居酒屋
女房と一緒に家で飲むビールもいいが
久しぶりに馴染みの居酒屋に行ってみたくなった
確か、新しい板前が入ったとか言ってたな。
「ちょっと、そこまで行ってくる」
玄関で、草履を引っかけていると、後ろから
「悪さしてこないでね」
と声がかかる
「お、お、俺が、いつ悪さした?」
と、後ろを振り向くと、もう、女房の姿はなかった。
外に出ると、雨は上がっていて、猫の額ほどの庭に植えた茄子が、雨水を浴びてキラキラと光っていた。明日は、女房の好きな茄子のしぎ焼きでもするか。
空は夕焼け色にそまっていて、美しいオレンジのグラデーションをかもしだしていた。
路地裏を歩いて行くと、ランニング姿の子供達が、雨上がりの中元気に遊んでいる。
居酒屋は、なかなか盛況らしく、カウンターの席がひとつだけ空いていた。俺は、そこに座り、
「よ!久しぶり」と女将に声をかけた
「久しぶり、元気でした?」
「いつもので、良い?」と女将
「今日は、ビールもらうよ」
女将がお酌してくれるビールは絶品だ!などとたわいも無い話しをしていると、どこからか視線を感じる。
あれが、新しい板前か、なかなかの色男だな。
女将のいい人かな?
しかし、久しぶりに見たが、やっぱり女将はいい女だな。仕草が色っぽいんだよな。ちょっと着物の袖をつまんでお酌する姿、いいんだよな。
板前が凄い目つきで、俺を睨んでいる。
手には、包丁をにぎりながら、まな板の上では、車海老が飛び跳ねている。
車海老の頭を掴み、グイッと頭をひねり、頭と身を冷水につけ、身の方に包丁で切り込みをいれている。
しかし、視線が、、、
「女将、天ぷら貰おうかな」
「今日は、生きのいい車海老が入ったからね」
「よっちゃん、天ぷら、お願い。」女将が、板前に言うと、デレーとした板前。
俺はそうそうに、天ぷらを食べて帰る事にした。
「女将、おあいそ」
「もう、お帰りで?」
また、睨んでるよ、よっちゃんが、
「天ぷら美味かったよ。」
「今度は、女房と来るよ。」
よっちゃんが、
「是非、奥様とご一緒に、またのお越しを」
と、ニコッと。