギルドは仲介手数料を、私達にはそれを差し引いた分が支払われるそうだ。
「何はともあれ初めてのクエスト達成だね♪ このお金で食材いっぱい買ってまた色んな料理作ろって!」
「ん♪ 凄い額……暫くお金には困らないね」
「ちゃんと使って経済を回しませんと……ですが、食材以外ですと……」
「あはは! うちらにゃあんまし使い道ないよねぇ~?」
うむ、もらった報酬の多さにどう使おうかって考える私達だけど、私は勿論食材。とにかく私の家族……『聖域』のみんなは沢山食べるから消費も多い。それでもこの報酬金は使い切れないほどだ、でもアルティレーネが言うようにお金は使わないと経済が回らないからね、なんか他に使い道ないかって言われると、フォレアルーネが言ったようになかなか思い付かない。
「まぁ、おいおい考えましょう? 諸侯達も満足して帝都の屋敷に帰っていったし、そろそろ『転移陣』の設置に取りかかりましょうよ?」
そりゃそうだ、別に今すぐどうこうしなきゃいけない訳でもないので、ティリアの言葉にみんなで頷いて『転移陣』の設置に着手することにしよう。
この『聖域』と繋がる『転移陣』の設置は、ルヴィアスとルォンくん。そして、彼等の側近でもあるバロードくん、カレンちゃん、オルファ達だけの秘密。
「我が帝国の最大の秘密だね。あ、ごめん。悪いんだけどみんなここで待っててちょーだい」
「は? 何よアホぽん、まーた待たせるとはどういうわけよ?」
ぞろぞろと私達はルヴィアスの案内で謁見の間の奥の扉から、右手に最初に私達が案内された部屋……貴賓室らしい、と、左手の部屋……談話室というかぶっちゃけお茶の間らしい、の前を通り過ぎ、T字路に差し掛かる。正面の扉は執務室に繋がっていて、ここでルヴィアスとルォンは大抵お仕事するんだそうだ。んで、そのT字路の右にはルォンくんの私室。左にルヴィアスの私室ってなってる。
そのルヴィアスの私室の前まで来たんだけど、扉の前でルヴィアスが私達に振り返り、苦笑いで「ちょっと待って」って言ってきた。「また待たせんの? 何でよ?」ってティリアはプリプリと怒ってるけど、一体なんでだろ?
「あーあーあー、その、散らかってるんだよ! 一応女の子を招き入れるんだからさ。ちょっとカッコつけたいの! だからさ、ちょっとだけ待っててよ?」
……なるほど。その女の子達を待たせといて「カッコつけたい」もなにもあったもんじゃないだろうけど……察しのいいアリサさんはピーンってきちゃいましたよ♪
「うん。わかった。んじゃ待ってるから行ってらっしゃい」
「ありがとーアリサ様! 直ぐ済ませるから!」
ガチャパタン……
素直に了解する私に軽くお礼して、ルヴィアスが自室に入っていった。
「もー、なんなの~?」
「まったく、あんたの義父はだらしないわね?」
「申し訳ございませんティリア様。義父さんには後で言ってきかせますので……」
「まぁまぁ~フォレアもティリアもちょっと大目に見てあげなよ? こう言う時の理由って大抵二つだよ?」
「二つ……って、何? アリサお姉さん?」
「よくわかりませんけど……アリサお姉さまは何か心当たりが?」
うむ。この場合の男性は……
一つ。本当に部屋が散らかっていて、お客さん、特に女の子に見せるのが恥ずかしい場合。
一つ。本当は大して散らかってないんだけど……女の子には絶対見られたくないのを隠すパターンだ。
まぁ、その両方ってパターンもあるだろうけど、それは別にいいだろう。
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【ベタな隠し場所】~苦しい言い訳~
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「私達に見られたくない物って、何かしらね? 日記とかかしら?」
「ぶっちゃけ、ぇっちな本とかじゃないの?」
「ぶっふ! マジそれアリサ姉~♪ やっば! おもろっ!」
「あぅ……る、ルヴィアスも神……いえ、今は魔王ですが……だ、男性ですものね……」
ティリアの疑問にぶっちゃける私の予想にフォレアルーネが心底楽しそうに笑って、アルティレーネはみるみる顔を赤くして恥ずかしがっている。まぁ、『不滅』持ちの神からすれば思いもよらない理由だろうからね。
「……探そう」
「ちょ、レウィリ~それ、流石にマズくない?」
いつも以上にジト目のレウィリリーネがボソッと言うと、ティリアが笑いを噛み殺して、でもめちゃめちゃ楽しそうにしつつ、一応って感じで止めようとする。止める気なんてないだろうにね~♪
