91話 猫幼女ジジイに追われる
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【ココノエ】~『エルハダージャ』の女王~
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「珠実様はココノエをご存知だったんですかい?」
「うむ。その名には心当たりがあるんじゃが……なにぶん、ひーふーみーよー……いつの頃じゃったかの? 随分と昔の事じゃて、童の言う奴とは別人やも知れぬが……」
ゼオンが『エルハダージャ』の王様である「ココノエ」と言う人物とかつて、『誉』と言う冒険者のパーティーを組んでいたと言うお話に珠実が食いついてきた。ゼオンの問いに指折り数えて、時間が経ちすぎているからもしかすると別人かもしれない。でも、気になるから教えてと珠実さんだ。
「はぁ、んじゃ俺の知る限り話しますぜ。あんま知られてねぇが、ココノエは女だ。つまり『エルハダージャ』は女王が治める国ってわけだな」
「噂には聞いていたが……本当だったんだな」
へぇ~ココノエさんって人は『エルハダージャ王国』の女王様なんだ。んでも、アイギスの言う噂ってなんだべ?
「『エルハダージャ』の王は滅多に人前に姿を現さないのですよアリサ様。いつも大臣が代行しておりまして」
「ああ、俺が出向いても姿を見せないとか……ちょっと腹立つよね? で、ゼオン。ココノエは噂じゃ相当な美女って話だけど、どうなの?」
あれま。そりゃ一体どういうわけだろね? どうもアイギスの話を聞くと、「女王の指示を~」とかその大臣が口にしてたらしいから、別に隠されてるって事でもないみたいだけど。
噂は今ルヴィアスが言った美女説に老婆説、重病説等、諸々飛び交っているとかなんとか。しかし、北方の覇者でもあるルヴィアスが直々に出向いても姿を見せないって、相当じゃない?
「それがよぉ~アイツ……アリサの嬢ちゃんみてぇに変身魔法でしょっちゅう姿変えるもんだから、わかんねぇんだわ……ある時は『人間』だったり、『兎人』だったり『猫人』だったりよぉ~」
ほへーん。なんじゃそりゃ? 一国を束ねる人がそれでいいのかねぇ? まぁ、『セリアベール』の防衛戦にも救援に駆け付けてくれてるからしっかり回っているんだろうけどさ。
多分一緒のパーティーだったエミルもデールもガッシュも『ゲキテウス』王も奴の正体知らねぇんじゃねぇかな? ってのがゼオンの言う「ココノエ」の人物像だそうだ。
「気になるのぅ……ん? ああ、済まぬな。実はその昔に、妾になついておった『狐人』がおったんじゃよ。其奴は妾の九尾にあやかって己を「ココノエ」と名乗るとかぬかしての」
珠実がう~んって唸るのを私達が見ていると、それに気付いたのか珠実は一言謝罪して、自分の知る「ココノエ」と言う『狐人』について説明を始めた。珠実の『九尾』にあやかって、「ココノエ」ねぇ……
「もしかして『九重』って書くのかな? でもこんなのよく知ってたわね?」
九つに重なる珠実の尾。と言うことにあやかって「ココノエ」って事だろう。私の前世でもあまり使われない言葉なのに、『ユーニサリア』でそれを知ってるなんて……珠実になついていた『狐人』は随分と博識だ。そして、『エルハダージャ』の正体不明の女王とやらも「ココノエ」と言う……偶然? とも思えないなぁ。
「うむ。妾も偶然とは思えぬ……そもそもココノエとの出会いからしておかしかったのじゃ。アイの字よ、オヌシ達が『聖域』に寄り付かなんだ訳はなんじゃった?」
「……魔素霧。ですね……当時の『聖域』の魔素濃度は霧として視認できるほど濃いもので、大抵の者には猛毒でした」
「だから『魔の大地』なんて呼ばれる事になったんだよね……」
うん? 珠実は何で『聖域』が『魔の大地』って呼ばれる事になった理由を聞いてるのん? 聞かれたアイギスも、一瞬キョトンとしたあと答えて、レジーナが相槌を打っている。でも、それがココノエと珠実の出会いにどう繋がるんだろ?
