90話 聖女と偵察部隊と冒険者候補達
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【『偵察部隊』】~ご紹介♪~
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まずは卵を卵黄と卵白に分け、卵白を少し冷やしておく。
その間に卵黄に砂糖を加え、マヨネーズみたいになるまでしっかり泡立て、小麦粉をふるい入れ混ぜるを三回程に分けて繰り返す。
冷えた卵白を取り出し、最初はゆっくり、馴染んできたら砂糖を少量加えて泡立てる速度を上げて行く。泡立ってきたら更に砂糖を少量加え混ぜ、残りの砂糖を全量とレモン果汁を二~三滴入れて混ぜ混ぜ混ぜ混ぜる!
泡立て器を持ち上げ角が立ち、ツヤが出てきて少しもっさりしてきたのを確認したら、メレンゲの出来上がり。念のためボウルを逆さにして落ちてこないのも確認しよう。
出来たメレンゲを四分の一卵黄の方のボウルに加えしっかりと混ぜ合わせ、乳化の核を作る。それができたら、残りのメレンゲを全量加えて、今度はサックリと折角泡立てた泡が潰れないように優しく混ぜる。
専用の容器に流し込み、軽くトントン。オーブンに入れて焼く♪
「はぁ~いつ見ても料理とは不思議なものですねご主人」
「にゃん♪ アリサ様凄いにゃぁ~」
「あはは、凄いのは私じゃなくてこれを考えた人達だろうね。色々試行錯誤してレシピ作って後世に遺したんだもん。頭が下がる思いだよ」
はい、みなさんこんにちは♪ 聖女なアリサです。この『無限円環』での訓練の日々もいよいよラスト。明日には『ユーニサリア』へ戻り、三方面作戦が開始されるのだ。
んで、今は何やってるのかと言うと、ふふ♪ 実は見事にグリフォンが三頭無事に進化を果たしたうえに、『人化の術』も会得して人の姿になれたのです!
更に冒険者候補の『千年狼』『虹の鳥』『黒王虎』『白灰熊』の四頭も『人化の術』を会得して人の姿を取ることが可能になったんだよ! まあ、この子達は結構前に人化出来ていて、人の身体にも大分馴れて来ているんだけどね。
「菓子作りって結構面白ぇもんだなドゥエ!」
「計量がやや手間だが……出来上がった時のワクワクがまた良いんだよな。ご主人が楽しそうに作るわけだぜ」
じゃあ、ここで改めてみんなを紹介していこうかな!
『無限円環』での訓練最終日の今日は盛大にパーティーを開催するのだ。そして冒険者候補と『偵察部隊』達には約束通り料理を覚えてもらう目的で、お手伝いしてもらいながら今一緒にシフォンケーキをオーブンに入れたところなの。
「焼き上がるのが楽しみだぜ~♪ 次は定番のイチゴのケーキだっけアリサ様?」
「そうだよ翼。材料はちゃんと覚えてる?」
シフォンケーキをオーブンに入れてニッシッシ♪ って笑みを浮かべるのは鳳凰だ。彼には「自由」って想いをこめて「翼」と言う名前を付けた。その翼に、次に作る予定のイチゴのケーキの材料はなにか覚えているかと聞けば、「勿論だぜ!」って自信満々の答えが返ってきた。
「楽しみだわ! 私イチゴのケーキ大好きなのご主人~♪」
「ルロイヤは前からイチゴ好きだったもんな!」
私が用意したミーにゃん印の可愛いエプロンを身に付けて、きゃっきゃとはしゃぐ悪役令嬢……いや、ドリル……ごめん。縦ロールにした金髪を肩まで下げる、一見すると何処かの貴族令嬢の如し気品のあるこのお嬢様は、なんと一気に二段階進化を果たしたグリフォンだ!