「いやぁ~ごめんごめん! お待たせ~大急ぎで片付けたよ! さぁ、入って入って!」
そんなふうに私達が思っていることなど、知りもしないであろうルヴィアスが、ガチャっと扉を開けて部屋から出てきて、如何にもわかりやすいセリフを吐いてきた。はは~ん。これは後者っぽいなぁ~♪
「はぁ、義父さん……あらかじめ言っておきますが、私を巻き込まないでくださいね?」
「え? なに? なんのことだよルォン? まぁいいや、どーぞどーぞ♪ 今お茶淹れるよ」
ほいほい、んじゃお邪魔しましょうかね♪ こめかみを押さえて、「はぁ……」って、ため息をついてルヴィアスに釘を刺すルォンくんは、おそらく長年の付き合いでルヴィアスがアホをやらかすのがわかっているんだろう。「大急ぎで~」だの、「お茶淹れる~」だの。わざとらしくて笑っちゃいそうなんだけどね♪
「よーし! じゃあフォレアは定番のベッドの下ね♪ 私は片っ端からタンスを開けてくわ!」
「えぇっ!? ちょっとティリア!?」「ティリア姉様!?」
「ん。あたしはクローゼットを調べる」
あーっ!! ちょっとちょっと待って待ってよぉーっ!! と言う、ルヴィアスの叫びも空しく、ティリアにフォレアルーネとレウィリリーネが素早く行動を開始した。私はおろおろと慌てるアルティレーネを「まあまあ」と落ち着かせ、ルォンくんと一緒に用意されたテーブルの椅子に腰掛けて、ルヴィアスにお茶頂戴って言っておく。
「ああ、えっとえっとぉぉーっ! まま、待って待って? お茶どころじゃないんですけどぉ~!? 三人とも止めてくれよぉ~!」
「はっけーん! ティリア姉見っけたよ♪」
「でかしたわフォレア! ベッドの下なんてまたベタな隠し場所ね!」
ちなみにだが、このルヴィアスの私室は中々広い。更に揃えられた家具や調度品等は一目でめっちゃお高い物だってのがわかる。こんな高そうな家具に囲まれてたら正直落ち着いて寛げないんじゃないの? なんて思っちゃう私はやっぱり前世が一般人だったからだろうね。
扉を開ければまずは立派な木彫り細工が施され、黒く染色された衝立が目に入り、直ぐに部屋の様子がわからないようになっている。まぁ、プライベートな空間だし、私から見れば無駄に広い部屋だから安易に来客に見せないようにしてるのかな?
その衝立を抜けて、私達が座るテーブルセット。一見冷たい感じを受ける白い大理石の床に、ほんのりとした暖かみを与えてるような茶色い木製のスクエアテーブル。椅子も同じ木製で、前世でも見た事のある洋風な背もたれつきのやつ。うん、中々の座り心地♪
「お茶淹れるとか言ってたルヴィアスがそれどころじゃないなら仕方ない。自前の紅茶でも飲もうか? ルォンくんも一緒にどうぞ♪」
「あ、すみませんアリサ様! 本来なら私が用意しなくてはいけないのに……」
「いいんですよ。今回は話の内容が内容ですから、使用人に任せる訳にはいきませんからね」
そう、なんと言っても魔王云々の内容を使用人達に聞かせるのは、無用なトラブルを生む原因になりかねないので、今回はガチで秘密の会合なのだ。だから今日に限っては使用人さん達は全員お休みなの。
「うっわーっ! ティリア姉、レウィリ姉! 見てよ見てよ! エローい!」
「ん!? ……す、すごい、エッチ……ルヴィアスの変態」
「あら? これグラビア集じゃない? 写真なんてよくもこの『ユーニサリア』で思い付いたわね?」
あああああーってガックリ崩れ落ちてorzしてるルヴィアスを、うわぁ~とか、じとーって感じで見てるフォレアルーネにレウィリリーネ。ティリアはベッドに腰掛けてペラペラとそのグラビア集を見ている。
「アリサお姉さま、グラビア集とはなんでしょう?」
「ん~簡単に言うと、綺麗でスタイルの良い女の子が水着みたいに布地が少ない服装で、写真に納められてるやつかな?」
グラビアなら結構健全な方じゃないかな? まぁ、ぇろいには変わりないんだけど、水着や下着を着てるんだし。しかし、逆にそれがヌードよりぇっちだなって感じたりもするので、やはり健全ではないかもしれない。
「義父さん……魔導師団が開発した『画像保存』の技術を何に使ってるんですか……?」
ルォンくんが今日何回目かのため息をついて、紅茶を口にした。
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【怒るレウィリリーネ】~がっくりルヴィアス~