「そんな誰も寄り付かぬ島に、ココノエは一人佇んでおったのじゃ。不思議なことに魔素の方がアヤツを避けておったのじゃよ? 妙だと思わぬか?」
「マジか……そいつは確かにおかしな話だぜ……で、珠実様。そいつは何て答えたんです?」
おおぅ、そりゃまた一体どういうこと? まさか魔素霧の中でそんな出会いに繋がるなんて、奇妙だわ……続き、続きはどうなるの? ゼオンと同様気になって仕方ないよ。
「それがのぅ、アヤツは記憶をなくしておったんじゃ。自分の名前も、何処から来たのか、どうしてここにいるのか……何もかも記憶にない。どうすればいいか途方に暮れていたところに、妾が現れた。と言う訳じゃな」
むぅぅ~肝心なとこがわからないね。記憶なくした不思議ちゃんが魔素霧渦巻く地で、一人ポツンと佇む。うん、なんと言うミステリーか……そもそもどうして記憶なくしたんだろ? どうしてそこにいたんだろ?
(……な~んか、状況が私に似てるような。ねぇ妹達、『ユーニサリア』に私以外にも転生者っているの?)
(ううん。アリサ姉さん以外いないわ。それは主神として断言する)
(うち等が顕現できなくなった後の話だよね……これ?)
(確かに気になりますね……『エルハダージャ』のココノエですか……)
(ん。当時は『エルハダージャ』も『ゲキテウス』もなかった……)
私も『ユーニサリア』で目覚めた時は記憶がなかったから、なんか状況が似てる気がしたので、こっそり妹達と通信魔法で話をしてみた。でも、妹達もココノエに関しては知らないそうで、益々謎が深まったのだった。
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【シャイニング】~『獅子王』~
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「気になるのぅ……これはちと、妾も『エルハダージャ』に出向いて確かめてみようかの……アルティレーネよ、お主外交で国々を巡るのじゃろ? 妾も連れて行け」
「ええ、私も気になりますし一緒に行きましょう珠実」
謎の女王「ココノエ」については、今私達があーだこーだ話をしててもわからないので、珠実が直接会って確かめるってことで落ち着いた。『ユーニサリア』に戻り、アルティレーネは外交担当として諸国に魔王復活の兆しありと、注意を呼び掛けて回る事になるのだ。これにはSPのバルガスとネヴュラが同行するんだけど、そこに珠実も加わるようだね。
「あのココノエちゃんにそんな秘密があったんだねぇ~美人な『人間』だなって、会った時は思ったけど……」
「それも変身魔法で姿を変えていた状態だったのね」
十年前にゼオンの『誉』と会った事のある『猫兎』のミミとニャモも、「へぇ~」って驚く、と言うより、感心してるようだ。
「それについては珠実様にお任せだね」
「ですね。『誉』の皆さんも元気そうでよかった」
「ゼオンさん~ゲッキーは?」
レジーナもココノエについては珠実にお任せするのがいいだろうって頷いてる。ネネは何はともあれ旧友でもある『誉』のメンバーがそれぞれ元気にやってる事に安心して微笑んでるね。で、ももちー、「ゲッキー」ってなによ?
「応。アイツは相変わらずだぜ? くっく♪ あの野郎にもアリサ嬢ちゃんの肉料理食わせてみてぇなぁ~わははっ!」
あははは♪ って笑い合うゼオンと『猫兎』達なんだけど、私達には何の事かさっぱりわからないよ? なんなの一体?