『グリフォンロード』に進化したこの子は実は女の子だったんだよね。グリフォンの姿だと全然わかんなかったけど、『人化の術』で人になったことで、ようやく私達にもわかるようになった。
「ロード」と冠するだけあってか、優雅な雰囲気を醸し出すこの子には「ロイヤル」を文字って「ルロイヤ」と名付けたよ。
そのルロイヤが昔からイチゴが好きだったと話してくれるのはグリフォンから『ハイ・グリフォン』に進化した一頭。最初に進化した個体なので名を「1」を表す「ウーノ」から、『ウノ』と名付けた
「アリサ様。気を付けて下さい。イチゴ畑が荒らされていたら、間違いなくルロイヤの仕業ですから」
「ちょっとドゥエ! ご主人とノッカーが大切に育ててるイチゴ畑を荒らすなんて命知らずなことしないわよ! 精々野イチゴ見つけてつまみ食いするくらいだってば!」
あはは♪ イチゴ好きのルロイヤに『聖域』で育ててるイチゴ畑を荒らされないように注意しなきゃね~♪ なんて冗談をクールに決めるのがもう一頭の『ハイ・グリフォン』。二番目に進化したので「ドゥーエ」からそのまんま『ドゥエ』と命名。
ウノもドゥエも男性で、人の姿の見た目年齢は二十歳くらい。ウノは茶髪の短髪で明朗快活な爽やかな青年だ。ニカッと笑う笑顔に白い歯が光るのが見てても話をしてても気持ちがいい。
一方ドゥエは赤茶色のストレートヘアーをサラリと肩まで伸ばし、フッとかニヒルに笑うのがとても似合うクールキャラだ。切れ長の目を細めて優しく微笑めば多くの女の子がキャーキャー言い出しそうだねぇ♪
「牛乳、バター、卵っと。しかしよぅ~アリサ様~この生クリーム……旅先で俺っち達にも作れっかなぁ……?」
「難しいと思うよ? 今の『ユーニサリア』の食文化じゃちょっとねぇ」
「うぅ! そんなぁ~クリームのないケーキじゃ寂しいわ!」
「まぁまぁ~そんときは『聖域』に戻るとしようぜ!」
「ケーキは時々食べるからこそ、より美味しいんじゃないか?」
この四人で構成される『偵察部隊』には、折角人の姿を取れるようになったんだし、旅先でも料理が出来るように機材一式の入った『魔法の鞄』を持たせる予定なんだよね。
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【冒険者候補達】~人間いないな~
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「ウノとドゥエの言うようにしたらいいじゃない? 『聖域』に帰ってくれば私が生クリームわけてあげるし、毎日毎日ケーキじゃあきちゃうでしょ?」
最初は多めにバッグに入れておくからさ。って、私が翼達に言えば「はーい!」って元気な返事をする『偵察部隊』のみんなだ。うん、好きこそ物の上手なれとはよく言ったもんだわね。『偵察部隊』の四人はもう慣れた手つきでケーキの材料を計量し始めて調理に取り掛かっている。任せてしまっても問題なさそうなので、私は冒険者候補達の様子を見ることにする。
「うにゃあぁーっ! 滲みる! 痛いにゃーっ!」
「ウェズ! ルーナ! これはなんだワン!? 僕ちん涙が出てきたワン!?」
「おぉ、鼻のいいお前らにはキッチィか?」
「玉ねぎをみじん切りにしているんですよ♪」
にゃーにゃー! わんわん! そう騒いでいるのは『斥候』を務める事になるケットシーとクーシーだ。サバトラの毛並みのケットシーが『ニュイ』で、チワワなクーシーが『ププル』っていう名前。
ケットシーの『ニュイ』って名前は前世での私が子供だった頃、まだ家族とわだかまりがなかった時だね。よく家に遊びに来てた野良猫に付けた名前。サバトラの毛並みが彼を思い出させたのよね~♪
クーシーの『ププル』はぷるぷる震えてるチワワちゃんだから。二人共非常に可愛らしくて、アリサさんもニッコリしちゃう♪
「ふふ、ニュイとププルもちゃんとお手伝い出来てて偉いね♪ ウェズ、ルーナ。玉ねぎを切る時はちょっとこの子達に声をかけるようにしよっか?」
「「はい! アリサ様」」
魔法でニュイとププルを軽く癒して、玉ねぎをみじん切りにしているウェズとルーナにそう声をかけておく。ウェズとルーナは玉ねぎを切る手を一時的に止めて、私に振り向いて笑顔で元気に答えてくれたよ。
水菜の部下の『魚人』の青年は海のような青い髪をざんばらに、でもそれはオシャレに決まってて中々のイケメン。ヒレになった耳に、少し青みがかった肌は『魚人』の特徴なんだそうだ。そんな彼には『ウェズ』って名前をプレゼントした。なんか『波』が彼を見たとき思い浮かんだから、『ウェーブ』をいじったの。
で、珠実の部下の『狐人』のお姉さんが『ルーナ』って名前。確か前世の記憶だとどっかの言語で狐の事を『ルナール』って呼ぶのを思い出し、それを参考にってのと、彼女の腰まで伸びるプラチナブロンドの髪が月の明かりを連想させたからその名を付けた。
珠実の白い毛並みとは違うし、尾も一つだけでモフ度が足りないけど、まぁ仕方ないだろう。
「珠実様は何せ『九尾』ですからね、あの美しい毛並みを維持しているのは凄い事です」
ルーナの左右に揺れる尻尾を目で追っかけてそんなこと言った私に、リンの部下『千年狼』の『ザウル』が鶏肉を挽き肉にしつつ頷いた。ふふふ、珠実のブラッシングは私も協力しているのだよ?