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さて、ルヴィアスのお部屋の紹介の続きと行こう。ティリアとレウィリリーネ、フォレアルーネがきゃっきゃ言いながら、グラビア集を見てるベッドは大きい。正直一人で寝るのには無駄にでっかい天蓋付き。
「ルヴィアスってハーレム持ちってわけじゃないよね? このベッドでっかすぎない?」
「ええ、義父さんも私も種族柄それほど異性に関心はありませんし、長寿と言うか不滅に不死ですから」
「えっと……は、ハーレムだなんてアリサお姉さま口に出して言わないで下さいぃ~!」
いや、アルティレーネ……あんた恥ずかしがってるけど、普通王様が国を存続させるために子孫を残すってのは最早義務みたいなもんなんだと思うんだけど? むふふ♥️ な視点じゃなくて歴史的な話としてだね……
「諸侯からの献上されたんだって! 俺には別に必要ないけど、もらっといて使わないのもアレじゃんか? それにそのグラビアも結婚相手にどうかなって、ルォンにあげるつもりでいたのを忘れてたもんだって!」
「はいはい、部下思いで養子思いのいい皇帝さんってわけだね? そんなに必死に弁明せんでもいいのに……」
あわてて「誤解しないで~」って喚くルヴィアスがめっちゃ面白いわ♪
「ま、そういうことにしときましょうか。でも、確かにこのベッドいいわね♪」
「男はみんなスケベってことで! ふわふわで気持ちいいや、なに使ってんだろ、羽毛?」
「ん……!」
ペシンっ!
「あ痛っ!」
てくてく、すとん。
飽きたのか、ティリアとフォレアルーネは持ってたグラビア集をぽふんと閉じて、ベッドに置いた後、そのふわふわで寝心地の良さそうなベッドに横になっていいわ~って感想を漏らしている。しかし、レウィリリーネはベッドから降りて、いまだにorzしてるルヴィアスの頭を平手で叩いて、私達の座るテーブルに来ては、むすっとした顔で椅子に座った。
「私は結婚をする気はないと何度も言っているのですが、諸侯や民から……そういった声が挙がっているのも事実でして……」
そんなレウィリリーネに私は紅茶とクッキーを用意してあげて、頭を撫でてあげていると、ルォンくんがちょっと気まずそうに、困ったように話し出した。
「以前にも言ったけどさ、ルォンは記憶なくしてるからね。安易に結婚なんてして、記憶が戻った時に変なトラブルになってもマズイじゃん? でも、やっぱ諸侯に民の多くは期待しててさ……だからあのグラビアの女の子達にはその辺の理由は伏せてあるんだよ」
そう言えばそうだった。聞いた話だと数百年前に行き倒れてるルォンくんを助けて、養子としてむかえたって事だったね。
ルォンくんは身長が百七十センチくらいで細身。妖精の特徴らしき蝶の羽を背に持ち、ティターニア程色深くはないが緑色……いや若草色っていうのかな? そのストレートな長髪を腰まで伸ばすイケメンだ。優しげな瞳に落ち着いた雰囲気は一見すると美人な女性かと見紛うね。
「そういやティターニアに話したら、記憶を操作する事ができるテュッティって妖精がいるから一度見てもらったらどう? って言ってたよ」
「テュッティ……聞き覚えがあるような……そうですね、『聖域』の皆様にもお礼をしたいですし、一度お邪魔させて頂いてもよろしいでしょうか?」
うん、どうやらテュッティって妖精にはルォンくんも何か心当たりがあるみたいだ。同朋思いのティターニアもルォンくんの来訪は喜ぶだろうし、一度会ってもらうのもいいだろうね。
「えー!? ルォンが帝都から離れたら俺が仕事しなきゃいけないじゃ~ん?」
「あんたは働きなさいよ?」
「そーそーサボってんじゃないよ~アホっぺ! お、中々オシャレな服揃ってんじゃん!」
その途端にぶー垂れる皇帝陛下だ。いやいや、子供かあんたは? 間髪入れずティリアが仕事しろってつっこむのも無理ないだろう。で、フォレアルーネはベッドに飽きたのか、今度はクローゼットを開けてるし。
ベッドの直ぐ横に置かれたクローゼットもまた立派な物だ。置かれてる家具は木製が多く、共通して見事な飾り彫りが施され、塗装も美しく、艶がある。
「アルティ姉~レウィリ姉~こういうデザインも参考にできるんじゃない?」
「あら、でも……男性用の衣類でしょう? あ、でもレジーナさんのような方には似合いそうね」
「あたしはしらない……ルヴィアスなんて嫌い」
がーんっ!! って擬音が聞こえそうな程に落ち込み、床に突っ伏すルヴィアスを他所に、ハンガーに掛けられていた服を一着取り出して、フォレアルーネとアルティレーネがデザインを参考に出来ないかで話が盛り上がってる。