「ふふ、「ゲッキー」ってのは『ゲキテウス王』の事だよアリサ様」
「あのねあのねアリサ様~♪ ゲッキー王ちゃまはね~」
「でっかいライオンさんなんだよ♪ こう~「ガオオォーッ!」って吼えるの!」
ほえ~『ゲキテウス王国』の王様は「ゲッキー」っていうの? ルヴィアスにそうなんだって言おうとそっち向けば、ルヴィアスの背後からシャフィーちゃんとネーミャちゃんが出てきて、両手を顔の脇に持ってきてわきわきさせて「ガオオォーッ」ってしてる。何て可愛いんだろう♪
「ゲッキーは「シャイニング・レオナード・ゲキテウス」ってのが本名でな。肉好き魚好き~の脳みそ筋肉の『獅子王』だぜ」
ライオンで『獅子王』って言うと……青くて腕と脚がいっぱいあるアヤツかね? なんて一瞬思ったけど違うそうだ。
『亜人』の中で『獣人』にカテゴライズされており、その中でもトップクラスのフィジカルを誇る種族だと言う。
ゲンちゃんやリンみたいに、同じ『人狼』でも、まんま狼が服を着て言葉をしゃべり、二足歩行する狼に近いタイプと。人の容姿に狼の耳と尻尾を持つ、より人に近いタイプがいるんだけど、ゲッキーはライオンに近いタイプなんだって。
「取り敢えず『エルハダージャ』のココノエと、『ゲキテウス』のゲッキーに俺から手紙書いとくぜ。アリサ嬢ちゃんのことに、女神様の事、魔王共の事だの……内容濃すぎて要約すんのも一苦労だがな」
「それは助かるよゼオン♪ ありがとね!」
直ぐにって訳にはいかないけど、近々訪れる事になる両国だ。その王様達とぶっといパイプを持つゼオン直筆の手紙があれば、話がスムーズに進むかもしれないね。
それから少しゲッキーことゲキテウス王の事、その国のことで話が盛り上がった。何でも『強きをくじき、弱きを助ける』ってのが『ゲキテウス王国』の信条だそうで、実に正義感溢れる国みたいだ。犯罪件数も各国の中で最も低く、『一番住みやすい国』とも言われているらしい。
ジャデークとネハグラの両家族が『セリアベール』の冒険者ギルドの人不足を憂い、自ら異動を願い出たのもその信条が根付いているからなのかもしれないね。
「飯も美味いぜ? そりゃあアリサの嬢ちゃんみてぇに手間暇かけた料理じゃねぇが、なんせ海産物が豊富でよ。ジスオウフェルっていう港でとれる魚がうめぇんだ」
「あーそういや魔女がそこの漁師さん達を助けたよ? でっかいイカさんに船ごとぱっくんちょされそうなとこをさ」
先日に夕飯で出したイカフライを始めとした数々のイカ料理がそれだ。魔女がミーにゃんポーチに収納したから『無限円環』にいる私達も堪能できたのだよ。
「あはは♪ そうだったんですね! ジスオウフェルの漁師さん達って訛り凄くなかったですか?」
「懐かしい~ニャモがそこのお魚食べて「私ここに住みたい」とか言ってたっけ」
その事を話すとファネルリアが笑いだしてあの訛り全開の漁師さん達の事を話し、ネネも思い出し笑いをする。どうやらあのジスオウフェルっていう港町はお魚が美味しい事でも有名らしく、『猫兎』達もネハグラ、ジャデーク達も過去に食べた事があるんだそうだ。
「そいつはゲッキーも喜ぶな。アイツ旅先でも「ジスオウフェルの魚食いてぇ~」とかぼやいてた事があったからよ。よほど気に入ってるんだろうぜ。
さて……どうだ? パーティー名決まったか?」
ゼオンもその顔に笑みを浮かべ、うんうん頷いてる。確かにあの漁師さん達も王様が町の飯を気に入ってくれてるのが自慢だとか言ってたもんね~♪
でもって、ゼオンはいまだパーティー名をどうするかで、あーだこーだと話す候補組に声をかけた。そろそろ決まったかな?
「決まった! 俺達のパーティー名は『ハンバーグ』だ!」
「私達は『フライドポテト』です!」
……え~? いいのかねそれで?