この『ザウル』は『千年狼』が『人化の術』で人の姿をとった青年だ。リンのように『人狼』となるのかと思いきや、完全な人型である。魔物との戦闘時には元の姿で戦うんだそうだ。灰色の髪はツンツンしてて後ろに伸びる。金髪ならどこぞの超サイ○人と見紛うかもしれない。威厳ある『神狼フェンリル』のリンの部下だけあってかその態度は紳士そのものだ。
「でもさ~珠実様はなんであんなお子ちゃまの姿でいるんだろ? 朱美様達『四神』をお育てになったんでしょ?」
「ああ、それね? なんでも、「幼い心を忘れずにいたい」のだそうよ?」
卵をボウルに割り入れながら、珠実が幼女でいる事に疑問を投じるのは『虹の鳥』が同じく人の姿をとった『レイ』だ。
レインボーとは言っても別に、全身が虹色の羽根だの羽毛に覆われている訳じゃない。尾羽根にそれぞれ色がついていて、遠目にそれが虹色に見える事からそう呼ばれるようになったらしい。朱美や、翼のように大きくはないが、彼女の本来の姿はそら綺麗なものだよ?
その彼女の人の姿はリールやフォーネと同い年くらいの女の子だ。赤く長い髪は朱美の部下の証しか。ポニーテールにまとめられている。その毛先が前述した尾羽根を表しているんだろう、カラフルなメッシュでとても目立つ。口調も合わさって気持ちギャルっぽい。そんなキラキラ光る女の子だから『レイ』って名前をあげたんだよね♪
「そうなのか~? オレなんてはやーく大人になりたかったけどなぁ~? 長く生きると考えも変わってくるのかなぁ~?」
「そうだろうな。アタシ達のように百年も生きてない子供にはきっと理解できないんだろう」
レイの問いに答えたルーナに、ほへぇ~ってちょっとお間抜けにあんぐりと口をあけるのが、ジュンの部下の『白灰熊』だ。この子も『人化の術』は苦手なのか、人ではなく、『熊人』の姿をとっている。その見た目はジュンのように大きくはなく、ブレイドくん達より少し大きい子供だね。ふふ、ぽやっとした顔はジュンにそっくりだ。そんな彼には『アッシュ』って名前をプレゼントしたよ。
そしてもう一人、大地の部下の『黒王虎』。この子も人の姿ではなく、『虎人』の姿になった。うーむ……正直『人猫』との違いがわからんね? 後で誰かに聞いてみるか。
その『黒王虎』の『虎人』の女の子には、安直ではあるが「ノア」と名付けた。ミストちゃん達と同い年くらいの女の子で、私やアリスみたいにストレートの黒髪を腰まで伸ばす美人ちゃん、白い虎縞の入った虎耳と尻尾が特徴のノア自身も、とても気に入ってくれたようなので安心したよ。結構名前考えるのって神経使うからね。
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【戻ったら】~何するべ?~
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「んじゃ確認するけどよ。『セリアベール』には俺、ラグナース、ビット殿、ドランド殿、ルルリル殿、『猫兎』にアリサの嬢ちゃん二人が移動って事で間違いねぇよな?」
食事中。ゼオンが出来上がったハンバーグを美味しそうに食べながら私達に確認をとってきた。ここは『無限円環』内の『アリサさんの引きこもりハウス』の食堂。明日『ユーニサリア』へ戻ってからの行動方針をみんなで再確認しているところだよ。
「僕は予定通り、ディンベル先生と掛け合って『ルヴィアス魔導帝国』からケーゼを輸入。『セリアベール』からトマトの輸出について話をしようと思います。それと、『聖域』の御用商人としてティリア様にお認め頂けた事も」