「民や諸侯達の前で演説したりするときの礼服ですね。勲章や装飾がふんだんにあしらわれた皇帝の為の一着です」
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【UNKNOWN】~不思議な絵画~
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軍服のような赤いルヴィアスの礼服については、アルティレーネとフォレアルーネに好きにさせるとして、レウィリリーネは何をそんなにぷんすかしてるのかな? まぁ、原因はあのグラビアだろうからちょいと『引き寄せ』で、自分の手元に持ってきてペラペラとめくって見る。
「あー、なるほど。スタイルの良い女の子ばっかだね」
つまりこれがレウィリリーネのコンプレックスに直撃したんだろう。一応こういうのは見栄えの良い女の子が選ばれるものなんだよって、微妙なフォローを入れておく。
「なんかいまいち面白い物がないわね……飽きてきたし、『転移陣』設置して次行かない?」
「ティリア、あんたは歯に衣着せぬと言うか、ホント遠慮ないわね……」
「あはは♪ アホぽんとは神界から長い付き合いだからねぇ~出来の悪い弟みたいな感覚なのよ」
ある意味自然体で接する事のできる家族ってことかな? どんな世界でも姉に勝てる弟はそうそういないようだ。
「はいはい。んじゃルヴィアス、突っ伏してないで何処に『転移陣』を設置するか教えてちょーだいよ?」
「あい……んじゃ俺のお宝部屋にお願いします」
お宝部屋ってなんぞ?
「うん、そこに本棚が並んでるでしょ? そこにちょっと仕掛けがあってさ、俺が「開け」って言えば」
ゴゴゴゴ……
おぉ~♪ すごい! 隠し部屋じゃーん! こんなの前世でも漫画とかアニメでしか見たことないぞ! 『聖域』の神殿に私が隠し部屋作って~ってお願いしたように、その良さってのをやっぱりわかる人にはわかるんだね!
「はへぇ~こりゃすごい面白いじゃん!」
「……あ、あれって」
どうぞってルヴィアスに案内されたそのお宝部屋は、一つの絵画展示場だった。高い天井に広い壁。そこに所狭しと並べられる数多くの絵画達。風景画もあるがどちらかと言えば人物画や肖像画が多い。そしてその絵画総てにまるで写真を撮った画像のような、上手く言えないけど、絵画とはまた違う違和感を感じる……これは一体なんだろう? 一度写真として現像したものを、わざわざ絵画として模写したような……
「みんな見て……あの三人が……」
「ああ! フォレストくんだ! ユグラっちに、リュールんも!」
「これは……貴方が話してくれた、この北方に集ったユグライア達ですか!?」
驚きだ。レウィリリーネが駆け寄り、私達に「見て」と指を指すこの絵画は魔神戦争の後、妹達が避難させた三神国の王達と、ルヴィアス本人を描いた作品だった。中央にゼオンそっくりのユグライア王。その左右にざんばら髪の茶色い長髪で切れ長の瞳に細マッチョの青年と、レウィリリーネのようにピンクの髪色の可愛い女の子。サイドテールにまとめたその長い髪を白い髪飾りで際立たせるオシャレな子ってのが第一印象だった。柔和な瞳で優しく微笑んでいる。
「へぇ~ゼオンそっくり! 隣にいるのがフォレストくんとリュールちゃん?」
「そうだよアリサ様。凄いだろ? あの時代にこれだけの物を残せる人物がいたなんて、俺も思いもよらなかった。まぁ、触発されて『画像保存』の魔装具作りに走ったりしたんだけどね」
そう言うルヴィアスは次々に自慢のお宝を私達に紹介してくれた。最初の三人の王の絵画から、この北方の大陸を平定するための戦いの様子やら、武将達の楽しげな食事風景、帝都建設の様子など並べられた絵画を追って行くことで、帝国の歴史を辿れるようになっている。
「……誰がこれを?」
「二人組、だったよ。おばあちゃんとその孫だって言ってた」
一通りその絵画を観てレウィリリーネがルヴィアスに問う。彼によれば、当時二人連れが何処からともなく現れ、いつの間にかルヴィアスに接近していたんだそうだ。
「ワケわかんなかったよ? だって俺一応魔王の一角よ? それがいつの間にかあの二人は俺の目の前に現れて、「この大地の歴史が知りたい。少し貴方と行動を共にさせてもらいます」とか言い出してさ……」
魔王としての強大な力も、なみいる武将達の気迫もどこ吹く風よと大将のルヴィアスに接触してるあたり、その二人は普通じゃないね。どんな二人だったんだろう?