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【まず『神器』回収】~そして『ゲキテウス』へ~
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さて……じゃあ『ユーニサリア』に戻ってからやること。の、まとめの続きだ。
まずは……『セリアベール』と『ルヴィアス魔導帝国』にそれぞれ『転移陣』を設置すること。
『白銀』達とアリスにユニ、ミーナと一緒に『聖域』にあるだろう『神器』を探すこと。
『セリアベール』に行って各ギルドの代表や飲食店の店主にレシピを教えること。スラムの子供達に教えるのは学校が建てられるまでの間は簡易的なものに済ませる。ってのは私が忙しいから、そのための配慮。
そして……
「『神器』か、んじゃそれが見付かるまでは、黒フードを誘き出す作戦は待機なんだな?」
「そうだね。魔女とアリスがいれば『神器』のある場所の特定は直ぐだと思うから、そんなに時間はかからないと思うけど」
そう、魔女を『人猫』の幼女に変身させての囮作戦の決行だ。
この作戦は私と魔女の姿を『セリアベール』に潜伏しているであろう、黒フードの連中に見せる必要があるので、先に『神器』を回収しておきたいのだ。というのも……
「『ディードバウアー』が復活するとすれば、『ルーネ・フォレスト』だろうからね。黒フードの連中も近くにアジトを構えているはずよ」
「ともすれば、黒フード達は西……『ゲキテウス』を更に北上した先に向かうだろう」
ティリアとルヴィアスの予想がこれだからだ。シェラザードが『悲涙の洞窟』で復活したように、魔王達は討たれた場所に復活するっていう前例が根拠となっている。そのために、黒フードの一味であろう、ゼオンの朋友『虎人』のガッシュ氏に、魔女の護衛をさせ、『ゲキテウス王国』まで移動するように仕向ける。
「それに同行するのがボク達『猫兎』って訳だ」
「応。いいか? まず俺が聖女の嬢ちゃんに魔女の嬢ちゃんを『ゲキテウス』までの道中、護衛を頼むってクエストを相談される。そこで、俺はガッシュを呼んで護衛をするように誘導するぜ」
「そこにガッシュくんだけじゃ不安でしょーって事であたし達の登場だ~♪」
「何せ『セリアベール』の新たな英雄、アリサ様のたってのお願いだ、『人猫』のアリサ様は超VIPとして扱わなきゃいけなくなる」
細かい段取りは今レジーナ、ゼオン、ミミ、ニャモが話した通り。事情を知る者から見れば白々しい芝居をうって、なんとかガッシュ氏に魔女を護衛させ、隙だらけの状態をさらして油断させ、仲間でもなんでもいいからに拐うなりしてもらおう。
「でも、十年間行方知れずだった『猫兎』達が突然現れたら、それこそ騒ぎになりそうじゃない?」
「いや、レイリーアそれこそ願ったりだろう? 正直ガッシュにとって都合よくアリサ様達『聖域組』の弱点が転がり込んでくる状況だ」
「「出来すぎている」……そう思われないためにも、彼女達『猫兎』達は良いイレギュラーとなりましょうね」
レイリーアが『猫兎』達の登場に、その場が混乱するのではないかと心配しているけど、バルドくんとセレスティーナ様が説明したように、ガッシュ氏に勘繰られないようにするための二重の策でもある。
「ん~、でもよぉ~十年前と容姿が変わってねぇ事はどう説明するんだよ?」
「レジーナさん達『猫兎』は有名でしたし、結構覚えられていますよ?」
「あはは♪ そんなのなんとでも誤魔化せるよ。「時間の流れが違うダンジョンを攻略してた」とかさ、何処にあるって聞かれたら、『ランバード公爵領』とか言っときゃいいんだし」
セラちゃんとサーサの懸念をパルモーが笑い飛ばす。『ユーニサリア』には妹達が把握している『迷宮』以外にも、人の手で作られた、若しくは人の手が加えられた洞窟……『ダンジョン』や、自然の姿そのままの『洞窟』が多数存在しているため、今パルモーがでまかせで言ったようなダンジョンも実際に存在しているかもしれないのだ!