まずはラグナース。彼は街に戻り商業ギルドのマスターであるおっちゃん、ディンベルにルヴィアスと約束をしていたチーズとトマトの輸出入について相談をする。まぁ私も料理だの薬品だのレシピを教えるって約束したから、またお邪魔することになるんだけど。
ラグナースには『聖域』と『セリアベール』とのパイプ役になってもらうのだ。私達の考える商品について街の意見聞いたり、逆に街の意見を私達に相談したりと、商売を通して繋がりを持つことになる。
「私は陛下の護衛ですな。ただそれだけでは肩身が狭いので、サブマスターであるエミル殿より何かと御教授頂く事になりました」
そしてビットはゼオンの護衛として同行。以降はゼオン達と一緒に『セリアルティ王国』の復興に尽力してもらうことになっている。多忙なエミルくんからお仕事を引き継ぐってのも目的だ。
「ドランドさん達とルルリルくん達は『セリアベール』で冒険者登録するところから始めるんだったね?」
「ああ、俺達は一から冒険者として活動を始め、ランクを上げて『エルハダージャ王国』へ」
「私達は『ゲキテウス王国』にそれぞれ向かいます」
レジーナが話しかけるのはシドウと爽矢の部下。『聖域』出身の冒険者候補達のリーダーを務める事になる『龍人族』の二人だ。渋いおじ様が「ドランド」で、女の子が「ルルリル」と言う名前。
「貴方達の実力ならSランクなんて遥かに飛び越えてしまうと思うのだけど……」
「やー、マジでFランク……ホントに一から始めちゃうんですか?」
「大丈夫です? どぶさらいとか、雑用、小間使いがほとんどですよ~?」
「あはは、懐かしい。私達もやりましたね」
ニャモがドランドとルルリルに少し苦笑いでそう言うと、ミミ、ももちー、ネネが心配そうに、懐かしむようにして聞いている。うむ、ドランドにルルリル達もこの『無限円環』での訓練について来た猛者達だからね、冒険者から見れば規格外の強さを誇る。そんな彼等が最低ランクのFランクから始める事に不満を抱かないか心配なんだろう。
「鼻の利く僕ちん達にはどぶさらいは厳しいかもだワン! でもがんばるんだワーン!」
「にゃん♪ みんなが通る道にゃらにゃー達もちゃんと通るのが筋だにゃー」
「そう言うこった。いくら実力があるからって特別に~とか、水菜様もアリサ様も許しちゃくれねぇさ」
「ゼオンさんも贔屓せずに新人冒険者として扱って下さいね?」
そんな心配は杞憂だと一笑に付すのが候補のププル、ニュイ、ウェズとルーナだ。彼等はちょっと前に『白銀』と『黒狼』達先輩冒険者に、「腕っぷしだけじゃ駄目だぞ」って諭され、各々の上司にも「そうだぞ~?」って言われ、私に「みんなは『聖域』の代表よ」って言われてから、至極納得した様子を見せるようになった。
「我々の行いのせいで『聖域』に悪評が立つなどという事態になったら」
「オレ達を信じて送り出してくれたジュン様にも、アリサ様にも顔向け出来ないぞ」
と、まぁ~そう言う事らしい。ちゃんと自分達は『聖域』の看板背負ってるって自覚が芽生えてくれたようで嬉しいね♪ 私はそう言うノアとアッシュを偉い偉いって撫でてあげた。
「了解したぜ。んで、パーティー名は決まったのか? 五人一組で二つのパーティーなんだろ?」
そんな私達にニカッ! ていい笑顔を見せるゼオン。今さっきドランドとルルリルが言ったように彼等は東の『エルハダージャ王国』と西の『ゲキテウス王国』を目的地とするメンバーだ。
『エルハダージャ王国』に向かうのが、ドランド、ノア、レイ、ウェズ、ププルの五人。
『ゲキテウス王国』に向かう事になるのが、ルルリル、アッシュ、ザウル、ルーナ、ニュイの五人になる。
しかしパーティー名か。私はなんも考えてなかったけど、みんなはどうなんだべ? なんか考えてたりするのかな?
