戦争の足音と人魚の恋心
人魚達と出会ってから二週間、今までにあったことと言えばタイコンデロガ級巡洋艦Eagle-eyeが島の南側の沖合で1週間前、Peaceが仕留めた生物よりも2倍以上あるタコもどきにMk.32魚雷発射管から放った魚雷3発をお見舞いして海の藻屑にしたくらいである。もちろんEagle-eyeと乗員は無傷、唯一の損害?は乗員が全員たたき起こされて戦闘で疲れたことである。そして俺は6000人を近くにまでなった隊員たちの人事を確定させた。それによってDominator, Eagle-eye, Libertyを完全な運用状態まで持って行った。そしてDominatorのウェルドックはは人魚と隊員たちの交流の場と化していた。言葉がわからないながらボディーランゲージで伝えようと必死になっている隊員たちが共に昼食を食べていた。なぜこんなことになったかというと俺が彼女らの行動を監視するためにアメリカ級強襲揚陸艦を使うことにしたからである。でもここまで隊員達と人魚達が打ち解けるとは思っていなかった。もしかしたら気づいた方がいらっしゃるかもしれないが、2週間前隊員数は3000名程だった。なぜさらに6000人増えたかというともう一個遠征打撃団が創設されたからである。タイコンデロガ級巡洋艦2番艦Monster, アメリカ級強襲揚陸艦Hanmerが1週間前に就役した。理由はバックアップを備えるためと人魚達の居住区代わりになっているDominatorのウェルドックで揚陸舟艇が使えない、航空戦力を人魚達から秘匿するためという3点がある。彼女らから見れば飛んでいないヘリや戦闘機は単なる板をつけた物体にしか見えないのである。
俺を罵倒した生意気娘もついにこちら側に心を許した。そしてなぜか彼女が一番隊員達と交流している。これをツンデレと言うのだろうか。その定義が正しいなら彼女はまさにその典型である。俺は色々と俺は彼女らが完全に心を考えたが一つの要因に乗員の中に相当数女性がいるということではないかと思っている。最近人事のデータを見ると半分以上が女性であることに気づく。これは普通の軍組織と比べると女性隊員の占める割合が飛びぬけて高い。上陸隊員3300名の中においては女性は500名程となっておりこの中だけで比べれば女性率は低いが、その分操船要員はほぼ女性となっており神がなんでこんなにも女性を増やしたのかまったくもって不明である。
人魚達に俺はウェルドックで話しかけられる。
「池田殿、ちょっとよろしいか。」
話しかけてきたのはウォータークッションの上に座っている人魚族のリーダーである。少し顔が赤いようだけどどうしたんだろう。水から揚がると乾いて顔が赤くなるんだろうか、とかそんなことを考えながら話の続きを聞こうとする。
「どうした?」
「実は島の向こう側に行くとかなり大きな島があるのだけれど...」
と言って彼女は北側を指さした。
「どれくらいの距離にある?」
と俺はすぐに聞き返す。
「普通に泳いで行って1時間ぐらいのところ。」
つまりソナーで確認した彼女たちの普通の速度は20ノット程度であるからおよそ35キロぐらい先である。
「ありがとう。これで私たちの戦いの為の本拠地が整備できる。本当に感謝するよ。」
「いやそんなに感謝されるほどじゃないわよ、でもうれしいわ。」
と彼女は照れ隠しをするように答えた。池田才人は単なる謙遜だと思っているらしいが。
俺はすぐに遠洋で錨を下しているHanmerに通信を行い2機のF35-Bを偵察のため飛び立たせた。2機は南側に甲板上を滑走しやがて垂直離着陸用のファンカバーを収納し偏向ノズルを水平にして一気に高度30000ftに上昇していった。艦長から緊急時以外絶対に音速を超える速度で飛行するなと言われているエドワード=ランソンと星野昭は不満そうだった。この命令は俺たちがHanmerで作戦会議をした際に決定した事案であるからある意味俺からの命令でもある。理由は簡単で音速を超えてしまうとソニックブームが発生し我々の存在が知られてしまうからである。
「にしても早く飛んじゃだめとかほんと司令部は舐めているのかな。」
「やっぱりそう思いますよね、これじゃ俺達にはいつ自由に飛べる空がくるのやら。」
「お前ら‼そんなことを言っているなら働け、そんなんだったら自由な空はやらん。」
「あ、やべ。無線の周波数CIC直通になってた。」
「おまえら、覚悟しとけよ。」
「了解であります...」