「確かに、うち等が把握してるのって『迷宮核』置いた『迷宮』だけだし……」
「それも今となってはどうなっていることやら……私達女神も『ユーニサリア』の全容は知り得ません……」
「それでいいと思う……知らないからこそ、楽しい。どうしてティリア姉さんが未熟なあたし達姉妹に『ユーニサリア』を創造させたのかって答えはきっとそこにある」
妹達のそんな言葉にティリアはただニッコリ微笑む。うん、そうだね……きっとレウィリリーネの答えが正解なんだろう。やる前から全部わかってたらきっとつまらない。やっぱり初見の楽しみは大事だよね!
「……アリサ様、やはり私は反対です。何もアリサ様御自身が囮という危険な役目を担う必要はないのではありませんか?」
おっとっと、ここで神妙な面持ちで話を聞いていたアイギスから反対の声が挙がった。う~ん、私を心配して言ってくれてるのはわかるし、とっても嬉しいんだけど……今から代案を考えるのも難しいよ?
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【セラの仕返し】~撫でられるアリサさん~
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「アイギス、気持ちはわかるけどよ、なんか代案とかあるか? 少なくとも未だにアリサ様に敵わねぇ俺達でも、被害を出さずに済む案が……あるか?」
「『猫兎』もついているんですから、信じてお任せしましょう?」
「うむ。それに儂等は『武神リドグリフ』との戦いに向け、より励まねばならんのじゃ」
ゼルワとサーサに説得されて、ドガにも人の心配してる暇はないぞと暗に言われて、渋々という感じで引き下がるアイギス。
……これ、アレかな? ちょいとアリサさん期待しちゃっていいのかしらん? いや、だってさ、私とアイギスの立場が逆だったらさ……私もめっちゃ反対したと思うんよ?
だってアイギスは私にとって凄く大事な人だもん。そんな人が敵陣の懐にわざわざ囚われに行くって言ったら絶対止めるよ。
「なーにうへうへしてるのぉアリサ様♪ うふふ、嬉しいのかしら?」
「にゃおっ!? にゃにゃにゃにを言うのかねレイリーアくん! からかってないで席につきたまへよ!?」
あはは♪ って、楽しそうに笑うレイリーアには、どうも私がアイギスに心配されて、頬をにやけさせてたのがバレてたみたい! むむ、この健康優良ぇっち女子め! 目敏いったらありゃしない!
あたふたと慌てる私を面白そうに見やり、レイリーアは「そう言えば~」と下唇に右手の人差し指を添えて言う。
「アタシ達アリサ様が変身魔法使ったとこ見たのって、アイギスのマントから戻ったとこだけよね。今回は『人猫』の女の子に変身するんでしょう? ちょっと見せてもらいたいんだけど」
「俺達も見たことないです……」
「ふむ、俺達が言うのも差し出がましいかもしれませんが……ぶっつけ本番よりは、ここで変身して、ネネさんやニャモさんに不備がないかを見てもらうと良いのでは?」
そのレイリーアの言葉にムラーヴェが頷いて、ガウスが生粋の『人猫』であるネネとニャモにおかしな所はないか確認してもらうと良いと指摘してきた。うぅむ、なるほど。確かに相手は『亜人』達の集団だ。『人猫』の習性? なんかも熟知しているものと思われる。見た目だけのコスプレじゃバレてしまうかもしれないね。
「わかった。んじゃ変身して見るから、おかしなとこあったら教えてちょうだい? へーんしん!」
ぼふんっ!