「パーティー名……」「なーんも考えてないね!」
ザウルとレイが言われて見れば~って顔を見合わせて私達にそう告げる。いやいや、あははって笑ってないでちゃんと考えなさいよ?
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【お使い】~お手紙とお弁当~
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「俺っち達はどうする? ルロイヤ、ウノ、ドゥエ。行きたいとことかある~?」
「と言われてもねぇ……」
「俺達は『聖域』から出たことなかったからなぁ~?」
「特に決まっていないのなら、やはり人里だろう……『白銀』に『黒狼』『猫兎』達からも話を聞いてみるか?」
う~んう~んって頑張ってパーティー名を考えてる候補組を横目に、何処に行くかで悩むのは『偵察部隊』の翼達。まぁ、以前にも言ったけど『偵察部隊』って言っても名ばかりの自由な集団だしね。基本的に好きに動いてくれて構わないのだよ。んでもそうねぇ~どうせだから一つお使いを頼もうかな。
「ちょいちょい翼達~? 一つ頼んでいい? 『聖域』戻ったらお弁当作るからさ、それをちょいと届けてもらいたいのよ」
「お~アリサ様たっての頼みとあらぁ喜んでだぜ!」
「おぉ! 翼~ルロイヤ~♪」「ウノ~ドゥエ~♪」
「お、どうしたよゼルワっち~?」「サーサも俺達に用事か?」
私が翼達にお使いを頼むとゼルワとサーサが寄って来る。なんか手に手紙持ってるみたい。
「あなた達も何かお使いかしら? ご主人の方を優先させるけどいいの?」
「ああ、それで構わねぇ!」
「ちょっと私達の里に寄ってこの手紙を堅物偏屈ジジイ……長老に渡してほしいんですよ」
へぇ~ゼルワとサーサの言う里って、生まれ故郷なのかな? って、長老さんを堅物偏屈ジジイってサーサ。あんた怒られるんじゃないの? 大丈夫?
「大丈夫ですよアリサ様♪ あの引きこもりの同胞共にも現状を報せておこうと思いまして」
「多分里に近付くと攻撃されんだろうけど、俺達と一緒に訓練乗り切ったお前らなら蚊ほどにも効かねぇだろうから大丈夫だ!」
「っておいぃっ! ゼルワっちふざけんなよ!?」
ワハハ♪ って大笑いするゼルワにこらーって騒ぎ出す『偵察部隊』だ。やれやれだねぇ~。でも、近付くだけで攻撃してくるのか……随分排他的なんだねサーサとゼルワの故郷って。どの辺りにあるんだろ?
「……アリサ様。私達の里の同胞達が何故ああまで排他的なのか……どうしてハーフエルフのゼルワが穢れた子と忌み嫌われるのか、私達少しわかった気がするんです」
「俺達の故郷の里ですけど……近いんですよ……『ルーネ・フォレスト』に……」
……サーサとゼルワのその言葉に私は一瞬目をまるくした。ああ、そう言う事なのか……彼等の中にも居たんだろう。あの『人間』に滅ぼされたと言う『亜人』達の子孫が。エルフだけで集まって一つの集落を作り、隠れ里のようにして外界……特に『人間』を避け続けて生きてきた……と。
「はぁ~んでその手紙の内容ってどんなよ?」
「俺達の近況報告だぜ。今まで里の場所が割れるってんで送れなかったんだけどよ……」
「もし『ディードバウアー』が甦る事になったら……聞いてはくれないでしょうけど、一応避難してほしいって。後はアイギスや仲間達の事、アリサ様の事とかもつらつらと♪」
翼も二人の答えを聞いて、あぁ~って納得したようだ。一つため息をついて、今度はその手紙の内容について訊ねている。どうやら二人の故郷のエルフは徹底的に里を隠したいらしい……まさかそんな理由でお手紙すら送れないとはね。
「わかったわ、届けてあげる……ついでに様子も見てくるから。報告を楽しみにしてなさいな」
「ご主人。弁当の届け先と言うのは?」
ルロイヤが「仕方ないわね~」って感じで苦笑いを浮かべながらも、ゼルワとサーサの手紙を受け取った。それには私の事も書かれているそうだ……ふむ、ここは一つ私も一筆書いて、お菓子でも持たせて少しでも印象よくしておこうかしらん?