「それが思い出せないんだよ、どうもその二人の顔を思い出そうとしても、こう~、もやがかかったように、フードかぶって顔も隠してたのは覚えてるけど、名前も名乗らなかったし、聞いても答えてくれなかったし」
「フードかぶった二人連れね……なんともミステリアスだけど……ダメねわからない。私のイメージ魔法に似てる感じがするんだけど」
何でも小さい少女と老婆の二人だったようだけど、それも今となってはハッキリしないのだそうだ。そしてこの絵画達。私が『鑑定』しても何の情報も得られなかった。全てが『UNKNOWN』……鑑定不可と出る。
「……アリサお姉さんでも『鑑定』出来ないなんて、その二人はどうしたの?」
「それが、いつの間にか姿を消していたよ……この絵画の礼がしたくて探したんだけど……」
ふるふる、と首を横に振るルヴィアス。
なんとも奇妙な謎を残しながら、私達は『転移陣』を設置したのだった。
アルティレーネ「あ、この絵は『セリアルティ王国』の騎士団長達です(°▽°)」
レウィリリーネ「ん(^-^) ホントだね、みんな元気な笑顔(*^-^)」
アリサ「ほほう(・о・) じゃあこのバロードくんそっくりなのがバロンって人か~(´・∀・`)」
フォレアルーネ「こっちには『ルーネ・フォレスト王国』のみんなだ!( ・∇・) ダルクくんも描かれてる(*´∇`)」
レウィリリーネ「あった。『リーネ・リュール王国』のみんなの絵( ゜ー゜) オリビア見るのも久し振り(´▽`)」
ティリア「凄い数の絵画ねぇ~( ̄0 ̄) こりゃ確かに『お宝』だわ( ゜Å゜;)」
ルォン「正直、これらの歴史的価値は計り知れない程のものですよ(゜Д゜;)」
ルヴィアス「色々落ち着いたら美術館でも建設して展示しようって思ってるよ。いつかあの二人の子孫とかが観に来るかもしれないし(^ー^)」
アルティレーネ「うふふ♪( *´艸`) もしかしたら本人達が来るかもしれませんよ?ヾ(^^ヘ)」
フォレアルーネ「え~(^_^;) まっさかぁ~(‘∀‘ )」
ティリア「わかんないわよ~『不死』持ちって結構いるしね( ´ー`)」
アリサ「ふむ。せっかくだし私達のも飾ろうか(о^∇^о) ほら、妹達~そこに並んで、はい。パシャリ☆」
レウィリリーネ「んう?(・・;) アリサお姉さん、今の魔法(・_・?)」
アリサ「そそ、んでもって、イメージ中の写真をこの絵画風にアレンジして物質化させてやれば~(*´∇`*)」
PON!
アリサ「はい、出来上がり~♪( ≧∀≦)ノ」
ルォン「おお!Σ(*゜Д゜*) これは凄い!ヽ( ゜∀゜)ノ」
フォレアルーネ「へぇ~(*^.^*) 飾られてる絵画と遜色ないじゃん!(*´▽`*)」
アルティレーネ「凄いです(^∇^) アリサお姉さまは本当に器用ですね!(´∀`*)」
アリサ(ホレホレ~ルヴィアスくんや、これで大好きなあの子を毎日拝めるゾイ(((*≧艸≦)ププッ)
ルヴィアス(国宝にするよ!(ノ≧▽≦)ノ マジにありがとうアリサ様!)
ティリア「え~( ; ゜Д゜) それならもっと可愛く写りたい!( `Д´)/」
フォレアルーネ「よくわかんなかったから、うち変な顔になってるじゃーん!(>o<") やり直し~(o;д;)o」
レウィリリーネ「ん(-_-;) あたしもちょっと変な顔……アリサお姉さんもう一回もう一回(´・ω・`; )」
アリサ「あいよ~♪(*≧ω≦) ふふっこういうとこ普通の女の子と全然変わんないわよね(*´艸`*)」
ルォン「微笑ましいですね義父さん(*´▽`*)」
ルヴィアス「うんうん!ヽ(*´∀`)ノ♪ 最高だな!(*´ω`*)」