私が変身魔法を行使すると、私を中心に白煙がぼふんっと立ち込め、食堂の一角を覆う。いや、別にこの白煙にはなんの意味もないんだけど、所謂演出というやつだ。
「わぁー! 可愛い~♪」「おぉ! これは見事な!」
キャーキャー♪ わーわー♪
その白煙が消え、『人猫』に変身した私の姿がハッキリすると、みんなから歓声が挙がった。うん、大好評のようでアリサさん嬉しい♪
「可愛い! アリサ様とっても可愛いですよ!」
「うん! あ、でもそういうポーズは私達『人猫』の子供でもあまりしないね」
うおぅ……早速のご指摘でございますよ。ネネは満面の笑みで私のこの姿を褒めてくれるけど、ニャモは冷静に招き猫のポーズする私を苦笑いして見ている。
「うくく♪ 可愛いぞ~アリサぁ、ほーれほれ! 撫で回してやるぜ!」
「うにゃあっ! ちょ、セラちゃんなにすんのー!?」
あーしまった! セラちゃんに捕まった! 私がネネとニャモに『人猫』についてアレコレと聞こうとしてる矢先、背後からがばちょと抱きつかれ、今までのお返しと言わんばかりに、無遠慮に頭を撫で撫でされてしまっている!
「あにゃにゃ! くすぐったい~! 助けてネネ~ニャモ~!」
「うりうりうり~♪ いいかアリサ~『人猫』はなぁ、この耳の付け根とか撫でられると、頭を撫でてる奴の手に擦り付けて気持ちよさそうにするんだぜ?」
「うんうん! セラちゃんの言う通りです!」
「撫でる相手。撫で方にもよるけど、大体の『人猫』の子はそうね」
うにゃにゃにゃ! くすぐったい! でも、セラちゃんとネネとニャモの話を聞くに概ねミーナと同じ感じかな? というか……
「にゃぁっ!!」
ペシンッ!
「あうぁっ!?」
「セラちゃん撫で方雑!」
もーぐりぐりって感じで私の頭を押さえつけて強引に撫でてる感じがダメ!! セラちゃんの腕を振りほどき、逆襲の猫パンチをその顔面にお見舞いだ!
「おー! 今のはいいですよアリサ様! まんま猫でした!」
「うんうん♪ 大人達にぐりぐりされて嫌がる『人猫』の子供の反応でしたね」
うむ! やっぱりか。長年ミーナを観察してた成果が思わぬ形で花開いたようだね!
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【しっちゃかめっちゃか】~収拾つかず~
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「ほっほっほ♪ たまらんのぅ~実に! この老骨も若返りそうじゃ!」
そんな私達のやり取りを見てはホクホク笑顔全開なのが、やっぱりシドウだ。何て言うの? 目尻を下げてだらしなく鼻の下伸ばして「うひょひょ」って感じでキモい笑顔を隠すことなく浮かべてはしゃいでる。
「ジジイ~そのスケベ顔を止めろよ? みっともねぇったらありゃしねぇ……」
「そうだぞ兄者。恥ずかしいから止めてくれ」
大地と爽矢もうんざり、って感じで盛大なため息をついてはこめかみを手でおさえてる。シドウはシドウでそんな二人の言葉など聞く耳もたーんって私に近付いて、「ほれ、儂の近こうよれ」とか言って手を伸ばしてくるし!
「ヤーだ! あんたお触り厳禁って言ったの忘れたのにゃ!?」
「忘れたわい! 何せ歳じゃからのぅ~♪ ほれほれ~遠慮するでない! 儂にも撫でさせるんじゃ♪」
ギャー! このジジイ~! 開き直りおってからに!
止めろっての! このじいさんを取り押さえろ~だの、みんなも騒ぎだして、私は逃げる! 取り敢えずユニとアリアの背中に隠れるんだ!
ヒョイ。
むおぉっ!? そそくさと逃げようとした私を後ろからヒョイって軽く持ち上げるのは誰ぞ!? びっくらこいたじゃないのよ!?
「フフフ……捕まえましたよお姫様♪」
「ほわぁっ!? ああ、アイギス!?」
うにゃにゃ! なんとびっくり! 私の腰を両手で掴んで軽く持ち上げてお姫様抱っこするのはアイギスだった! やーん! びっくりドキドキなんですけど~どうしましょ!?