「ん、ああ……ちょいと待ってドゥエ。『世界地図』と。えっとね、こことここにティリアの義姉妹がいるから、彼女達に届けてほしいの」
ドゥエがお弁当の届け先を聞いてきたので、私は『ユーニサリア』の地図を出して何処に届けるかを説明する。届け先はティリアの義理の姉妹である、フィーナとセルフィの二人だ。彼女達には今も『龍脈の源泉』を守護してもらっているからね。お礼と、今後の私達の活動についても話しを通しておきたい。まぁ、ティリアが連絡をちょくちょくしてるようだけどね。
「了解だぜアリサ様! へへ♪ 東へ西へとかぁ~楽しみだぜ! どんな世界が広がってんだろうな?」
「俺もなんかワクワクしてきたぜ! 初めて『聖域』から出るんだもんな!」
ふふ、翼とウノが目を輝かせながらまだ見ぬ世界に心を踊らせているね。『聖域』っていう籠の中で過ごすのもいいけど、こうして色んな空を駆けるのは彼等にとっていい経験になると思う。可愛い子には旅をさせろとも言うしね♪
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【気楽に付けよう】~パーティー名~
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「う~ん『ルルリルと愉快な仲間達』ってのはどう?」
「ふざけんじゃにゃいにゃ!?」「却下だ」「やだぞ」「論外ね」
「『虎鳥龍魚犬』」
「そんなパーティー名あるかよ」「ノアちゃんそりゃないわ~」
「まんますぎるワン」「呼びづらい……」
さてさて、候補組のパーティー名は決まったかな~って思って『偵察部隊』達とお話した後、様子を確認してみれば……あはは、まーだ決まってないみたいだね。
それぞれのテーブルであーでもない、こーでもないと中々白熱してるみたいだ。
「さっきからずっとこうなんだよ嬢ちゃん、何とかならんか?」
「あはは♪ 楽しそうで何よりだけど、流石に埒が明ないか。んじゃ、先輩達にアドバイスでも聞いてみようよ」
その様子を頬杖ついて、はははって苦笑いして聞いてるゼオンが戻ってきた私に気付いて、助け船を求めてくる。私もパーティー名とか考えるのって苦手だし、どうせだから先達に聞いてみよう。
「はい、じゃあバルドくん! 『黒狼』ってパーティー名の由来は?」
「俺の装備からです。ギドの力作で長年愛用していますから」
「ぷふっ♪ 聞いてくれよアリサ! バルドのヤツ家でこっそり鏡の前でカッコいいポーズとったりしてるんだぜ!」
「せっ! セラぁっ!? おお、お前見てたのか!?」
ウヒョーイ♪ って、セラちゃんは恥ずかしい情報をリークするだけしては、ピョーイって逃げ出した! バルドくんは「待てーっ!」って叫びながら追っかける。いやはや、仲良しでいいねぇ♪
「意外な一面だぜ……バルドの野郎いつもスカしたツラしといて、くくっ! ふははっ!」
「あはは♪ まぁまぁ、そんなに笑わないのゼオン。私だって妹達から服もらった時とか姿見の前でポーズ決めたりするよ? ねーユニ、アリア♪」
「あははは! こないだのミーナちゃん着ぐるみ着て一緒ににゃんにゃーん♪ したんだよぉ~!」
「見てた。あるじ様もユニも可愛かった♪ アリアも着てみたい」
バルドくんは普段クールにしてる分、周りのみんなには落ち着いていて頼りになるイメージを抱かれてるから、今のセラちゃん情報にゼオンも驚いたようだ。そんなオチャメな一面もあったんだなって笑ってる。ふふ、でも新しい衣装を着て鏡の前でポーズとってみる。なんて結構普通の事だよ♪
「んじゃ、レジーナ! パーティー名の由来はなんぞ?」
「え? まんまだよアリサ様。ボクは『人間』だけど、他は『人猫』と『兎人』達だからね」
「揉めたのは『兎猫』にするか、『猫兎』にするか~ってとこでしたよぉ?」
「ネネとミミでじゃんけんして決めたのよね」
軽い……結構みんなノリと言うか、その場の勢いで付けてる感じだわ。『猫兎』達は「あの時じゃんけんで負けたミミをモモが「粉砕~☆」ってしそうになって焦ったよね~♪」とか笑い合ってるし、そんなに深く考えなくていいみたいだ。