と言った二人の雰囲気はお葬式状態であった。そんなことを言ってはいるが彼らは命令の意図を理解してはいる、しかしやはり不満である。そんな中すぐに島の上空に到達した彼らは島の詳細な偵察写真を撮影し少し遊覧飛行して戻ろうとした。だが赤外線センサーが200km先に大きな赤外線反応を感知してしまった。燃料に余裕が十分にあることを確認しCICに連絡するとすぐに向かった。そしてそこには10隻の150mくらいの帆船がいた。そして船首の向きから先ほどの島に向かっていることが判明した。彼らは写真を撮影するとすぐに引き返し垂直着艦をした。絞られるはずだった2人は何もされることなくすぐに任務から解放された。彼らは任務報告書を作成し、眠りに夕暮れ時にベットに入った。彼らがそうしている間司令官たちは大慌てで会議を行っていた。俺もすぐにHanmerにPEACEで向かった。
「緊急の会議とはやはり島の件か。」
「そうでございます、池田殿。船団がその島に向かって来ています。」
「対応策はどうするつもりだ。」
「現在検討中です。」
「俺の案を言っても良いか。」
「池田殿、是非。」
とHanmer艦長が言う。俺は人魚達の情報と絡めた案を言う。
「メイソニア大帝国はかなり遠くにあると人魚達から聞いている。その船がメイソニア帝国であった場合我々が向かっている島のことを我々と同様に知らない可能性が高い。つまり、俺たちが原住民のふりをして島で待ち構える。艦長、ちょっと船の写真を見せてくれないか。」
と艦長に言うと彼女は赤外線写真と光学写真を俺に渡した。
「この写真を見る限り帆船がこれだけの熱源を持っていることが不自然だが帆船は帆船である。少なくとも我々の戦力で渡り合うことが出来るだろう。俺は上陸後原住民たちのすぐ近くで指揮をとる。」
「原住民役はどのようにすれば選びましょうか。」
「がたいが良くて背が低めの奴が良い。彼らには無線で上陸してきた奴が何を言っているのかを翻訳して伝える。」
「わかりました。選抜はこちらでします。しかしその方法で行う場合の詳細な作戦はどうするのですか。」
「使用機材などはあなた方で決めてもらいたいが、万が一に備えて島の南側に戦車を配置し、俺たちは水陸両用車で狙撃犯と原住民と共に島の北側に移動したい。そして海上警備だが、今回は人魚達を動員したい。彼女らなら水中で長時間活動が出来る、その利点を生かして我々の水中作戦部隊と組ませて任務にあたらせたい。目的は奴隷などが乗っているかどうかの確認だ。もしその船団がメイソニア大帝国ので攻撃を始めたら問答無用で全て撃沈するが奴隷などがいる場合は全員救助しなければならない。」
「了解しました。」
「池田殿、私から提案があります。」
と上陸部隊最高指揮官のメアリー=サンダーが口を開いた。
「どういう提案だ。」
「今回の任務でLCACにM1A2を3両搭載して揚陸し、池田殿を乗せる水陸両用車AAV7は本艦から直接発進させるのはどうかと考えます。又訓練を積ませていないので人魚達には水中からの偵察を行わせるべきだと考えます。そして水中部隊ですが、酸素アーク切断機とC4爆弾を携行させた200名程を投入するのがよろしいかと。」
「立案感謝する。詳細はすぐに決めて作戦を開始してくれ。俺は人魚達にそのことを伝えるため席を外す。」
偵察写真の精査や会議によってもう既に2時間を過ぎて日が暮れる時間になっていた。俺は彼女らにDominatorの無線を経由して彼女らに偵察任務について伝えた。
「池田様、どうしましたか。」
「急に済まない。あなた方が教えてくれた島に謎の船団が接近中なんだ。それでその船がメイソニア大帝国のである可能性がある。島で私たちは時間を稼ぐからあなた方に船の中にあなたの仲間とか奴隷とかもし出来るならば特殊な力が働いているのかも偵察で情報を集めてほしい。」
彼女は仲間たちにそのことを仲間に伝えた。仲間たちはその言葉に震えていたり怒りをあらわにしているものなど様々だったが、皆進んで今回の作戦に協力的だった。しばらく時間を置いて。
「わかったは。私たちはあなた方に最大限協力するわ。」
「ありがとう。みんなに伝えといてくれ。任務は明日か明後日には開始される。今のうちに体がしっかり動くようにしておくこと。と」
「わかったは。気づかいありがとう。」
「終了。」
と俺は言うと無線を切った。彼女は内心では池田と話すだけで顔が真っ赤になってしまう。そして仲間たちは薄々気づいていた。彼女は池田のことが好きなんだ、と。