「さあ続け『白銀』! アリサ様達をシドウ殿の魔の手よりお救いする!」
「わはは! 面白そうじゃねぇの! んじゃユニちゃんもらい~♪」
「あっはっはっは♪ それなら私はアリアちゃんをいただきまーす!」
にょわぁーっ!? なんだこりゃー? アイギスに抱き抱えられたってちょっとドキドキしてたらなんかめっちゃ楽しそうに笑いだしてシドウを挑発してるし!? ノリの良いみんなもわーわー♪ って騒ぎだしてもうお祭り騒ぎ!
「わーいわーい♪ ゼルワお兄ちゃん頑張って~♪」
「サーサもシドウに負けないで?」
「アタシはたまちゃんゲットよぉ~♪」
「おわぁ! これレイリーア! もそっと丁重に扱わんか!」
ゼルワに肩車で、サーサにおんぶされたユニとアリアもきゃっきゃ♪ きゃっきゃ♪ と喜んで、レイリーアに正面から向き合うように抱っこされた珠実も、文句言いつつその顔は笑っている。
「おのれ小童共めが! この黄龍に挑むか!? 身の程というものを教えてやらねばならんようじゃな!?」
うおおぉーっ!! って追っかけてくるシドウじいちゃん! 私達はアイギス達にそれぞれ抱っこされたまま『ミーナ野原』へと飛び出した! ちょっとちょっと! なんなのよこれーっ!?
「はい、急遽始まりました~! アイギっち達『白銀』vsシドウの鬼ごっこです♪」
「制限時間三十分の間、『白銀』達はお姫様達を守りきれるのでしょうか?」
「ん。アリサ姫が捕まったら問答無用で『白銀』の負け。罰ゲーム」
おいぃーっ!? 妹達よなに勝手にルール決めてゲームにしてんのにゃーっ!?
「儂は見物させてもらうとするぞい♪ 既に酒がはいっとるでな! わっはっは!」
「だーめだこりゃ。まっ、アリサの嬢ちゃんにレジーナ達ならなんとでもしちまうだろうし……そう心配することもねぇか」
「そうですよゼオンさん。僕達もドガさんとお酒でも頂いて、このゲームを観戦しましょう」
あードガったら真っ昼間からお酒空けてるし! ゼオンはあきれ顔で私達を見てるし! ラグナースまで便乗してる!
「珠実は、まぁ別にいいや。ユニとアリアが捕まっても罰ゲームだからね~あんた達!?」
「こりゃーっ! 主神よ、何故に妾は別にいいんじゃーっ!?」
「ガハハッ! 当然じゃ! 儂はお主なんぞに興味ないわい!」
おのれこのジジイめぇーっ! ってレイリーアの腕の中で追っかけてくるシドウじいちゃんに喚き散らすたまみんである。まったく! ティリアまで悪ノリして~後で仕返ししてくれようかしら!
「アリサ様。私達はアリサ様を信じてお待ちしています。ですから必ずお帰りくださいね?」
「アイギス……うん! 任せなさいって♪ だからあんた達も『武神』なんかに負けちゃダメよ?」
「任せてくれよアリサ様! 俺達は負けねぇさ!」
「勿論です! 取り敢えずこのゲームも勝利しましょうか!」
おーっ! って走りながら互いに励まし合う私達。アイギスが私を心配してくれるように、私もアイギス達が心配だけど、お互いに信じよう。
「ちょっとーっ! アタシもいるんだからね!」
「ドガも忘れてやるでないぞ~♪」
あはは♪ 忘れてないって! ちょっと遅れてたレイリーアと珠実が私達に並走して、一緒に『ミーナ野原』を駆ける。
「うはははっ! そーれ、追い付いてしまうぞぃ! 観念して三人共儂に撫でられるんじゃぁ~♪」
その後ろから迫る変態ジジイ!