「あい、んじゃアイギス! 『白銀』の由来は?」
「アイギスが白銀の鎧着てたからよアリサ様?」
……そんだけ? 食堂のカウンターからご飯のおかわりをお盆に乗せたレイリーアが、私達の後ろを通り様に一言。私はレイリーアを振り返り、アイギス達に向き直りってすればみんなうんうんって頷いてる。……そんだけかい。「パーティー組もう」って言い出しっぺのアイギスが白銀の鎧着てたから。「んじゃ『白銀』でいいや」って事になったらしい。
「めっちゃアッサリしてんだな……んじゃゼオン。お前もパーティー組んでたんだろ?」
「確か『誉』だったな? その由来はなんなのだ?」
ポカーンとした感じの私と候補組のみんな。いや~ウェズが今言ったようにマジであっさりだ、もうホントその場の勢いで付けていいんじゃないのん? あ、でもザウルが聞いてるゼオンの組んでたパーティー名についても、どうせだし聞いてみたいね。
「俺達の『誉』にゃ「俺達の進む先に誉あれ!」っていう願いがこめられてるぜ? ははっ! 実際に『ゲキテウス』に『エルハダージャ』の王になってるメンバーいるしな!」
マジに『誉』だろ? って笑うゼオンだ。なるほど、そう言う願いをこめた名前にするのも素敵だねぇ~♪ へぇ~って聞いてるみんなも感心してるよ。
「王様だって! 凄いねアリサおねぇちゃん!」
「……パーティーメンバーだった? どんな、人?」
一緒に聞いてたユニもわーって興奮してるね。うんうん、王様二人なんて凄いね♪ アリアもどんな人なのか気になるように、私もちょっと興味あるな。ゼオンとパーティー組んでたっていう王様二人……どんな人物なんだろ?
「お、気になるかアリア? いいぜ、まず冒険者ギルド発祥の『エルハダージャ』は「ココノエ」って言う奴がな……」
「むっ!? 「ココノエ」じゃと! 童よ、今『エルハダージャ』は「ココノエ」と言う奴が治めておるのか?」
おや? なんぞ珠実がゼオンの話に反応して寄って来たぞ? 「ココノエ」って名前に何か心当たりでもあるのかな?
アッシュ「毎日ハンバーグ食べる!(*´▽`*)」
ニュイ「サイコーだにゃん♪( ☆∀☆)」
ザウル「焼き肉も忘れるな!(*`▽´*)」
ルルリル「え!?Σ(゜ロ゜;)」
ルーナ「焼き鳥も~唐揚げも~♪( ̄¬ ̄)」
アリサ「……太るわよ?(¬_¬)」
ノア「毎日フライドポテトとか(^ー^)」
レイ「毎日天ぷら!(ノ゜∀゜)ノ」
ププル「あまぁ~い玉子焼きもつけるんだワーン!(゜∀゜ )」
ドランド「油の消費が半端ないな(;´д`)」
ウェズ「バカ野郎!(。・`з・)ノ 魚食え魚を!( `□´)」
ユニ「あはは(*゜∀゜) みんな好きなのばっかりだね~( *´艸`)」
翼「砂糖、卵に牛乳、小麦粉は多めに~(・∀・)」
ルロイヤ「うふふ♪(*´艸`*) 毎日甘いホットケーキ!( 〃▽〃)」
ウノ「俺ら『偵察部隊』、スイーツ無しでは働けねぇぜ!(ノ≧▽≦)ノ」
ドゥエ「甘味は癒し……明日への活力だからな( ゜ー゜)」
シェラザード「……この子達絶対虫歯になって帰って来るわね(-_-;)」
アリサ「あーんたー達!L(゜皿゜メ)」 『聖域』に帰って来たときブクブクに太ってたり、虫歯だらけになってたらぁ~許さないかんね!ヽ(#゜Д゜)ノ」
候補者達「は、はいっ!!Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)」
偵察部隊「きき、気をつけまーすっ!ヽ(;´Д`)ノ 毎日歯を磨きまーす!。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。」
ゼルワ「折角簡単に作れる野菜料理も覚えたんだろ(・_・?)」
アイギス「作らないのは勿体ないぞ?(^ー^)」
レジーナ「ふふ( ´ー`) まぁ自分達の好物ばかりになってしまうのにも頷けてしまうね♪(*≧∀≦)」
モモ「好きなのだから仕方ないのですよぉ~♪。:+((*´艸`))+:。」