おいかけっこは暫く続きそうだ……やれやれ。
猫アリサ「んにゃ!?Σ(゜ロ゜;) アイギス! 私重かったりしない!?(;´゜д゜)ゞ」
アイギス「はははっ!(*⌒∇⌒*) 何を仰いますアリサ様! 軽いですよ(*´▽`*)」
猫アリサ「うおぉ~よかったぁーっ!(;>_<;) これで「重いです」なんて言われたら……(ーー;)」
アイギス「い、言われたら……?(´・ω・`; )」
猫アリサ「暫くあんたの前から消えて、死ぬ気で痩せる!ヾ(゜д゜)ノ フォレアの加護の『不変』をなんとかして解除して、必死で痩せる!(>o<")」
アイギス「そそ、そこまで!?Σ(*゜д゜ノ)ノ だ、大丈夫です! 大丈夫ですからアリサ様!ヽ(´Д`;)ノ どうかご安心下さい!(;´∀`)」
ユニ「ゼルワお兄ちゃん!(°▽°) ユニはユニは~?(ノ≧▽≦)ノ」
ゼルワ「わははっ!(´▽`) めちゃくちゃ軽いぜーっ!?(^∇^) もっともっといっぱい食ってでっかくなろうな~ユニちゃん!(≧∇≦)b」
ユニ「おーっ!(^o^)/ いっぱい食べてアリサおねぇちゃんみたいな、ナーイスなバデーになるんだぁ~♪ヽ(*>∇<)ノ」
ゼルワ「おーっ!ヽ(´∀`)ノ いいぞいいぞーっ! いや、ホントにサーサにくらべて軽すぎて不安になるくれぇだからなぁ~(;`・ω・)」
サーサ「ゼルワぁーっ!ヽ(#゜Д゜)ノ 聞こえましたよぉぉーっ!L(゜皿゜メ)」 誰が重いですってぇーっ!?((ヾ(≧皿≦メ)ノ))」
アリア「おおお?(゜A゜;) は、速い……サーサ凄い( ´ー`)」
ゼルワ「げっ!?Σ(*゜Д゜*) ヤベェっ!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 誤解! 誤解だってサーサぁーっ!ヽ(´Д`;)ノ」
ユニ「あははは♪ヽ(*´∀`)ノ」
珠実「おーおー(・о・) ゼルワとサーサがものっそい勢いで加速しおったぞ?(^ー^) ホレ! レイリーアも気張らんか♪( ゜∀゜)」
レイリーア「えー!?( ̄0 ̄;) たまちゃん結構重いんだもん! これ以上無理よぉ~!ヾ(゜д゜;)」
珠実「なんじゃとぉーっ!?Σ(ノ`Д´)ノ このぷりちぃな幼女を捕まえてなんてこと言うんじゃぁーっ!☆○(゜ο゜)o」
レイリーア「いたーいっ!☆ ̄(>。☆) ポカポカしないでたまちゃん! って、あーっ捕まったぁ~!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」
シドウ「ワハハ!(*´▽`) 龍となった我が体躯ならば主等を絡めとるのも容易じゃぞ!ヽ(*≧ω≦)ノ」
珠実「おのれこのジジイめぇ~こうなれば是非もない!(*`ω´*) 行けシドウ! アリサ様達を捕まえるんじゃーっ!(ノ`Д´)ノ」
猫アリサ「わーっ!!Σ( ̄□ ̄;) 珠実が裏切ったーっ!?(゜Д゜;)」
アイギス「うおおぉぉーっ!(≧□≦) 負けるものか! アリサ様をなでなでするのは私だぁーっ!ヽ( `Д´)ノ」
猫アリサ「キャーヾ(o≧∀≦o)ノ゛ アイギスってば何言ってんのよぉ~♥️♪o((〃∇〃o))((o〃∇〃))o♪」
ギャラリー「めっちゃ楽しそう~♪。:+((*´艸`))+:。」




